(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ステータコアおよびステータコアの製造方法およびステータコアの製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
H02K1/18 B
H02K1/18 C
(21)【出願番号】P 2020128500
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】平田 和之
(72)【発明者】
【氏名】小野 真平
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-020386(JP,A)
【文献】特開2012-075284(JP,A)
【文献】特開2018-137864(JP,A)
【文献】特開2017-163703(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008417(WO,A1)
【文献】特開2019-080454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0256509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす本体部を備え、板状のコア層部が前記本体部の中心軸方向に積層された積層構造のステータコアにおいて、
前記コア層部は、前記本体部の周方向に分割された同一形状の複数の分割片からなり、
前記分割片は、前記本体部の外周端にあたる位置で外周側に突出する形状をなすとともに前記中心軸方向に貫通する貫通孔を有する耳部を少なくとも2つ備え、
前記コア層部の積層方向において隣合う前記分割片は、前記周方向の位置がずれた状態であり、且つ、前記2つの前記耳部の前記周方向の位置が一致する態様で積層されており、
前記2つの耳部のうちの一方は前記中心軸方向に積層された前記分割片を一体に固定する一体固定部を構成し、前記2つの耳部のうちの他方は、前記ステータコアを固定対象部材に固定するステータ固定部を構成する
ことを特徴とするステータコア。
【請求項2】
前記一体固定部は、前記貫通孔に嵌合する態様で前記中心軸方向において延びる合成樹脂製の固定部材を備える
請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
前記分割片は、アモルファス金属からなる
請求項2に記載のステータコア。
【請求項4】
前記コア層部は前記周方向において3分割された形状の前記分割片からなり、
前記耳部は、前記貫通孔の中心が前記周方向において60度間隔で並ぶ態様で前記分割片に2つ設けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載のステータコア。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステータコアの製造に用いる製造方法であり、
前記分割片を形成する形成工程と、
積層治具に立設された位置決めピンを前記ステータ固定部を構成する前記耳部の前記貫通孔に挿入する態様で、前記形成工程において形成された前記分割片を配置することで、前記分割片を位置合わせしつつ積層する積層工程と、
前記積層工程の後に、前記一体固定部を構成する前記耳部の前記貫通孔を利用して前記中心軸方向に積層された前記分割片を一体に固定する固定工程と、
を含むステータコアの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステータコアの製造に用いる製造装置であって、
前記コア層部の分割数と同じ本数の位置決めピンが、前記周方向において等角度間隔で並ぶ態様で、ベース部材に突設されてなる積層治具を備える
ステータコアの製造装置。
【請求項7】
前記一体固定部を構成する前記耳部の前記貫通孔の内部に、同貫通孔に嵌合する態様で前記中心軸方向において延びる合成樹脂製の固定部材を成形する樹脂成形機を備える請求項6に記載のステータコアの製造装置。
【請求項8】
前記分割片を形成する加工機と、
前記加工機による前記分割片の形成タイミングに合わせて前記積層治具を回転させる回転装置と、を備える
請求項6または7に記載のステータコアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材が積層された構造のステータコア、および同ステータコアの製造方法、および同ステータコアの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機のステータコアとして、電磁鋼板などの板材が多数積層された構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
