(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】イミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、ワニス、並びにポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020562452
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051293
(87)【国際公開番号】W WO2020138360
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018248393
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大東 葵
(72)【発明者】
【氏名】関口 慎司
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018802(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104558605(CN,A)
【文献】特開2008-231327(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191822(WO,A1)
【文献】特開2006-016592(JP,A)
【文献】特開平07-157560(JP,A)
【文献】特開2018-048344(JP,A)
【文献】特開2018-030994(JP,A)
【文献】特開2015-229691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0273711(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103756317(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103755959(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73、C08L79
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含
み、
前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、
前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、
構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位IB及び構成単位ABが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含む、イミド-アミド酸共重合体。
【化1】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【化2】
【請求項2】
前記sが1~20である、請求項1に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項3】
前記tが5~200である、請求項1又は2に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項4】
前記Y
1が、炭素数4~39の2価の芳香族基、ジアミノアルキルシクロヘキサン又はこれらの組み合わせからなる基である、請求項1~3のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項5】
前記X
1が、炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基又はこれらの組み合わせからなる基である、請求項1~4のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項6】
前記X
2が、炭素数4~39の4価の芳香族基である、請求項1~5のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項7】
構成単位AAが、テトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位(A-2)を含み、
構成単位(A-2)が、下記式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、下記式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)、下記式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)、及び下記式(a-2-4)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項
1~
6のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化3】
【請求項8】
更に下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)を含む、請求項
1~
7のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化4】
(式(b-2)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に1価の芳香族基又は1価の脂肪族基を示し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R
5及びR
6は、それぞれ独立に1価の脂肪族基又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R
1及びR
2の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。)
【請求項9】
前記R
1及びR
2が、フェニル基であり、R
3及びR
4が、メチル基である、請求項
8に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項10】
イミド-アミド酸共重合体中のポリオルガノシロキサン単位の含有量が5~45質量%である、請求項
8又は
9に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【請求項11】
構成単位(A-1)が、下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)、下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)、及び下記式(a-1-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-3)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項
1~
10のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化5】
【請求項12】
構成単位IB及び構成単位ABが、更に下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)を含む、請求項
1~
11のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【化6】
(式(b-3)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1つに記載の共重合体が有機溶媒に溶解してなる、ワニス。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか1つに記載の共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【請求項15】
前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000~300,000である、請求項
14に記載のポリイミドフィルム。
【請求項16】
下記工程1及び工程2を有する、イミド-アミド酸共重合体の製造方法。
工程1:イミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含
み、
前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、
前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、
構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位IB及び構成単位ABが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【化7】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【化8】
【請求項17】
工程1で得られるイミドオリゴマーが分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有する、請求項
16に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【請求項18】
工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比(ジアミン/テトラカルボン酸)が、1.01~2である、請求項
16又は
17に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【請求項19】
工程1で用いられるイミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分が、脂環式テトラカルボン酸成分であり、工程2で用いられるアミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分が、芳香族テトラカルボン酸成分である、請求項
16~
18のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【請求項20】
工程2終了後に、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させる、請求項
16~
19のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究が進められている。このような用途のポリイミドフィルムには高い透明性が求められる。
また、ガラス支持体やシリコンウェハ上に塗布したワニスを加熱硬化してポリイミドフィルムを形成する場合には、ポリイミドフィルムに残留応力が生じる。ポリイミドフィルムの残留応力が大きいと、ガラス支持体やシリコンウェハが反ってしまうという問題が生じるため、ポリイミドフィルムには残留応力の低減も求められる。
さらに、ポリイミドフィルムの要求特性として複屈折による位相差が小さく、リタデーションが低いことが求められる。
【0003】
特許文献1には、低残留応力のフィルムを与えるポリイミド樹脂として、ジアミン成分としてα,ω-アミノプロピルポリジメチルシロキサン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いて合成されたポリイミド樹脂が開示されている。
特許文献2には、低残留応力のポリイミドフィルムとして、ジアミン成分としてビストリフルオロメチルベンジジン、及びケイ素含有ジアミン類を用いて合成されたポリイミド樹脂前駆体をイミド化して形成されるポリイミドフィルムが開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、溶媒可溶性、貯蔵安定性、耐熱性を向上させるために、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と特定のジアミン又はジイソシアネートが共重合されてなるポリイミド重合体オリゴマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-232383号公報
【文献】国際公開第2014/098235号
【文献】国際公開第2014/199723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1及び2ではポリイミドの前駆体としてポリアミド酸を用いて、性能の向上を試みているが、ポリアミド酸は保存安定性が劣るという問題がある。一方、ポリイミド樹脂はポリアミド酸のような分解は生じないが、溶媒への溶解度が低いため、ポリイミドを含むワニスが大気中の水分を吸湿するためか、製膜時にフィルムに白化が生じることがあり、成形加工上、問題となっていた。特許文献3のポリイミドオリゴマーを用いた場合には黄色度(イエローインデックス、YI)やリタデーションが高いという問題があり、成形加工性についても十分とはいえなかった。
このように、保存安定性と成形加工性を両立させることは困難であった。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は保存安定性と成形加工性を両立することができるポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、該共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含む共重合体が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の[1]~[23]に関する。
[1]
下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体。
