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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】動力伝達装置の異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20231129BHJP
【FI】
F16H61/12
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020135298
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030957
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】樗澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 恵
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢一
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249004(JP,A)
【文献】特許第6624321(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/66-61/664
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記回転速度取得処理で取得した前記入力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、前記入力回転速度関連データを生成する生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項2】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記回転速度取得処理で取得した前記入力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記入力回転速度を正規化し、正規化した前記入力回転速度である複数の正規化入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを前記入力回転速度関連データとして生成する生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項3】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記出力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記回転速度取得処理で取得した前記出力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、前記出力回転速度関連データを生成する生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項4】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記出力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記回転速度取得処理で取得した前記出力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記出力回転速度を正規化し、正規化した前記出力回転速度である複数の正規化出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを前記出力回転速度関連データとして生成する生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項5】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性を導出し、当該時系列データの周波数特性に基づいて前記入力回転速度関連データを生成する周波数特性生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項6】
前記実行装置は、
前記入力回転速度の時系列データの取得期間における前記入力回転速度の平均値を算出する平均値算出処理を実行し、
前記周波数特性生成処理において、前記平均値算出処理で算出した前記入力回転速度の平均値を基に、前記無端回転部材の回転1次の周波数の振幅を取得し、前記高速フーリエ変換を行うことによって導出した前記入力回転速度の周波数特性を前記回転1次の周波数の振幅で規格化し、規格化した入力回転速度の周波数特性を基に前記入力回転速度関連データを生成する
請求項5に記載の動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項7】
前記実行装置は、前記周波数特性生成処理において、
前記入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切り、当該周波数帯毎に当該データを平均化することにより、前記入力回転速度関連データを生成する
請求項5に記載の動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項8】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、
前記取得処理は、
所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、
前記出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性を導出し、当該時系列データの周波数特性に基づいて前記出力回転速度関連データを生成する周波数特性生成処理と、を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項9】
前記実行装置は、
前記出力回転速度の時系列データの取得期間における、前記出力回転速度の平均値を算出する平均値算出処理を実行し、
前記周波数特性生成処理において、前記平均値算出処理で算出した前記出力回転速度の平均値を基に、前記無端回転部材の回転1次の周波数の振幅を取得し、前記高速フーリエ変換を行うことによって導出した前記出力回転速度の周波数特性を前記回転1次の周波数の振幅で規格化し、規格化した出力回転速度の周波数特性を基に前記出力回転速度関連データを生成する
請求項8に記載の動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項10】
前記実行装置は、前記周波数特性生成処理において、
前記出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切り、当該周波数帯毎に当該データを平均化することにより、前記出力回転速度関連データを生成する
請求項8に記載の動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項11】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記入力プーリに入力されるトルクを含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項12】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記動力伝達装置内を循環するオイルの温度を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項13】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記記憶装置は、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の形状を示す指標と、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の構成部品の形状を示す指標とのうち、少なくとも一方を記憶しており、
前記入力変数は、前記記憶装置に記憶されている前記指標を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項14】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記入力プーリが前記無端回転部材を挟持する力、及び、前記出力プーリが前記無端回転部材を挟持する力のうちの少なくとも一方を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項15】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記記憶装置は、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の回転方向におけるがたつき量を示す指標を記憶しており、
前記入力変数は、前記記憶装置に記憶されている前記がたつき量を示す指標を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項16】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記車両に搭載されている加速度センサの検出値を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項17】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記車両のエンジンルーム内に設置されている音センサの検出値を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項18】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、
前記出力回転速度は、前記駆動輪の回転速度を基に算出される
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項19】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記車両の制動力を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項20】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記入力変数は、前記無端回転部材の特性の経年変化の度合いを示す指数を含む
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項21】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記異常判定処理は、前記無端回転部材の構成部品が損傷しているか否かを判定する処理である
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項22】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記実行装置は、前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記動力伝達装置以外の他の車載部品が共振するような振動が前記無端回転部材に発生するか否かを判定する振動判定処理を実行する
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項23】
車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、
前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、
実行装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記入力変数を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行し、
前記実行装置は、前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材で共振が発生するか否かを判定する共振判定処理を実行する
動力伝達装置の異常判定装置。
【請求項24】
前記入力変数は、前記入力プーリと前記出力プーリとの回転速度の比を含む
請求項1~請求項23のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置の異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータジェネレータと、連続可変比変速機と、モータジェネレータ内及び連続可変比変速機内を循環するオイルの温度を検出する温度センサとを備える車両の一例が記載されている。そして、当該文献1によれば、温度センサの検出値が閾値以上であるときに、モータジェネレータ又は連続可変比変速機で異常が発生しているとの判定がなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-65501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトなどのような無端回転部材を備える連続可変比変速機にあっては、無端回転部材での異常の発生を検知できるようにすることが好ましい。連続可変比変速機内を循環するオイルの温度は、無端回転部材に異常が発生した場合でも、連続可変比変速機の構成部品のうちの無端回転部材以外の部品で異常が発生した場合でも変わりうる。そのため、連続可変比変速機内を循環するオイルの温度を用いて異常判定を行う場合では、無端回転部材に異常が発生したか否かを判定できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
1.車両の動力源から出力された動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置を備える車両に適用される動力伝達装置の異常判定装置であって、前記動力伝達装置は、前記動力源からトルクが入力される入力プーリと、前記駆動輪に向けてトルクを出力する出力プーリと、前記入力プーリと前記出力プーリとの双方に巻き掛けられている無端回転部材と、を有するものであり、実行装置と、記憶装置と、を備え、前記記憶装置は、前記入力プーリの回転速度である入力回転速度の時系列データに基づいた入力回転速度関連データ、及び、前記出力プーリの回転速度である出力回転速度の時系列データに基づいた出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つが入力変数として入力されたときに、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含む写像データを記憶しており、前記実行装置は、前記入力変数を取得する取得処理と、前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理と、を実行する動力伝達装置の異常判定装置である。
【0006】
動力源の出力トルクが動力伝達装置を介して駆動輪に伝達されている場合、無端回転部材は、入力プーリと出力プーリとの双方に巻き掛けられている状態を維持して回転する。これにより、動力源から動力伝達装置に入力されたトルクが駆動輪に向けて出力される。このように動力伝達装置が作動している状況下では、無端回転部材に異常が発生していない場合、入力プーリ及び出力プーリの回転速度は周期的に振動する。一方、無端回転部材に異常が発生している場合、入力プーリ及び出力プーリの回転速度には、無端回転部材に発生した異常に起因する振動成分が重畳する。そのため、入力プーリ及び出力プーリのうちの少なくとも一方の回転速度の推移を解析することにより、無端回転部材に異常が発生しているか否かの推測が可能となる。
