(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】センサユニット
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020163612
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀邊 隆介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-038480(JP,A)
【文献】特開2012-032324(JP,A)
【文献】特開2016-183956(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01L 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を検出する第1圧力センサ及び第2圧力センサを備えるセンサユニットであって、
前記第2圧力センサは、段差形状をなすように構成されていて、
前記第1圧力センサには、前記第2圧力センサの一部が重なっており、
前記第1圧力センサと前記第2圧力センサ
の上段部分とが重なった重複検出領域と、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとが重なっていない単独検出領域とを有するセンサユニット。
【請求項2】
前記単独検出領域には、第1圧力センサのみが配置された第1検出領域と、前記第2圧力センサのみが配置された第2検出領域とが含まれる
請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとの間には、電磁シールド層が設けられている
請求項1または2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサは、
柔軟性を有する誘電体によって構成された誘電層と、
柔軟性を有するとともに前記誘電層を挟んで配置されている第1電極層及び第2電極層とを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記第1圧力センサは、所定の隙間を設けてm×n(m,nは2以上の整数)個が配置され、
前記第2圧力センサは、所定の隙間を設けてm×n(m,nは2以上の整数)個が配置されている
請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧力センサを有するセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の圧力センサは、誘電体と、該誘電体を厚さ方向に挟む一対の電極とを有している。誘電体は、樹脂の発泡体によって構成されており、作用する圧力に応じて厚さが変化する。一対の電極には導線の一端が各々接続されており、各導線の他端は容量検出回路に接続されている。この圧力センサでは、圧力を受けて誘電体の厚さが変化することにより、一対の電極間における静電容量が変化する。特許文献1に記載の圧力センサは、一対の電極間における静電容量の変化を容量検出回路によって検出することで圧力を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作用する圧力の大きさだけでなく、圧力が作用している位置を特定するために、複数の圧力センサを並べて配置してセンサユニットを構成する場合がある。こうした場合、分解能を高くして細かい位置の特定を可能にするために、圧力センサを小さくして多数並べて配置することが考えられる。こうした構成では、1つの圧力センサにおける電極の面積が小さくなることから、これに伴って電極間の静電容量が小さくなる。その結果、圧力センサにおけるシグナルとノイズとの比であるS/N比(信号対ノイズ比)が小さくなり、圧力の検出精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力の検出精度の低下を抑えつつ、圧力の作用位置の特定における分解能を高めることができるセンサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのセンサユニットは、圧力を検出する第1圧力センサ及び第2圧力センサを備えるセンサユニットであって、前記第1圧力センサには、前記第2圧力センサの一部が重なっており、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとが重なった重複検出領域と、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとが重なっていない単独検出領域とを有する。
【0007】