【0009】
【化1】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【0010】
[2]
前記sが1~20である、前記[1]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[3]
前記tが5~200である、前記[1]又は[2]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[4]
前記Y1が、炭素数4~39の2価の芳香族基、ジアミノアルキルシクロヘキサン又はこれらの組み合わせからなる基である、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
[5]
前記X1が、炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基又はこれらの組み合わせからなる基である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
[6]
前記X2が、炭素数4~39の4価の芳香族基である、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
[7]
前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、
前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、
構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位IB及び構成単位ABが、エーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を含む、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
[8]
前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、
前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、
構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位IB及び構成単位ABが、含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位を含む、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
[9]
構成単位IB及び構成単位ABが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含む、前記[7]又は[8]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
【0011】
【0012】
[10]
構成単位AAが、テトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位(A-2)を含み、
構成単位(A-2)が、下記式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、下記式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)、下記式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)、及び下記式(a-2-4)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、前記[7]~[9]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【0013】
【0014】
[11]
更に下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)を含む、前記[7]~[10]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【0015】
【化4】
(式(b-2)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に1価の芳香族基又は1価の脂肪族基を示し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R
5及びR
6は、それぞれ独立に1価の脂肪族基又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R
1及びR
2の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。)
【0016】
[12]
前記R1及びR2が、フェニル基であり、R3及びR4が、メチル基である、前記[11]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[13]
イミド-アミド酸共重合体中のポリオルガノシロキサン単位の含有量が5~45質量%である、前記[11]又は[12]に記載のイミド-アミド酸共重合体。
[14]
構成単位(A-1)が、下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)、下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)、及び下記式(a-1-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-3)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、前記[7]~[13]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【0017】
【0018】
[15]
構成単位IB及び構成単位ABが、更に下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)を含む、前記[7]~[14]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体。
【0019】
【化6】
(式(b-3)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表わす。)
【0020】
[16]
前記[1]~[15]のいずれか1つに記載の共重合体が有機溶媒に溶解してなる、ワニス。
[17]
前記[1]~[15]のいずれか1つに記載の共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
[18]
前記ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000~300,000である、前記[17]に記載のポリイミドフィルム。
[19]
下記工程1及び工程2を有する、イミド-アミド酸共重合体の製造方法。
工程1:イミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【0021】
【化7】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【0022】
[20]
工程1で得られるイミドオリゴマーが分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有する、前記[19]に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
[21]
工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比(ジアミン/テトラカルボン酸)が、1.01~2である、前記[19]又は[20]に記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
[22]
工程1で用いられるイミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分が、脂環式テトラカルボン酸成分であり、工程2で用いられるアミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分が、芳香族テトラカルボン酸成分である、前記[19]~[21]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
[23]
工程2終了後に、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させる、前記[19]~[22]のいずれか1つに記載のイミド-アミド酸共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、保存安定性と成形加工性を両立することができるポリイミド樹脂の前駆体であるイミド-アミド酸共重合体及びその製造方法、該共重合体を含むワニス、並びにポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[イミド-アミド酸共重合体]
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含む。
【0025】
【化8】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【0026】
<イミド部分(I)>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を構成するイミド部分(I)は、前記式(1)の(I)で示される部分である。
前記式(1)において、X1は、炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C2H4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、なかでも、炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基又はこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、炭素数4~39の4価の脂環基からなる基であることがより好ましい。
X1が脂肪族基又は脂環基であることによって、ポリイミドの透明性が良好となりリタデーションが低下するため、好ましい。また、ポリイミドフィルムの伸びが向上するため好ましい。
X1は、後述するテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IAの原料となるテトラカルボン酸二無水物から2つのジカルボン酸無水物部分(4つのカルボキシ基部分)を除いたものであることが好ましい。
【0027】
前記式(1)において、Y1は、炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C2H4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、なかでも、炭素数4~39の2価の芳香族基、ジアミノアルキルシクロヘキサン又はこれらの組み合わせからなる基であることが好ましい。
ここで、複数のY1は同一の組成を有する。「同一の組成」とは、1種類のジアミン由来のY1の構造を有する場合、前記式(1)に示されるY1は全て同じ構造を有することをいい、複数のジアミン由来のY1の構造を有する場合、前記式(1)に示される各Y1には同じ割合でそれぞれのジアミン由来のY1の構造が存在することをいう。すなわち、複数のジアミン由来のY1の構造を有する場合、各分子で見れば、各Y1が異なっていたとしても、全ての分子を見れば、全てのY1の位置には同じ割合でそれぞれのジアミン由来のY1の構造が存在する。
Y1は、後述するジアミンに由来する構成単位IBの原料となるジアミンから
2つのアミノ基部分を除いたものであることが好ましい。
【0028】
前記式(1)において、sはイミド部分(I)中の繰り返し単位の数であって、正の整数である。
sは、保存安定性と成形加工性の観点から、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~5であることがより更に好ましい。イミド部分(I)の平均繰り返し数、すなわち、sの平均値は、1~10であることが好ましく、1.5~9であることがより好ましく、1.5~8であることが更に好ましく、1.7~5であることがより更に好ましい。前記イミド部分(I)の平均繰り返し数は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のイミド部分(I)の繰り返し数の平均値のことをいい、sの平均値は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のsの平均値のことをいう。
【0029】
<アミド酸部分(A)>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を構成するアミド酸部分(A)は、前記式(1)の(A)で示される部分である。
前記式(1)において、X2は、X1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO2-、-CO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C2H4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、なかでも、炭素数4~39の4価の芳香族基であることが好ましい。
X2が芳香族基であることによって、ポリイミドの耐熱性が向上するため、好ましい。