【0007】
上記構成では、上記入力回転速度関連データ及び上記出力回転速度関連データのうちの少なくとも1つを入力変数とし、無端回転部材に異常が発生しているか否かを特定する出力変数を出力する写像を規定する写像データが記憶装置に記憶されている。そして、動力伝達装置が作動しているときに、取得した入力変数を写像に入力させることによって当該写像から出力される出力変数を基に、無端回転部材に異常が発生しているか否かが判定される。したがって、上記構成によれば、動力伝達装置が備える無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定できるようになる。
【0008】
2.前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記回転速度取得処理で取得した前記入力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、前記入力回転速度関連データを生成する生成処理と、を含む上記1に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0009】
入力回転速度の時系列データを写像の入力変数とする場合を考える。この場合でも、当該写像から出力される出力変数を基に、無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定することは可能である。このような判定を行う場合、入力回転速度の時系列データに含まれる入力回転速度の数が多いほど、判定の精度を高くできるものの、写像に入力する入力変数のデータ量が多くなってしまう。この点、上記構成では、入力回転速度の時系列データに含まれる複数の入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、入力回転速度関連データが生成される。そして、当該入力回転速度関連データが写像の入力変数として採用されている。この場合、入力回転速度の時系列データに含まれる入力回転速度の数が多くても、複数の入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータの容量はそれほど多くならない。そのため、判定の精度を低下させることなく、写像の入力変数のデータ量の増大を抑制できる。
【0010】
3.前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記回転速度取得処理で取得した前記入力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記入力回転速度を正規化し、正規化した前記入力回転速度である複数の正規化入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを前記入力回転速度関連データとして生成する生成処理と、を含む上記1に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0011】
無端回転部材に異常が発生している場合における入力回転速度の時系列データと、異常が発生していない場合における入力回転速度の時系列データとの間には相違がある。しかし、入力回転速度が大きい場合と入力回転速度が小さい場合とで相違の度合いが異なるおそれがある。入力回転速度の時系列データを写像の入力変数とした場合、相違の度合いが比較的小さいときには、相違の度合いが比較的大きいときと比較し、上記判定の精度が低くなりやすい。言い換えると、そのときの入力回転速度の大きさによって、当該判定の精度がばらつくおそれがある。
【0012】
この点、上記構成によれば、入力回転速度の時系列データに含まれる複数の入力回転速度が正規化される。すなわち、複数の正規化入力回転速度が生成される。こうした複数の正規化入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、入力回転速度関連データが生成される。このため、無端回転部材に異常が発生しているときの入力回転速度関連データと、異常が発生していないときの入力回転速度関連データとの相違の度合いは、入力回転速度が大きい場合と入力回転速度が小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、当該入力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、入力回転速度の大小に起因する上記判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0013】
さらに、正規化入力回転速度の時系列データではなく、正規化入力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを入力回転速度関連データとしている。そのため、判定の精度を低下させることなく、写像の入力変数のデータ量の増大を抑制できる。
【0014】
4.前記出力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記回転速度取得処理で取得した前記出力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、前記出力回転速度関連データを生成する生成処理と、を含む上記1又は2に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0015】
出力回転速度の時系列データを写像の入力変数とする場合を考える。この場合でも、当該写像から出力される出力変数を基に、無端回転部材に異常が発生しているか否かを判定することは可能である。このような判定を行う場合、出力回転速度の時系列データに含まれる出力回転速度の数が多いほど、判定の精度を高くできるものの、写像に入力する入力変数のデータ量が多くなってしまう。この点、上記構成では、出力回転速度の時系列データに含まれる複数の出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、出力回転速度関連データが生成される。そして、当該出力回転速度関連データが写像の入力変数として採用されている。この場合、出力回転速度の時系列データに含まれる出力回転速度の数が多くても、複数の出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータの容量はそれほど多くならない。そのため、判定の精度を低下させることなく、写像の入力変数のデータ量の増大を抑制できる。
【0016】
5.前記出力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記回転速度取得処理で取得した前記出力回転速度の時系列データに含まれる複数の前記出力回転速度を正規化し、正規化した前記出力回転速度である複数の正規化出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを前記出力回転速度関連データとして生成する生成処理と、を含む上記1又は3に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0017】
無端回転部材に異常が発生している場合における出力回転速度の時系列データには、異常が発生していない場合における出力回転速度の時系列データとは相違する点がある。しかし、出力回転速度が大きい場合と出力回転速度が小さい場合とで相違の度合いが異なるおそれがある。出力回転速度の時系列データを写像の入力変数とした場合、相違の度合いが比較的小さいときには、相違の度合いが比較的大きいときと比較し、上記判定の精度が低くなりやすい。言い換えると、そのときの出力回転速度の大きさによって、当該判定の精度がばらつくおそれがある。
【0018】
この点、上記構成によれば、出力回転速度の時系列データに含まれる各出力回転速度が正規化される。すなわち、複数の正規化出力回転速度が生成される。こうした複数の正規化出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを基に、出力回転速度関連データが生成される。このため、無端回転部材に異常が発生しているときの出力回転速度関連データと、異常が発生していないときの出力回転速度関連データとの相違の度合いは、出力回転速度が大きい場合と出力回転速度が小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、当該出力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、出力回転速度の大小に起因する上記判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0019】
さらに、正規化出力回転速度の時系列データではなく、正規化出力回転速度の数値の大きさの分布を示すデータを出力回転速度関連データとしている。そのため、判定の精度を低下させることなく、写像に入力される入力変数のデータ量の増大を抑制できる。
【0020】
6.前記入力変数は、前記入力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記入力回転速度を、当該入力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性を導出し、当該時系列データの周波数特性に基づいて前記入力回転速度関連データを生成する周波数特性生成処理と、を含む上記1に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0021】
上記構成によれば、入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換が行われることにより、当該時系列データの周波数特性が導出される。そして、当該周波数特性に基づいて入力回転速度関連データが生成される。時系列データの周波数特性が変わるような異常が無端回転部材に発生した場合、そのときの入力回転速度関連データと、当該異常が発生していない場合に生成される入力回転速度関連データとの間には相違が生じることがある。そのため、周波数特性に特徴の出る異常が無端回転部材に発生した場合、上記の周波数特性を基に生成された入力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、写像から出力される出力変数を用いて当該異常が発生していると判定できる。
【0022】
7.前記実行装置は、前記入力回転速度の時系列データの取得期間における前記入力回転速度の平均値を算出する平均値算出処理を実行し、前記周波数特性生成処理において、前記平均値算出処理で算出した前記入力回転速度の平均値を基に、前記無端回転部材の回転1次の周波数の振幅を取得し、前記高速フーリエ変換を行うことによって導出した前記入力回転速度の周波数特性を前記回転1次の周波数の振幅で規格化し、規格化した入力回転速度の周波数特性を基に前記入力回転速度関連データを生成する上記6に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0023】
上記の入力回転速度の時系列データの周波数特性に特徴が出るような異常が無端回転部材に発生している場合であっても、周波数特性における異常の特徴量の大きさが、入力回転速度の大きさによって変わる可能性がある。周波数特性における異常の特徴量の大きさが大きい場合と、周波数特性における異常の特徴量の大きさが小さい場合とでは、異常の発生の判定精度にばらつきが生じるおそれがある。
【0024】
上記構成によれば、入力回転速度の時系列データの取得期間における入力回転速度の平均値が算出される。当該平均値を基に、無端回転部材の回転1次の周波数の振幅が取得される。高速フーリエ変換によって導出された入力回転速度の周波数特性が回転1次の周波数の振幅で規格化される。このように規格化した入力回転速度の周波数特性に出る異常に起因する特徴量の大きさは、入力回転速度が大きい場合と入力回転速度が小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、規格化された入力回転速度の周波数特性を基に生成された入力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、入力回転速度の大小に起因する上記判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0025】
8.前記実行装置は、前記周波数特性生成処理において、前記入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切り、当該周波数帯毎に当該データを平均化することにより、前記入力回転速度関連データを生成する上記6に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0026】
上記構成によれば、入力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯がm個の周波数帯に区切られる。このように周波数帯毎に平均化されたデータを基に、入力回転速度関連データが生成される。このように周波数帯毎にデータを平均化することによって生成された入力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、写像に入力される入力変数のデータ数の増大を抑制できる。
【0027】
9.前記入力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、前記取得処理は、所定の計測期間内で検出サイクル毎に検出された複数の前記出力回転速度を、当該出力回転速度の時系列データとして取得する回転速度取得処理と、前記出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性を導出し、当該時系列データの周波数特性に基づいて前記出力回転速度関連データを生成する周波数特性生成処理と、を含む上記1に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0028】
上記構成によれば、出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換が行われることにより、当該時系列データの周波数特性が導出される。そして、当該周波数特性に基づいて出力回転速度関連データが生成される。時系列データの周波数特性が変わるような異常が無端回転部材に発生した場合、そのときの出力回転速度関連データと、異常が発生していない場合の時系列データの周波数特性に基づいた出力回転速度関連データとの間には相違が生じることがある。そのため、周波数特性に特徴の出る異常が無端回転部材に発生した場合、時系列データの周波数特性に基づいた出力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、当該車両から出力される出力変数を用いて当該異常が発生していると判定できる。
【0029】
10.前記実行装置は、前記出力回転速度の時系列データの取得期間における、前記出力回転速度の平均値を算出する平均値算出処理を実行し、前記周波数特性生成処理において、前記平均値算出処理で算出した前記出力回転速度の平均値を基に、前記無端回転部材の回転1次の周波数の振幅を取得し、前記高速フーリエ変換を行うことによって導出した前記出力回転速度の周波数特性を前記回転1次の周波数の振幅で規格化し、規格化した出力回転速度の周波数特性を基に前記出力回転速度関連データを生成する上記9に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0030】