上記構成では、第1圧力センサと第2圧力センサとが重なって配置された重複検出領域と、第1圧力センサ及び第2圧力センサの一方のみが配置された単独検出領域とを有している。重複検出領域に圧力が作用した場合、第1圧力センサと第2圧力センサとの双方によって圧力が検出される。また、単独検出領域に圧力が作用した場合、第1圧力センサ及び第2圧力センサの一方のみによって圧力が検出される。このように、圧力センサを重ねて配置したときの各圧力センサからの圧力の検出態様に基づくことで、圧力センサの面積を変えずとも、圧力の作用位置を特定することが可能になる。したがって、上記構成によれば、圧力の検出精度の低下を抑えつつ、圧力の作用位置の特定における分解能を高めることが可能になる。
【0008】
また、上記センサユニットでは、前記単独検出領域には、第1圧力センサのみが配置された第1検出領域と、前記第2圧力センサのみが配置された第2検出領域とが含まれることが望ましい。
【0009】
上記構成によれば、2つの圧力センサによって、第1検出領域、第2検出領域、及び重複検出領域の3つの領域を構成することが可能になる。したがって、圧力の作用位置の特定における分解能を一層高めることができる。
【0010】
また、上記センサユニットでは、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサとの間には、電磁シールド層が設けられていることが望ましい。
上記構成によれば、第1圧力センサと第2圧力センサとを重ねて配置したときの電磁ノイズの影響を抑えることができ、センサ間の電気的なクロストークを抑制できる。そのため、電磁ノイズの影響によって各圧力センサにおけるS/N比が低下することを抑制でき、圧力の検出精度の低下を一層抑えることが可能になる。
【0011】
また、上記センサユニットでは、前記第1圧力センサ及び前記第2圧力センサは、柔軟性を有する誘電体によって構成された誘電層と、柔軟性を有するとともに前記誘電層を挟んで配置されている第1電極層及び第2電極層とを含むことが望ましい。
【0012】
上記構成では、第1圧力センサ及び第2圧力センサが柔軟性を有することから、各圧力センサを変形させつつ配置することが可能になる。したがって、センサユニットにおける配置自由度を高めることが可能になる。
【0013】
また、上記センサユニットでは、前記第1圧力センサは、所定の隙間を設けてm×n(m,nは2以上の整数)個が配置され、前記第2圧力センサは、所定の隙間を設けてm×n(m,nは2以上の整数)個が配置されていることが望ましい。
【0014】
上記構成では、第1圧力センサ及び第2圧力センサを、複数個配置することによって、センサユニットにおける二次元での検出領域を拡大することができる。したがって、上記構成によれば、センサユニット全体にかかる圧力の作用位置の特定における分解能を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧力の検出精度の低下を抑えつつ、圧力の作用位置の特定における分解能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のセンサユニットの概略構成を示す模式図。
【
図2】第1センサシートの構成を模式的に示す平面図。
【
図3】第2センサシートの構成を模式的に示す平面図。
【
図6】他の例のセンサユニットに設けられる圧力センサの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、センサユニットの一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、センサユニット10は、圧力を検出するためのセンサシート部20を有している。センサシート部20は、
図2に示す第1センサシート30の上に、
図3に示す第2センサシート40を重ねて接合することで構成されている。
【0018】
図2に示すように、第1センサシート30は、シート状に形成されている第1ベース基板31と、第1ベース基板31上に配置されて圧力を検出する複数の第1圧力センサAとを有している。第1ベース基板31には、図示を省略しているが、第1圧力センサAの各々に接続された電気回路が形成されている。電気回路には、第1圧力センサAの各々と後述する検出装置70との電気的接続を切り替えるスイッチング素子が含まれている。第1ベース基板31は、柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板によって構成されている。
【0019】
本実施形態では、第1圧力センサAを4行×4列の計16個配置している。各列の間には、第1圧力センサAの幅Awの略半分の大きさの隙間Ac(=1/2Aw)が形成されている。また、各行の間にも、若干の隙間が形成されている。このように、第1圧力センサAは、所定の隙間を設けてm×n(m=n=4)個が配置されている。以下、第1圧力センサAを区別して記載する際には、行番号と列番号とを付して次のように記載する。すなわち、
