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特許7392654医療用観察システム、医療用観察装置及び医療用観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】医療用観察システム、医療用観察装置及び医療用観察方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231129BHJP
   H04N 13/271 20180101ALI20231129BHJP
   H04N 13/296 20180101ALI20231129BHJP
   H04N 13/239 20180101ALI20231129BHJP
   H04N 13/221 20180101ALI20231129BHJP
   H04N 13/254 20180101ALI20231129BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20231129BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H04N7/18 M
H04N13/271
H04N13/296
H04N13/239
H04N13/221
H04N13/254
A61B1/00 522
A61B1/00 553
A61B1/045 618
A61B1/045 632
A61B1/06 610
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020553102
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2019039738
(87)【国際公開番号】W WO2020080209
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018196648
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇山 慧佑
(72)【発明者】
【氏名】林 恒生
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228954(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099175(WO,A1)
【文献】特開2015-228955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 13/00
A61B 1/00
H04N 23/00
G06T 1/00
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
術野を撮像して術野画像を得る撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成する3次元情報生成部と、
前記撮像装置が、所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する設定部と、
前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、前記撮像装置が術野画像を撮像する際に、当該撮像装置の制御パラメータを調整する調整部と、
前記調整部が調整した制御パラメータによって前記撮像装置が撮像した術野画像を出力する表示制御部と、
を備える医療用観察システム。
【請求項2】
前記撮像装置は、1つの撮像素子を備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像装置が異なる時刻に撮像した少なくとも2枚の術野画像に基づいて、術野の3次元情報を生成する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項3】
前記撮像装置は、一部が重複する異なる範囲を撮像する2つの撮像素子を備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像素子が同じ時刻に撮像した2枚の術野画像に基づいて、術野の3次元情報を生成する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項4】
前記撮像装置は、1つの撮像素子と対象物までの距離を計測する測距装置とを備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像素子が撮像した画像と前記測距装置が計測した距離とに基づいて、術野の3次元情報を生成する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項5】
前記3次元情報生成部は、前記術野画像の全体又は任意の範囲から抽出した特徴点の3次元情報を生成する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項6】
前記制御パラメータは、前記撮像装置の光学系の状態を規定する光学パラメータである、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項7】
前記制御パラメータは、前記撮像装置の露出条件を規定する撮像パラメータである、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項8】
前記制御パラメータは、前記撮像装置の現像条件を規定する現像パラメータである、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項9】
前記制御パラメータは、前記撮像装置の撮像範囲に照明光を照射する光源装置の発光状態を規定する発光パラメータである、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項10】
前記設定部は、前記3次元情報生成部が生成した術野の3次元情報に基づいて、前記光源装置による照明光の反射方向を予測するとともに、
予測された反射方向に進む反射光が、前記撮像装置に撮像される場合に、当該反射光が撮像される領域を、前記注目領域の設定対象から除外する、
請求項9に記載の医療用観察システム。
【請求項11】
前記設定部は、前記注目領域が存在する距離範囲を指定する機能を更に備えて、指定された距離範囲の中で注目領域を設定する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項12】
前記術野画像の中から、登録された物体を検出する検出部を更に備えて、
前記設定部は、前記術野画像から、前記検出部が検出した物体を除いた領域の中から、前記特徴点を設定する、
請求項5に記載の医療用観察システム。
【請求項13】
前記調整部は、推定された前記注目領域の3次元位置に応じて、前記撮像装置が撮像する術野画像の撮影倍率を変更するとともに、
前記設定部は、前記撮影倍率に応じて、前記注目領域の大きさを変化させる、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項14】
前記調整部は、推定された前記注目領域の3次元位置に応じて、前記撮像装置が術野画像を撮像する際の制御パラメータの初期値を設定する、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項15】
前記撮像装置は、内視鏡に実装される、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項16】
前記撮像装置は、顕微鏡に実装される、
請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項17】
術野を撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成する3次元情報生成部と、
所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する設定部と、
前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、術野画像を撮像する際の制御パラメータを調整する調整部と、
前記調整部が調整した制御パラメータによって撮像された術野画像を出力する表示制御部と、
を備える医療用観察装置。
【請求項18】
術野を撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成するステップと、
所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定するステップと、
前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定するステップと、
推定された注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、術野画像を撮像する際の制御パラメータを調整するステップと、
調整された制御パラメータによって撮像された術野画像を出力するステップと、
を備える医療用観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用観察システム、医療用観察装置及び医療用観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AF(Auto Focus)機能やAE(Auto Exposure)機能を実装して、画像の撮像パラメータを自動的に調整する機能を有する手術用内視鏡や手術用顕微鏡を用いた手術が行われている。内視鏡や顕微鏡は、一般に被写界深度が浅く、さらに術野は明暗が分かれやすい。そのため、被検体を撮像する際は、手術の対象となる部位(術部)に合わせてフォーカスや露出といった撮像パラメータを調整し続けるのが望ましい。例えば、特許文献1では、内視鏡画像を複数の分割領域に分割し、フォーカス制御の対象となる領域を選択する内視鏡システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-139760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、術野画像には手術器具や術者の手等の術部以外の物体が頻繁に映り込み、術部と手術器具が重なることもあるため、術野画像という2次元情報だけでは精度良く術部に合わせて撮像パラメータを調整し続けることが難しかった。
【0005】
そこで、本開示では、術野に合わせて、精度良くフォーカスや露出を調整し続けることができる医療用観察システム、医療用観察装置及び医療用観察方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の医療用観察システムは、術野を撮像して術野画像を得る撮像装置と、前記撮像装置が撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成する3次元情報生成部と、前記撮像装置が、所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する設定部と、前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定する推定部と、前記推定部が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、前記撮像装置が術野画像を撮像する際に、当該撮像装置の制御パラメータを調整する調整部と、前記調整部が調整した制御パラメータによって前記撮像装置が撮像した術野画像を出力する表示制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る医療用観察システムが適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図2】本開示の第1の実施の形態に係る医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図3】地図生成部が術野の3次元地図を生成する方法の一例を説明する図である。
図4】注目枠の設定方法の一例を示す図である。
図5】注目枠の設定方法の別の一例を示す図である。
図6】特徴点を抽出する領域を設定した例を示す図である。
図7】医療用観察システムが表示する術野画像の一例を示す図である。
図8】医療用観察システムが、術野までの距離に応じて観察時の撮影倍率を変更する機能について説明する図である。
図9】医療用観察システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】撮像装置が像面位相差センサを備える撮像素子で構成された医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図11】像面位相差センサを利用する場合の術野画像の表示形態の一例を示す図である。
図12】撮像装置が2つの撮像素子で構成された医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図13】撮像装置が2つの撮像素子で構成されるとともに、カメラコントロールユニットがトラッキング処理部を備える医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図14】撮像装置が撮像素子とデプスセンサで構成された医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図15】撮像装置が撮像素子とデプスセンサで構成されるとともに、カメラコントロールユニットがトラッキング処理部を備える医療用観察システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図16】術野画像の中に複数の注目領域を設定した例を示す図である。
