(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】防眩フィルム、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20231129BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231129BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/30
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2020565217
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000555
(87)【国際公開番号】W WO2020145370
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019002903
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛原 満広
(72)【発明者】
【氏名】江口 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】古井 玄
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-161834(JP,A)
【文献】国際公開第2008/020578(WO,A1)
【文献】特開2015-072412(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099931(WO,A1)
【文献】特開2011-197545(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する防眩フィルムであって、前記第1主面のカットオフ値0.8mmの平均傾斜角をθa
0.8、前記第1主面のカットオフ値2.5mmの平均傾斜角をθa
2.5
、前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける算術平均粗さをRa
0.8
、前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さをRz
0.8
と定義した際に、
Rz
0.8
/Ra
0.8
が2.00~5.50であり、かつ、下記式(1)及び(2)を満たす、防眩フィルム。
0.20度≦θa
0.8≦0.70度 (1)
|θa
2.5-θa
0.8|≦0.10度 (2)
【請求項2】
前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける局部山頂平均間隔をS
0.8、前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値2.5mmにおける局部山頂平均間隔をS
2.5と定義した際に、下記式(3)を満たす、請求項1に記載の防眩フィルム。
S
2.5/S
0.8≦1.40 (3)
【請求項3】
前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける算術平均粗さをRa
0.8、前記第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値2.5mmにおける算術平均粗さをRa
2.5と定義した際に、下記式(4)を満たす、請求項1又は2に記載の防眩フィルム。
Ra
2.5/Ra
0.8≦1.20 (4)
【請求項4】
JIS Z8741:1997に準拠して前記第1主面側から測定した20度鏡面光沢度及び60度鏡面光沢度を、それぞれG
20及びG
60と定義した際に、下記式(5)を満たす、請求項1~3の何れか1項に記載の防眩フィルム。
G
60/G
20≦2.50 (5)
【請求項5】
透明基材上に樹脂層を有し、前記樹脂層の表面が前記第1主面である、請求項1~4の何れか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記透明基材の厚みが5~300μmである、請求項5に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
総厚みが7~310μmである、請求項1~6の何れか1項に記載の防眩フィルム。
【請求項8】
偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる透明保護板Aと、前記偏光子の他方の側に配置されてなる透明保護板Bとを有する偏光板であって、前記透明保護板A及び前記透明保護板Bの少なくとも一方が、請求項1~7の何れか1項に記載の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記偏光子と反対側を向くように前記防眩フィルムが配置されてなる、偏光板。
【請求項9】
樹脂板又はガラス板上に防眩フィルムを貼り合わせてなる画像表示装置用の表面板であって、前記防眩フィルムが請求項1~7の何れか1項に記載の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記樹脂板又は前記ガラス板と反対側を向くように前記防眩フィルムを配置してなる、画像表示装置用の表面板。
【請求項10】
表示素子上に、請求項1~7
の何れか1項に記載の防眩フィルムの第1主面側の面が前記表示素子とは反対側を向くように配置してなり、かつ前記防眩フィルムを最表面に配置してなる画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルム、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、ノートPC、デスクトップPCのモニター等の画像表示装置の表面には、外光の反射を抑制するための反射防止フィルム、あるいは、背景の映り込みを抑制するための防眩フィルムが設置される場合がある。
【0003】
反射防止フィルムは、透明基材上に多層薄膜を有する基本構成からなり、例えば、特許文献1~3等が提案されている。
防眩フィルムは、透明基材上に表面が凹凸形状である防眩層を有する基本構成からなり、例えば、特許文献4~6等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-142817号公報
【文献】特開2015-232614号公報
【文献】特開2016-177186号公報
【文献】特開2010-113219号公報
【文献】特開2011-232547号公報
【文献】特開2016-35574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、室内のテレビは大型化が進んでいる。このような大型テレビは室内で大きな体積を占めることから、周辺のインテリアとの調和が取れることが好ましく、さらには、高級感を付与できるものが好ましい。
【0006】
特許文献1~3のような反射防止フィルムは、外光の反射率は低下し得るものの、画像表示装置の電源がOFFの際に、反射防止フィルムの表面に人及び背景が映り込んでしまい、周辺のインテリアとの調和が不十分なものとなる。
