(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ロールへミング加工方法及びロールへミング装置
(51)【国際特許分類】
B21D 19/04 20060101AFI20231129BHJP
B21D 39/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B21D19/04 B
B21D39/02 F
(21)【出願番号】P 2020118283
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 晃秀
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0284204(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0006854(KR,A)
【文献】国際公開第2006/117896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/04
B21D 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型の上面に位置決めされたアウタパネルの外周縁に起立する外周フランジを、ロボットアームに装着した曲げローラによって内周側へ折り曲げて、前記アウタパネルの板内側にセットされたインナパネルの外周フランジに重ね合せるロールヘミング加工方法であって、
前記曲げローラの近傍には、先行押えローラを設け、
前記先行押えローラによって、前記アウタパネルの外周フランジの先端部を先行して下方に押圧しながら、前記曲げローラによって、前記アウタパネルの外周フランジを所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程と、
前記予備曲げ工程の後、前記曲げローラによって、前記アウタパネルの外周フランジを前記インナパネルの外周フランジに重ね合せる本曲げ工程と、を備えていること
、
前記先行押えローラの外周面には、断面が円弧状に形成された凹溝部を備え、
前記予備曲げ工程において、前記先行押えローラは、前記アウタパネルの前記外周フランジの先端部を、前記凹溝部を介して下方へ押圧すること、
前記先行押えローラの前記外周フランジに対する角度を変更する場合、前記曲げローラの前記外周フランジに対する角度も一緒に変更されることを特徴とするロールヘミング加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたロールヘミング加工方法において、
前記本曲げ工程では、前記曲げローラによって、前記インナパネルの外周フランジに微小隙間を有しつつ重ね合せた前記アウタパネルの外周フランジの先端部に対して、前記先行押えローラの外周面が斜め上方から下方に押圧することを特徴とするロールヘミング加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたロールヘミング加工方法に用いるロールヘミング装置であって、
前記曲げローラと前記先行押えローラとを備えると共に、前記曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つ前記ロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、
前記先行押えローラは、前記ローラ本体部に連結アームを介して装着され、前記連結アームには、前記先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されていることを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載されたロールヘミング加工方法に用いるロールヘミング装置であって、
前記曲げローラと前記先行押えローラとを備えると共に、前記曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つ前記ロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、
前記ローラ本体部には、前記先行押えローラを可動させる駆動機構を備えていることを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたロールヘミング装置において、
前記駆動機構には、前記先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されていることを特徴とするロールヘミング装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項
5のいずれか1項に記載されたロールヘミング装置において、
前記曲げローラの回転中心軸は、前記曲げローラより小径に形成され、且つローラ本体部から前記曲げローラと反対側へ突出して形成されていることを特徴とするロールヘミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールへミング加工方法及びロールへミング装置に関し、詳しくは、アウタパネルの外周縁に起立する外周フランジを、ロール状曲げ刃(以下、「曲げローラ」とも言う)によって内周側へ折り曲げて、アウタパネルの板内側にセットされたインナパネルの外周フランジに重ね合せるロールヘミング加工方法及び当該ロールヘミング加工方法に用いるロールヘミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用ドアパネル等では、アウタパネルの外周縁に起立する外周フランジを、ロール状曲げ刃(曲げローラ)によって内周側へ折り曲げて、アウタパネルの板内側にセットされたインナパネルの外周フランジに重ね合せるロールヘミング加工方法が採用されている。例えば、特許文献1には、
図12、
図13に示すように、上記ロールヘミング加工方法において、アウタパネル101の外周フランジ102を予備曲げする予備曲げローラ103と、該予備曲げローラ103の後段に位置して予備曲げローラ103により予備曲げされた外周フランジ102を本曲げする本曲げローラ104とを、ロボットアーム105に取り付け、ロボットアーム105でこれら両ローラ103、104を下型106上に位置決めされたアウタパネル101の外周フランジ102に沿って移動させ、両ローラ103、104で外周フランジ102の予備曲げ加工と本曲げ加工を連続して行うロールヘミング加工方法が、開示されている。
【0003】
上記ロールヘミング加工方法によれば、進行方向に対して先行する予備曲げローラ103は、下型106上に位置決めされたアウタパネル101の外周フランジ102に対して回転中心軸を内周側へ略45度程度傾斜した状態で、アウタパネル101の外周フランジ102に沿って移動しながら回転する。この予備曲げローラ103によって、アウタパネル101の外周縁に起立する外周フランジ102を略45度程度内周側へ折り曲げる予備曲げ加工を行う。また、後段の本曲げローラ104は、下型106上に位置決めされたアウタパネル101の板内側に重ね合されたインナパネル107の外周フランジ108に対して回転中心軸を略平行に配置した状態で、アウタパネル101の外周フランジ102に沿って移動しながら回転する。この本曲げローラ104によって、略45度程度内周側へ折り曲げた外周フランジ102をインナパネル107の外周フランジ108に略平行に重ね合せる位置まで折り曲げる本曲げ加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ロールヘミング加工方法では、以下のような問題があった。すなわち、
図14に示すように、予備曲げ加工において、アウタパネル101の外周縁101aに起立する外周フランジ102を略45度程度内周側へ折り曲げる際、アウタパネル101の外周フランジ102が予備曲げローラ103の外周面103aに巻き付くように変形するので、予備曲げローラ103の進行方向前方に位置するアウタパネル101の外周縁101aが上方へ持ち上げられる現象が発生する。また、
