(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20231129BHJP
B60K 6/00 20071001ALI20231129BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20231129BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20231129BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20231129BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20231129BHJP
B60K 6/448 20071001ALI20231129BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20231129BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20231129BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20231129BHJP
F01P 3/22 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K6/00
B60W10/30 900
B60K6/22 ZHV
B60K6/26
B60K6/405
B60K6/448
B60K6/54
H02K9/19 A
F01P3/20 P
F01P3/20 Q
F01P3/22 K
(21)【出願番号】P 2020113745
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 浩
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031111(JP,A)
【文献】特開2009-060729(JP,A)
【文献】特開2016-020639(JP,A)
【文献】特開2017-114477(JP,A)
【文献】特開2005-265386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/26,11/02-11/04,
1/00- 6/12,
7/00- 8/00,16/00
B60W 10/00-10/60,
30/00-60/00
H02K 9/00- 9/28
F01M 5/00- 5/04
F01P 3/12- 3/16, 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第1方向に隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットと、
前記エンジンを冷却するためのエンジンオイルの経路であるエンジンオイル経路と、
前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、
前記モータを冷却するためのオイルの経路であるモータ冷却オイル経路と、
前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換する第1熱交換器と、
前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換する第2熱交換器と、
前記モータ冷却用の前記オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する循環経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記オイルと前記沸騰冷却用冷媒との間で熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器と、
を備え、
前記駆動ユニットを前記第1方向から見た場合に、前記モータは、前記第1方向に対して交差する第2方向のサイズが前記エンジンよりも小さく形成されており、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器は、前記モータの側周部に取り付けられている、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記エンジンは、ピストンと、当該ピストンを収容するエンジンハウジングとを有し、
前記モータは、ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータを収容するモータハウジングとを有し、
前記エンジンオイル経路および前記冷却水経路は、前記エンジンハウジング内に形成されており、
前記モータ冷却オイル経路は、前記モータハウジング内に形成されている、
車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両において、
前記車両の前記第1方向は、前記車両の前後方向であり、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記モータの側周部に対して、互いに上下方向に離間した状態で取り付けられている、
車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両において、
前記沸騰冷却器は、前記凝縮部の下方に隣接配置され、前記凝縮部を空冷する沸騰冷却器ファンを更に有し、
前記沸騰冷却器ファンは、上方に向けて送風する、
車両。
【請求項5】
請求項4に記載の車両において、
前記車両の前記第1方向は、前記車両の前後方向であり、
前記モータは、前記エンジンに対して前記第1方向における後方側に隣接配置され、
前記沸騰冷却器の前記凝縮部および前記沸騰冷却器ファンは、前記モータに対して前記
第1方向における後方側に隣接配置されている、
車両。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両において、
前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、および前記沸騰冷却器の前記沸騰部を前記車両の第1方向から見る場合に、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、および前記沸騰冷却器の前記沸騰部は、前記モータの側周部に対して互いに離間した状態で取り付けられている、