上記の出力回転速度の時系列データの周波数特性に特徴が出るような異常が無端回転部材に発生している場合であっても、周波数特性における異常の特徴量の大きさが、出力回転速度の大きさによって変わる可能性がある。周波数特性における異常の特徴量の大きさが大きい場合と、周波数特性における異常の特徴量の大きさが小さい場合とでは、異常の発生の検出精度にばらつきが生じるおそれがある。
【0031】
上記構成によれば、出力回転速度の時系列データの取得期間における出力回転速度の平均値が算出される。当該平均値を基に、無端回転部材の回転1次の周波数の振幅が取得される。高速フーリエ変換によって導出された出力回転速度の周波数特性が回転1次の周波数の振幅で規格化される。このように規格化した出力回転速度の周波数特性に出る異常に起因する特徴量の大きさは、出力回転速度が大きい場合と出力回転速度が小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、規格化された出力回転速度の周波数特性を基に生成された出力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、出力回転速度の大小に起因する上記判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0032】
11.前記実行装置は、前記周波数特性生成処理において、前記出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切り、当該周波数帯毎に当該データを平均化することにより、前記出力回転速度関連データを生成する上記9に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0033】
上記構成によれば、出力回転速度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯がm個の周波数帯に区切られる。このように周波数帯毎に平均化されたデータを基に、出力回転速度関連データが生成される。このように周波数帯毎にデータを平均化することによって生成された出力回転速度関連データを写像の入力変数とすることにより、写像に入力される入力変数のデータ数の増大を抑制できる。
【0034】
12.前記入力変数は、前記入力プーリに入力されるトルクを含む上記1~11のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
入力プーリに入力されるトルクが大きい場合と、当該トルクが小さい場合とでは、入力プーリや出力プーリの回転速度の振動の大きさや周期が異なる可能性がある。そこで、上記構成では、入力プーリに入力されるトルクを写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、入力プーリに入力されるトルクを考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0035】
13.前記入力変数は、前記動力伝達装置内を循環するオイルの温度を含む上記1~12のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
オイルの温度が高いほど、オイルの粘度が低くなる。そして、オイルの粘度が低いほど、入力プーリ及び出力プーリに対する無端回転部材の滑り度合いが大きくなりやすい。このように滑り度合いが異なれば、入力プーリや出力プーリの回転速度の振動の態様が変わる可能性がある。そこで、上記構成では、オイルの温度を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、オイルの粘度を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0036】
14.前記記憶装置は、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の形状を示す指標と、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の構成部品の形状を示す指標とのうち、少なくとも一方を記憶しており、前記入力変数は、前記記憶装置に記憶されている前記指標を含む上記1~13のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0037】
入力プーリ及び出力プーリの回転速度には、無端回転部材の形状や無端回転部材の構成部品の形状に起因した振動成分が重畳している可能性がある。こうした振動成分は、無端回転部材で発生した異常に起因するものではない。そこで、上記構成では、無端回転部材の形状を示す指標及び無端回転部材の構成部品の形状を示す指標のうちの少なくとも一方が記憶装置に記憶されている。そして、記憶装置に記憶されている指標を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、無端回転部材の形状及び無端回転部材の構成部品の形状のうちの少なくとも1つを考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0038】
15.前記入力変数は、前記入力プーリが前記無端回転部材を挟持する力、及び、前記出力プーリが前記無端回転部材を挟持する力のうちの少なくとも一方を含む上記1~14のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0039】
入力プーリが無端回転部材を挟持する力によって、入力プーリと無端回転部材との間で発生する滑り度合いが変わりうる。また、出力プーリが無端回転部材を挟持する力によって、出力プーリと無端回転部材との間で発生する滑り度合いが変わりうる。このようにプーリと無端回転部材との間で発生する滑り度合いが変わると、当該プーリの回転速度の振動の態様が変わる可能性がある。そこで、上記構成では、入力プーリが無端回転部材を挟持する力、及び、出力プーリが無端回転部材を挟持する力のうちの少なくとも一方を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、入力プーリが無端回転部材を挟持する力、及び、出力プーリが無端回転部材を挟持する力のうちの少なくとも一方を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0040】
16.前記記憶装置は、前記動力伝達装置の個体毎の前記無端回転部材の回転方向におけるがたつき量を示す指標を記憶しており、前記入力変数は、前記記憶装置に記憶されている前記がたつき量を示す指標を含む上記1~15のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0041】
無端回転部材の回転方向におけるがたつき量が大きい場合、無端回転部材が回転しているときに、当該がたつき量の大きさに応じた振動が入力プーリ及び出力プーリの回転に重畳されやすい。そこで、上記構成では、無端回転部材の回転方向におけるがたつき量を示す指標が記憶装置に記憶されている。そして、記憶装置に記憶されているがたつき量を示す指標を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、当該がたつき量を考慮した値となる。そして、こうした出力変数を用いて上記の判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0042】
17.前記入力変数は、前記車両に搭載されている加速度センサの検出値を含む上記1~16のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
無端回転部材に異常が発生した場合、当該異常に起因する振動が車体にも伝わり、車載の加速度センサの検出値が変化する可能性がある。そこで、上記構成では、加速度センサの検出値を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、車体の振動を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0043】
18.前記入力変数は、前記車両のエンジンルーム内に設置されている音センサの検出値を含む上記1~17のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
無端回転部材に異常が発生し、入力プーリや出力プーリの回転速度に対して無端回転部材の異常に起因する振動が重畳する場合、当該振動に起因する異音が動力伝達装置で発生する可能性がある。このように動力伝達装置で発生した異音は、エンジンルーム内に設置されている音センサによって検知できる。そこで、上記構成では、音センサの検出値を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、音センサによって検出された音を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0044】
19.前記入力変数は、前記出力回転速度関連データを含んでおり、前記出力回転速度は、前記駆動輪の回転速度を基に算出される上記1~18のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0045】
出力プーリの回転速度と、駆動輪の回転速度との間には対応関係がある。そのため、駆動輪の回転速度を基に、出力プーリの回転速度の算出値を算出できる。そして、このような回転速度の算出値の推移に基づいたデータを、出力回転速度関連データとして採用できる。
【0046】
20.前記入力変数は、前記車両の制動力を含む上記1~19のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
車両の制動力が発生すると、駆動輪が減速されるため、入力プーリや出力プーリの回転速度も変わる。この際、当該回転速度には、制動力の大きさや制動力の増大速度に起因した振動成分が重畳する可能性がある。そこで、上記構成では、車両の制動力を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、車両の制動力を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0047】
21.前記入力変数は、前記入力プーリと前記出力プーリとの回転速度の比を含む上記
1~20のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
無端回転部材に異常が発生したために入力プーリや出力プーリの回転速度に振動が重畳している場合、入力プーリと出力プーリとの回転速度の比は、異常が発生していない場合と異常が発生している場合とで相違する可能性がある。そこで、上記構成では、当該回転速度の比を、写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、当該回転速度の比を考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0048】
22.前記入力変数は、前記無端回転部材の特性の経年変化の度合いを示す指数を含む上記1~21のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
無端回転部材に異常が発生していない場合であっても、特性の経年変化の度合いが比較的小さいときと、度合いが比較的大きいときとでは、入力プーリや出力プーリの回転速度の振動の大きさや周期が変わりうる。そこで、上記構成では、特性の経年変化の度合いを示す指数を写像の入力変数としている。すなわち、当該写像から出力される出力変数は、特性の経年変化の度合いを考慮した値となる。そのため、このような出力変数を基に上記判定を行うことにより、当該判定の精度を高くできる。
【0049】
23.前記異常判定処理は、前記無端回転部材の構成部品が損傷しているか否かを判定する処理である上記1~22のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0050】
無端回転部材の構成部品が損傷している場合、その損傷部分が入力プーリに接触したときやその損傷部分が出力プーリに接触したときには、振動が発生する。そして、こうした振動が、入力プーリや出力プーリの回転速度において振動となって表れる。そのため、上記構成によれば、構成部品が損傷しているときに、無端回転部材に異常が発生しているとの判定をなすことができる。
【0051】
24.前記実行装置は、前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記動力伝達装置以外の他の車載部品が共振するような振動が前記無端回転部材に発生するか否かを判定する振動判定処理を実行する上記1~22のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0052】
上記構成によれば、無端回転部材の振動に起因して他の車載部品が共振したと判定できる。
25.前記実行装置は、前記取得処理で取得した前記入力変数を前記写像に入力することによって当該写像から出力された前記出力変数を基に、前記無端回転部材で共振が発生するか否かを判定する共振判定処理を実行する上記1~22のうち何れか一項に記載の動力伝達装置の異常判定装置である。
【0053】
上記構成によれば、他の車載装置の作動に起因して無端回転部材が共振したと判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】第1実施形態において、制御装置と、同制御装置によって制御される車両の駆動系とを示す図。
図2】ベルトがプーリに挟持されている様子を示す模式図。
図3】ベルトの一部を示す模式図。
図4】同制御装置が実行する一連の処理を示すフローチャートの前半部分。
図5】同制御装置が実行する一連の処理を示すフローチャートの後半部分。
図6】入力回転速度又は出力回転速度の推移を示すタイムチャート。
図7】入力回転速度又は出力回転速度の推移を示すタイムチャート。
図8】入力回転速度関連データ又は出力回転速度関連データをヒストグラム化したグラフ。
図9】入力回転速度関連データ又は出力回転速度関連データをヒストグラム化したグラフ。
図10】第2実施形態において、制御装置が実行する一連の処理の一部分を示すフローチャート。
図11】第3実施形態において、制御装置が実行する一連の処理の一部分を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(第1実施形態)
以下、動力伝達装置の異常判定装置の第1実施形態を図1図9に従って説明する。
図1に示すように、車両VCは、内燃機関10、変速装置20及び駆動輪50を備えている。内燃機関10のクランク軸11には、変速装置20のトルクコンバータ21が連結されている。トルクコンバータ21には変速機構30の入力軸31が連結されている。変速機構30の出力軸32には、図示しないディファレンシャルを介して複数の駆動輪50が連結されている。
【0056】
変速機構30は、入力プーリ33と、出力プーリ35と、入力プーリ33と出力プーリ35とに巻き掛けられているベルト37とを有している。入力プーリ33には、内燃機関10の出力トルクがトルクコンバータ21を介して入力される。出力プーリ35は、出力軸32を介して駆動輪50に向けてトルクを出力する。
【0057】