一方、特許文献4~6のような防眩フィルムのうちの防眩性が強いタイプは、画像表示装置の電源がOFFの際において、背景等の映り込みは十分に抑制できるが、表面がざらついて感じられ、高級感に欠けるものとなる。また、防眩フィルムのうちの防眩性が弱いタイプは、画像表示装置の電源がOFFの際において、背景等の映り込みの抑制が不十分であり、さらに、防眩性が強いタイプほどではないが表面がざらついて感じられる場合があった。
【0007】
本発明は、映り込みを抑制するとともに、表面のざらつき感を抑制して高級感を付与し得る防眩フィルム、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[4]の防眩フィルム、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置を提供する。
[1]第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する防眩フィルムであって、前記第1主面のカットオフ値0.8mmの平均傾斜角をθa0.8、前記第1主面のカットオフ値2.5mmの平均傾斜角をθa2.5と定義した際に、下記式(1)及び(2)を満たす、防眩フィルム。
0.20度≦θa0.8≦0.70度 (1)
|θa2.5-θa0.8|≦0.10度 (2)
[2]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる透明保護板Aと、前記偏光子の他方の側に配置されてなる透明保護板Bとを有する偏光板であって、前記透明保護板A及び前記透明保護板Bの少なくとも一方が、上記[1]に記載の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記偏光子と反対側を向くように前記防眩フィルムが配置されてなる、偏光板。
[3]樹脂板又はガラス板上に防眩フィルムを貼り合わせてなる画像表示装置用の表面板であって、前記防眩フィルムが上記[1]に記載の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記樹脂板又は前記ガラス板と反対側を向くように前記防眩フィルムを配置してなる、画像表示装置用の表面板。
[4]表示素子上に、上記[1]に記載の防眩フィルムの第1主面側の面が前記表示素子とは反対側を向くように配置してなり、かつ前記防眩フィルムを最表面に配置してなる画像表示装置。
【0009】
なお、本発明において「防眩性」とは、映り込みが気にならない程度の防眩性を意味し、映り込みを完全に防止する高度な防眩性を意味しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防眩フィルム、並びに、それを用いた偏光板、表面板及び画像表示装置は、映り込みを抑制するとともに、表面のざらつき感を抑制して高級感を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の防眩フィルム(実施例1の防眩フィルム)の断面形状のイメージ図である。
【
図2】比較例1の防眩フィルムの断面形状のイメージ図である。
【
図3】平均傾斜角θaの算出方法を説明する図である。
【
図4】本発明の画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
【
図6】連続折り畳み試験後の屈曲部の評価手法を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
[防眩フィルム]
本発明の防眩フィルムは、第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する防眩フィルムであって、前記第1主面のカットオフ値0.8mmの平均傾斜角をθa0.8、前記第1主面のカットオフ値2.5mmの平均傾斜角をθa2.5と定義した際に、下記式(1)及び(2)を満たすものである。
0.20度≦θa0.8≦0.70度 (1)
|θa2.5-θa0.8|≦0.10度 (2)
【0013】
図1は、本発明の防眩フィルム100の断面形状のイメージ図である。
図1の防眩フィルム100は、第1主面A1と、前記第1主面とは反対側の第2主面A2とを有している。また、
図1の防眩フィルム100は、透明基材10上に樹脂層20を有してなり、樹脂層20の表面が第1主面A1となっている。
【0014】
防眩フィルムは、式(1)及び(2)を満たす第1主面を有するものであれば、
図1の積層構成に限定されず、樹脂層の単層構造であってもよいし、透明基材及び樹脂層以外の層(例えば、低屈折率層等)を有するものであってもよい。防眩フィルムの好ましい実施形態は、透明基材上に樹脂層を有し、樹脂層の表面が第1主面であるものである。
以下の(X1)~(X9)は、防眩フィルムの層構成の例である。なお、(X1)~(X9)において、「/」は層の界面を示す。また、(X2)~(X9)では、最も右側に位置する層の表面が第1主面である。
(X1)樹脂層の単層
(X2)透明基材/樹脂層
(X3)透明基材/樹脂層/低屈折率層
(X4)透明基材/樹脂層/防汚層
(X5)透明基材/樹脂層/帯電防止層
(X6)透明基材/プライマー層/樹脂層
(X7)透明基材/プライマー層/樹脂層/低屈折率層
(X8)透明基材/プライマー層/樹脂層/防汚層
(X9)透明基材/プライマー層/樹脂層/帯電防止層
なお、帯電防止層が高屈折率層を兼ねていてもよく、更にその上に低屈折率層、防汚層などが積層されていてもよい。
【0015】
<第1主面>
本発明の防眩フィルムは、第1主面が上記式(1)及び(2)を満たす。
【0016】
<<式(1)>>
式(1)は、カットオフ値0.8mmの平均傾斜角(θa0.8)が、0.20度以上0.70度以下であることを規定している。
【0017】
θa0.8が0.20度未満の場合、防眩フィルムの表面に人及び背景が映り込んでしまい、防眩フィルムを貼り合わせた部材(テレビ等)と周辺のインテリアとの調和が不十分なものとなる。また、θa0.8が0.70度を超える場合、防眩フィルムの表面のざらつき感を抑制できず、防眩フィルムを貼り合わせた部材に高級感を付与することができない。また、θa0.8が0.70度を超える場合、防眩フィルムが白っぽく見える場合がある。
θa0.8は、0.25度以上0.60度以下であることが好ましく、0.30度以上0.50度以下であることがより好ましい。
なお、「ざらつき感」は、防眩フィルムの表面で反射した照明光等の反射光により感じられる現象である。一方、後述する「ギラツキ」は、防眩フィルムを透過した映像光及び照明光等の透過光により感じられる現象である。このように、「ざらつき感」と「ギラツキ」とは、全く異なる現象を意味している。補足すると、「ざらつき感」は、防眩フィルムの光透過性の有無及び防眩フィルムの第2主面側の部材の種類に関わらず、反射光の元になる照明光等の光源が防眩フィルムの第1主面側にあれば観察される現象である。また、「ざらつき感」は、防眩フィルムの第2主面側に光源がなくても観察される。一方、「ギラツキ」は、防眩フィルムが光透過性を有する場合であって、かつ防眩フィルムの第2主面側に表示素子等の光源がある場合に観察される現象である。また、「ギラツキ」は、防眩フィルムの第1主面側に光源がなくても観察される。
【0018】
<<式(2)>>
式(2)は、カットオフ値2.5mmの平均傾斜角(θa2.5)と、カットオフ値0.8mmの平均傾斜角(θa0.8)との差の絶対値が、0.10度以下であることを規定している。
以下、式(2)が示す意味、並びに、式(1)及び(2)を満たすことによる技術的意義を説明する。
【0019】
