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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20231129BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20231129BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20231129BHJP
   F21V 29/77 20150101ALI20231129BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20231129BHJP
   F21V 29/507 20150101ALI20231129BHJP
   F21V 29/83 20150101ALI20231129BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231129BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231129BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231129BHJP
【FI】
F21S2/00 377
F21V29/67 100
F21V29/67 200
F21V29/76
F21V29/77
F21V29/503
F21V29/507
F21S2/00 375
F21V29/83
H05K7/20 H
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020108597
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022022485
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狸塚 正貴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187830(WO,A1)
【文献】特開2015-215377(JP,A)
【文献】特開2007-328973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 23/00-99/00
H05K 7/20
G03B 21/00-33/16
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部空間を構成する第一室と、
前記筐体の内部空間を構成し、前記第一室に対して壁体を介して隣接する第二室と、
前記筐体の内部空間を構成し、前記第二室に対して壁体を介して隣接する第三室と、
前記第一室内に配置された第一光源と、
前記第一室内に配置され、前記第一光源よりも発光時の発熱量が高い第二光源と、
前記第一室内に配置され、前記第一光源に対して固定された第一ヒートシンクと、
前記第二室内又は前記第三室内に配置され、前記第二光源に対して固定された第二ヒートシンクと、
前記第一室と前記第二室とを区切る壁体の一部分に形成され、前記第一室と前記第二室との間で空気の通流を可能にする第一通風口と、
前記第二室と前記第三室とを区切る壁体の一部分に形成され、前記第二室と前記第三室との間で空気の通流を可能にする第二通風口と、
前記第二室の壁体の一部分であって、前記第一通風口を基準としたときに前記第二ヒートシンクから離れる位置に設けられ、前記第二室と前記筐体の外側との間で空気の通流を可能にする排気口と、
前記筐体の外側の空気を前記第一室に取り込む第一吸気口と、
前記筐体の外側の空気を前記第三室に取り込む第二吸気口とを備え、
前記排気口を介して前記第二室から排出される空気流の流量が、前記第二通風口を介して前記第二室に流入される空気流の流量よりも大きいことを特徴とする、光源装置。
【請求項2】
前記排気口を通じて前記第二室と前記筐体の外側とを連絡する通流経路上に、第一ファンを備えることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第二吸気口を通じて前記第三室と前記筐体の外側とを連絡する通流経路上、又は、前記第二通風口を通じて前記第二室と前記第三室とを連絡する通流経路上に、第二ファンを備えることを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第一ファンを通過する空気流の流量が、前記第二ファンを通過する空気流の流量よりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第一光源又は前記第二光源の温度と目標温度との比較結果に基づいて、前記第一ファンの回転数を制御する電装体を備えることを特徴とする、請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記筐体の少なくとも一部分を覆う外側筐体と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記外側筐体の外側から吸気された空気を前記第一吸気口及び前記第二吸気口に導くための主吸気口と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記排気口を介して前記第二室から前記外側筐体の内側に排出された空気を前記外側筐体の外側に導くための主排気口と、
前記筐体と前記外側筐体との間において、前記主吸気口と前記主排気口との間の空気の通流を遮蔽する遮風体とを備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記筐体を覆う外側筐体と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記外側筐体の外側から吸気された空気を前記第一吸気口及び前記第二吸気口に導くための主吸気口と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記排気口を介して前記第二室から前記外側筐体の内側に排出された空気を前記外側筐体の外側に導くための主排気口と、
前記筐体と前記外側筐体との間において、前記主吸気口と前記主排気口との間の空気の通流を遮蔽する遮風体とを備え、
前記第一ファンは、前記外側筐体の前記主排気口に設けられていることを特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記筐体を覆う外側筐体と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記外側筐体の外側から吸気された空気を前記第一吸気口及び前記第二吸気口に導くための主吸気口と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記排気口を介して前記第二室から前記外側筐体の内側に排出された空気を前記外側筐体の外側に導くための主排気口と、
