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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/76 20060101AFI20231129BHJP
   B66C 23/74 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B66C23/76 C
B66C23/74 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020535714
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030219
(87)【国際公開番号】W WO2020031842
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018147697
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 正則
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕人
(72)【発明者】
【氏名】板坂 由門
(72)【発明者】
【氏名】六本木 翔太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088752(JP,A)
【文献】特開2015-074555(JP,A)
【文献】特開2017-024860(JP,A)
【文献】特許第6568547(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/76
B66C 23/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在するキャリアフレームを有する車両と、
旋回中心に対して旋回可能に前記キャリアフレーム上に設けられ、ブームと、カウンタウェイト取り付け部と、を有する旋回体と、
を備え、
前記カウンタウェイト取り付け部は、前記旋回中心からの離間距離が互いに異なる複数の取り付け位置を有し、前記複数の取り付け位置のうち選択的にいずれかの取り付け位置に対して、カウンタウェイトの取り付け及び取り外しが可能に構成され、
前記車両は、前記キャリアフレームの後端から後方に張り出して前記キャリアフレームに設けられたウェイト支持部を有し、前記ウェイト支持部は、前記複数の取り付け位置のうち、前記カウンタウェイトが前記キャリアフレーム上に載置されると前記キャリアフレームの後端よりも後方に突き出る状態となる取り付け位置に取り付けられる、前記カウンタウェイトの重心を支持する、
クレーン。
【請求項2】
前記カウンタウェイト取り付け部は、前記旋回中心に対して所定の方向に延び、
前記複数の取り付け位置は、前記所定の方向において互いに異なる位置であり、
前記所定の方向は、前記旋回体を平面視した場合において、前記旋回中心に対して前記ブームが延びる方向とは反対の方向である、
請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記複数の取り付け位置のうち前記離間距離が最も長い取り付け位置は、前記カウンタウェイトのモーメントが最大となる位置である、
請求項1又は請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記複数の取り付け位置のうち前記離間距離が最も短い取り付け位置は、前記旋回体の後端の旋回半径が最小となる位置である、
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記複数の取り付け位置のうち前記離間距離が最も長い取り付け位置は、前記カウンタウェイトが前記旋回体の端部よりも前記旋回中心から離れる方向に突出する位置であり、
前記複数の取り付け位置のうち前記離間距離が最も短い取り付け位置は、前記カウンタウェイトが前記旋回体の前記端部よりも前記旋回中心から離れる方向に突出しない位置である、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記キャリアフレームは、前記カウンタウェイト取り付け部における前記いずれかの取り付け位置に対向する位置で、前記カウンタウェイト取り付け部への取り付け前の前記カウンタウェイトを位置決めする位置決め部を有する、
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項7】
前記位置決め部は、前記前後方向に配置された複数の位置決め部材を有し、