このステータコアの製造に際しては、先ず、プレス加工により、板状のコア層部が多数形成される。その後、予め定められた枚数のコア層部が位置合わせされた状態で積層される。そして、積層状態のコア層部が溶接加工やかしめ加工等によって一体に固定されて、ステータコアが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ステータコアは円筒状をなしている。そのため、ステータコアを構成する各コア層部は円環状の板材になる。このことから、プレス加工によってコア層部を形成する際には、加工残材(いわゆるスクラップ)が多くなり易く、歩留まりが悪くなり易いと云える。また、積層構造のステータコアを製造する際には、多数のコア層部を位置合わせしつつ重ねる作業や、多数のコア層部を溶接加工やかしめ加工によって一体に固定する作業などといった多くの煩雑な作業が必要になるため、製造効率の低下を招き易いと云える。このように積層構造のステータコアは生産性が低くなり易いことが問題になる。
【0005】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性を向上できるステータコア、および同ステータコアの製造に用いて好適な製造方法、および同ステータコアの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのステータコアは、円筒状をなす本体部を備え、板状のコア層部が前記本体部の中心軸方向に積層された積層構造のステータコアにおいて、前記コア層部は、前記本体部の周方向に分割された同一形状の複数の分割片からなり、前記分割片は、前記本体部の外周端にあたる位置で外周側に突出する形状をなすとともに前記中心軸方向に貫通する貫通孔を有する耳部を少なくとも2つ備え、前記コア層部の積層方向において隣合う前記分割片は、前記周方向の位置がずれた状態であり、且つ、前記2つの前記耳部の前記周方向の位置が一致する態様で積層されており、前記2つの耳部のうちの一方は前記中心軸方向に積層された前記分割片を一体に固定する一体固定部を構成し、前記2つの耳部のうちの他方は、前記ステータコアを固定対象部材に固定するステータ固定部を構成する。
【0007】
上記構成によれば、積層構造のステータコアの各層を構成するコア層部が周方向において分割された円弧状の分割片によって構成されるため、プレス加工などによってコア層部(詳しくは、分割片)を形成する際に、加工残材を少なくして歩留まりを高くすることができる。また上記構成では、各分割片に設けられた2つの耳部の一方(詳しくは、その貫通孔)を、ステータコアを固定対象部材(例えば電動機のハウジング)に固定するためのステータ固定部として利用することができる。そして、こうしたステータコアにおいて各分割片の2つの耳部の他方(詳しくは、その貫通孔)を利用して、同ステータコアを構成する全ての分割片を周方向にずれた状態で位置合わせしつつ積層するとともに一体に固定することができる。そのため、分割構造のコア層部が用いられるとはいえ、多数の分割片を有するステータコアを容易に製造することができる。上記構成によれば、このようにしてステータコアの生産性を向上させることができる。
【0008】
前記課題を解決するためのステータコアの製造方法は、上記ステータコアの製造に用いる製造方法であり、前記分割片を形成する形成工程と、積層治具に立設された位置決めピンを前記ステータ固定部を構成する前記耳部の前記貫通孔に挿入する態様で、前記形成工程において形成された前記分割片を配置することで、前記分割片を位置合わせしつつ積層する積層工程と、前記積層工程の後に、前記一体固定部を構成する前記耳部の前記貫通孔を利用して前記中心軸方向に積層された前記分割片を一体に固定する固定工程と、を備える。
【0009】
積層構造のステータコアの各層を構成するコア層部が周方向において分割された円弧状の分割片によって構成される。そのため上記製造方法によれば、プレス加工などによって分割片を形成する際に、加工残材を少なくして歩留まりを高くすることができる。しかも上記製造方法によれば、分割片における2つの耳部の一方、詳しくは、ステータ固定部を構成する耳部の貫通孔を利用して、ステータコアを構成する全ての分割片を周方向にずれた状態で位置合わせしつつ積層することができる。そして、その状態で、分割片における2つの耳部の他方、詳しくは、一体固定部を構成する耳部の貫通孔を利用して、ステータコアを構成する全ての分割片を一体に固定することができる。そのため、分割構造のコア層部が用いられるとはいえ、多数の分割片を有するステータコアを容易に製造することができる。
【0010】
前記課題を解決するためのステータコアの製造装置は、上記ステータコアの製造に用いる製造装置であって、前記コア層部の分割数と同じ本数の位置決めピンが、前記周方向において等角度間隔で並ぶ態様で、ベース部材に突設されてなる積層治具を備える。
【0011】
上記構成によれば、積層治具の位置決めピンを利用して容易に、ステータコアを構成する全ての分割片を周方向にずれた状態で位置合わせしつつ積層することができる。具体的には先ず、2つの耳部の一方の貫通孔に積層治具の位置決めピンを挿入する態様で複数の分割片を周方向に並ぶ態様で積層治具に取り付けてコア層部(第1コア層部)を構成することができる。その後、2つの耳部の他方の貫通孔に積層治具の位置決めピンを挿入する態様で複数の分割片を周方向に並ぶ態様で積層治具に取り付けてコア層部(第2コア層部)を構成することができる。そして、こうした第1コア層部を構成する作業と第2コア層部を構成する作業とを交互に繰り返し行うことにより、ステータを構成する分割片を予め定めた所定の配置態様で積層することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステータコアの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】一体固定部およびその周辺の