前記筐体と前記外側筐体との間において、前記主吸気口と前記主排気口との間の空気の通流を遮蔽する遮風体とを備え、
前記第一ファンは、前記外側筐体の前記主排気口に設けられ、
前記第二ファンは、前記外側筐体の前記主吸気口に設けられていることを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記主吸気口を通じて前記外側筐体の外側から吸気された空気が分流されて、前記第一室及び前記第三室に流入することを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記第二通風口の開口面積が、前記第一通風口の開口面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源装置に関し、特に、発光時に発熱量の異なる複数の光源を備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
観察対象となる試料に対して光を入射させて蛍光を生じさせ、この蛍光の光強度の大小によって試料を観察するための装置として、蛍光顕微鏡が知られている。試料に応じて光の吸収特性が異なることから、蛍光顕微鏡は、多くの種類の試料に対応するために、広帯域の光が必要とされる。かかる観点から、蛍光顕微鏡用の光源として、従来、ショートアーク型の超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどの放電ランプが用いられていた。
【0003】
これに対し、近年は、省エネルギー化、装置の小型化、光源の長寿命化などの観点から、蛍光顕微鏡用の光源としてLEDなどの固体光源素子の利用が検討されている。本出願人は、半導体レーザ素子からの励起光によって蛍光体を励起して得られる蛍光と、LED素子などの別の光源から得られる光とを合成光学系を介して重ね合わせることで、広帯域の光を実現することを検討している。
【0004】
ところで、LED素子や半導体レーザ素子といった固体光源は、温度上昇に伴って発光効率が低下することが知られている。特に、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を蛍光体に照射することで蛍光を発する蛍光光源においては、LED素子と比べて発熱量が極めて高くなる。このように、光源装置が複数の固体光源を備える場合には、排熱性を向上させることが重要な課題の一つとして存在する。
【0005】
発熱量の異なる複数の熱源を備えた装置の冷却能力を高める技術として、従来、下記特許文献1や特許文献2のような技術が存在する。
【0006】
特許文献1には、発熱量の異なる複数の素子を同一の空間に配置すると共に、発熱量が相対的に高い素子を空間の中央付近に配置し、発熱量が相対的に低い素子をその周囲に配置した上で、1つ以上の冷却ファンで各素子を冷却する技術が開示されている。
【0007】
特許文献2には、発熱量の異なる複数の光源のうち、発熱量の高い光源を上流側に配置し、その下流側に発熱量の低い光源を配置して、冷却ファンによって冷却する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭57-191089号公報
【文献】特開2009-181098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の構造の場合、中央付近に配置された発熱量の高い素子を冷却した後の冷却風と、発熱量の高い素子に衝突することなく流れた冷却風とが、同一空間内に混在する結果、素子に対する冷却箇所にばらつきが生じ、温度ばらつきを生むおそれがある。このため、発熱量の高い光源と発熱量の低い光源を特許文献1の構造にならって設置すると、光源の設置場所によって発光強度に差が生じたり、装置間において発光強度にばらつきが生じるおそれがある。
【0010】
特許文献2の構造の場合、上流側で発熱量の高い光源を冷却した後の空気流が下流側の光源に向かって流れるため、下流側の光源を十分に冷却できないおそれがある。
【0011】
かかる観点から、本発明者らは、下流側の光源の冷却を改善するため、上流側の光源を冷却した後の空気流とは別の空気流を下流側の光源に供給する方法について検討した。この方法について、冷却系統を模式的に図示した図21を参照して説明する。
【0012】
図21に示すように、この構造においては、領域110内に発熱量の高い光源101と発熱量の低い光源102とが設置される。光源101は、ファン111によって生じる空気流Q111により冷却される。光源102は、光源101を冷却した後の空気流Q111と、開口113から流入する空気流Q113によって冷却される。この結果、光源102は、特許文献2の構造と比べて効率よく冷却されると考えられる。しかしながら、この方法であっても、上流側で発熱量の高い光源101を冷却した後の空気流Q111が下流側の光源102に向かって流れるため、光源102を十分に冷却できないおそれがある。
【0013】
更に、別の方法として、本発明者らは、光源102用のファン113aを設けた上で、発熱量の高い光源101用のファン111をファン113aよりも大型化する方法を検討した(図22参照)。図22に示す参考例では、ファン111がファン113aよりも大型であることを模式的に示すために、ファン111をファン113aよりも大きく図示している。図22の構成では、光源101を冷却した後の空気流Q111がファン111を介して領域110内に流入し、光源102を冷却した後の空気流Q113がファン113aを介して領域110内に流入するため、光源102には、光源101を冷却した後の、温度の高い空気流Q111が供給されない。この結果、図21の構造よりも、光源102に対する冷却能力は向上すると考えられる。
【0014】
しかしながら、図22の構成の場合、大型であるファン111の静圧に対して、小型であるファン113aの静圧が小さくなる結果、領域110内に空気流Q113を十分引き込めず、場合によっては、領域110側から光源102に向かって空気流が逆流するおそれがある。この場合、高温の光源101を冷却した後の温度の高い空気流Q111が光源102に向かうことになるため、やはり光源102を十分に冷却することができない。なお、図22では、領域110から空気流Q112を排出するために、領域110の一部壁面に開口112aを設けた構成としているが、この開口112aにファン112を設けた場合においても、同様の現象が起こり得る。
【0015】
一方、かかる課題への対策として、ファン113aについても、ファン111と同様に大型のものを採用する方法が考えられる。しかし、この場合には、大型のファンが複数搭載されることで騒音が大きくなったり、発生する高周波ノイズの強度が無視できないレベルになるおそれがある。
【0016】
本発明は、上記の課題に鑑み、発熱量の異なる複数の光源を備える光源装置において、装置の静音化と冷却能力の向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光源装置は、