入力プーリ33は、入力軸31が連結されている固定シーブ33aと、可動シーブ33bとを有している。すなわち、固定シーブ33aと可動シーブ33bとにより、ベルト37を挟み込むようになっている。可動シーブ33bは、固定シーブ33aから離間したり、固定シーブ33aに接近したりする。こうした可動シーブ33bの動作は、入力用アクチュエータ34の駆動によって実現される。入力用アクチュエータ34は、電動式であってもよいし、油圧駆動式であってもよい。
【0058】
出力プーリ35は、出力軸32が連結されている固定シーブ35aと、可動シーブ35bとを有している。すなわち、固定シーブ35aと可動シーブ35bとにより、ベルト37を挟み込むようになっている。可動シーブ35bは、固定シーブ35aから離間したり、固定シーブ35aに接近したりする。こうした可動シーブ35bの動作は、出力用アクチュエータ36の駆動によって実現される。出力用アクチュエータ36は、電動式であってもよいし、油圧駆動式であってもよい。
【0059】
そして、入力プーリ33の固定シーブ33aに対する可動シーブ33bの相対位置、及び、出力プーリ35の固定シーブ35aに対する可動シーブ35bの相対位置を調整することにより、変速機構30の変速比が制御される。
【0060】
図2及び図3に示すように、ベルト37は、無端状のリング371と、リング371に支持されている多数のエレメント372とを有している。各エレメント372は、ベルト37の回転方向に沿って並んでいる。
【0061】
図1に示す制御装置60は、内燃機関10を制御対象とし、その制御量であるトルク及び排気成分比率などを制御すべく、内燃機関10の各種操作部を操作する。また、制御装置60は、変速装置20を制御対象とし、入力用アクチュエータ34及び出力用アクチュエータ36を操作する。
【0062】
制御装置60は、上記制御量を制御する際、クランク角センサ101の出力信号Scr、入力軸31の回転角を検出する入力軸回転角センサ102の出力信号Sinp、及び、出力軸32の回転角を検出する出力軸回転角センサ103の出力信号Soutpを参照する。また、制御装置60は、油温センサ104によって検出されるオイルの温度である油温検出値Toil、車輪速センサ105によって検出される駆動輪50の回転速度である車輪速VW、加速度センサ106によって検出される車両VCの加速度である車両加速度G、及び、音センサ107によって検出される音の大きさである音検出値Sndを参照する。
【0063】
なお、油温センサ104によって温度が検出されるオイルは、変速機構30内を循環するオイルである。音センサ107は、例えば、車両VCのエンジンルーム内に設置されている。そのため、音検出値Sndは、エンジンルーム内における音の大きさを表す検出値である。
【0064】
制御装置60は、CPU61、ROM62、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置63及び周辺回路64を備えており、それらがローカルネットワーク65を介して通信可能とされている。周辺回路64は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路、電源回路及びリセット回路などを含んでいる。制御装置60は、ROM62に記憶されているプログラムをCPU61が実行することにより各種の制御量を制御する。
【0065】
記憶装置63は、複数の写像データDM1,DM2,DM3を記憶している。各写像データDM1,DM2,DM3は、後述する各種の入力変数が入力されたときに、当該入力変数に対応する出力変数を出力する写像を規定するデータであって、機械学習によって学習されたデータを含んでいる。
【0066】
また、記憶装置63は、変速装置20の個体毎のベルト37の形状を示す指標であるベルト形状指標MVsと、変速装置20の個体毎のエレメント372の形状を示す指標であるエレメント形状指標MVEsとを記憶している。ベルト形状指標MVs及びエレメント形状指標MVEsは、例えば、車両VCの出荷段階、又は、変速装置20の出荷段階での検査時における測定値である。ベルト形状指標MVsとしては、例えば、ベルト37の回転方向における長さ、ベルト37の回転方向における長さの実測値と設計値との誤差を挙げることができる。エレメント形状指標MVEsとしては、例えば、全てのエレメント372の厚みの測定値の平均値、全てのエレメント372の幅の測定値の平均値を挙げることができる。また例えば、全てのエレメント372の厚みの測定値の平均値とエレメント372の厚みの設計値との誤差、及び、全てのエレメント372の幅の測定値の平均値とエレメント372の幅の実測値との誤差を、エレメント形状指標MVEsとしてもよい。
【0067】
また、記憶装置63は、変速装置20の個体毎の上記回転方向におけるエレメント372のがたつき量を示す指標であるがたつき量指標MVRaを記憶している。がたつき量指標MVRaは、例えば、車両VCの出荷段階、又は、変速装置20の出荷段階での検査時における測定値である。がたつき量指標MVRaとしては、例えば、上記回転方向で互いに隣り合うエレメント372同士の間隔の平均値を挙げることができる。
【0068】
ところで、変速装置20が作動しているときに、車両VC内で振動が発生することがある。変速装置20の作動に起因して車両VCで振動が発生しうる要因としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
・ベルト37の構成部品が損傷している場合。
・変速装置20の作動に起因して変速装置20以外の他の車載装置で共振が発生する場合。
・変速装置20以外の他の車載装置の作動に起因して変速機構30で共振が発生する場合。
【0069】
例えば、複数のエレメント372のうち、1つのエレメント372が破損した場合、破損したエレメント372が入力プーリ33に接触する度に、入力プーリ33で振動が発生する。その結果、入力プーリ33の回転速度の検出値である入力回転速度Ninpには、入力プーリ33の振動に起因する振動が重畳してしまう。また例えば、破損したエレメント372が出力プーリ35に接触する度に、出力プーリ35で振動が発生する。その結果、出力プーリ35の回転速度の検出値である出力回転速度Noutpには、出力プーリ35の振動に起因する振動が重畳してしまう。
【0070】
すなわち、このようにベルト37の損傷に起因する異常がベルト37に発生している場合、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの推移が、ベルト37に何ら異常が発生していない場合と相違する。そこで、本実施形態では、制御装置60は、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの推移を基に、ベルト37に異常が発生しているか否かを判定する。この際、制御装置60は、記憶装置63に記憶されている写像データDM1を用いる。
【0071】
変速装置20が設置されているエンジンルーム内には、他の車載装置も設置されている。そして、他の車載装置で発生する振動の周期によっては、変速装置20のベルト37で共振が発生することがある。また、変速装置20で発生する振動の周期によっては、他の車載装置で共振が発生することがある。このような共振の発生を抑制するためには、変速機構30の動作点を、変速装置20で共振が発生するような変速機構30の動作点、及び、他の車載装置で共振が発生するような変速機構30の動作点から外すように、内燃機関10及び変速装置20を制御することが好ましい。
【0072】
そこで、本実施形態では、制御装置60は、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの推移を基に、変速装置20の作動に起因して他の車載装置で共振が発生するか否かを判定する。この際に、制御装置60は、記憶装置63に記憶されている写像データDM2を用いる。また、制御装置60は、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの推移を基に、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生するか否かを判定する。この際に、制御装置60は、記憶装置63に記憶されている写像データDM3を用いる。
【0073】
図4および図5を参照し、上記のような各種の判定を行うために制御装置60が実行する一連の処理の手順について説明する。図4及び図5に示す一連の処理の流れは、ROM62に記憶されているプログラムをCPU61が実行することによって実現される。この一連の処理は、所定周期で繰り返し実行される。すなわち、CPU61は、一連の処理を一旦終了した時点からの経過時間が所定周期に応じた時間に達すると、一連の処理の実行を再び開始する。
【0074】
まずはじめに、ステップS11において、CPU61は、係数zとして「1」をセットする。次のステップS13において、CPU61は、入力回転速度Ninp(z)として現在の入力回転速度Ninpを取得する。また、CPU61は、出力回転速度Noutp(z)として現在の出力回転速度Noutpを取得する。次のステップS15において、CPU61は、係数zを「1」インクリメントする。
【0075】
続いて、ステップS17において、CPU61は、係数zが係数判定値zThよりも大きいか否かを判定する。本実施形態では、上記のような判定を行うために、入力回転速度Ninpの時系列データ、及び、出力回転速度Noutpの時系列データが用いられる。入力回転速度Ninpの時系列データは、時系列で連続する複数の入力回転速度Ninpを含むデータである。出力回転速度Noutpの時系列データは、時系列で連続する複数の出力回転速度Noutpを含むデータである。係数判定値zThは、上記のような判定に必要な入力回転速度Ninpの数及び出力回転速度Noutpの数の取得が完了したか否かの判断基準として設定されている。係数zが係数判定値zTh以下である場合(S17:NO)、CPU61は、その処理をステップS13に移行する。すなわち、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの取得が継続される。一方、係数zが係数判定値zThよりも大きい場合(S17:YES)、「z個」の入力回転速度Ninpからなる入力回転速度Ninpの時系列データの取得、及び、「z個」の出力回転速度Noutpからなる出力回転速度Noutpの時系列データの取得が完了したため、CPU61は、その処理を次のステップS19に移行する。
【0076】
ステップS19において、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データを正規化する。例えば、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データに含まれる複数の入力回転速度Ninp(1),Ninp(2),…,Ninp(z)のうち、最も大きい値のものを基準入力回転速度NinpBとする。続いて、CPU61は、各入力回転速度Ninp(1),Ninp(2),…,Ninp(z)を基準入力回転速度NinpBで割ることにより、各入力回転速度Ninp(1),Ninp(2),…,Ninp(z)を正規化する。正規化された各入力回転速度Ninp(1),Ninp(2),…,Ninp(z)のことを、正規化入力回転速度NinpN(1),NinpN(2),…,NinpN(z)という。例えば入力回転速度Ninp(1)を基準入力回転速度NinpBで割った値が、正規化入力回転速度NinpN(1)となる。各正規化入力回転速度NinpN(1),NinpN(2),…,NinpN(z)を含むデータを、「正規化入力回転速度NinpNの時系列データ」ともいう。
【0077】
次のステップS21において、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データを正規化する。例えば、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データに含まれる複数の出力回転速度Noutp(1),Noutp(2),…,Noutp(z)のうち、最も大きい値のものを基準出力回転速度NoutpBとする。続いて、CPU61は、各出力回転速度Noutp(1),Noutp(2),…,Noutp(z)を基準出力回転速度NoutpBで割ることにより、各出力回転速度Noutp(1),Noutp(2),…,Noutp(z)を正規化する。正規化された各出力回転速度Noutp(1),Noutp(2),…,Noutp(z)のことを、正規化出力回転速度NoutpN(1),NoutpN(2),…,NoutpN(z)という。例えば出力回転速度Noutp(1)を基準出力回転速度NoutpBで割った値が、正規化出力回転速度NoutpN(1)となる。各正規化出力回転速度NoutpN(1),NoutpN(2),…,NoutpN(z)を含むデータを、「正規化出力回転速度NoutpNの時系列データ」ともいう。
【0078】
次のステップS23において、CPU61は、正規化入力回転速度NinpNの時系列データを基に、入力回転速度関連データRDNinpを生成する。本実施形態において、各正規化入力回転速度NinpN(1),NinpN(2),…,NinpN(z)は、「0」よりも大きく且つ「1」以下となる。そこで、「0」から「1」までの数値の領域が、複数に分割される。例えば、「0」から「1」までの数値の領域が、「0.2」毎に分割される。そして、CPU61は、分割領域に含まれる正規化入力回転速度NinpNの数を、分割領域毎にカウントする。例えば、各正規化入力回転速度NinpN(1),NinpN(2),…,NinpN(z)の中に、「0.4」よりも大きく且つ「0.6」以下となる正規化入力回転速度NinpNの数が「4個」の場合、CPU61は、「0.4」から「0.6」までの分割領域に含まれる正規化入力回転速度NinpNの数を「4」とする。CPU61は、このように分割領域毎にカウントした結果を、入力回転速度関連データRDNinpとして導出する。つまり、正規化入力回転速度NinpNの時系列データに含まれる複数の正規化入力回転速度NinpN(1),NinpN(2),…,NinpN(z)の数値の大きさの分布を示すデータが、入力回転速度関連データRDNinpである。
【0079】
次のステップS25において、CPU61は、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データを基に、出力回転速度関連データRDNoutpを生成する。本実施形態において、各正規化出力回転速度NoutpN(1),NoutpN(2),…,NoutpN(z)は、「0」よりも大きく且つ「1」以下となる。そこで、「0」から「1」までの数値の領域が、複数に分割される。例えば、「0」から「1」までの数値の領域が、「0.2」毎に分割される。そして、CPU61は、分割領域に含まれる正規化出力回転速度NoutpNの数を、分割領域毎にカウントする。例えば、各正規化出力回転速度NoutpN(1),NoutpN(2),…,NoutpN(z)の中に、「0.4」よりも大きく且つ「0.6」以下となる正規化出力回転速度NoutpNの数が「2個」の場合、CPU61は、「0.4」から「0.6」までの分割領域に含まれる正規化出力回転速度NoutpNの数を「2」とする。CPU61は、このように分割領域毎にカウントした結果を、出力回転速度関連データRDNoutpとして導出する。つまり、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データに含まれる複数の正規化出力回転速度NoutpN(1),NoutpN(2),…,NoutpN(z)の数値の大きさの分布を示すデータが、出力回転速度関連データRDNoutpである。
