(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】固定窓
(51)【国際特許分類】
B60J 1/10 20060101AFI20231129BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20231129BHJP
【FI】
B60J1/10 A
B60J10/76
(21)【出願番号】P 2020080206
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】池上 学
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真介
(72)【発明者】
【氏名】林田 マルセル 賢司
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ マーティン
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034219(WO,A1)
【文献】特開2009-107397(JP,A)
【文献】特開2019-084933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00 - 1/20
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの開口部に取り付けられる固定窓であって、
透過性プレートと、
前記透過性プレートの周縁を保持する枠体と
を備え、
前記枠体は、車両前後方向に延びる下辺部と、前記下辺部の後端から上方に延びて前記下辺部とともに角部を形成する後辺部とを有しており、
前記後辺部は、
上下方向に延びる基部と、
前記基部から車幅方向内側に突出して上下方向に延びるリップ部であって、前記車両用ドアを構成するドア構成部材における車幅方向外側を向く第1面に当接可能な前側リップ部と、
前記基部から車両後方に突出して上下方向に延びるリップ部であって、前記ドア構成部材における車両前方を向く第2面に当接可能な後側リップ部と、
前記前側リップ部と前記後側リップ部を連結し、前記第1面および前記第2面の境界部分に当接可能であり、前記前側リップ部および前記後側リップ部によって形成される空間を上下に仕切る仕切壁部と
を備え、
前記後側リップ部は、前記角部の上方でかつ前記第2面に当接可能な位置に末端部を有し、
前記仕切壁部は、前記末端部の上方の位置に配置されている、
固定窓。
【請求項2】
前記仕切壁部の厚さは、前記前側リップ部および前記後側リップ部のそれぞれの厚さよりも薄い、
請求項1に記載の固定窓。
【請求項3】
前記後側リップ部の上方において前記後辺部から車幅方向内側に突出して車両前後方向に延びる上側リップ部と、
前記上側リップ部の後端部と前記後側リップ部の上端部との間を連結するとともに前記後側リップ部と前記上側リップ部との間で車両後方から車幅方向内側へリップ先端の方向が連続して変わるように延びる変遷リップ部と
をさらに備え、
前記上側リップ部の前端部と前記前側リップ部の上端部は連結している、
請求項1または2に記載の固定窓。
【請求項4】
前記仕切壁部は、前記第1面から前記第2面にかけて連続的に当接可能な円弧状の外周辺を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の固定窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアに取り付けられる固定窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアには、上下方向にスライドして開閉可能な可動式の窓とともに固定窓を備えたドアがある。固定窓は、可動式の窓の車両後方側などに形成されたドアの狭い開口部を閉じるために、ドアパネルに固定される窓である。
【0003】
固定窓とドアパネルとの隙間から空気や音などが車内に侵入することを防止するための従来技術として、特許文献1には、固定窓の枠体がドアパネルのフランジ部に当接するウェザーストリップなどのシール部材を備えた構造が開示されている。
【0004】