X2は、後述するテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AAの原料となるテトラカルボン酸二無水物から二つのカルボン酸無水物部分を除いたものであることが好ましい。
【0030】
前記式(1)において、Y1はイミド部分(I)で説明したものと同じである。
Y1は、後述するジアミンに由来する構成単位ABの原料となるジアミンから二つのアミノ基部分を除いたものであることが好ましい。
【0031】
前記式(1)において、tは本発明のイミド-アミド酸共重合体に含まれるイミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位の数であって、正の整数である
tは、保存安定性と成形加工性の観点から、5~200であることが好ましく、6~150であることがより好ましく、10~120であることが更に好ましい。イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位の平均繰り返し数、すなわち、tの平均値は、5~200であることが好ましく、6~150であることがより好ましく、10~120であることが更に好ましい。前記イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位の平均繰り返し数は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のイミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位の繰り返し数のことをいい、tの平均値は、後述のポリイミドワニスやポリイミドフィルムに含まれる全部のイミド-アミド酸共重合体のtの平均値のことをいう。
【0032】
従来のイミド-アミド酸共重合体は、イミド部分とアミド酸部分が、ランダムに存在するのに対して、本発明のイミド-アミド酸共重合体は、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)が特定の構造を有することで、保存安定性と成形加工性を両立することができるものと考えられる。
【0033】
<イミド-アミド共重合体の実施形態>
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、前記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含むが、その具体的な実施形態について以下に示す。
【0034】
本発明のイミド-アミド酸共重合体の第一の具体的な実施形態として、前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、構成単位IB及び構成単位ABが、エーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を含む。
【0035】
また、本発明のイミド-アミド酸共重合体の第二の具体的な実施形態として、前記イミド部分(I)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びジアミンに由来する構成単位IBを有し、前記アミド酸部分(A)が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位AA及びジアミンに由来する構成単位ABを有し、構成単位IAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含み、構成単位IB及び構成単位ABが、含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位を含む。
【0036】
(構成単位IA)
構成単位IAは、本発明の共重合体のイミド部分(I)に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含むことが好ましく、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)を含むことがより好ましい。
なお、本明細書において、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは4つのカルボキシ基が結合する炭素原子の少なくとも1つが脂環構造を構成しているテトラカルボン酸二無水物を意味し、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは4つのカルボキシ基が結合する炭素原子の少なくとも1つが芳香環構造を構成しているテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは4つのカルボキシ基が結合する炭素原子の全てが脂肪族炭素であるテトラカルボン酸二無水物を意味する。
【0037】
構成単位(A-1)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位である。
構成単位(A-1)は、好ましくは下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)、下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)、及び下記式(a-1-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-3)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、高透明性、高耐熱性及び低残留応力の観点から、より好ましくは下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)を含む。式(a-1-1)で表される化合物は、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)であり、式(a-1-3)で表される化合物は、5,5’-ビス-2-ノルボルネン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸-5,5’,6,6’-二無水物(BNBDA)である。
【0038】
【0039】
構成単位(A-1)中における、構成単位(A-1-1)~(A-1-3)の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
構成単位(A-1)は、構成単位(A-1-1)~(A-1-3)から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよく、構成単位(A-1-1)~(A-1-3)から選ばれるいずれか1種のみからなっていてもよい。
特に、構成単位(A-1)中における構成単位(A-1-1)の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
【0040】
構成単位(A-1)は、式(a-1-1)~(a-1-3)で表される化合物以外の脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を有していてもよい。かかる脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、及びジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのなかでも構成単位(A-1)中における式(a-1-1)~(a-1-3)で表される化合物以外の脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位が好ましい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)は1種を単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0041】
(構成単位AA)
構成単位AAは、本発明の共重合体のアミド酸部分(A)に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)以外のテトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位(A-2)を含むことがより好ましい。
【0042】
構成単位(A-2)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)以外のテトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位である。テトラカルボン酸二無水物(a-2)としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。即ち、構成単位(A-2)は、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含むことが好ましい。
すなわち、構成単位AAは、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位を含むことが好ましい。
構成単位(A-2)は、高耐熱性、及び低残留応力の観点から、下記式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、下記式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)、下記式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)、及び下記式(a-2-4)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0043】
【0044】
式(a-2-1)で表される化合物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)であり、その具体例としては、下記式(a-2-1s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、下記式(a-2-1a)で表される2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、下記式(a-2-1i)で表される2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)が挙げられる。中でも、下記式(a-2-1s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)が好ましい。
【0045】
【0046】
式(a-2-2)で表される化合物は、p-フェニレンビス(トリメリテート)二無水物(TAHQ)である。
【0047】
式(a-2-3)で表される化合物は、オキシジフタル酸無水物(ODPA)であり、その具体例としては、下記式(a-2-3s)で表される4,4’-オキシジフタル酸無水物(s-ODPA)、下記式(a-2-3a)で表される3,4’-オキシジフタル酸無水物(a-ODPA)、下記式(a-2-3i)で表される3,3’-オキシジフタル酸無水物(i-ODPA)が挙げられる。中でも、下記式(a-2-3s)で表される4,4’-オキシジフタル酸無水物(s-ODPA)が好ましい。
【0048】
【0049】
式(a-2-4)で表される化合物は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)である。
【0050】
構成単位(A-2)は、高耐熱性、及び低残留応力の観点から、構成単位(A-2-1)、及び構成単位(A-2-2)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
構成単位(A-2-1)はフィルムの耐熱性及び熱安定性が向上し、残留応力をより低下させる観点から好ましく、構成単位(A-2-2)はYIが低下し、無色透明性により優れる観点から好ましい。
【0051】
テトラカルボン酸二無水物(a-2)は、式(a-2-1)~(a-2-4)で表される化合物以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。かかるテトラカルボン酸二無水物としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び下記式(a-2-5)で表される化合物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;並びに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらの中では、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
テトラカルボン酸二無水物(a-2)は1種を単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
【0053】
構成単位(A-2)中における、構成単位(A-2-1)~(A-2-4)の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位(A-2)は、構成単位(A-2-1)~(A-2-4)から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよく、構成単位(A-2-1)~(A-2-4)から選ばれるいずれか1種のみからなっていてもよい。
構成単位(A-2)が構成単位(A-2-1)~(A-2-4)から選ばれる2種以上の構成単位を含有する場合、構成単位(A-2)中における各構成単位の比率に特に制限は無く、任意の比率とすることができる。
【0054】
構成単位(A-2)中における、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。当該合計の含有比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