筐体と、
前記筐体の内部空間を構成する第一室と、
前記筐体の内部空間を構成し、前記第一室に対して壁体を介して隣接する第二室と、
前記筐体の内部空間を構成し、前記第二室に対して壁体を介して隣接する第三室と、
前記第一室内に配置された第一光源と、
前記第一室内に配置され、前記第一光源よりも発光時の発熱量が高い第二光源と、
前記第一室内に配置され、前記第一光源に対して固定された第一ヒートシンクと、
前記第二室内又は前記第三室内に配置され、前記第二光源に対して固定された第二ヒートシンクと、
前記第一室と前記第二室とを区切る壁体の一部分に形成され、前記第一室と前記第二室との間で空気の通流を可能にする第一通風口と、
前記第二室と前記第三室とを区切る壁体の一部分に形成され、前記第二室と前記第三室との間で空気の通流を可能にする第二通風口と、
前記第二室の壁体の一部分であって、前記第一通風口を基準としたときに前記第二ヒートシンクから離れる位置に設けられ、前記第二室と前記筐体の外側との間で空気の通流を可能にする排気口と、
前記筐体の外側の空気を前記第一室に取り込む第一吸気口と、
前記筐体の外側の空気を前記第三室に取り込む第二吸気口とを備え、
前記排気口を介して前記第二室から排出される空気流の流量が、前記第二通風口を介して前記第二室に流入される空気流の流量よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、第二室に対して、第一室から第一通風口を介して空気(以下、「第一空気流」という。)が流入し、第三室から第二通風口を介して空気(以下、「第二空気流」という。)が流入する。ここで、第一室には、相対的に発熱量の低い第一光源に固定された第一ヒートシンクが設置されている。また、第二室又は第三室には、相対的に発熱量の高い第二光源に固定された第二ヒートシンクが設置されている。そして、第二室から第二室の外側に空気を排出するために設けられた排気口は、第一通風口を基準としたときに、第二ヒートシンクから離れる位置に設けられている。
【0019】
第二ヒートシンクが第三室内に設置されている場合には、第二ヒートシンクを冷却した後、第二空気流が第二通風口を介して第二室内に流入し、排気口に向かって流れる。また、第二ヒートシンクが第二室内に設置されている場合には、第二空気流が第二通風口を介して第二室内に流入し、第二ヒートシンクを冷却した後、排気口に向かって流れる。
【0020】
ここで、上記光源装置では、排気口を介して第二室から排出される空気の流量が、第二通風口を介して第二室に流入される空気の流量よりも大きくなるように構成されている。このため、排気口を介して第二室から排出される空気(以下、「排気流」という。)の流量と、第二通風口を介して第二室に流入される第二空気流の流量の差分の流量が、第一空気流として第一通風口を介して第一室より第二室内に流入する。
【0021】
そして、上述したように、排気口は、第一通風口を基準としたときに、第二ヒートシンクから離れる位置に設けられている。つまり、第二空気流に対して第一空気流が合流する場所は、第二空気流の流れる方向に関して第二ヒートシンクよりも下流側に位置する。言い換えれば、第二室内では、第二ヒートシンクが冷却された後の第二空気流に対して、第一空気流が合流することになる。この結果、第一ヒートシンクが冷却された後の第一空気流が、第二ヒートシンクに供給されることはないため、第一空気流の合流によって第二ヒートシンクに対する冷却能力が低下することはない。
【0022】
更に、上記構成の場合、第一室から第二室への空気流(第一空気流)の流入は、排気口を介して第二室から排出される空気流(排気流)と、第二通風口を介して第二室内に流入される空気流(第二空気流)との流量差に起因して生じる。この結果、第一ヒートシンクを冷却するために導入される第一空気流を第二室に流入させるための専用のファンを設ける必要がないため、騒音や高周波ノイズの問題が抑制される。更には、原理的に第二室から第一室に向かって空気流が逆流することも生じない。
【0023】
前記光源装置は、前記排気口を通じて前記第二室と前記筐体の外側とを連絡する通流経路上に、第一ファンを備えるものとしても構わない。
【0024】
この場合、第一ファンを通過する空気流の流量が、第二通風口を介して第三室より第二室内に流入する第二空気流の流量よりも大きくなるように、第一ファンの回転数が設定されるものとして構わない。この場合、第一ファンを通過する空気流の流量と、第三室から第二室に流入する空気流の流量の差分に基づく流量の空気流が、第一室から第二室内に流れ込む。すなわち、第一ファンの回転数は、第二室から第一室に向かう逆流の空気流が発生しないように設定される。
【0025】
更に、前記光源装置は、前記吸気口を通じて前記第三室と前記筐体の外側とを連絡する通流経路上、又は、前記第二通風口を通じて前記第二室と前記第三室とを連絡する通流経路上に、第二ファンを備えるものとしても構わない。
【0026】
この場合、前記第一ファンを通過する空気流の流量が、前記第二ファンを通過する空気流の流量よりも大きくなるように、各ファンの回転数が設定されるものとして構わない。この場合においても、第一ファン及び第二ファンのそれぞれの回転数は、第一ファンを通過する空気流の流量と、第二ファンを通過して第三室から第二室に流入する空気流の流量の差分に基づく流量の空気流が、第一室から第二室内に流れ込むように設定される。すなわち、第一ファン及び第二ファンのそれぞれの回転数は、第二室から第一室に向かう逆流の空気流が発生しないように設定される。
【0027】
また、前記光源装置は、前記第一光源又は前記第二光源の温度と目標温度との比較結果に基づいて、前記第一ファンの回転数を制御する電装体(制御部)を備えるものとしても構わない。
【0028】
例えば、第一光源の温度が目標温度よりも高い場合には、第一ファンの回転数を増加させ、排気口を介して第二室から排出される空気流(排気流)の流量を高めることで、この排気流と、第二通風口を介して第二室内に流入される空気流(第二空気流)との流量差を拡大する。この結果、この流量差を補填するように、第一通風口を介して第二室内に流入される空気流(第一空気流)の流量が増加するため、第一ヒートシンクに対する冷却能力が高まる。これにより、第一光源の温度を低下させることができる。逆に、第一光源の温度が目標温度よりも十分低い場合には、第一ファンの回転数を低下するものとしても構わない。
【0029】
同様に、第二光源の温度が目標温度よりも高い場合に、第一ファンの回転数を増加させ、排気口を介して第二室から排出される空気流(排気流)の流量を高める。これにより、第二通風口を介して第二室内に流入される空気流(第二空気流)の流量が高まり、第二ヒートシンクに対する冷却能力が高まる。ただし、第二空気流の流量が、排気流の流量を超えることがないように調整される。つまり、この場合であっても、第一通風口を介して第二室から第一室内に空気が逆流することが抑制される。