図17】術野画像の中から、所定の距離範囲の領域を強調表示させた表示形態の一例を示す図である。
図18】術野画像の中に設定する注目枠の表示形態の一例を示す図である。
図19】術野画像の中から反射光の大きい場所を検出する機能について説明する図である。
図20】本開示に係る技術が適用され得る顕微鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図21】顕微鏡手術システムを用いた手術の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施の形態)
[第1の実施の形態に係る医療用観察システムの構成]
図1は、本開示に係る医療用観察システムが適用され得る内視鏡手術システム5000の概略的な構成の一例を示す図である。図1では、術者(医師、執刀医)5061が、内視鏡手術システム5000を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に手術を行っている様子が図示されている。スコピスト5062は、内視鏡5001を把持して、患者5071の体腔内に挿入している。助手5063は、術具5017を把持して、患者5071の体腔内に挿入している。
【0010】
内視鏡手術では、腹壁を切って開腹する代わりに、トロッカ5025a~5025dと呼ばれる筒状の開孔器具が腹壁に複数穿刺される。そして、トロッカ5025a~5025dから、内視鏡5001の鏡筒5003や、その他の術具5017が患者5071の体腔内に挿入される。図1の例では、その他の術具5017として、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023が、患者5071の体腔内に挿入されている。気腹チューブ5019は、内視鏡5001による視野の確保及び術者5061の作業空間の確保の目的で、患者5071の体腔を膨らめるために、体腔内にガスを送り込む。エネルギー処置具5021は、高周波電流や超音波振動により、組織の切開及び剥離、又は血管の封止等を行う処置具である。また、図1には図示しないが、気腹チューブ5019及びエネルギー処置具5021は、非図示の制御装置と接続されており、術者5061等の指示を受けた術具5017が、所定の動作を行う。なお、図示する術具5017はあくまで一例であり、術具5017としては、例えば攝子、レトラクタ等、一般的に内視鏡下手術において用いられる各種の術具が用いられてよい。
【0011】
内視鏡5001によって撮影された患者5071の体腔内の術野の画像(以下、術野画像と呼ぶ)が、表示装置50に表示される。術者5061は、表示装置50に表示された術野画像をリアルタイムで見ながら、エネルギー処置具5021や鉗子5023を用いて、例えば患部を切除する等の処置を行う。また、スコピスト5062は、表示装置50に表示された術野画像をリアルタイムで見ながら、術野画像の中に患部が写るように、内視鏡5001の位置を調整する。なお、気腹チューブ5019、エネルギー処置具5021及び鉗子5023は、手術中は、術者5061又は助手5063等によって把持される。
【0012】
[内視鏡の概略構成]
内視鏡5001は、先端から所定の長さの領域が患者5071の体腔内に挿入される鏡筒5003と、鏡筒5003の基端に接続されるカメラヘッド5005と、から構成される。図1の例では、硬性の鏡筒5003を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡5001を図示しているが、内視鏡5001は、軟性の鏡筒5003を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0013】
鏡筒5003の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡5001には、図示しない光源装置が接続されており、当該光源装置によって生成された光が、鏡筒5003の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒5003の先端まで導光され、対物レンズを介して患者5071の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡5001は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0014】
カメラヘッド5005の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)12aに送信される。なお、カメラヘッド5005には、その光学系を適宜駆動させることにより、撮影倍率及び焦点距離を調整する機能が搭載される。
【0015】
また、例えば立体視(3D表示)等に対応するために、カメラヘッド5005には撮像素子が複数設けられてもよい。この場合、鏡筒5003の内部には、当該複数の撮像素子のそれぞれに観察光を導光するために、リレー光学系が複数系統設けられる。
【0016】
内視鏡手術システム5000は、ユーザである術者5061、スコピスト5062、又は助手5063から各種の情報入力や指示入力を受け付ける入力デバイスを備える。例えば、ユーザは、入力デバイスを介して、患者の身体情報や、手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を入力する。また、例えば、ユーザは、入力デバイスを介して、内視鏡5001による撮像条件(照射光の種類、撮影倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示、エネルギー処置具5021等の術具5017を駆動させる旨の指示等を入力する。
【0017】
入力デバイスの種類は限定されず、入力デバイスは各種の公知の入力デバイスであってよい。入力デバイスとしては、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、スイッチ及び/又はレバー等が適用され得る。図1は、スコピスト5062が、入力デバイスの一例であるフットスイッチ5057を用いて情報入力を行う例を示している。例えば、スコピスト5062は、フットスイッチ5057を介して、術野画像に中に注目領域の設定等を行う。詳しくは後述する。なお、入力デバイスとしてタッチパネルが用いられる場合には、当該タッチパネルは表示装置50の表示面上に設けられてもよい。
【0018】
[第1の実施の形態に係る医療用観察システムの構成の説明]
図2は、内視鏡手術に適用される医療用観察システム10aの機能構成を示す機能ブロック図である。医療用観察システム10aは、例えば、前記した内視鏡手術システム5000に適用されて、手術中に患者5071の体腔内に挿入された内視鏡5001によって、術野画像をモニタするシステムである。特に、医療用観察システム10aは、術野の3次元位置に基づいて、内視鏡5001の位置・姿勢によらずに、常に設定した注目領域を拡大した拡大術野画像を表示するシステムである。
【0019】
医療用観察システム10aは、撮像装置42aと、カメラコントロールユニット12aとを備える。撮像装置42aは、前記した内視鏡5001のカメラヘッド5005に実装されて、患者5071の体腔内の術野を撮像して術野画像を得る。カメラコントロールユニット12aは、撮像装置42aが撮像を行う際に、術野画像を生成するとともに、術野の3次元情報を生成する。
【0020】
撮像装置42aは、光学系43と、撮像素子44aを備える。光学系43は、例えば、オートフォーカス機能及び画角調整機能(ズーム調整機能)を備えたレンズである。撮像素子44aは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子(光電変換素子)で構成されて、術野からの光を電気信号に変換する。
【0021】
カメラコントロールユニット12aは、3次元情報生成部14と、現像処理部18と、注目領域設定部20と、検波領域推定部22と、3次元地図データ格納部24と、パラメータ制御部26と、表示制御部40とを備える。カメラコントロールユニット12aは、内視鏡の位置・姿勢によらずに、常に注目領域が拡大された拡大術野画像を生成して、表示装置50に表示する。なお、カメラコントロールユニット12aは、本開示における医療用観察装置の一例である。
【0022】
3次元情報生成部14は、撮像素子44aが撮像した、例えば体腔内の術野画像の3次元位置を算出する。3次元情報生成部14は、地図生成部15と、自己位置推定部16とを備える。地図生成部15は、術野の3次元位置、及び後述する注目領域の3次元位置を示す3次元地図(以下、単に地図と呼ぶ)を生成する。地図の生成方法は後述する。自己位置推定部16は、生成された地図と、所定のタイミングに撮像された術野画像とに基づいて、当該所定のタイミングにおける内視鏡5001の自己位置及び姿勢を推定する。
【0023】
現像処理部18は、撮像データを視認可能な画像に変換する。現像処理部18は、撮像素子44aが出力したRAWデータに対して、現像処理(デモザイク処理)等の、画像を表示するための各種の画像処理を施す。より具体的には、現像処理部18は、RAWデータに対して、後述するAE制御部26dが指示したデジタルゲインやガンマカーブを適用することによって、RAWデータを可視可能な画像データとする。
【0024】
注目領域設定部20は、撮像素子44aが撮像して現像処理部18が視認可能に変換した術野画像の中から、例えば、手術によって摘出する腫瘍等の注目したい領域を設定する。より具体的には、医療用観察システム10aの操作者が、液晶モニタ等の表示装置50で術野画像をモニタしながら、術野画像の中から、少なくとも一つの注目領域を設定する。注目領域の具体的な設定方法は後述する。なお、注目領域設定部20は、本開示における設定部の一例である。
【0025】
検波領域推定部22は、任意の時刻における術野画像の中の注目領域に対応する相対位置を検波領域として推定する。ここで、相対位置とは、所定のタイミングのフレームにて設定した注目領域の物理的な位置に対応する位置であり、例えば、異なるタイミングのフレームにおいて、前記物理的な位置に対応する被写体領域である。なお、検波領域推定部22は、本開示における推定部の一例である。
【0026】
3次元地図データ格納部24は、前記した地図生成部15が生成した術野の3次元地図を格納する。なお、3次元地図データ格納部24に格納される3次元地図は、時間の経過とともに更新される。
【0027】
パラメータ制御部26は、検波領域推定部22が推定した注目領域に対応する相対位置における術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、撮像装置42a及び光源装置60の制御パラメータを調整する。なお、パラメータ制御部26は、本開示における調整部の一例である。ここで、パラメータ制御部26が調整する制御パラメータとは、光学パラメータと、撮像パラメータと、現像パラメータと、発光パラメータである。
【0028】
光学パラメータは、撮像装置42aの光学系の状態を規定するパラメータである。具体的には、光学系43のフォーカス位置、画角、絞り値等である。
【0029】
撮像パラメータは、撮像装置42aの露出条件を規定するパラメータである。具体的には、撮像素子44aを露光させる際のシャッター速度、ゲイン値等である。
【0030】
現像パラメータは、撮像装置42aの現像条件を規定するパラメータである。具体的には、現像処理部18の現像条件であるデジタルゲイン、ガンマカーブ等である。
【0031】
発光パラメータは、撮像装置42aの撮像範囲に照明光を照射する光源装置60の発光状態(発光量、発光時間)を規定するパラメータである。なお、光源装置60は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。そして、発光パラメータとは、具体的には、波長、光量、発光タイミング等である。
【0032】
パラメータ制御部26は、これらのパラメータを制御することによって、撮像装置42aのAF機能、AE機能を実現する。AF機能とは、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y)のフォーカス位置を調整する機能である。AE機能とは、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y)の露出を調整する機能である。
【0033】
パラメータ制御部26は、より詳細には、AF検波部26aと、レンズ制御部26bと、AE検波部26cと、AE制御部26dと、光源制御部26eを備える。
【0034】
AF検波部26aは、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22が推定した注目領域に対応する相対位置における領域の画素値の分布から、注目領域に対する合焦状態を示す情報(検波値)を取り出す。合焦状態を示す情報とは、例えば、注目枠110の内部における明暗差、すなわちコントラストを表す情報やコントラストを所定の基準で評価した評価値、撮像素子に位相差が生じる画素を含む場合は位相情報等である。
【0035】
レンズ制御部26bは、AF検波部26aが取り出した検波値に基づいて、注目枠110の位置にフォーカスが合うようにフォーカスレンズ位置やレンズ移動量などを制御する制御データを生成する。また、レンズ制御部26bは、注目枠110を設定した領域までの距離に基づいて、撮像装置42aが備えるレンズの画角を制御する制御データを生成する。そして、レンズ制御部26bは、生成した制御データを光学系43に伝達する。
【0036】
AE検波部26cは、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22が推定した注目領域の推定位置に対応する領域の画素値の分布(ヒストグラム)から、露出調整に必要な画素情報(検波値)を取り出す。注目領域の露出調整に必要な画素情報とは、例えば、注目枠110の内部における画素値の分布から算出される、画素値の最小値と最大値との差(明暗差)、画素値の平均値、画素値の分散等の統計量である。