図2において、第1行目の第1列目に位置する第1圧力センサAを第1圧力センサA11と記載し、第1行目の第4列目に位置する第1圧力センサAを第1圧力センサA14と記載する。また、第4行目の第4列目に位置する第1圧力センサAを第1圧力センサA44と記載する。
【0020】
図3に示すように、第2センサシート40は、シート状に形成されている第2ベース基板41と、第2ベース基板41上に配置されて圧力を検出する複数の第2圧力センサBとを有している。第2ベース基板41には、図示を省略しているが、第2圧力センサBの各々に接続された電気回路が形成されている。電気回路には、第2圧力センサBの各々と後述する検出装置70との電気的接続を切り替えるスイッチング素子が含まれている。第2ベース基板41は、柔軟性を有するフレキシブルプリント回路基板によって構成されている。
【0021】
第2圧力センサBは、第1圧力センサAと同じ数だけ配置されている。すなわち、本実施形態では、第2圧力センサBを4行×4列の計16個配置している。第2圧力センサBの大きさは、第1圧力センサAの大きさと略同一であり、各列の間には、第2圧力センサBの幅Bw(=Aw)の略半分の大きさの隙間Bc(=1/2Bw)が形成されている。また、各行の間にも、若干の隙間が形成されている。このように、第2圧力センサBは、所定の隙間を設けてm×n(m=n=4)個が配置されている。以下、第2圧力センサBを区別して記載する際には、行番号と列番号とを付して次のように記載する。すなわち、
図3において、第1行目の第1列目に位置する第2圧力センサBを第2圧力センサB11と記載し、第1行目の第4列目に位置する第2圧力センサBを第2圧力センサB14と記載する。また、第4行目の第4列目に位置する第2圧力センサBを第2圧力センサB44と記載する。
【0022】
第2圧力センサBは、
図1に示すように第1センサシート30に第2センサシート40が重ねられた状態において、第1圧力センサAに一部が重なるように第2センサシート40に配置されている。本実施形態では、第2圧力センサBは、第1圧力センサAに対して、上記幅方向における一方側(
図1の右側)にずれるように配置されている。なお、本実施形態では、上記幅Awの半分の距離だけずれるように第2圧力センサBを配置している。そのため、センサシート部20では、第1圧力センサAにおける上記一方側(
図1の右側)の略半分の領域に、第2圧力センサBにおける上記幅方向の他方側(
図1の左側)の略半分の領域が重ねられている。
【0023】
第1センサシート30には複数の第1圧力センサAが設けられており、第2センサシート40には複数の第2圧力センサBが設けられている。そのため、センサシート部20には、第1圧力センサA41と第2圧力センサB41とによって構成される圧力検出領域Cや、第1圧力センサA42と第2圧力センサB42とによって構成される圧力検出領域C等のように1つの第1圧力センサAと1つの第2圧力センサBとによって構成される圧力検出領域Cが複数形成されている。なお、本実施形態では、圧力検出領域Cが16個設けられている。
【0024】
圧力検出領域Cには、第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なった重複検出領域Dと、第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なっていない単独検出領域Sとが設けられている。単独検出領域Sは、第1圧力センサAの上記他方側の略半分の領域によって構成されていて第1圧力センサAのみが配置された第1検出領域S1と、第2圧力センサBの上記一方側の略半分の領域によって構成されていて第2圧力センサBのみが配置された第2検出領域S2とからなる。なお、上述したように、第1圧力センサAの各列の間の隙間Acは第1圧力センサAの幅Awの半分の大きさに設定されており、且つ第2圧力センサBは第1圧力センサAに対して上記幅Awの半分の距離だけ一方側にずれて配置されている。そのため、第1センサシート30に第2センサシート40を重ねた状態では、第1圧力センサAの列間の隙間を第2圧力センサBが埋めるように配置される。これにより、センサシート部20では、上記幅方向において、隣り合う第1検出領域S1と第2検出領域S2との隙間が小さくなる。その結果、圧力検出領域Cが上記幅方向に略連続するように設けられている。また、第1圧力センサA及び第2圧力センサBは、各行の間に若干の隙間が形成されていることから、センサシート部20では、上記幅方向と直交する直交方向(
図1の上下方向)において、圧力検出領域Cは若干の隙間を隔てて断続的に設けられている。
【0025】
次に、
図4を参照して、第1圧力センサA及び第2圧力センサBの構成について説明する。なお、第2圧力センサBの構成は、第1圧力センサAの構成と同様である。そのため、以下では第1圧力センサAの構成について説明し、第2圧力センサBについて同様の構成については、第1圧力センサAと共通の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