前記カウンタウェイトが前側の前記位置決め部材に載置された際に、後側の前記位置決め部材は、前記カウンタウェイトに設けられた空間に挿入される、
請求項6に記載のクレーン。
【請求項8】
前記位置決め部を前記前後方向にスライド式に案内する案内機構を備える、
請求項6乃至請求項7の何れか一項に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブームが起伏自在に設けられた旋回体にカウンタウェイトを着脱させるクレーンの構造としては、伸縮シリンダを用いてカウンタウェイトと旋回体とを連結させる構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された構造によれば、伸縮シリンダの下端部はカウンタウェイトに取り付けられている。カウンタウェイトを旋回体に装着する場合、伸縮シリンダを伸長させることにより、伸縮シリンダの上端部を旋回体の連結用ブラケットまで上昇させる。伸縮シリンダの上端部が連結用ブラケットの位置に到達すると、シリンダと連結用ブラケットとを連結させる。そして、伸縮シリンダを短縮させて、カウンタウェイトを旋回体の連結用ブラケットまで引き上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-40109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構造によれば、前側の荷物のモーメントが大きくなった場合には、その大きくなったモーメントに対応して、前側の荷物と吊り合せる、カウンタウェイト側のモーメントを大きくする必要がある。特許文献1では、カウンタウェイトを重くしてモーメントを増加させるが、同時に車体の総重量が重くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、シンプルな方法を用いて、クレーンの総重量を変化させずに、カウンタウェイト側のモーメントを変化させることのできるクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクレーンの一態様は、
前後方向に延在するキャリアフレームを有する車両と、
旋回中心に対して旋回可能に前記キャリアフレーム上に設けられ、ブームと、カウンタウェイト取り付け部と、を有する旋回体と、
を備え、
前記カウンタウェイト取り付け部は、前記旋回中心からの離間距離が互いに異なる複数の取り付け位置を有し、前記複数の取り付け位置のうち選択的にいずれかの取り付け位置に対して、カウンタウェイトの取り付け及び取り外しが可能に構成され、
前記車両は、前記キャリアフレームの後端から後方に張り出して前記キャリアフレームに設けられたウェイト支持部を有し、前記ウェイト支持部は、前記複数の取り付け位置のうち、前記カウンタウェイトが前記キャリアフレーム上に載置されると前記キャリアフレームの後端よりも後方に突き出る状態となる取り付け位置に取り付けられる、前記カウンタウェイトの重心を支持する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シンプルな方法を用いて、クレーンの総重量を変化させずに、カウンタウェイト側のモーメントを変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クレーンを示す側面図である。
図2】カウンタウェイトを示す斜視図である。
図3A】旋回体を示す平面図である。
図3B】旋回体を示す側面図である。
図4】カウンタウェイトを旋回体に取り付けるためのカウンタウェイト載置構造を示す斜視図である。
図5】キャリアフレームの後部上面に載置されたカウンタウェイトを示す斜視図である。
図6A】キャリアフレームの後部上面に載置されたカウンタウェイトを示す側断面図である。
図6B】伸縮シリンダが伸長した状態におけるカウンタウェイトを示す側断面図である。
図6C】伸縮シリンダが短縮した状態におけるカウンタウェイトを示す側断面図である。
図7】キャリアフレームの後部上面に載置されたカウンタウェイトを示す斜視図である。
図8A】キャリアフレームの後部上面に載置されたカウンタウェイトを示す側断面図である。
図8B】伸縮シリンダが伸長した状態におけるカウンタウェイトを示す側断面図である。
図8C】伸縮シリンダが短縮した状態におけるカウンタウェイトを示す側断面図である。
図9】本発明のクレーンに係る変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン1を示す側面図である。クレーン1は、図1に示すように、走行する車両2と、クレーン装置3とを備えている。
【0011】
(車両の構成)
車両2は、前部及び後部の複数箇所にそれぞれに左右一対の車輪を有し、エンジンを動力源として走行する。
【0012】