【0055】
イミド-アミド酸共重合体のテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位中の、構成単位(A-1)と構成単位(A-2)とのモル比〔(A-1)/(A-2)モル比〕は、好ましくは10/90~90/10であり、より好ましくは30/70~85/15であり、更に好ましくは50/50~80/20である。
【0056】
(構成単位IB及び構成単位AB)
構成単位IB及び構成単位ABは、それぞれ本発明の共重合体のイミド部分(I)及びアミド酸部分(A)に占めるジアミンに由来する構成単位である。(以下、構成単位IB及び構成単位ABを併せて「構成単位B」ともいう。)
構成単位IB及び構成単位ABは、エーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位又は含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位を含むことが好ましく、柔軟性の観点からは、エーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を含むことがより好ましく、透明性の観点からは、含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位を含むことがより好ましい。
【0057】
なお、構成単位IB及び構成単位ABは、同一の組成からなる。「同一の組成」とは、1種類のジアミン由来の構成単位からなる場合、構成単位IB及び構成単位ABは全て同一の構成単位からなることをいい、複数のジアミン由来の構成単位からなる場合、構成単位IB及び構成単位ABには同じ割合でそれぞれのジアミン由来の構成単位が存在することをいう。すなわち、複数のジアミン由来の構成単位からなる場合、各分子で見れば、構成単位IBと構成単位ABの構成単位が異なっていたとしても、全ての分子を見れば、同じ割合でそれぞれのジアミン由来の構成単位が存在する。
【0058】
前記エーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を与える前記エーテル結合を有する芳香族ジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)が好ましい。
【0059】
前記含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位を与える含フッ素芳香族ジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)等が挙げられ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)が好ましい。
【0060】
以上のように、構成単位Bは、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含むことが好ましい。構成単位Bが構成単位(B-1)を含むことによって、透明性に優れ、かつ低残留応力及び低リタデーションの特性を両立させることができる。
【0061】
【0062】
式(b-1)で表される化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(6FODA)である。
【0063】
構成単位Bは、さらに下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)を含むことが好ましい。
【0064】
【0065】
上記式(b-3)中において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、及び炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、水素原子、フッ素原子、及びメチル基からなる群より選択されることが好ましく、水素原子がより好ましい。
上記式(b-3)で表される化合物としては、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられ、これら3種の化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンがより好ましい。
本発明の共重合体は、前記構成単位(B-3)を含むことによって、透明性及び耐熱性が向上する。
【0066】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは48モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは88モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99.5モル%以下、更に好ましくは99.0モル%以下である。構成単位Bは構成単位(B-1)のみからなっていてもよい。
構成単位Bが構成単位(B-3)を含む場合、構成単位B中における構成単位(B-3)の比率は、低残留応力の観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは25モル%以上であり、そして好ましくは65モル%以下、より好ましくは55モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
構成単位Bが構成単位(B-3)を含む場合における、構成単位B中の構成単位(B-1)及び(B-3)の合計の比率は、好ましくは85.0~100モル%、より好ましくは88.0~99.5モル%、更に好ましくは92.0~99.0モル%である。構成単位Bが構成単位(B-3)を含まない場合における、構成単位B中の構成単位(B-1)の比率も、上記と同じ範囲であることが好ましい。
【0067】
構成単位Bは、柔軟性の観点から、スルホニル基を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を含んでいてもよい。
前記スルホニル基を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位を与えるスルホニル基を有する芳香族ジアミンとしては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3-DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4-DDS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-M)等が挙げられる。
【0068】
構成単位Bは、前記のエーテル結合を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位、含フッ素芳香族ジアミンに由来する構成単位、及びスルホニル基を有する芳香族ジアミンに由来する構成単位に例示したジアミンに由来する構成単位以外、並びに構成単位(B-1)及び(B-3)以外のその他のジアミンに由来する構成単位を含んでもよい。
そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
構成単位Bに任意に含まれるその他のジアミンに由来する構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
構成単位Bは、特に、低リタデーションを実現する観点から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンに由来する構成単位を含まないことが好ましい。
【0069】
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
【0070】
(その他の構成単位)
本発明のイミド-アミド酸共重合体には、前記の構成単位IA、構成単位AA、構成単位IB及び構成単位AB以外の構成単位も含んでもよい。
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、さらに下記一般式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)を含むことが好ましい。構成単位(B-2)を含むことによって、残留応力が低下する。
【0071】
【0072】
式(b-2)中、Z1及びZ2はそれぞれ独立に2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の芳香族基、又は1価の脂肪族基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立に1価の脂肪族基を示し、R5及びR6は、それぞれ独立に1価の脂肪族基、又は1価の芳香族基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mとnとの和は2~1000の整数を示す。但し、R1及びR2の少なくとも一方は1価の芳香族基を示す。
なお、式(b-2)において、[ ]によって並列記載されている2以上の異なる繰り返し単位は、それぞれランダム状、交互状又はブロック状のいずれの形及び順序で繰り返されていてもよい。
【0073】
式(b-2)中、Z1及びZ2における2価の脂肪族基又は2価の芳香族基は、フッ素原子で置換されていてもよく、酸素原子を含んでいてもよい。エーテル結合として酸素原子を含んでいる場合、以下に示す炭素数は、脂肪族基又は芳香族基に含まれる全ての炭素数のことをいう。
2価の脂肪族基としては、炭素数1~20の2価の飽和又は不飽和の脂肪族基が挙げられる。2価の脂肪族基の炭素数は3~20が好ましい。
2価の飽和脂肪族基としては、炭素数1~20のアルキレン基、アルキレンオキシ基が挙げられ、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が例示でき、アルキレンオキシ基としては、例えば、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基等が例示できる。
2価の不飽和脂肪族基としては、炭素数2~20のアルキレン基が挙げられ、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、末端に不飽和二重結合を有するアルキレン基が例示できる。
2価の芳香族基としては炭素数6~20のアリーレン基、炭素数7~20のアラルキレン基等が例示できる。Z1及びZ2における炭素数6~20のアリーレン基の具体例としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4’-ビフェニリレン基、2,6-ナフチレン基等が挙げられる。
Z1及びZ2としては、特に、トリメチレン基、p-フェニレン基が好ましく、トリメチレン基がより好ましい。
【0074】
式(b-2)中、R1~R6における1価の脂肪族基としては、1価の飽和又は不飽和脂肪族基が挙げられる。1価の飽和脂肪族基としては炭素数1~22のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が例示できる。1価の不飽和脂肪族基としては炭素数2~22のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、プロペニル基等が例示できる。これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。
式(b-2)のR1、R2、R5及びR6における1価の芳香族基としては、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~30であり、かつアルキル基で置換されたアリール基、炭素数7~30のアラルキル基等が例示できる。1価の芳香族基としては、アリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
R1及びR2の少なくとも一方は1価の芳香族基を示すが、R1及びR2がともに1価の芳香族基であることが好ましく、R1及びR2がともにフェニル基であることがより好ましい。
R3及びR4としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R5及びR6としては、1価の脂肪族基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0075】
式(b-2)における、mは1価の少なくとも1つの芳香族基が結合するシロキサン単位の繰り返し数を示し、nは1価の脂肪族基が結合するシロキサン単位の繰り返し数を示す。
m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、m及びnの和(m+n)は2~1000の整数を示す。m及びnの和は、好ましくは3~500の整数、より好ましくは3~100、更に好ましくは3~50の整数を示す。
m/nの比は、好ましくは50/50~99/1、より好ましくは60/40~90/10、更に好ましくは70/30~80/20である。
【0076】
式(b-2)で表される化合物の官能基当量は、好ましくは150~5,000g/mol、より好ましくは400~4,000g/mol、更に好ましくは500~3,000g/molである。
なお、官能基当量とは、官能基1モルあたりの式(b-2)で表される化合物の質量を意味する。
なお、前記一般式(b-2)で表される化合物としては、下記一般式(b-21)であってもよい。
【0077】
【化17】
(式(b-21)中、Z
1、Z
2、R
1~R
6、m及びnは式(b-2)で示したものと同じである。)
【0078】
構成単位(B-2)と構成単位Bの合計量に対する構成単位(B-2)の比率は、好ましくは0.01~15.0モル%、より好ましくは0.5~12.0モル%、更に好ましくは1.0~8.0モル%である。
【0079】