図15に示すように、本曲げ加工においても、略45度程度内周側へ折り曲げた外周フランジ102をインナパネル107の外周フランジ108に略平行に重ね合せる位置まで折り曲げる際、アウタパネル101の外周フランジ102の先端部が本曲げローラ104の外周面によって押圧されることによって、断面方向でアウタパネル101の外周縁101aがインナパネル107側へ僅かに押し上げられる現象が発生する。
【0006】
したがって、上記ロールヘミング加工方法では、予備曲げローラ103によって進行方向前方に位置するアウタパネル101の外周縁101aが上方へ持ち上げられる現象と、本曲げローラ104によって断面方向でアウタパネル101の外周縁101aがインナパネル107側へ僅かに押し上げられる現象とが、相乗的に作用することによって、ロールヘミング加工に伴い、アウタパネル101の外周縁101aにおけるトータルの塑性変形量Dが増加して、アウタパネル101の板外面101Gがインナパネル107側へ折れ曲がる所謂「面ダレ」101GDとも言う品質不具合が発生し易いという問題があった。この品質不具合(面ダレ101GD)を低減するためには、例えば、外周フランジ102の折り曲げ角度が異なる複数の予備曲げローラを備える必要があるが、この場合、ロールヘミング装置の重量が増加し、ロボットアーム105に対する負荷が増大するので、生産速度が遅くなる等の問題があった。
【0007】
また、上記ロールヘミング加工方法では、1つのロボットアーム105に予備曲げローラ103と本曲げローラ104とを進行方向の前後に取り付けているので、複数の曲げローラ(103、104)が必要であると共に、一方の曲げローラ(103)による外周フランジ102の折り曲げ角度を調整したくても、他方の曲げローラ(104)による外周フランジ102の折り曲げ角度も一緒に変更されるので、一方又は他方の曲げローラ(103、104)のみの折り曲げ角度を調節できる調整機構を設ける必要があり、ロールヘミング装置の構造が複雑化する等の問題もあった。
【0008】
なお、アウタパネル101の外周フランジ102の予備曲げ加工と本曲げ加工とを、連続させず、別々に分けて行うロールヘミング加工方法においては、上記品質不具合(面ダレ101GD)を低減させるために、予備曲げ加工における外周フランジ102の折り曲げ角度を少しずつ増加させて複数回、予備曲げ加工を行うことも可能であるが、この場合、ロールヘミング加工に伴うトータルの生産時間(生産タクト)が増加するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ折れ曲がる面ダレ等の品質不具合を低減できると共に、ロールヘミング装置の簡素化が可能で、生産性の良いロールヘミング加工方法及び当該ロールヘミング加工方法に使用するロールヘミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るロールヘミング加工方法及びロールヘミング装置は、次のような構成を有している。
(1)下型の上面に位置決めされたアウタパネルの外周縁に起立する外周フランジを、ロボットアームに装着した曲げローラによって内周側へ折り曲げて、前記アウタパネルの板内側にセットされたインナパネルの外周フランジに重ね合せるロールヘミング加工方法であって、
前記曲げローラの近傍には、先行押えローラを設け、
前記先行押えローラによって、前記アウタパネルの外周フランジの先端部を先行して下方に押圧しながら、前記曲げローラによって、前記アウタパネルの外周フランジを所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程と、
前記予備曲げ工程の後、前記曲げローラによって、前記アウタパネルの外周フランジを前記インナパネルの外周フランジに重ね合せる本曲げ工程と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、曲げローラの近傍には、先行押えローラを設け、先行押えローラによって、アウタパネルの外周フランジの先端部を先行して下方に押圧しながら、曲げローラによって、アウタパネルの外周フランジを所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程と、予備曲げ工程の後、曲げローラによって、アウタパネルの外周フランジをインナパネルの外周フランジに重ね合せる本曲げ工程と、を備えているので、予備曲げ工程で、アウタパネルの外周フランジが曲げローラの外周面に巻き付くように変形しようとするとき、曲げローラの近傍に設けた先行押えローラが、アウタパネルの外周フランジの先端部を先行して下方に押圧することによって、曲げローラの進行方向前方に位置するアウタパネルの外周縁が上方へ持ち上げられることを抑制することができる。
【0012】
そのため、予備曲げ工程の後の本曲げ工程において、曲げローラによって、アウタパネルの外周フランジをインナパネルの外周フランジに重ね合せるときに、断面方向でアウタパネルの外周縁がインナパネル側へ僅かに押し上げられるものの、ヘミング加工に伴うアウタパネルの外周縁のトータルの塑性変形量を低減させることができる。その結果、最終的には、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレ)を低減させることができる。また、この場合、予備曲げ加工を一回で行うことができるので、予備曲げ加工を複数回行う必要がなく、ロールヘミング加工に伴うトータルの生産時間(生産タクト)が増加するのを、回避することができる。
【0013】
また、予備曲げ工程と本曲げ工程との両方で、1つの曲げローラによって、アウタパネルの外周フランジを内周側へ折り曲げるので、予備曲げ工程と本曲げ工程における外周フランジの折り曲げ角度を、ロボットアームのアウタパネルに対する位置・角度等を調節することによって、それぞれ独自に調整することができる。また、曲げローラの近傍には、先行押えローラを設けているが、先行押えローラは、アウタパネルの外周フランジの先端部を下方に押圧するだけであるので、外周フランジの折り曲げ角度の調整に併せて、先行押えローラの押圧角度を調節する必要がない。そのため、先行押えローラを含むロールヘミング装置の簡素化を図ることができる。
【0014】
よって、本発明によれば、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ僅かに折れ曲がる面ダレ等の品質不具合を低減できると共に、ロールヘミング装置の簡素化が可能で、生産性の良いロールヘミング加工方法を提供することができる。
【0015】
(2)(1)に記載されたロールヘミング加工方法において、
前記本曲げ工程では、前記曲げローラによって、前記インナパネルの外周フランジに微小隙間を有しつつ重ね合せた前記アウタパネルの外周フランジの先端部に対して、前記先行押えローラの外周面が斜め上方から下方に押圧することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、本曲げ工程では、曲げローラによって、インナパネルの外周フランジに微小隙間を有しつつ重ね合せたアウタパネルの外周フランジの先端部に対して、先行押えローラの外周面が斜め上方から下方に押圧するので、アウタパネルの板外面の面品質を確保しつつ、インナパネルの外周フランジに対するアウタパネルの外周フランジの先端部の口開きを、簡単に解消することができる。
【0017】
すなわち、本曲げ工程では、曲げローラによって、アウタパネルの外周フランジをインナパネルの外周フランジに微小隙間を有しつつ重ね合せたので、アウタパネルの板外面にアウタパネル及びインナパネルの各外周フランジの先端部による圧痕(品質不具合)が生じることがない。また、アウタパネルの外周フランジの先端部に対して、先行押えローラの外周面が斜め上方から下方に押圧することによって、インナパネルの外周フランジに対するアウタパネルの外周フランジの先端部の口開き(隙間)を簡単に閉じさせることができる。これは、新たに押えローラを追加することなく、本曲げ工程において、曲げローラの進行方向を予備曲げ工程における進行方向と逆転させることによって、簡単に実現できる。
【0018】
(3)(1)に記載されたロールヘミング加工方法に用いるロールヘミング装置であって、
前記曲げローラと前記先行押えローラとを備えると共に、前記曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つ前記ロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、
