(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】RFID通信ユニット、制御方法及びRFID通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/59 20060101AFI20231129BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20231129BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H04B1/59
H04B5/02
G06K7/10 240
G06K7/10 268
G06K7/10 112
(21)【出願番号】P 2020092502
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】中野 善光
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-198187(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041179(WO,A1)
【文献】特開2010-170478(JP,A)
【文献】特開2019-164529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
H04B 5/02
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを介して複数の無線タグを検出するRFID通信ユニットにおいて、
前記複数のアンテナのそれぞれによって検出されることが期待される前記無線タグの内、まだ検出できていない前記無線タグの数を示す未検出タグ数を前記アンテナごとに推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記未検出タグ数に基づいて、前記複数のアンテナの中から駆動させるアンテナを選択する選択部と、を備えるRFID通信ユニット。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数のアンテナの中から、他のアンテナに比べて前記推定部によって推定された前記未検出タグ数が多いアンテナを優先して選択する請求項1に記載のRFID通信ユニット。
【請求項3】
前記複数のアンテナが前記無線タグを検出可能な検出可能圏内を、前記複数の無線タグが通過する通過期間において、前記複数のアンテナのうち1つのアンテナが前記無線タグとの1回以上の交信によって検出した前記無線タグの合計検出数を前記アンテナごとに記憶する記憶部を備え、
前記推定部は、前記記憶部に記憶された、前記通過期間において前記1つのアンテナが検出した前記合計検出数に基づいて、前記通過期間において前記1つのアンテナによって検出されることが予測される前記無線タグの数を示す予測合計タグ数を前記未検出タグ数として前記アンテナごとに推定し、
前記選択部は、前記複数のアンテナのうち前記予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナを選択する請求項1または2に記載のRFID通信ユニット。
【請求項4】
前記推定部は、前記複数のアンテナが前記無線タグを検出可能な検出可能圏内を、前記複数の無線タグが通過する通過期間中における、前記複数のアンテナのうち1つのアンテナによる前記無線タグとの1回以上の交信の結果に基づいて、前記通過期間において前記1つのアンテナによって検出可能な残りの前記無線タグの数を示す推定残存タグ数を前記未検出タグ数として前記アンテナごとに推定し、
前記選択部は、駆動中の前記アンテナの前記推定残存タグ数と、該駆動中のアンテナ以外の他のアンテナの前記未検出タグ数と、に基づいて、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えるか否かを判断する請求項1から3のいずれか1項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項5】
前記選択部は、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数よりも、前記他のアンテナの前記未検出タグ数が多い場合に、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えると判断する請求項4に記載のRFID通信ユニット。
【請求項6】
前記選択部は、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数よりも、前記他のアンテナの前記未検出タグ数が、所定数以上多い場合に、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えると判断する請求項4に記載のRFID通信ユニット。
【請求項7】
前記選択部によって選択された前記アンテナに対して、該アンテナによる前記無線タグとの交信を分割して行うためのスロット数を決定する交信制御部を備え、
前記交信の結果には、該交信にて決定された前記スロット数と、該スロット数のうち前記交信において衝突が発生した衝突発生数と、前記交信によって検出された前記無線タグの数を示す検出済タグ数と、が含まれており、
前記交信制御部は、前記選択部によって、前記他のアンテナに切り替えないと判断された場合に、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数に応じて、該駆動中のアンテナによる前記無線タグとの次の交信で採用される前記スロット数を変更する請求項4から6のいずれか1項に記載のRFID通信ユニット。
【請求項8】
複数のアンテナを介して複数の無線タグを検出するRFID通信ユニットの制御方法であって、
前記複数のアンテナのそれぞれによって検出されることが期待される前記無線タグの内、まだ検出できていない前記無線タグの数を示す未検出タグ数を前記アンテナごとに推定する推定ステップと、
前記推定ステップにて推定された前記未検出タグ数に基づいて、前記複数のアンテナの中から駆動させるアンテナを選択する選択ステップと、を含む制御方法。