図1の5-5線に沿った端面図。
【
図6】ステータ固定部およびその周辺の
図1の6-6線に沿った端面図。
【
図7】ステータコアの製造手順を示すフローチャート。
【
図8】ステータコアの製造装置の概略構成を示す略図。
【
図11】積層状態の分割片を内包した状態の積層治具の側端面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態のステータコア、同ステータコアの製造方法、および同ステータコアの製造装置について説明する。
図1および
図2に示すように、ステータコア20は、円筒状をなす本体部21や、本体部21の外周端にあたる位置で外周側に突出する形状をなす固定部22,23を有している。
【0015】
本体部21は、内周面において開口するとともに同本体部21の径方向に延びるスリット24を有している。スリット24は、本体部21の周方向に等角度間隔で並ぶ態様で複数設けられている。スリット24は、電動機の巻線が巻き掛けられる部分を構成している。
【0016】
固定部22,23は、本体部21の中心軸方向において断面略三角形状で延びている。固定部22,23は、周方向に等角度(60度)間隔で6つ設けられている。固定部22,23は、中心軸方向に断面円形状で貫通する貫通孔25を有している。
【0017】
ステータコア20は、板状のコア層部26が中心軸方向に積層された積層構造をなしている。各コア層部26は、周方向に3分割された3つの分割片30によって構成されている。
【0018】
図3に示すように、分割片30は、本体部21の一部を構成する円弧部31と、固定部22,23の一部を構成する2つの耳部32,33とを有している。円弧部31は、周方向において120度にわたって延びる円弧状をなしている。2つの耳部32,33は、円弧部31の外周端にあたる位置で外周側に略三角板状で突出する形状をなしている。これら耳部32,33は、貫通孔25の中心が周方向において60度間隔で並ぶ態様で分割片30に設けられている。本実施形態では、コア層部26を構成する3つの分割片30、ひいてはステータコア20を構成する全ての分割片30は、同一形状になっている。
【0019】
分割片30は、アモルファス金属によって形成されている。詳しくは、分割片30は、アモルファス金属からなる板材が複数枚重ねられて所定の厚さ(1.0mm程度)になっている。なお、本実施形態において示す各図では、理解を容易にするために、分割片30の厚さを実際の厚さよりも誇張して示している。
【0020】
本実施形態では、コア層部26の積層方向(具体的には、中心軸方向)において隣合う分割片30の周方向の位置が所定角度(本実施形態では、60度)だけずれた状態になるように、分割片30が積層されている。詳しくは、
図1に実線で示すように、ステータコア20は、一方の耳部33が一体固定部22を構成する態様で3つの分割片30が周方向に並べられた構造の第1コア層部26Aを有している。また
図1中の破線、および
図4に示すように、ステータコア20は、他方の耳部32が一体固定部22を構成する態様で3つの分割片30が周方向に並べられた構造の第2コア層部26Bを有している。そして、ステータコア20は、第1コア層部26Aと第2コア層部26Bとが中心軸方向において交互に並ぶように積層された構造をなしている。本実施形態のステータコア20は、
図1に示すように、コア層部26の積層方向(中心軸方向)において隣合う分割片30の2つの耳部32,33の周方向の位置が一致する態様で、分割片30が積層された構造をなしている。
【0021】
図1および
図5に示すように、本実施形態のステータコア20では、6つの固定部22,23のうちの3つ(一体固定部22)が、ステータコア20を構成する分割片30を一体に固定するために利用される。一体固定部22には、貫通孔25を貫通する態様で中心軸方向に延びる固定部材27が設けられている。この固定部材27は、後述する射出成形加工を通じて合成樹脂材料によって形成される。固定部材27は、一体固定部22の貫通孔25に嵌合する態様、具体的には貫通孔25の内面と固定部材27の外面とが密着する態様で設けられている。こうした固定部材27を設けることにより、積層状態の分割片30が一体に固定されている。本実施形態では、3つの一体固定部22に設けられた固定部材27によって、ステータコア20を構成する全ての分割片30が一体に固定されている。
【0022】
また、固定部材27の中心軸方向における両端には、貫通孔25の外部において、一体固定部22の外面における貫通孔25の内縁に沿って延びる円環状のフランジ部28が設けられている。これらフランジ部28によって、一体固定部22の貫通孔25の内縁部分、詳しくはステータコア20の最外層をなす分割片30の外面が押さえられる。こうしたフランジ部28を設けることにより、積層状態の分割片30が中心軸方向に広がることが抑えられている。
【0023】
図1および
図6に示すように、6つの固定部22,23のうちの残りの3つ(ステータ固定部23)は、ステータコア20を固定対象部材(具体的には、図示しない電動機のハウジング)に固定するために利用される。具体的には、締結固定用のボルトが、ステータ固定部23の貫通孔25に挿通された状態でハウジングの雌ねじに螺合される。このように、本実施形態のステータコア20はボルト締結によってハウジングに固定される。