車両2は、車両2の前後方向に延びるキャリアフレーム4と、車両2の前後両側に設けられたアウトリガ5とを有する。車両2は、ベース部の一例である。
【0013】
キャリアフレーム4は、前端部および後端部にアウトリガ5が設けられ、前後方向略中央部の上面に旋回体6が水平方向に旋回可能に設けられている。
【0014】
(クレーン装置の構成)
クレーン装置3は、車両2の前後方向略中央部に設けられた旋回体6と、旋回体6に対して起伏可能に取り付けられるとともに、伸縮可能に設けられたブーム7と、カウンタウェイト9を旋回体6に取り付けるためのカウンタウェイト載置構造10(図4)とを有する。
【0015】
旋回体6は、キャリアフレーム4と旋回体6との間に配設されたボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークルによって所定の旋回中心(図3A図3B)を中心としてキャリアフレーム4に対して旋回自在に設けられている。旋回体6には、後述するピストンロッド16B(図2)を連結するシリンダ連結部60,61(図3A)が設けられている。
【0016】
ブーム7は、複数のブーム部材の内部に先端側に隣り合うブーム部材が収納可能なテレスコープ式に構成されている。
【0017】
クレーン装置3は、さらに、旋回体6に設けられ車両2の走行操作やクレーン装置3の作業操作を行う作業キャビン8と、旋回体6の後部に着脱自在に設けられたカウンタウェイト9とを有する。
【0018】
カウンタウェイト9は、ブーム7の先端から荷物を吊り下げたときのクレーン1の安定性を確保するために、旋回体6の後部に装着される。
【0019】
(カウンタウェイト9の構成)
図2は、カウンタウェイト9を示す斜視図である。カウンタウェイト9には、図2に示すように、伸縮シリンダ16(シリンダ装置)が取り付けられている。カウンタウェイト9は、異なる2つの取り付け位置P1,P2(図4)に選択的に位置決めされる。2つの取り付け位置のうちの一つ(P1)は、ブーム7が前向き状態のときにシリンダ連結部60(後述)の位置に対向する位置であって、旋回体6(図3A)の後端が最小旋回するような取り付け位置である。2つの取り付け位置のうちの一つ(P2)は、ブーム7が前向き状態のときにシリンダ連結部61(後述)の位置に対向する位置であって、最大モーメントが得られるような取り付け位置である。なお、本実施形態の説明においては、特に言及しない限り、ブーム7が前向き状態にあることを前提とする。
【0020】
伸縮シリンダ16は、幅方向に所定の間隔で並んで一対設けられ、上下方向を伸縮する。
【0021】
伸縮シリンダ16の上端側は、後述するシリンダ連結部60,61(図3A)に連結可能となっている。
【0022】
伸縮シリンダ16は、チューブ16Aとチューブ16Aから上方に向けて進退可能なピストンロッド16Bとを有する油圧式シリンダである。カウンタウェイト9には、伸縮シリンダ16の下端側を支持するシリンダ支持部92が所定の間隔で幅方向に並んで一対設けられている。
【0023】
伸縮シリンダ16は、チューブ16Aに設けられたポート(不図示)に油圧ホース(不図示)を接続可能である。
【0024】
ピストンロッド16Bの上端部には、カウンタウェイト9の幅方向に向けて開口したロッド孔部16Cが形成されている。
【0025】
カウンタウェイト9には、所定の間隔で幅方向に並んで一対の空間90が設けられている。カウンタウェイト9がウェイトガイド13(図4)により第1の取り付け位置P1で位置決めされると、空間90にはウェイトガイド14(図4)が挿入されるようになっている。
【0026】
カウンタウェイト9には、係止部91が所定の間隔で幅方向に並んで一対設けられている。係止部91には、ガイドピン13B,14B(図4)と係止可能な凹部91Aが形成されている。
【0027】
(シリンダ連結部60,61の構成)
図3Aは、旋回体6を示す平面図である。図3Bは、旋回体6を示す側面図である。旋回体6には、カウンタウェイト9を少なくとも異なる2位置で支持するためのシリンダ連結部60,61が、旋回体6の側面左右に複数箇所設けられる。シリンダ連結部60,61の組合せを含む旋回体6の一部分は、カウンタウェイト取り付け部の一例であり、個々のシリンダ連結部60,61の位置は、カウンタウェイト取り付け部の取り付け位置の一例である。シリンダ連結部61は、旋回体6の最後端に設けられる。この位置は、旋回体6の前後方向において旋回中心からの離間距離が最も長い位置であり、よって、カウンタウェイト9側のモーメントを最大値にできる位置である。シリンダ連結部60は、カウンタウェイト9を旋回体6の前後方向において旋回中心に最も近づけて支持できる位置に設けられる。この位置は、カウンタウェイト9を設置した旋回体6の旋回範囲が最も小さくなり、省スペースで作業できる位置である。なお、旋回体6の前後方向とは、旋回体6を平面視した場合において、旋回体6の旋回中心に対してブーム7が延びる方向(前方向)と、その反対の方向、つまり旋回体6の旋回中心に対してカウンタウェイト取り付け部が延びる方向(後方向)と、を含む方向である。ブーム7が前向き状態にあるとき、旋回体6の前後方向は、車両2の前後方向と、旋回体6の平面視において一致する。シリンダ連結部60は、図3Bに示すように、旋回体6の後部に設けられたロッド通路60Aと旋回体連結孔部60Bと連結ピン(不図示)とを有する。