【0030】
上記光源装置は、筐体の外側に、当該筐体の少なくとも一部分を覆う外側筐体を備えるものとしても構わない。この場合、前記光源装置は、前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記外側筐体の外側から吸気された空気を前記第一吸気口及び前記第二吸気口に導くための主吸気口と、
前記外側筐体の外壁の一部分に形成され、前記排気口を介して前記第二室から前記外側筐体の内側に排出された空気を前記外側筐体の外側に導くための主排気口と、
前記筐体と前記外側筐体との間において、前記主吸気口と前記主排気口との間の空気の通流を遮蔽する遮風体とを備えるものとしても構わない。
【0031】
上記構成によれば、主吸気口から外側筐体の内側に吸気された空気の一部は、第一吸気口を介して第一室内に流入した後、第一ヒートシンクを冷却して第一空気流として第二室内へと流入する。また、主吸気口から外側筐体の内側に吸気された空気の一部は、第二吸気口を介して第三室内に流入した後、第二ヒートシンクを冷却し、第二空気流として第二室内を排気口に向かって流れる。
【0032】
なお、上記構成において、前記主吸気口は、第一吸気口と第二吸気口のそれぞれに対応して、外側筐体の壁面の別の箇所に設けられるものとしても構わない。別の例として、外側筐体の壁面の同一の箇所に設けられた前記主吸気口を通じて前記外側筐体の外側から吸気された空気が分流されて、前記第一室及び前記第三室に流入するものとしても構わない。
【0033】
前記光源装置が前記外側筐体を備える場合においては、前記外側筐体に設けられた前記主排気口の近傍箇所に前記第一ファンが備えられるものとしても構わない。この場合、筐体の排気口を通じて第二室から排出された空気流(排気流)は、外側筐体内を通過した後、第一ファン及び主排気口を介して大気へと放出される。
【0034】
また、前記光源装置が前記外側筐体を備える場合においては、前記外側筐体に設けられた前記主吸気口の近傍箇所に前記第二ファンが備えられるものとしても構わない。この場合、外側筐体に設けられた主吸気口を通じて外側筐体内に取り込まれた外気が、第一吸気口を通じて筐体の第一室内に流入して第一ヒートシンクを冷却する。また、外側筐体に設けられた主吸気口を通じて外側筐体内に取り込まれた外気が、筐体の第二吸気口を通じて第三室内に流入し、第二ヒートシンクを冷却する。
【0035】
なお、上記構成において、前記第二通風口の開口面積が、前記第一通風口の開口面積よりも大きいものとしても構わない。特に、前記光源装置が外側筐体を設けると共に、筐体(内側筐体)の壁面及び内側にファンを備えない場合には、第一通風口及び第二通風口の開口面積の大小によって、第一空気流と第二空気流の流量の大小が決定される。第二通風口の開口面積を第一通風口の開口面積よりも大きくすることで、発熱量の高い第二光源が固定されている第二ヒートシンクに衝突する空気流(第二空気流)の流量が大きくなり、第二光源に対する冷却能力が第一光源よりも高められる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の光源装置によれば、発熱量の異なる複数の光源を備える場合において、大型のファンを多数備えることなく、高い冷却能力が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る光源装置の第一実施形態の一構成例の外観を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す光源装置を、図1とは異なる方向から見た状態で模式的に示す斜視図である。
図3図1に示す光源装置から筐体の一部の外壁を除去した状態で図示した模式的な斜視図である。
図4図3に示す光源装置を、図3とは見る角度を異ならせて図示した模式的な斜視図である。
図5図1に示す光源装置から筐体の一部の外壁を除去した状態で図示した模式的な平面図である。
図6図5から第一ヒートシンクを除去した状態を示す図面である。
図7図4に示す光源装置から筐体の一部の外壁を除去した状態で図示した模式的な斜視図である。
図8図7に示す状態の光源装置を模式的に示す平面図である。
図9図8に冷却風の流れを模式的に付加して図示した図面である。
図10図9を更に模式的に図示した図面である。
図11】光源及びファンの駆動制御の一例を模式的に示すフローチャートである。
図12】比較例2の光源装置における冷却風の流れを、図10にならって模式的に図示した図面である。
図13】本発明に係る光源装置の第一実施形態の別構成例を、図9にならって模式的に図示した図面である。
図14】本発明に係る光源装置の第一実施形態の別構成例を、図9にならって模式的に図示した図面である。
図15】本発明に係る光源装置の第一実施形態の別構成例を、図9にならって模式的に図示した図面である。
図16】本発明に係る光源装置の第一実施形態の別構成例を、図9にならって模式的に図示した図面である。
図17】本発明に係る光源装置の第二実施形態の一構成例を、図9にならって模式的に図示した図面である。
図18】本発明に係る光源装置の第二実施形態の別構成例を、図17にならって模式的に図示した図面である。
図19】本発明に係る光源装置の第二実施形態の別構成例を、図17にならって模式的に図示した図面である。
図20】本発明に係る光源装置の第二実施形態の別構成例を、図17にならって模式的に図示した図面である。
図21】従来の光源装置の冷却系統を模式的に示す図面である。
図22】従来の冷却系統とは異なる構成で実現した、参考例としての冷却系統を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る光源装置の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。以下の各図面はいずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0039】
[第一実施形態]
本発明に係る光源装置の第一実施形態について説明する。
【0040】
図1及び図2は、光源装置の一実施形態の外観を模式的に示す斜視図である。図2は、図1から見る角度を異ならせて図示されたものである。
【0041】
光源装置1は、筐体2を備え、この筐体2内に、後述する光源(31,32)が搭載されている。光源装置1は、搭載されている光源(31,32)から出射された光を取り出すための光出射口3を備え、この光出射口3から光L1が出射される。なお、この光出射口3は、例えば図示しない光ファイバに連結されるものとしても構わない。光源装置1は、例えば蛍光顕微鏡用の光源として利用される。
【0042】
図1に示すように、本実施形態の光源装置1は、筐体2の外壁2aの一部に形成された吸気用の開口(第一吸気口15,第二吸気口16)と、外壁2bの一部に形成された排気口の開口(排気口14)とを有する。
【0043】
図3は、図1に示す光源装置1から筐体2の一部の外壁を除去した状態の模式的な斜視図である。図4は、図3から見る角度を異ならせて図示した図面である。
