(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】鳥獣忌避装置
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20231129BHJP
【FI】
A01M29/32
(21)【出願番号】P 2020098709
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 泰啓
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215193(JP,U)
【文献】特開平7-99876(JP,A)
【文献】特開2012-223180(JP,A)
【文献】実開平5-20583(JP,U)
【文献】実開昭56-20486(JP,U)
【文献】実開昭50-100042(JP,U)
【文献】特開2011-100(JP,A)
【文献】特開2013-90627(JP,A)
【文献】特開2002-34433(JP,A)
【文献】特開2020-92629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/32
A01M 29/26
A01M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の薄膜片が複数配設され、全方向もしくは所定方向に放電可能な放電体と、
電圧を印加して前記放電体を放電させる放電制御手段と、
前記放電制御手段に設けられ、前記電圧が印加されてコロナ放電を発生させる2つのコロナ放電電極と、
を備え、前記放電体を放電させることで、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、
ことを特徴とする鳥獣忌避装置。
【請求項2】
前記2つのコロナ放電電極の間隔を調整可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の鳥獣忌避装置。
【請求項3】
前記鳥獣を検知する検知手段を備え、
前記放電制御手段は、前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記放電体を放電させる、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鳥獣忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電感覚を有するカラスなどの鳥獣による有害行動を防止するための鳥獣忌避装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラス等の鳥獣によってゴミ集積所が荒らされたり、農作物が食べられたりする被害への対策は、永年の課題となっている。特に、電力事業者においては、カラスによって電柱等に営巣されると、巣が電線に触れて停電を引き起こすおそれがあるため、営巣の有無を定期的に点検して、発見した場合には巣を撤去しなければならず、多大な労力と費用を要している。
【0003】
このため、このようなカラス等による被害を防止するために、従来から様々な忌避手段が考案されている。例えば、光が反射するテープが揺れ動くことでカラスを忌避したり、透明または半透明の線体がテープ状の支持体に多数取り付けられ、線体が揺れ動くことでカラスを忌避したりする装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、並列に配設した2つの電極の一方に電圧を印加し他方を接地することで、両電極を跨るように触れた鳥類に電気ショックを与える、という装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3540270号公報
【文献】実用新案登録第3210518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラスは知能が高いことで知られており、従来の忌避方法では、当初は忌避効果があっても、時間の経過とともに慣れてしまい、忌避効果が低下してしまう、という問題があった。すなわち、見えるものや聞こえるもの、臭うもの、あるいは触るものは、カラスが認識、特定できるため、特許文献1、2に記載の忌避装置などでは、時間の経過とともに危害を受けないと認識したり、危害を避けるための方法を見出したりし、忌避効果が低下してしまう。
【0006】
一方、カラスなどはあらゆる場所に現れる可能性があるため、忌避装置をあらゆる場所に設置できることが求められる。このため、持ち運びや設置がしやすく、かつ、設置スペースを小さく抑えられるように、コンパクトな忌避装置が望ましい。
【0007】