【請求項9】
請求項1に記載のRFID通信ユニットとしてコンピュータを機能させるためのRFID通信プログラムであって、前記推定部及び前記選択部としてコンピュータを機能させるためのRFID通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID通信ユニット、制御方法及びRFID通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線タグと交信するための信号を送受信する複数のアンテナと、アンテナの組み合わせの動作を切り替えるコントローラと、複数のアンテナで受信された信号に基づき無線タグの識別情報を読み取るリーダと、を備える読取装置が開示されている。特許文献1に開示されている読取装置では、物品に付けられた無線タグの読み損ないを低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている読取装置では、無線タグの検出状況に関係なく、複数のアンテナの出力を一定間隔で切り替えて交信を行う。このため、あるアンテナの交信領域内の無線タグの検出が完了していても、アンテナの切り替えがすぐには行われず、アンテナは無駄な出力をし続ける期間が存在してしまい、無線タグの検出の効率が悪くなるという問題があった。本発明の一態様は、複数のアンテナによる複数の無線タグの検出効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一例に係るRFID通信ユニットは、複数のアンテナを介して複数の無線タグを検出するRFID通信ユニットにおいて、前記複数のアンテナのそれぞれによって検出されることが期待される前記無線タグの内、まだ検出できていない前記無線タグの数を示す未検出タグ数を前記アンテナごとに推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記未検出タグ数に基づいて、前記複数のアンテナの中から駆動させるアンテナを選択する選択部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、アンテナごとに推定した未検出タグ数に基づき、駆動させるアンテナを選択する。これにより、駆動させるアンテナの選択を最適化することができ、無線タグの検出効率を向上させることができる。
【0007】
前記選択部は、前記複数のアンテナの中から、他のアンテナに比べて前記推定部によって推定された前記未検出タグ数が多いアンテナを優先して選択してもよい。上記構成によれば、未検出タグ数が多いアンテナを優先して選択することにより、無線タグの検出漏れを効率的に低減することができる。
【0008】
前記RFID通信ユニットは、前記複数のアンテナが前記無線タグを検出可能な検出可能圏内を、前記複数の無線タグが通過する通過期間において、前記複数のアンテナのうち1つのアンテナが前記無線タグとの1回以上の交信によって検出した前記無線タグの合計検出数を前記アンテナごとに記憶する記憶部を備え、前記推定部は、前記記憶部に記憶された、前記通過期間において前記1つのアンテナが検出した前記合計検出数に基づいて、前記通過期間において前記1つのアンテナによって検出されることが予測される前記無線タグの数を示す予測合計タグ数を前記未検出タグ数として前記アンテナごとに推定し、前記選択部は、前記複数のアンテナのうち前記予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナを選択してもよい。
【0009】
上記構成によれば、記憶部に記憶された無線タグの合計検出数に基づいて推定された予測合計タグ数について、複数のアンテナのうち予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナが選択される。このため、記憶部に記憶された無線タグの合計検出数に基づいて、無線タグの検出漏れを効率的に低減することができる。
【0010】
前記推定部は、前記複数のアンテナが前記無線タグを検出可能な検出可能圏内を、前記複数の無線タグが通過する通過期間中における、前記複数のアンテナのうち1つのアンテナによる前記無線タグとの1回以上の交信の結果に基づいて、前記通過期間において前記1つのアンテナによって検出可能な残りの前記無線タグの数を示す推定残存タグ数を前記未検出タグ数として前記アンテナごとに推定し、前記選択部は、駆動中の前記アンテナの前記推定残存タグ数と、該駆動中のアンテナ以外の他のアンテナの前記未検出タグ数と、に基づいて、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えるか否かを判断してもよい。
【0011】
上記構成によれば、アンテナによる交信の結果に基づいて推定残存タグ数が推定される。また、推定残存タグ数と、駆動中のアンテナ以外の他のアンテナの未検出タグ数と、に基づいて、駆動させるアンテナが切り替えられるか否かが判断される。これにより、アンテナによる交信の結果に応じて、駆動させるアンテナを最適と推定されるアンテナに切り換えることができる。よって、無線タグの検出漏れを効率的に低減することができる。
【0012】
前記選択部は、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数よりも、前記他のアンテナの前記未検出タグ数が多い場合に、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えると判断してもよい。
【0013】
上記構成によれば、駆動中のアンテナの推定残存タグ数よりも、他のアンテナの未検出タグ数が多い場合に、駆動させるアンテナが他のアンテナに切り替えられる。よって、未検出タグ数が多い他のアンテナに切り替えられるため、無線タグの検出漏れを効率的に低減することができる。
【0014】
前記選択部は、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数よりも、前記他のアンテナの前記未検出タグ数が、所定数以上多い場合に、駆動させるアンテナを、前記駆動中のアンテナから前記他のアンテナに切り替えると判断してもよい。