第1圧力センサAは、誘電層50と、該誘電層50を挟む第1電極層51及び第2電極層52とを有している。誘電層50は、誘電性のエラストマーからなり、柔軟性を有している。誘電層50は、厚さが一定のシート状に構成されている。誘電層50を構成する誘電性のエラストマーは、特に限定されるものではなく、公知のエラストマー製圧電素子に用いられる誘電性のエラストマーを用いることができる。すなわち、誘電性のエラストマーとしては、例えば、ポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマー等を採用できる。誘電層50を構成する際には、上述した誘電性のエラストマーのうちの一種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0027】
第1電極層51は、誘電層50の下面に接合されており、第1ベース基板31と誘電層50との間に配置されている。第1電極層51は、導電性のエラストマーからなり、柔軟性を有している。第1電極層51は、厚さが一定のシート状に構成されている。第1電極層51の厚さは、誘電層50の厚さよりも薄い。第1電極層51を構成する導電性のエラストマーは、特に限定されるものではなく、公知のエラストマー製圧電素子に用いられる導電性のエラストマーを用いることができる。例えば、導電性のエラストマーとしては、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電性のエラストマーを採用できる。なお、絶縁性高分子としては、例えば、ポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマー等を採用できる。第1電極層51を構成する際には、上述した絶縁性高分子のうちの一種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。また、導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子を採用できる。第1電極層51を構成する際には、上述した導電性フィラーのうちの一種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。なお、図示は省略しているが、第1電極層51は、第1ベース基板31側の下面に絶縁層が積層されている。
【0028】
また、第2電極層52は、誘電層50の上面に接合されている。第2電極層52は、導電性のエラストマーからなり、柔軟性を有している。第2電極層52は、厚さが一定のシート状に構成されている。第2電極層52の厚さは、誘電層50の厚さよりも薄く、第1電極層51の厚さと略等しい。第2電極層52を構成する導電性のエラストマーは、特に限定されるものではなく、例えば上述した第1電極層51と同様の構成を採用すればよい。また、図示は省略しているが、第2電極層52は、誘電層50に接合されている下面とは反対側の上面に絶縁層が積層されている。
【0029】
第1圧力センサAは、誘電層50と、誘電層50を挟む第1電極層51及び第2電極層52とによって、静電容量式の圧力センサを構成している。第1圧力センサAが圧力を受けると、誘電層50が圧縮されて薄くなる。これにより、第1電極層51と第2電極層52との距離が近くなり、静電容量が大きくなる。こうした静電容量の変化を後述する検出装置70において検出することで、第1圧力センサAに作用する圧力を検出する。
【0030】
第1圧力センサAの第2電極層52の上面には、第2センサシート40の第2ベース基板41の下面が当接している。第2ベース基板41上には第2圧力センサBが設けられていることから、第2ベース基板41は、第1圧力センサAと第2圧力センサBとの間に設けられている。第2ベース基板41には、シート状に形成されていて該第2ベース基板41の全体に亘って設けられている導体層が設けられている。導体層は、アースに接続されており、電磁シールド層を構成している。すなわち、第2ベース基板41は、第1圧力センサAと第2圧力センサBとの間に配置された電磁シールド層として機能し、第1圧力センサA及び第2圧力センサB間の電気的なクロストークを抑制する。また、第2センサシート40には、第2圧力センサBの外周面全体を覆う柔軟性の保護層55が設けられている。保護層55は、絶縁性の樹脂によって構成されている。
【0031】
第1圧力センサAと同様に、第2センサシート40に設けられている第2圧力センサBは、誘電層50、第1電極層51、及び第2電極層52が柔軟性を有している。また、第2ベース基板41及び保護層55も柔軟性を有している。そのため、第2センサシート40を第1センサシート30に重ねるときに第2センサシート40を変形させることが可能である。本実施形態では、第2センサシート40を変形させて、第1センサシート30の第1圧力センサAの間に第2圧力センサBの上記一方側(