イミド-アミド酸共重合体を構成する構成単位の合計に対するポリオルガノシロキサン単位の含有量は、好ましくは5~45質量%、より好ましくは7~40質量%、更に好ましくは10~35質量%である。当該ポリオルガノシロキサン単位の含有量が前記範囲内にあると、低リタデーションと低残留応力とをより高度に両立できる。
【0080】
式(b-2)で表される化合物の市販品として入手できるものとしては、信越化学工業株式会社製の「X-22-9409」、「X-22-1660B-3」等が挙げられる。
【0081】
(イミド繰り返し構造単位/アミド酸構造単位の好適例)
本発明の共重合体は、構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位、及び構成単位(A-2)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるアミド酸構造単位を有することが好ましい。
【0082】
すなわち、本発明の共重合体は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位IA及びAA、並びにジアミンに由来する構成単位IB及びABを有する共重合体であって、
構成単位IA及びAAが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)と、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)以外のテトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位(A-2)からなり、
構成単位IB及びABが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、
構成単位(A-2)が、下記式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、下記式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)、下記式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)、及び下記式(a-2-4)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
該共重合体が、構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位を有し、構成単位(A-2)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるアミド酸構造単位を有することが好ましい。
【0083】
【0084】
本発明の共重合体は、構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物と構成単位Bを与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位、構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物以外の化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位を有していてもよい。同様に、本発明の共重合体は、構成単位(A-2)を与える化合物以外の化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるアミド酸構造単位を有していてもよい。
【0085】
<ポリイミドフィルム物性値>
本発明のイミド-アミド酸共重合体を用いることで、無色透明性、及び耐熱性に優れ、更に低残留応力、及び低リタデーションであるポリイミドフィルムも形成することができる。当該フィルムの有する好適な物性値は以下の通りである。
全光線透過率は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは87%以上、より好ましくは89%以上、更に好ましくは90%以上である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは7.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、より更に好ましくは3.0以下である。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは220℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは290℃以上である。
厚さ10μmのポリイミドフィルムとした際の厚み位相差(Rth)の絶対値は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは110nm以下、特に好ましくは90nm以下である。なお、本明細書において、「低リタデーション」とは、厚み位相差(Rth)が低いことを意味し、低リタデーションであると、複屈折による位相差が小さく、好ましい。
残留応力は、好ましくは26MPa以下、より好ましくは24MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。
なお、本発明における上述の物性値は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0086】
[イミド-アミド酸共重合体の製造方法]
本発明のイミド-アミド酸共重合体の製造方法は、下記工程1及び工程2を有する。
工程1:イミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程
【0087】
【化19】
(式(1)中、
X
1は炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
X
2はX
1とは異なる炭素数4~39の4価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。
Y
1は炭素数4~39の2価の脂肪族基、脂環基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、複数のY
1は同一の組成を有する。
s及びtは正の整数である。)
【0088】
本発明のイミド-アミド酸共重合体の製造方法によれば、イミド部分とアミド酸部分を特定の構造に制御することが可能となるため、従来のイミド部分とアミド酸部分がランダムに存在するイミド-アミド酸共重合体とは異なり、保存安定性と成形加工性を両立することができるイミド-アミド酸共重合体を得ることができるものと考えられる。
【0089】
なかでも、本発明の好適な共重合体は、構成単位(A-1)を与える化合物、及び構成単位(A-2)を与える化合物からなるテトラカルボン酸成分と、構成単位(B-1)を含むジアミン成分とを反応させることにより製造することができ、好ましくは、下記工程1及び工程2を有する方法により製造される。
工程1:構成単位(A-1)を与える化合物と、構成単位(B-1)を与える化合物とを反応させ、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたオリゴマーと、構成単位(A-2)を与える化合物を反応させ、イミド繰り返し構造単位及びアミド酸構造単位を有する共重合体を得る工程
【0090】
すなわち、本発明の好適な共重合体の製造方法は、下記工程1及び工程2を有する、共重合体の製造方法であって、
共重合体が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、
構成単位Aが、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に由来する構成単位(A-1)と、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)以外のテトラカルボン酸二無水物(a-2)に由来する構成単位(A-2)からなり、
構成単位Bが、式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、
構成単位(A-2)が、式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)、式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)、及び式(a-2-4)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
工程1:構成単位(A-1)を与える化合物と、構成単位(B-1)を与える化合物とを反応させ、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを得る工程
工程2:工程1で得られたオリゴマーと、構成単位(A-2)を与える化合物と、構成単位Bを与える化合物を反応させ、イミド繰り返し構造単位及びアミド酸繰り返し構造単位を有する共重合体を得る工程
【0091】
前記工程1及び工程2を有する製造方法により、保存安定性と成形加工性を両立することができるとともに、無色透明性及び耐熱性に優れ、低リタデーション及び低残留応力にも優れるフィルムが形成可能な共重合体を製造することができる。
以下、本発明の共重合体の製造方法について説明する。
【0092】
<工程1>
工程1は、イミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させ、イミドオリゴマーを得る工程である。
好ましくは、イミド部分(I)を構成するテトラカルボン酸成分が、脂環式テトラカルボン酸成分である。
工程1は、より好ましくは構成単位(A-1)を与える化合物と、構成単位(B-1)を与える化合物とを反応させ、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを得る工程である。
工程1で使用するテトラカルボン酸成分としては、構成単位(A-1)を与える化合物を含むことが好ましく、構成単位(A-1)が構成単位(A-1-1)を含む場合には、構成単位(A-1-1)を与える化合物は、その全量を工程1で使用することが好ましい。
工程1で使用するジアミン成分としては、構成単位(B-1)を与える化合物を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(B-1)を与える化合物以外のジアミン成分を含んでいてもよい。このような化合物としては、構成単位(B-3)を与える化合物が挙げられる。
工程1において、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分は、1.01~2モルであることが好ましく、1.05~1.9モルであることがより好ましく、1.1~1.7モルであることが更に好ましい。
【0093】
工程1でイミドオリゴマーを得るための、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、室温(約20℃)~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温(約20℃)~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0094】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0095】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒が好ましく、有機塩基触媒がより好ましく、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミンから選ばれる1種以上が更に好ましく、トリエチルアミンがより更に好ましい。
【0096】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0097】
工程1で得られたイミドオリゴマーは、構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位を有することが好ましい。
また、工程1で得られるオリゴマーは、分子鎖の主鎖の両末端にアミノ基を有することが好ましい。
上記方法により、溶剤に溶解したイミドオリゴマーを含む溶液が得られる。工程1で得られたイミドオリゴマーを含む溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、工程1においてテトラカルボン酸成分やジアミン成分として使用した成分の少なくとも一部が未反応モノマーとして含有されていてもよい。
【0098】
<工程2>
本発明の製造方法における工程2は、工程1で得られたイミドオリゴマーと、アミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分を反応させ、下記式(1)で表される、イミド部分(I)とアミド酸部分(A)とからなる繰り返し単位を含む、イミド-アミド酸共重合体を得る工程である。
工程2で使用するアミド酸部分(A)を構成するテトラカルボン酸成分は、芳香族テトラカルボン酸成分であることが好ましく、構成単位(A-2)を与える化合物を含むことがより好ましく、構成単位(A-1)を与える化合物を含んでいてもよい。ただし、工程2で使用するテトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1-1)を与える化合物を含まないことが好ましい。また、構成単位(A-2)を与える化合物は、その全量を工程2で使用することが好ましい。
工程2終了後に、本発明のイミド-アミド酸共重合体にポリオルガノシロキサン単位を導入するために、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物を反応させてもよく、ポリオルガノシロキサン単位を含有するジアミンを反応させることが好ましく、構成単位(B-2)を与える化合物を反応させることがより好ましい。