【0015】
上記構成によれば、他のアンテナの未検出タグ数が、駆動中のアンテナの推定残存タグ数より多くなった時点で直ちに他のアンテナに切り替えるとは判断せず、その差が一定以上となるまでは、駆動中のアンテナの駆動を維持する。これにより、複数の無線タグの検出をスムーズに行うことができる。
【0016】
前記RFID通信ユニットは、前記選択部によって選択された前記アンテナに対して、該アンテナによる前記無線タグとの交信を分割して行うためのスロット数を決定する交信制御部を備え、前記交信の結果には、該交信にて決定された前記スロット数と、該スロット数のうち前記交信において衝突が発生した衝突発生数と、前記交信によって検出された前記無線タグの数を示す検出済タグ数と、が含まれており、前記交信制御部は、前記選択部によって、前記他のアンテナに切り替えないと判断された場合に、前記駆動中のアンテナの前記推定残存タグ数に応じて、該駆動中のアンテナによる前記無線タグとの次の交信で採用される前記スロット数を変更してもよい。
【0017】
上記構成によれば、スロット数を変更することにより、無線タグの数が多い場合であっても、交信において衝突が起こりにくくすることができ、複数の無線タグを効率的に検出することができる。
【0018】
本開示の一例に係る制御方法は、複数のアンテナを介して複数の無線タグを検出するRFID通信ユニットの制御方法であって、前記複数のアンテナのそれぞれによって検出されることが期待される前記無線タグの内、まだ検出できていない前記無線タグの数を示す未検出タグ数を前記アンテナごとに推定する推定ステップと、前記推定ステップにて推定された前記未検出タグ数に基づいて、前記複数のアンテナの中から駆動させるアンテナを選択する選択ステップと、を含む。
【0019】
本開示の各一例に係るRFID通信ユニットは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記RFID通信ユニットが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記RFID通信ユニットをコンピュータにて実現させるRFID通信プログラム及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、複数のアンテナによる複数の無線タグの検出効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係るRFID通信ユニットの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る物流管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示すRFID通信ユニットが備える4個のアンテナに関する稼動実績データの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示すRFID通信ユニットが備える各アンテナのN個の通過期間分の無線タグに係る合計検出数の平均値及び最頻値と、4個のアンテナに関する推定結果と、の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示すRFID通信ユニットが備える記憶部に記憶されているルックアップテーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図1に示すRFID通信ユニット1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示すRFID通信ユニットが備えるアンテナ選択部が実行する順序決定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示すRFID通信ユニットが備えるアンテナ選択部が実行する切替判断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図1に示すRFID通信ユニットが実行する切替判断処理の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0023】
§1.適用例
まず、
図2を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図2は、本実施形態に係る物流管理システム100の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、物流管理システム100は、RFID通信ユニット1と、複数のアンテナ2と、複数の無線タグ3と、ゲート4と、パレット5と、を備える。物流管理システム100では、部品または製品等の複数の物品が搬送されると共に各物品が無線タグ3を用いて管理される。
【0024】
RFID通信ユニット1は、例えばリーダライタであり、複数のアンテナ2を介して複数の無線タグ3を検出する。また、RFID通信ユニット1は、複数のアンテナ2を介して、交信制御部23の制御に基づき、無線タグ3との間で無線通信によりデータの読み出し及びデータの書き込みを行う。RFID通信ユニット1は、複数のアンテナ2を介して、無線タグ3から応答データを受信する。
【0025】
複数のアンテナ2は、それぞれ、ゲート4に設けられると共に、1つのRFID通信ユニット1に接続されている。複数のアンテナ2は無線タグ3を検出する。無線タグ3は、例えば生産現場においてトレーサビリティの向上のために、管理対象の物品に取り付けられる。無線タグ3が取り付けられた複数の物品はパレット5に積載される。複数の物品が積載されたパレット5がフォークリフトによってゲート4を通過するように搬送される。これにより、複数の無線タグ3はゲート4を通過する。
【0026】
ゲート4の周辺には、複数のアンテナ2が無線タグ3を検出可能な検出可能圏が形成される。パレット5に積載された物品に取り付けられた無線タグ3の一群は、該検出可能圏内を通過する。
【0027】
なお、アンテナと一体となっているリーダライタがゲート4に複数設けられてもよい。この場合、複数のリーダライタがハブを介して互いに通信可能に接続される。複数のリーダライタのうちの1台が、他のリーダライタをスレーブとするマスタリーダライタであり、該マスタリーダライタが、本開示のRFID通信ユニット1に該当する。