そこでこの発明は、忌避効果を持続可能で、かつ、コンパクト化が可能な鳥獣忌避装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、授産施設においては、障がいを抱える方々にとって実施可能な作業が限られること等から、作業所の健全な経営に必要な作業が確保できず、経営破たんする作業所が発生する等の社会問題が発生している。このため、当技術のうち障がいを抱える方々にとって実施可能な作業を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題に取り組むべく、本願発明者は、カラスの生態について調査したところ、カラスの鼻毛の毛根周囲には規則的に並んだ感覚受容体があり、その受容体が帯電等による感覚を受容していることが専門家により指摘されていることを知った。そこで、本願発明者らがカラスに対して放電照射を与える実験を行ったところ、水浴び等により鼻毛が濡れて帯電しにくくなっているカラスを除き、通常の状態のカラスが放電を嫌がり、逃飛行動をとることが確認された。また、実験結果の考察により、カラスが嫌うのは電位の立ち上がり速度の速いスパイク状の放電であることがわかった。また、子連れのカラスのつがいは、子どもを置き去りにしてまで逃飛行動をとらないことも確認され、放電による忌避方法は、鳥獣の損傷には該当せず、鳥獣保護法に抵触しないことが確認された。
【0010】
一方、導電性の薄膜片は電気抵抗が低下する等の特性を有し、電気抵抗が少なく、電子の動きが抑制されにくい導電性の薄膜片の端部からは、電子の放出(放電)がなされやすいという特性を有する。これは、導電性の薄膜片の光沢を有する表面の原子配列が一様となっていることにより生じると考えられるが、その特性から導電性の薄膜片を用いることで、カラスが嫌う放電を行えることが確認された。
【0011】
ただし、導電性の薄膜片からなる放電体の電位が高まると、放電させる装置本体内の電位が高まり、放電時間等の制御装置に誤作動が発生する問題が生じ得る。さらに、放電体の電位が高まると、緩やかな電位変化となりスパイク状の電位変化が生じにくく、カラス等の忌避行動への効果が低下するおそれがある。
【0012】
このようなカラスの生態や習性と導電性の薄膜片の特性を利用し、上記課題を解決するために、請求項1の発明は、導電性の薄膜片が複数配設され、全方向もしくは所定方向に放電可能な放電体と、電圧を印加して前記放電体を放電させる放電制御手段と、前記放電制御手段に設けられ、前記電圧が印加されてコロナ放電を発生させる2つのコロナ放電電極と、を備え、前記放電体を放電させることで、帯電感覚を有するカラスを含む鳥獣を刺激する、ことを特徴とする鳥獣忌避装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鳥獣忌避装置において、前記2つのコロナ放電電極の間隔を調整可能となっている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鳥獣忌避装置において、前記鳥獣を検知する検知手段を備え、前記放電制御手段は、前記検知手段で前記鳥獣が検知されると前記放電体を放電させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、放電を嫌がるカラスなどの習性を利用して、放電体を放電させることにより、本鳥獣忌避装置の周辺にいるカラスなどの帯電感覚を刺激する。これにより、カラスなどが放電区域に侵入するのを防止、抑制したり、放電区域に留まることを防止、抑制したりすることが可能となる。このため、被害が予想される場所やその周辺において、本鳥獣忌避装置による放電を行うことで、鳥獣による被害を効果的に防止、抑制することが可能となる。また、放電はカラスなどの帯電感覚を刺激するものの、その気中伝達速度が速いため、カラスなどは本鳥獣忌避装置を認識、特定することができず、本鳥獣忌避装置による忌避効果を持続することが可能となる。
【0016】
また、放電体を放電させるための電圧がコロナ放電電極にも印加されて、コロナ放電が発生されるため、放電制御手段において過電圧が発生することによる不具合を防止、抑制することが可能となる。すなわち、放電体からの放電量に対して放電制御手段からの供給電気量が上回ると(放電量が少ないと)、放電制御手段において過電圧が発生し、電荷の上昇によって周辺のマイコンなどが誤動作するおそれがある。しかしながら、コロナ放電によって放電制御手段の電位が低下するため、マイコンなどが誤動作することが防止、抑制され、この結果、マイコンなどを近接して配置し、本鳥獣忌避装置をコンパクト化することが可能となる。
【0017】
しかも、放電体に蓄えられた電位がコロナ放電によって急激に低下し、この電位の急低下が鳥獣に伝搬することで、鳥獣をより刺激して忌避効果を高めることが可能となる。
【0018】