【0037】
AE制御部26dは、AE検波部26cが取り出した検波値に基づいて、術者5061が見やすい術野画像K(x,y)が撮像されるように、デジタルゲイン・ガンマカーブを含む制御パラメータを算出する。そして、AE制御部26dは、算出したデジタルゲイン・ガンマカーブを含む制御パラメータを、現像処理部18に伝達する。
【0038】
デジタルゲインは、撮像素子44aが出力したRAWデータを、現像処理部18が備える非図示のAD変換器でデジタル信号に変換した後で増幅する際のゲインである。デジタルゲインは、現像された画像の後処理を行う際に用いられて、周辺減光補正やホワイトバランスの調整、露出調整等に利用される。
【0039】
ガンマカーブは、術野画像K(x,y)を表示装置50に表示した際に、適正な明るさで表示されるように、画素値に補正を掛ける際の補正特性を示す。一般に、表示装置50に表示する画像の画素値と、画面の明るさとは比例関係にない。したがって、画素値をそのまま表示装置50に表示すると、明るさのバランスが崩れてしまう場合がある。そのため、一般に、画素値にガンマ補正をかけることによって、当該ガンマ補正をかけた画素値と画面の明るさとが比例関係になるように前処理を行う。ガンマカーブは、このガンマ補正を行う際の補正特性を示すものである。
【0040】
AE制御部26dは、さらに、AE検波部26cが取り出した検波値に基づいて、術者5061が見やすい術野画像K(x,y)が撮像されるように、アナログゲイン・シャッター速度を含む制御パラメータを算出する。そして、AE制御部26dは、算出したアナログゲイン・シャッター速度を含む制御パラメータを、光学系43に伝達する。さらに、AE制御部26dは、AE検波部26cが算出した情報に基づいて、術者5061が見やすい術野画像K(x,y)が撮像されるように、光源装置60を制御するための光量情報を算出する。そして、AE制御部26dは、算出した光量情報を光源制御部26eに伝達する。
【0041】
アナログゲインは、撮像素子44aが出力するアナログ信号であるRAWデータを増幅する際のゲインである。アナログゲインは、現像処理を行う前に用いられて、ISO感度の調整等に利用される。
【0042】
また、AE制御部26dは、AE検波部26cが取り出した検波値に基づいて、術者5061が見やすい術野画像K(x,y)が撮像されるように、光源装置60を発光させる際の光量情報を算出する。そして、AE制御部26dは、算出した光量情報を含む制御パラメータを、光源制御部26eに伝達する。
【0043】
光量情報は、例えば、光源装置60に発光させる光量を示す情報である。
【0044】
なお、AE制御部26dは、注目領域の露出調整だけではなく、注目領域の組織が観察しやすいように、現像処理部18にホワイトバランスや色補正、ガンマカーブを含むパラメータを伝達してもよい。
【0045】
光源制御部26eは、AE制御部26dが算出した光量情報に基づいて、光源装置60を実際に発光させる駆動信号である光源制御情報を生成する。そして、光源制御部26eは、生成した光源制御情報を光源装置60に伝達する。なお、光源制御部26eは、AE検波部26cが取り出した検波値に基づいて、制御パラメータとして、光源装置60の発光色(発光波長)を制御することによって、術野画像K(x,y)の中の組織の視認性を向上させるようにしてもよい。
【0046】
撮像装置42aは、パラメータ制御部26が調整した光源制御情報によって駆動された光源装置60が照明を行ったタイミングで、パラメータ制御部26が調整した撮像パラメータによって撮像を行う。そして、現像処理部18は、撮像装置42aが撮像した画像を、パラメータ制御部26が調整した現像パラメータによって現像処理する。そして、表示制御部40は、現像処理部18が現像処理した画像を表示装置50に出力する表示制御を行う。なお、表示装置50としては、液晶ディスプレイ装置、又はEL(Electro Luminescence)ディスプレイ装置等、各種の公知の表示装置が適用可能である。
【0047】
なお、パラメータ制御部26は、前記したようにAF制御、AE制御、光源制御の全てを行ってもよいし、そのうちの一部のみを行う構成としてもよい。
【0048】
[3次元地図の生成方法の説明]
次に、地図生成部15が、術野の3次元地図を生成する方法について説明する。図3は、地図生成部15が術野の3次元地図を生成する方法を説明する図である。
【0049】
図3は、空間上の点を基準位置Oとする3次元空間XYZにおいて、撮像装置42aで静止した物体100を観測している様子を示している。そして、撮像装置42aは、時刻tにおいて術野画像K(x,y,t)を撮像して、時刻t+Δtにおいて術野画像K(x,y,t+Δt)を撮像したものとする。なお、時間間隔Δtは、例えば33msec等の所定のタイミングに設定される。また、基準位置Oは任意に設定してよいが、例えば、時間とともに移動しない位置に設定するのが望ましい。
【0050】
地図生成部15は、まず、術野画像K(x,y,t)及び術野画像K(x,y,t+Δt)の中から、特徴となる点(画素)である特徴点を検出する。特徴点とは、例えば、隣接する画素との間で、画素値が所定値以上異なる画素である。なお、特徴点は、時間が経過しても安定して存在する点であることが望ましく、例えば、画像の中でエッジを構成する画素がよく利用される。ここで、以下の説明を簡単にするため、術野画像K(x,y,t)の中から、物体の頂点である特徴点A1,B1,C1,D1,E1,F1,H1が検出されたとする。
【0051】
次に、地図生成部15は、術野画像K(x,y,t+Δt)の中から、特徴点A1,B1,C1,D1,E1,F1,H1にそれぞれ対応する点を探索する。具体的には、特徴点A1の画素値、特徴点A1の近傍の画素値等に基づいて、同様の特徴を有する点を、術野画像K(x,y,t+Δt)の中から探索する。この探索処理によって、術野画像K(x,y,t+Δt)の中から、特徴点A1,B1,C1,D1,E1,F1,H1に対応する特徴点A2,B2,C2,D2,E2,F2,H2が、それぞれ検出されたとする。
【0052】
続いて、地図生成部15は、3次元測量の原理に基づいて、例えば、特徴点A1の術野画像K(x,y,t+Δt)上の2次元座標と、特徴点A2の術野画像K(x,y,t+Δt)上の2次元座標とから、空間上の点Aの3次元座標(X,Y,Z)を算出する。このようにして算出された3次元座標(X,Y,Z)の集合として、物体100が置かれた空間の3次元地図D(X,Y,Z)が生成される。生成された3次元地図D(X,Y,Z)は、3次元地図データ格納部24に記憶される。なお、3次元地図D(X,Y,Z)は、本開示における3次元情報の一例である。
【0053】
なお、時間間隔Δtの間に、撮像装置42aの位置と姿勢が変化しているため、地図生成部15は、撮像装置42aの位置と姿勢も同時に推定する。数学的には、物体100を構成する各特徴点の3次元座標と、撮像装置42aの位置と、姿勢とを未知数として、術野画像K(x,y,t)と術野画像K(x,y,t+Δt)でそれぞれ観測された特徴点の2次元座標に基づいて連立方程式を立てる。地図生成部15は、この連立方程式を解くことによって、物体100を構成する各特徴点の3次元座標と、撮像装置42aの位置及び姿勢とを推定する。
【0054】
このように、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y,t)の中から複数の特徴点を検出して、術野画像K(x,y,t+Δt)の中から、それらの特徴点に対応する点を検出することによって、撮像装置42aが観測している環境の3次元地図D(X,Y,Z)を生成することができる。さらに、撮像装置42aの位置と姿勢、すなわち自己位置を推定することができる。また、前記した処理を繰り返して実行することによって、例えば、当初は見えなかった特徴点が見えるようになることによって、3次元地図D(X,Y,Z)を拡充することができる。また、処理を繰り返すことによって、同じ特徴点の3次元位置を繰り返し算出することができるため、例えば平均化処理を行うことによって、算出誤差を低減することができる。このように、3次元地図データ格納部24に記憶された3次元地図D(X,Y,Z)は、随時更新される。なお、環境の3次元地図を作成するとともに、撮像装置42aの自己位置を特定する技術は、一般にSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術と呼ばれている。
【0055】
単眼カメラを用いたSLAM技術の基本的な原理は、例えば「Andrew J.Davison, “Real-Time Simultaneous Localization and Mapping with a Single Camera”, Proceedings of the 9th IEEE International Conference on Computer Vision Volume 2, 2003, pp.1403-1410」において説明されている。また、被写体のカメラ画像を用いて被写体の3次元位置を推定するSLAM技術は、特にVisual SLAMとも称される。
【0056】
[注目領域の設定方法の説明]
注目領域は、注目領域設定部20の作用によって設定する。具体的には、注目領域設定部20は、注目領域を示す注目枠を術野画像に重畳して表示させて、当該注目枠の大きさ・形状・位置を指定することによって行う。
【0057】
図4は、注目枠の設定方法の一例を示す図である。図4Aは、内視鏡5001で観測された術野画像K(x,y)の一例を示す図である。なお、以下の説明において、術野画像を撮像した時刻の情報は省略して、術野画像は単にK(x,y)と記載して説明する。図4Bは、注目領域に設定したい患部が術野画像K(x,y)の中央に写るように、内視鏡5001の向きを調整するとともに、注目領域設定部20が、注目領域を示す注目枠110を設定した状態の一例を示す図である。図4Cは、カメラコントロールユニット12aが、設定された注目領域にAF/AEを調整し続ける制御を行った術野画像K(x,y)の一例を示す図である。
【0058】
スコピスト5062は、例えば、図4Aに示す術野画像K(x,y)を見ながら、患部等の拡大したい特定位置が術野画像K(x,y)の中央(所定の位置の一例)に写るように、内視鏡5001を移動させる。
【0059】
図4Bに示すように、注目したい特定位置が術野画像K(x,y)の中央(所定の位置の一例)に写ったら、スコピスト5062は、フットスイッチ5057(図1)を踏んで、注目領域設定部20に対して、注目領域の設定を指示する。このとき、フットスイッチ5057が踏まれたことをトリガとして注目領域の設定を指示する設定信号が発生する。そして、注目領域設定部20は、設定信号が入力されたことを条件として、図4Bに示すように、術野画像K(x,y)の中央に、予め決められたサイズの注目枠110を表示することによって、注目領域を設定する。なお、注目枠110のサイズ、形状は任意に設定してよい。
【0060】
続いて、パラメータ制御部26は、図4Bで設定した注目枠110の内部を検波領域として、当該検波領域の内部で算出した検波値に基づいて、撮像装置42a、カメラコントロールユニット12a及び光源装置60の制御パラメータを算出する。続いて、パラメータ制御部26は、算出した制御パラメータで撮像装置42a、カメラコントロールユニット12a及び光源装置60を制御して、術野画像K(x,y)を撮像する。そして、表示制御部40は、図4Cに示すように、撮像された術野画像K(x,y)を表示装置50に出力する。このとき、内視鏡5001の位置と姿勢は変化するため、術野画像K(x,y)における注目枠110の位置は変化するが、注目枠110の内部は、常にフォーカスが合うとともに、観察しやすい明るさで表示される。術者5061は、図4Cに示す術野画像K(x,y)を観測しながら、手術を行う。
【0061】
なお、注目領域設定部20が注目領域を設定させる方法は、前記した方法に限定されるものではない。例えば、表示装置50の画面に積層させてタッチパネルを設置して、当該タッチパネルの操作を検出することによって、注目領域の位置や形状を設定してもよい。また、マウスによって、注目領域の位置や形状を設定してもよい。
【0062】
図5は、注目枠の設定方法の別の一例を示す図である。図5Aは、内視鏡5001で観測された術野画像K(x,y)の一例を示す図である。スコピスト5062は、表示装置50に表示された術野画像K(x,y)を見ながら、注目したい領域の位置を、タッチパネルやマウス等の入力デバイスによって指定する。注目領域設定部20は、術野画像K(x,y)に重畳させて、指定された領域を示す注目領域指示情報105を出力する。
【0063】
続いて、注目領域設定部20は、入力された注目領域指示情報105の位置に、注目枠110を設定する。注目領域設定部20は、術野画像K(x,y)に重畳させて、図5Bに示すように、設定された注目枠110を出力する。なお、注目枠110は、予め設定された大きさ、形状の枠であってもよいし、注目領域指示情報105を模した閉領域であってもよい。
【0064】
その後、医療用観察システム10aは、内視鏡5001の位置と姿勢に関わらず、図5Cに示すように、設定された注目枠110にフォーカスと露出を合わせ続ける術野画像K(x,y)を生成して出力する。
【0065】
なお、注目領域設定部20は、前記した3次元地図D(X,Y,Z)を利用して、3次元空間内での距離や撮像系からの距離が一定範囲にある等の条件を加味して注目領域を設定してもよい。また、注目枠110の表示形態は、図4図5に示したものに限定される訳ではない。注目枠110の表示形態のバリエーションについては後述する(図16参照)。さらに、注目領域設定部20は、ジェスチャー等の操作に基づいて、注目領域の位置や形状を設定してもよい。
【0066】
[注目領域に対応する相対位置の推定方法の説明]