この構造では、ドアパネルを構成するインナパネルとアウタパネルの合わせ面の互いに対向する一対のフランジ部の間に、固定窓の枠体に備えられたウェザーストリップが嵌合することによって、固定窓とドアパネルとの隙間におけるシール性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような固定窓とドアパネルとの間のシール構造では、ドアパネルの一対のフランジ部のそれぞれに当接するウェザーストリップのリップ部は、一枚のみであったが、更なる遮音性能を向上させるために複数リップ部を設けることが考えられる。
【0007】
しかし、特許文献1記載の構造では、固定窓の後方にガーニッシュなどの外装部材が設けられているので、スペース的な余裕がなく、複数のリップ部の間隔を充分に確保することができない。そのため、複数のリップ部を樹脂で成形する場合に、リップ間の成形型の断面積が小さくなり、成形性を確保することが困難である。
【0008】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、複数のリップ部の成形性の確保と遮音性の向上を達成することが可能な固定窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の固定窓は、車両用ドアの開口部に取り付けられる固定窓であって、透過性プレートと、前記透過性プレートの周縁を保持する枠体とを備え、前記枠体は、車両前後方向に延びる下辺部と、前記下辺部の後端から上方に延びて前記下辺部とともに角部を形成する後辺部とを有しており、前記後辺部は、上下方向に延びる基部と、前記基部から車幅方向内側に突出して上下方向に延びるリップ部であって、前記車両用ドアを構成するドア構成部材における車幅方向外側を向く第1面に当接可能な前側リップ部と、前記基部から車両後方に突出して上下方向に延びるリップ部であって、前記ドア構成部材における車両前方を向く第2面に当接可能な後側リップ部と、前記前側リップ部と前記後側リップ部を連結し、前記第1面および前記第2面の境界部分に当接可能であり、前記前側リップ部および前記後側リップ部によって形成される空間を上下に仕切る仕切壁部とを備え、前記後側リップ部は、前記角部の上方でかつ前記第2面に当接可能な位置に末端部を有し、前記仕切壁部は、前記末端部の上方の位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、固定窓の枠体の後辺部は、異なる方向に延びる2つのリップ部、すなわち、基部から車幅方向内側に突出し、ドア構成部材における車幅方向外側を向く第1面に当接可能な前側リップ部と、前記基部から車両後方に突出し、ドア構成部材における車両前方を向く第2面に当接可能な後側リップ部とを有する。これら前側リップ部および後側リップ部は、同じ方向に突出して平行に延びる一般的な複数のリップ部と異なり、異なる方向に突出しているので、これらのリップ部を樹脂などで成形する場合に、リップ部間における成形型の断面積を増加することが可能になり、リップ部の成形性を確保することが可能である。また、後側リップ部は角部の上方の末端部までしかドア構成部材の第2面と接触を維持できなくても、これらのリップ間に形成される空間を仕切る仕切壁部によりリップ間の空間を通して伝達する音を遮断し、遮音性能を向上することが可能である。その結果、複数のリップ部の成形性の確保と遮音性の向上を達成することが可能である。
【0011】
上記の固定窓において、前記仕切壁部の厚さは、前記前側リップ部および前記後側リップ部のそれぞれの厚さよりも薄いのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、仕切壁部は、前側リップ部および後側リップ部よりも薄く形成されているので、変形しやすくなっている。そのため、仕切壁部がドア構成部材に当接した際に仕切壁部から枠体に与える反力を小さく抑えることが可能であり、固定窓の取付け時のずれを抑えることが可能である。その結果、固定窓の取付精度が向上するとともにドア構成部材を効率よくシールすることが可能である。
【0013】