さらに、全方向もしくは所定方向に放電可能な放電体は、導電性の薄膜片が複数配設されただけであるため、構成が簡易で、授産施設で制作することが可能であるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、2つのコロナ放電電極の間隔が調整可能なため、印加される電圧や設置環境などに応じて2つのコロナ放電電極の間隔を調整することで、適正にコロナ放電を発生させて、過電圧による不具合を適正・確実に防止、抑制することが可能となる。すなわち、放電させる装置本体内の電位の高まりによる制御装置の誤作動を防止し、また、放電体のスパイク状の電位変化を継続的に発生させ、カラスの忌避行動への効果を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、鳥獣を検知したとき、すなわち、鳥獣が現れたときにのみ放電体を放電させるため、鳥獣に突発的な刺激を与えて忌避効果を向上させることが可能になるとともに、鳥獣が刺激に慣れるのを防いで忌避効果をより持続させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態に係わる鳥獣忌避装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の鳥獣忌避装置の装置本体の蓋を外した概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A断面図(ハッチング省略)である。
【
図4】
図1の鳥獣忌避装置における放電タイミングを示す図(a)と、(a)におけるB部を拡大してコロナ放電状態を示す図(b)である。
【
図5】
図1の鳥獣忌避装置における放電体の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0023】
図1~
図4は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る鳥獣忌避装置1を示す概略構成図である。この鳥獣忌避装置1は、帯電感覚を有するカラスKなどの鳥獣を忌避するための装置であり、主として、放電体2と、装置本体(放電制御手段)3と、を備える。ここで、この実施の形態では、鳥獣がカラスKの場合について、主として以下に説明する。
【0024】
放電体2は、導電性の薄膜片22が複数配設され、全方向もしくは所定方向に放電可能なものであり、この実施の形態では、ほぼ全方向に放電可能となっている。すなわち、導電性で真っ直ぐに延びる中心導線21を中心に放射線状に、かつ、中心導線21の長手方向に沿って多数の薄膜片22が配設され、全体が略円柱状に形成され、外周から放射線状にほぼ全方向に放電可能となっている。
【0025】
ここで、各薄膜片22は、この実施の形態では、アルミ箔を細長いテープ状に形成した小片で構成され、その中央部が中心導線21に取り付けられて中心導線21と電気的に導通され、中心導線21のほぼ全長にわたって隙間なく密に取り付けられている。そして、薄膜片22は、後述するイグナイターで高電圧が印加されることで、効率的に放電が行われるように、形状、大きさ、帯電性、配設密度などが設定されている。
【0026】
このような放電体2は、中心導線21の一端部において後述する装置本体3の第2のケーブル42と接続され、薄膜片22が地面や他の設備に接しないように設置される。
【0027】
装置本体3は、イグナイター(高圧放電器)で放電体2に高電圧を印加して放電体2を放電させるものであり、放電体2を放電させることでカラスKを刺激する。具体的には、
図2に示すように、耐水性のボックス31内に回路基板32が収容され、この回路基板32には、電源としての電池33とマイコン34などが配設されて、高電圧を印加して放電させるイグナイターが構成されている。
【0028】
このイグナイターのグランド側の出力端子である第1の端子35が、ボックス31の外側に延びる第1のケーブル41に接続され、イグナイターの高電位側の出力端子である第2の端子36が、ボックス31の外側に延びる第2のケーブル42に接続されている。また、第1のケーブル41の自由端には接地棒43に接続され、第2のケーブル42の自由端には上記のように放電体2が接続されている。
【0029】
そして、接地棒43を接地した状態で、イグナイターで高電位側に高電圧を発生させると、高電圧が放電体2に印加されて放電体2(主として、薄膜片22)から放電される。ここで、イグナイターで印加される電位、つまり、放電体2から放電される電位は、その立ち上がり速度が速いスパイク状・パルス状の電位・放電となっている。そして、この実施の形態では、このような放電を所定時間だけ継続し、その後、所定周期後に再度放電を行う、という処理を繰り返す。すなわち、
図4(a)に示すように、1度の印加・放電時間を連続放電時間(電圧印加時間)T1とし、この印加・放電を放電周期時間(電圧印加周期)T2(>T1)ごとに繰り返す。このように、この実施の形態では、定期的、周期的に放電体2を放電させる。
【0030】
この連続放電時間T1と放電周期時間T2はそれぞれ、回路基板32に配設されたT1用ロータリスイッチ51とT2用ロータリスイッチ52で変更自在となっている。また、回路基板32には、イグナイターを起動、停止させる電源スイッチ53と、電源スイッチ53がオンされていること、つまり、イグナイターによって放電体2から放電されていることを示す放電確認用LED54とが配設されている。
【0031】