その後、スコピスト5062が内視鏡5001を移動させると、検波領域推定部22が、術野画像K(x,y)の中から注目領域に対応する相対位置を推定する。そして、パラメータ制御部26は、推定した注目領域に対応する相対位置に対して、前記したパラメータ調整を行う。表示制御部40は、調整されたパラメータによって撮像された術野画像K(x,y)を表示装置50に出力する。このような処理を継続することによって、医療用観察システム10aは、表示装置50に術野画像K(x,y)を表示させ続ける。
【0067】
ここで、内視鏡5001の位置や姿勢が変化した場合に、検波領域推定部22が、術野画像K(x,y)の中から、検波すべき、注目領域に対応する相対位置を推定する方法について説明する。
【0068】
検波領域推定部22は、例えば、時刻tにおける内視鏡5001の位置及び姿勢と、所定のタイミング、例えば時刻tとは異なる時刻t+Δtにおける内視鏡5001の位置及び姿勢と、3次元地図D(X,Y,Z)とに基づいて、時刻tにおける注目枠110が、時刻t+Δtにおいて、術野画像K(x,y、t+Δt)のどの位置に観測されるか、すなわち、注目枠110に対応する相対位置を推定する。
【0069】
具体的には、検波領域推定部22は、内視鏡5001の位置及び姿勢に基づいて、設定した注目枠110の近傍の複数の特徴点が、時刻tから時刻t+Δtの間にどのように移動したかを特定する。そして、検波領域推定部22は、注目枠110に係る情報、具体的には、特定した特徴点の移動状態に基づいて、検波すべき、注目枠110に対応する相対位置を推定する。
【0070】
なお、注目領域として設定した領域は、一般に、手術の対象となる患部であることが多い。患部は、手術によって切除されたり、出血したり、大きく変形したりする可能性が高い。したがって、仮に注目領域の内部に特徴点を設定しても、時間の経過とともに、その特徴点が消失する可能性がある。したがって、注目領域を設定した後の術野画像K(x,y)からは、注目領域の周囲を除いた領域の中から特徴点を抽出するのが望ましい。
【0071】
図6は、特徴点を抽出する領域を設定した例を示す画像である。前記した地図生成部15は、図6に示すように、注目枠110を設定した画面の中央部を避けて、画面の周囲にマスク120を設定する。そして、地図生成部15は、設定したマスク120の内部のみで特徴点を抽出する。設定されたマスク120の領域は、注目領域の位置を示す注目枠110から離れているため、手術中の変形が少ないと想定される。したがって、マスク120の内部は、時間の経過に関わらずに、安定して特徴点を検出することができる。そして、特徴点が安定して抽出できるため、3次元地図D(X,Y,Z)や内視鏡5001の位置及び姿勢の推定精度の安定性が向上する。
【0072】
なお、術野画像K(x,y)において、マスク120の内部に、鉗子5023等の手術器具又は術者の指等の術野に関係しない物体が写り込む場合がある。これらの物体を構成する特徴点は、時間の経過とともに不規則に移動する可能性が高い。すなわち、これらの物体を構成する特徴点は、術野画像K(x,y)の中に安定して存在する保証がないため、AF/AEに悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、これらの物体を除去した上で特徴点を抽出するのが望ましい。そのため、地図生成部15は、術野画像K(x,y)の中から、予め登録した、手術器具や指等の物体を除去する機能を備えてもよい。なお、この場合、地図生成部15は、本開示おける検出部の一例である。
【0073】
術野画像K(x,y)の中から登録した物体を検出する処理は、例えば、予め登録した画像をテンプレートとして、当該テンプレートとマッチする領域を術野画像K(x,y)の中から探索することによって行えばよい。
【0074】
[第1の実施の形態に係る医療用観察システムが出力する画像の説明]
図7は、医療用観察システム10aが出力する術野画像K(x,y)の一例を示す図である。術野画像K(x,y)は、図7Aに示すように、フォーカスが合っていない、いわゆる非合焦状態となる場合がある。さらに、術野画像K(x,y)は、図7Bに示す露出不足(露出アンダー)状態、又は露出過多(露出オーバ)状態となる場合がある。医療用観察システム10aは、術野画像K(x,y)の中に注目領域を設定して、当該注目領域に対してフォーカスと露出を調整し続けるように撮像パラメータを調整する。その結果、図7Cに示すように、注目枠110の内部にフォーカスが合って、尚且つ注目枠110の内部が適正露出となる術野画像K(x,y)が生成されて表示される。
【0075】
そして、医療用観察システム10aは、時間とともに移動する、注目枠110が示す領域の位置を推定して、推定された注目枠110が示す領域に対して、フォーカスと露出を調整し続ける。したがって、図7Dに示すように、内視鏡5001が位置や姿勢が変化することによって、術野の表示位置が移動した場合であっても、術者5061やスコピスト5062等は、設定された注目領域を、常に見やすい状態で観察することができ、手術を進行させやすくすることができる。従来は、術野画像という2次元情報のみを参照していたため、術野画像において手術器具や術者の手等の術部以外の物体が術野に重なって映り込んだときなどに術部を見失ってしまい、精度良く術部に合わせて撮像パラメータを調整し続けることが難しかった。また、手術現場では術者やスコピストが撮像装置を頻繁に動かすため、2次元情報のみでは術部を見失いがちであった。これに対して、本開示では、3次元情報に基づいて注目領域を設定するため、精度良く注目領域に合わせて撮像パラメータを調整し続けることができる。
【0076】
[撮影倍率変更機能の説明]
図8は、医療用観察システム10aが、術野までの距離に応じて観察時の撮影倍率を変更する機能について説明する図である。医療用観察システム10aは、3次元地図D(X,Y,Z)から得られる被写体(注目領域)までの距離の情報を用いて、注目領域の大きさ、すなわち撮影倍率を調整し、目的とする被写体が常に同じ大きさで観察できるようにすることができる。
【0077】
すなわち、レンズ制御部26bは、AF検波部26aが取り出した合焦状態を示す情報に基づいて算出した注目領域までの距離と、前回撮像した際の注目領域までの距離との差分値を算出する。次に、レンズ制御部26bは、算出された距離の差分値に基づいて、注目領域の倍率の変化を求める。そして、レンズ制御部26bは、光学系43に対して、ズームレンズの位置を制御させることによって、注目領域が同じ大きさで観察されるように、撮影倍率を変更させる。
【0078】
例えば、図8Aに示すように、トロッカ5025aを介して患者5071の体腔内に挿入された内視鏡5001が、術野画像Ka(x,y)を撮像したとする。そして、その後、内視鏡の位置と姿勢が変化して、図8Bに示す術野画像Kb(x,y)が撮像されたとする。このとき、内視鏡5001の先端から術野までの距離が大きくなっている、すなわと、撮像範囲Z1が撮像範囲Z2に変化しているため、術野はより小さく(注目枠110y)観察される。このとき、レンズ制御部26bは、注目領域までの距離が大きくなったことを検出できるため、レンズ制御部26bは、光学系43に対して、ズームレンズの位置を制御させることによって、撮影倍率を高める制御を行わせる。
【0079】
すなわち、現像処理部18は、術野画像Kb(x,y)の撮影倍率を高めることによって、図8Cに示す術野画像Kc(x,y)を生成する。また、注目領域設定部20(設定部)は、注目枠110yを術野画像Kc(x,y)と同じ撮影倍率で拡大した注目枠110zを設定する。そして、表示制御部40は、術野画像Kc(x,y)に注目枠110zを重畳して表示装置50に表示する。これによって、内視鏡5001の先端から術野までの距離が大きくなった場合であっても、術野画像Ka(x,y)において観察される注目領域(注目枠110x)と同じ大きさの注目領域として、術野を観察し続けることができる。
【0080】
なお、パラメータ制御部26は、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域に対応する相対位置と、パラメータ制御部26が調整したフォーカス位置(注目領域の3次元位置)と、に応じて、撮像装置42aが術野画像K(x,y)を撮像する際の制御パラメータの初期値を設定するようにしてもよい。
【0081】
[第1の実施の形態に係る医療用観察システムが行う処理の流れの説明]
次に、第1の実施の形態の医療用観察システム10aが行う処理の流れを説明する。図9は、医療用観察システム10aが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0082】
以下、図8のフローチャートについて説明する。まず、撮像素子44aは、術野画像K(x,y)を撮像する(ステップS10)。
【0083】
地図生成部15は、撮像した術野画像K(x,y)の中から特徴点を抽出する(ステップS11)。
【0084】
さらに、撮像素子44aは、Δt秒後の術野画像K(x,y)を撮像する(ステップS12)。
【0085】
地図生成部15は、撮像したΔt秒後の術野画像K(x,y)の中から特徴点を抽出する(ステップS13)。
【0086】
地図生成部15は、特徴点の3次元位置を算出することによって、3次元地図D(X,Y,Z)を生成する(ステップS14)。
【0087】
自己位置推定部16は、内視鏡5001の位置及び姿勢を推定する(ステップS15)。
【0088】
注目領域設定部20は、術野画像K(x,y)の中に注目領域を設定する(ステップS16)。
【0089】
パラメータ制御部26は、術野画像K(x,y)の中の、注目領域の位置に対応する領域の画素値に基づいて、撮像パラメータ(光学パラメータ、撮像パラメータ、現像パラメータ、発光パラメータ)を調整する(ステップS17)。
【0090】
撮像素子44aは、ステップS17で調整した撮像パラメータによって、Δt秒後の術野画像K(x,y)を撮像する(ステップS18)。
【0091】
表示制御部40は、撮像された術野画像K(x,y)を表示装置50に出力する(ステップS19)。
【0092】
表示制御部40は、処理の終了指示があるかを判定する(ステップS20)。終了指示があると判定される(ステップS20:Yes)と、医療用観察システム10aは、図6の処理を終了する。一方、終了指示があると判定されない(ステップS20:No)と、ステップS21に移行する。なお、処理の終了指示は、例えば、カメラコントロールユニット12aの電源スイッチ(非図示)をOFFにする等の操作を検出することによって行われる。
【0093】
ステップS20においてNoと判定されると、地図生成部15は、撮像されたΔt秒後の術野画像K(x,y)の中から特徴点を抽出する(ステップS21)。
【0094】
地図生成部15は、特徴点の3次元位置を算出することによって、ステップS14で生成した3次元地図D(X,Y,Z)を更新する(ステップS22)。
【0095】
自己位置推定部16は、内視鏡5001の位置及び姿勢を推定する(ステップS23)。
【0096】
検波領域推定部22は、ステップS18で撮像したΔt秒後の術野画像K(x,y)における注目領域(検波領域)の位置を推定する(ステップS24)。その後、ステップS17に戻る。
【0097】
[第1の実施の形態の作用効果の説明]
以上説明したように、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、3次元情報生成部14は、撮像装置42aが撮像した術野画像K(x,y)から、術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)を生成する。そして、注目領域設定部20(設定部)は、所定のタイミングに撮像した術野画像K(x,y)の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する。検波領域推定部22(推定部)は、3次元地図D(X,Y,Z)と注目領域設定部20が設定した注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像K(x,y)の中から、注目領域に対応する相対位置を推定する。そして、パラメータ制御部26(調整部)は、検波領域推定部22が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像K(x,y)の3次元情報と画素値とに基づいて、撮像装置42a及び撮像装置42aの周辺機器である光源装置60の撮像パラメータを調整して術野画像K(x,y)を撮像させる。そして、表示制御部40は、撮像された術野画像K(x,y)を表示する。したがって、撮像装置42aが実装された内視鏡5001が位置や姿勢を変化させた場合であっても、AF機能やAE機能等にかかる撮像パラメータの調整を、例えば手術箇所等の注目領域に合わせて行い続けることができる。
【0098】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、撮像装置42aは、1つの撮像素子44aを備えて、3次元情報生成部14は、撮像装置42aが異なる時刻に撮像した少なくとも2枚の術野画像K(x,y)に基づいて、術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)を生成する。したがって、単眼カメラのみという簡易な構成の撮像装置42aを用いて、手術箇所等の注目領域にフォーカスが合致して、尚且つ注目領域が見やすい明るさで撮像された術野画像K(x,y)を観察し続けることができる。
【0099】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、3次元情報生成部14は、術野画像K(x,y)の全体又は任意の範囲から抽出した特徴点の3次元情報を生成する。したがって、注目領域の設定前には術野画像K(x,y)の全体から特徴点を抽出することによって、できるだけ多くの特徴点の3次元位置に基づく3次元地図D(X,Y,Z)を生成することができる。そして、注目領域の設定後には、手術によって変動が大きい、注目領域及びその近傍の領域から特徴点を抽出しないことによって、時間の経過とともに変動の少ない、安定した特徴点の3次元位置に基づいて、3次元地図D(X,Y,Z)を更新することができる。