前記先行押えローラは、前記ローラ本体部に連結アームを介して装着され、前記連結アームには、前記先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されていることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、曲げローラと先行押えローラとを備えると共に、曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、先行押えローラは、ローラ本体部に連結アームを介して装着され、連結アームには、先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されているので、曲げローラによって進行方向前方に位置するアウタパネルの外周縁が上方へ持ち上げられる変形力を弾性部材の付勢力によって安定的に打ち消しつつ、弾性部材が撓むことによって、アウタパネルの外周フランジの先端部に対する先行押えローラの押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネルの外周フランジの座屈変形等を回避させることができる。そのため、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ)を安定的に低減させると同時に、アウタパネルの外周フランジの座屈変形等をも回避させことができる。
【0020】
(4)(1)又は(2)に記載されたロールヘミング加工方法に用いるロールヘミング装置であって、
前記曲げローラと前記先行押えローラとを備えると共に、前記曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つ前記ロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、
前記ローラ本体部には、前記先行押えローラを可動させる駆動機構を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、曲げローラと先行押えローラとを備えると共に、曲げローラの回転中心軸を回動自在に保持し、且つロボットアームに固定されたローラ本体部を備え、ローラ本体部には、先行押えローラを可動させる駆動機構を備えているので、予備曲げ工程において、駆動機構を作動させることによって、例えば、アウタパネルの外周フランジのフランジ幅や起立するフランジ角度等に応じて、曲げローラに対する先行押えローラの相対位置を最適な位置に変更させることができる。また、本曲げ工程において、駆動機構を作動させることによって、先行押えローラをインナパネルに対して干渉しない位置へ簡単に移動させ、又は先行押えローラの外周面をアウタパネルの外周フランジの先端部に対して斜め上方から下方に押圧する位置へ簡単に移動させることができる。
【0022】
(5)(4)に記載されたロールヘミング装置であって、
前記駆動機構には、前記先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、駆動機構には、先行押えローラを下方へ付勢する弾性部材が装着されているので、予備曲げ工程において、曲げローラによって進行方向前方に位置するアウタパネルの外周縁が上方へ持ち上げられる変形力を弾性部材の付勢力によって安定的に打ち消しつつ、弾性部材が撓むことによって、アウタパネルの外周フランジの先端部に対する先行押えローラの押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネルの外周フランジの座屈変形等を回避させることができる。そのため、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ)を安定的に低減させると同時に、アウタパネルの外周フランジの座屈変形等をも回避させことができる。
【0024】
(6)(3)乃至(5)のいずれか1つに記載されたロールヘミング装置において、
前記先行押えローラの外周面には、断面が円弧状に形成された凹溝部を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、先行押えローラの外周面には、断面が円弧状に形成された凹溝部を備えているので、予備曲げ工程において、先行押えローラは、アウタパネルの外周フランジの先端部を、凹溝部を介して下方へ押圧することができる。また、予備曲げ工程において、曲げローラの回転中心軸のアウタパネルに対する傾斜角度を変化させて、アウタパネルの外周フランジを内周側へ折り曲げる角度を微妙に調節する場合でも、アウタパネルの外周フランジの先端部は、先行押えローラの凹溝部の円弧状断面に沿って移動できる。そのため、曲げローラによるアウタパネルの外周フランジの折り曲げ角度の大小に関わらず、先行押えローラは、アウタパネルの外周フランジの先端部を、凹溝部を介して所定の押圧力で常に下方に押圧することができる。その結果、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレ)を、より一層安定的に低減させることできる。
【0026】
(7)(3)乃至(6)のいずれか1つに記載されたロールヘミング装置において、
前記曲げローラの回転中心軸は、前記曲げローラより小径に形成され、且つローラ本体部から前記曲げローラと反対側へ突出して形成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、曲げローラの回転中心軸は、曲げローラより小径に形成され、且つローラ本体部から曲げローラと反対側へ突出して形成されているので、例えば、アウタパネルの外周フランジのフランジ幅が短く形成されている領域では、曲げローラより小径に形成された回転中心軸の外周面によって、アウタパネルの外周フランジの予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を行うことができる。そのため、曲げローラの種類を増加させることなく、曲げローラの簡素化を図りながら、アウタパネルの外周フランジのフランジ幅等に対応して予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、アウタパネルの外周縁において、アウタパネルの板外面がインナパネル側へ僅かに折れ曲がる面ダレ等の品質不具合を低減できると共に、曲げローラ装置の簡素化が可能で、生産性の良いロールヘミング加工方法及びロールヘミング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係る第1実施例のロールへミング装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る第1~第3実施例のロールへミング加工方法において、予備曲げ工程を説明する概略斜視図である。
【
図3】
図2に示す予備曲げ工程において、先行押えローラがアウタパネルの外周フランジの先端部を下方へ押圧する状態の断面図である。
【
図4】
図3に示す先行押えローラにおける凹溝部の詳細断面図である。
【
図5】
図1に示す第1実施例のロールへミング装置における概略斜視図であって、(A)は予備曲げ工程における斜視図を示し、(B)は本曲げ工程における斜視図を示す。
【
図6】
図5に示す第1実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図であって、(A)は予備曲げ工程における要部断面図を示し、(B)は本曲げ工程における要部断面図を示す。
【
図7】本実施形態に係る第2実施例のロールへミング装置における概略斜視図である。
【
図8】
図6に示す第2実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図であって、(A)は予備曲げ工程における要部断面図を示し、(B)は本曲げ工程における要部断面図を示す。
【
図9】従来のロールへミング装置における本曲げ加工の要部断面図であって、(A)は曲げローラの加圧力が過大の場合の断面図を示し、(B)は曲げローラの加圧力が過小の場合の断面図を示し、(C)は曲げローラの加圧力をアウタパネルの外周フランジにおける先端部側に多く加えた場合の断面図を示す。
【