【0024】
以下、ステータコア20の製造にかかる各工程を、その製造装置とともに説明する。
図7に示すように、ステータコア20の製造に際しては、先ず、工程1が実行される。この工程1では、プレス加工によって分割片30が形成される。本実施形態では、この工程1が形成工程に相当する。
【0025】
図8に示すように、製造装置40はプレス加工機41を有している。そして、このプレス加工機41により、ロール43から送られる5枚重ねのアモルファス金属板が打ち抜かれて分割片30が形成される。詳しくは、プレス加工機41によって打ち抜かれたものを重ねることによって分割片30は形成される。
【0026】
図7に示すように、工程1の後には、工程2が実行される。工程2では、積層治具44(
図8参照)を利用して、工程1において形成された分割片30が位置合わせされつつ積層される。本実施形態では、この工程2が積層工程に相当する。
【0027】
図8に示すように、製造装置40は、分割片30の積層に用いる積層治具44を有している。
図9~
図11に示すように、積層治具44は、位置決め治具50、第1形成治具60、および第2形成治具70を有している。
【0028】
位置決め治具50は、平板状のベース部材51を有している。ベース部材51には、円筒状の内筒部52が立設されている。内筒部52の外径は、コア層部26(
図1参照)の中心孔の内径と略同一に(詳しくは、同内径よりも若干小さく)なっている。積層治具44に分割片30(
図10参照)を取り付ける際には、内筒部52の外周面によって分割片30の内周端が所定の位置に案内される。
【0029】
ベース部材51には、内筒部52よりも外周側の位置に、円柱状をなす3本の位置決めピン53が立設されている。これら位置決めピン53は、内筒部52の中心軸の周りにおいて等角度(120度)間隔で並ぶように配置されている。位置決めピン53の外径は、耳部32,33の貫通孔25の内径と略同一に(詳しくは、同内径よりも若干小さく)なっている。積層治具44に分割片30(
図10参照)を取り付ける際には、分割片30の2つの耳部32,33のうちの一方の貫通孔25に上記位置決めピン53が挿入される。
【0030】
ベース部材51には、内筒部52よりも外周側の位置に、6本の外周ピン54が立設されている。これら外周ピン54は、内筒部52の中心軸の周りにおいて、周方向に並ぶように配置されている。外周ピン54は、各位置決めピン53に対して、同位置決めピン53を間に挟む位置に2本ずつ設けられている。6本の外周ピン54は、積層治具44に分割片30(
図10参照)を取り付ける際に、1つの分割片30の外周端が2本の外周ピン54によって所定の位置に案内される位置に設けられている。
【0031】
分割片30を積層する際には、先ず、2つの耳部32,33の一方(例えば、耳部32)の貫通孔25に積層治具44の位置決めピン53を挿入する態様(
図10中に二点鎖線で示す態様)で、3つの分割片30が周方向に並ぶように積層治具44に取り付けられてコア層部26(第1コア層部26A)が構成される。その後、2つの耳部32,33の他方(例えば、耳部33)の貫通孔25に積層治具44の位置決めピン53を挿入する態様(
図10中に破線で示す態様)で、3つの分割片30が周方向に並ぶように積層治具44に取り付けられてコア層部26(第2コア層部26B)が構成される。そして、こうした第1コア層部26Aを構成する作業と第2コア層部26Bを構成する作業とを交互に繰り返し行うことにより、ステータコア20を構成する分割片30が予め定めた所定の配置態様で積層される。このように本実施形態によれば、位置決め治具50を利用して容易に、ステータコア20を構成する全ての分割片30を周方向にずれた状態で位置合わせしつつ積層することができる。
【0032】
第1形成治具60は、円環板状のベース部61や、同ベース部61の外周端にあたる位置で外周側に突出する形状をなす耳部62,63を有している。耳部62,63は、ベース部61の中心軸方向に断面略三角形状で延びている。耳部62,63は、ベース部61の周方向に等角度(60度)間隔で6つ設けられている。
【0033】
6つの耳部62,63のうちの3つ(挿入耳部62)には、中心軸方向に貫通する挿入孔64が設けられている。これら挿入耳部62は、周方向において等角度(120度)間隔で配置されている。本実施形態では、積層治具44を利用して分割片30を積層する際には、第1形成治具60は位置決め治具50に取り付けられた状態になっている。具体的には、ベース部61の中心孔65に位置決め治具50の内筒部52が挿入されるとともに、第1形成治具60の3つの挿入耳部62の挿入孔64に位置決め治具50の3本の位置決めピン53が各別に挿入されて、第1形成治具60が位置決め治具50に取り付けられる(
図11参照)。
【0034】