カットオフ値は、粗さ曲線から周期の長い凹凸を除外する度合いを示す指標である。したがって、カットオフ値2.5mmの平均傾斜角(θa
2.5)は、周期の長い凹凸(超低周波の凹凸)を含んだ平均傾斜角を意味し、カットオフ値0.8mmの平均傾斜角(θa
0.8)は、周期の長い凹凸(超低周波の凹凸)を含まず、周期の短い凹凸のみを含んだ平均傾斜角を意味することになる。
また、通常は、超低周波の凹凸に比べて、周期の短い凹凸は平均傾斜角が高い。すなわち、通常は、θa
2.5よりθa
0.8の方が大きくなる。しかし、超低周波の凹凸の割合が少ない形状の場合には、θa
2.5よりθa
0.8が大きくなる度合いは低下する。
したがって、式(2)において、θa
2.5とθa
0.8との差の絶対値が0.10度以下であることは、θa
2.5よりもθa
0.8の方が大きすぎないことを意味している。このことは、言い換えると、第1主面に超低周波の凹凸が少ないことを意味している。
本発明の防眩フィルムの第1主面は、式(1)で示すように、カットオフ値0.8mmの平均傾斜角(周期の短い凹凸に基づく平均傾斜角)が所定の値であることから、少なくとも周期の短い凹凸を有している。このため、式(1)及び(2)を満たす本発明の防眩フィルムは、その第1主面が、周期の短い凹凸を有する一方で、超低周波の凹凸の割合が少ないものとなる。そして、かかる第1主面を有する本発明の防眩フィルムは、非常にきめ細やかな外観であり、ざらつき感を抑制し、高級感を付与することができる。また、式(1)及び(2)を満たす本発明の防眩フィルムは、ベゼル(枠)の表面が平滑な画像表示装置に適用することにより、電源OFF時のベゼルとベゼル内との外観が類似し、画像表示装置の一体感を高めることもできる。なお、超低周波の凹凸はレンズの作用により、ギラツキ(防眩フィルムを透過した映像光等の透過光に微細な輝度のばらつきが見える現象)を生じさせやすい。このため、式(1)及び(2)を満たし、超低周波の凹凸の割合を少なくすることにより、ギラツキの抑制にもつながる点で好ましい。
図1は、本発明の防眩フィルム(実施例1の防眩フィルム)の断面形状のイメージ図である。
図1の防眩フィルム100の第1主面A1は、周期の短い凹凸のみから形成されている。
【0020】
一方、式(2)を満たさない防眩フィルムは、超低周波の凹凸と、周期の短い凹凸とが重畳された外観となるため、ざらつき感を抑制できず、ひいては高級感を付与することができない。
図2は、比較例1の防眩フィルムの断面形状のイメージ図である。
図2の防眩フィルム100の第1主面A1は、超低周波の凹凸上に、周期の短い凹凸が重畳された凹凸から形成されている。
本明細書では、表面粗さの測定において、カットオフ値(λc)を0.8mm及び2.5mmとしている。この理由は、人間の目の解像限界である0.12mmを十分に超え、かつ長すぎないカットオフ値において表面形状を規定するためである。
【0021】
式(2)において、θa2.5とθa0.8との差の絶対値は、0.09度以下であることが好ましく、0.08度以下であることがより好ましく、0.07度以下であることがさらに好ましい。
【0022】
平均傾斜角θaは、例えば、小坂研究所社製の表面粗さ測定器(商品名:SE-3400)の取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に定義されている値であり、
図3に示すように、基準長さLに存在する凸部高さの和(h
1+h
2+h
3+・・・+h
n)をLで除した値のアークタンジェントθa=tan
-1{(h
1+h
2+h
3+・・・+h
n)/L}で求めることができる。本明細書では、基準長さを1500分割し、1500点の高さデータを得て、該1500点の高さデータを元に平均傾斜角θaを算出するものとする。基準長さ(L)はカットオフ値(λc)と等しい。
なお、θaは、JIS B0601:1994の測定規格に準じる機種、例えば小坂研究所社製の商品名SE600、SE600K31、SE700、SE4000などでも測定できる。その他の本明細書に記載の表面形状のパラメータ(S、Ra、Rz)も、JIS B0601:1994の測定規格に準じる機種であれば、同様に測定可能である。
【0023】
本明細書において、平均傾斜角及びその他の表面形状に関する数値、並びに光学物性(鏡面光沢度、全光線透過率、ヘイズ)は、16箇所の測定値の最小値及び最大値を除外した14箇所の測定値の平均値を意味する。
本明細書において、16の測定箇所は、測定サンプルの外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域に関して、縦方向及び横方向を5等分する線を引いた際の、交点の16箇所を測定の中心とすることが好ましい。例えば、測定サンプルが四角形の場合、四角形の外縁から1cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域を縦方向及び横方向に5等分した点線の交点の16箇所を中心として測定を行い、その平均値でパラメータを算出することが好ましい。なお、測定サンプルが円形、楕円形、三角形、五角形等の四角形以外の形状の場合、これら形状に内接する四角形を描き、該四角形に関して、上記手法により16箇所の測定を行うことが好ましい。
【0024】
<<式(3)>>
本発明の防眩フィルムは、第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける局部山頂平均間隔をS0.8、第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値2.5mmにおける局部山頂平均間隔をS2.5と定義した際に、下記式(3)を満たすことが好ましい。
S2.5/S0.8≦1.40 (3)
【0025】
JIS B0601:1994において、局部山頂平均間隔Sは、「粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、隣り合う局部山頂間に対応する平均線の長さを求め、この多数の局部山頂間の平均値を表したもの。」と定義されている。
一般的な粗さ曲線は、様々な周期の凹凸が合成されたものである。つまり、一般的には、局部山頂平均間隔Sは、様々な周期の凹凸の合成からなる粗さ曲線から算出される。
また、カットオフ値は、粗さ曲線から周期の長い凹凸を除外する度合いを示す指標であり、カットオフ値が小さいほど周期の長い凹凸が除外される度合いが大きい。したがって、カットオフ値0.8mmの局部山頂平均間隔S0.8が超低周波の凹凸を除外した数値であるのに対して、カットオフ値2.5mmの局部山頂平均間隔S2.5は超低周波の凹凸を含む数値であると言える。つまり、S0.8と、S2.5とでは、凹凸の周期の混在度合いが異なる粗さ曲線に基づいて、局部山頂平均間隔Sを算出することになる。
粗さ曲線中の凹凸の周期の混在度合いが大きい場合、周期が短い凹凸は周期の長い凹凸によって打ち消される場合がある。例えば、周期の長い凹凸の高さが増加し続ける箇所と、周期の短い凹凸とが重なった場合、周期の短い凹凸の高さが減少する成分が周期の長い凹凸の高さが増加する成分によって打ち消される場合がある。この場合、周期の短い凹凸の一部は局部山頂平均間隔Sがカウントされなくなる。したがって、粗さ曲線中の凹凸の周期の混在度合いが大きいほど、カットオフ値の違いによる局部山頂平均間隔Sの変化割合が大きいことになる。S2.5及びS0.8の場合、S2.5に影響する超低周波の凹凸の割合が多いほど、S0.8に対してS2.5が大きくなることなる。