【0028】
RFID通信ユニット1がこのようなマスタリーダライタである場合、マスタリーダライタは、少なくとも1つのアンテナ2を備えていてもよく、他のリーダライタも、少なくとも1つのアンテナ2を備えてもよい。マスタリーダライタの内部にアンテナ選択部22があり、自身のアンテナ2や他のスレーブリーダライタのアンテナ2が選択された際に、マスタリーダライタは、他の各リーダライタの交信制御部に指示する。
【0029】
§2.構成例
図1は、本実施形態に係るRFID通信ユニット1の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
<RFID通信ユニット1の構成>
RFID通信ユニット1は、制御部10及び記憶部11を備える。制御部10は、RFID通信ユニット1を制御する。制御部10は、推定部21と、アンテナ選択部22と、交信制御部23と、を有する。記憶部11は、RFID通信ユニット1の制御に用いるデータ及びプログラムを記憶する。記憶部11は、稼動実績データ41と、推定結果42と、ルックアップテーブル43と、交信結果44と、を記憶する。
【0031】
推定部21は、複数のアンテナ2のそれぞれによって検出されることが期待される無線タグ3の内、まだ検出できていない無線タグ3の数を示す未検出タグ数をアンテナ2ごとに推定する。推定部21は、推定した未検出タグ数を推定結果42として記憶部11に記憶する。アンテナ選択部22は、推定部21によって推定された未検出タグ数に基づいて、複数のアンテナ2の中から駆動させるアンテナ2を選択する。
【0032】
交信制御部23は、アンテナ2を介する無線タグ3との交信に関する制御を行う。交信制御部23は、各アンテナ2を制御してアンチコリジョン処理を実施しながら、各アンテナ2を介して無線タグ3と交信する。アンチコリジョン処理は、スロットを利用して複数の無線タグ3が出力する信号の衝突を低減し、RFID通信ユニット1が複数の無線タグの信号を読み取り可能とする処理である。該スロットは、信号の読み出し処理が行われるタイミングを時分割した複数の区分である。無線タグ3は、任意のスロットのタイミングをランダムに選択してアンテナ2に対し交信する。
【0033】
図3は、
図1に示すRFID通信ユニット1が備える4個のアンテナ2に関する稼動実績データ41の一例を示す図である。
図3に示すように、稼動実績データ41は、無線タグ3の一群がゲート4を通過するN個の通過期間でのデータである。稼動実績データ41は、交信制御部23によって交信ごとに随時更新される。
【0034】
稼動実績データ41には、アンテナ2ごとに1つの通過期間での無線タグ3の合計検出数と、1つの通過期間での全てのアンテナ2における無線タグ3の合計検出数の総和と、が含まれている。なお、1つの通過期間は、無線タグ3の一群がゲート4を1回通過する期間である。稼動実績データ41は、例えば、リングバッファによって構成されてもよい。また、稼動実績データ41は、上書きされないよう日付及び時間の少なくとも一方と共に記憶部11に恒久的に記憶されてもよい。
【0035】
交信制御部23は、有効な合計検出数のみを稼動実績データ41に記憶するよう、無線タグ3の合計検出数の正しい数値を物流管理システム100の上位の装置から受信し、受信した合計検出数のみを稼動実績データ41に記憶してもよい。つまり、交信制御部23は、物流管理システム100の上位の装置から受信した合計検出数に一致する、交信結果44に含まれる検出済タグ数のみを稼動実績データ41に記録する。
【0036】
交信制御部23は、稼動実績データ41において、過去の合計検出数のうち新しい合計検出数の順に重み付けしてもよい。また、交信制御部23は、稼動実績データ41において、過去の合計検出数を、合計検出数の総和別にグループ化してもよい。例えば、交信制御部23は、合計検出数の総和が32枚の場合と合計検出数の総和が64枚の場合とでグループ分けし、合計検出数をグループ別に記憶し、グループ別に優先付けして合計検出値を選択してもよい。
【0037】
図4は、各アンテナ2のN個の通過期間分の無線タグ3に係る合計検出数の平均値及び最頻値と、4個のアンテナ2に関する推定結果42と、の一例を示す図である。交信制御部23は、稼動実績データ41から各アンテナ2のN個の通過期間分の無線タグ3に係る合計検出数を参照し、該合計検出数の平均値及び最頻値を統計データ421として記憶部11に記憶する。また、推定結果42は、推定部21によって推定された後述する予測合計タグ数及び推定残存タグ数である。推定結果42は、推定部21によって交信ごとに随時更新される。
【0038】
図5は、ルックアップテーブル43の一例を示す図である。ルックアップテーブル43には、Q値及びスロット数に対応して、衝突発生数ビン、推定残存タグ数ビン及び推定残存タグ数の代表値が記憶されている。ビンとは、値にしたがって対象をグループ分けして一般化及び比較を行うための数値範囲である。
【0039】
衝突発生数ビンは、衝突発生数の数値範囲を示すものである。推定残存タグ数ビンは、推定される推定残存タグ数の数値範囲を示すものである。推定残存タグ数の代表値は、推定残存タグ数ビンに含まれる数値のうちの代表の値を示すものである。推定残存タグ数の代表値は、例えば、推定残存タグ数ビンの中央値である。推定部21は、衝突発生数ビンと、推定残存タグ数ビンと、推定残存タグ数の代表値と、に基づいて、推定残存タグ数を推定する。
【0040】
<無線タグ3>
無線タグ3は、タグアンテナ部と、タグ無線通信ICと、を有する。該タグアンテナ部は、アンテナ2からの電波を、該タグ無線通信IC等を動作させる電力源として受け取る。タグアンテナ部は、アンテナ2から受信した電波を無線信号に変換してタグ無線通信ICに送信すると共に、タグ無線通信ICからの無線信号を電波に変換してアンテナ2に送信する。タグアンテナ部は、アンテナ2への応答の際に無線タグ3の識別情報をアンテナ2に送信する。
【0041】