上記の固定窓において、前記後側リップ部の上方において前記後辺部から車幅方向内側に突出して車両前後方向に延びる上側リップ部と、前記上側リップ部の後端部と前記後側リップ部の上端部との間を連結するとともに前記後側リップ部と前記上側リップ部との間で車両後方から車幅方向内側へリップ先端の方向が連続して変わるように延びる変遷リップ部とをさらに備え、前記上側リップ部の前端部と前記前側リップ部の上端部は連結しているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、固定窓は、後側リップ部の上方において後辺部から車幅方向内側に突出して車両前後方向に延びる上側リップ部を備えている。この上側リップ部の後端部は、後側リップ部と上側リップ部との間で車両後方から車幅方向内側へリップ先端の方向が連続して変わるように延びる変遷リップ部を介して後側リップ部の上端部に連結されている。さらに、上側リップ部の前端部と前側リップ部の上端部は連結している。したがって、上側リップ部の前端部および後端部の両方において他のリップ部と連結して高いシール性を維持することが可能である。そのため、固定窓の上部のシール性を向上することが可能であり、固定窓上方からの空気や音の侵入だけでなく、雨水などの水の侵入も防止することが可能であり、遮音性および防水性の向上が可能である。
【0015】
上記の固定窓において、前記仕切壁部は、前記第1面から前記第2面にかけて連続的に当接可能な円弧状の外周辺を有するのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、仕切壁部の円弧状の外周辺がドア構成部材の第1面から前記第2面にかけて連続的に当接することにより、シール性が向上し、その結果、遮音性のさらなる向上が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固定窓によれば、複数のリップ部の成形性の確保と遮音性の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る固定窓を備えた車両用ドアの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の車両用ドアを車室側から見た側面図である。
【
図3】
図2の固定窓およびその周辺部を示す拡大図である。
【
図4】
図3の固定窓およびその周辺部におけるインナパネルを取り外した状態を示す拡大図である。
【
図5】
図4の枠体における枠体下部と枠体後側ピラー部の角部周辺における前側リップ部および後側リップ部の拡大斜視図である。
【
図6】
図5の角部周辺における前側リップ部および後側リップ部を斜め下方から見た拡大斜視図である。
【
図9】
図8の上側リップ部、変遷リップ部、およびそれらの周辺部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0020】
図1~4に示される本実施形態の車両用ドア1は、車体の車両後方側X1に取り付けられるリヤドアであって、窓用の開口部8を有するドアパネル2と、窓用の開口部8のうち車両後方側X1の狭い開口部8bに固定された固定窓10と、固定窓10をドアパネル2に締結する下側の締結部材16および上側の締結部材17と、アウターガーニッシュ40とを備えている。
【0021】
ドアパネル2は、車外側のアウタパネル3と、車室側のインナパネル4と、ドアサッシュ5とによって構成されている。
【0022】
ドアサッシュ5は、窓用の開口部8を形成する枠体であり、本実施形態では、インナパネル4と一体形成されている。なお、ドアサッシュ5は、インナパネル4と別部材として形成した後にインナパネル4に接合してもよい。
【0023】
ドアサッシュ5は、ドアパネル2の車両前方側X2および車両後方側X1のそれぞれの端部から上下方向Zに延びる前側ピラー部5aおよび後側ピラー部5bと、車両前後方向Xに延びてこれら前側ピラー部5aおよび後側ピラー部5bの上端同士を連結する上側連結部5cとを有する。前側ピラー部5a、後側ピラー部5bおよび上側連結部5cによって、窓用の開口部8を形成する。前側ピラー部5aは、若干斜め後方に傾斜するように延びている。後側ピラー部5bは、若干斜め前方に傾斜するように延びている。
【0024】
ドアサッシュ5によって形成される窓用の開口部8は、後述の枠体前側ピラー部15(固定窓10の枠体11の一部)によって、車両前方側X2の広い開口部8aと車両後方側X1の狭い開口部8bに仕切られている。なお、枠体前側ピラー部15以外の別のピラー部材によって、広い開口部8aと狭い開口部8bとを仕切ってもよい。