また、回路基板32に接続されボックス31の外側に露出するマイク端子55が設けられ、このマイク端子55に集音マイク(検知手段)50のマイクプラグが着脱自在に装着されている。この集音マイク50は、カラスKの鳴き声などを集音し、マイコン34でカラスKの鳴き声を検知・検出すると、イグナイターを起動して上記のようにして放電体2から放電させる。また、カラスKの鳴き声がなくなって所定時間が経過すると、イグナイターを停止させて放電体2からの放電を止めるようになっている。
【0032】
また、装置本体3には、イグナイターによる電圧が印加されてコロナ放電を発生させる2つのコロナ放電電極61、62が設けられ、この2つのコロナ放電電極61、62の間隔を調整可能となっている。すなわち、
図2、
図3に示すように、コロナ放電電極61、62は、導電性で先端が針状に尖ったビス(ヘッドを有するネジ)で構成され、第1の端子35の丸形端子35aと第1のケーブル41の丸形端子41aに第1のコロナ放電電極61が挿入され、第2の端子36の丸形端子36aと第2のケーブル42の丸形端子42aに第2のコロナ放電電極62が挿入されている。このようにして、コロナ放電電極61、62がイグナイターの出力端子に接続されて、高電圧が印加されるようになっている。
【0033】
また、電気絶縁性で凹字状の電極支持体63が、その両垂直部63a、63bがボックス31の底面31aから略垂直に立ち上がるように、ボックス31内に配設されている。この電極支持体63の両垂直部63a、63bにはネジ孔(雌ネジ)が形成され、このネジ孔にそれぞれ、コロナ放電電極61、62の先端側が挿入、螺合されている。そして、コロナ放電電極61、62の先端間の隙間・間隔を所望の距離にして、コロナ放電電極61、62にナット64、65が締め付けられることで、コロナ放電電極61、62が支持、固定されるようになっている。
【0034】
この締付状態では、丸形端子35a、41aが第1のコロナ放電電極61のヘッド61aと第1のナット64とで挟持され、丸形端子36a、42aが第2のコロナ放電電極62のヘッド62aと第2のナット65とで挟持される。また、両垂直部63a、63bのネジ孔に対するコロナ放電電極61、62の挿入量を調整することで、コロナ放電電極61、62の先端間の隙間が調整される。
【0035】
そして、イグナイターで高電圧が放電体2に印加されて放電体2から放電されている際に、第2のコロナ放電電極62にも高電圧が印加され、所定のコロナ放電時間T3ごとにコロナ放電電極61、62間においてコロナ放電が発生する。すなわち、例えば、
図4(b)に示すように、連続放電時間(電圧印加時間)T1内において、コロナ放電時間T3(<T1)ごとにコロナ放電電極61、62間でコロナ放電が発生し、イグナイターおよび放電体2の電位が急激に低下する。ここで、コロナ放電時間T3は、イグナイターに過電圧が発生して周辺のマイコン34などが誤動作しないように設定されている。換言すると、このようなコロナ放電時間T3ごとにコロナ放電が発生するように、コロナ放電電極61、62の先端間の隙間が調整されている。
【0036】
次に、このような構成の鳥獣忌避装置1の動作および、鳥獣忌避装置1による鳥獣忌避方法について説明する。
【0037】
まず、電源スイッチ53をオフした状態で、周囲環境などに応じて適正にカラスKを忌避できるように、T1用ロータリスイッチ51とT2用ロータリスイッチ52を操作して、連続放電時間T1と放電周期時間T2を所定・所望の値に設定する。また、周囲環境などに応じて適正にコロナ放電が発生するように、必要に応じて、コロナ放電電極61、62の先端間の間隙を調整する。次に、接地棒43を接地して放電体2を所望の位置に配置し、電源スイッチ53をオンする。
【0038】
そして、放電体2の周辺にカラスKが飛来してコミュニケーション手段などである鳴き声を発すると、鳴き声が集音マイク50で集音されてカラスKの飛来が検知され、イグナイターが起動して放電体2から放電されて、カラスKの帯電感覚を刺激する。このとき、コロナ放電時間T3ごとにコロナ放電電極61、62間においてコロナ放電が発生し、イグナイターおよび放電体2の電位がコロナ放電時間T3ごとに急激に低下する。このような放電を放電周期時間T2ごとに繰り返し、その後、カラスKが逃避して鳴き声がなくなると、イグナイターが停止されて放電体2からの放電が止まる。
【0039】
以上のように、この鳥獣忌避装置1によれば、放電、特にスパイク状の放電を嫌がるカラスKの習性を利用して、放電体2を放電させることにより、本鳥獣忌避装置1の周辺にいるカラスKの帯電感覚を刺激する。これにより、カラスKが放電区域に侵入するのを防止、抑制したり、放電区域に留まることを防止、抑制したりすることが可能となる。このため、被害が予想される場所やその周辺において、本鳥獣忌避装置1による放電を行うことで、鳥獣による被害を効果的に防止、抑制することが可能となる。また、放電はカラスKなどの帯電感覚を刺激するものの、その気中伝達速度が速いため、カラスKなどは本鳥獣忌避装置1を認識、特定することができず、本鳥獣忌避装置1による忌避効果を持続することが可能となる。