【0099】
工程2でイミド-アミド酸共重合体を得るための、テトラカルボン酸成分と工程1で得られたイミドオリゴマーとを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)工程1で得られたイミドオリゴマー、テトラカルボン酸成分及び溶剤を反応器に仕込み、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間撹拌する方法、(2)工程1で得られたイミドオリゴマー及び溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間撹拌する方法、等が挙げられる。 80℃以下で反応させる場合には、工程2で得られる共重合体の分子量が重合時の温度履歴に依存して変動することなく、また熱イミド化の進行も抑制できるため、当該共重合体を安定して製造できる。
【0100】
本発明の製造方法で得られるイミド-アミド酸共重合体は、工程2におけるテトラカルボン酸成分と、工程2におけるジアミン成分と、工程1で得られるオリゴマーとの重付加反応の生成物である。
本発明のイミド-アミド酸共重合体は、工程1において構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるイミド繰り返し構造単位を有し、かつ工程2において構成単位(A-2)を与える化合物と前記構成単位(B-1)を与える化合物とから形成されるアミド酸構造単位を有することが好ましい。
【0101】
上記方法により、溶剤に溶解したイミド-アミド酸共重合体を含む共重合体溶液が得られる。
得られる共重合体溶液中の共重合体の濃度は、通常1~50質量%であり、好ましくは3~35質量%、より好ましくは10~30質量%の範囲である。
【0102】
本発明の製造方法で得られるイミド-アミド酸共重合体の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~500,000である。また、重量平均分子量(Mw)は、同様の観点から、好ましくは10,000~800,000であり、より好ましくは100,000~300,000である。なお、当該共重合体の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
次に本製造方法で用いられる原料等について説明する。
【0103】
<テトラカルボン酸成分>
本製造方法におけるイミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるテトラカルボン酸成分は、前記<イミド-アミド酸共重合体の実施形態>の(構成単位IA)及び(構成単位AA)に記載した、それぞれの構成単位を与える化合物を用いることが好ましい。たとえば、構成単位(A-1)を与える化合物としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に対応する脂環式テトラカルボン酸及び当該脂環式テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1)を与える化合物としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)が好ましい。
同様に、構成単位(A-2)を与える化合物としては、テトラカルボン酸二無水物(a-2)が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物(a-2)に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-2)を与える化合物としては、テトラカルボン酸二無水物(a-2)が好ましい。
【0104】
本製造方法におけるイミド-アミド酸共重合体の原料として用いられるテトラカルボン酸成分中の、構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(A-2)を与える化合物とのモル比〔(A-1)/(A-2)モル比〕は、好ましくは10/90~90/10であり、より好ましくは30/70~85/15であり、更に好ましくは50/50~80/20である。
【0105】
構成単位(A-1)を与える化合物としては、構成単位(A-1-1)を与える化合物、構成単位(A-1-2)を与える化合物、及び構成単位(A-1-3)を与える化合物が好ましく、構成単位(A-1-1)を与える化合物がより好ましい。構成単位(A-1)を与える化合物中の、構成単位(A-1-1)~(A-1-3)を与える化合物の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%であり、特に構成単位(A-1)を与える化合物中の、構成単位(A-1-1)を与える化合物の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
構成単位(A-2)を与える化合物としては、構成単位(A-2-1)を与える化合物、構成単位(A-2-2)を与える化合物、構成単位(A-2-3)を与える化合物、及び構成単位(A-2-4)を与える化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。構成単位(A-2)を与える化合物中の、構成単位(A-2-1)~(A-2-4)を与える化合物の合計の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
テトラカルボン酸成分には、構成単位(A-1-1)、構成単位(A-1-2)、構成単位(A-1-3)、構成単位(A-2-1)、構成単位(A-2-2)、構成単位(A-2-3)、及び構成単位(A-2-4)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、かかる化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0106】
<ジアミン成分>
構成単位Bを与える化合物としては、ジアミンが挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、ジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位Bを与える化合物としては、ジアミンが好ましい。
たとえば、構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。同様に、構成単位(B-3)を与える化合物としては、式(b-3)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0107】
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物を、好ましくは45モル%以上、より好ましくは48モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは88モル%以含み、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99.5モル%以下、更に好ましくは99.0モル%以下含む。ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物のみからなっていてもよい。
ジアミン成分として構成単位(B-3)を与える化合物を含む場合、構成単位(B-3)を与える化合物を、全ジアミン成分中、好ましくは5~65モル%、より好ましくは10~55モル%、更に好ましくは25~50モル%含む。
ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-3)を与える化合物から選ばれる1種以上との組み合わせからなっていてもよい。
【0108】
構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-3)を与える化合物の合計の含有比率は、全ジアミン成分中、好ましくは45モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは85モル%以上である。当該合計の含有比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
【0109】
ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-3)を与える化合物以外の構成単位Bを与える化合物を含んでもよく、そのような化合物としては、上述の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミン、並びにそれらの誘導体(ジイソシアネート等)が挙げられる。
ジアミン成分に任意に含まれる構成単位(B-1)及び(B-3)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0110】
共重合体中に構成単位(B-2)を与える化合物を含む場合、構成単位(B-2)を与える化合物とジアミン成分の合計量に対して、構成単位(B-2)を与える化合物を、好ましくは0.01~15.0モル%、より好ましくは0.5~12.0モル%、更に好ましくは1.0~8.0モル%含む。
【0111】
本発明において、工程1、工程2及び工程2終了後の構成単位(B-2)を与える化合物等のその他の成分との反応工程を含めた共重合体の製造の全工程に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0112】
<末端封止剤>
また、本発明において、イミド-アミド酸共重合体の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0113】
<溶剤>
本発明の共重合体の製造方法に用いられる溶剤は、生成するイミド-アミド共重合体を溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0114】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0115】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましく、アミド系溶剤がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドンが更に好ましい。上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0116】
[ワニス]
本発明のワニスは、ポリイミド樹脂の前駆体である本発明のイミド-アミド酸共重合体が有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のワニスは、本発明の共重合体及び有機溶媒を含み、当該共重合体は当該有機溶媒に溶解している。
有機溶媒は本発明の共重合体が溶解するものであればよく、特に限定されないが、本発明の共重合体の製造に用いられる溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のワニスは、上述の共重合体溶液そのものであってもよいし、又は当該共重合体溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0117】
本発明のワニスは、本発明の共重合体中のアミド酸部位のイミド化を効率よく進行させる観点から、更にイミド化触媒及び脱水触媒を含有させることができる。イミド化触媒としては、沸点が40℃以上180℃以下であるイミド化触媒であればよく、沸点が180℃以下のアミン化合物が好ましいものとして挙げられる。沸点が180℃以下のイミド化触媒であれば、フィルム形成後、高温での乾燥時に該フィルムが着色し、外観が損なわれるおそれがない。また、沸点が40℃以上のイミド化触媒であれば、十分にイミド化が進行する前に揮発する可能性を回避できる。
イミド化触媒として好適に用いられるアミン化合物としては、ピリジン又はピコリンが挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
本発明のワニスに含まれる共重合体は溶媒溶解性を有しているため、高濃度のワニスとすることができる。本発明のワニスは、本発明の共重合体を3~40質量%含む事が好ましく、5~40質量%含むことがより好ましく、10~30質量%含むことが更に好ましい。ワニスの粘度は0.1~100Pa・sが好ましく、0.1~20Pa・sがより好ましい。ワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
また、本発明のワニスは、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
本発明のワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0119】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のイミド-アミド酸共重合体中のアミド酸部位をイミド化してなるポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、保存安定性と成形加工性を両立することができ、更に無色透明性及び耐熱性に優れ、低リタデーション及び低残留応力を示す。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムは、前述の共重合体が有機溶媒に溶解してなるワニスを用いて製造することができる。
【0120】