車両。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両において、
前記モータ冷却オイル経路は、互いに異なる経路である第1モータ冷却オイル経路と第2モータ冷却オイル経路とを有し、
前記第1熱交換器では、前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換し、
前記第2熱交換器では、前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換し、
前記第1モータ冷却オイル経路と前記第2モータ冷却オイル経路とを切り替える切替手段と、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
前記エンジンの温度に基づき前記切替手段を制御する制御装置と、
を更に備える、
車両。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の車両において、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のそれぞれは、前記モータの側周部への取付方向での高さが、当該取付方向に対して交差する方向での長さおよび幅に対して小さい扁平な外観形状を有する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特にエンジンとモータとを有する駆動ユニットの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えたハイブリッド型の車両が普及してきている。
【0003】
特許文献1には走行用の駆動源としてエンジンおよびモータを備えた自動車が開示されている。特許文献1に開示の自動車では、走行用の駆動源として備えるエンジンおよびモータがともにフロントエリアに搭載されている。
【0004】
特許文献1に開示の自動車では、エンジンで走行するエンジン駆動モードと、モータで走行するモータ駆動モードとが切り替え可能となっている。運転者によりモータ駆動モードが選択された場合には、モータにより自動車の駆動がなされる。
【0005】
一方、運転者がエンジン駆動モードを選択した場合には、自動車の発進の際にはモータによるトルクアシストがなされ、所定車速以上でエンジンによる駆動がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなハイブリッド型の車両においても、車両運動性能の更なる向上が求められている。車両の運動性能を高めようとする場合には、エンジンおよびモータからなる駆動ユニットを車両における中央に近い領域に配置することが有効である。このように駆動ユニットを配置することにより、車両が旋回し易くなり車両運動性能の向上を図ることができる。
【0008】
しかしながら、車両における中央に近い領域には、乗員スペースがあるので、駆動ユニットを搭載するためのスペースは限られている。このため、車両運動性能の向上を図るために駆動ユニットを車両の中央に近い領域に配置するためには、駆動ユニットの小型化を図ることが必要となる。
【0009】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットの小型化を図ることで車両運動性能が高い車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、車両を走行させるために駆動ユニットを駆動させた場合には、エンジンおよびモータは発熱する。このため、駆動ユニットには、エンジンおよびモータを冷却するための冷却手段を設ける必要があるが、エンジンを冷却するための冷却系統と、モータを冷却するための冷却系統とを別々に設ける場合には、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの大型化が避けられない。
【0011】
そこで、本発明者等は、車両運動性能の更なる向上を図るための一方策として、エンジンを冷却するための冷却系統とモータを冷却するための冷却系統とを共用することで、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることを考えた。具体的には、エンジンの冷却系統として備えられている冷却水の循環経路やエンジンオイルの循環経路を、モータを冷却する手段として用いることで、個別に冷却系統を設けるよりも冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることができると考えた。このように冷却手段を設けた駆動ユニットの小型化を図ることができれば、車両における駆動ユニットの搭載場所をより車両の中央に近い領域とすることができ、車両運動性能の向上を図ることができる。
【0012】
しかしながら、上記のようにエンジンとモータとで冷却手段の共用化を図ろうとする場合には、それぞれの冷却用冷媒同士の間で熱交換を行うための熱交換器を設ける必要がある。そして、熱交換器をエンジンの上下方向に配置する場合には、熱交換器が配設された駆動ユニットの上下方向での大型化につながる。
【0013】
一方、熱交換器をエンジンの前後に配置する場合には、駆動ユニットに対して熱交換器を前後に配置した分だけ、熱交換器が配設された駆動ユニットの前後長が長くなってしまい、この場合にも大型化につながる。また、セット構成の前後長が長くなった場合には、駆動ユニットの駆動時に、駆動輪を起点とした振動(変位)が大きくなることも危惧される。
【0014】
そこで、本発明の一態様に係る車両は、車両の第1方向に隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットと、前記エンジンを冷却するためのエンジンオイルの経路であるエンジンオイル経路と、前記エンジンを冷却するための冷却水の経路である冷却水経路と、前記モータを冷却するためのオイルの経路であるモータ冷却オイル経路と、前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換する第1熱交換器と、前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換する第2熱交換器と、前記モータ冷却用の前記オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記オイルと前記沸騰冷却用冷媒との間で熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器と、を備え、前記駆動ユニットを前記第1方向から見た場合に、前記モータは、前記第1方向に対して交差する第2方向のサイズが前記エンジンよりも小さく形成されており、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器は、前記モータの側周部に取り付けられている。