複数の無線タグ3が同一のスロットによってアンテナ2と交信した場合、衝突が発生して交信が正常に行われない。衝突が発生することなくアンテナ2に交信できた無線タグ3は、インベントリ済みフラグ(Inventoried Flag)を立て、電力源が切れるまでアンテナ2とは交信しない。
【0042】
§3.動作例
図6は、RFID通信ユニット1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。具体的には、
図6に示されている一連の処理は、複数のアンテナ2を介して、RFID通信ユニット1が複数の無線タグ3と交信するためのマルチアクセス処理である。マルチアクセス処理は、例えば、無線タグ3の一群がゲート4を1回通過する間の1つの通過期間につき、RFID通信ユニット1によって実行される。
【0043】
<RFID通信ユニット1が実行する処理>
まず、推定部21は、記憶部11に記憶された稼動実績データ41から、1つの通過期間において1つのアンテナ2が検出した無線タグ3の合計検出数を参照する。後述するS202及びS203のように、推定部21は、該合計検出数に基づいて、予測合計タグ数を未検出タグ数としてアンテナ2ごとに推定する。推定部21は、推定した予測合計タグ数を推定結果42として記憶部11に記憶する。予測合計タグ数は、1つの通過期間において1つのアンテナ2によって検出されることが予測される無線タグ3の数を示す数値範囲または数値である。
【0044】
推定部21が予測合計タグ数を推定した後、S101において、アンテナ選択部22は、複数のアンテナ2の中から、交信のために駆動させるアンテナ2を選択する。一例として、アンテナ選択部22は、予め固定されている順序にしたがって駆動させるアンテナ2を選択してもよい。他の例では、アンテナ選択部22は、マルチアクセス処理開始時に、ゲート4に設けられている複数のアンテナ2をどの順序で駆動させるのかを決定するための順序決定処理を実行してもよい。
【0045】
順序決定処理では、アンテナ選択部22は、各アンテナ2の未検出タグ数として、推定結果42から各アンテナ2の予測合計タグ数を読み出す。アンテナ選択部22は、例えば、未検出タグ数が多い順にアンテナ2の駆動順序を決定する。順序決定処理については、
図7を参照しながら後に詳述する。S102において、交信制御部23は、アンテナ選択部22によって選択されたアンテナ2を駆動させる。
【0046】
交信制御部23がアンテナ2を駆動させた後、S103において、交信制御部23は、駆動させるアンテナ2の未検出タグ数に応じて、駆動させるアンテナ2に設定するQ値を算出する。例えば、交信制御部23は、アンテナ2の未検出タグ数の各数値範囲または各数値とQ値とが対応付けられた対応付けデータからQ値を算出する。
【0047】
該対応付けデータは、記憶部11に記憶されており、検出可能圏内にある無線タグ3の数に対して、衝突発生が抑えられると共に、交信時間が短くなる最適なQ値がシミュレーションによって算出されたデータである。
【0048】
Q値は、アンチコリジョン処理が行われる際に、複数の無線タグ3の各々が選択可能なスロット数を指定するための数値である。該スロット数は、アンテナ選択部22によって選択されたアンテナ2による無線タグ3との交信を分割して行うための数値である。交信制御部23は、Q値を算出すると共に、アンテナ選択部22によって選択されたアンテナ2に対して、スロット数を2Qに決定する。
【0049】
例えば、交信制御部23は、Q値に基づいて駆動させるアンテナ2に採用されるスロット数が、該アンテナ2の未検出タグ数以上となるように、Q値を算出してもよい。ここで交信制御部23によって参照されるアンテナ2の未検出タグ数は、マルチアクセス処理の中でS104の交信が1度も実施されていない時点では、該アンテナ2につき推定された予測合計タグ数である。交信が1度以上実施された時点では、該アンテナ2につきS106で推定された推定残存タグ数が未検出タグ数として参照される。
【0050】
S104において、交信制御部23は、駆動させたアンテナ2を介して検出可能圏内の無線タグ3と交信する。具体的には、交信制御部23は、S103で算出されたQ値にしたがって設定されたスロットごとに、各無線タグ3と通信して、無線タグ3が保持する情報を取得したり、無線タグ3に情報を書き込んだりする。
【0051】
S105において、交信制御部23は、交信結果44を生成し、記憶部11に記憶する。具体的には、交信制御部23は、全スロットを通じて、衝突発生数及び検出済タグ数を交信結果44として記憶部11に記憶する。衝突発生数は、スロット数のうち交信において衝突が発生した回数を示す数値であり、検出済タグ数は、交信によって検出された無線タグ3の数を示す数値である。交信結果44には、交信にて決定されたスロット数と、衝突発生数と、検出済タグ数と、が含まれている。交信結果44は、交信制御部23によって交信ごとに随時更新される。
【0052】
また、交信制御部23は、1つの通過期間分の交信結果44における検出済タグ数を稼動実績データ41として記憶部11に記憶する。なお、交信制御部23が今回の交信であるアンテナ2を使用する場合、交信制御部23は、該アンテナ2の前回の交信の交信結果44に基づいて、今回の交信で該アンテナ2に採用する最適なQ値を動的に算出してもよい。
【0053】
S106において、推定部21は、交信結果44に基づいて、推定残存タグ数を推定する。推定残存タグ数は、検出可能圏内を、複数の無線タグ3が通過する通過期間中における、複数のアンテナ2のうち1つのアンテナによる無線タグ3との1回以上の交信の結果に基づいて、通過期間において1つのアンテナ2によって検出可能な残りの無線タグ3の数を示す数値である。
【0054】
推定部21は、例えば、予測合計タグ数と、1つの通過期間分の交信結果44における検出済タグ数と、に基づいて仮のタグ数を設定する。具体的には、推定部21は、予測合計タグ数から該検出済タグ数を差し引いた数値を仮のタグ数として設定する。推定部21は、ルックアップテーブル43を参照して、S104で実行された交信時に採用されたQ値と衝突発生数とに対応する推定残存タグ数ビンを推定する。
【0055】