【0100】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、制御パラメータとして、撮像装置42aの光学系の状態を規定する光学パラメータを、術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域の推定位置に対応する領域の画素値に応じて調整する。したがって、注目領域の位置が移動した場合であっても、当該注目領域にフォーカスが合った術野画像K(x,y)を得ることができる。
【0101】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、制御パラメータとして、撮像装置42aの露出条件を規定する撮像パラメータを、術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域の推定位置に対応する領域の画素値に応じて調整する。したがって、注目領域の位置が移動した場合であっても、当該注目領域が見やすくなるように露光された術野画像K(x,y)を得ることができる。
【0102】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、制御パラメータとして、撮像装置42aの現像条件を規定する現像パラメータを、術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域の推定位置に対応する領域の画素値に応じて調整する。したがって、注目領域の位置が移動した場合であっても、当該注目領域が見やすくなるように露出補正された術野画像K(x,y)を得ることができる。
【0103】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、制御パラメータとして、撮像装置42aの撮像範囲に照明光を照射する光源装置60の発光状態を規定する発光パラメータを、術野画像K(x,y)の中の、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域の推定位置に対応する領域の画素値に応じて調整する。したがって、注目領域の位置が移動した場合であっても、当該注目領域が見やすくなるように照明された術野画像K(x,y)を得ることができる。
【0104】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、地図生成部15(検出部)は、術野画像K(x,y)の中から、予め登録された物体を検出する。そして、注目領域設定部20(設定部)は、術野画像K(x,y)のうち、地図生成部15(検出部)が検出した物体を除いた領域の中から、特徴点を抽出する。したがって、鉗子5023や指等の物体が有する特徴点が抽出されないため、AF/AEに悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0105】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域に対応する相対位置と、パラメータ制御部26が調整したフォーカス位置(注目領域の3次元位置)と、に基づく注目領域の3次元位置に応じて、撮像装置42aが撮像する術野画像K(x,y)の撮影倍率を変更する。そして、注目領域設定部20(設定部)は、前記撮影倍率に応じて、注目領域の大きさを変化させる。したがって、内視鏡5001の位置や姿勢が変化した場合であっても、術野画像K(x,y)の注目領域を同じ大きさで観察し続けることができる。
【0106】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、パラメータ制御部26(調整部)は、検波領域推定部22(推定部)が推定した注目領域に対応する相対位置と、パラメータ制御部26が調整したフォーカス位置(注目領域の3次元位置)と、に応じて、撮像装置42aが術野画像K(x,y)を撮像する際の制御パラメータの初期値を設定する。したがって、内視鏡5001の位置や姿勢が変化した場合であっても、術野画像K(x,y)の注目領域を撮像する際の制御パラメータの調整を迅速に行うことができる。
【0107】
また、第1の実施の形態の医療用観察システム10aによると、撮像装置42aは内視鏡5001に実装される。したがって、内視鏡5001を利用した手術等を行う際に、患部にフォーカスや露出を調整し続けることができる。
【0108】
また、第1の実施の形態のカメラコントロールユニット12a(医療用観察装置)によると、異なる位置から術野を撮像した少なくとも2枚の術野画像K(x,y)から、3次元情報生成部14が術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)を生成する。そして、注目領域設定部20(設定部)が、所定のタイミングに撮像した術野画像K(x,y)の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する。検波領域推定部22(推定部)は、3次元地図D(X,Y,Z)と注目領域設定部20が設定した注目領域の位置とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像K(x,y)の中から、注目領域に対応する相対位置を推定する。そして、パラメータ制御部26(調整部)が、3次元地図D(X,Y,Z)と注目領域の相対位置とに基づいて、撮像装置42a及び撮像装置42aの周辺機器である光源装置60の撮像パラメータを調整して術野画像K(x,y)を撮像し、表示制御部40が、撮像された術野画像K(x,y)を表示する。したがって、撮像装置42aが実装された内視鏡5001が移動した場合であっても、AF機能やAE機能等にかかる撮像パラメータの調整を、例えば手術箇所等の注目領域に合わせて行い続けることができる。
【0109】
なお、医療用観察システム10aにおいて、撮像装置42aを内蔵する内視鏡5001が、ジャイロセンサ等の加速度センサを実装していてもよい。加速度センサの出力によって、内視鏡5001の位置と姿勢を計測することができるため、撮像装置42aが異なる時刻に2枚の画像を撮像することなく、内視鏡5001の位置と姿勢を計測することができ、これによって、注目領域の位置を推定することができる。
【0110】
(第2の実施の形態)
医療用観察システム10aの構成は、第1の実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、様々な変形例を実現することができる。以下、医療用観察システムの別の実施の形態について、順を追って説明する。
【0111】
第1の実施の形態において、医療用観察システム10aは、撮像装置42aが1つの撮像素子44aを有するものとして説明した。しかしながら、撮像装置の構成は、これに限定されるものではない。
【0112】
図10は、撮像装置42bが像面位相差センサ46を備える撮像素子44bで構成された医療用観察システム10bの概略的な構成の一例を示す図である。なお、図10は、図2を一部省略して描いており、特に断りのない限り、省略された箇所は図2と同じ構成を有している。
【0113】
像面位相差センサ46は、撮像素子44bの中に、測距を行う画素を離散配置した構成を有している。図10のように構成された医療用観察システム10bを用いることによって、地図生成部15は、像面位相差センサ46が出力する像面位相差情報から、撮像した物体100までの深度情報(距離情報)を取り出すことができる。したがって、SLAM技術を有効に活用することができる。なお、像面位相差センサ46は、撮像した1枚の画像のみから深度情報を得ることができる。
【0114】
図11は、像面位相差センサを利用する場合の術野画像K(x,y)の表示形態の一例を示す図である。図11Aに示すように、術野画像K(x,y)の注目領域には、注目枠110が重畳表示されている。このとき、像面位相差センサ46は、注目枠110の内部において術野までの測距を行う。測距結果は、図11Bに示すように、合焦位置を示す複数のインジケータ112によって表示される。
【0115】
このように、第2の実施の形態によると、撮像した1枚の術野画像K(x,y)から深度情報を得ることができるため、物体が動いている場合であっても、当該物体の3次元位置を高精度に計測することによって、AF/AEの制御を精度高く行うことができる。
【0116】
(第3の実施の形態)
図12は、撮像装置42cが2つの撮像素子44c、44dで構成された医療用観察システム10cの概略的な構成の一例を示す図である。なお、2つの撮像素子44c、44dは、予め決められた相対関係を保った状態で配置されて、患部の異なる場所を、一部が重複するように撮像する。より具体的には、撮像素子44c、44dは、立体視に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得する。なお、図12は、図2を一部省略して描いており、特に断りのない限り、省略された箇所は図2と同じ構成を有している。
【0117】
また、医療用観察システム10cにおいて、カメラコントロールユニット12bは、図2で説明した構成に加えて、深度情報生成部30を備える。深度情報生成部30は、2つの撮像素子44c、44dでそれぞれ撮像された2枚の術野画像のマッチングを行って、深度情報を生成する。
【0118】
図12のように構成された医療用観察システム10cを用いることによって、地図生成部15は、深度情報生成部30が生成した深度情報と、撮像素子44c、44dがそれぞれ撮像した術野画像とにより、SLAM技術を活用して3次元地図D(X,Y,Z)を生成することができる。また、2つの撮像素子44c、44dは、同時に撮像を行うことができるため、1回の撮像で得た2枚の画像から深度情報を得ることができる。したがって、物体が動いている場合であっても、当該物体の3次元位置を高精度に計測することができる。
【0119】
このように、第3の実施の形態によると、撮像装置42cは、一部が重複する異なる範囲を撮像する2つの撮像素子44c、44dを備えて、3次元情報生成部14は、撮像装置42cが同じ時刻に撮像した2枚の術野画像K(x,y)に基づいて、術野の3次元情報を生成する。したがって、1回の撮像で得た2枚の術野画像K(x,y)から深度情報を得ることができるため、術野が動いている場合であっても、当該術野の3次元位置を高精度に計測することができる。
【0120】
(第4の実施の形態)
図13は、撮像装置42cが2つの撮像素子で構成されるとともに、カメラコントロールユニット12cがトラッキング処理部34を備える医療用観察システム10dの概略的な構成の一例を示す図である。なお、図13は、図2を一部省略して描いており、特に断りのない限り、省略された箇所は図2と同じ構成を有している。
【0121】
医療用観察システム10dのカメラコントロールユニット12cは、深度情報生成部30と、3次元情報生成部32と、トラッキング処理部34と、ズーム領域算出部36を備える。
【0122】
3次元情報生成部32は、3次元情報生成部14に代わって備えられて、深度情報生成部30が生成した深度情報に基づいて、術野画像K(x,y)の3次元情報を生成する。トラッキング処理部34は、3次元地図データ格納部24に代わって備えられて、直前フレームの3次元情報と現フレームの3次元情報とに基づいて、2つの点群を重ね合わせる手法であるICP(Iterative Closest Point)法等を用いることによって撮像装置42cの位置・姿勢の差分を算出する。検波領域推定部22は、トラッキング処理部34が算出した撮像装置42cの位置・姿勢の差分値に基づいて、術野画像K(x,y)における検波領域の位置を算出する。そして、前記したパラメータ制御部26(図2)が、算出された検波領域にフォーカスが合致して、尚且つ検波領域が見やすい明るさで撮像される制御パラメータを算出する。そして、パラメータ制御部26は、算出された制御パラメータによって、撮像装置42cに術野画像K(x,y)を撮像させる。
【0123】
このように、第4の実施の形態によると、撮像装置42cの動きによらずに、術野画像K(x,y)の中の注目領域を安定してトラッキング(追尾)することができる。
【0124】
(第5の実施の形態)
図14は、撮像装置42dが撮像素子44aとデプスセンサ48で構成された医療用観察システム10eの概略的な構成の一例を示す図である。なお、図14は、図2を一部省略して描いており、特に断りのない限り、省略された箇所は図2と同じ構成を有している。
【0125】
デプスセンサ48は、被写体までの距離を測定する、いわゆる3Dセンサである。デプスセンサ48は、被写体に向けて照射した、例えば赤外光等の反射光を受光することによって、光の飛行時間を計測して被写体までの距離を測定する、いわゆるToF(Time of Flight)センサである。また、デプスセンサ48は、被写体に照射された複数の異なる幾何パターンを有する投影光の像を撮像することによって、被写体までの距離を測定する、いわゆるパターン投影法(Structured Light)によって実現される。
【0126】
地図生成部15は、撮像素子44aが撮像した術野画像K(x,y)と、デプスセンサ48が出力する距離とに基づいて、撮像した物体100までの深度情報(距離情報)を取り出す。より具体的には、地図生成部15は、デプスセンサ48が測距した点が、撮像素子44aが撮像した術野画像K(x,y)のどの画素に対応するかを算出する。そして、地図生成部15は、術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)を生成する。したがって、SLAM技術を有効に活用することができる。