図10】本実施形態に係る第3実施例のロールへミング装置における概略斜視図であって、(A)は予備曲げ工程における斜視図を示し、(B)は本曲げ工程における斜視図を示す。
【
図11】
図10に示す第3実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図であって、(A)は予備曲げ工程における要部断面図を示し、(B)は本曲げ工程における要部断面図を示す。
【
図12】特許文献1に記載されたロールへミング装置の概略側面図である。
【
図13】
図12に示すロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図である。
【
図14】
図13に示す予備曲げ加工時に、予備曲げローラの進行方向前方に位置するアウタパネルの外周縁が上方へ持ち上げられる現象を表す斜視図である。
【
図15】
図13に示す本曲げ加工時に、断面方向でアウタパネルの外周縁がインナパネル側へ僅かに押し上げられる現象を表す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態に係るロールへミング加工方法及びロールへミング装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のロールへミング加工方法を説明し、そのロールへミング加工方法に使用するロールへミング装置を説明する。また、本実施形態に係る第2実施例のロールへミング加工方法を説明し、そのロールへミング加工方法に使用するロールへミング装置を説明する。さらに、本実施形態に係る第3実施例のロールへミング加工方法を説明し、そのロールへミング加工方法に使用するロールへミング装置を説明する。
【0031】
<第1実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置>
まず、本実施形態に係る第1実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置を、
図1~
図6を用いて説明する。
図1に、本実施形態に係る第1実施例のロールへミング装置の概略斜視図を示す。
図2に、本実施形態に係る第1~第3実施例のロールへミング加工方法において、予備曲げ工程を説明する概略斜視図を示す。
図3に、
図2に示す予備曲げ工程において、先行押えローラがアウタパネルの外周フランジの先端部を下方へ押圧する状態の断面図を示す。
図4に、
図3に示す先行押えローラにおける凹溝部の詳細断面図を示す。
図5に、
図1に示す第1実施例のロールへミング装置における概略斜視図を示す。
図5(A)に、予備曲げ工程における斜視図を示し、
図5(B)に、本曲げ工程における斜視図を示す。
図6に、
図5に示す第1実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図を示す。
図6(A)に、予備曲げ工程における要部断面図を示し、
図6(B)に、本曲げ工程における要部断面図を示す。
【0032】
(ロールへミング加工方法)
図1~
図6に示すように、本実施形態に係る第1実施例のロールヘミング加工方法は、下型1の上面に位置決めされたアウタパネル2の外周縁2aに起立する外周フランジ21を、ロボットアーム3に装着した曲げローラ4によって内周側へ折り曲げて、アウタパネル2の板内側にセットされたインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せるロールヘミング加工方法である。ここで、アウタパネル2及びインナパネル5は、例えば、板厚が0.7mm程度の軟鋼板で形成されている。アウタパネル2は、例えば、車両用ドアアウタパネルに適し、インナパネル5は、当該車両用ドアアウタパネルに連結される車両用ドアインナパネルに適しているが、他のパネルでも良いことは言うまでもない。
【0033】
なお、下型1には、アウタパネル2が載置されるパネル受け部11が形成されている。パネル受け部11は、アウタパネル2の外周縁2aに沿って適宜面積で形成されている。また、パネル受け部11の内周側には、アウタパネル2を下型1に固定するため、アウタパネル2の板外面2Gに吸着する吸着部材12(例えば、ゴム製のバキュームカップ)が配設されている。また、下型1には、アウタパネル2を下型1の上面に位置決めするため、図示しない可動式の位置決めガイド等を備えている。また、下型1には、インナパネル5をアウタパネル2の板内側に位置決めするため、図示しない可動式の位置決め治具等を備えている。
【0034】
また、第1実施例の本ロールヘミング加工方法は、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設け、先行押えローラ6によって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧しながら、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度(例えば、40~50度程度)だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程S1と、予備曲げ工程S1の後、同一の曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せる本曲げ工程S2と、を備えている。本ロールヘミング加工方法では、1つの曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21に対する予備曲げ加工と本曲げ加工との両方を行うことになる。
【0035】
また、
図2に示すように、本ロールヘミング加工方法の予備曲げ工程S1では、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度だけ内周側へ折り曲げるため、曲げローラ4の回転中心をアウタパネル2に対して所定の傾斜角度θだけ傾斜した状態で、曲げローラ4を進行方向へ移動させる。その際、曲げローラ4の外周面4aは、アウタパネル2の外周フランジ21の変形抵抗を受けて、外周フランジ21のフランジ上方からフランジ下方に向けて反時計回りに自転する。
【0036】
したがって、アウタパネル2の外周フランジ21は、反時計回りに自転する曲げローラ4の外周面4aに対して、外周フランジ21のフランジ上方が巻き付くように変形する。この外周フランジ21が曲げローラ4の外周面4aに巻き付くことによって、曲げローラ4の進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aを上方へ持ち上げようとする。
【0037】
しかし、本ロールヘミング加工方法の予備曲げ工程S1では、曲げローラ4の近傍に設けた先行押えローラ6が、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧することによって、曲げローラ4の進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられることを抑制することができる。
【0038】
そのため、
図5、
図6に示すように、予備曲げ工程S1の後の本曲げ工程S2において、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せるときに、断面方向でアウタパネル2の外周縁2aがインナパネル5側へ僅かに押し上げられるものの、ロールヘミング加工に伴うアウタパネル2の外周縁2aのトータルの塑性変形量dを低減させることができる。
【0039】
その結果、最終的には、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を、大幅に低減させることができる。また、この場合、予備曲げ加工を一回で行うことができるので、予備曲げ加工を複数回行う必要がなく、ロールヘミング加工に伴うトータルの生産時間(生産タクト)が増加するのを、回避することができる。
【0040】