【0044】
図3及び図4に示すように、光源装置1は、筐体2の内部空間が複数の部屋に仕切られている。本実施形態では、筐体2の内部空間が、第一室4、第二室5、及び第三室6の3室に分けられている。
【0045】
以下の説明では、第一室4と第二室5とが隣接する方向を「X方向」とし、このX方向に直交する面を「YZ平面」とする、X-Y-Z座標系が適宜参照される。また、以下の説明では、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0046】
図3及び図4に示すように、第一室4と第二室5とは壁体9によって仕切られている。そして、この壁体9の一部分には、通風用の開口部(以下、「第一通風口11」という。)が形成されている。第一通風口11を介して、第一室4と第二室5とが連絡されており、両者の間を空気流が通流可能である。
【0047】
図1に示す第一吸気口15は、筐体2の外側の空気を第一室4内に取り込むために、筐体2の外壁に設けられている。図1に示す第二吸気口16は、筐体2の外側の空気を第三室6内に取り込むために、筐体2の外壁に設けられている。図1に示す排気口14は、第二室5内の空気を筐体2の外側に排出するために、筐体2の外壁に設けられている。本実施形態の光源装置1は、排気口14を介して第二室5から空気流を排出する流量を確保するために、ファン25(以下、「第一ファン25」という。)を搭載している。すなわち、この第一ファン25は、排気口14を通じて第二室5と筐体2の外側とを連絡する通流経路上に配置されている。ファン26(以下、「第二ファン26」という。)についての説明は後述される。
【0048】
図5は、図1に示す光源装置1から筐体2の一部の外壁を除去した状態で、-X方向に見たときの状態を示す模式的な平面図である。図5に示すように、第一室4には、後述する光源(31,32)が搭載されている。光源32は、光源31と比べて発光時における発熱量の高い光源である。以下では、光源31を「第一光源31」、光源32を「第二光源32」と称する。
【0049】
図3に示すように、光源装置1は、第一光源31を冷却するために、第一光源31に対して固定された第一ヒートシンク21を搭載している。同様に、図3に示すように、光源装置1は、第二光源32を冷却するために、第二光源32に対して固定された第二ヒートシンク22を搭載している。
【0050】
図6は、図5から第一ヒートシンク21を除去した状態を示す図面である。なお、図5及び図6では、図示の都合上、一部の部材の図示が省略されている。
【0051】
図5及び図6に示すように、光源装置1は、第一室4内においてY方向に沿って並べられた複数の第一光源31と、第一光源31のそれぞれに対応して配置された複数のコリメートレンズ41と、第一ヒートシンク21とを備える。第一光源31は、それぞれ第一ヒートシンク21に対して固定されている。
【0052】
本実施形態において、Y方向に沿って並べられた複数の第一光源31は、相互に波長が異なるものとして構わない。一例として、光軸方向(ここではY方向に相当する)に関し光出射口3に近づくにつれて、各第一光源31のピーク波長が短波長になるように設置される。各第一光源31は、例えばLED素子で構成される。
【0053】
各第一光源31から出射された光は、対応するコリメートレンズ41によってコリメートされた後、合成光学系42に導かれる。合成光学系42は、波長によって光の進行方向を制御できる機能を有する光学部材からなり、例えばダイクロイックミラー等によって構成される。
【0054】
更に、図5及び図6に示すように、光源装置1は、第一室4内に搭載された第二光源32を備える。本実施形態では、第二光源32は、励起光を出射する半導体レーザ光源素子32aと、励起光が照射されて蛍光を発する蛍光光源素子32bとを備えて構成される。半導体レーザ光源素子32aや、蛍光光源素子32bは、LED光源からなる第一光源31と比べて、発光時の発熱量が高い素子である。
【0055】
半導体レーザ光源素子32aから出射されたレーザ光は、反射ミラー43、ダイクロイックミラー44を介して進行方向が変更された後、励起光として蛍光光源素子32bに照射される。蛍光光源素子32bは、励起光によって励起されることで蛍光を発し、この蛍光は、コリメートレンズ45、ダイクロイックミラー44を通過して合成光学系42に導かれる。
【0056】
すなわち、本実施形態の光源装置1では、第一光源31から出射された光と第二光源32から出射された光とが合成光学系42によって合成され、出射光L1として光出射口3から出射される。
【0057】
本発明において、Y方向に沿って並べられた第一光源31の個数は適宜変更が可能である。第一光源31の個数は1つでも構わない。また、第二光源32は、蛍光光源素子32bを備えずに、半導体レーザ光源素子32aのみを備える構成であっても構わない。
【0058】
図7は、図4から筐体2の一部の外壁を除去した状態で図示した模式的な斜視図である。また、図8は、図7に示す状態の光源装置1を模式的に示す平面図である。
【0059】
前述したように、第二光源32は、第一光源31と比べて発光時の発熱量が高い。そこで、光源装置1は、この第二光源32を冷却するための第二ヒートシンク22を搭載している。第二ヒートシンク22は、本実施形態では、冷却管22aを介して第二光源32と接続されている。
【0060】
本実施形態では、この第二ヒートシンク22は光源装置1の第三室6内に収容されている。第三室6と第二室5との間には、壁体で仕切られており、この壁体には相互に空気流の通流が可能な通風口(第二通風口12)が形成されている。更に、本実施形態では、上述したように、この第二通風口12よりも第二室5側において、第三室6から第二室5側に空気流を取り込むための第二ファン26が搭載されている。つまり、本実施形態において、第二ファン26は、第二通風口12を通じて第二室5と第三室6とを連絡する通流経路上に配置されている。
【0061】
図8に模式的に示すように、本実施形態の光源装置1は、各光源(31,32)及びファン(25,26)を制御するための電装体(51,52)を搭載している。本実施形態では、第二室5内に電装体51を備え、第三室6内に電装体52を備えている。ただし、光源装置1は、電装体(51,52)のうちのいずれか一方のみを備えるものとしても構わない。
【0062】
図9は、図8に冷却風の流れを模式的に付加して図示した図面である。また、図10は、図9を更に模式的に図示した図面である。
【0063】
第二ファン26からの吸引によって、筐体2の外側の外気が第三室6内に取り込まれると、この外気によって第二ヒートシンク22が冷却される。これにより、第二ヒートシンク22に固定された、第二光源32が冷却される。第二ヒートシンク22を冷却した後の空気流Q2は、第二通風口12を介して第二室5内へと流入する。その後、この空気流は、排気口14を介して筐体2の外側に排出される(空気流Q3)。