したがって、S2.5/S0.8が1.40以下であること(上記式(3)を満たすこと)は、S2.5に影響する超低周波の凹凸の割合が少ないことを意味している。よって、式(3)を満たすことにより、防眩フィルムの外観をざらつき感のないきめ細やかなものとしやすくでき、高級感を付与することができる。また、式(3)を満たすことにより、ギラツキを抑制しやすくできる。
【0026】
式(3)において、S2.5/S0.8は1.35以下であることが好ましく、1.30以下であることがより好ましく、1.25以下であることがさらに好ましい。
S2.5/S0.8の下限は特に限定されないが、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましい。
【0027】
本発明の防眩フィルムは、第1主面のS0.8が100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることがさらに好ましい。人の目の解像限界は0.12mm(120μm)である。よって、S0.8を100μm以下とすることにより、防眩フィルムの外観をざらつき感のないきめ細やかなものとしやすくできる。
S0.8の下限は特に限定されないが、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。
【0028】
<<式(4)>>
本発明の防眩フィルムは、第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける算術平均粗さをRa0.8、第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値2.5mmにおける算術平均粗さをRa2.5と定義した際に、下記式(4)を満たすことが好ましい。
Ra2.5/Ra0.8≦1.20 (4)
【0029】
Ra2.5/Ra0.8が1.20以下であること(上記式(4)を満たすこと)は、超低周波の凹凸の割合が少ないことを意味している。よって、式(4)を満たすことにより、防眩フィルムの外観をざらつき感のないきめ細やかなものとしやすくでき、高級感を付与することができる。また、式(4)を満たすことにより、ギラツキを抑制しやすくできる。
【0030】
本発明の防眩フィルムは、第1主面のRa0.8が0.03~0.20μmであることが好ましく、0.04~0.15μmであることがより好ましく、0.05~0.10μmであることがさらに好ましい。
Ra0.8を0.03μm以上とすることにより、防眩フィルムの表面に人及び背景が映り込むことを抑制し、防眩フィルムを貼り合わせた部材(テレビ等)と周辺のインテリアとの調和を良好にしやすくできる。また、Ra0.8を0.20μm以下とすることにより、防眩フィルムが白っぽく見えることを抑制しやすくできる。
【0031】
<<Rz0.8、Rz0.8/Ra0.8>>
本発明の防眩フィルムは、第1主面のJIS B0601:1994のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さをRz0.8と定義した際に、前記Ra0.8と前記Rz0.8との比(Rz0.8/Ra0.8)が、2.00~5.50であることが好ましく、3.00~5.25であることがより好ましく、3.50~5.00であることがさらに好ましい。
【0032】
Rz0.8/Ra0.8を2.00以上とすることにより、凹凸が過剰に均一となることが抑制され、第1主面の傷及び欠陥等を目立ちにくくすることができる。また、Rz0.8/Ra0.8を5.50以下とすることにより、特異的な深さを有する凹部又は特異的な高さを有する凸部を原因として、透過光に微細な輝度のばらつきが生じること(ギラツキが生じること)を抑制しやすくできる。また、Rz0.8/Ra0.8を5.50以下とすることにより、凹凸の均一性が確保され、防眩フィルムの表面のざらつき感を抑制しやすくできる。
【0033】
また、本発明の防眩フィルムは、第1主面のRz0.8が0.80μm以下であることが好ましく、0.50μm以下であることがより好ましく、0.40μm以下であることがさらに好ましい。
Rz0.8を0.80μm以下とすることにより、特異点を原因とするギラツキを抑制しやすくできる。また、Rz0.8を0.80μm以下とすることにより、防眩フィルムの表面のざらつき感を抑制しやすくできる。Rz0.8の下限は特に限定されないが、0.10μm以上であることが好ましく、0.20μm以上であることがより好ましい。
【0034】
<<式(5)>>
本発明の防眩フィルムは、JIS Z8741:1997に準拠して第1主面側から測定した20度鏡面光沢度及び60度鏡面光沢度を、それぞれG20及びG60と定義した際に、下記式(5)を満たすことが好ましい。
G60/G20≦2.50 (5)
【0035】
G60/G20が2.50以下であること(式(5)を満たすこと)により、第1主面全体の光沢の均一性が増し、防眩フィルムを貼り合わせた部材の意匠性が良好となり、より高級感を増すことができる。前述した効果は、防眩フィルムを適用する部材の面積が大きい場合、及び、防眩フィルムを適用する部材が曲面を有する部材の場合、防眩フィルムを適用する部材が曲面に変形可能な部材の場合に特に顕著となる。曲面を有する部材としては、円筒状の柱に表示素子又は画像表示装置が巻き付けてなるものが挙げられる。また、曲面に変形可能な部材としては、映写用のスクリーン、ローラブル型の表示素子又は画像表示装置が挙げられる。
G60/G20は2.25以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.75以下であることがさらに好ましい。G60/G20の下限は特に限定されないが、1.10以上であることが好ましい。
第1主面が式(1)~(4)を満たす表面形状とすることにより、G60/G20を上記範囲としやすくできる。
【0036】
鏡面光沢度は、第2主面側の反射を抑制した状態で測定することが好ましい。例えば、防眩フィルムの第2主面側を、光学透明粘着シートを介して黒色板に貼り合わせたサンプルを作製し、該サンプルの第1主面側から鏡面光沢度を測定することが好ましい。なお、防眩フィルムの第2主面側の最表面を構成する材料と、透明粘着層を構成する材料とは、屈折率差を0.05以内とすることが好ましい。
【0037】
<第2主面>
本発明の防眩フィルムは、前記第1主面とは反対側に第2主面を有する。
【0038】
第2主面側の表面形状は特に限定されないが、略平滑であることが好ましい。略平滑とは、Ra0.8が0.03μm未満であることを意味し、好ましくは0.02μm以下である。
【0039】
<透明基材>
防眩フィルムは、防眩フィルムの製造の容易性、及び、防眩フィルムの取り扱い性の観点から、透明基材を有することが好ましい。防眩フィルムが透明基材上に樹脂層を有する構成の場合、透明基材の樹脂層とは反対側の面が第2主面となる。
【0040】
透明基材としては、光透過性、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものであることが好ましい。このような透明基材としては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等のプラスチックフィルムが挙げられる。透明基材は、2枚以上のプラスチックフィルムを貼り合わせたものであってもよい。