また、予備曲げ工程S1と本曲げ工程S2との両方で、1つの曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を内周側へ折り曲げるので、予備曲げ工程S1と本曲げ工程S2における外周フランジ21の折り曲げ角度を、ロボットアーム3のアウタパネル2に対する位置、角度等を調節することによって、それぞれ独自に調整することができる。また、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設けているが、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを下方に押圧するだけであるので、外周フランジ21の折り曲げ角度の調整に併せて、先行押えローラ6の押圧角度を調節する必要がない。そのため、先行押えローラ6を含むロールヘミング装置10の簡素化を図ることができる。
【0041】
よって、本実施形態に係る第1実施例のロールヘミング加工方法によれば、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる面ダレ2GD等の品質不具合を低減できると共に、ロールへミング装置10の簡素化が可能で、生産性の良いロールヘミング加工方法を提供することができる。
【0042】
(ロールへミング装置)
また、
図1に示すように、上記ロールヘミング加工方法に使用する第1実施例のロールヘミング装置10は、曲げローラ4と先行押えローラ6とを備えている。また、曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持し、且つロボットアーム3に固定されたローラ本体部42を備えている。先行押えローラ6は、ローラ本体部42に連結アーム61を介して装着され、連結アーム61には、先行押えローラ6を下方へ付勢する弾性部材62が装着されている。
【0043】
ここで、ローラ本体部42は、略筒状に形成され、その先端部には曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持する軸受け部421が形成されている。軸受け部421は、曲げローラ4の回転中心軸41がローラ本体部42の長手方向と直交するように、形成されている。曲げローラ4は、回転中心軸41の一端側に形成され、円環状に形成された外周面4aがヘミング加工用の曲げ刃を構成している。曲げローラ4の外周面4aの幅寸法は、アウタパネル2の外周フランジ21の幅寸法と同等又はそれ以上に形成され、その外径は、例えば、80~100mm程度に形成されている。ローラ本体部42の基端部には、ロボットアーム3の先端部に締結する締結フランジ422が形成されている。
【0044】
また、連結アーム61の基端部は、ローラ本体部42の側壁に固定されている。連結アーム61に先端部には、弾性部材62の取り付け部611が形成されている。弾性部材62は、取り付け部611と先行押えローラ6を回動自在に保持する保持部63との間に、伸縮自在に装着されている。保持部63には、取り付け部611を挿通する鍔付きリテーナピン64のネジ部が締結されている。鍔付きリテーナピン64は、先行押えローラ6の落下止めを兼ねている。鍔付きリテーナピン64の軸部には、例えば、圧縮コイルばねから成る弾性部材62が嵌装されている。
【0045】
上記第1実施例のロールヘミング装置10によれば、
図1、
図2、
図6(A)に示すように、曲げローラ4によって進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられる変形力を、弾性部材62の付勢力によって安定的に打ち消すことができる。また、弾性部材62が撓むことによって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対する先行押えローラ6の押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等を回避させることができる。そのため、
図6(B)に示すように、アウタパネル2の外周縁2aにおける塑性変形量dを低減して、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を安定的に低減させると同時に、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等をも回避させことができる。
【0046】
ここで、
図2、
図4、
図6(A)に示すように、先行押えローラ6の外周面6aには、断面が円弧状に形成された凹溝部6mを備えていることが好ましい。この場合、予備曲げ工程S1において、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを、円弧状に形成された凹溝部6mを介して下方へ押圧することができる。凹溝部6mの円弧面を形成する半径は、例えば、アウタパネル2の外周フランジ21における平均的なフランジ幅寸法程度が好ましい。
【0047】
したがって、予備曲げ工程S1において、曲げローラ4の回転中心軸41のアウタパネル2に対する傾斜角度θを変化させて、アウタパネル2の外周フランジ21を内周側へ折り曲げる角度を微妙に調節する場合でも、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aは、先行押えローラ6の凹溝部6mの円弧状断面に沿って移動できる。そのため、曲げローラ4によるアウタパネル2の外周フランジ21の折り曲げ角度の大小に関わらず、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを、凹溝部6mを介して所定の押圧力で常に下方へ押圧することができる。その結果、
図6(B)に示すように、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレSGD)を、より一層安定的に低減させることできる。
【0048】
また、
図1、
図3に示すように、曲げローラ4の回転中心軸41は、曲げローラ4より小径に形成され、且つローラ本体部42から曲げローラ4と反対側へ突出して形成されていることが好ましい。この場合、アウタパネル2の外周フランジ21のフランジ幅が短く形成されている領域では、曲げローラ4より小径に形成された回転中心軸41の外周面によって、アウタパネル2の外周フランジ21の予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を行うことができる。そのため、曲げローラ4の種類を増加させることなく、曲げローラ4の簡素化を図りながら、アウタパネル2の外周フランジ21の長さに対応して予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を効率的に行うことができる。
【0049】
また、
図5、
図6に示すように、先行押えローラ6は、曲げローラ4に対して進行方向の前方に配置され、先行押えローラ6の外径は、曲げローラ4の外径より小さく形成されていることが好ましい。この場合、
図5(A)、
図6(A)に示すように、予備曲げ工程S1では、ローラ本体部42を進行方向に対して前傾姿勢(ローラ本体部42の基端部を、ローラ本体部42の先端部より進行方向前方に倒した姿勢)に配置して、先行押えローラ6の凹溝部6mが、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを所定の押圧力で下方に押圧しながら、曲げローラ4が、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度(例えば、40~50度程度)だけ内周側へ折り曲げることが可能である。また、
図5(B)、
図6(B)に示すように、本曲げ工程S2では、ローラ本体部42を進行方向に対して後傾姿勢(ローラ本体部42の基端部を、ローラ本体部42の先端部より進行方向後方に倒した姿勢)に配置して、先行押えローラ6をアウタパネル2の外周フランジ21から離間させた状態で、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せることが可能である。
【0050】
<第2実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置>
次に、本実施形態に係る第2実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置について、
図2、
図7、
図8を用いて説明する。
図7に、本実施形態に係る第2実施例のロールへミング装置における概略斜視図を示す。
図8に、
図7に示す第2実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図を示す。