【0025】
枠体前側ピラー部15は、前側ピラー部5aと平行に延びるように、若干斜め後方に傾斜するように延びている。狭い開口部8bは、後側ピラー部5bおよび枠体前側ピラー部15によって形成された略三角形状の開口部である。なお、広い開口部8aは、前側ピラー部5aおよび枠体前側ピラー部15(具体的には、
図8に示される枠体前側ピラー部15に取り付けられたガイド部材42)に沿って上下方向に開閉可能な可動式の窓(図示せず)によって開閉される。
【0026】
ドアサッシュ5の後側ピラー部5bは、
図7に示されるように、インナパネル4と一体に形成されたインナピラー5b1と、インナピラー5b1の車幅方向外側Y2に取り付けられた補強部材であるアウターレイン5b2(
図7~8参照)とから構成されている。
【0027】
アウターレイン5b2は、
図6~7に示されるように、金属板材などで形成されており、車幅方向外側Y2を向く第1面5b3から車両前方X2を向く第2面5b4にかけて連続して延びている。
【0028】
なお、アウターレイン5b2の車幅方向外側Y2の面には、アウターガーニッシュ40がクリップ42を介して取り付けられている。さらに、このアウターガーニッシュ40と固定窓10の枠体11の車幅方向外側Y2の面と間はシール部材41によってシールされている。
【0029】
固定窓10は、狭い開口部8bを閉じるようにインナパネル4に固定されている。固定窓10は、車室側(
図2~4参照)から締結部材16、17によってインナパネル4に締結されている。
【0030】
固定窓10の車両後方側X1の後側ピラー部5bおよび固定窓10の一部は、車外側(
図1参照)に設けられたアウターガーニッシュ40によって外部から覆われている。
【0031】
固定窓10は、
図3~4に示されるように、車両用ドア1の開口部8(具体的には、狭い開口部8bの領域)に取り付けられる。固定窓10は、透過性プレートとしての略三角形状のガラスプレート12と、ガラスプレート12の周縁を保持する枠体11とを備える。
【0032】
なお、本実施形態では、本発明の透過性プレートの一例としてガラスプレート12を例に挙げて説明しているが、樹脂製のプレートであってもよい。また、透過性プレートの透過性については、完全な透過性でなくてもよく半透過性であってもよい。
【0033】
枠体11は、
図4~6および
図8に示されるように、車両前後方向Xに延びる下辺部としての枠体下部13と、枠体下部13の後端から上方に延びて枠体下部13とともに角部21を形成する後辺部としての枠体後側ピラー部14と、枠体前側ピラー部15とを有し、合成樹脂などによって一体形成されている。ガラスプレート12は、枠体下部13、枠体後側ピラー部14、および枠体前側ピラー部15にそれぞれ保持される。
【0034】
枠体後側ピラー部14は、
図5~9に示されるように、枠体後側ピラー部14とドア構成部材である後側ピラー部5bのアウターレイン5b2(
図6~7参照)との間のシールをするために、基部22と、前側リップ部23と、後側リップ部24と、仕切壁部25と、上側リップ部28と、変遷リップ部26とを備える。
【0035】
これらの基部22、前側リップ部23、後側リップ部24、仕切壁部25、上側リップ部28、および変遷リップ部26は合成樹脂によって枠体後側ピラー部14と一体成形されている。前側リップ部23、後側リップ部24、仕切壁部25、上側リップ部28、および変遷リップ部26は、合成樹脂製の薄肉の部分であり、上記のアウターレイン5b2に当接したときに変形可能である。
【0036】
基部22は、枠体後側ピラー部14に沿って上下方向Zに延びる部分であって、異なる方向に延びる前側リップ部23および後側リップ部24とそれぞれ連結している。言い換えれば、前側リップ部23および後側リップ部24は、基部22で分岐して異なる方向に突出している。
【0037】
前側リップ部23は、基部22から車幅方向内側Y1に突出して上下方向Zに延びるリップ部であって、車両用ドア1を構成するドア構成部材である上記のアウターレイン5b2(ドアサッシュ5の後側ピラー部5bの外側の部分)における車幅方向外側Y2を向く第1面5b3(
図6~7参照)に当接可能である。
【0038】