【0015】
上記態様に係る車両では、エンジンオイルとモータ冷却用のオイルとが熱交換する第1熱交換器と、冷却水とモータ冷却用のオイルとが熱交換する第2熱交換器とを備えるので、モータの駆動時に発生する熱をエンジンの冷却経路を用いて冷却することができる。換言すると、上記態様に係る車両では、モータの冷却手段とエンジンの冷却手段とを共用するので、個別に冷却手段を設ける場合に比べて、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることが可能となる。よって、駆動ユニットを車両の中央に近い領域に搭載することが可能となり、車両の重心を車両中央またはその近傍に配置させることが可能となる。これより、上記態様に係る車両では、車両運動性能の向上を図ることができる。
【0016】
また、上記態様に係る車両では、エンジンに対して第2方向でのモータのサイズが小さいことを利用し、第1熱交換器および第2熱交換器をモータの側周部に取り付けることにしている。よって、第1熱交換器および第2熱交換器をエンジンに取り付けたり、モータの後方側に取り付けたりする場合に比べて、第1熱交換器および第2熱交換器を配設した状態での駆動ユニットの小型化を図ることができる。これによっても、駆動ユニットを車両の中央に近い領域に搭載することが可能となり、車両の重心を車両中央またはその近傍に配置させることで車両運動性能の向上を図ることができる。
【0017】
また、上記態様に係る車両では、第1熱交換器および第2熱交換器をモータの側周部に取り付けることによって、例えば駆動ユニットを車両のフロントエリアに搭載する場合においても、上記セット構成の前後長を短く抑えることが可能となる。よって、上記態様に係る車両では、乗員スペースが狭くなるのを小さく抑えることも可能となる。
さらに、上記態様に係る車両では、エンジンの冷却系統だけでなく沸騰冷却器も用いてモータを冷却することができるので、モータを高出力駆動したり、長時間継続して駆動したりするような場合にも、モータを適温に維持することが可能となる。
【0018】
上記態様に係る車両において、前記エンジンは、ピストンと、当該ピストンを収容するエンジンハウジングとを有し、前記モータは、ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータを収容するモータハウジングとを有し、前記エンジンオイル経路および前記冷却水経路は、前記エンジンハウジング内に形成されており、前記モータ冷却オイル経路は、前記モータハウジング内に形成されている、ことにしてもよい。
【0019】
上記構成を採用する場合には、エンジンオイル経路および冷却水経路をエンジンハウジング内に形成し、モータ冷却経路をモータハウジング内に形成することで、エンジンハウジングやモータハウジングの外方を第1熱交換器および第2熱交換器との接続用の各経路を形成する場合に比べて、経路を短くすることができる。また、エンジンハウジングやモータハウジングの外方に各経路を形成しないことで、第1熱交換器および第2熱交換器を配設した状態での駆動ユニットの小型化を図るのに更に有効である。
【0020】
上記態様に係る車両において、前記車両の前記第1方向は、前記車両の前後方向であり、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とは、前記モータの側周部に対して、互いに上下方向に離間した状態で取り付けられている、ことにしてもよい。
【0021】
上記構成を採用する場合には、モータ側周部に対して、上下方向に離間した状態で第1熱交換器と第2熱交換器とを設けることで、例えば、第1熱交換器および第2熱交換器をモータの側周部における左右に取り付ける場合に比べて、第1熱交換器および第2熱交換器が配設された状態での駆動ユニットの小型化を図るのに有効である。
【0024】
上記態様に係る車両において、前記沸騰冷却器は、前記凝縮部の下方に隣接配置され、前記凝縮部を空冷する沸騰冷却器ファンを更に有し、前記沸騰冷却器ファンは、上方に向けて送風する、ことにしてもよい。
【0025】
上記構成を採用する場合には、上方に配置された凝縮部に向けて沸騰冷却器ファンが送風できるので、凝縮部において沸騰冷却用冷媒を高効率に凝縮させることができる。よって、モータの冷却をより確実に行うことで、モータを適温に維持するのに更に有効である。
【0026】
上記態様に係る車両において、前記車両の前記第1方向は、前記車両の前後方向であり、前記モータは、前記エンジンに対して前記第1方向における後方側に隣接配置され、前記沸騰冷却器の前記凝縮部および前記沸騰冷却器ファンは、前記モータに対して前記第1方向における後方側に隣接配置されている、ことにしてもよい。
【0027】
上記構成を採用する場合には、沸騰冷却器の凝縮部および沸騰冷却器ファンをモータの後方側に配置することで、凝縮部からの排熱がモータに伝達されるのを抑制することが可能である。よって、モータの冷却をより確実に行うことで、モータを適温に維持するのに更に有効である。
【0028】
上記態様に係る車両において、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、および前記沸騰冷却器の前記沸騰部を前記車両の第1方向から見る場合に、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器、および前記沸騰冷却器の前記沸騰部は、前記モータの側周部に対して互いに離間した状態で取り付けられている、ことにしてもよい。
【0029】
上記構成を採用する場合には、モータの側周部に対して第1熱交換器、第2熱交換器、および沸騰部を集中させて取り付ける場合に比べて、第2方向でのサイズの小型化を図ることができる。
【0030】