上記の中でも、機械的強度及び寸法安定性の観点からは、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)が好ましい。また、ポリエステルは、溶剤やモノマーの浸透性が弱く、上記式(1)を満たす表面形状を形成しやすい点で好適である。
また、上記の中でも、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル、ポリエステル及びCOPは、吸湿性が低く、反りが生じにくいため、大型化に対応しやすい点で好ましい。また、ポリメタクリル酸メチル等のアクリルフィルムの場合は、面内位相差が10nm以下、更には5nm以下であるほうが、フィルム膜質の均一性が高いため、寸法安定性及び折り曲げ耐性を良好にし得る点で好ましい。
【0041】
また、上記の中でも、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、TAC、アクリル、二軸延伸ポリエステル(但し、面内位相差が小さく、Nz係数が大きい二軸延伸ポリエステル)は、折り曲げ耐性を良好にし得る傾向があり、曲面形状の画像表示装置及び折り曲げ可能な画像表示装置に適用しやすい点で好ましい。面内位相差が小さいポリエステルとは、膜厚が10μm~90μmで、面内位相差が1500nm以下であることを意味し、好ましくは1200nm以下、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。面内位相差が小さい二軸延伸ポリエステルは、同時二軸延伸で製造しやすい。なお、二軸延伸ポリエステルのプラスチックフィルムとしての弾性率や引き裂き強度など物理特性を良好にするには、面内位相差は200nm以上、更には400nm以上が好ましい。また、更に物理特性を良好にするには、面内方向の複屈折とともに膜厚方向の複屈折とのバランスも考慮したほうがよい。その指標としてはNz係数がある。Nz係数はフィルム内部の結晶性や配向性が影響するものなので、フィルム全体の特性にかかわっている。Nz係数は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)である場合は、従来2~4であるが、特に曲面形状への折り曲げや、後述するようなフォルダブル、ローラブルへの適用において、5以上、更には8以上、最も好ましくは10以上であることが好ましい。Nz係数の上限は70程度である。物理的強度を重要視する場合には、Nz係数の上限は30程度である。
なお、面内位相差(Re)は、プラスチックフィルムの面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率nx、前記面内において前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率ny、及び、プラスチックフィルムの厚みT[nm]により、下記式(A)によって表わされるものである。下記式(A)より、面内位相差が小さいことは、配向性の程度が低いため折り曲げ耐性を良好にし得る傾向があることが分かる。面内位相差(Re)は、例えば、大塚電子社製の商品名「 RETS-100」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA-WR」、「PAM-UHR100」により測定できる。
面内位相差(Re)=(nx-ny)×T[nm] (A)
また、Nz係数は、プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率nz、上記nx及び上記nyにより、下記式(B)によって表わされるものである。
Nz係数=(nz-nx)/(ny-nx) (B)
【0042】
プラスチックフィルムは、下記の折り畳み試験を連続して10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、割れまたは破断が生じないことが好ましい。また、プラスチックフィルムは、下記の折り畳み試験を連続して10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、測定サンプルを水平な台に置いた際に、台からサンプルの端部が浮き上がる角度が15度以下であることがより好ましい。サンプルの端部から浮き上がる角度が15度以下であることは、連続した折り畳みによる癖がつきにくいことを意味している。プラスチックフィルムが遅相軸及び進相軸を有する場合、何れの方向についても前述の結果(割れ、破断及び折り畳みによる癖が生じない)を示すプラスチックフィルムが好ましい。
なお、本発明の防眩フィルムも、上記と同様の折り曲げ耐性を備えることが好ましい。この時、樹脂層を内側に折り畳む場合、および樹脂層を外側にして折り畳む場合の両方とも、連続して10万回、更には30万回以上の折り曲げ耐性を有することが好ましい。
【0043】
《折り畳み試験》
プラスチックフィルムから、短辺30mm×長辺100mmの短冊状のサンプルを切り出す。耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器社製)に、該サンプルの短辺(30mm)側の両端を固定し(先端から10mmの領域を固定)、180度折り畳む連続折り畳み試験を10万回(または30万回)行う。前記の耐久試験機の試験条件は、例えば、往復速度は80rpm(回毎分)、試験ストロークは60mm、屈曲角度は180度とすることが好ましい。折り畳み試験のより詳細な手法を下記に示す。
折り畳み試験後に短冊状のサンプルを水平な台に置き、台からサンプルの端部が浮き上がる角度を測定する。サンプルに途中で割れ又は破断が生じたものは、「割れ」又は「破断」として取り扱う。
プラスチックフィルムが遅相軸及び進相軸を有する場合、短辺を遅相軸としたサンプルと、短辺を進相軸としたサンプルとの2種類を準備し、2種類のサンプルに対して試験を行う。
【0044】
《折り畳み試験の詳細》
図5(A)に示すように連続折り畳み試験においては、まず、サンプルS2の辺部S2aと、辺部S2aと対向する辺部S2bとを、平行に配置された固定部15でそれぞれ固定する。固定部15は水平方向にスライド移動可能なっている。
次に、
図5(B)に示すように、固定部15を互いに近接するように移動させることで、サンプルS2を折り畳むように変形させ、更に、
図5(C)に示すように、サンプルS2の固定部15で固定された対向する2つの辺部の間隔φが例えば、7mmとなる位置まで固定部15を移動させた後、固定部15を逆方向に移動させてサンプルS2の変形を解消させる。
図5(A)~(C)に示すように固定部15を移動させることで、サンプルS2を180度折り畳むことができる。また、サンプルS2の屈曲部S2dが固定部15の下端からはみ出さないように連続折り畳み試験を行い、かつ固定部15が最接近したときの間隔を7mmに制御することで、サンプルS2の対向する2つの辺部の間隔を7mmにできる。
このような間隔φにおいて10万回、または30万回の試験を行った結果、上記したような割れや破断、折り畳みによるくせがつかないことが好ましい。上記間隔φは、更に5mm、3mm、2mm、1mmと小さい場合であっても全て良好であることが最も好ましい。このような折り曲げ耐性を有することにより、フォルダブル型の画像表示装置(折り畳み可能な画像表示装置)、ローラブル型の画像表示装置(曲面形状から平面形状に変形可能な巻き取り可能な画像表示装置)、曲面形状を有する画像表示装置等のデザイン性を付与した様々な画像表示装置に良好に用いることができる。
【0045】