後側リップ部24は、基部22から車両後方X1に突出して上下方向Zに延びるリップ部であって、アウターレイン5b2における車両前方X2を向く第2面5b4(
図6~7参照)に当接可能である。
【0039】
後側リップ部24は、
図5~6に示されるように、角部21の上方でかつ第2面5b4(
図6~7参照)に当接可能な位置に末端部24aを有する。後側リップ部24の下端は、末端部24aの位置で途切れており、前側リップ部23とは連結されていない。
【0040】
仕切壁部25は、末端部24aの上方の位置において、前側リップ部23と後側リップ部24を連結する。仕切壁部25は、
図7に示されるように、アウターレイン5b2の第1面5b3および第2面5b4の境界付近の部分に当接してシールすることが可能な円弧状の外周辺を有する薄いリップである。
【0041】
仕切壁部25は、前側リップ部23および後側リップ部24によって形成される空間30(
図5~6参照)を上下に仕切る。空間30は、仕切壁部25の上下において上下方向Zに延びるように形成される。具体的には、空間30は、前側リップ部23、後側リップ部24、およびこれらのリップ部23、24が当接するアウターレイン5b2の第1面5b3および第2面5b4(
図6~7参照)で囲まれた空間である。
【0042】
本実施形態では、
図6に示される仕切壁部25の厚さt1は、アウターレイン5b2との当接状態で変形しやすいように、
図7に示される前側リップ部23の厚さt2および後側リップ部24の厚さt3よりも薄い。
【0043】
図8~9に示されるように、上側リップ部28は、後側リップ部24の上方において枠体後側ピラー部14から車幅方向内側Y1に突出して車両前後方向Xに延びる。
【0044】
変遷リップ部26は、上側リップ部28の後端部28aと後側リップ部24の上端部24bとの間を連結するとともに後側リップ部24と上側リップ部28との間でリップ先端の方向が連続して変わるように延びる。
【0045】
具体的には、
図9に示されるように、変遷リップ部26の下端26aでは、後側リップ部24と同じように車両後方X1に突出しているが、変遷リップ部26の先端は、上方へ向かうにつれて車幅方向内側Y1に向くように連続して変わる。変遷リップ部26の上端26bでは、上側リップ部28と同じように車幅方向内側Y1に突出している。
【0046】
上側リップ部28の前端部28bと前側リップ部23の上端部23aは、連結している。
【0047】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の固定窓10は、
図3~4に示されるように、車両用ドア1の開口部8(具体的には、狭い開口部8bの領域)に取り付けられる固定窓10であって、ガラスプレート12と、ガラスプレート12の周縁を保持する枠体11とを備えている。枠体11は、車両前後方向Xに延びる下辺部としての枠体下部13と、枠体下部13の後端から上方に延びて枠体下部13とともに角部21を形成する後辺部としての枠体後側ピラー部14とを有している。
【0048】
枠体後側ピラー部14は、
図5~9に示されるように、上下方向Zに延びる基部22と、基部22から車幅方向内側Y1に突出して上下方向Zに延びるリップ部であって、車両用ドア1を構成するドア構成部材であるアウターレイン5b2における車幅方向外側Y2を向く第1面5b3(
図6~7参照)に当接可能な前側リップ部23と、基部22から車両後方X1に突出して上下方向Zに延びるリップ部であって、アウターレイン5b2における車両前方X2を向く第2面5b4(
図6~7参照)に当接可能な後側リップ部24と、前側リップ部23と後側リップ部24を連結し、第1面5b3および第2面5b4の境界部分に当接可能であり、前側リップ部23および後側リップ部24によって形成される空間30を上下に仕切る仕切壁部25とを備えている。後側リップ部24は、角部21の上方でかつ第2面5b4(
図6~7参照)に当接可能な位置に末端部24aを有している。仕切壁部25は、末端部24aの上方の位置に配置されている。
【0049】
かかる構成によれば、固定窓10の枠体11の枠体後側ピラー部14は、異なる方向に延びる2つのリップ部、すなわち、基部22から車幅方向内側Y1に突出し、アウターレイン5b2における車幅方向外側Y2を向く第1面5b3(