本発明のワニスを用いてポリイミドフィルムを製造する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に本発明のワニスを塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去し、共重合体フィルムを得て、該共重合体フィルム中の共重合体のアミド酸部位を加熱によりイミド化(脱水閉環)し、次いで支持体から剥離することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
本発明のポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルムの機械的強度の観点から、好ましくは10,000~800,000であり、より好ましくは30,000~500、000、更に好ましくは50,000~400,000、100,000~300,000である。なお、当該共重合体の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0121】
本発明のワニスを乾燥させて共重合体フィルムを得る際の加熱温度としては、好ましくは50~150℃である。本発明の共重合体を加熱によりイミド化する際の加熱温度としては、好ましくは200~500℃、より好ましくは250~450℃、更に好ましくは300~400℃の範囲から選択することができる。また、加熱時間は、通常1分~6時間であり、好ましくは5分~2時間、より好ましくは15分~1時間である。
加熱雰囲気は、空気ガス、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、窒素/水素混合ガス等が挙げられるが、得られるポリイミド樹脂の着色を抑えるためには、酸素濃度が100ppm以下の窒素ガス、水素濃度が0.5%以下含む窒素/水素混合ガスが好ましい。
なお、イミド化の方法は熱イミド化に限定されず、化学イミド化を適用することもできる。
【0122】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは7~50μmの範囲である。厚みが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚みは、ワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0123】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0124】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で得たフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
【0125】
(1)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
(2)成形加工性
スピンコーターを用いて、実施例及び比較例で得られたワニスを100mm×100mmのガラス基板にワニスの厚さが100μmとなるように塗布し、23℃50%RHの環境下に保持した。目視にてフィルムの白化が確認できるまでの時間を測定した。白化し始めるまでの時間が長いほうが、プロセス上優位であり、成形加工性に優れる。
(3)保存安定性
実施例及び比較例で得られたワニスをガラス瓶に入れ、23℃で1週間保存した。製造直後のワニスの粘度と1週間保存後のワニスの粘度を測定し、1週間保存後のワニスの粘度を製造直後のワニスの粘度で除し、粘度の変化率(保存後粘度/製造直後粘度)を算出した。変化率、すなわち、粘度の増加率又は粘度の低下率が小さいものほど保存安定性に優れる。評価基準は、変化率が10%以下の場合をA、変化率が10%を超えた場合をBとした。なお、粘度はE型粘度計を用いて、23℃で測定した。
(4)全光線透過率、イエローインデックス(YI)
全光線透過率及びYIは、JIS K7105:1981に準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて測定した。
(5)ガラス転移温度(Tg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ3mm×20mm、荷重0.1N、窒素気流下(流量200mL/分)、昇温速度10℃/分の条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定を行い、伸びの変曲点が見られたところをガラス転移温度として求めた。
【0126】
(6)厚み位相差(Rth)
厚み位相差(Rth)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長590nmにおける、厚み位相差の値を測定した。なおRthは、ポリイミドフィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとし、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式によって表されるものである。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
【0127】
(7)残留応力
ケーエルエー・テンコール社製の残留応力測定装置「FLX-2320」を用いて、予め「反り量」を測定しておいた、厚み525μm±25μmの4インチシリコンウェハ上に、実施例及び比較例で得られたワニスを、スピンコーターを用いて塗布し、プリベークした。その後、熱風乾燥器を用いて、窒素雰囲気下、350℃30分(昇温速度5℃/分)の加熱硬化処理を施し、硬化後膜厚6~20μmのポリイミドフィルムのついたシリコンウェハを作製した。このウェハの反り量を前述の残留応力測定装置を用いて測定し、シリコンウェハとポリイミドフィルムの間に生じた残留応力を評価した。
【0128】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分、並びにその略号等は下記の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(JXエネルギー株式会社製;式(a-1-1)で表される化合物)
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(脂環式テトラカルボン酸二無水物(a-1)に該当する化合物)
s-BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱ケミカル株式会社製、式(a-2-1s)で表される化合物)
TAHQ:p-フェニレンビス(トリメリテート)二無水物(マナック株式会社製、式(a-2-2)で表される化合物)
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物(式(a-2-3)で表される化合物)
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
<ジアミン成分>
6FODA:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ChinaTech (Tianjin) Chemical Co., Ltd.製、式(b-1)で表される化合物)
BAFL:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(田岡化学工業株式会社製;式(b-3)で表される化合物)
<その他の成分>
X-22-1660B-3:両末端アミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、式(b-2)で表される化合物(官能基当量:2200g/mol又は2170g/mol))
【0129】
実施例及び比較例において使用した、溶媒及び触媒の略号等は下記の通りである。
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(三菱ケミカル株式会社製)
TEA:トリエチルアミン(関東化学株式会社製)
【0130】
〈実施例1〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを32.858g(0.0977モル)、及びNMPを90.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 22.936g(0.060モル)、及びNMP 22.500gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.302g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを54.435g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 11.704g(0.040モル)、及びNMP 8.065gを一括で添加し、50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを107.143g添加し、均一化した後、NMP 17.857gにX-22-1660B-3を7.723g(0.002モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌した。その後、固形分濃度が約15質量%になるようにNMPを添加し均一化させることで、イミド繰り返し構造単位とアミド酸構造単位とを有する共重合体を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
実施例1のように、イミド繰り返し構造単位とアミド酸構造単位を有する共重合体を「PI-AA」と称する。
【0131】
〈実施例2〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを26.953g(0.0802モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 19.231g(0.050モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.253g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 9.814g(0.033モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を14.002g(0.003モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0132】
〈実施例3〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを25.096g(0.0746モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 18.144g(0.047モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.253g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 9.259g(0.0315モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を17.502g(0.004モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0133】
〈実施例4〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを14.806g(0.044モル)、BAFLを15.343g(0.044モル)及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 27.576g(0.072モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.363g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 5.277g(0.0179モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を6.998g(0.002モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0134】
〈実施例5〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを26.235g(0.0780モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 24.985g(0.065モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.329g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 4.781g(0.0163モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を13.999g(0.003モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0135】