6つの耳部62,63のうちの残りの3つ(成形耳部63)には、中心軸方向に断面円形状で凹む凹部66が設けられている。凹部66の直径は、分割片30の耳部32,33の貫通孔25の直径よりも大きくなっている。凹部66は、積層治具44に分割片30が取り付けられたときに、同分割片30の耳部32(または耳部33)の貫通孔25の全体を塞ぐ位置に設けられている。各凹部66の底面には鋳抜きピン67が立設されている。この鋳抜きピン67は、中心軸方向に延びる先細の円錐台形状をなしている。鋳抜きピン67は、積層治具44に分割片30が取り付けられたときに同分割片30の耳部32,33の貫通孔25に挿入される形状をなしている。また、積層治具44に分割片30が取り付けられたときには、鋳抜きピン67の外周面と耳部32,33の貫通孔25の内周面との間に隙間が形成されるようになっている。
【0035】
第2形成治具70は、円板状のベース部71や、同ベース部71の外周端にあたる位置で外周側に突出する形状をなす耳部72,73を有している。耳部72,73は、ベース部71の中心軸方向に断面略三角形状で延びている。耳部72,73は、ベース部71の周方向に等角度(60度)間隔で6つ設けられる。
【0036】
6つの耳部72,73のうちの3つ(挿入耳部72)は挿入孔74を有する。これら挿入耳部72は、周方向において等角度(120度)間隔で配置される。本実施形態では、位置決め治具50を利用して分割片30を積層した後に、第1形成治具60と第2形成治具70との間に積層状態の分割片30を挟み込む態様で、同第2形成治具70が位置決め治具50に取り付けられる。具体的には、第2形成治具70の3つの挿入耳部72の挿入孔74に位置決め治具50の3本の位置決めピン53が各別に挿入されて、第2形成治具70が位置決め治具50に取り付けられた状態(
図11に示す状態)になる。
【0037】
6つの耳部72,73のうちの残りの3つ(成形耳部73)には、分割片30に当接する側の面(
図11における下面)に、中心軸方向に断面円形状で凹む凹部76が設けられている。凹部76の直径は、分割片30の耳部32,33の貫通孔25の直径よりも大きくなっている。凹部76は、第2形成治具70が位置決め治具50に取り付けられたときに同凹部76に隣接する分割片30の耳部32,33の貫通孔25の全体を塞ぐようになる位置に設けられている。
【0038】
第2形成治具70における分割片30に当接しない側の面(
図11における上面)には、ベース部71の中心軸にあたる位置を中心に放射状に伸びる3本のランナー溝77が形成されている。各ランナー溝77は、それぞれ成形耳部73まで延びている。各成形耳部63は、中心軸方向に貫通してランナー溝77と凹部76とを連通する形状のゲート78を有している。
【0039】
本実施形態では、積層状態の分割片30を内包する態様で、位置決め治具50、第1形成治具60、および第2形成治具70が組み付けられると、積層治具44の外部と前記一体固定部22の貫通孔25とを連通する成形通路45(
図11)が区画形成される。この成形通路45は、第2形成治具70のランナー溝77から、成形耳部73のゲート78、凹部76、積層状態の分割片30の耳部32,33の貫通孔25(詳しくは、一体固定部22の貫通孔25)を経て、第1形成治具60の凹部66まで延びる通路である。本実施形態では、この成形通路45を利用して、射出成形機46(
図8参照)により、一体固定部22の貫通孔25の内部に前記固定部材27が成形される。
【0040】
図8に示すように、本実施形態の製造装置40は、積層治具44を中心軸周りに回転させる回転装置47を有している。この回転装置47は、分割片30の形成タイミングに合わせて、積層治具44を「120度回転」→「120度回転」→「120度回転」→「60度回転」といった順に、繰り返し回転させるようになっている。
【0041】
こうした回転装置47を設けることにより、プレス加工によって形成された分割片30の位置と、積層治具44における同分割片30を取り付けるべき位置との関係を一定に保つことができる。これにより、プレス加工によって形成された分割片30を積層治具44に取り付ける作業を、同分割片30を同一の動線で移動させて行うことができる。そのため、分割片30を積層する作業を容易に行うことができるようになる。
【0042】
図7に示すように、工程2の後には、工程3が実行される。工程3では、積層状態の分割片30を内包する積層治具44を金型装置48(
図8参照)の内部に配置するとともに同金型装置48を型締め状態にするといったように、同積層治具44が金型装置48にセットされる。
【0043】
図12および
図13に示すように、金型装置48は、固定型80と可動型81とを有している。積層状態の分割片30を内包する積層治具44は、固定型80の上に載置される。金型装置48が型締め状態(
図13に示す状態)になると、可動型81における第2形成治具70に対向する面(
図13における下面)と同第2形成治具70のランナー溝77とによって射出成形用のランナー通路が区画形成される。このランナー通路は、可動型81を介して射出成形機46(
図8参照)に接続されている。
【0044】
可動型81は3つの外形調整機構83を有している。これら外形調整機構83は、周方向に等角度(120度)間隔で並ぶように配置されている。外形調整機構83は、ステータコア20の径方向に移動可能な可動部84を有している。可動部84は、ステータコア20の一体固定部22になる部分に沿って中心軸方向に延びている。
図12~
図14に示すように、可動部84には、一体固定部22になる部分に対向する内周側の面に、同一体固定部22の外面とほぼ同一形状の調整溝85が設けられている。外形調整機構83の可動部84は、金型装置48が型開き状態(