上記態様に係る車両において、前記モータ冷却オイル経路は、互いに異なる経路である第1モータ冷却オイル経路と第2モータ冷却オイル経路とを有し、前記第1熱交換器では、前記エンジンオイル経路を流れる前記エンジンオイルと前記第1モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換し、前記第2熱交換器では、前記冷却水経路を流れる前記冷却水と前記第2モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルとが熱交換し、前記第1モータ冷却オイル経路と前記第2モータ冷却オイル経路とを切り替える切替手段と、前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、前記エンジンの温度に基づき前記切替手段を制御する制御装置と、を更に備える、ことにしてもよい。
【0031】
上記構成を採用する場合には、モータの駆動時において、エンジンの温度に基づいてモータの冷却に係る経路を切り替えることで、エンジンの冷却系統を共用してのモータの冷却が最適になされる。例えば、エンジンの温度が所定の温度よりも低い場合には、モータの熱をエンジンオイルに伝達して冷却し、所定の温度以上となった場合には冷却水に伝達して冷却することできる。車両においては、冷却水を冷却するためにラジエータを有しており、ラジエータにはラジエータファンが備え付けられているので、エンジンの温度が高くなった場合にもモータを適温に維持するのに有効である。
【0032】
また、モータで車両が走行している場合において、温度が低いエンジンに対してエンジンオイルや冷却水を介して伝達されるモータの熱により、エンジンの温度を上昇させることができ、エンジンでの車両走行に移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0033】
上記態様に係る車両において、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のそれぞれは、前記モータの側周部への取付方向での高さが、当該取付方向に対して交差する方向での長さおよび幅に対して小さい扁平な外観形状を有する、ことにしてもよい。
【0034】
上記構成を採用する場合には、扁平な外観形状を有する第1熱交換器および第2熱交換器を採用することで、これらをモータの側周部に取り付けた状態での第2方向のサイズの小型化を図るのに有効である。
【発明の効果】
【0035】
上記の各態様に係る車両では、エンジンおよびモータを有する駆動ユニットの小型化を図ることで、車両の高い車両運動性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】車両における駆動ユニットの搭載位置を示す模式図である。
【
図5】駆動ユニットの一部構成を示す側面図である。
【
図6】熱交換器およびオイルコントロールバルブの配置を示す斜視図である。
【
図8】沸騰冷却器における沸騰冷却器ファンが吹き出す冷却風の向きを示す背面図である。
【
図9】モータの冷却に係る構成を示す模式図である。
【
図10】モータのハウジング内におけるオイル経路を示す背面図(一部切欠き断面図)である。
【
図11】エンジンのハウジング内における冷却水経路を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0038】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0039】
図1に示すように、車両1では、当該車両1を駆動するための駆動ユニット10が、フロントエリア1aにおける後方側部分に搭載されている。駆動ユニット10は、エンジン11~13とモータ14とを有する。駆動ユニット10の詳細な構造については、後述する。
【0040】
駆動ユニット10には、プロペラシャフト15が接続されている。プロペラシャフト15は、車両1の車幅方向中央を後方側に向けて延びている。プロペラシャフト15の後端は、トランスミッション16に接続されている。
【0041】
トランスミッション16には、デファレンシャルギヤ17が接続されている。そして、デファレンシャルギヤ17の車幅方向左右には、ドライブシャフト18,19がそれぞれ連結されている。ドライブシャフト18,19は、それぞれ後輪20,21に接続されている。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントエリア1aに搭載された駆動ユニット10が発生する駆動力により後輪20,21を駆動して走行する。
【0042】
また、車両1においては、前輪22,23のそれぞれに対して、モータ24,25が接続されている。詳細な図示を省略しているが、モータ24,25は、所謂、インホイールモータである。モータ24,25は、車両1の発進時に動力を発生して前輪22,23に伝えるアシストモータとして機能する。また、モータ24,25は、車両1の減速時に発電する回生ブレーキとしても機能する。そして、車両1の減速時にモータ24,25で発生した電力は、キャパシタ28等に充電される。
【0043】
車両1には、バッテリ26およびインバータ27も搭載されている。バッテリ26は、駆動ユニット10のモータ14に対して電力を供給するための蓄電モジュールである。本実施形態に係るバッテリ26は、例えば、リチウムイオンバッテリである。バッテリ26からの電力は、インバータ27を介してモータ14に供給される。
【0044】
ここで、本実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10の駆動モードとして、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとを備える。エンジン駆動モードは、エンジン11~13から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。モータ駆動モードは、モータ14から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して車両1が走行するモードである。
【0045】
なお、車両1では、エンジン駆動モードで駆動の際にはモータ14は駆動力を発生させず、モータ駆動モードで駆動の際にはエンジン11~13は駆動力を発生させないように構成している。
【0046】