図8(A)に、予備曲げ工程における要部断面図を示し、
図8(B)に、本曲げ工程における要部断面図を示す。
【0051】
図2、
図7、
図8に示すように、本実施形態に係る第2実施例のロールへミング加工方法は、下型1の上面に位置決めされたアウタパネル2の外周縁2aに起立する外周フランジ21を、ロボットアーム3に装着した曲げローラ4によって内周側へ折り曲げて、アウタパネル2の板内側にセットされたインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せるロールヘミング加工方法であって、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設け、先行押えローラ6によって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧しながら、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程S1と、予備曲げ工程S1の後、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せる本曲げ工程S2と、を備えている。上記内容は、上述した第1実施例のロールへミング加工方法と共通するので、共通の符号を付して、その説明は、原則として割愛する。ここでは、第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0052】
すなわち、第2実施例のロールへミング装置10Bには、
図7に示すように、曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持し、且つロボットアーム3に固定されたローラ本体部42を備え、ローラ本体部42には、先行押えローラ6を可動させる駆動機構65を備えていることが、第1実施例のロールへミング装置10と相違する。駆動機構65は、例えば、公知の平行リンク機構と平行リンクの一端に連結された駆動シリンダ等によって構成することができる。
【0053】
したがって、第2実施例のロールへミング加工方法では、
図7、
図8(A)に示すように、予備曲げ工程S1において、駆動機構65を作動させることによって、アウタパネル2の外周フランジ21のフランジ幅やフランジ角度等に応じて、曲げローラ4に対する先行押えローラ6の相対位置を最適な位置に変更させることができる。また、
図7、
図8(B)に示すように、本曲げ工程S2において、駆動機構65を作動させることによって、先行押えローラ6をインナパネル5に対して干渉しない位置へ簡単に移動させることができる。
【0054】
そのため、予備曲げ工程S1では、例えば、
図2、
図7、
図8(A)に示すように、ローラ本体部42を進行方向に対して前傾姿勢に配置して、先行押えローラ6の凹溝部6mが、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを所定の押圧力で下方に押圧しながら、曲げローラ4が、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度(例えば、40~50度程度)だけ内周側へ折り曲げることが可能である。また、本曲げ工程S2では、
図7、
図8(B)に示すように、ローラ本体部42を同じく前傾姿勢に配置して、先行押えローラ6を駆動機構65によって、アウタパネル2の外周フランジ21から離間させた状態で、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せることが可能である。
【0055】
なお、
図7に示すように、駆動機構65には、先行押えローラ6を下方へ付勢する弾性部材62が装着されていることが好ましい。この場合、
図2、
図7、
図8(A)に示すように、予備曲げ工程S1において、曲げローラ4によって進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられる変形力を弾性部材62の付勢力によって安定的に打ち消しつつ、弾性部材62が撓むことによって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対する先行押えローラ6の押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等を回避させることができる。そのため、
図8(B)に示すように、本曲げ工程S2において、アウタパネル2の外周縁2aにおける塑性変形量dを低減して、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を安定的に低減させると同時に、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等をも回避させことができる。
【0056】
<第3実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置>
次に、本実施形態に係る第3実施例のロールへミング加工方法とロールへミング装置について、
図2、
図9~
図11を用いて説明する。
図9に、従来のロールへミング装置における本曲げ加工の要部断面図を示す。
図9(A)に、曲げローラの加圧力が過大の場合の断面図を示し、
図9(B)は曲げローラの加圧力が過小の場合の断面図を示し、
図9(C)は曲げローラの加圧力をアウタパネルの外周フランジにおける先端部側に多く加えた場合の断面図を示す。
図10に、本実施形態に係る第3実施例のロールへミング装置における概略斜視図を示す。
図10(A)に、予備曲げ工程における斜視図を示し、
図10(B)に、本曲げ工程における斜視図を示す。
図11に、
図10に示す第3実施例のロールへミング装置における曲げ加工の要部断面図を示す。
図11(A)に、予備曲げ工程における要部断面図を示し、
図11(B)に、本曲げ工程における要部断面図を示す。
【0057】
図2、
図10、
図11に示すように、本実施形態に係る第3実施例のロールへミング加工方法は、下型1の上面に位置決めされたアウタパネル2の外周縁2aに起立する外周フランジ21を、ロボットアーム3に装着した曲げローラ4によって内周側へ折り曲げて、アウタパネル2の板内側にセットされたインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せるロールヘミング加工方法であって、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設け、先行押えローラ6によって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧しながら、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程S1と、予備曲げ工程S1の後、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せる本曲げ工程S2と、を備えている。上記内容は、上述した第1実施例のロールへミング加工方法と共通するので、共通の符号を付して、その説明は、原則として割愛する。ここでは、第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0058】
すなわち、第3実施例のロールへミング加工方法は、
図10(B)、
図11(B)に示すように、本曲げ工程S2では、曲げローラ4によって、インナパネル5の外周フランジ51に微小隙間を有しつつ重ね合せたアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して、先行押えローラ6の外周面6aが斜め上方から下方に押圧することが、第1実施例のロールへミング加工方法と相違する。そのため、アウタパネル2の板外面2Gの面品質を確保しつつ、インナパネル5の外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKBを、簡単に閉じることができる。
【0059】
なお、第3実施例のロールへミング装置10Cには、
図10に示すように、曲げローラ4と先行押えローラ6とを備えると共に、曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持し、且つロボットアーム3に固定されたローラ本体部42を備え、ローラ本体部42には、先行押えローラ6を可動させる駆動機構65を備えている。また、