【0127】
このように、第5の実施の形態によると、撮像装置42dは、1つの撮像素子44aと対象物までの距離を計測するデプスセンサ48(測距装置)とを備えて、3次元情報生成部14は、撮像素子44aが撮像した画像とデプスセンサ48が計測した距離とに基づいて、術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)を生成する。したがって、術野までの距離を容易且つ確実に測定することができる。
【0128】
(第6の実施の形態)
図15は、撮像装置42dが撮像素子44aとデプスセンサ48で構成されるとともに、カメラコントロールユニット12dがトラッキング処理部34を備える医療用観察システム10fの概略的な構成の一例を示す図である。なお、図15は、図2を一部省略して描いており、特に断りのない限り、省略された箇所は図2と同じ構成を有している。
【0129】
医療用観察システム10fのカメラコントロールユニット12dは、3次元情報生成部32と、トラッキング処理部34と、ズーム領域算出部36を備える。
【0130】
3次元情報生成部32は、3次元情報生成部14に代わって備えられて、デプスセンサ48が異なる位置から測定した2つの距離情報(例えば、被写体までの距離に対応する画素値が格納された距離画像)をマッチングさせることによって、術野の移動状態を求める。トラッキング処理部34は、3次元地図データ格納部24に代わって備えられて、前記した術野の移動状態に基づいて、撮像装置42cの位置・姿勢の差分を算出する。検波領域推定部22は、トラッキング処理部34が算出した撮像装置42dの位置・姿勢の差分値に基づいて、術野画像K(x,y)における検波領域の位置を算出する。そして、前記したパラメータ制御部26(図2)が、算出された検波領域にフォーカスが合致して、尚且つ検波領域が見やすい明るさで撮像される制御パラメータを算出する。そして、パラメータ制御部26は、算出された制御パラメータによって、撮像装置42dに術野画像K(x,y)を撮像させる。
【0131】
このように、第6の実施の形態によると、撮像装置42dの動きによらずに、術野画像K(x,y)の中の注目領域を安定してトラッキング(追尾)することができる。
【0132】
(第7の実施の形態)
図16は、術野画像K(x,y)の中に複数の注目枠110a、110bを設定した例を示す図である。
【0133】
図16に示すように、注目領域設定部20(図2)は、術野画像K(x,y)の中に複数の注目領域を設定してもよい。例えば、複数の患部に注目する必要がある場合、注目領域設定部20は、スコピスト5062の指示に基づいて、各注目領域を示す注目枠110a、110bを設定する。パラメータ制御部26は、設定された各注目枠110a、110bを含む注目領域に対して、ともにフォーカスが合うようにAF制御を行う。また、各注目枠110a、110bを含む注目領域が、ともに観察しやすい明るさとなるようにAE制御、光源制御を行う。このとき、パラメータ制御部26は、例えば、各注目枠110a、110bを設定した領域までの距離等を用いて、注目枠110a、110bの双方に合焦して、尚且つ注目枠110a、110bの双方が観察しやすい明るさとなるように、適切な制御パラメータを決定する。そして、表示制御部40は、パラメータ制御部26が調整した制御パラメータに基づいて撮像された術野画像K(x,y)を、表示装置50に出力する。
【0134】
なお、本実施の形態の変形例として、複数の注目枠110a、110bのうち、一方の注目枠110aは、合焦させる領域として設定し、他方の注目枠110bは、合焦させない、すなわちフォーカス対象から除外する領域として設定してもよい。このように、合焦対象から除外する領域を設定することによって、例えば、レンズ制御部26bがコントラストAF等における演算処理を行う際に、不必要にフォーカスの合う位置を探索する必要がなくなるため、合焦速度の高速化を行うことができる。なお、合焦させる領域を示す注目枠110aと、合焦対象から除外する領域を示す注目枠110bとは、識別性を高めるために、異なる色や異なる形態で表示するのが望ましい。
【0135】
このように、第7の実施の形態によると、術野の中に複数の注目したい領域がある場合に、注目領域設定部20は複数の注目領域を設定する。したがって、複数の注目領域に対して制御パラメータを調整することができる。
【0136】
(第8の実施の形態)
図17は、術野画像K(x,y)の中から、所定の距離範囲の領域を強調表示させた表示形態の一例を示す図である。
【0137】
注目領域設定部20は、注目領域を設定する際に、図17に示すように、術野画像K(x,y)の中の所定の距離範囲領域に所定の着色をして出力する。図17は、距離d1よりも近い距離を有する領域R1と、距離d2よりも遠い距離を有する領域R2と、にそれぞれ異なる着色をさせた表示した例である。なお、これは、注目領域の設定を行い易くする目的で、注目領域までの距離範囲を、距離d1から距離d2の間に制限するために行う処理である。
【0138】
距離d1及び距離d2の値は、例えば、図17に示すように、注目領域設定部20が、術野画像K(x,y)の近傍に、距離目盛を表示させて、スコピスト5062がマウスやタッチパネル等の入力デバイスを操作することによって設定すればよい。そして、設定された距離d1及び距離d2の値に応じて、注目領域設定部20は、術野画像K(x,y)上の領域R1及び領域R2を、リアルタイムで着色表示する。このとき、操作者は、距離目盛上の設定したい距離の位置で入力デバイスをポインティングして、距離d1又は距離d2を設定する。そして、操作者は、入力デバイスをポインティングしたまま距離目盛上の遠方方向又は近接方向に向かって入力デバイスをドラッグする。注目領域設定部20は、このドラッグ操作を検出することによって、図17に示すように、距離目盛上に、ドラッグされた距離範囲に着色される色を表示する。このようなGUI(Graphical User Interface)とすることによって、操作者は、術野画像K(x,y)において、自身が設定した距離範囲に対応する領域を認識しやすくなる。なお、距離目盛上に、設定された距離範囲を表示する方法は、図17に示した方法に限定される訳ではなく、設定された距離範囲が明示されるものであれば、その他の表示形態をとってもよい。
【0139】
表示制御部40は、領域R1及び領域R2が着色表示された術野画像K(x,y)を表示装置50に出力する。そして、スコピスト5062は、領域R1及び領域R2が着色表示された術野画像K(x,y)を見ながら、前記した手順(図4参照)に従って、注目領域を設定する。
【0140】
このように、第8の実施の形態によると、注目領域設定部20(設定部)は、注目領域が存在する距離範囲を指定する機能を、更に備えて、指定された距離範囲の中で注目領域を設定させる。したがって、スコピスト5062は、注目領域の設定をより容易に行うことができる。
【0141】
(第9の実施の形態)
図18は、術野画像K(x,y)の中に設定する注目枠110c~110gの表示形態の一例を示す図である。
【0142】
注目枠の表示形態は、図4に示した矩形状の枠に限定されるものではない。図18Aは、注目枠110cを円形領域で表示した例である。図18Bは、注目枠110dを着色(ハイライト)された閉領域で示した例である。図18Cは、注目枠110eを記号で示した例である。図18Dは、注目枠110fを閉曲線で示した例である。図18Eは、注目枠110g及び注目枠110gを設定した位置と等しい距離を有する領域を、ともに着色して表示した例である。特に、図18Eの表示形態によると、スコピスト5062は、注目領域と等しい距離の位置に別の領域が存在することを認識することができる。したがって、内視鏡5001が誤って別の領域の方向を向くことによって、注目領域に対する追尾が外れないように、内視鏡5001をより一層注意深く把持することができる。
【0143】
なお、注目枠をいずれの形態で表示するかは、スコピスト5062が、予め注目領域設定部20に設定しておけばよい。なお、注目枠110c~110gの設定方法は、図4または図5で説明した方法に従えばよい。注目領域を画面の中央に移動した後で注目枠を設定するだけではなく、タッチパネルやマウス等の入力デバイスを用いて、注目枠の位置を直接画面上で設定してもよい。特に、図18B図18D図18Eに示すように、注目枠を任意形状の閉領域として設定する場合は、図5で説明したように、表示装置50に表示された術野画像K(x,y)の上で、注目枠の位置と形状を直接設定するのが効率的である。
【0144】
このように、第9の実施の形態によると、設定された注目領域に、操作者が見やすい形態の注目枠110c~110gを表示することができる。
【0145】
(第10の実施の形態)
図19は、術野画像K(x,y)の中から反射光の大きい場所を検出する機能について説明する図である。腹腔内及び臓器は、腹水、粘液、血液等の液体に覆われている。これらの液体は、外部から照明光を照射した場合に高い正反射特性を示す。こうして発生した正反射光が撮像素子44aに受光されると、受光した画素の画素値がオーバフローする可能性がある。このようなオーバフローが発生すると、術野画像K(x,y)の明るさ、色、形状等を識別できなくなるため、術野を観察する画像として望ましくないおそれがある。したがって、医療用観察システム10aにおいては、撮像素子44aが正反射光を受光しない観察レイアウトをとるのが望ましい。
【0146】
正反射光の進行方向は、腹腔内に存在する立体物の法線方向に依存する。そして、腹腔内の立体物の法線方向は、一般に多岐の方向に亘って分布するため、撮像素子44aが正反射光を受光しない観察レイアウトを実現することは現実的ではない。そのため、本実施の形態では、正反射光が発生する可能性のある位置を予め予測することによって、当該位置を観察対象となる注目領域として設定できないようにする。
【0147】
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した医療用観察システム10aにおける注目領域設定部20に、術野画像K(x,y)における正反射光の発生位置を予測する機能を持たせる。すなわち、注目領域設定部20は、地図生成部15が生成した、図19Aに示す3次元地図D(X,Y,Z)と、光源装置60の設置位置とを照らし合わせることによって、図19Bに示す術野画像K(x,y)における、光源装置60から出射した光の正反射光の発生位置を予測する。
【0148】
具体的には、地図生成部15は、3次元地図D(X,Y,Z)における隣接する点の3次元位置に基づいて、点(X,Y,Z)における3次元的な法線方向を算出する。そして、注目領域設定部20は、地図生成部15(3次元情報生成部14)が算出した法線方向と、光源装置60の設置位置とを照らし合わせることによって、光源装置60から出射した光線の正反射光が、撮像素子44aに到達する位置を算出する。正反射光の到達位置の算出は、光線追跡法によって行えばよい。この処理によって、例えば、図19Aにおいて、領域Q1における正反射光が、図19Bにおける術野画像K(x,y)の領域Q2に到達することが予測される。
【0149】
注目領域設定部20は、さらに、正反射光の到達位置である領域Q2にマスクを設定する。そして、注目領域設定部20は、領域Q2に注目領域を設定できないようにする。
【0150】
このように、第10の実施の形態によると、注目領域設定部20(設定部)は、3次元情報生成部14が生成した術野の3次元地図D(X,Y,Z)(3次元情報)に基づいて、光源装置60による照明光の正反射方向を予測する。そして、注目領域設定部20は、予測された方向に進む正反射光が撮像装置42aに撮像されると判定した場合に、当該正反射光が撮像される領域を注目領域の設定対象から除外する。したがって、注目領域設定部20は、正反射光が到達しない位置に注目領域を設定するため、当該注目領域における画素値に基づいてAE制御を行うことによって、適切な露出を得ることができる。
【0151】
なお、本実施の形態において、正反射光が撮像装置42aで撮像される場合に、観測される正反射光によって、画素値がオーバフローしないように、AE用の制御パラメータや光源制御パラメータを調整するようにしてもよい。
【0152】
(第11の実施の形態)
図20は、本開示に係る技術が適用され得る顕微鏡手術システム5300の概略的な構成の一例を示す図である。図20を参照すると、顕微鏡手術システム5300は、顕微鏡装置5301と、制御装置5317と、表示装置50と、から構成される。なお、以下の顕微鏡手術システム5300についての説明において、「ユーザ」とは、術者及び助手等、顕微鏡手術システム5300を使用する任意の医療スタッフのことを意味する。
【0153】
顕微鏡装置5301は、観察対象(患者の術部)を拡大観察するための顕微鏡部5303と、顕微鏡部5303を先端で支持するアーム部5309と、アーム部5309の基端を支持するベース部5315と、を有する。
【0154】
顕微鏡部5303は、略円筒形状の筒状部5305と、当該筒状部5305の内部に設けられる撮像部(図示せず)と、から構成される。顕微鏡部5303は、撮像部によって電子的に撮像画像を撮像する、電子撮像式の顕微鏡部(いわゆるビデオ式の顕微鏡部)である。なお、撮像部は、本開示における撮像装置の一例である。
【0155】
筒状部5305の下端の開口面には、内部の撮像部を保護するカバーガラスが設けられる。観察対象からの光(以下、観察光ともいう)は、当該カバーガラスを通過して、筒状部5305の内部の撮像部に入射する。なお、筒状部5305の内部には例えばLED(Light Emitting Diode)等からなる光源が設けられてもよく、撮像時には、当該カバーガラスを介して、当該光源から観察対象に対して光が照射されてもよい。
【0156】