車両1において、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとの切替制御は、駆動モード制御部29が行う。駆動モード制御部29は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。駆動モード制御部29は、運転者からの指示や、車両1の状況(車速、加減速度、バッテリ残容量)などを基に駆動モードの制御を実行する。
【0047】
2.駆動ユニット10の搭載位置
車両1における駆動ユニット10の搭載位置について、
図2を用いて説明する。
【0048】
上述のように、車両1では、駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分に搭載されている。具体的には、駆動ユニット10の重心Ax10が、前輪22,23(
図2では、前輪23のみを図示)の回転中心Ax23よりも後方側に位置するように駆動ユニット10が搭載されている。また、駆動ユニット10は、重心Ax10が前輪22,23の回転中心Ax23よりも下方側に位置するように搭載されている。
【0049】
即ち、車両1においては、重量物である駆動ユニット10をコンパクト化することによって、当該駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分であって、ボンネット30と間隔を空けた下方側部分に搭載されている。これにより、車両1の重心位置Ax1を車両1の長手方向の略中央の低い箇所とすることができる。
【0050】
3.駆動ユニット10およびその周辺の構成
駆動ユニット10の詳細構成およびその周辺の構成について、
図3から
図8を用いて説明する。
【0051】
図3および
図4に示すように、駆動ユニット10が有するエンジン11~13は、一例としてロータリーピストンを有するロータリーエンジンである。車両1において、エンジン11~13としてロータリーエンジンを採用することにより、駆動ユニット10の小型化を図るのに優位である。
【0052】
図4に示すように、エンジン11~13の下方には、オイルパン38が配設されている。オイルパン38は、車両前後方向および車幅方向の寸法に対して、高さ方向の寸法が小さい扁平形状を有する。これにより、駆動ユニット10の高さを低く抑えるのに優位である。
【0053】
上記のように、本実施形態に係る車両1においては、オイルパン38が扁平形状を有するため、エンジンオイルの収容容量が少ない。このため、エンジン11~13を流通したエンジンオイルを集めることが主な機能である。よって、駆動ユニット10の側方には、オイルパン38で集められたエンジンオイルを貯留するためのオイルタンク35が設けられている。
【0054】
図3および
図4に示すように、駆動ユニット10の前方には、ラジエータ31およびオイルクーラ32が配設されている。ラジエータ31は、エンジン11~13の熱により高温となった冷却水を冷却するためのデバイスであり、後方側にラジエータファン31aを有する。
【0055】
オイルクーラ32は、ラジエータ31の後方に配置され、ラジエータ31に沿うように配設されている。オイルクーラ32の平面サイズは、ラジエータ31よりも小型である。
【0056】
エンジン11~13とラジエータ31との間は、配管36,37により接続されている。配管37とエンジン11~13との接続部分には、ウォーターポンプ34が設けられている。
【0057】
オイルクーラ32、エンジン11~13、オイルタンク35、およびオイルパン38の相互間は、配管39~41等で接続されている。配管41とエンジン11~13との接続部分には、オイルポンプ33が設けられている。
【0058】
図5に示すように、駆動ユニット10におけるモータ14は、エンジン13の後方に隣接して配置されている。エンジン11~13とモータ14とは出力軸を共有する直結構造となっている。モータ14における車両前後方向(第1方向)に直交する方向(第2方向)でのサイズD2は、エンジン11~13における第2方向でのサイズD1よりも小さい。
【0059】
図5および
図6に示すように、モータ14の側周部(側部ハウジング14b)には、2つの熱交換器42,43が取り付けられている。本実施形態における熱交換器42は「第1熱交換器」に該当し、熱交換器43は「第2熱交換器」に該当する。
【0060】
図6に示すように、熱交換器42と熱交換器43とは、車両上下方向に互いに間隔を空けて取り付けられている。そして、熱交換器42および熱交換器43は、モータ14の後部ハウジング14aよりも前方に収まるように配置されている。換言すると、熱交換器42および熱交換器43は、モータ14の側周部で収まるように配置されている。
【0061】
また、熱交換器42および熱交換器43のそれぞれは、高さ寸法が長さ寸法および幅寸法に比べて小さい扁平な外観形状を有する。このような外観形状を有する熱交換器42および熱交換器43を採用することにより、駆動ユニット10に対して熱交換器42,43が取り付けられてなるセット構成のサイズを小型化するのに優位である。
【0062】
図7に示すように、モータ14の側周部からそれよりも後方側にかけての部分には、沸騰冷却器44が設けられている。沸騰冷却器44は、沸騰部44a、凝縮部44b、配管44c、および沸騰冷却器ファン44dを有する。沸騰冷却器44の配管44cには、モータ14の冷却用オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が充填されている。
【0063】
沸騰部44aは、モータ14の側周部に取り付けられており、沸騰冷却用冷媒とモータ14の冷却用オイル(モータ冷却オイル)との間で熱交換する部分である。
【0064】
凝縮部44bは、モータ14よりも後方側に配置されており、沸騰部44aでの熱交換により沸騰した(蒸発した)沸騰冷却用冷媒を凝縮させる部分である。配管44cは、沸騰部44aと凝縮部44bとの間での沸騰冷却用冷媒の循環経路である。沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bに送風することで沸騰冷却用冷媒の凝縮を促進するための部分である。
【0065】
ここで、