【0064】
第一ファン25の回転数は、電装体(51,52)によって設定可能に構成されている。本実施形態では、第一ファン25を介して排気口14から排出される空気流Q3の流量が、第二通風口12及び第二ファン26を介して第三室6から第二室5内に取り込まれる空気流Q2の流量よりも大きくなるように設定されている。言い換えれば、第一ファン25の回転数は、第一通風口11を介して第一室4から第二室5内に空気が引き込まれる空気流Q1が発生するように設定されている。
【0065】
また、第二ファン26の回転数が電装体(51,52)によって設定可能に構成されている場合には、電装体(51,52)による制御によって、同様に、空気流Q3の流量が、空気流Q2の流量よりも大きくなるように、言い換えれば、第一室4から第二室5内に空気が引き込まれる空気流Q1が発生するように、第二ファン26の回転数が調整されるものとしても構わない。
【0066】
更に、両方のファン(25,26)の回転数が電装体(51,52)によって調整されるものとしても構わない。
【0067】
ところで、上記各図に示されるように、本実施形態の光源装置1において、第一通風口11は、第二室5内における空気流Q2の流路方向(ここではY方向)に関して第二通風口12と排気口14との間に配置されている。言い換えれば、排気口14は、第一通風口11を基準としたときに、第二通風口12から、すなわち第二ヒートシンク22から離れる位置に配置されている。このため、空気流Q3の流量が空気流Q2の流量よりも大きくなるように調整されることで、圧力差に起因して、上述した、第一通風口11を介して第一室4から第二室5内に引き込まれる空気流Q1が生じる。言い換えれば、第一通風口11を介して第二室5から第一室4に向かうような逆流は発生しない。
【0068】
第一室4から第二室5に向かう空気流Q1が生じることで、第一吸気口15から第一室4内に外気が取り込まれる空気流が生じ、この空気流によって第一ヒートシンク21が冷却される。これにより、第一ヒートシンク21に固定された第一光源31が冷却される。そして、上述したように、第一光源31が冷却された後の空気が、空気流Q1として第二室5内に流入する。
【0069】
上記構成の場合、第二室5から排出される空気流Q3の流量が、第二室5内に流入する空気流Q2の流量よりも大きく設定されているため、第二室5から第一室4へ向かう空気流の流れは生じない。よって、発熱量の高い第二光源32に固定された第二ヒートシンク22を冷却した後の、温度の高い空気流Q2が、第一光源31やこの第一光源31に固定された第一ヒートシンク21に対して供給されることがない。つまり、第一光源31や第一ヒートシンク21には、空気流Q2とは別系統で取り込まれた外気が、空気流Q1として供給されるため、発熱量の高い第二光源32の存在にかかわらず、高い冷却能力が確保できる。
【0070】
更に、第一室4に対して冷却風として取り込まれる空気流Q1は、空気流Q3の流量と空気流Q2の流量との差に起因した圧力差によって生じる。すなわち、第一光源31や第一ヒートシンク21に対して冷却風を取り込むための専用の大型のファンを、第一ヒートシンク21の近傍に備える必要がない。これにより、発生する高周波ノイズの強度を抑制しながらも、第一光源31や第一ヒートシンク21に対する冷却を行うことができる。
【0071】
ファン(25,26)及び光源(31,32)は、電装体(51,52)によって駆動制御される。図11は、この制御フローの一例を模式的に示すフローチャートである。なお、図11では、第一ファン25の回転数が電装体(51,52)によって制御される場合の例が示されている。
【0072】
光源装置1の電源が入れられると、電装体(51,52)からの指令によって、光源(31,32)が点灯すると共に、ファン(25,26)の回転が開始される(ステップS1)。ここで、ファン25の回転数r25、ファン26の回転数r26は、それぞれ初期設定値に設定される。
【0073】
点灯が開始されてから、第二光源32の温度T2が測定される(ステップS2)。なお、光源装置1は、第一室4内の第二光源32の近傍箇所において不図示の温度センサを備えており、この温度センサの検出結果が電装体(51,52)に対して送信されるものとして構わない。
【0074】
電装体(51,52)に備えられたプロセッサにおいて、測定温度T2と目標温度Tthとが比較される(ステップS3)。この温度差が所定値k未満である場合には(ステップS3においてYes)、ファン(25,26)の回転数をそのまま維持した状態で、再びステップS2へと戻る。このとき、ステップS2に係る温度検出処理は、所定の時間間隔(例えば1秒毎)に行われるものとしても構わない。
【0075】
なお、本ステップS3において、測定温度T2と目標温度Tthとの温度差を所定値kと比較しているのは、完全に同一である場合の他、誤差レベルでほぼ同一である場合を認識させる目的である。かかる観点から、所定値kとしては、例えば1℃以下の誤差許容範囲の値とすることができる。
【0076】
測定温度T2と目標温度Tthとの温度差が所定値k以上である場合には(ステップS3においてNo)、電装体(51,52)に備えられたプロセッサにおいて、測定温度T2と上限温度(最大許容温度)Tmaxとが比較される(ステップS4)。そして、測定温度T2が上限温度Tmaxを超える場合には(ステップS4においてYes)、直ちに光源(31,32)が消灯される(ステップS7)。なお、図11では、ステップS7において、ファン(25,26)についても同時に停止されるかのように記載されているが、これは図示の都合上の事情であり、実際には、光源装置1の冷却に鑑み、光源(31,32)が消灯された後、所定の時間が経過した後にファン(25,26)が停止されるものとしても構わない。
【0077】
一方、測定温度T2が上限温度Tmax以下である場合には(ステップS4においてNo)、電装体(51,52)によって第一ファン25の回転数r25が変更される(ステップS5)。ここでは、第一ファン25の回転数r25を設定するためのPWM設定値MVが、直前の設定値MVに対して、測定温度T2と目標温度Tthとの差分値によって決定される補正値f(T2-Tth)だけ加算された値に変更される。
【0078】
例えば、この補正値f(T2-Tth)は、係数k×(T2-Tth)×100によって算定された値とすることができる。より詳細な具体例として、直前のMV=60%、k=5、T2=55℃、Tth=50℃の場合には、補正値f(T2-Tth)=5×5=25となるため、第一ファン25の回転数r25を設定するためのPWM設定値MVが85%に上昇される。
【0079】
第一ファン25の回転数r25を設定するためのPWM設定値MVが上昇すると、第一ファン25の回転数r25が上昇する。この結果、第一ファン25を介して排気口14から排出される空気流Q3の流量が増加するため、この空気流Q3の流量と、第三室6から第二室5内に取り込まれる空気流Q2の流量との差(Q3-Q2)が増加する。なお、このとき、第二ファン26の回転数が一定である場合であっても、空気流Q3の流量の増加に伴って空気流Q2の流量も少し増加する。これにより、第二ヒートシンク22及び第二光源32に対する冷却能力が高められ、第二光源32の温度が低下する。