【0028】
シリンダ連結部61は、図3A及び図3Bに示すように、シリンダ連結部60と同じ構造で、シリンダ連結部60よりも後側に設けられている。すなわち、シリンダ連結部61は、旋回体6の後部に設けられたロッド通路61Aと旋回体連結孔部61Bと連結ピン(不図示)とを有する。
【0029】
ロッド通路60A,61Aは、図3Bに示すように、上下方向に延び、下端が開口され、天井板で閉塞されている。第1の取り付け位置P1(図4)で、カウンタウェイト9(図2)が位置決めされているとき、ロッド通路60Aの真下には、ピストンロッド16B(図2)が配置される。これにより、ロッド通路60Aにピストンロッド16Bが挿入されるように設定されている。
【0030】
一方、第2の取り付け位置P2(図4)でカウンタウェイト9(図2)が位置決めされているとき、ロッド通路61Aに対向する位置、つまりロッド通路61Aの真下には、ピストンロッド16B(図2)が配置される。これにより、ロッド通路61Aにピストンロッド16Bが挿入されるように設定されている。
【0031】
ロッド通路60A,61Aの天井板はピストンロッド16B(図2)の上端部が当接可能となっている。
【0032】
旋回体連結孔部60B,61Bは、それぞれ、旋回体6の幅方向に向けてロッド通路60A,61Aを貫通している。
【0033】
連結ピンは、ロッド孔部16C(図2)と、旋回体連結孔部60B,61Bの何れかに挿入可能である。
【0034】
(カウンタウェイト載置構造10の構成)
図4は、カウンタウェイト載置構造10を示す斜視図である。カウンタウェイト載置構造10は、図4に示すように、キャリアフレーム4に設けられたウェイト支持部11,12と、ウェイトガイド13,14とを有する。ウェイトガイド13,14は、位置決め部に含まれる複数の位置決め部材の一例である。
【0035】
ウェイト支持部11,12は、キャリアフレーム4の後部上面の幅方向両側に設けられた一対の部材で、カウンタウェイト9(図2)を載置する載置台である。
【0036】
ウェイト支持部11は、カウンタウェイト9の下面を支持する支持部11Aを有する。
【0037】
ウェイト支持部12は、前後方向に延びた長方形の台座12Aと、この台座12Aの前後端に設けられるとともにカウンタウェイト9の下面を支持する支持部12Bとを有する。
【0038】
台座12Aは、キャリアフレーム4の後端面4Aに取り付けられた逆L字形の取り付け部材12Cに保持されている。取り付け部材12Cのアーム部12Dはキャリアフレーム4の後部上面に固定されている。
【0039】
ウェイトガイド13,14は、車両2の前後方向に設けられ、カウンタウェイト9を旋回体6に取り付けるためのものである。ウェイトガイド13は、カウンタウェイト9を第1の取り付け位置P1(図4)に位置決めするためのものである。ウェイトガイド14は、カウンタウェイト9を第2の取り付け位置P2(図4)に位置決めするためのものである。
【0040】
すなわち、後述する伸縮シリンダ16(図2)を取り付ける位置として旋回体6(図3A)に少なくとも2つの取り付け位置P1,P2が設定されている。
【0041】
ウェイトガイド13は、ウェイト支持部11の前側に設けられ、カウンタウェイト9の前後方向の載置位置を案内するガイド部13Aと、載置位置に案内されたカウンタウェイト9を係止するガイドピン13Bとを有する。
【0042】
ウェイトガイド14は、ウェイトガイド13の後側に設けられ、ウェイトガイド13と同じ構造で、ウェイトガイド13よりも高さが低く設定されている。すなわち、ウェイトガイド14は、ウェイト支持部11,12の間に設けられ、カウンタウェイト9の前後方向の載置位置を案内するガイド部14Aと、ガイド部14Aによって載置位置に案内されたカウンタウェイト9を係止するガイドピン14Bとを有する。
【0043】
(カウンタウェイト9を旋回体6に装着する作業について)
次に、カウンタウェイト9を旋回体6に装着する作業を、相対的に前側の第1の取り付け位置P1にカウンタウェイト9を位置決めする場合と、相対的に後側の第2の取り付け位置P2にカウンタウェイト9を位置決めする場合とに分けて説明する。