図12に示す状態)であるときには、径方向における外方側の位置、すなわち一体固定部22になる部分から離れた位置になる。外形調整機構83の可動部84は、金型装置48の型締めに際して、一体固定部22になる部分に近づくように徐々に内周側に移動するようになっている。そして、金型装置48が型締め状態(
図13に示す状態)になると、各可動部84は一体固定部22になる部分の外面に当接した状態になる。本実施形態では、積層治具44を金型装置48にセットすることにより、積層状態の分割片30における一体固定部22になる部分の外面が上記可動部84の調整溝85の内面に倣った形状になり、ひいては積層状態の全ての分割片30の位置が正しい位置になるように微調整されるようになる。
【0045】
図7に示すように、工程3の後には、工程4が実行される。工程4では、射出成形によって固定部材27が形成される。本実施形態では、この工程4が固定工程に相当する。
図8に示すように、製造装置40は射出成形機46を有している。本実施形態では、この射出成形機46(
図8)による射出成形によって、積層治具44および金型装置48の内部に区画形成されたランナーおよび成形通路45(
図11参照)を利用して、固定部材27が成形される。
【0046】
本実施形態では、
図1および
図5に示すように、固定部材27が、射出成形によって一体固定部22の貫通孔25の内部に形成される。これにより、固定部材27の外面が各分割片30の耳部32,33の貫通孔25の内面に密着した状態になるため、この固定部材27は各分割片30の耳部32,33の貫通孔25、すなわち一体固定部22の貫通孔25に嵌合した形状になる。
【0047】
また、射出成形による固定部材27の形成に際しては、同固定部材27の中心軸方向における両端に、第1形成治具60の凹部66や第2形成治具70の凹部76に対応する形状、詳しくは貫通孔25よりも外径が大きい断面円環状のフランジ部28が形成される。これらフランジ部28の外縁部分によって、最外層をなす分割片30の外面、詳しくは耳部32,33の貫通孔25の内縁部分が押さえられている。こうした構造を採用することにより、積層状態の分割片30が中心軸方向に広がることが抑えられる。
【0048】
図11に示すように、本実施形態では、積層治具44の第1形成治具60に、一体固定部22になる部分の貫通孔25に挿入される形状の鋳抜きピン67が設けられている。これにより
図5に示すように、各固定部材27が中空構造になるため、射出成形による固定部材27の形成に際して、形成材料を少量に抑えたり、固定部材27の内部に欠陥(空洞)が生じることを抑えたりすることができる。
【0049】
図7に示すように、工程4の後には、工程5が実行される。工程5では、金型装置48および積層治具44の内部からステータコア20が取り出される。そして、余分な部分(いわゆるランナー)が取り除かれて、ステータコア20が完成される。
【0050】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、積層構造のステータコア20の各層を構成するコア層部26が周方向において分割された円弧状の分割片30によって構成されている。そのため、コア層部が円環状の板材からなる場合と比較して、プレス加工によってコア層部26(詳しくは、分割片30)を形成する際に、加工残材を少なくして歩留まりを高くすることができる。
【0051】
本実施形態では、コア層部26の積層方向において隣合う分割片30の周方向の位置が所定角度だけずれた状態になるように、分割片30が積層されている。そのため、ステータコア20の製造に際して、同ステータコア20を構成する全ての分割片30を位置合わせしつつ積層する作業が煩雑になってしまうおそれがある。この点、本実施形態によれば、各分割片30の2つの耳部32,33のうちの上記ステータ固定部23を構成するほうの耳部32,33を利用して、詳しくは同貫通孔25に積層治具44の位置決めピン53が挿入されるように分割片30を積層治具44に取り付けるといった簡単な作業を通じて、分割片30を位置合わせしつつ積層することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、各分割片30の2つの耳部32,33のうちの前記一体固定部22を構成するほうの耳部32,33、すなわち分割片30を積層する際に位置決めピン53が挿入されていないほうの耳部32,33を利用して、同ステータコアを構成する全ての分割片30を一体に固定することができる。具体的には、一体固定部22を構成する耳部32,33の貫通孔25に嵌合する態様で固定部材27を設けることにより、積層状態の分割片30を一体に固定することができる。
【0053】
本実施形態によれば、3つの分割片30からなる分割構造のコア層部26が用いられるとはいえ、多数の分割片30を有するステータコア20を容易に製造することができる。本実施形態によれば、このようにしてステータコア20の生産性を向上させることができる。
【0054】
ここで、コア層部26の形成材料として用いられるアモルファス金属はごく薄い。そのため、積層された分割片30を一体に固定する固定構造として、かしめ加工による固定構造を採用することは難しい。また、アモルファス金属を再結晶化させるおそれがあるため、溶接加工による固定構造を採用することも難しい。