撮像部は、観察光を集光する光学系と、当該光学系が集光した観察光を受光する撮像素子と、から構成される。当該光学系は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成され、その光学特性は、観察光を撮像素子の受光面上に結像するように調整されている。当該撮像素子は、観察光を受光して光電変換することにより、観察光に対応した信号、すなわち観察像に対応した画像信号を生成する。当該撮像素子としては、例えばBayer配列を有するカラー撮影可能なものが用いられる。当該撮像素子は、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等、各種の公知の撮像素子であってよい。撮像素子によって生成された画像信号は、RAWデータとして制御装置5317に送信される。ここで、この画像信号の送信は、好適に光通信によって行われてもよい。手術現場では、術者が撮像画像によって患部の状態を観察しながら手術を行うため、より安全で確実な手術のためには、術野の動画像が可能な限りリアルタイムに表示されることが求められるからである。光通信で画像信号が送信されることにより、低レイテンシで撮像画像を表示することが可能となる。
【0157】
なお、撮像部は、その光学系のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って移動させる駆動機構を有してもよい。当該駆動機構によってズームレンズ及びフォーカスレンズが適宜移動されることにより、撮像画像の撮影倍率及び撮像時の焦点距離が調整され得る。また、撮像部には、AE機能やAF機能等、一般的に電子撮像式の顕微鏡部に備えられ得る各種の機能が搭載されてもよい。
【0158】
また、撮像部は、1つの撮像素子を有するいわゆる単板式の撮像部として構成されてもよいし、複数の撮像素子を有するいわゆる多板式の撮像部として構成されてもよい。撮像部が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、当該撮像部は、立体視(3D表示)に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者は術野における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、当該撮像部が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、光学系も複数系統が設けられ得る。
【0159】
アーム部5309は、複数のリンク(第1リンク5313a~第6リンク5313f)が、複数の関節部(第1関節部5311a~第6関節部5311f)によって互いに回動可能に連結されることによって構成される。
【0160】
第1関節部5311aは、略円柱形状を有し、その先端(下端)で、顕微鏡部5303の筒状部5305の上端を、当該筒状部5305の中心軸と平行な回転軸(第1軸O)まわりに回動可能に支持する。ここで、第1関節部5311aは、第1軸Oが顕微鏡部5303の撮像部の光軸と一致するように構成され得る。これにより、第1軸Oまわりに顕微鏡部5303を回動させることにより、撮像画像を回転させるように視野を変更することが可能になる。
【0161】
第1リンク5313aは、先端で第1関節部5311aを固定的に支持する。具体的には、第1リンク5313aは略L字形状を有する棒状の部材であり、その先端側の一辺が第1軸Oと直交する方向に延伸しつつ、当該一辺の端部が第1関節部5311aの外周の上端部に当接するように、第1関節部5311aに接続される。第1リンク5313aの略L字形状の基端側の他辺の端部に第2関節部5311bが接続される。
【0162】
第2関節部5311bは、略円柱形状を有し、その先端で、第1リンク5313aの基端を、第1軸Oと直交する回転軸(第2軸O)まわりに回動可能に支持する。第2関節部5311bの基端には、第2リンク5313bの先端が固定的に接続される。
【0163】
第2リンク5313bは、略L字形状を有する棒状の部材であり、その先端側の一辺が第2軸Oと直交する方向に延伸しつつ、当該一辺の端部が第2関節部5311bの基端に固定的に接続される。第2リンク5313bの略L字形状の基端側の他辺には、第3関節部5311cが接続される。
【0164】
第3関節部5311cは、略円柱形状を有し、その先端で、第2リンク5313bの基端を、第1軸O及び第2軸Oと互いに直交する回転軸(第3軸O)まわりに回動可能に支持する。第3関節部5311cの基端には、第3リンク5313cの先端が固定的に接続される。第2軸O及び第3軸Oまわりに顕微鏡部5303を含む先端側の構成を回動させることにより、水平面内での顕微鏡部5303の位置を変更するように、当該顕微鏡部5303を移動させることができる。つまり、第2軸O及び第3軸Oまわりの回転を制御することにより、撮像画像の視野を平面内で移動させることが可能になる。
【0165】
第3リンク5313cは、その先端側が略円柱形状を有するように構成されており、当該円柱形状の先端に、第3関節部5311cの基端が、両者が略同一の中心軸を有するように、固定的に接続される。第3リンク5313cの基端側は角柱形状を有し、その端部に第4関節部5311dが接続される。
【0166】
第4関節部5311dは、略円柱形状を有し、その先端で、第3リンク5313cの基端を、第3軸Oと直交する回転軸(第4軸O)まわりに回動可能に支持する。第4関節部5311dの基端には、第4リンク5313dの先端が固定的に接続される。
【0167】
第4リンク5313dは、略直線状に延伸する棒状の部材であり、第4軸Oと直交するように延伸しつつ、その先端の端部が第4関節部5311dの略円柱形状の側面に当接するように、第4関節部5311dに固定的に接続される。第4リンク5313dの基端には、第5関節部5311eが接続される。
【0168】
第5関節部5311eは、略円柱形状を有し、その先端側で、第4リンク5313dの基端を、第4軸Oと平行な回転軸(第5軸O)まわりに回動可能に支持する。第5関節部5311eの基端には、第5リンク5313eの先端が固定的に接続される。第4軸O及び第5軸Oは、顕微鏡部5303を上下方向に移動させ得る回転軸である。第4軸O及び第5軸Oまわりに顕微鏡部5303を含む先端側の構成を回動させることにより、顕微鏡部5303の高さ、すなわち顕微鏡部5303と観察対象との距離を調整することができる。
【0169】
第5リンク5313eは、一辺が鉛直方向に延伸するとともに他辺が水平方向に延伸する略L字形状を有する第1の部材と、当該第1の部材の水平方向に延伸する部位から鉛直下向きに延伸する棒状の第2の部材と、が組み合わされて構成される。第5リンク5313eの第1の部材の鉛直方向に延伸する部位の上端近傍に、第5関節部5311eの基端が固定的に接続される。第5リンク5313eの第2の部材の基端(下端)には、第6関節部5311fが接続される。
【0170】
第6関節部5311fは、略円柱形状を有し、その先端側で、第5リンク5313eの基端を、鉛直方向と平行な回転軸(第6軸O)まわりに回動可能に支持する。第6関節部5311fの基端には、第6リンク5313fの先端が固定的に接続される。
【0171】
第6リンク5313fは鉛直方向に延伸する棒状の部材であり、その基端はベース部5315の上面に固定的に接続される。
【0172】
第1関節部5311a~第6関節部5311fの回転可能範囲は、顕微鏡部5303が所望の動きを可能であるように適宜設定されている。これにより、以上説明した構成を有するアーム部5309においては、顕微鏡部5303の動きに関して、並進3自由度及び回転3自由度の計6自由度の動きが実現され得る。このように、顕微鏡部5303の動きに関して6自由度が実現されるようにアーム部5309を構成することにより、アーム部5309の可動範囲内において顕微鏡部5303の位置及び姿勢を自由に制御することが可能になる。従って、あらゆる角度から術野を観察することが可能となり、手術をより円滑に実行することができる。
【0173】
なお、図示するアーム部5309の構成はあくまで一例であり、アーム部5309を構成するリンクの数及び形状(長さ)、並びに関節部の数、配置位置及び回転軸の方向等は、所望の自由度が実現され得るように適宜設計されてよい。例えば、上述したように、顕微鏡部5303を自由に動かすためには、アーム部5309は6自由度を有するように構成されることが好ましいが、アーム部5309はより大きな自由度(すなわち、冗長自由度)を有するように構成されてもよい。冗長自由度が存在する場合には、アーム部5309においては、顕微鏡部5303の位置及び姿勢が固定された状態で、アーム部5309の姿勢を変更することが可能となる。従って、例えば表示装置50を見る術者の視界にアーム部5309が干渉しないように当該アーム部5309の姿勢を制御する等、術者にとってより利便性の高い制御が実現され得る。
【0174】
ここで、第1関節部5311a~第6関節部5311fには、モータ等の駆動機構、及び各関節部における回転角度を検出するエンコーダ等が搭載されたアクチュエータが設けられ得る。そして、第1関節部5311a~第6関節部5311fに設けられる各アクチュエータの駆動が制御装置5317によって適宜制御されることにより、アーム部5309の姿勢、すなわち顕微鏡部5303の位置及び姿勢が制御され得る。具体的には、制御装置5317は、エンコーダによって検出された各関節部の回転角度についての情報に基づいて、アーム部5309の現在の姿勢、並びに顕微鏡部5303の現在の位置及び姿勢を把握することができる。制御装置5317は、把握したこれらの情報を用いて、顕微鏡部5303が所望の移動を実現するように、各関節部に対する制御値(例えば、回転角度又は発生トルク等)を算出し、当該制御値に応じて各関節部の駆動機構を駆動させる。なお、この際、制御装置5317によるアーム部5309の制御方式は限定されず、力制御又は位置制御等、各種の公知の制御方式が適用されてよい。
【0175】
例えば、術者が、図示しない入力装置を介して適宜操作入力を行うことにより、当該操作入力に応じて、制御装置5317によってアーム部5309の駆動が適宜制御され、顕微鏡部5303の位置及び姿勢が制御されてもよい。当該制御により、顕微鏡部5303を任意の位置から任意の位置まで移動させた後、その移動後の位置で固定的に支持することができる。なお、当該入力装置としては、術者の利便性を考慮して、例えばフットスイッチ等、術者が手に術具を有していても操作可能なものが適用されることが好ましい。また、ウェアラブルデバイスや手術室内に設けられるカメラを用いたジェスチャー検出や視線検出に基づいて、非接触で操作入力が行われてもよい。これにより、清潔域に属するユーザであっても、不潔域に属する機器をより自由度高く操作することが可能になる。あるいは、アーム部5309は、いわゆるマスタースレイブ方式で操作されてもよい。この場合、アーム部5309は、手術室から離れた場所に設置される入力装置を介してユーザによって遠隔操作され得る。
【0176】
また、力制御が適用される場合には、ユーザからの外力を受け、その外力にならってスムーズにアーム部5309が移動するように第1関節部5311a~第6関節部5311fのアクチュエータが駆動される、いわゆるパワーアシスト制御が行われてもよい。これにより、ユーザが、顕微鏡部5303を把持して直接その位置を移動させようとする際に、比較的軽い力で顕微鏡部5303を移動させることができる。従って、より直感的に、より簡易な操作で顕微鏡部5303を移動させることが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0177】
また、アーム部5309は、ピボット動作をするようにその駆動が制御されてもよい。ここで、ピボット動作とは、顕微鏡部5303の光軸が空間上の所定の点(以下、ピボット点という)を常に向くように、顕微鏡部5303を移動させる動作である。ピボット動作によれば、同一の観察位置を様々な方向から観察することが可能となるため、より詳細な患部の観察が可能となる。なお、顕微鏡部5303が、その焦点距離を調整不可能に構成される場合には、顕微鏡部5303とピボット点との距離が固定された状態でピボット動作が行われることが好ましい。この場合には、顕微鏡部5303とピボット点との距離を、顕微鏡部5303の固定的な焦点距離に調整しておけばよい。これにより、顕微鏡部5303は、ピボット点を中心とする焦点距離に対応する半径を有する半球面(図20に概略的に図示する)上を移動することとなり、観察方向を変更しても鮮明な撮像画像が得られることとなる。一方、顕微鏡部5303が、その焦点距離を調整可能に構成される場合には、顕微鏡部5303とピボット点との距離が可変な状態でピボット動作が行われてもよい。この場合には、例えば、制御装置5317は、エンコーダによって検出された各関節部の回転角度についての情報に基づいて、顕微鏡部5303とピボット点との距離を算出し、その算出結果に基づいて顕微鏡部5303の焦点距離を自動で調整してもよい。あるいは、顕微鏡部5303にAF機能が設けられる場合であれば、ピボット動作によって顕微鏡部5303とピボット点との距離が変化するごとに、当該AF機能によって自動で焦点距離の調整が行われてもよい。
【0178】
制御装置5317は、顕微鏡装置5301及び表示装置50の動作を制御することにより、顕微鏡手術システム5300の動作を統括的に制御する。例えば、制御装置5317は、所定の制御方式に従って第1関節部5311a~第6関節部5311fのアクチュエータを動作させることにより、アーム部5309の駆動を制御する。また、例えば、制御装置5317は、第1関節部5311a~第6関節部5311fのブレーキの動作を制御することにより、アーム部5309の動作モードを変更する。また、制御装置5317は、第1の実施の形態で説明したカメラコントロールユニット12aの機能を備えている。そして、制御装置5317は、顕微鏡部5303の撮像部が撮像した術野画像K(x,y)の中から、注目領域にフォーカスや露出が合った術野画像K(x,y)を生成して、表示装置50に出力する。なお、制御装置5317は、顕微鏡装置5301の顕微鏡部5303の撮像部が取得した術野画像K(x,y)に、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)等、各種の公知の信号処理が行ってもよい。