【0044】
(第1の取り付け位置P1にカウンタウェイト9を位置決めする場合)
まず、第1の取り付け位置P1にカウンタウェイト9を位置決めする場合について、図5図6A図6B及び図6Cを参照しつつ説明する。
【0045】
最初に、旋回体6を図1に示す位置から180°旋回させて、ブーム7を後向きにする。そして、地面などに置かれたカウンタウェイト9をクレーン装置3によって吊り上げ、図5に示すように、カウンタウェイト9をキャリアフレーム4の後部上面における第1の取り付け位置P1に載置する。
【0046】
このとき、図5に示すように、カウンタウェイト9の前面をウェイトガイド13のガイド部13Aに後方から突き当てながら、カウンタウェイト9を降下させる。これにより、カウンタウェイト9の前後方向が第1の取り付け位置P1に位置決めされた状態で、カウンタウェイト9を降下させることができる。これと同時に、係止部91の内面(向かい合う対向面)側がそれぞれウェイトガイド13の外側面にガイドされながら降りてくると、カウンタウェイト9の左右位置も位置決めすることができる。そして、ウェイトガイド13のガイドピン13Bが凹部91Aに引っ掛かってカウンタウェイト9がウェイトガイド13に係止される。
【0047】
このとき、カウンタウェイト9に設けられた空間90には、図5に示すように、ウェイトガイド14(図4)が挿入される。空間90は、カウンタウェイト9を第1の取り付け位置P1に位置決めするときに、ウェイトガイド14が邪魔にならないような逃げ口となる。
【0048】
カウンタウェイト9の前面をウェイトガイド13に対して突き当てたときの位置は、伸縮シリンダ16のピストンロッド16Bの真上にロッド通路60Aが配置されるように設定されている。
【0049】
そして、図5に示すように、カウンタウェイト9をウェイト支持部11(図4)の上に載置するとともに、ガイドピン13Bを係止部91の凹部91Aに係止させる。
【0050】
次に、カウンタウェイト9を旋回体6に取り付けるため、旋回体6を図1に示す位置に移動させる。これにより、図6に示すように、旋回体6の後部が、キャリアフレーム4の後部上方に配置される。
【0051】
このとき、ロッド通路60Aは、図6Aに示すように、ピストンロッド16Bの真上の位置に配置される。
【0052】
そして、一端側が伸縮シリンダ16のポートに接続された油圧ホースの他端側を、クレーン装置3に設けられた油圧回路(不図示)に接続する。
【0053】
これにより、油圧回路からの作動油の給排が制御され、伸縮シリンダ16の伸縮動作が制御される。
【0054】
次に、作動油の給排を利用して、伸縮シリンダ16を伸長させる。
【0055】
伸縮シリンダ16を伸長させると、図6Bに示すように、ピストンロッド16Bが上方に移動する。
【0056】
そして、図6Bに示すように、ピストンロッド16Bがロッド通路60Aに下方から進入し、ピストンロッド16Bの上端部がロッド通路60Aの天井板に当接すると伸縮シリンダ16の伸長を停止させる。
【0057】
ピストンロッド16Bがロッド通路60Aの天井板に当接すると、図6Bに示すように、ロッド孔部16Cと旋回体連結孔部60Bとの位置が合う。
【0058】
そして、連結ピンをロッド孔部16Cと旋回体連結孔部60Bとに挿通させ、ピストンロッド16Bを旋回体6に連結させる。
【0059】
次に、作動油の給排を利用して、伸縮シリンダ16を短縮させる。
【0060】
伸縮シリンダ16は旋回体6に連結されているので、伸縮シリンダ16の短縮により、図8に示すように、伸縮シリンダ16のチューブ16Aが上方に移動する。
【0061】
この移動に伴い、図6Cに示すように、チューブ16Aによって軸支されているカウンタウェイト9がチューブ16A(図2)とともに上昇する。
【0062】
そして、カウンタウェイト9の後部上面が旋回体6の下面に当接するまでカウンタウェイト9を上昇させると、固定ピン(不図示)をカウンタウェイト9と旋回体6とにそれぞれ設けられた孔部(不図示)に挿通して、カウンタウェイト9を旋回体6に固定する。
【0063】
カウンタウェイト9が旋回体6に固定されると、伸縮シリンダ16を伸長させ、固定ピンによってカウンタウェイト9の重量を支えるようにする。
【0064】
以上により、第1の取り付け位置P1にカウンタウェイト9を位置決めして、旋回体6にカウンタウェイト9を装着する作業が終了する。
【0065】
(第2の取り付け位置P2にカウンタウェイト9を位置決めする場合)
続いて、第2の取り付け位置P2にカウンタウェイト9を位置決めする場合について、図7図8A図8B及び図8Cを参照しつつ説明する。
【0066】