【0080】
ただし、空気流Q3の流量の増加に付随して増加する空気流Q2の流量の増分は、空気流Q3の増分よりは小さくなる。つまり、空気流Q3の流量が増加することで、空気流Q3と空気流Q2の流量の差分値(Q3-Q2)が増加する。この結果、これらの流量の差分値に由来して生じる、空気流Q1の流量も上昇する。これにより、第一吸気口15から第一室4内に外気が取り込まれる空気流の流量が上昇し、第一ヒートシンク21及び第一光源31に対する冷却能力も高められる。
【0081】
別の一例として、直前のMV=85%、k=5、T2=48℃、Tth=50℃の場合には、補正値f(T2-Tth)=5×(-2)=-10となるため、第一ファン25の回転数r25を設定するためのPWM設定値MVが75%に低下される。この場合には、上記と逆の理由により第二ヒートシンク22及び第二光源32に対する冷却能力が低下し、第二光源32の温度が上昇する。
【0082】
以下、上記の処理が、光源装置1の消灯指示(ステップS6)が来るまで繰り返し実行される。
【0083】
光源装置1の冷却能力を検証するために、第一ファン25の回転数を調整して空気流
Q3の流量を変化させてシミュレーションを行った。この結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1~3及び比較例1~3は、第一ファン25の回転数を変えて空気流Q3の流量を相互に異ならせた状態に対応する。より詳細には、以下の通りである。
【0086】
実施例1~3は、いずれも、空気流Q3の流量が、空気流Q2の流量よりも大きくなるように、第一ファン25の回転数が調整された。比較例1~3は、空気流Q3の流量が、空気流Q2の流量よりも小さくなるように、第一ファン25の回転数が調整された。上述したように、第一ファン25の回転数を変えて空気流Q3の流量を変えると、これに伴って、空気流Q2の流量も変化する。実施例1~3及び比較例1~3は、空気流Q2の流量の変化分も考慮した上で、第一ファン25の回転数が調整されている。
【0087】
表1の結果によれば、比較例1~3の場合、実施例1~3と比べて第一光源31の温度T1がいずれも上限温度を超えており、第一光源31の冷却が十分に行えないことが分かる。特に、比較例1~3のように、空気流Q3の流量が空気流Q2の流量よりも小さい場合には、図12に模式的に示すように、空気流Q1が第二室5から第一室4に向かう向きに流れ(表1では「逆流」と表記している。)、本実施形態とは空気流Q1の向きが反転する。この場合、第二ヒートシンク22を冷却した後の温度が上昇した空気が、第一室4内に流入するため、第一光源31及び第一ヒートシンク21を冷却する能力が低下する。
【0088】
(別構成例)
本実施形態の光源装置1の構造は、種々のバリエーションが可能である。
【0089】
〈1〉図13に示すように、排気口14の位置を筐体2の-X側の面に設ける構成としても構わない。この場合、第二室5内を進行する空気流Q2は、L字状に折れ曲がった後、排気口14から排出される。
【0090】
〈2〉図14に示すように、第二ヒートシンク22を第二室5内に配置しても構わない。この場合、第二吸気口16から第三室6内に取り込まれた外気は、第二通風口12を介して第二室5内に進入した後、第二ヒートシンク22を通過することで、第二ヒートシンク22及び第二光源32を冷却する。この場合においても、第一通風口11は、第二ヒートシンク22よりも下流側に位置するため、第一光源31及び第一ヒートシンク21を冷却した後の空気流Q1が、第二ヒートシンク22に向かって流れることがなく、第二ヒートシンク22及び第二光源32に対する高い冷却能力が確保される。
【0091】
なお、図14に示す構成において、排気口14の位置を、図9と同様に筐体2の+Y側の面に設けても構わない。
【0092】
〈3〉図15に示すように、第二ヒートシンク22が配置される領域と、電装体52が配置される領域とを別にしても構わない。図15に示す例では、第二ヒートシンク22が第三室6内に配置される一方、電装体52は、第二室5に対して壁体62で仕切られた第四室7内に配置されている。この第四室7は、壁体62の一部に設けられた通風口61によって、第二室5との間で空気流の通流が可能に構成されている。
【0093】
図15に示す構成であっても、第二吸気口16から第三室6内に取り込まれた外気は、第二ヒートシンク22を通過することで、第二ヒートシンク22及び第二光源32を冷却した後、第二通風口12を介して第二室5内に進入する。そして、第一通風口11は、第二ヒートシンク22よりも下流側に位置するため、第一光源31及び第一ヒートシンク21を冷却した後の空気流Q1が、第二ヒートシンク22に向かって流れることがなく、第二ヒートシンク22及び第二光源32に対する高い冷却能力が確保される。
【0094】
なお、この構成の場合には、空気流Q2の一部が通風口61を介して第四室7内に流入し、電装体52の近傍を通過した後、主排気口19から空気流Q4として排気される。ただし、この空気流Q2は、第二ヒートシンク22を通過することで温度が上昇しているため、電装体52の冷却効果を実現させるためには、筐体2の外側の外気を第四室7内に取り込むための吸気口を第四室7の外壁に別途備えるのがより好ましい。
【0095】
〈4〉図16に示すように、図15の光源装置1に対して第四室7を備えない構成としても構わない。
【0096】
〈5〉図11を参照して上述した制御フローでは、第二光源32の温度T2に基づいて、第一ファン25の回転数が制御される場合が示されていた。しかし、第一光源31の温度T1に基づいて第一ファン25の回転数が制御されるものとしても構わない。更に、第一光源31の温度T1及び第二光源32の温度T2の双方に基づいて、第一ファン25の回転数が制御されるものとしても構わない。更には、これらの温度情報に基づいて、第二ファン26の回転数も制御されるものとしても構わない。
【0097】
いずれの場合であっても、光源(31,32)の温度が上昇していることを検知すると、第一ファン25を介して排気口14から排出される空気流Q3の流量を高めるように制御され、これによって、空気流Q2の流量を少し増加させると共に、空気流の流量の差分値(Q3-Q2)も増加させる。この結果、双方のヒートシンク(21,22)の冷却能力が向上する。そして、この場合においても、空気流Q1が第二室5から第一室4に向かう向きに流れることのないよう、空気流Q3の流量が空気流Q2の流量よりも高くなるように、第一ファン25の回転数が制御される。
【0098】
[第二実施形態]
本発明に係る光源装置の第二実施形態につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0099】