【0080】
ここで、図6及び図7は、入力回転速度Ninpの時系列データをそれぞれ示している。図6に示す入力回転速度Ninpの時系列データは、変速機構30の変速比が一定であり、上述したような振動が発生していない場合におけるデータである。図7に示す入力回転速度Ninpの時系列データは、変速機構30の変速比が一定であり、上述したような振動が入力回転速度Ninpに重畳している場合におけるデータである。図8は、図6に示す入力回転速度Ninpの時系列データに基づいて生成された入力回転速度関連データRDNinpをヒストグラム化したものである。図9は、図7に示す入力回転速度Ninpの時系列データに基づいて生成された入力回転速度関連データRDNinpをヒストグラム化したものである。図8に示す入力回転速度関連データRDNinpと、図9に示す入力回転速度関連データRDNinpとでは、各カウント値Cnt(1)~Cnt(5)のばらつきに違いがある。つまり、入力回転速度関連データRDNinpにおける各カウント値Cnt(1)~Cnt(5)のばらつきを基に、異常が発生しているか否かを判定することが可能である。
【0081】
なお、図6及び図7を、入力回転速度Ninpを出力回転速度Noutpに置き換えて見た場合、図6及び図7は、出力回転速度Noutpの時系列データをそれぞれ示しているといえる。この場合、図8は、図6に示す出力回転速度Noutpの時系列データに基づいて生成された出力回転速度関連データRDNoutpをヒストグラム化したものであるといえる。図9は、図7に示す出力回転速度Noutpの時系列データに基づいて生成された出力回転速度関連データRDNoutpをヒストグラム化したものであるといえる。そして、図8に示す出力回転速度関連データRDNoutpと、図9に示す出力回転速度関連データRDNoutpとでは、各カウント値Cnt(1)~Cnt(5)のばらつきに違いがある。つまり、出力回転速度関連データRDNoutpにおける各カウント値Cnt(1)~Cnt(5)のばらつきを基に、異常が発生しているか否かを判定することが可能である。
【0082】
図4及び図5に戻り、ステップS25の処理を終了させると、次のステップS27において、CPU61は、その他のデータを取得する。その他のデータとしては、回転速度比RN、入力トルクTrq、油温検出値Toil、入力係合力Pinp、出力係合力Poutp、車両加速度G、音検出値Snd、車両VCの制動力BPvc及び車両VCの走行距離SCを挙げることができる。また、CPU61は、記憶装置63に記憶されている各種の指標MVs、MVEs、MVRaを取得する。
【0083】
回転速度比RNは、現在の出力回転速度Noutpを現在の入力回転速度Ninpで割った値である。入力トルクTrqとは、入力プーリ33に入力されるトルクである。入力トルクTrqは、内燃機関10の出力トルクと、トルクコンバータ21におけるトルク伝達効率とを基に導出できる。入力係合力Pinpは、入力プーリ33によるベルト37の係合力である、すなわち入力プーリ33がベルト37を挟持する力である。入力係合力Pinpは、入力用アクチュエータ34から可動シーブ33bに入力される駆動力が大きいほど大きくなる。出力係合力Poutpは、出力プーリ35によるベルト37の係合力である、すなわち出力プーリ35がベルト37を挟持する力である。出力係合力Poutpは、出力用アクチュエータ36から可動シーブ35bに入力される駆動力が大きいほど大きくなる。制動力BPvcは、運転者による制動操作などに起因する制動力の要求値を基に導出される。走行距離SCは、ベルト37の特性の経年変化の度合いを示す指数である。
【0084】
次のステップS29において、CPU61は、写像データによって規定される写像の入力変数x(1)~x(22)に、ステップS23で生成した入力回転速度関連データRDNinp、ステップS25で生成した出力回転速度関連データRDNoutp、及び、ステップS27で取得した各種データを代入する。すなわち、CPU61は、入力回転速度関連データRDNinpのカウント値Cnt(1)を入力変数x(1)に代入し、カウント値Cnt(2)を入力変数x(2)に代入し、カウント値Cnt(3)を入力変数x(3)に代入し、カウント値Cnt(4)を入力変数x(4)に代入し、カウント値Cnt(5)を入力変数x(5)に代入する。また、CPU61は、出力回転速度関連データRDNoutpのカウント値Cnt(1)を入力変数x(6)に代入し、カウント値Cnt(2)を入力変数x(7)に代入し、カウント値Cnt(3)を入力変数x(8)に代入し、カウント値Cnt(4)を入力変数x(9)に代入し、カウント値Cnt(5)を入力変数x(10)に代入する。また、CPU61は、回転速度比RNを入力変数x(11)に代入し、入力トルクTrqを入力変数x(12)に代入し、油温検出値Toilを入力変数x(13)に代入し、入力係合力Pinpを入力変数x(14)に代入し、出力係合力Poutpを入力変数x(15)に代入する。また、CPU61は、車両加速度Gを入力変数x(16)に代入し、音検出値Sndを入力変数x(17)に代入し、制動力BPvcを入力変数x(18)に代入し、走行距離SCを入力変数x(19)に代入する。また、CPU61は、ベルト形状指標MVsを入力変数x(20)に代入し、エレメント形状指標MVEsを入力変数x(21)に代入し、がたつき量指標MVRaを入力変数x(22)に代入する。
【0085】
図5に示すように、次のステップS31において、CPU61は、判定係数MPに「1」をセットする。次のステップS33において、CPU61は、記憶装置63に記憶されている各写像データDM1,DM2,DM3の中から、判定係数MPに応じた写像データを選択する。例えば、CPU61は、判定係数MPに「1」がセットされているときには写像データDM1を選択し、判定係数MPに「2」がセットされているときには写像データDM2を選択し、判定係数MPに「3」がセットされているときには写像データDM3を選択する。
【0086】
そして、ステップS35において、CPU61は、選択した写像データによって規定される写像に入力変数x(1)~x(22)を入力することによって、出力変数Y(MP)を算出する。
【0087】
本実施形態において、写像は、中間層が一層の全結合順伝播型ニューラルネットワークとして構成されている。上記ニューラルネットワークは、入力側係数wFjk(j=0~n,k=0~22)と、入力側係数wFjkによって規定される線形写像である入力側線形写像の出力とのそれぞれを非線形変換する入力側非線形写像としての活性化関数h(x)を含んでいる。本実施形態では、活性化関数h(x)として、ハイパボリックタンジェント「tanh(x)」を例示する。また、上記ニューラルネットワークは、出力側係数wSj(j=0~n)と、出力側係数wSjによって規定される線形写像である出力側線形写像の出力とのそれぞれを非線形変換する出力側非線形写像としての活性化関数f(x)を含んでいる。本実施形態では、活性化関数f(x)として、ハイパボリックタンジェント「tanh(x)」を例示する。なお、値nは、中間層の次元を示すものである。本実施形態において、値nは、入力変数xの次元である「22」よりも小さい。入力側係数wFj0は、バイアスパラメータであり、入力変数x(0)の係数となっている。入力変数x(0)は「1」として定義される。また、出力側係数wS0は、バイアスパラメータである。
【0088】
写像データDM1は、車両VCに実装される以前に、車両VCと同一仕様の車両を用いて学習された学習済みモデルである。ここで、写像データDM1の学習に際しては、事前に教師データと入力データとからなる訓練データを取得しておく。すなわち、実際に車両を走行させている場合、入力回転速度Ninpの時系列データ、出力回転速度Noutpの時系列データが取得される。そして、入力回転速度Ninpの時系列データに対して上記各ステップS19,S23と同様の処理を施すことにより、入力回転速度関連データRDNinpが入力データとして取得される。同様に、出力回転速度Noutpの時系列データに対して上記各ステップS21,S25と同様の処理を施すことにより、出力回転速度関連データRDNoutpが入力データとして取得される。また、このとき、回転速度比RN、入力トルクTrq、油温検出値Toil、入力係合力Pinp、出力係合力Poutp、車両加速度G、音検出値Snd、制動力BPvc及び走行距離SCもまた、入力データとして取得される。さらに、ベルト37に異常が発生しているか否かの情報である異常発生情報が教師データとして取得される。例えば、異常が発生した場合の異常発生情報を「0」とし、異常が発生していない場合の異常発生情報を「1」とすればよい。なお、車両を走行させる事前に、上記の各種指標MVs、MVEs、MVRaもまた、入力データとして取得される。
【0089】
そして、様々な状況下で車両を走行させることにより、複数の訓練データが生成される。例えば、ベルト37の各エレメント372のうち、1つのエレメント372を意図的に損傷させた変速機構30を車両に搭載し、当該車両を走行させる。この場合、ベルト37に異常が発生する場合の各種の入力データが取得できるとともに、異常が発生した旨の異常発生情報を教師データとして取得できる。また例えば、ベルト37の各エレメント372の何れにおいても損傷が発生していない変速機構30を車両に搭載し、当該車両を走行させる。この場合、ベルト37に異常が発生していない場合の各種の入力データが取得できるとともに、異常が発生していない旨の異常発生情報を教師データとして取得できる。
【0090】
こうした複数の訓練データを用いて写像データDM1が学習される。すなわち、入力データを入力として写像が出力する出力変数と実際の異常発生情報との誤差が所定値以下に収束するように、入力側変数及び出力側変数がそれぞれ調整される。
【0091】
同様に、写像データDM2は、車両VCに実装される以前に、車両VCと同一仕様の車両を用いて学習された学習済みモデルである。ここで、写像データDM2の学習に際しても、事前に教師データと入力データとからなる訓練データを取得しておく。すなわち、実際に変速装置20の動作点を変更させつつ車両を走行させることにより、上記のように各種の入力データが取得される。また、この際に、変速装置20以外の他の車載装置で共振が発生したか否かの情報である第1共振発生情報が教師データとして取得される。例えば、他の車載装置で共振が発生した場合の第1共振発生情報を「0」とし、他の車載装置で共振が発生していない場合の第1共振発生情報を「1」とすればよい。
【0092】
そして、様々な状況下で車両を走行させることにより、教師データと入力データとからなる複数の訓練データが生成される。こうした複数の訓練データを用いて写像データDM2が学習される。すなわち、入力データを入力として写像が出力する出力変数と実際の第1共振発生情報との誤差が所定値以下に収束するように、入力側変数及び出力側変数がそれぞれ調整される。
【0093】
同様に、写像データDM3は、車両VCに実装される以前に、車両VCと同一仕様の車両を用いて学習された学習済みモデルである。ここで、写像データDM3の学習に際しても、事前に教師データと入力データとからなる訓練データを取得しておく。すなわち、実際に変速装置20の動作点を変更させつつ車両を走行させることにより、上記のように各種の入力データが取得される。また、この際に、ベルト37が共振したか否かの情報である第2共振発生情報が教師データとして取得される。例えば、ベルト37が共振した場合の第2共振発生情報を「0」とし、ベルト37が共振しなかった場合の第2共振発生情報を「1」とすればよい。
【0094】
そして、様々な状況下で車両を走行させることにより、教師データと入力データとからなる複数の訓練データが生成される。こうした複数の訓練データを用いて写像データDM3が学習される。すなわち、入力データを入力として写像が出力する出力変数と実際の第2共振発生情報との誤差が所定値以下に収束するように、入力側変数及び出力側変数がそれぞれ調整される。
【0095】
ステップS35において出力変数Y(MP)を算出すると、次のステップS37において、CPU61は、判定係数MPに「1」がセットされているか否かを判定する。判定係数MPに「1」がセットされている場合(S37:YES)、CPU61は、処理をステップS39に移行する。ステップS39において、CPU61は、ステップS35で算出した出力変数Y(1)を評価する。すなわち、CPU61は、出力変数Y(1)を基に、ベルト37に異常が発生しているか否かを判定する。例えば、CPU61は、出力変数Y(1)が異常判定値以下であるときには異常が発生したとの判定をなす。一方、CPU61は、出力変数Y(1)が異常判定値よりも大きいときには異常が発生したとの判定をなさない。異常判定値として、「0」よりも大きく且つ「1」未満の値が設定されている。例えば、「0.5」を異常判定値として設定してもよい。
【0096】
次のステップS41において、CPU61は、ステップS39における出力変数Y(1)の評価の結果を基に、ベルト37に異常が発生しているか否かを判定する。異常が発生しているとの判定をなしている場合(S41:YES)、CPU61は、処理を次のステップS43に移行する。CPU61は、ステップS43においてベルト37に異常が発生している旨を記憶装置63に記憶させ、その後に処理を次のステップS45に移行する。一方、ステップS41において、ベルト37に異常が発生しているとの判定をなしていない場合(NO)、CPU61は、処理を次のステップS45に移行する。
【0097】
ステップS45において、CPU61は、判定係数MPを「1」インクリメントする。その後、CPU61は、処理をステップS33に移行する。
その一方で、ステップS37において、判定係数MPに「1」がセットされていない場合(NO)、CPU61は、その処理を次のステップS47に移行する。ステップS47において、CPU61は、出力変数Y(MP)を評価する。すなわち、判定係数MPに「2」がセットされている場合、CPU61は、出力変数Y(2)を基に、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したか否かを判定する。例えば、CPU61は、出力変数Y(2)が第1共振判定値以下であるときには、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したとの判定をなす。一方、CPU61は、出力変数Y(2)が第1共振判定値よりも大きいときには、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したとの判定をなさない。第1共振判定値として、「0」よりも大きく且つ「1」未満の値が設定されている。例えば、「0.5」を第1共振判定値として設定してもよい。
【0098】
また、判定係数MPに「3」がセットされている場合、CPU61は、出力変数Y(3)を基に、他の車載装置の振動に起因してベルト37で共振が発生したか否かを判定する。例えば、CPU61は、出力変数Y(3)が第2共振判定値以下であるときには、他の車載装置の振動に起因してベルト37で共振が発生したとの判定をなす。一方、CPU61は、出力変数Y(3)が第2共振判定値よりも大きいときには、他の車載装置の振動に起因してベルト37で共振が発生したとの判定をなさない。第2共振判定値として、「0」よりも大きく且つ「1」未満の値が設定されている。例えば、「0.5」を第2共振判定値として設定してもよい。
【0099】