最初に、旋回体6を図1に示す位置から180°旋回させて、ブーム7を後向きにする。そして、地面などに置かれたカウンタウェイト9をクレーン装置3によって吊り上げ、カウンタウェイト9をキャリアフレーム4の後部上面における第2の取り付け位置P2に載置する。
【0067】
このとき、図7に示すように、カウンタウェイト9の前面をウェイトガイド14のガイド部14Aに後方から突き当てながら、カウンタウェイト9を降下させる。これにより、カウンタウェイト9の前後方向が第2の取り付け位置P2に位置決めされた状態でカウンタウェイト9を降下させることができる。これと同時に、係止部91の内面(向かい合う対向面)側がそれぞれウェイトガイド14の外側面にガイドされながら降りてくると、カウンタウェイト9の左右位置も位置決めすることができる。そして、ウェイトガイド14のガイドピン14Bが凹部91Aに引っ掛かってカウンタウェイト9がウェイトガイド14に係止される。
【0068】
カウンタウェイト9の前面をウェイトガイド14に対して突き当てたときの位置は、伸縮シリンダ16の真上にロッド通路61Aが配置されるように設定されている。
【0069】
このとき、図8Aに示すように、ウェイト支持部12の取り付け部材12C(図4)によって、カウンタウェイト9の重心が支持されるので、カウンタウェイト9がキャリアフレーム4の後方に落下することが防止される。
【0070】
そして、図7に示すように、カウンタウェイト9をウェイト支持部11の上に載置するとともに、ガイドピン14Bを係止部91の凹部91Aに係止させる。
【0071】
次に、カウンタウェイト9を旋回体6に取り付けるため、旋回体6を図1に示す位置に移動させる。これにより、図8Aに示すように、旋回体6の後部が、キャリアフレーム4の後部上方に配置される。
【0072】
このとき、ロッド通路61Aは、図8Aに示すように、ピストンロッド16Bの真上の位置に配置される。
【0073】
そして、一端側が伸縮シリンダ16のポートに接続された油圧ホースの他端側を、クレーン装置3に設けられた油圧回路(不図示)に接続する。
【0074】
これにより、油圧回路からの作動油の給排が制御され、伸縮シリンダ16の伸縮動作が制御される。
【0075】
次に、作動油の給排を利用して、伸縮シリンダ16を伸長させる。
【0076】
伸縮シリンダ16を伸長させると、図8Bに示すように、ピストンロッド16Bが上方に突出して上方に移動する。
【0077】
そして、図8Bに示すように、ピストンロッド16Bがロッド通路61Aに下方から進入し、ピストンロッド16Bの上端部がロッド通路61Aの天井板に当接すると伸縮シリンダ16の伸長を停止させる。
【0078】
ピストンロッド16Bがロッド通路61Aの天井板に当接すると、図8Bに示すように、ロッド孔部16Cと旋回体連結孔部61Bとの位置が合う。
【0079】
そして、連結ピンをロッド孔部16Cと旋回体連結孔部61Bとに挿通させ、ピストンロッド16Bを旋回体6に連結させる。
【0080】
次に、作動油の給排を利用して、伸縮シリンダ16を短縮させる。
【0081】
伸縮シリンダ16は旋回体6に連結されているので、伸縮シリンダ16の短縮により、図12に示すように、伸縮シリンダ16のチューブ16Aが上方に移動する。
【0082】
この移動に伴い、図8Cに示すように、チューブ16Aによって軸支されているカウンタウェイト9がチューブ16A(図2)とともに上昇する。
【0083】
そして、カウンタウェイト9の後部上面が旋回体6の下面に当接するまでカウンタウェイト9を上昇させると、固定ピン(不図示)をカウンタウェイト9と旋回体6とにそれぞれ設けられた孔部(不図示)に挿通して、カウンタウェイト9を旋回体6に固定する。
【0084】
カウンタウェイト9が旋回体6に固定されると、伸縮シリンダ16を伸長させ、固定ピンによってカウンタウェイト9の重量を支えるようにする。
【0085】
以上により、第2の取り付け位置P2にカウンタウェイト9を位置決めして、旋回体6にカウンタウェイト9を装着する作業が終了する。
【0086】
以上、上述したクレーン1によれば、車体の総重量を変えずに、省スペース化と安定性能の向上とを用途に応じて選択することができる。具体的には、カウンタウェイト9の取付位置を前方にした場合は、カウンタウェイト9が旋回体6の後端側に突出せず、そのためクレーン1の最後端回転半径を小さくでき、作業スペースの限られた現場に適用できる。よって、近年、多様な現場作業に適応するため、省スペースの車体でありながら、性能制限の範囲でいかに安定性能を向上させるかが課題となっているが、本実施形態では、この課題を解決することができる。また、カウンタウェイト9の取付位置を後方にした場合は(この場合、本実施形態では、カウンタウェイト9の取付位置が旋回中心からさらに離れて、カウンタウェイト9が旋回体6の後端側に突出する)、車体の総重量を変化させずに、カウンタウェイト9のモーメントを重くすることができ、安定性能の向上に寄与する。また、取付装置であるシリンダ装置は、カウンタウェイト9側にあるため、カウンタウェイト9の取付位置は、旋回体6の設置可能範囲において、自由に設定できる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0088】