推定部21は、推定した推定残存タグ数ビンの数値範囲に上記仮のタグ数が含まれている場合、該仮のタグ数が確からしいと判断して該仮のタグ数を推定残存タグ数としてセットする。推定部21は、推定した推定残存タグ数ビンの数値範囲に上記仮のタグ数が含まれない場合、ルックアップテーブル43を参照して、Q値と衝突発生数とに対応する推定残存タグ数の代表値を推定残存タグ数としてセットする。
【0056】
S107において、推定部21は、駆動しているアンテナ2の未検出タグ数を、S106で推定した推定残存タグ数に更新する。つまり、推定部21は、推定残存タグ数を未検出タグ数としてセットする。推定部21は、推定残存タグ数を推定結果42として記憶部11に記憶する。
【0057】
S108において、制御部10は、マルチアクセス処理を停止する停止条件が成立しているか否かを判断する。停止条件は、例えば、物流管理システム100の上位の装置から送信されたマルチアクセス処理の終了指示が、RFID通信ユニット1によって受信されたことによって成立してもよい。
【0058】
あるいは、停止条件は、RFID通信ユニット1に予め設定されているタイマによって、タイムアウトが発生したことによって成立してもよい。制御部10は、停止条件が成立したと判断した場合(S108にてYES)、一連のマルチアクセス処理を終了する。制御部10は、停止条件が成立していないと判断した場合(S108にてNO)、S109に進む。
【0059】
S109において、アンテナ選択部22は、駆動させるアンテナ2を切り替える切替条件が成立するか否かを判断する切替判断処理を実行する。一例として、切替判断処理では、アンテナ選択部22は、S107で更新された現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数よりも、他のアンテナの未検出タグ数が、所定数以上多い場合に、切替条件が成立すると判断してもよい。切替判断処理については、
図8を参照しながら後に詳述する。
【0060】
つまり、アンテナ選択部22は、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数と、該駆動中のアンテナ2以外の他のアンテナの未検出タグ数と、に基づいて、駆動させるアンテナ2を、駆動中のアンテナ2から他のアンテナ2に切り替えるか否かを判断する。
【0061】
上記構成によれば、アンテナ2による交信の結果に基づいて推定残存タグ数が推定される。また、推定残存タグ数と、駆動中のアンテナ2以外の他のアンテナ2の未検出タグ数と、に基づいて、駆動させるアンテナ2が切り替えられるか否かが判断される。これにより、アンテナ2による交信の結果に応じて、駆動させるアンテナ2を最適と推定されるアンテナ2に切り換えることができる。よって、無線タグ3の検出漏れを効率的に低減することができる。
【0062】
アンテナ選択部22が、切替条件が成立しないと判断した場合(S109にてNO)には、S103に戻り、同じアンテナにつき、S103以降の処理が繰り返される。S109にてNO、つまり、アンテナ選択部22によって、他のアンテナ2に切り替えないと判断された場合を考える。この場合、交信制御部23は、S103において、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数に応じて、該駆動中のアンテナ2による無線タグ3との次の交信で採用されるスロット数を変更する。
【0063】
ここで、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数と、該駆動中のアンテナ2によって直近に実施された交信の結果としての交信結果44における検出済タグ数と、の差が一定数未満である場合を考える。この場合、アンテナ選択部22は、切替条件が成立しないと判断し、交信制御部23は、該駆動中のアンテナ2による無線タグ3との次の交信で採用されるスロット数を増加させる。
【0064】
上記構成によれば、スロット数を変更することにより、無線タグ3の数が多い場合であっても、交信において衝突が起こりにくくすることができ、複数の無線タグ3を効率的に検出することができる。アンテナ選択部22が、切替条件が成立すると判断した場合(S109にてYES)には、S110に進む。
【0065】
S110において、交信制御部23は、アンテナ選択部22の判断にしたがって、現在駆動中のアンテナ2を停止する。交信制御部23がアンテナ2を停止した後、S111において、アンテナ選択部22は、複数のアンテナ2の中から、次の交信で駆動させるアンテナ2を選択する。
【0066】
例えば、アンテナ選択部22は、上述の切替条件が成立した際、未検出タグ数を有するアンテナ2のうち、最多の未検出タグ数を有するアンテナ2を選択してもよい。この後、S102に戻って、交信制御部23は、S111におけるアンテナ選択部22の選択にしたがって、アンテナ選択部22によって選択されたアンテナ2を駆動させ、S102以降の処理を繰り返す。
【0067】
以上により、RFID通信ユニット1は、アンテナ2ごとに推定した未検出タグ数に基づき、駆動させるアンテナ2を選択する。これにより、駆動させるアンテナ2の選択を最適化することができ、無線タグ3の検出効率を向上させることができる。また、ゲート4を通過する無線タグ3の移動速度が速い場合や、無線タグ3の個数が多い場合に時間内に検出できずに検出漏れが発生することを低減することができる。
【0068】
<アンテナ選択部22が実行する順序決定処理>
図7は、アンテナ選択部22が実行する順序決定処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示されている一連の処理は、無線タグ3の一群がゲート4を1回通過する間の1つの通過期間の開始時に、S101において、アンテナ選択部22が、複数のアンテナ2の駆動順序を決定する処理である。
【0069】
S201において、アンテナ選択部22は、稼動実績データ41から、過去のN個の通過期間において、各通過期間における無線タグ3の合計検出数をアンテナ2ごとに取得する。ここで、記憶部11は、稼動実績データ41として、通過期間において、複数のアンテナ2のうち1つのアンテナ2が無線タグ3との1回以上の交信によって検出した無線タグ3の合計検出数をアンテナ2ごとに記憶している。