【0179】
制御装置5317と顕微鏡部5303との通信、及び制御装置5317と第1関節部5311a~第6関節部5311fとの通信は、有線通信であってもよいし無線通信であってもよい。有線通信の場合には、電気信号による通信が行われてもよいし、光通信が行われてもよい。この場合、有線通信に用いられる伝送用のケーブルは、その通信方式に応じて電気信号ケーブル、光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルとして構成され得る。一方、無線通信の場合には、手術室内に伝送ケーブルを敷設する必要がなくなるため、当該伝送ケーブルによって医療スタッフの手術室内の移動が妨げられる事態が解消され得る。
【0180】
制御装置5317は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイコン若しくは制御基板等であり得る。制御装置5317のプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、上述した各種の機能が実現され得る。なお、図示する例では、制御装置5317は、顕微鏡装置5301と別体の装置として設けられているが、制御装置5317は、顕微鏡装置5301のベース部5315の内部に設置され、顕微鏡装置5301と一体的に構成されてもよい。あるいは、制御装置5317は、複数の装置によって構成されてもよい。例えば、顕微鏡部5303や、アーム部5309の第1関節部5311a~第6関節部5311fにそれぞれマイコンや制御基板等が配設され、これらが互いに通信可能に接続されることにより、制御装置5317と同様の機能が実現されてもよい。
【0181】
表示装置50は、手術室内に設けられ、制御装置5317からの制御により、当該制御装置5317によって生成された画像データに対応する画像を表示する。つまり、表示装置50には、顕微鏡部5303によって撮像された術野画像K(x,y)が表示される。なお、表示装置50は、術野画像K(x,y)に代えて、又は術野画像K(x,y)とともに、例えば患者の身体情報や手術の術式についての情報等、手術に関する各種の情報を表示してもよい。この場合、表示装置50の表示は、ユーザによる操作によって適宜切り替えられてよい。あるいは、表示装置50は複数設けられてもよく、複数の表示装置50のそれぞれに、術野画像K(x,y)や手術に関する各種の情報が、それぞれ表示されてもよい。なお、表示装置50としては、液晶ディスプレイ装置又はELディスプレイ装置等、各種の公知の表示装置が適用されてよい。
【0182】
図21は、図20に示す顕微鏡手術システム5300を用いた手術の様子を示す図である。図21では、術者5061が、顕微鏡手術システム5300を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に対して手術を行っている様子を概略的に示している。なお、図21では、簡単のため、顕微鏡手術システム5300の構成のうち制御装置5317の図示を省略するとともに、顕微鏡部5303(図20)を含む顕微鏡装置5301を簡略化して図示している。
【0183】
図21に示すように、手術時には、顕微鏡手術システム5300を用いて、制御装置5317によって調整された撮像パラメータによって、顕微鏡装置5301が撮像した術野画像K(x,y)が、手術室の壁面に設置される表示装置50に表示される。表示装置50は、術者5061と対向する位置に設置されており、術者5061は、表示装置50に写し出された、術野にフォーカスや露出が合った術野画像K(x,y)によって術部の様子を観察しながら、患部の切除等の各種の処置を行う。
【0184】
このように、第11の実施の形態によると、撮像部は顕微鏡部5303に実装される。したがって、顕微鏡手術システム5300は、顕微鏡を利用した手術を行う際に、術野にフォーカスや露出を調整し続ける術野画像K(x,y)を出力することができる。
【0185】
以上、本開示に係る技術が適用され得る顕微鏡手術システム5300の一例について説明した。なお、ここでは、一例として顕微鏡手術システム5300について説明したが、本開示に係る技術が適用され得るシステムはかかる例に限定されない。例えば、顕微鏡装置5301は、その先端に顕微鏡部5303に代えて他の観察装置や他の術具を支持する、支持アーム装置としても機能し得る。当該他の観察装置としては、例えば内視鏡が適用され得る。また、当該他の術具としては、鉗子、攝子、気腹のための気腹チューブ、又は焼灼によって組織の切開や血管の封止を行うエネルギー処置具等が適用され得る。これらの観察装置や術具を支持アーム装置によって支持することにより、医療スタッフが人手で把持する場合に比べて、より安定的に位置を固定することが可能となるとともに、医療スタッフの負担を軽減することが可能となる。本開示に係る技術は、このような顕微鏡部以外の構成を支持する支持アーム装置に適用されてもよい。
【0186】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0187】
また、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0188】
例えば、上記で説明した注目領域の設定方法について、ユーザが検波枠を設定するだけでなく、注目領域設定部20が自動で注目領域を設定するようにしてもよい。このとき、注目領域設定部20は、ユーザによるフットスイッチ等を用いたトリガ信号に基づいて、画面内の一定の条件を満たす領域を注目領域として設定する。例えば、注目領域設定部20は、術野画像または3次元情報において、トリガ信号を取得した時点における画面内で所定の面積以上を占める被写体、最も手前にある被写体、中央付近にある被写体のいずれかの条件を満たす、または複数の条件を満たす被写体に対して注目領域として設定する。また、注目領域設定部20は、注目領域が設定された複数の術野画像または3次元情報を学習データとして機械学習アルゴリズム(例えば、多層ニューラルネットワークを用いた機械学習アルゴリズム)にて予め学習を行ってパラメータ(例えば、多層ニューラルネットワークの各層の重み係数)を生成した分類器を含み、入力された術野画像に基づいて注目領域を設定するようにしてもよい。また、ユーザによるトリガ信号は、カメラヘッドの任意のボタンの押圧情報(例えば全押し、半押しの情報)に基づいて生成されてもよい。
【0189】
なお、本開示は、以下のような構成もとることができる。
(1)
術野を撮像して術野画像を得る撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成する3次元情報生成部と、
前記撮像装置が、所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する設定部と、
前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、前記撮像装置が術野画像を撮像する際に、当該撮像装置の制御パラメータを調整する調整部と、
前記調整部が調整した制御パラメータによって前記撮像装置が撮像した術野画像を出力する表示制御部と、
を備える医療用観察システム。
(2)
前記撮像装置は、1つの撮像素子を備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像装置が異なる時刻に撮像した少なくとも2枚の術野画像に基づいて、術野の3次元情報を生成する、
前記(1)に記載の医療用観察システム。
(3)
前記撮像装置は、一部が重複する異なる範囲を撮像する2つの撮像素子を備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像素子が同じ時刻に撮像した2枚の術野画像に基づいて、術野の3次元情報を生成する、
前記(1)に記載の医療用観察システム。
(4)
前記撮像装置は、1つの撮像素子と対象物までの距離を計測する測距装置とを備えて、
前記3次元情報生成部は、前記撮像素子が撮像した画像と前記測距装置が計測した距離とに基づいて、術野の3次元情報を生成する、
前記(1)に記載の医療用観察システム。
(5)
前記3次元情報生成部は、前記術野画像の全体又は任意の範囲から抽出した特徴点の3次元情報を生成する、
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(6)
前記制御パラメータは、前記撮像装置の光学系の状態を規定する光学パラメータである、
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(7)
前記制御パラメータは、前記撮像装置の露出条件を規定する撮像パラメータである、
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(8)
前記制御パラメータは、前記撮像装置の現像条件を規定する現像パラメータである、
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(9)
前記制御パラメータは、前記撮像装置の撮像範囲に照明光を照射する光源装置の発光状態を規定する発光パラメータである、
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(10)
前記設定部は、前記3次元情報生成部が生成した術野の3次元情報に基づいて、前記光源装置による照明光の反射方向を予測するとともに、
予測された反射方向に進む反射光が、前記撮像装置に撮像される場合に、当該反射光が撮像される領域を前記注目領域の設定対象から除外する、
前記(9)に記載の医療用観察システム。
(11)
前記設定部は、前記注目領域が存在する距離範囲を指定する機能を更に備えて、指定された距離範囲の中で注目領域を設定する、
前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(12)
前記術野画像の中から、登録された物体を検出する検出部を更に備えて、
前記設定部は、前記術野画像から、前記検出部が検出した物体を除いた領域の中から、前記特徴点を設定する、
前記(5)に記載の医療用観察システム。
(13)
前記調整部は、推定された前記注目領域の3次元位置に応じて、前記撮像装置が撮像する術野画像の撮影倍率を変更するとともに、
前記設定部は、前記撮影倍率に応じて、前記注目領域の大きさを変化させる、
前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(14)
前記調整部は、推定された前記注目領域の3次元位置に応じて、前記撮像装置が術野画像を撮像する際の制御パラメータの初期値を設定する、
前記(1)乃至(13)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(15)
前記撮像部は、内視鏡に実装される、
前記(1)乃至(14)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(16)
前記撮像部は、顕微鏡に実装される、
前記(1)乃至(14)のいずれかに記載の医療用観察システム。
(17)
術野を撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成する3次元情報生成部と、
所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定する設定部と、
前記3次元情報と前記注目領域に係る情報とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定する推定部と、
前記推定部が推定した注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、術野画像を撮像する際の制御パラメータを調整する調整部と、
前記調整部が調整した制御パラメータによって撮像された術野画像を出力する表示制御部と、
を備える医療用観察装置。
(18)
術野を撮像した術野画像から、術野の3次元情報を生成するステップと、
所定のタイミングに撮像した術野画像の中に、少なくとも一つの注目領域を設定するステップと、
前記3次元情報と前記注目領域の位置とに基づいて、前記所定のタイミングとは異なるタイミングに撮像した術野画像の中から、前記注目領域に対応する相対位置を推定するステップと、
推定された注目領域の相対位置に対応する術野画像の3次元情報と画素値とに基づいて、術野画像を撮像する際の制御パラメータを調整するステップと、
調整された制御パラメータによって撮像した術野画像を表示するステップと、
を備える医療用観察方法。
【符号の説明】
【0190】
10a、10b、10c、10d、10e、10f 医療用観察システム
12a、12b、12c カメラコントロールユニット(医療用観察装置)
14 3次元情報生成部
15 地図生成部(検出部)
16 自己位置推定部
18 現像処理部
20 注目領域設定部(設定部)
22 検波領域推定部(推定部)
24 3次元地図データ格納部
26 パラメータ制御部(調整部)
40 表示制御部
42a、42b、42c、42d 撮像装置
44a、44b、44c、44d 撮像素子
46 像面位相差センサ
48 デプスセンサ(測距装置)
50 表示装置
110 注目枠
5001 内視鏡
5061 術者
5062 スコピスト
5063 助手
5300 顕微鏡手術システム
5303 顕微鏡部
5317 制御装置
D(X,Y,Z) 3次元地図(3次元情報)
K(x,y)、K(x,y,t) 術野画像
L(x,y) 拡大術野画像
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