続いて、ステップS49において、CPU61は、ステップS47における出力変数Y(MP)の評価の結果を基に、共振が発生したか否かを判定する。すなわち、判定係数MPに「2」がセットされている場合、CPU61は、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したか否かを判定する。そして、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したとの判定をなした場合(S49:YES)、CPU61は、処理をステップS51に移行する。一方、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したとの判定をなしていない場合(S49:NO)、CPU61は、処理をステップS53に移行する。また、判定係数MPに「3」がセットされている場合、CPU61は、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生したか否かを判定する。そして、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生したとの判定をなした場合(S49:YES)、CPU61は、処理をステップS51に移行する。一方、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生したとの判定をなしていない場合(S49:NO)、CPU61は、処理をステップS53に移行する。
【0100】
ステップS51において、CPU61は、現在の変速機構30の動作点を記憶装置63に記憶する。すなわち、CPU61は、判定係数MPに「2」がセットされているときには、現在の変速機構30の動作点が、変速装置20の作動に起因して変速装置20以外の他の車載装置で共振が発生する場合の動作点として記憶装置63に記憶される。また、CPU61は、判定係数MPに「3」がセットされているときには、現在の変速機構30の動作点が、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生する場合の動作点として記憶装置63に記憶される。そして、CPU61は、処理を次のステップS53に移行する。
【0101】
ステップS53において、CPU61は、判定係数MPに「3」がセットされているか否かを判定する。判定係数MPに「3」がセットされていない場合(S53:NO)、CPU61は、処理をステップS55に移行する。そして、CPU61は、ステップS55において判定係数MPを「1」インクリメントし、その後、処理をステップS33に移行する。一方、ステップS53において、判定係数MPに「3」がセットされている場合(YES)、CPU61は、一連の処理を一旦終了する。
【0102】
本実施形態の作用について説明する。
ベルト37に何ら異常が発生していない場合、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpは、機関回転数NEに応じた周期で変動する。図6には、機関回転数NEが一定である場合における入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの推移が示されている。一方、ベルト37のエレメント372が破損するなどの異常がベルト37に発生すると、破損に起因する振動成分が、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpに重畳するようになる。その結果、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpは、図7に示すように推移することになる。
【0103】
本実施形態では、入力回転速度Ninpの時系列データに基づいた入力回転速度関連データRDNinp、及び、出力回転速度Noutpの時系列データに基づいた出力回転速度関連データRDNoutpが、写像データDM1によって規定される写像に対して入力変数xとして入力される。すると、当該写像から出力変数Y(1)が出力される。出力変数Y(1)は、入力回転速度Ninpの推移、及び、出力回転速度Noutpの推移を考慮した値となる。そのため、ベルト37の異常に起因する振動成分が入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの少なくとも一方に重畳している場合と、ベルト37の異常に起因する振動成分が入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの何れにも重畳していない場合とでは、出力変数Y(1)に違いが生じる。そのため、出力変数(1)を評価することにより、ベルト37に異常が発生しているか否かを判定できる。
【0104】
なお、本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1-1)本実施形態では、入力回転速度Ninpの時系列データを正規化することにより、正規化入力回転速度NinpNの時系列データが導出される。そして、正規化入力回転速度NinpNの時系列データを基に、入力回転速度関連データRDNinpが生成される。そのため、ベルト37に異常が発生している場合における入力回転速度関連データRDNinpと、異常が発生していない場合における入力回転速度関連データRDNinpとの相違の度合いは、入力回転速度Ninpが大きい場合と入力回転速度Ninpが小さい場合とでそれほど変わらない。したがって、正規化入力回転速度NinpNの時系列データを基に生成された入力回転速度関連データRDNinpを写像の入力変数とすることにより、入力回転速度Ninpの大小に起因する判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0105】
(1-2)正規化入力回転速度NinpNの時系列データにおけるデータ数が多いほど、判定の精度を高くできる。本実施形態では、写像の入力変数である入力回転速度関連データRDNinpは、正規化入力回転速度NinpNの時系列データをヒストグラム化したものである。そのため、時系列データのデータ数が多くなっても、入力回転速度関連データRDNinpのデータ容量があまり大きくならない。したがって、入力変数のデータ量の増大を抑制しつつも、精度良く判定を行うことができる。
【0106】
(1-3)本実施形態では、出力回転速度Noutpの時系列データを正規化することにより、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データが導出される。そして、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データを基に、出力回転速度関連データRDNoutpが生成される。そのため、ベルト37に異常が発生している場合における出力回転速度関連データRDNoutpと、異常が発生していない場合における出力回転速度関連データRDNoutpとの相違の度合いは、出力回転速度Noutpが大きい場合と出力回転速度Noutpが小さい場合とでそれほど変わらない。したがって、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データを基に生成された出力回転速度Noutpを写像の入力変数とすることにより、出力回転速度Noutpの大小に起因する判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0107】
(1-4)正規化出力回転速度NoutpNの時系列データにおけるデータ数が多いほど、判定の精度を高くできる。本実施形態では、写像の入力変数である出力回転速度関連データRDNoutpは、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データをヒストグラム化したものである。そのため、時系列データのデータ数が多くなっても、出力回転速度関連データRDNoutpのデータ容量があまり大きくならない。したがって、入力変数のデータ量の増大を抑制しつつも、精度良く判定を行うことができる。
【0108】
(1-5)ベルト37に異常が発生していない状況下においても、入力トルクTrqが大きい場合と、入力トルクTrqが小さい場合とでは、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの振動の大きさや周期が異なる可能性がある。そこで、本実施形態では、入力トルクTrqを写像の入力変数としている。そのため、写像から出力される出力変数Y(MP)は、入力トルクTrqを考慮した値となる。したがって、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0109】
(1-6)オイルの温度が高いほど、オイルの粘度が低くなる。そして、変速機構30内を循環するオイルの粘度が低いほど、入力プーリ33に対するベルト37の滑り度合い、及び、出力プーリ35に対するベルト37の滑り度合いが大きくなりやすい。このように滑り度合いが異なれば、ベルト37に異常が発生していない状況下においても、入力回転速度Ninpの振動の態様及び出力回転速度Noutpの振動の態様がそれぞれ変わる可能性がある。そこで、本実施形態では、油温検出値Toilを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、オイルの粘度を考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0110】
(1-7)入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpには、ベルト37の形状に起因した振動成分が重畳している可能性がある。こうした振動成分は、ベルト37で発生した異常に起因するものではない。本実施形態では、記憶装置63には、変速装置20の個体毎のベルト形状指標MVsが記憶されている。そして、当該ベルト形状指標MVsが、入力変数として写像に入力される。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、ベルト37の形状を考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0111】
(1-8)入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpには、ベルト37の構成部品の形状に起因した振動成分が重畳している可能性がある。こうした振動成分は、ベルト37で発生した異常に起因するものではない。そこで、本実施形態では、記憶装置63には、変速装置20の個体毎のエレメント形状指標MVEsが記憶されている。そして、当該エレメント形状指標MVEsが、入力変数として写像に入力される。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、ベルト37の構成部品であるエレメント372の形状を考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0112】
(1-9)ベルト37において、エレメント372の回転方向におけるがたつき量が大きいときに、当該がたつき量の大きさに応じた振動成分が入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpに重畳されやすい。そこで、本実施形態では、記憶装置63には、当該がたつき量の指標であるがたつき量指標MVRaが記憶されている。そして、当該がたつき量指標MVRaが、入力変数として写像に入力される。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、当該がたつき量を考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0113】
(1-10)入力係合力Pinpによって、入力プーリ33とベルト37との間で発生する滑り度合いが変わりうる。当該滑り度合いが変わると、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの振動の態様が変わる可能性がある。そこで、本実施形態では、入力係合力Pinpを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、入力プーリ33とベルト37との間で発生する滑り度合いを考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0114】
(1-11)出力係合力Poutpによって、出力プーリ35とベルト37との間で発生する滑り度合いが変わりうる。当該滑り度合いが変わると、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの振動の態様が変わる可能性がある。そこで、本実施形態では、出力係合力Poutpを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、出力プーリ35とベルト37との間で発生する滑り度合いを考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0115】
(1-12)ベルト37に異常が発生し、当該異常に起因する振動が入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpに重畳する場合、当該異常に起因する振動が車体にも伝わり、車両加速度Gが変化する可能性がある。そこで、本実施形態では、車両加速度Gを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、車両加速度Gを考慮した変数となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0116】
(1-13)ベルト37に異常が発生し、当該異常に起因する振動が入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpに重畳する場合、当該振動に起因する異音が変速機構30で発生する可能性がある。こうした異音は、エンジンルーム内に設置されている音センサ107によって検知できる。そこで、本実施形態では、音検出値Sndを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、音検出値Sndを考慮した変数となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0117】
(1-14)車両VCの制動力BPvcが発生すると、駆動輪50が減速されるため、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpも変わる。この際、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpには、制動力BPvcの大きさや制動力BPvcの増大速度に起因した振動成分が重畳する可能性がある。そこで、本実施形態では、制動力BPvcを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、制動力BPvcを考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0118】
(1-15)ベルト37に異常が発生したために入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpに振動が重畳している場合、回転速度比RNは、異常が発生していない場合と異常が発生している場合とで相違する可能性がある。そこで、本実施形態では、回転速度比RNを、写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、回転速度比RNを考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0119】