【0070】
S202において、アンテナ選択部22は、アンテナ2ごとにN個の通過期間分の無線タグ3の合計検出数を統計処理することにより統計値を取得する。該統計値としては、アンテナ2ごとのN個の通過期間分の無線タグ3に係る合計検出数の平均値、中央値及び最頻値がある。例えば、平均値及び最頻値は、
図4に示す統計データ421である。
【0071】
S203において、アンテナ選択部22は、各アンテナ2の統計値に基づいて、各アンテナ2の予測合計タグ数を取得する。アンテナ選択部22は、統計データ421において各アンテナ2による無線タグ3の検出の平均値を予測合計タグ数として取得してもよく、統計データ421において各アンテナ2による無線タグ3の検出の最頻値を予測合計タグ数として取得してもよい。
【0072】
図4において、推定データ422は、各アンテナ2による無線タグ3の検出の平均値を予測合計タグ数とした場合のデータであり、推定データ423は、各アンテナ2による無線タグ3の検出の最頻値を予測合計タグ数とした場合のデータである。なお、アンテナ選択部22は、各アンテナ2による無線タグ3の検出の中央値を予測合計タグ数として取得してもよい。また、アンテナ選択部22は、各アンテナ2による無線タグ3の検出の平均値、最頻値及び中央値のうち少なくとも2つを組み合わせて予測合計タグ数を算出することにより、予測合計タグ数を取得してもよい。
【0073】
S204において、アンテナ選択部22は、予測合計タグ数が多い順にアンテナ2の駆動順序を決定する。例えば、
図4の推定データ422の場合、アンテナ選択部22は、アンテナ#2、アンテナ#3、アンテナ#4及びアンテナ#1の順を駆動順序として決定する。一方、
図4の推定データ423の場合、アンテナ選択部22は、アンテナ#2、アンテナ#1、アンテナ#3及びアンテナ#4の順を駆動順序として決定する。
【0074】
つまり、アンテナ選択部22は、複数のアンテナ2の中から、他のアンテナ2に比べて推定部21によって推定された未検出タグ数が多いアンテナ2を優先して選択する。よって、未検出タグ数が多いアンテナ2を優先して選択することにより、無線タグ3の検出漏れを効率的に低減することができる。
【0075】
S205において、アンテナ選択部22は、各アンテナ2の予測合計タグ数を、各アンテナ2の未検出タグ数としてセットする。S206において、アンテナ選択部22は、駆動順序が1番のアンテナ2を選択する。
【0076】
このように、アンテナ選択部22は、複数のアンテナ2のうち予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナ2を選択する。つまり、記憶部11に記憶された無線タグ3の合計検出数に基づいて推定された予測合計タグ数について、複数のアンテナ2のうち予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナ2が選択される。このため、記憶部11に記憶された無線タグ3の合計検出数に基づいて、無線タグ3の検出漏れを効率的に低減することができる。
【0077】
<アンテナ選択部22が実行する切替判断処理>
図8は、アンテナ選択部22が実行する切替判断処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示されている一連の処理は、無線タグ3の一群がゲート4を1回通過する間の1つの通過期間につき、S109において、アンテナ選択部22が、駆動させるアンテナ2を切り替える切替条件が成立するか否かを判断する処理である。
【0078】
S301において、アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2について、最新の未検出タグ数を取得する。つまり、S106にて推定部21が推定した推定残存タグ数を未検出タグ数として取得する。S302において、アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2以外の他のアンテナ2について、最新の未検出タグ数を取得する。
【0079】
つまり、他のアンテナ2についてマルチアクセス処理の中でS104の交信が1度も実施されていない場合、アンテナ選択部22は、他のアンテナ2について、予測合計タグ数を未検出タグ数として取得する。一方、他のアンテナ2についてマルチアクセス処理の中で交信が1度以上実施されている場合、アンテナ選択部22は、他のアンテナ2について、推定残存タグ数を未検出タグ数として取得する。
【0080】
S303において、アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2の未検出タグ数と、現在駆動中のアンテナ2以外の他のアンテナ2の未検出タグ数と、を比較する。これに加えて、アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数を超える未検出タグ数が推定された他のアンテナ2があるか否かを判断する。
【0081】
アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数を超える未検出タグ数が設定された他のアンテナ2がないと判断した場合(S303においてNO)、S304に進む。S304において、アンテナ選択部22は、切替条件が成立しないと判断する。
【0082】
アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数を超える未検出タグ数が設定された他のアンテナ2があると判断した場合(S303においてYES)、S305に進む。S305において、アンテナ選択部22は、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数と、他のアンテナ2の未検出タグ数と、の差が予め定められた所定数以上であるか否かを判断する。
【0083】