ポリイミドは、透明性の観点から、フッ素化ポリイミド、環状脂肪族基を含むポリイミドが好ましい。また、ポリアラミドは、透明性の観点から、ハロゲン基を有するポリアラミドが好ましい。
【0046】
透明基材の厚みは、下限は5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましく、上限は300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましく、90μm以下であることがよりさらに好ましい。透明基材の厚みを増すことにより、防眩フィルムの反りを抑制しやすくでき、透明基材の厚みを減ずることにより、防眩フィルムを適用する部材(画像表示装置等)を薄膜化しやすくできる。
防眩フィルムをフォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置、曲面形状を有する画像表示装置に適用する場合には、透明基材の厚みは、下限は強度の観点から5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、18μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることがよりさらに好ましく、上限は折り曲げ耐性の観点から90μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。なお、防眩フィルムをフォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置、曲面形状を有する画像表示装置に適用する場合には、透明基材は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、TAC、アクリル、二軸延伸ポリエステル(但し、面内位相差が小さく、Nz係数が大きい二軸延伸ポリエステル)、非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)であることが好ましい。
【0047】
また、フォルダブル型の画像表示装置であって、折りたたんだ際の対向する2つの面の間隔φが5mm以下の画像表示装置に適用する場合、透明基材は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、二軸延伸ポリエステル(但し、面内位相差が小さく、Nz係数が大きい二軸延伸ポリエステル)、COPであることが好ましい。これら樹脂系のフィルムであると、単に連続した折り畳み性能が良いだけではなく、折り癖が見えにくい点で好ましい。なお、アクリルフィルムの場合、TOM成形やインモールド成形などの3次元成形加工適性を良好にし得る点でも好ましい。
【0048】
―各樹脂系の好適な厚みの例―
PETフィルムの厚みは、機械的強度の観点から5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、Reが高くNz係数の低いPETフィルムの場合、折り曲げ耐性の観点から、厚みは45μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。また、Reが低くNz係数の高いPETフィルムの場合、折り曲げ耐性の観点から、厚みは80μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
COPフィルムの厚みは、機械的強度の観点から5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、折り曲げ耐性の観点から、COPフィルムの厚みは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
TACフィルムの厚みは、機械的強度の観点から5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、折り曲げ耐性の観点から、TACフィルムの厚みは50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0049】
防眩フィルムに対し上記折り畳み試験を行うと、連続折り畳み試験前後の防眩フィルムに一見した外観不良や割れなどがなかったとしても、屈曲部に折り癖が生じ、またマイクロクラックが生じてしまい、外観不良、具体的には白濁現象やマイクロクラックを起点とした層間剥離(密着不良)が生じるおそれがある。屈曲部の折り癖やマイクロクラックの抑制は、画像表示装置として用いる上で、極めて重要である。このようなことから、防眩フィルムは、フレキシブル性を有していることが好ましい。
【0050】
上記折り癖の観察は、目視で行うものとするが、折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記折り癖の観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0051】
上記マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)で行うものとする。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス社製のVHX-5000が挙げられる。マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択するとともに、暗視野および反射光で観察するものとする。具体的には、まず、連続した折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定する。このとき、折り癖が強い場合には、観察する領域がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定領域(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度とする。そして、折り畳んだときに内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記マイクロクラックの観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0052】
上記折り癖および上記マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、連続した折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、
図6に示されるように、屈曲部S2dにおける折り畳み方向FDと直交する方向に位置する両端Eに、屈曲部であることを示す目印A1を油性ペンなどで付けておくとよい。また、連続折り畳み試験後に全く折り癖等が観察されないサンプルの場合は、サンプルを観察位置が不明になるのを防ぐため、連続折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部S2dの上記両端Eの目印A1同士を結ぶ線A2(
図6における点線)を油性ペンなどで引いておいてもよい。そして、折り癖の観察においては、目印A1と線A2とで囲まれる領域である屈曲部S4全体を目視観察する。またマイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲(
図6における二点鎖線で囲まれる範囲)の中心が屈曲部S2dの中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせる。