(1-16)ベルト37に異常が発生していない場合であっても、ベルト37の特性の経年変化の度合いが比較的小さいときと、度合いが比較的大きいときとでは、入力回転速度Ninp及び出力回転速度Noutpの振動の大きさや周期が変わりうる。そこで、本実施形態では、特性の経年変化の度合いを示す指数の一例である走行距離SCを写像の入力変数としている。すなわち、写像から出力される出力変数Y(MP)は、ベルト37の特性の経年変化の度合いを考慮した値となる。そのため、このような出力変数Y(MP)を基に判定を行うことにより、判定の精度を高くできる。
【0120】
(1-17)本実施形態では、入力変数を、写像データDM2によって規定される写像に入力し、当該写像から出力される出力変数Y(2)を評価することにより、ベルト37の振動に起因して他の車載装置で共振が発生したか否かを判定できる。これにより、他の車載装置で共振が発生する要因を特定できる。
【0121】
なお、この場合、他の車載装置で共振を発生させる変速機構30の動作点を把握することができる。本実施形態では、こうした動作点が記憶装置63に記憶される。そして、変速機構30の動作点が、記憶装置63に記憶されている動作点とならないように、内燃機関10及び変速装置20を制御することにより、車両VCの走行中に他の車載装置の共振の発生を抑制できる。
【0122】
(1-18)本実施形態では、入力変数を、写像データDM3によって規定される写像に入力し、当該写像から出力される出力変数Y(3)を評価することにより、他の車載装置の作動に起因してベルト37で共振が発生したか否かを判定できる。これにより、ベルト37で共振が発生する要因を特定できる。
【0123】
なお、この場合、ベルト37で共振を発生させる変速機構30の動作点を把握することができる。本実施形態では、こうした動作点が記憶装置63に記憶される。そして、変速機構30の動作点が、記憶装置63に記憶されている動作点とならないように、内燃機関10及び変速装置20を制御することにより、車両VCの走行中にベルト37の共振の発生を抑制できる。
【0124】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0125】
本実施形態では、入力回転速度関連データRDNinp及び出力回転速度関連データRDNoutpの生成手法が第1実施形態と異なる。
図10を参照し、上記のような各種の判定を行うために制御装置60が実行する一連の処理の手順について説明する。なお、図10には、上記の各種の判定を行うために制御装置60が実行する一連の処理の手順の一部分が図示されている。
【0126】
まずはじめに、CPU61は、上記各ステップS11~S17と同等の処理の実行を通じ、入力回転速度Ninpの時系列データ及び出力回転速度Noutpの時系列データを取得する。そして、CPU61は、処理をステップS61に移行する。ステップS61において、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データの取得期間における入力回転速度Ninpの平均値である入力回転速度平均値NinpAvを導出する。例えば、CPU61は、取得した入力回転速度Ninpの時系列データに含まれる全ての入力回転速度Ninp(1),Ninp(2),…,Ninp(z)の平均値を、入力回転速度平均値NinpAvとして導出すればよい。続いて、ステップS63において、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データの取得期間における出力回転速度Noutpの平均値である出力回転速度平均値NoutpAvを導出する。例えば、CPU61は、取得した出力回転速度Noutpの時系列データに含まれる全ての出力回転速度Noutp(1),Noutp(2),…,Noutp(z)の平均値を、出力回転速度平均値NoutpAvとして導出すればよい。
【0127】
次のステップS65において、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データ及び入力回転速度平均値NinpAvを基に、入力回転速度Ninpの周波数特性である入力周波数特性FCinpを導出する。すなわち、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことにより、入力回転速度Ninpの時系列データの周波数特性を導出する。CPU61は、入力回転速度平均値NinpAvを基に、ベルト37の回転1次の周波数の振幅を取得する。CPU61は、高速フーリエ変換を行うことによって導出した入力回転速度Ninpの時系列データの周波数特性を、回転1次の周波数の振幅で規格化することにより、入力周波数特性FCinpを導出する。つまり、入力周波数特性FCinpは、規格化された周波数特性である。
【0128】
次のステップS67において、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データ及び出力回転速度平均値NoutpAvを基に、出力回転速度Noutpの周波数特性である出力周波数特性FCoutpを導出する。すなわち、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことにより、出力回転速度Noutpの時系列データの周波数特性を導出する。CPU61は、出力回転速度平均値NoutpAvを基に、ベルト37の回転1次の周波数の振幅を取得する。CPU61は、高速フーリエ変換を行うことによって導出した出力回転速度Noutpの周波数特性を、回転1次の周波数の振幅で規格化することにより、出力周波数特性FCoutpを導出する。つまり、出力周波数特性FCoutpは、規格化された周波数特性である。
【0129】
続いて、ステップS69において、CPU61は、入力周波数特性FCinpを基に、入力回転速度関連データRDNinpを生成する。例えば、CPU61は、入力周波数特性FCinpを入力回転速度関連データRDNinpとする。次のステップS71において、CPU61は、出力周波数特性FCoutpを基に、出力回転速度関連データRDNoutpを生成する。例えば、CPU61は、出力周波数特性FCoutpを出力回転速度関連データRDNoutpとする。
【0130】
そして、CPU61は、処理をステップS27に移行する。これ以降の処理は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
本実施形態では、上記各実施形態における(1-5)~(1-18)の効果と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
【0131】
(2-1)本実施形態では、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことにより、入力周波数特性FCinpが導出される。そして、入力周波数特性FCinpに基づいて入力回転速度関連データRDNinpが生成される。入力周波数特性FCinpが変わるような異常がベルト37に発生した場合の入力回転速度関連データRDNinpと、当該異常が発生していない場合に生成される入力回転速度関連データRDNinpとの間には相違が生じることがある。そのため、入力周波数特性FCinpに特徴の出る異常がベルト37に発生した場合、入力周波数特性FCinpを基に生成された入力回転速度関連データRDNinpを写像の入力変数とすることにより、写像から出力される出力変数Yを用いて異常が発生していると判定できる。
【0132】
(2-2)本実施形態では、入力回転速度平均値NinpAvを基に、ベルト37の回転1次の周波数の振幅が取得される。そして、高速フーリエ変換によって導出された入力回転速度Ninpの周波数特性を回転1次の周波数の振幅で規格化することにより、入力周波数特性FCinpが導出される。このように規格化した入力周波数特性FCinpに出る異常に起因する特徴量の大きさは、入力回転速度Ninpが大きい場合と入力回転速度Ninpが小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、規格化された入力周波数特性FCinpを基に生成された入力回転速度関連データRDNinpを写像の入力変数とすることにより、入力回転速度Ninpの大小に起因する判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0133】
(2-3)本実施形態では、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換が行われることにより、出力周波数特性FCoutpが導出される。そして、出力周波数特性FCoutpに基づいて出力回転速度関連データRDNoutpが生成される。出力周波数特性FCoutpが変わるような異常がベルト37に発生した場合の出力回転速度関連データRDNoutpと、当該異常が発生していない場合に生成される出力回転速度関連データRDNoutpとの間には相違が生じることがある。そのため、出力周波数特性FCoutpに特徴の出る異常がベルト37に発生した場合、出力周波数特性FCoutpを基に生成された出力回転速度関連データRDNoutpを写像の入力変数とすることにより、写像から出力される出力変数Yを用いて異常が発生していると判定できる。
【0134】
(2-4)本実施形態では、出力回転速度平均値NoutpAvを基に、ベルト37の回転1次の周波数の振幅が取得される。そして、高速フーリエ変換によって導出された出力回転速度Noutpの周波数特性を回転1次の周波数の振幅で規格化することにより、出力周波数特性FCoutpが導出される。このように規格化した出力周波数特性FCoutpに出る異常に起因する特徴量の大きさは、出力回転速度Noutpが大きい場合と出力回転速度Noutpが小さい場合とでそれほど変わらない。その結果、規格化された出力周波数特性FCoutpを基に生成された出力回転速度関連データRDNoutpを写像の入力変数とすることにより、出力回転速度Noutpの大小に起因する判定の精度のばらつきを抑えることができる。
【0135】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0136】
本実施形態では、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性が導出される。そして、当該時系列データの周波数特性に基づいて入力回転速度関連データRDNinpが生成される。また、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって当該時系列データの周波数特性が導出される。そして、当該時系列データの周波数特性に基づいて出力回転速度関連データRDNoutpが生成される。
【0137】
図11を参照し、上記のような各種の判定を行うために制御装置60が実行する一連の処理の手順について説明する。なお、図11には、上記の各種の判定を行うために制御装置60が実行する一連の処理の手順の一部分が図示されている。
【0138】
まずはじめに、CPU61は、上記各ステップS11~S17と同等の処理の実行を通じ、入力回転速度Ninpの時系列データ及び出力回転速度Noutpの時系列データを取得する。そして、CPU61は、処理をステップS81に移行する。ステップS81において、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データを基に、入力回転速度Ninpの周波数特性である入力周波数特性FCinp1を導出する。すなわち、CPU61は、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出した周波数特性のデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切る。そして、CPU61は、周波数帯毎に周波数特性のデータを平均化したデータを入力周波数特性FCinp1として導出する。なお、本実施形態では、「m」として、「2」以上の整数が設定されている。
【0139】
次のステップS83において、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データを基に、出力回転速度Noutpの周波数特性である出力周波数特性FCoutp1を導出する。すなわち、CPU61は、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出した周波数特性のデータが分布している周波数帯をm等分してm個の周波数帯に区切る。そして、CPU61は、周波数帯毎に周波数特性のデータを平均化したデータを出力周波数特性FCoutp1として導出する。なお、本実施形態では、「m」として、「2」以上の整数が設定されている。
【0140】
続いて、ステップS85において、CPU61は、入力周波数特性FCinp1を基に、入力回転速度関連データRDNinpを生成する。例えば、CPU61は、入力周波数特性FCinp1を入力回転速度関連データRDNinpとする。次のステップS87において、CPU61は、出力周波数特性FCoutp1を基に、出力回転速度関連データRDNoutpを生成する。例えば、CPU61は、出力周波数特性FCoutp1を出力回転速度関連データRDNoutpとする。
【0141】
そして、CPU61は、処理をステップS27に移行する。これ以降の処理は第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
本実施形態では、上記各実施形態における(1-5)~(1-18)、(2-1)及び(2-3)の効果と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
【0142】
(3-1)本実施形態では、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯がm等分してm個の周波数帯に区切られる。このように周波数帯毎に平均化したデータを基に、入力回転速度関連データRDNinpが生成される。このように周波数帯毎にデータを平均化することによって生成された入力回転速度関連データRDNinpを写像の入力変数とすることにより、写像に入力されるデータ数の増大を抑制できる。
【0143】
(3-2)本実施形態では、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出したデータが分布している周波数帯がm等分してm個の周波数帯に区切られる。このように周波数帯毎に平均化したデータを基に、出力回転速度関連データRDNoutpが生成される。このように周波数帯毎にデータを平均化することによって生成された出力回転速度関連データRDNoutpを写像の入力変数とすることにより、写像に入力されるデータ数の増大を抑制できる。
【0144】
(対応関係)
上記各実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。
【0145】
[1]異常判定装置は、制御装置60に対応する。車両は、車両VCに対応する。車両の動力源は、内燃機関10に対応する。駆動輪は、駆動輪50に対応する。動力伝達装置は、変速装置20に対応する。入力プーリは、入力プーリ33に対応する。出力プーリは、出力プーリ35に対応する。無端回転部材は、ベルト37に対応する。実行装置は、CPU61及びROM62に対応する。記憶装置は、記憶装置63に対応する。入力回転速度は、入力回転速度Ninpに対応する。入力回転速度関連データは、入力回転速度関連データRDNinpに対応する。出力回転速度は、出力回転速度Noutpに対応する。出力回転速度関連データは、出力回転速度関連データRDNoutpに対応する。出力変数は、出力変数Y(MP)に対応する。写像データは、図1に示す写像データDM1~DM3に対応する。取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S27の各処理、図10に示すステップS61~S71の各処理、及び、図11に示すステップS81~S87の各処理に対応する。異常判定処理は、図4及び図5において、判定係数MPに「1」がセットされている場合におけるステップS35~S41の各処理に対応する。