図11に示すように、先行押えローラ6の外周面6aには、断面が円弧状に形成された凹溝部6mを備えているが、凹溝部6mを挟む両側の平坦な外周面6aの内、一方の外周面6aの幅を他方の外周面6aの幅より広く形成することが、より好ましい。そして、幅を広く形成した一方の外周面6aによって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して、先行押えローラ6が斜め上方から下方に押圧することが好ましい。
【0060】
一般に、本曲げ工程S2において、
図9(A)に示すように、アウタパネル2の外周フランジ21に対する曲げローラ4の加圧力P1を大きくし過ぎると、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aとインナパネル5の外周フランジ51の先端部51aの圧痕2G1、2G2がアウタパネル2の板外面2Gに生じて、面品質が低下する。また、アウタパネル2の外周フランジ21の潰し過ぎによって、外周フランジ21の折り曲げ部2G3の曲げ半径が過小となる問題も生じる。これに対して、
図9(B)に示すように、アウタパネル2の外周フランジ21に対する曲げローラ4の加圧力P2を小さくし過ぎると、インナパネル5の外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)が生じる。この場合、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)から、塗装時に液だれが生じて、塗装品質が低下するという問題があった。さらに、
図9(C)に示すように、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)を閉じるため、曲げローラの加圧力P3をアウタパネル2の外周フランジ21における先端部21a側に多く加えた場合、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの圧痕2G1がアウタパネル2の板外面2Gに生じて、面品質が低下する。
【0061】
そこで、第3実施例のロールへミング加工方法では、
図10に示すように、本曲げ工程S2において、曲げローラ4の進行方向を予備曲げ工程S1における進行方向と逆転させることによって、先行押えローラ6を後押えローラとして活用することを考えた。すなわち、本曲げ工程S2では、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に微小隙間を有しつつ重ね合せたので、上記圧痕2G1、2G2(品質不具合)がアウタパネル2の板外面2Gに生じることがなく、また、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して、先行押えローラ6外周面6aが斜め上方から下方に押圧することによって、インナパネルの外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)を簡単に閉じさせることができる。これは、新たに押えローラを追加することなく、本曲げ工程S2において、曲げローラ4の進行方向を予備曲げ工程S1における進行方向と逆転させることによって、簡単に実現できる。
【0062】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るロールヘミング加工方法によれば、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設け、先行押えローラ6によって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧しながら、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を所定の角度だけ内周側へ折り曲げる予備曲げ工程S1と、予備曲げ工程S1の後、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せる本曲げ工程S2と、を備えているので、予備曲げ工程S1で、アウタパネル2の外周フランジ21が曲げローラ4の外周面4aに巻き付くように変形しようとするとき、曲げローラ4の近傍に設けた先行押えローラ6が、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを先行して下方に押圧することによって、曲げローラ4の進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられることを抑制することができる。
【0063】
そのため、予備曲げ工程S1の後の本曲げ工程S2において、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に重ね合せるときに、断面方向でアウタパネル2の外周縁2aがインナパネル5側へ僅かに押し上げられるものの、ヘミング加工に伴うアウタパネル2の外周縁2aのトータルの塑性変形量dを低減させることができる。その結果、最終的には、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を低減させることができる。また、この場合、予備曲げ加工を一回で行うことができるので、予備曲げ加工を複数回行う必要がなく、ロールヘミング加工に伴うトータルの生産時間(生産タクト)が増加するのを、回避することができる。
【0064】
また、予備曲げ工程S1と本曲げ工程S2との両方で、1つの曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21を内周側へ折り曲げるので、予備曲げ工程S1と本曲げ工程S2における外周フランジ21の折り曲げ角度を、ロボットアーム3のアウタパネル2に対する位置、角度等を調節することによって、それぞれ独自に調整することができる。また、曲げローラ4の近傍には、先行押えローラ6を設けているが、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを下方に押圧するだけであるので、外周フランジ21の折り曲げ角度の調整に併せて、先行押えローラ6の押圧角度を調節する必要がない。そのため、先行押えローラ6を含むロールヘミング装置10の簡素化を図ることができる。
【0065】
よって、本実施形態によれば、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる面ダレ2GD等の品質不具合を低減できると共に、ロールヘミング装置10の簡素化が可能で、生産性の良いロールヘミング加工方法を提供することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、本曲げ工程S2では、曲げローラ4によって、インナパネル5の外周フランジ51に微小隙間を有しつつ重ね合せたアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して、先行押えローラ6の外周面6aが斜め上方から下方に押圧するので、アウタパネル2の板外面2Gの面品質を確保しつつ、インナパネル5の外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKBを、簡単に解消することができる。以下、その理由を詳細に説明する。
【0067】
一般に、本曲げ工程S2において、アウタパネル2の外周フランジ21に対する曲げローラ4の加圧力を大きくし過ぎると、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aとインナパネル5の外周フランジ51の先端部51aの圧痕2G1、2G2がアウタパネル2の板外面2Gに生じて、面品質が低下する。また、アウタパネル2の外周フランジ21の潰し過ぎによって、外周フランジ21の折り曲げ部2G3の曲げ半径が過小となる問題も生じる。これに対して、アウタパネル2の外周フランジ21に対する曲げローラ4の加圧力を小さくし過ぎると、インナパネル5の外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)が生じる。この場合、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)から、塗装時に液だれが生じて、塗装品質が低下するという問題があった。さらに、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)を閉じるため、曲げローラの加圧力P3をアウタパネル2の外周フランジ21における先端部21a側に多く加えた場合、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの圧痕2G1がアウタパネル2の板外面2Gに生じて、面品質が低下する。