図4の右側)の略半分の領域を配置する。このように、第2センサシート40を段差形状に変形させて第2ベース基板41の下面を第1ベース基板31の上面に当接させることで、第1センサシート30と第2センサシート40との密着性を向上させて接合強度を高めることができる。
【0032】
図1に示すように、センサユニット10は、センサシート部20の両端部に設けられた一対の端子60を有している。端子60は、第1センサシート30及び第2センサシート40の各電気回路に接続されている。端子60には、導線61の一端が接続されている。各導線61の他端は、検出装置70に接続されている。
【0033】
図5に示すように、検出装置70は、機能部として、静電容量検出部71、位置特定部72、及び記憶部73を有している。
静電容量検出部71は、公知の静電容量検出回路によって構成されている。静電容量の検出方式としては、充放電の時定数を測定する弛緩発振方式や、外部インダクタと各圧力センサの静電容量との共振による周波数変化を測定するLC共振方式や、プリチャージした電荷を所定のコンデンサで電荷シェアリングしたときの電圧変化を測定する電荷配分方式など様々な方法を用いることが可能である。静電容量検出部71には、電気回路におけるスイッチング素子の切り替えにより、第1センサシート30に設けられている第1圧力センサA、及び第2センサシート40に設けられている第2圧力センサBの各々から電気信号が入力される。静電容量検出部71は、入力された電気信号に基づいて、第1圧力センサA及び第2圧力センサBの各々において作用する圧力の大きさを検出することで、センサユニット10に作用した圧力を検出する。
【0034】
上述したように、第1圧力センサA及び第2圧力センサBに圧力が作用したときには、その圧力が大きいときほど静電容量は大きくなる。静電容量の変化は、各電極層間に印加される電圧の変化に相関する。本実施形態では、静電容量検出部71には、第1圧力センサA及び第2圧力センサBにおける電圧の変化と圧力との関係を示すマップが予め実験やシミュレーションによって求められて記憶されている。静電容量検出部71は、各圧力センサにおける電圧の変化と記憶されているマップに基づいて、各圧力センサに作用している圧力の大きさを検出する。
【0035】
位置特定部72は、静電容量検出部71によって検出した第1圧力センサA及び第2圧力センサBの各々における圧力に基づいて、センサユニット10における圧力の作用位置を特定する。すなわち、例えば、圧力検出領域Cを構成している第1圧力センサA11と第2圧力センサB11において、第1圧力センサA11の検出圧力は閾値以上である一方で、第2圧力センサB11の検出圧力は閾値未満である場合、同圧力検出領域Cにおける第1検出領域S1に圧力が作用していると判断する。なお、閾値としては、第1圧力センサA及び第2圧力センサBにおいて検出可能な圧力の最低値と等しい値が設定されている。
【0036】
また、位置特定部72は、第1圧力センサA11の検出圧力は閾値未満である一方で、第2圧力センサB11の検出圧力は閾値以上である場合、同圧力検出領域Cにおける第2検出領域S2に圧力が作用していると判断する。また、位置特定部72は、第1圧力センサA11及び第2圧力センサB11の双方の検出圧力が閾値以上である場合、同圧力検出領域Cにおける重複検出領域Dに圧力が作用していると判断する。なお、位置特定部72は、第1圧力センサA11及び第2圧力センサB11の双方の検出圧力が閾値未満である場合には、同圧力検出領域Cに圧力は作用していないと判断する。このように、位置特定部72は、各圧力検出領域Cにおける第1圧力センサA及び第2圧力センサBの検出圧力に基づいてセンサユニット10における圧力の作用位置を特定する。
【0037】
記憶部73は、センサユニット10において、圧力が作用している位置と、作用している圧力の大きさとを紐付けて記憶する。記憶部73には、位置特定部72によって特定した圧力の作用位置に関する情報と、静電容量検出部71によって検出した各圧力センサの検出圧力に関する信号とが入力される。
【0038】
本実施形態では、記憶部73は、次のようにして圧力の作用位置と作用している圧力の大きさとを記憶する。例えば、位置特定部72が、第1圧力センサA44及び第2圧力センサB44によって構成されている圧力検出領域Cにおいて、第1検出領域S1に圧力が作用していると判断した場合には、この第1検出領域S1に対応する第1圧力センサA44における検出圧力P1を、センサユニット10への作用圧力Pr(=P1)として記憶する。また、位置特定部72が、同圧力検出領域Cにおける重複検出領域Dに圧力が作用していると判断した場合には、この重複検出領域Dに対応する第1圧力センサA44における検出圧力P1及び第2圧力センサB44における検出圧力P2との総和を作用圧力Pr(=P1+P2)として記憶する。また、位置特定部72が、同圧力検出領域Cにおける第2検出領域S2に圧力が作用していると判断した場合には、この第2検出領域S2に対応する第2圧力センサB44における検出圧力P2を作用圧力Pr(=P2)として記憶する。