【0040】
また、放電体2を放電させるための電圧がコロナ放電電極61、62にも印加されて、コロナ放電が発生されるため、イグナイター(放電制御手段)において過電圧が発生することによる不具合を防止、抑制することが可能となる。すなわち、放電体2からの放電量に対してイグナイターからの供給電気量が上回ると(放電量が少ないと)、イグナイターにおいて過電圧が発生し、電荷の上昇によって周辺のマイコン34などが誤動作するおそれがある。しかしながら、周期的なコロナ放電によってイグナイターの電位が周期的に低下するため、マイコン34などが誤動作することが防止、抑制され、この結果、マイコン34などを近接して配置し、ボックス31つまり本鳥獣忌避装置1をコンパクト化することが可能となる。
【0041】
しかも、放電体2に蓄えられた電位がコロナ放電によって急激に低下し、この電位の急低下がカラスKなどに伝搬することで、カラスKなどをより刺激して忌避効果を高めることが可能となる。
【0042】
さらに、全方向もしくは所定方向に放電可能な放電体2は、導電性の薄膜片22が多数配設されただけであるため、構成が簡易で、授産施設で制作することが可能であるとともに、製作費や保守費などを低減することが可能となる。
【0043】
また、2つのコロナ放電電極61、62の先端間の隙間が調整可能なため、印加される電圧や設置環境などに応じて2つのコロナ放電電極61、62の先端間の隙間を調整することで、適正にコロナ放電を発生させて、過電圧による不具合を適正・確実に防止、抑制することが可能となる。
【0044】
さらに、カラスKなどを検知したとき、すなわち、カラスKなどが現れたときにのみ放電体2を放電させるため、カラスKなどに突発的な刺激を与えて忌避効果を向上させることが可能になるとともに、カラスKなどが刺激に慣れるのを防いで忌避効果をより持続させることが可能となる。
【0045】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、薄膜片22がアルミ箔で構成されている場合について説明したが、アルミ箔による光の乱反射が好ましくない環境下に設置する場合には、アルミ箔の表面に低反射性のコーティングを施してもよい。また、アルミ箔に代えて、導電性の炭素繊維シートなどで薄膜片22を構成してもよい。さらに、検知手段が集音マイク50の場合について説明したが、近接センサやカメラ(画像認識手段)などで検知手段を構成してもよい。
【0046】
さらに、上記の実施の形態では、定期的・定周期に放電体2から所定時間放電させているが、不定期に不定時間放電させるようにしてもよい。すなわち、連続放電時間T1をランダムに変えたり、放電周期時間T2をランダムに変えたりしてもよい。
【0047】
ところで、放電体2の形状は上記のものに限らず、また、全方向に放電せずに所定の方向にのみ放電するようにしてもよい。例えば、
図5(a)に示すように、球状体の全表面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、前後左右上下の全方向に放電するようにしてもよい。また、
図5(b)に示すように、環状体の外周面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、略一平面内において放射状に放電するようにしてもよい。また、
図5(c)に示すように、球状体の上部の半球面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、上方向に放射状に放電するようにしてもよい。また、
図5(d)に示すように、球状体の下部の半球面に多数の薄膜片22を配設して放電体2を構成し、下方向に放射状に放電するようにしてもよい。
【0048】
また、球状体に薄膜片22が密に配設された部位と、疎に配設された部位とを有する放電体2とし、密に配設された部位から放射状に多くの放電を行い、疎に配設された部位から放射状にわずかな放電を行うようにしてもよい。さらに、
図5(e)に示すように、円柱状体の端面に薄膜片22を配設し、薄膜片22の周囲を囲うように円筒状で放電遮断性のシールド部材23を配設し、円柱状体の端面に対向する方向のみに放電するようにしてもよい。
【0049】
このように、放電体2の形状や薄膜片22の配設位置、放電方向は、忌避したい場所や周囲環境などによって最適に設定すればよい。例えば、ある限られた場所(忌避対象箇所)だけにスポット的にカラスKを近づけたくない場合には、
図5(e)に示す放電体2の薄膜片22を忌避対象箇所に向けて設置すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 鳥獣忌避装置
2 放電体
22 薄膜片
3 装置本体(放電制御手段)
31 ボックス
32 回路基板
33 電池
34 マイコン(検知手段)
50 集音マイク(検知手段)
61、62 コロナ放電電極
63 電極支持体
K カラス(鳥獣)