【0068】
そこで、本曲げ工程S2では、曲げローラ4の進行方向を予備曲げ工程S1における進行方向と逆転させることによって、先行押えローラ6を後押えローラとして活用することを考えた。すなわち、本曲げ工程S2では、曲げローラ4によって、アウタパネル2の外周フランジ21をインナパネル5の外周フランジ51に微小隙間を有しつつ重ね合せたので、上記圧痕2G1、2G2(品質不具合)がアウタパネル2の板外面2Gに生じることがなく、また、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して、先行押えローラ6の外周面6aが斜め上方から下方に押圧することによって、インナパネルの外周フランジ51に対するアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aの口開きKB(隙間)を簡単に閉じさせることができる。これは、新たに押えローラを追加することなく、本曲げ工程S2において、曲げローラ4の進行方向を予備曲げ工程S1における進行方向と逆転させることによって、簡単に実現できる。
【0069】
また、他の実施形態に係るロールヘミング装置10によれば、曲げローラ4と先行押えローラ6とを備えると共に、曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持し、且つロボットアーム3に固定されたローラ本体部42を備え、先行押えローラ6は、ローラ本体部42に連結アーム61を介して装着され、連結アーム61には、先行押えローラ6を下方へ付勢する弾性部材62が装着されているので、曲げローラ4によって進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられる変形力を弾性部材62の付勢力によって安定的に打ち消しつつ、弾性部材62が撓むことによって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対する先行押えローラ6の押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等を回避させることができる。そのため、アウタパネル2の外周縁2aにおける塑性変形量dを低減して、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を安定的に低減させると同時に、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等をも回避させことができる。
【0070】
また、他の実施形態に係るロールヘミング装置10B、10Cによれば、曲げローラ4と先行押えローラ6とを備えると共に、曲げローラ4の回転中心軸41を回動自在に保持し、且つロボットアーム3に固定されたローラ本体部42を備え、ローラ本体部42には、先行押えローラ6を可動させる駆動機構65を備えているので、予備曲げ工程S1において、駆動機構65を作動させることによって、アウタパネル2の外周フランジ21のフランジ幅やフランジ角度等に応じて、曲げローラ4に対する先行押えローラ6の相対位置を最適な位置に変更させることができる。また、本曲げ工程S2において、駆動機構65を作動させることによって、先行押えローラ6をインナパネル5に対して干渉しない位置へ簡単に移動させ、又は先行押えローラ6の外周面6aをアウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対して斜め上方から下方に押圧する位置へ簡単に移動させることができる。
【0071】
また、他の実施形態に係るロールヘミング装置10B、10Cによれば、駆動機構65には、先行押えローラ6を下方へ付勢する弾性部材62が装着されているので、予備曲げ工程S1において、曲げローラ4によって進行方向前方に位置するアウタパネル2の外周縁2aが上方へ持ち上げられる変形力を弾性部材62の付勢力によって安定的に打ち消しつつ、弾性部材62が撓むことによって、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aに対する先行押えローラ6の押圧力が過大に成り過ぎるのを防止して、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等を回避させることができる。そのため、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ僅かに折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を安定的に低減させると同時に、アウタパネル2の外周フランジ21の座屈変形等をも回避させことができる。
【0072】
また、他の実施形態に係るロールヘミング装置10、10B、10Cによれば、先行押えローラ6の外周面6aには、断面が円弧状に形成された凹溝部6mを備えているので、予備曲げ工程S1において、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを、凹溝部6mを介して下方へ押圧することができる。また、予備曲げ工程S1において、曲げローラ4の回転中心軸41のアウタパネル2に対する傾斜角度θを変化させて、アウタパネル2の外周フランジ21を内周側へ折り曲げる角度を微妙に調節する場合でも、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aは、先行押えローラ6の凹溝部6mの円弧状断面に沿って移動できる。そのため、曲げローラ4によるアウタパネル2の外周フランジ21の折り曲げ角度の大小に関わらず、先行押えローラ6は、アウタパネル2の外周フランジ21の先端部21aを、凹溝部6mを介して所定の押圧力で常に下方に押圧することができる。その結果、アウタパネル2の外周縁2aにおいて、アウタパネル2の板外面2Gがインナパネル5側へ折れ曲がる品質不具合(面ダレ2GD)を、より一層安定的に低減させることできる。
【0073】
また、他の実施形態に係るロールヘミング装置10、10B、10Cによれば、曲げローラ4の回転中心軸41は、曲げローラ4より小径に形成され、且つローラ本体部42から曲げローラ4と反対側へ突出して形成されているので、例えば、アウタパネル2の外周フランジ21のフランジ幅が短く形成されている領域では、曲げローラ4より小径に形成された回転中心軸41の外周面によって、アウタパネル2の外周フランジ21の予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を行うことができる。そのため、曲げローラ4の種類を増加させることなく、曲げローラ4の簡素化を図りながら、アウタパネル2の外周フランジ21のフランジ幅等に対応して予備曲げ加工(及び本曲げ加工)を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、アウタパネルの外周縁に起立する外周フランジを、曲げローラによって内周側へ折り曲げて、アウタパネルの板内側にセットされたインナパネルの外周フランジに重ね合せるロールヘミング加工方法及び当該ロールヘミング加工方法として利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 下型
2 アウタパネル
2a 外周縁
3 ロボットアーム
4 曲げローラ
5 インナパネル
6 先行押えローラ
6a 外周面
6m 凹溝部
10、10B、10C ロールヘミング装置
21、51 外周フランジ
21a 先端部
41 回転中心軸
42 ローラ本体部
61 連結アーム
62 弾性部材
65 駆動機構
S1 予備曲げ工程
S2 本曲げ工程