【0053】
また、防眩フィルムに対し上記連続折り畳み試験を行うと、透明基材と樹脂層との間の密着性が低下するおそれがある。このため、上記連続折り畳み試験後の防眩フィルムの屈曲部において、樹脂層と透明基材との間の界面付近を、デジタルマイクロスコープで観察したとき、樹脂層と透明基材の界面付近で剥がれ等が観察されないことが好ましい。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス社製のVHX-5000が挙げられる。
【0054】
透明基材の厚みは、デジマチック標準外側マイクロメーター(ミツトヨ社製、品番「MDC-25SX」)などで測定できる。透明基材の厚みは、任意の10点を測定した平均値が上記数値であればよい。また、透明基材の厚みのバラツキは平均値±8%の範囲であることが好ましく、平均値±4%の範囲であることがより好ましく、平均値±3%の範囲であることがさらに好ましい。例えば、厚みの平均値が50μmならば、各厚さが46~54μmの範囲に収まることが好ましく、各厚さが48~52μmの範囲に収まることが好ましく、各厚さが48.5~51.5μmの範囲に収まることがさらに好ましい。
透明基材の表面には、接着性向上のために、コロナ放電処理等の物理的な処理や化学的な処理を施したり、易接着層を形成してもよい。
【0055】
<樹脂層>
樹脂層の表面には、上述した第1主面が形成される。
樹脂層の第1主面は、例えば、(A)エンボスロールを用いた方法、(B)エッチング処理、(C)型による成型、(D)コーティングによる塗膜の形成等により形成できる。これら方法の中では、安定した表面形状を得やすくする観点からは(C)の型による成型が好適であり、生産性及び多品種対応の観点からは(D)のコーティングによる塗膜の形成が好適である。
なお、(D)の手法では、後述するように表面形状を変動する因子が多く、かつ各変動因子が複雑に影響し合い、さらには、製造装置の機種差も変動因子となる。このため、上記(C)の手法が好ましい。
【0056】
<<厚み>>
樹脂層の厚みは、カール抑制、機械的強度、硬度及び靭性とのバランスの観点から、2~10μmであることが好ましく、4~8μmであることがより好ましい。
樹脂層の厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)による防眩フィルムの断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。STEMの加速電圧は10kv~30kV、STEMの倍率は1000~7000倍とすることが好ましい。
樹脂層の膜厚のバラツキは、平均膜厚に対して±15%以内であることが好ましく、±10%以内であることがより好ましく、±7%以内であることがさらに好ましく、5%以内であることがよりさらに好ましい。
【0057】
<<成分>>
樹脂層は、主として樹脂成分を含み、必要に応じて粒子を含む。また、樹脂層は、高屈折率粒子及び低屈折粒子等の屈折率調整剤、帯電防止剤、防汚剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤及び熱重合開始剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0058】
<<型による成型>>
型による成型は、第1主面の表面形状と相補的な形状からなる型を作製し、当該型に樹脂成分等の樹脂層を構成する材料を流し込んで硬化させた後、型から取り出すことにより製造することができる。透明基材を使用する場合には、型に樹脂層を構成する材料を流し込み、その上に透明基材を重ね合わせた後、樹脂成分等を硬化させ、透明基材ごと型から取り出すことにより製造することができる。なお、樹脂層に粒子や添加剤を含有させる場合には、型に流し込む材料中に粒子や添加剤等も含ませてもよい。
【0059】
第1主面の表面形状と相補的な形状を型に形成する方法としては、例えば、レーザー微細加工が挙げられる。具体的には、上記式(1)及び式(2)等を満たす表面形状をシミュレーションにより設計し、設計した表面形状をレーザー微細加工で再現した雄型を作製し、該雄型を反転することにより、成形用の型(雌型)を得ることができる。
【0060】
樹脂成分は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物又は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、機械的強度をより良くする観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の具体例は、後述の「コーティングによる塗膜の形成」で例示するものと同様のものを用いることができる。
【0061】
<<コーティングによる塗膜の形成>>
コーティングによる塗膜の形成は、樹脂成分又はその前駆体及び粒子を含有してなる樹脂層形成用塗布液を、グラビアコーティング、バーコーティング等の公知の塗布方法により透明基材上に塗布し、必要に応じて乾燥、硬化することにより形成することができる。当該手法の場合、粒子の平均粒子径、粒子の含有量、膜厚と平均粒子径との比、粒子の凝集の有無、バインダー樹脂の架橋密度、塗布液の粘度、塗布液のレベリング性、及び塗布液の乾燥条件等によって、表面形状を調整することができる。具体的には、粒子の平均粒子径等を後述する範囲とすることが好ましい。
【0062】
粒子としては、平均粒子径0.3~5.0μmの粒子(以下、「大粒子」と称する。)を含むことが好ましい。0.3μm未満であると、充分な凹凸形状を樹脂層表面に形成することができず、本発明の防眩フィルムの防眩性能が不充分となることがあり、5.0μmを超えると、樹脂層表面の凹凸形状が大きくなって、ギラツキの問題が生じることがある。大粒子の平均粒子径を前記範囲とすることにより、第1主面の形状を上述した形状としやすくできる。大粒子の平均粒子径は、1.5~4.5μmであることが好ましく、2.0~4.0μmであることがより好ましい。
【0063】
また、大粒子の平均粒子径のばらつきは、90%以上の粒子が平均粒子径±0.5μm内であることが好ましく、平均粒子径±0.4μm内であることがより好ましく、平均粒子径±0.3μm内であることがさらに好ましい。
平均粒子径のばらつきを上記範囲とすることにより、極端に大きな粒子径の粒子の存在確率が減少し、第1主面の形状を上述した形状としやすくできる。
【0064】
大粒子の平均粒子径は、以下の(i)~(iii)の作業により算出できる。
(i)防眩フィルムを光学顕微鏡にて透過観察画像を撮像する。倍率は500~2000倍が好ましい。
(ii)観察画像から任意の10個の大粒子を抽出し、個々の大粒子の粒子径を算出する。粒子径は、大粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(iii)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を大粒子の平均粒子径とする。
【0065】
大粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。
上述の大粒子の中でも、分散制御の容易さの観点から有機粒子が好適である。また、有機粒子は比重が軽く、後述する無機微粒子と併用することによって樹脂層の表面付近に有機粒子が浮かび上がりやすくなり、周期の長い凹凸の割合を減少できるため、第1主面の形状を上述した形状としやすくできる。
【0066】