図6~7参照)に当接可能な前側リップ部23と、基部22から車両後方X1に突出し、アウターレイン5b2における車両前方X2を向く第2面5b4(
図6~7参照)に当接可能な後側リップ部24とを有する。これら前側リップ部23および後側リップ部24は、同じ方向に突出して平行に延びる一般的な複数のリップ部と異なり、異なる方向に突出しているので、これらのリップ部23、24を樹脂などで成形する場合に、リップ部23、24間における成形型の断面積を増加することが可能になり、リップ部23、24の成形性を確保することが可能である。また、後側リップ部24は角部21の上方の末端部24aまでしかアウターレイン5b2の第2面5b4(
図6~7参照)と接触を維持できなくても、これらのリップ部23、24間に形成される空間30を仕切る仕切壁部25によりリップ部23、24間の空間30を通して伝達する音を遮断し、遮音性能を向上することが可能である。その結果、複数のリップ部23、24の成形性の確保と遮音性の向上を達成することが可能である。
【0050】
(2)
本実施形態の固定窓10では、
図6に示される仕切壁部25の厚さt1は、
図7に示される前側リップ部23の厚さt2および後側リップ部24の厚さt3よりも薄い。
【0051】
かかる構成によれば、仕切壁部25は、前側リップ部23および後側リップ部24よりも薄く形成されているので、変形しやすくなっている。そのため、仕切壁部25がアウターレイン5b2に当接した際に仕切壁部25から枠体11に与える反力を小さく抑えることが可能であり、固定窓10の取付け時のずれを抑えることが可能である。その結果、固定窓10の取付精度が向上するとともにアウターレイン5b2を効率よくシールすることが可能である。
【0052】
(3)
本実施形態の固定窓10は、
図8~9に示されるように、後側リップ部24の上方において枠体後側ピラー部14から車幅方向内側Y1に突出して車両前後方向Xに延びる上側リップ部28と、上側リップ部28の後端部28aと後側リップ部24の上端部24bとの間を連結するとともに後側リップ部24と上側リップ部28との間で車両後方X1から車幅方向内側Y1へリップ先端の方向が連続して変わるように延びる変遷リップ部26とを備えている。上側リップ部28の前端部28bと前側リップ部23の上端部23aは連結している。
【0053】
かかる構成によれば、固定窓10は、後側リップ部24の上方において枠体後側ピラー部14から車幅方向内側Y1に突出して車両前後方向Xに延びる上側リップ部28を備えている。この上側リップ部28の後端部28aは、後側リップ部24と上側リップ部28との間で車両後方X1から車幅方向内側Y1へリップ先端の方向が連続して変わるように延びる変遷リップ部26を介して後側リップ部24の上端部24bに連結されている。さらに、上側リップ部28の前端部28bと前側リップ部23の上端部23aは連結している。したがって、上側リップ部28の前端部28bおよび後端部28aの両方において他のリップ部(前側リップ部23および変遷リップ部26)と連結して高いシール性を維持することが可能である。そのため、固定窓10の上部のシール性を向上することが可能であり、固定窓10上方からの空気や音の侵入だけでなく、雨水などの水の侵入も防止することが可能であり、遮音性および防水性の向上が可能である。
【0054】
(4)
本実施形態の固定窓10では、
図5~7に示されるように、仕切壁部25は、連続的に当接可能な円弧状の外周辺を有する。この構成では、仕切壁部25の円弧状の外周辺がドア構成部材であるアウターレイン5b2の第1面5b3から第2面5b4にかけて連続的に当接することにより、シール性が向上し、その結果、遮音性のさらなる向上が可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用ドア
2 ドアパネル
5 ドアサッシュ
5b 後側ピラー部
5b2 アウターレイン
5b3 第1面
5b4 第2面
8 開口部
8b 狭い開口部
10 固定窓
11 枠体
12 ガラスプレート(透過性プレート)
13 枠体下部(下辺部)
14 枠体後側ピラー部(後辺部)
15 枠体前側ピラー部
21 角部
22 基部
23 前側リップ部
23a 上端部
24 後側リップ部
24a 末端部
24b 上端部
25 仕切壁部
26 変遷リップ部
28 上側リップ部
28a 後端部
28b 前端部