【0039】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態では、第1圧力センサAに第2圧力センサBの一部を重ねることで、第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なった重複検出領域Dと、第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なっていない単独検出領域Sとを設けるようにした。重複検出領域Dに圧力が作用した場合、第1圧力センサAと第2圧力センサBとの双方によって圧力が検出される。また、単独検出領域Sに圧力が作用した場合、第1圧力センサA及び第2圧力センサBの一方のみによって圧力が検出される。このように、圧力センサを重ねて配置したときの圧力の検出態様に基づくことで、圧力センサの面積を変えずとも、圧力の作用位置を特定することが可能になる。したがって、上記構成によれば、静電容量検出のS/N比低下を抑制して、圧力の検出精度の低下を抑えつつ、圧力の作用位置の特定における分解能を高めることが可能になる。
【0040】
(2)本実施形態では、第1圧力センサAのみが配置された第1検出領域S1と、第2圧力センサBのみが配置された第2検出領域S2とによって単独検出領域Sを構成した。このように、2つの圧力センサによって、第1検出領域S1、第2検出領域S2、及び重複検出領域Dの3つの領域を構成しているため、センサユニット10において圧力の作用位置の特定における分解能を一層高めることができる。
【0041】
(3)本実施形態では、第2ベース基板41にアースに接続された導体層を設けて、第1圧力センサAと第2圧力センサBとの間に電磁シールド層を設けるようにした。そのため、第1圧力センサAと第2圧力センサBとを重ねて配置したときの電磁ノイズの影響を抑えることができ、第1圧力センサA及び第2圧力センサB間の電気的なクロストークを抑制できる。したがって、電磁ノイズの影響によって第1圧力センサA及び第2圧力センサBにおけるS/N比が低下することを抑制でき、圧力の検出精度の低下を一層抑えることが可能になる。
【0042】
(4)本実施形態では、第1圧力センサA及び第2圧力センサBを、柔軟性を有する誘電体によって構成された誘電層50と、柔軟性を有するとともに誘電層50を挟んで配置されている第1電極層51及び第2電極層52とによって構成した。このように、第1圧力センサA及び第2圧力センサBが柔軟性を有することから、第1圧力センサA及び第2圧力センサBを変形させて配置することが可能になる。したがって、センサユニット10を平面状に配置するだけでなく、湾曲させて配置することも可能になり、センサユニット10における配置自由度を高めることができる。
【0043】
(5)本実施形態では、第1圧力センサA及び第2圧力センサBを、所定の隙間(例えば隙間Ac及び隙間Bc)を設けて複数個配置している。そのため、センサユニット10における二次元での検出領域を拡大することができる。したがって、センサユニット10全体にかかる圧力の作用位置の特定における分解能を高めることが可能になる。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、第2圧力センサBを、第1圧力センサAに対して、上記幅方向に上記幅Awの半分の距離だけずれるように配置した。こうした構成は適宜変更が可能である。すなわち、第2圧力センサBのずれ量を上記幅Awの半分の距離とは異なる距離としてもよい。また、第2圧力センサBをずらす方向を、例えば上記直交方向とする等、上記幅方向と異なる方向としてもよい。
【0045】
さらには、
図6に示すように、1つの第2圧力センサBを、異なる2つの第1圧力センサAに重ねて配置してもよい。こうした構成では、第1圧力センサA間の隙間Acを、第2圧力センサBの幅Bwを3等分した大きさと等しくする(Ac=1/3Bw)。そして、第2圧力センサBにおける一方側(
図6の左側)の略1/3の領域を一方の第1圧力センサAに重ねるとともに、第2圧力センサBにおける他方側(
図6の右側)の略1/3の領域を他方の第1圧力センサAに重ねる。こうした構成とすることで、上記一方の第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なっている重複検出領域D1と、上記他方の第1圧力センサAと第2圧力センサBとが重なっている重複検出領域D2と、2つの第1圧力センサAの間であって第2圧力センサBのみが配置された第2検出領域S2とを均等に配置できる。また、第1圧力センサAと第2圧力センサBとが同じ大きさであるため、第1圧力センサAのみが配置された第1検出領域S1も同じ大きさで均等に配置されることとなる。
【0046】