例えば、図9に示すように、クレーンは、カウンタウェイトを位置決めする位置決め部材と、当該位置決め部材を前後方向(図中の白抜きで示す矢印の方向)にスライド式に案内する案内機構とを備えていても良い。案内機構は、キャリアフレームの後端から一体で張り出すまで位置決め部材を案内する。
【0089】
また、上記実施形態では、シリンダ連結部は2個であり、言い換えればカウンタウェイトの取り付け位置は2箇所であるが、カウンタウェイトをいずれか1箇所に対して選択的に取り付け及び取り外し可能であれば、カウンタウェイトの取り付け位置は3箇所以上であっても良い。
【0090】
<付記>
上記実施形態によれば、クレーンの第1例は、ベース部と、旋回中心に対して旋回可能に前記ベース部上に設けられ、ブームと、カウンタウェイト取り付け部と、を有する旋回体と、を備え、前記カウンタウェイト取り付け部は、複数の取り付け位置を有し、複数の取り付け位置のうち選択的にいずれかの取り付け位置に対して、カウンタウェイトの取り付け及び取り外しが可能に構成され、複数の取り付け位置は、旋回中心からの離間距離が互いに異なる位置である。
【0091】
また、上記実施形態によれば、クレーンの第2例は、上記第1例において、カウンタウェイト取り付け部は、旋回中心に対して所定の方向に延び、複数の取り付け位置は、所定の方向において互いに異なる位置であり、所定の方向は、旋回体を平面視した場合において、旋回中心に対してブームが延びる方向とは反対の方向である。
【0092】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第3例は、上記第1例又は上記第2例において、複数の取り付け位置のうち離間距離が最も長い取り付け位置は、カウンタウェイトのモーメントが最大となる位置である。
【0093】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第4例は、上記第1例乃至上記第3例の何れか1例において、複数の取り付け位置のうち離間距離が最も短い取り付け位置は、旋回体の後端の旋回半径が最小となる位置である。
【0094】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第5例は、上記第1例乃至上記第4例の何れか1例において、複数の取り付け位置のうち離間距離が最も長い取り付け位置は、カウンタウェイトが旋回体の端部よりも旋回中心から離れる方向に突出する位置であり、複数の取り付け位置のうち離間距離が最も短い取り付け位置は、カウンタウェイトが旋回体の端部よりも旋回中心から離れる方向に突出しない位置である。
【0095】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第6例は、上記第1例乃至上記第5例の何れか1例において、ベース部は、カウンタウェイト取り付け部におけるいずれかの取り付け位置に対向する位置で、カウンタウェイト取り付け部への取り付け前のカウンタウェイトを位置決めする位置決め部を有する。
【0096】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第7例は、上記第6例において、位置決め部は、ベース部の前後方向に配置された複数の位置決め部材を有し、カウンタウェイトが前側の位置決め部材に載置された際に、後側の位置決め部材は、カウンタウェイトに設けられた空間に挿入される。
【0097】
さらに、上記実施形態によれば、クレーンの第8例は、上記第6例又は上記第7例において、位置決め部を前後方向にスライド式に案内する案内機構を備える。
【0098】
2018年8月6日出願の特願2018-147697の日本出願に含まれる明細書、図面、及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のクレーンは、ブームが取り付けられた旋回体を有するクレーンに広く適用できる。
【符号の説明】
【0100】
1 クレーン
6 旋回体
7 ブーム
9 カウンタウェイト
13、14 ウェイトガイド(位置決め部材)
16 伸縮シリンダ(シリンダ装置)
90 空間
P1 第1の取り付け位置
P2 第2の取り付け位置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9