【0055】
本実施形態のステータコア20では、射出成形によって、一体固定部22を構成する耳部32,33の貫通孔25に嵌合する固定部材27が形成される。そして、この固定部材27により、ステータコア20を構成する全ての分割片30が一体に固定されている。本実施形態によれば、分割片30に大きな応力が作用するかしめ加工や高い熱が作用する溶接加工を用いることなく、耳部32,33の貫通孔25の内部に固定部材27を成形するとの固定構造を採用して、ステータコア20を構成する分割片30を一体に固定することができる。
【0056】
ステータコア20をハウジングに安定した状態で固定するためには、ステータ固定部23を3つ以上設けて、同ステータコア20を3箇所以上で固定することが好ましい。一方、ステータコア20の生産性を高くするためには、分割片30を一体に固定する部分、すなわち射出成形によって固定部材27を形成する部分である一体固定部22は少ないことが好ましい。
【0057】
本実施形態では、コア層部26が周方向において3分割された形状の3つの分割片30によって構成されており、各分割片30に、貫通孔25の中心が周方向において60度間隔で並ぶ態様で2つの耳部32,33が設けられている。
【0058】
これにより、ステータコア20を、ステータ固定部23および一体固定部22を3つずつ有する構造にすることができる。そのため、ステータコア20をハウジングに対して3箇所で安定した状態で固定することができる。しかも、そのようにしてステータコア20を安定状態で固定する機能を確保した上で、一体固定部22の設定数を必要最小限に留めることもできるため、ステータコア20の生産性を高くすることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)ステータコア20の各層をなすコア層部26を、周方向に3分割された3つの分割片30によって構成した。中心軸方向において隣合う分割片30の周方向の位置が所定角度だけずれた状態になるように、分割片30を積層した。分割片30の2つの耳部32,33のうちの一方が中心軸方向に積層された分割片30を一体に固定する一体固定部22を構成しており、2つの耳部32,33のうちの他方がステータコア20をハウジングに固定するステータ固定部23を構成している。そのため、ステータコア20の生産性を向上させることができる。
【0060】
(2)一体固定部22の貫通孔25に嵌合する態様で中心軸方向において延びる合成樹脂製の固定部材27を設けるようにした。そのため、積層された分割片30の耳部32,33の貫通孔25を利用して、ステータコア20を構成する分割片30を一体に固定することができる。
【0061】
(3)アモルファス金属からなる分割片30を、かしめ加工や溶接加工を用いることなく、耳部32,33の貫通孔25の内部に合成樹脂製の固定部材27を形成することによって一体に固定することができる。
【0062】
(4)ステータコア20を、ステータ固定部23および一体固定部22を3つずつ有する構造にすることができる。そのため、ステータコア20を安定状態でハウジングに固定することとステータコア20の生産性を高くすることとの両立を図ることができる。
【0063】
(5)ステータコア20を製造する製造装置40は、コア層部26の分割数と同じ本数の位置決めピン53が周方向において等角度間隔で並ぶ態様でベース部材51に突設された構造の位置決め治具50を有している。そのため、位置決め治具50を利用して容易に、ステータコア20を構成する全ての分割片30を、中心軸方向において隣合う分割片30の周方向の位置が所定角度だけずれた状態になるように位置合わせしつつ積層することができる。
【0064】
(6)製造装置40は、分割片30を形成するプレス加工機41と、同プレス加工機41による分割片30の形成タイミングに合わせて積層治具44を回転させる回転装置47とを備えている。これにより、プレス加工によって形成された分割片30を積層治具44に取り付ける作業を、同分割片30を同一の動線で移動させて行うことができるため、分割片30を積層する作業を容易に行うことができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0066】
・鋳抜きピン67の形状は、積層治具44からのステータコア20の取り出しを適正に行える形状であれば、多角錘台形状にするなど、任意に変更することができる。また、鋳抜きピン67を省略すること等も可能である。
【0067】
・回転装置47を省略してもよい。
・外形調整機構83を省略することができる。
・金型装置48に外形調整機構83を設けることに代えて、積層状態の全ての分割片30の位置を正しい位置になるように調整するための外形調整治具を、積層治具44に設けるようにしてもよい。外形調整治具としては、例えば、筒状体が周方向において分割された構造のものを採用することができる。積層治具44を利用して分割片30を積層した後に、外形調整治具の内周面が積層状態の分割片30の外周面に当接した状態になるように、外形調整治具を積層治具44に取り付けることにより、積層状態の全ての分割片30の位置を正しい位置になるように微調整することができる。
【0068】