〈実施例6〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを26.250g(0.0781モル)、及びNMPを60.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 18.802g(0.049モル)、及びNMP 15.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.247g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを91.135g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、TAHQ 14.946g(0.0326モル)、及びNMP 8.865gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを218.750g添加し均一化した後、NMP 31.250gにX-22-1660B-3を15.002g(0.003モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約15質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたドワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0136】
〈実施例7〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを24.408g(0.0726モル)、及びNMPを60.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 17.738g(0.046モル)、及びNMP 15.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.233g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを91.135g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、TAHQ 14.101g(0.0308モル)、及びNMP 8.865gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを218.750g添加し均一化した後、NMP 31.250gにX-22-1660B-3を18.753g(0.004モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約15質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0137】
〈実施例8〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを34.383g(0.1023モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 23.583g(0.061モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.310g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 12.034g(0.0409モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを116.667g添加し均一化させ、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0138】
〈実施例9〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを26.694g(0.0794モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODAを19.053g(0.0496モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.251g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、ODPA 10.251g(0.0330モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を14.001g(0.00323モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0139】
〈実施例10〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを31.535g(0.0938モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、HPMDA 13.048g(0.0582モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.295g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 11.417g(0.0388モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を13.999g(0.00323モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0140】
〈実施例11〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを29.073g(0.0865モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 10.343g(0.0269モル)、HPMDA 6.032g(0.0269モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.272g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、s-BPDA 10.556g(0.0359モル)、及びNMP7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を13.998g(0.00323モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0141】
〈実施例12〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを29.554g(0.0879モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODAを17.512g(0.0456モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.231g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、CBDA 8.935g(0.0456モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を13.999g(0.00323モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0142】
〈実施例13〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを25.114g(0.0747モル)、及びNMPを56.000g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 23.960g(0.0623モル)、及びNMP 14.000gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.315g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流した。その後、NMPを85.806g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
得られた溶液に、6FDA 6.923g(0.0156モル)、及びNMP 7.527gを一括で添加し50℃で5時間撹拌した。その後、NMPを100.000g添加し均一化した後、NMP 16.667gにX-22-1660B-3を14.003g(0.00323モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌し、固形分濃度が約20質量%の共重合体(PI-AA)を含むワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0143】
〈比較例1〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを36.293g(0.1079モル)、及びNMPを59.112g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODAを24.894g(0.065モル)、s-BPDA 12.703g(0.043モル)、及びNMP 14.778gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.546g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して3時間還流した。
その後、固形分濃度が約20質量%となるようにNMPを201.110g添加して、反応系内温度を100℃まで冷却した後、更に約1時間撹拌して均一化して、ポリイミド(PI)ワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0144】
〈比較例2〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを32.662g(0.097モル)、及びNMPを130.667g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 37.338g(0.097モル)、及びNMP 32.667gを一括で添加し室温にて5時間撹拌した。
その後、固形分濃度が約20質量%となるようにNMPを116.667g添加し、更に約1時間撹拌して均一化して、ポリアミド酸(PAA)ワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたポリアミド酸ワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させたがフィルム全面にクラックが入っており測定には至らなかった。結果を表1に示す。
【0145】
〈比較例3〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを33.828g(0.101モル)、及びNMPを92.657g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODA 23.613g(0.061モル)、及びNMP 23.164gを一括で添加した後、イミド化触媒としてTEAを0.311g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して1時間還流し、イミド繰り返し構造単位を有するオリゴマーを含む溶液を得た。
その後、NMPを51.114g添加して、反応系内温度を50℃まで冷却した後、s-BPDA 12.050g(0.041モル)、及びNMP 8.065gを一括で添加し50℃で1時間撹拌した。その後、NMPを107.143g添加し均一化した後、NMP 17.857gにX-22-1660B-3を7.723g(0.002モル)溶解させた混合液を投入し、更に約1時間撹拌した。マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して3時間還流した。
その後、固形分濃度が約15質量%となるようにNMPを125.000g添加して、反応系内温度を100℃まで冷却した後、更に約1時間撹拌して均一化して、ポリイミドワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
比較例3で得られたポリイミドは、CpODAと6FODAとから形成されるイミド繰り返し構造単位を有し、s-BPDAと6FODAとから形成されるイミド構造単位を有する。当該ポリイミドを「PI-I」と称する。
【0146】
〈比較例4〉
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた500mLの5つ口丸底フラスコに、6FODAを37.333g(0.111モル)、及びNMPを130.667g投入し、系内温度50℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、s-BPDA 32.667g(0.111モル)、及びNMP 32.667gを一括で添加し室温にて5時間撹拌した。
その後、固形分濃度が約20質量%となるようにNMPを116.667g添加し、更に約1時間撹拌して均一化して、ポリアミド酸(PAA)ワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたポリアミド酸ワニスをスピンコートにより塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、空気雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、ポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
比較例4で得られたポリアミド酸は、s-BPDAと6FODAとから形成されるアミド酸繰り返し構造単位のみを有する。当該ポリアミド酸を「PAA」と称する。
【0147】
【0148】
実施例のイミド-アミド酸共重合体は、保存安定性と成形加工性を両立することができることがわかる。
更に表1に示すように、特定のイミド繰り返し構造単位及びアミド酸構造単位を有する共重合体から形成された、実施例1~16のポリイミドフィルムは、無色透明性及び耐熱性に優れ、更に低リタデーション及び低残留応力に優れるものであった。