【0146】
[2]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5において、ステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17の各処理に対応する。生成処理は、図4及び図5に示すステップS19の処理とステップS23の処理とに対応する。
【0147】
[3]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5において、ステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17の各処理に対応する。生成処理は、図4及び図5に示すステップS19の処理とステップS23の処理とに対応する。
【0148】
[4]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5において、ステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17の各処理に対応する。生成処理は、図4及び図5に示すステップS21の処理とステップS25の処理とに対応する。
【0149】
[5]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5において、ステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17の各処理に対応する。生成処理は、図4及び図5に示すステップS21の処理とステップS25の処理とに対応する。
【0150】
[6]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5に示すステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17までの各処理に対応する。周波数特性生成処理は、図10に示すステップS65の処理とステップS69の処理とに対応し、且つ、図11に示すステップS81の処理とステップS85の処理とに対応する。
【0151】
[7]入力回転速度の時系列データの取得期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。平均値算出処理は、図10に示すステップS61の処理に対応する。周波数特性生成処理は、図10に示すステップS65の処理とステップS69の処理とに対応する。
【0152】
[8]周波数特性生成処理は、図11に示すステップS81の処理とステップS85の処理とに対応する。
[9]計測期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。検出サイクルは、図4及び図5に示すステップS13の処理の実行サイクルに対応する。回転速度取得処理は、図4及び図5に示すステップS11~S17までの各処理に対応する。周波数特性生成処理は、図10に示すステップS67の処理とステップS71の処理とに対応し、且つ、図11に示すステップS83の処理とステップS87の処理とに対応する。
【0153】
[10]出力回転速度の時系列データの取得期間は、図4及び図5において、ステップS11で係数zに「1」が設定された時点からステップS17で係数zが係数判定値zThよりも大きいと判定される時点までの期間に対応する。平均値算出処理は、図10に示すステップS63の処理に対応する。周波数特性生成処理は、図10に示すステップS67の処理とステップS71の処理とに対応する。
【0154】
[11]周波数特性生成処理は、図11に示すステップS83の処理とステップS87の処理とに対応する。
[12]トルクは、入力トルクTrqに対応する。
【0155】
[13]オイルの温度は、油温検出値Toilに対応する。
[14]無端回転部材の形状を示す指標は、ベルト形状指標MVsに対応する。無端回転部材の構成部品の形状を示す指標は、エレメント形状指標MVEsに対応する。
【0156】
[15]入力プーリが無端回転部材を挟持する力は、入力係合力Pinpに対応する。出力プーリが無端回転部材を挟持する力は、出力係合力Poutpに対応する。
[16]がたつき量を示す指標は、がたつき量指標MVRaに対応する。
【0157】
[17]加速度センサは、加速度センサ106に対応する。加速度センサの検出値は、車両加速度Gに対応する。
[18]音センサは、音センサ107に対応する。音センサの検出値は、音検出値Sndに対応する。
【0158】
[19]駆動輪の回転速度は、車輪速VWに対応する。
[20]車両の制動力は、制動力BPvcに対応する。
[21]入力プーリと出力プーリとの回転速度の比は、回転速度比RNに対応する。
【0159】
[22]特性の経年変化の度合いを示す指数は、走行距離SCに対応する。
[23]無端回転部材の構成部品は、エレメント372に相当する。
[24]振動判定処理は、図4及び図5において、判定係数MPに「2」がセットされている場合におけるステップS47,S49の各処理に対応する。
【0160】
[25]共振判定処理は、図4及び図5において、判定係数MPに「3」がセットされている場合におけるステップS47,S49の各処理に対応する。
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0161】
「写像について」
・上記各実施形態において、写像の活性化関数は例示であり、上記各実施形態の例に限らない。例えば、写像の活性化関数として、ロジスティックジグモイド関数を採用してもよい。
【0162】
・上記各実施形態において、ニューラルネットワークとして、中間層の数が1層のニューラルネットワークを例示したが、中間層の数が2層以上であってもよい。
・上記各実施形態において、ニューラルネットワークとして、全結合順伝搬型のニューラルネットワークを例示したが、これに限らない。例えば、ニューラルネットワークとして、回帰結合型ニューラルネットワークを採用してもよい。後述するように、正規化入力回転速度NinpNの時系列データ、入力回転速度Ninpの時系列データ、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データ及び出力回転速度Noutpの時系列データを写像の入力変数とする場合には、回帰結合型ニューラルネットワークを採用するとよい。
【0163】
「写像データについて」
・上記各実施形態では、変速機構30の構成部品に異常が発生しているか否かの判定用の写像データDM1、変速機構30の作動に起因して他の車載装置で共振が発生するか否かの判定用の写像データDM2、及び、他の車載装置の作動に起因してベルト37が共振するか否かの判定用の写像データDM3が記憶装置63に記憶されているが、これに限らない。例えば、上記の3つの判定を何れも行うことができるような出力変数を出力する写像を規定する写像データを、記憶装置63に記憶させてもよい。
【0164】
・上記各実施形態において、写像データDM1が記憶装置63に記憶されているのであれば、記憶装置63に写像データDM2を記憶させなくてもよい。また、写像データDM1が記憶装置63に記憶されているのであれば、記憶装置63に写像データDM3を記憶させなくてもよい。この場合であっても、写像データDM1によって規定される写像に入力変数を入力し、当該写像から出力される出力変数を用いることにより、ベルト37に異常が発生しているか否かを判定できる。
【0165】
「入力変数について」
・走行距離SC以外のパラメータを、無端回転部材の特性の経年変化の度合いを示す指数としてもよい。例えば、ベルト37が動作している時間の合計値及びベルト37の動作回数を、無端回転部材の特性の経年変化の度合いを示す指数として写像の入力変数としてもよい。
【0166】
・入力変数は、無端回転部材の特性の経年変化の度合いを示す指数を含まなくてもよい。
・入力変数は、回転速度比RNを含まなくてもよい。
【0167】
・回転速度比RNの代わりに、入力回転速度Ninpと出力回転速度Noutpとの差を車両の入力変数としてもよい。
・回転速度比RNの時系列データを取得し、回転速度比RNの時系列データに含まれる複数の回転速度比RNを写像の入力変数としてもよい。
【0168】
・入力変数は、制動力BPvcを含まなくてもよい。
・入力変数が制動力BPvcを含まない場合、駆動輪50に制動力が付与されているか否かを、入力変数としてもよい。また、駆動輪50の回転速度の単位時間あたりの減少量を、入力変数としてもよい。
【0169】
・入力変数が制動力BPvcを含まない場合、車両制動時には例えば図4及び図5に示したような一連の処理を実行しないようにしてもよい。
・入力変数は、音検出値Sndを含まなくてもよい。この場合、音センサ107を搭載しない車両VCに制御装置60を適用できる。
【0170】
・入力変数は、車両加速度Gを含まなくてもよい。
・入力変数は、がたつき量指標MVRaを含まなくてもよい。
・入力変数は、入力係合力Pinpを含まなくてもよい。
【0171】
・入力変数は、出力係合力Poutpを含まなくてもよい。
・記憶装置63は、各エレメント372の形状を、エレメント形状指標MVEsとして記憶していてもよい。この場合、各エレメント形状指標MVEsを、写像に対して入力変数として入力してもよい。
【0172】
・入力変数は、エレメント形状指標MVEsを含まなくてもよい。
・入力変数は、ベルト形状指標MVsを含まなくてもよい。
・入力変数は、油温検出値Toilを含まなくてもよい。
【0173】
・入力変数は、入力トルクTrqを含まなくてもよい。
・入力変数は、入力回転速度関連データRDNinpを含むのであれば、出力回転速度関連データRDNoutpを含まなくてもよい。
【0174】
・入力変数は、出力回転速度関連データRDNoutpを含むのであれば、入力回転速度関連データRDNinpを含まなくてもよい。
「入力回転速度関連データについて」
・上記第2実施形態において、入力回転速度Ninpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出した当該時系列データの周波数特性を、入力回転速度関連データRDNinpとしてもよい。すなわち、入力回転速度Ninpの時系列データに含まれる複数の入力回転速度Ninpの正規化を行わなくてもよい。
【0175】
・上記第1実施形態では、入力回転速度関連データRDNinpは、「5個」のカウント値Cnt(1)~Cnt(5)で構成されているが、カウント値の数は「5個」に限らない。例えば、「0」から「1」までの数値の領域を「0.1」毎に分割した場合、入力回転速度関連データRDNinpは、「10個」のカウント値Cnt(1)~Cnt(10)からなるデータとするとよい。
【0176】
・上記第1実施形態において、入力回転速度関連データは、上記入力回転速度関連データRDNinpでなくてもよい。すなわち、入力回転速度関連データは、正規化入力回転速度NinpNの時系列データであってもよい。
【0177】
・入力回転速度関連データは、入力回転速度Ninpの時系列データであってもよい。
「出力回転速度関連データについて」
・上記第2実施形態において、出力回転速度Noutpの時系列データに対して高速フーリエ変換を行うことによって導出した当該時系列データの周波数特性を、出力回転速度関連データRDNoutpとしてもよい。すなわち、出力回転速度Noutpの時系列データに含まれる複数の出力回転速度Noutpの正規化を行わなくてもよい。
【0178】
・上記第1実施形態では、出力回転速度関連データRDNoutpは、「5個」のカウント値Cnt(1)~Cnt(5)で構成されているが、カウント値の数は「5個」に限らない。例えば、「0」から「1」までの数値の領域を「0.1」毎に分割した場合、出力回転速度関連データRDNoutpは、「10個」のカウント値Cnt(1)~Cnt(10)からなるデータとするとよい。
【0179】
・上記第1実施形態において、出力回転速度関連データは、上記出力回転速度関連データRDNoutpでなくてもよい。すなわち、出力回転速度関連データは、正規化出力回転速度NoutpNの時系列データであってもよい。
【0180】
・出力回転速度関連データは、出力回転速度Noutpの時系列データであってもよい。
「出力回転速度について」
・上記各実施形態では、出力軸回転角センサ103の出力信号Soutpに基づいた値を出力回転速度Noutpとして取得したが、これに限らない。例えば、駆動輪50の回転速度である車輪速VWに基づいて算出した値を、出力回転速度Noutpとして取得してもよい。この際、車輪速VWと、出力プーリ35から駆動輪50までのトルク伝達経路の減速比で割ることにより、出力回転速度Noutpを算出できる。
【0181】
「実行装置について」
・実行装置としては、CPU61とROM62とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。例えば、上記各実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理する専用のハードウェア回路を備えてもよい。専用のハードウェア回路としては、例えば、ASICを挙げることができる。ASICとは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記である。すなわち、実行装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。
(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROMなどのプログラム格納装置とを備えている。
(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置及びプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備えている。ここで、処理装置及びプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置、及び、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0182】
「動力伝達装置について」
・動力伝達装置は、無端回転部材を備えているのであれば、図1に示した変速装置20とは異なる構成のものであってもよい。例えば、変速装置は、チェーンを無端回転部材として備える変速機構を備えるものであってもよい。また例えば、動力伝達装置は、入力プーリ、出力プーリ及び無端回転部材を備える構成であれば、変速機能を有しないものであってもよい。
【0183】
「車両について」
・車両は、ハイブリッド車両であってもよい。また、車両は、モータジェネレータを備えるものの内燃機関を備えない車両であってもよい。この場合、モータジェネレータが、車両の動力源に対応することになる。
【符号の説明】
【0184】
10…内燃機関
20…変速装置
33…入力プーリ
35…出力プーリ
37…ベルト
371…リング
372…エレメント
50…駆動輪
60…制御装置
61…CPU
62…ROM
63…記憶装置
106…加速度センサ
107…音センサ
VC…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11