図8に示すように、沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bの下方に隣接配置されている。そして、沸騰冷却器ファン44dからは、矢印Flowで示すように、凝縮部44bを通過するように下方から上方に向けて送風する。このような方向に送風することで、凝縮部44bにおいて、暖かい空気を効率的に排出させることができる。よって、凝縮部44bでは、高効率に沸騰冷却用冷媒を凝縮させることができる。
【0066】
また、
図7に示すように、車両1では、凝縮部44bをモータ14よりも後方に配置することにより、車両1の走行時に凝縮部44bから排出された熱がモータ14に伝達されるのを抑制することができる。これより、モータ14を適温に維持するのに有効である。
【0067】
また、
図6および
図7に示すように、熱交換器42,43および沸騰部44aは、モータ14の側部ハウジング14bに対して、互いに離間した状態で取り付けられている。これにより、モータ14の側部ハウジング14bに対して、集中した状態で熱交換器42,43および沸騰部44aを取り付けるよりも、車両1の上下方向および車幅方向でのサイズの小型化を図るのに優位である。
【0068】
4.モータ14の冷却構成
駆動ユニット10におけるモータ14の冷却構成について、
図9を用いて説明する。
【0069】
図9に示すように、モータ14は、ハウジング14a,14b(
図9では、側部ハウジング14bのみを図示)と、ロータ・ステータ14cと、オイルパン14dとを有する。ハウジング14a,14bの上部には、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32が接続されている。モータ冷却オイル経路LN31は「第1モータ冷却オイル経路」に該当し、モータ冷却オイル経路LN32は「第2モータ冷却オイル経路」に該当する。
【0070】
モータ駆動モードの実行時において、モータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32の何れかからロータ・ステータ14cを冷却してオイルパン14dに流れる。オイルパン14dで受けられたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN33を通りモータ14用のオイルポンプ50に送られる。なお、モータ冷却オイル経路LN33には、モータ冷却オイル経路LN35を介してプレッシャーリリーフバルブ51も接続されている。
【0071】
モータ冷却オイルは、オイルポンプ50からモータ冷却オイル経路LN34を通りオイルコントロールバルブ46に送られる。オイルコントロールバルブ46は、モータ冷却オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN21またはモータ冷却オイル経路LN22の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0072】
モータ冷却オイル経路LN21は、オイルコントロールバルブ45に接続されている。オイルコントロールバルブ45は、「切替手段」に該当し、オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN11またはモータ冷却オイル経路LN12の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0073】
モータ冷却オイル経路LN11は「第1モータ冷却オイル経路」に該当し、モータ冷却オイル経路LN12は「第2モータ冷却オイル経路」に該当する。モータ冷却オイル経路LN11は、熱交換器42を介してモータ冷却オイル経路LN31に接続されている。モータ冷却オイル経路LN12は、熱交換器43を介してモータ冷却オイル経路LN32に接続されている。
【0074】
エンジンオイルの循環経路において、オイルポンプ33から導出されたエンジンオイルは、エンジン冷却オイル経路LN41から熱交換器42を介してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れる。熱交換器42を経由してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れたエンジンオイルは、エキセントリックシャフトへと送られる。そして、ロータを潤滑・冷却する。
【0075】
また、エンジン冷却オイル経路LN42に送られたエンジンオイルの一部は、エンジン11~13の燃焼室に噴射され、ハウジング、アペックスシール、およびサイドシールを潤滑・冷却する。
【0076】
熱交換器42では、モータ冷却オイルとエンジンオイルとの間で熱交換可能となっている。即ち、モータ駆動モードの実行時においては、モータ14で発生した熱により、エンジンオイルを昇温できるようになっている。よって、車両1では、モータ駆動モードの実行時において、燃料が燃焼室に供給されていないエンジン11~13の暖気を行うことができ、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0077】
本実施形態において、エンジン冷却オイル経路LN41およびエンジン冷却オイル経路LN42は、「エンジンオイル経路」に該当する。
【0078】
エンジン11~13の冷却水の循環経路において、エンジン11~13の高圧ウォータージャケットから導出された冷却水は、エンジン冷却水経路LN43から熱交換器43を介してエンジン冷却水経路LN44に送られる。熱交換器43を経由してエンジン冷却水経路LN44へと流れた冷却水は、エンジン11~13の低圧ウォータージャケットに導入される。
【0079】
熱交換器43では、モータ冷却オイルとエンジン冷却用の冷却水との間で熱交換可能となっている。これによっても、モータ駆動モードの実行時において、モータ14で発生した熱でエンジン11~13の暖気を行うことができ、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0080】
モータ14のオイルパン14dには、沸騰冷却器44の沸騰部44aが配設されている。ここで、
図7を用いて説明したように、沸騰部44aは、その外殻がモータ14の外周部に取り付けられているが、配管44cに充填された沸騰冷却用冷媒がオイルパン14d内のモータ冷却オイルと熱交換可能となっている。
【0081】