・第1形成治具60および第2形成治具70を省略することができる。この場合には、成形用のランナーや、固定部材27のフランジ部28を形成するためのスペース(具体的には前記凹部66,76に相当するスペース)は金型装置48に形成すればよい。
【0069】
・位置決め治具50の構造は、任意に変更することができる。ベース部材51に内筒部52を立設することに代えて、同一円周上において並ぶ複数本の内周ピンを立設してもよい。その他、ベース部材51に外周ピン54を立設することに代えて、分割片30の円弧部31の外周端に沿って延びる断面円弧状の外周壁部を立設すること等も可能である。
【0070】
・コア層部26として、3つの分割片30に分割された構造のものを採用することに限らず、2つの分割片に分割された構造のものを採用したり、4つ以上の分割片に分割された構造のものを採用したりすることができる。2つの分割片に分割された構造のコア層部を採用する場合には、各分割片に対して2つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において90度間隔で並ぶ態様で設ければよい。4つの分割片に分割された構造のコア層部を採用する場合には、各分割片に対して2つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において45度間隔で並ぶ態様で設ければよい。
【0071】
・各分割片に3つ以上の耳部を設けるようにしてもよい。具体的には、以下の[例1]~[例4]に記載の構成などを採用することができる。[例1]3つの分割片に分割された構造のコア層部を採用するとともに、各分割片に対して3つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において40度間隔で並ぶ態様で設ける。[例2]2つの分割片に分割された構造のコア層部を採用するとともに、各分割片に対して3つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において60度間隔で並ぶ態様で設ける。[例3]2つの分割片に分割された構造のコア層部を採用するとともに、各分割片に対して4つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において45度間隔で並ぶ態様で設ける。[例4]4つの分割片に分割された構造のコア層部を採用するとともに、各分割片に対して3つの耳部を、同耳部に形成される貫通孔の中心が周方向において30度間隔で並ぶ態様で設ける。なお、耳部の間隔としては、一つの分割片に設けられる耳の数Aとコア層部の分割数Bとを乗算した値によって360度を除算した角度(=360度/(A×B))が定められる。
【0072】
上記構成においては、各分割片に設けられる3つ以上の耳部のうちの複数の耳部を、中心軸方向に積層された分割片を一体に固定する一体固定部22として用いることができる。同構成によれば、中心軸方向に積層された分割片を、しっかり固定することができる。
【0073】
また上記構成においては、各分割片に設けられる3つ以上の耳部のうちの複数の耳部(詳しくは、その貫通孔)を、分割片を中心軸方向に積層する際に位置決めピン53が挿入される耳部として用いることができる。この場合には、位置決め治具のベース部材に、周方向において等角度間隔で並ぶ態様で配置されたコア層部の分割数と同じ本数の位置決めピン53からなる位置決め部を複数設けるようにすればよい。同構成によれば、一つの分割片を複数の位置決めピン53を利用して精度良く位置決めしつつ積層することができる。
【0074】
その他、上記構成においては、各分割片に設けられる3つ以上の耳部のうちの複数の耳部を、ステータコア20を固定対象部材に固定するステータ固定部23として用いることなども可能である。同構成によれば、ステータコア20を固定対象部材に強固に固定することができる。
【0075】
・分割片30として、アモルファス金属製のものを用いることに限らず、ナノ結晶合金製のものを用いたり、電磁鋼板によって形成されたものを用いたりすることができる。なお、ナノ結晶合金製の分割片を用いる場合には、工程2(積層工程)と工程4(固定工程)との間に、分割片をナノ結晶化するための熱処理(ナノ結晶化処理)を実行することが好ましい。
【0076】
・固定部材27を成形する樹脂成形機としては、射出成形機46を採用することに限らず、トランスファー成形機を採用することができる。
・積層された分割片30を一体に固定する固定構造としては、任意の固定構造を採用することができる。そうした固定構造としては、一体固定部22の貫通孔25にリベットを挿入するとともに同リベットの端部を塑性変形させる等といったかしめ加工による固定構造を採用することができる。また、上記固定構造として、一体固定部22の貫通孔25にピン部材を圧入する圧入加工による固定構造を採用することができる。その他、上記リベットやピン部材をコア層部26に溶接固定するといった溶接加工による固定構造を、上記固定構造として採用すること等も可能である。
【符号の説明】
【0077】
20…ステータコア
21…本体部
22…一体固定部
23…ステータ固定部
25…貫通孔
26…コア層部
27…固定部材
30…分割片
32…耳部
33…耳部
40…製造装置
41…プレス加工機
44…積層治具
46…射出成形機
47…回転装置
48…金型装置
50…位置決め治具
53…位置決めピン