また、1つの第2圧力センサBを3つ以上の異なる第1圧力センサAに重ねるようにしてもよい。また、第2圧力センサBに他の圧力センサを重ねることも可能である。
・上記実施形態では、第1圧力センサAを複数個配置したときの各列間の隙間Acよりも各行間の隙間を小さく設定したが、こうした構成は適宜変更が可能である。例えば、各列間の隙間Acよりも各行間の隙間を大きくしてもよいし、各列間の隙間Acと各行間の隙間とを同じにしてもよい。なお、こうした構成は第2圧力センサBにおいても同様に採用できる。
【0047】
・上記実施形態では、第1圧力センサA及び第2圧力センサBを4行×4列の計16個配置した例を示したが、第1圧力センサA及び第2圧力センサBを配置する行数や列数は適宜変更してもよい。例えば2行×2列や3行×5列等の配置も可能である。さらには、第1圧力センサA及び第2圧力センサBをm×nとは異なる配置としてもよく、例えば円環形状等に沿って各圧力センサを配置する構成等も採用できる。すなわち、第1圧力センサAと、第1圧力センサAに一部が重ねられた第2圧力センサBとを備えるものであれば、その数や配置は特に限定されない。
【0048】
・上記実施形態では、第1センサシート30を構成する第1ベース基板31と、第2センサシート40を構成する第2ベース基板41との双方を柔軟性を有する基板として構成した。こうした構成は省略が可能である。例えば、第1ベース基板31及び第2ベース基板41の少なくとも一方を、柔軟性を有しない基板として構成してもよい。
【0049】
・第2センサシート40において、保護層55を省略してもよい。また、第1センサシート30において、第1圧力センサAを覆うように保護層55を設けるようにしてもよい。
【0050】
・第1圧力センサA及び第2圧力センサBにおいて、誘電層50、第1電極層51、及び第2電極層52の少なくとも1つの層を柔軟性を有しない構成に変更してもよい。
・上記実施形態では、第2ベース基板41にアースに接続された導体層を設けて、電磁シールド層を構成した。こうした構成は適宜変更が可能である。例えば、第1センサシート30と第2センサシート40との間に絶縁体からなる電磁シールド層を別部材として設けるようにしてもよい。
【0051】
・検出装置70では、静電容量検出部71から第1圧力センサA及び第2圧力センサBの各々における圧力の検出信号を位置特定部72に入力し、圧力の作用位置を特定するようにした。こうした構成に代えて、第1圧力センサA及び第2圧力センサBからの電気信号を直接位置特定部72に入力することで、圧力の作用位置を特定することも可能である。
【0052】
・検出装置70の位置特定部72では、位置を特定するために用いられる閾値を、第1圧力センサAの検出圧力に対するものと、第2圧力センサBの検出圧力に対するものとで異なる値に設定することも可能である。また、位置特定部72において、検出圧力と閾値との比較ではなく、検出圧力の変化量に基づいて圧力の作用位置を特定するようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、単独検出領域Sを第1圧力センサAのみが配置された第1検出領域S1と、第2圧力センサBのみが配置された第2検出領域S2との双方によって構成したが、単独検出領域Sを第1検出領域S1と第2検出領域S2との何れか一方のみによって構成してもよい。こうした構成は、例えば、第1圧力センサAの面積を第2圧力センサBの面積よりも大きくするとともに、平面視において第2圧力センサBの全体が第1圧力センサAの外周縁よりも内側に位置するように配置する等して実現できる。
【0054】
・センサシート部20を第1センサシート30の上に第2センサシート40を重ねた構成とした。センサシート部20の構成はこうしたものに限らない。例えば、第2センサシート40の上に第1センサシート30を重ねた構成としてもよいし、3つ以上のセンサシートを重ねた構成としてもよい。また、一つのセンサシートにおいて、ベース基板上に第1圧力センサAと、第1圧力センサAに一部が重なる第2圧力センサBとの双方を設けてセンサシート部20を構成してもよい。
【0055】
・第1圧力センサA及び第2圧力センサBの双方を静電容量式の圧力センサとした。こうした構成に変えて、第1圧力センサA及び第2圧力センサBの少なくとも一方を、例えば歪みゲージ式の圧力センサ等、他の形式の圧力センサとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…センサユニット
20…センサシート部
30…第1センサシート
31…第1ベース基板
40…第2センサシート
41…第2ベース基板(電磁シールド層)
50…誘電層
51…第1電極層
52…第2電極層
55…保護層
60…端子
61…導線
70…検出装置
71…静電容量検出部
72…位置特定部
73…記憶部
A…第1圧力センサ
B…第2圧力センサ
C…圧力検出領域
D,D1,D2…重複検出領域
S…単独検出領域
S1…第1検出領域
S2…第2検出領域