また、車両1においては、バルブ制御部52およびエンジン水温センサ53も備える。エンジン水温センサ53は、「エンジン温度検出手段」に該当し、例えば、エンジン13とラジエータ31との間の配管36に設けられている。バルブ制御部52は、「制御装置」に該当し、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。バルブ制御部52は、エンジン水温センサ53と信号線SL1で接続され、オイルコントロールバルブ45,46のそれぞれと信号線SL2,SL3で接続され、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dと信号線SL4で接続されている。
【0082】
5.バルブ制御部52が実行するモータ14の冷却制御方法
バルブ制御部52は、モータ駆動モードの実行時において、エンジン水温センサ53からのエンジン水温に関する情報を基に、オイルコントロールバルブ45,46の切替制御および沸騰冷却器ファン44dの駆動制御を実行する。具体的には、次のように制御を行う。
【0083】
(1)エンジン水温が第1閾値未満である場合
バルブ制御部52は、エンジン水温が第1閾値未満であると判断した場合には、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN11とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。なお、本実施形態において、第1閾値は一例として40℃である。
【0084】
エンジン水温が第1閾値未満である場合には、オイルポンプ50から送られたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN34,LN21,LN11,LN31を通り、モータ14に導入される。そして、熱交換器42において、モータ冷却オイルとエンジンオイルとの間で熱交換がなされる。これにより、燃焼室に燃料が供給されていないエンジン11~13の昇温を図ることができ、モータ14の適温の維持を図りながら、エンジン11~13の暖気を行うことができる。
【0085】
(2)エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満である場合
バルブ制御部52は、エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満であると判断した場合には、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN12とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。なお、本実施形態において、第2閾値は一例として80℃である。
【0086】
エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満である場合には、オイルポンプ50から送られたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN34,LN21,LN12,LN32を通り、モータ14に導入される。そして、熱交換器43において、モータ冷却オイルと冷却水との間で熱交換がなされる。
【0087】
また、エンジン水温が第1閾値以上の場合には、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dがバルブ制御部52からの指令を受けて駆動する。
【0088】
以上のように、モータ14による車両1の走行時において、モータ14で発生した熱をエンジン11~13の冷却水を介して放熱することができるとともに、沸騰冷却器44でも放熱することができる。
【0089】
(3)エンジン水温が第2閾値以上である場合
バルブ制御部52は、エンジン水温が第2閾値以上であると判断した場合には、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN22とが接続されようにオイルコントロールバルブ46を切替制御する。なお、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dは、エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満の場合と同様に、駆動している。
【0090】
以上のように、エンジン水温が第2閾値以上である場合には、オイルポンプ50から送られたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN34,LN22を通り、モータ14に導入される。そして、エンジン水温が第2閾値以上である場合には、モータ冷却オイルと冷却水およびエンジンオイルの何れとの間でも熱交換はなされない。
【0091】
モータ14による車両1の走行時において、エンジン水温が第2閾値以上である場合には、モータ14で発生した熱を沸騰冷却器44を介して放熱することができる。
【0092】
6.モータ14のハウジング14a,14b内におけるオイル経路
モータ14のハウジング14a,14b内におけるオイル経路について、
図10を用いて説明する。
【0093】
図10に示すように、モータ冷却用オイルが通流されるモータ冷却オイル経路LN11,LN12,LN21,LN22,LN31~LN35(モータ冷却オイル経路LN33は図誌を省略)は、モータ14のハウジング14a,14b内に設けられている。ハウジング14a,14bが「モータハウジング」に該当する。
【0094】
図10に示すように、モータ14を、後部ハウジング14bを取り外した状態で車両前後方向の後方側から見た場合に、出力軸の上方にオイルコントロールバルブ45,46が配置されている。オイルコントロールバルブ45は車幅方向右側に配置され、オイルコントロールバルブ46は車幅方向左側に配置されている。
【0095】
モータ冷却オイル経路LN34は、オイルポンプ50から車幅方向左側に配置されたオイルコントロールバルブ46へと接続されている。また、モータ冷却オイル経路LN35は、オイルコントロールバルブ46の下方に配置されたプレッシャーリリーフバルブ51へと接続されている。
【0096】
オイルコントロールバルブ46には、モータ冷却オイル経路LN21が接続されている。モータ冷却オイル経路LN21は、出力軸の上側外周に湾曲形成されている。モータ冷却オイル経路LN21の他端は、オイルコントロールバルブ45に接続されている。
【0097】