図17は、光源装置の第二実施形態の構成を、図9にならって模式的に示した図面である。本実施形態の光源装置1は、第一実施形態と比較して、外側筐体82を備える点が異なる。この外側筐体82は、筐体2の少なくとも一部分を覆うように配置されている。
【0100】
図17に示す光源装置1は、排気口14よりも外側に位置する外側筐体82に第一ファン25が搭載されている。また、外側筐体82には、主吸気口(71,72)と、主排気口75がそれぞれ壁面に設けられている。
【0101】
主吸気口71は、外気を外側筐体82内に取り込むと共に、筐体2に設けられた第一吸気口15に外気を導く機能を有する。主吸気口72は、外気を外側筐体82内に取り込むと共に、筐体2に設けられた第二吸気口16に外気を導く機能を有する。主排気口75は、排気口14を介して第二室5から排出された空気を、外側筐体82を介して外気として排出する機能を有する。なお、外側筐体82の肉壁が、筐体2と外側筐体82の間で、主吸気口(71,72)と主排気口75との間の空気の通流を遮蔽する遮風体としての機能を奏している。
【0102】
図17に示す光源装置1のように、第一ファン25が第二室5内に搭載されていない場合であっても、第一ファン25の駆動によって空気流Q3を第二室5から排気する機能が奏される。よって、この空気流Q3の流量を、空気流Q2の流量よりも高めておくことで、第一実施形態と同様の理由により、第一光源31及び第二光源32を十分に冷却させることができる。
【0103】
本実施形態の光源装置1についても、第一実施形態と同様に、種々のバリエーションが可能である。
【0104】
〈1〉例えば、図18に示すように、第二ファン26を、第二室5や第三室6内には搭載せず、筐体2の外側で外側筐体82の内側に搭載しても構わない。すなわち、図18に示す光源装置1では、第二ファン26は、吸気口16を通じて第三室6と筐体2の外側とを連絡する通流経路上に配置される。
【0105】
図18に示す光源装置1の場合、第二ファン26の吸引力によって、主吸気口72を介して外側筐体82内に取り込まれた外気は、第二吸気口16を介して筐体2の第三室6内に流入する。そして、この外気が第二ヒートシンク22を冷却した後、第二通風口12を介して第二室5内に流入する。
【0106】
なお、図18の例では、主吸気口72を介して外側筐体82内に取り込まれた外気の一部が、通風口61を介して第四室7内に流入し、電装体52の冷却に寄与した後、空気流Q4として主排気口19から排気される。
【0107】
〈2〉図19に示すように、第一ファン25及び第二ファン26の双方が、筐体2の外側で外側筐体82の内側に配置されるものとしても構わない。なお、図19では、図18の構成から第四室7を排除した構成が図示されているが、第四室7を備えるものとしても構わない。
【0108】
〈3〉図20に示すように、筐体2の外側に設けられた外側筐体82に第二ファン26を備え、この第二ファン26によって取り込まれた外気が、第一吸気口15と第二吸気口16に向かって分流するものとしても構わない。図20の例では、第二ファン26によって主吸気口72より取り込まれた外気が、第二吸気口16を介して筐体2の第三室6に流入する。また、この外気の一部は、筐体2と外側筐体82との間に設けられた通流空間83を通じて第一吸気口15に導かれ、第一吸気口15を介して筐体2の第一室4内に流入する。
【0109】
図20の構成においても、第一ファン25によって主排気口75から排気される空気流Q3の流量を、第二ファン26によって取り込まれる外気の流量よりも大きくしておくことで、第二室5内に流入する空気流Q2、及び第一室4内に流入する空気流Q1が生じる。ここで、第二ファン26によって取り込まれた外気のうち、第二室5内に流入する空気流Q2の流量と、第一室4内に流入する空気流Q1の流量とは、第一通風口11の開口面積と、第二通風口12の開口面積の比率によって決定される。このため、発熱量の高い第二光源32の冷却能力を高めるべく、第二通風口12の開口面積が、第一通風口11の開口面積よりも大きく設定される。
【0110】
なお、上述した各実施形態の光源装置1においても、第二通風口12の開口面積が、第一通風口11の開口面積よりも大きく設定されているものとしても構わない。
【0111】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0112】
〈1〉本発明は、光源装置1が備える第一光源31及び第二光源32の種類には限定されず、相対的に発熱量の高い第二光源32と、相対的に発熱量の低い第一光源31とを搭載している限りにおいて、適用が可能である。
【0113】
〈2〉上記実施形態では、第一光源31から出射される光と第二光源32から出射される光とが合成光学系42によって合成された後、出射光L1として光出射口3から出射されるものとした。しかし、本発明は、第一光源31から出射される光と第二光源32から出射される光とが、それぞれ独立した光出射口3から出射される構成を排除しない。
【0114】
〈3〉上記実施形態では、光源装置1が第一ファン25及び第二ファン26を備える場合について説明した。しかし、光源装置1が設置される環境によって、排気口14を介して第二室5から排出される空気流Q3の流量が、第二通風口12を介して第二室5内に流入する空気流Q2の流量よりも高められる場合には、必ずしも光源装置1が第一ファン25及び第二ファン26を備えなくても構わない。
【0115】
〈4〉本発明において、光源装置1の筐体2の内側に形成される各領域(第一室4,第二室5、第三室6)の位置関係は任意であり、上述した各実施形態の構造には限定されない。
【0116】
〈5〉光源装置1は蛍光顕微鏡用の光源として利用可能であるが、本発明は光源装置1の利用態様を限定するものではない。
【符号の説明】
【0117】
1 :光源装置
2 :筐体
2a :外壁
2b :外壁
3 :光出射口
4 :第一室
5 :第二室
6 :第三室
7 :第四室
9 :壁体
11 :第一通風口
12 :第二通風口
14 :排気口
15 :第一吸気口
16 :第二吸気口
19 :主排気口
21 :第一ヒートシンク
22 :第二ヒートシンク
22a :冷却管
25 :第一ファン
26 :第二ファン
31 :第一光源
32 :第二光源
32a :半導体レーザ光源素子
32b :蛍光光源素子
41 :コリメートレンズ
42 :合成光学系
43 :反射ミラー
44 :ダイクロイックミラー
45 :コリメートレンズ
51 :電装体
52 :電装体
61 :通風口
62 :壁体
71 :主吸気口
72 :主吸気口
75 :主排気口
82 :外側筐体
83 :通流空間
101 :光源
102 :光源
110 :領域
111 :ファン
112 :ファン
112a :開口
113 :開口
113a :ファン
Q1,Q2,Q3,Q4 :空気流
Q111,Q112,Q113 :空気流
図1
図2
図3
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