アンテナ選択部22が、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数と、他のアンテナ2の未検出タグ数と、の差が所定数より小さいと判断した場合(S305においてNO)、S304に進む。現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数は、上述した推定残存タグ数であり、他のアンテナ2の未検出タグ数は、予測合計タグ数または推定残存タグ数である。
【0084】
一方、アンテナ選択部22が、現在駆動中のアンテナ2の最新の未検出タグ数と、他のアンテナ2の未検出タグ数と、の差が所定数以上であると判断した場合(S305においてYES)、S306に進む。S306において、アンテナ選択部22は、切替条件が成立すると判断する。
【0085】
以上により、アンテナ選択部22は、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数よりも、他のアンテナ2の未検出タグ数が多い場合に、駆動させるアンテナ2を、駆動中のアンテナ2から他のアンテナ2に切り替えると判断する。よって、駆動中のアンテナ2から未検出タグ数が多い他のアンテナ2に切り替えられるため、無線タグ3の検出漏れを効率的に低減することができる。
【0086】
また、アンテナ選択部22は、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数よりも、他のアンテナ2の未検出タグ数が、所定数以上多い場合に、駆動させるアンテナ2を、駆動中のアンテナ2から他のアンテナ2に切り替えると判断する。
【0087】
上記構成によれば、他のアンテナ2の未検出タグ数が、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数より多くなった時点で直ちに他のアンテナ2に切り替えるとは判断せず、その差が一定以上となるまでは、駆動中のアンテナ2の駆動を維持する。これにより、複数の無線タグ3の検出をスムーズに行うことができる。
【0088】
アンテナ切替処理に伴うオーバーヘッドが発生するため、駆動中のアンテナ2の推定残存タグ数と、他のアンテナ2の未検出タグ数と、の差が小さい場合、アンテナ切替処理を行わない方が有効な場合がある。このため、S305の処理を行うことが好ましい。
【0089】
<切替判断処理の具体例>
図9は、切替判断処理の様子を示す模式図である。S101において、
図9の521に示すように、4つのアンテナ2の未検出タグ数のうちアンテナ#3の未検出タグ数が最も多いときにおいて、アンテナ選択部22がアンテナ#3を最初に選択した場合を考える。この場合、S104において、交信制御部23がアンテナ#3を介して無線タグ3と交信した結果、交信結果44が
図9の522に示す結果となったとする。
【0090】
図9の522に示すように、例えば、N個のスロットのうち0個目,2個目,N-1個目のスロットで衝突が発生し、N個のスロットのうち1個目,N個目で無線タグ3からの応答なし、N個のスロットのうちN-2個目で無線タグ3からの応答ありとする。この場合、S106において、推定部21は、現在のQ値及び衝突発生数から、推定残存タグ数を未検出タグ数としてセットする。推定部21による推定結果42が
図9の523に示す結果になったとする。
図9の523でのアンテナ#3の未検出タグ数が、
図9の521でのアンテナ#3の未検出タグ数より減少している。
【0091】
そして、アンテナ#2の未検出タグ数が、アンテナ#3の未検出タグ数より大きくなる。このとき、アンテナ#2の未検出タグ数と、アンテナ#3の未検出タグ数と、の差が所定数以上である場合、アンテナ選択部22は、次の交信でアンテナ#2を選択する。交信制御部23がアンテナ#2を介して無線タグ3と交信した結果、交信結果44が
図9の524に示す結果となる。
【0092】
図9の524に示す結果では、N個のスロットのうち0個目,2個目のスロットで衝突が発生し、N個のスロットのうち1個目,N個目で無線タグ3からの応答なし、N個のスロットのうちN-1個目,N-2個目で無線タグ3からの応答ありとなる。よって、交信制御部23がアンテナ#3を介して無線タグ3と交信する際に、衝突の発生が抑えられる。アンテナ選択部22による切換判断処理は、S108の停止条件が成立するまで繰り返される。
【0093】
§4.変形例
S101において、アンテナ選択部22が、複数のアンテナ2のうち予測合計タグ数が多い順に、駆動させるアンテナ2を選択すると共に、S109において、アンテナ選択部22が、全てのアンテナ2が一巡するまでアンテナ2の切替を行わない場合を考える。この場合、交信制御部23は、全てのアンテナ2をそれぞれ1回ずつ用いて無線タグ3と交信する。
【0094】
全てのアンテナ2が一巡した場合、S101において、アンテナ選択部22は、最新の推定残存タグ数が最も多いアンテナ2を動的に選択してもよい。これにより、RFID通信ユニット1は、通過期間における物品の搬送状況をリアルタイムで把握することができる。この方法は、パレット5への物品の積まれ方が毎回変化する生産現場では、特に有効である。
【0095】
パレット5への物品の積まれ方が毎回変化する場合であっても、推定部21は、通過期間におけるアンテナ2ごとの推定残存タグ数を正確に推定することができる。よって、アンテナ選択部22は、最適なアンテナ2への切り替えを正確に早く行うことができる。
【0096】
〔ソフトウェアによる実現例〕
RFID通信ユニット1の制御ブロック(特に推定部21、アンテナ選択部22及び交信制御部23)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0097】
後者の場合、RFID通信ユニット1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0098】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる構成についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 RFID通信ユニット
2 アンテナ
3 無線タグ
10 制御部
11 記憶部
21 推定部
22 アンテナ選択部
23 交信制御部
41 稼動実績データ
42 推定結果
43 ルックアップテーブル
44 交信結果
100 物流管理システム