オイルコントロールバルブ46には、モータ冷却オイル経路LN22も接続されている。モータ冷却オイル経路LN22の他端は、モータ14のハウジング14a,14b内に対して、当該ハウジング14a,14b内に収容されたロータ・ステータ14cにモータ冷却オイルを通流できるように接続されている。
【0098】
オイルコントロールバルブ45には、モータ冷却オイル経路LN11およびモータ冷却オイル経路LN12が接続されている。モータ冷却オイル経路LN11は、出力軸の下側外周に湾曲形成されている。モータ冷却オイル経路LN11の他端は、熱交換器42に接続されている。モータ冷却オイル経路LN12は、モータ冷却オイル経路LN21の更に上側外周に湾曲形成されている。そして、モータ冷却オイル経路LN12の他端は、熱交換器43に接続されている。
【0099】
モータ冷却オイル経路LN31は、一端が熱交換器42に接続され、他端がモータ冷却オイル経路LN22に接続されている。熱交換器42を経由して流れてきたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN31からモータ冷却オイル経路LN22を通りモータ14のハウジング14a,14b内に通流される。
【0100】
モータ冷却オイル経路LN32は、一端が熱交換器43に接続され、他端がモータ冷却オイル経路LN22に接続されている。熱交換器43を経由して流れてきたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN32からモータ冷却オイル経路LN22を通りモータ14のハウジング14a,14b内に通流される。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る車両1では、モータ冷却オイル経路LN11,LN12,LN21,LN22,LN31~LN35をモータ14のハウジング14a,14b内に形成することで、ハウジング14a,14bの外方にモータ冷却オイル経路LN11,LN12,LN21,LN22,LN31~LN35を形成する場合に比べて、経路を短くすることができる。また、モータ14のハウジング14a,14bの外方にモータ冷却オイル経路LN11,LN12,LN21,LN22,LN31~LN35を形成しないことで、熱交換器42,43が配設された状態での駆動ユニット10の小型化を図るのに更に有効である。
【0102】
7.エンジン11~13のハウジング11a内におけるエンジン冷却水経路
本実施形態に係る車両1では、エンジン冷却オイル経路LN41,LN42は、熱交換器42に至るまでの部位を含めてエンジン11~13のハウジング11a内に形成されている。また、本実施形態に係る車両1では、エンジン冷却水経路LN43,LN44は、熱交換器43に至るまでの部位を含めてエンジン11~13のハウジング11a内に形成されている。
【0103】
図11に示すように、エンジン11のハウジング11aには、外周部に高圧冷却水経路49(エンジン冷却水経路LN43を含む)が形成されている。また、エンジン11のハウジング11aには、高圧冷却水経路49よりも内側の部分に、冷却水導入口47および冷却水導出口48が設けられている。なお、エンジン冷却オイル経路LN41,LN42については、図示を省略しているが、同様に、エンジン11~13のハウジング11a内に形成されている。
【0104】
[変形例]
上記実施形態に係る車両1では、3つのエンジン11~13と1つのモータ14とで構成された駆動ユニット10を採用したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、1つのエンジンと1つのモータとで構成される駆動ユニットや、複数のエンジンと複数のモータとで構成される駆動ユニットを採用することもできる。
【0105】
上記実施形態に係る車両1では、エンジン11~13をロータリーエンジンとしたが、本発明は、レシプロエンジンを採用することもできる。ただし、ロータリーエンジンを採用する上記実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10をよりコンパクト化することができ、より高い車両運動性能を実現するのに優位である。
【0106】
上記実施形態に係る車両1では、オイルクーラ32には冷却ファンを備えないこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。オイルクーラに冷却ファンを備えたり、オイルクーラのフィンに霧状の水を噴霧することができる機構を付加したりすることなども可能である。
【0107】
上記実施形態では、車両1の一例としてFR車を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、リヤに駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するRR車や、運転席の後部に駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するMR車、さらにはフロントエリアの後方部分に駆動ユニットを搭載し、駆動力を前輪に伝達するFF車を採用することも可能である。
【0108】
上記実施形態では、オイルコントロールバルブ45,46としてスプール式のバルブを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ポペット式やスライド式のバルブを採用することもできる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
10 駆動ユニット
11~13 エンジン
11a ハウジング(エンジンハウジング)
14 モータ
14a 後部ハウジング(モータハウジング)
14b 側部ハウジング(モータハウジング)
26 バッテリ
29 駆動モード制御部
31 ラジエータ
32 オイルクーラ
42 熱交換器(第1熱交換器)
43 熱交換器(第2熱交換器)
44 沸騰冷却器
44a 沸騰部
44b 凝縮部
44d 沸騰冷却器ファン
45 オイルコントロールバルブ(切替手段)
47 冷却水導入口
48 冷却水導出口
49 高圧冷却水経路
52 バルブ制御部(制御装置)
LN11,LN31 モータ冷却オイル経路(第1モータ冷却オイル経路)
LN12,LN32 モータ冷却オイル経路(第2モータ冷却オイル経路)
LN41,LN42 エンジンオイル経路
LN43,LN44 冷却水経路