大粒子の含有量は、樹脂層を形成する全固形分中の2~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。
【0067】
樹脂層は、大粒子に加えて、平均粒子径1~50nmの無機粒子(本明細書中で「無機微粒子」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。
【0068】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる微粒子が挙げられる。これらの中でも、内部ヘイズの発生を抑制しやすいシリカが好適である。
樹脂層形成用塗布液中に無機微粒子を含むことにより、隣接する大粒子の間隔を適度に保つことができ、かつ、比重の軽い大粒子(但し、大粒子が有機粒子の場合)が樹脂層の表面付近に浮かびやすくなることによって、第1主面の形状を上述した形状としやすくできる。
無機微粒子の平均粒子径は、2~45nmであることが好ましく、5~40nmであることがより好ましい。
【0069】
無機微粒子の平均粒子径は、以下の(i)~(iii)の作業により算出できる。
(i)防眩フィルムの断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kv~30kV、倍率は1万~30万倍とすることが好ましい。
(ii)観察画像から任意の10個の無機微粒子を抽出し、個々の無機微粒子の粒子径を算出する。粒子径は、無機微粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(iii)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を無機微粒子の平均粒子径とする。
【0070】
無機微粒子の含有量は、樹脂層を形成する全固形分中の1~50.0質量%であることが好ましく、10~47質量%であることがより好ましく、20~45質量%であることがさらに好ましい。1質量%未満であると、大粒子の間隔を適切に保つことが難しく、滑らかな凹凸形状を有する樹脂層とならないことがある。50.0質量%を超えると、白ぼけの問題が生じることがある。
【0071】
大粒子の含有量と、無機微粒子の含有量との比は、質量比で、1:15~6:1であることが好ましく、1:13~1:1であることがより好ましく、1:12~1:5であることがさらに好ましい。
【0072】
樹脂層の樹脂成分は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物又は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、機械的強度をより良くする観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0073】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0074】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0075】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0076】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0077】
また、樹脂層形成用塗布液の粘度を調整するなどの目的で、電離放射線硬化性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0079】
樹脂層形成用塗布液には、通常、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能としたりするために溶剤を用いる。溶剤の種類によって、塗布、乾燥した後の樹脂層の表面形状が異なるため、溶剤の飽和蒸気圧、透明基材への溶剤の浸透性等を考慮して溶剤を選定することが好ましい。
具体的には、溶剤は、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0080】
また、樹脂層形成用塗布液から樹脂層を形成する際には、乾燥条件を制御することが好ましい。
乾燥条件は、乾燥温度及び乾燥機内の風速により制御することができる。具体的な乾燥温度としては、30~120℃、乾燥風速では0.2~50m/sとすることが好ましい。また、乾燥により樹脂層の表面形状を制御するために、電離放射線の照射は塗布液の乾燥後に行うことが好適である。
【0081】
樹脂層形成用塗布液には、レベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤は、シリコーン系レベリング剤及びフッ素系レベリング剤等が挙げられる。
しかし、樹脂層の表面形状を過剰にレベリングさせると、第1主面を上述した表面形状としにくくなる可能性がある。このため、レベリング剤の添加量としては、樹脂層形成用塗布液の全固形分に対して0.01~0.5重量%が好ましく、0.05~0.2重量%がより好ましい。
【0082】
樹脂層は、上述したように紫外線吸収剤を含有していてもよい。特に、防眩フィルムを有機EL表示素子上に配置する場合には、樹脂層が紫外線吸収剤を含むことにより、有機EL表示素子の劣化を抑制できる点で好ましい。
【0083】
紫外線吸収剤は極大吸収波長が200~360nmの有機系紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線吸収剤は、視認性を良好にしやすくするために、紫外線領域の光を吸収した際に、380~490nmの蛍光を発光しにくいものが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びマロン酸エステル系紫外線吸収剤から選ばれる1以上が好ましく、これらの中でも、分子内の芳香族環の数が2個以下のものから選ばれる1以上がより好ましい。なお、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤及びアントラセン系紫外線吸収剤は、紫外線領域の光を吸収した際に、380~490nmの蛍光を発光しやすい傾向がある。
【0084】
また、紫外線吸収剤は、2以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。2以上の紫外線吸収剤の組み合わせは、下記(i)又は(ii)が好ましい。なお、下記(i)の場合、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のみから2以上選択しても良いし、トリアジン系紫外線吸収剤のみから2以上選択しても良い。
(i)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる2以上の組み合わせ。
(ii)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる1以上と、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤及びインドール系紫外線吸収剤から選ばれる1以上との組み合わせ。
【0085】
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。なお、複数の紫外線吸収剤を含む場合、複数の紫外線吸収剤の合計量が前記範囲であることが好ましい。
【0086】
<その他の層>
防眩フィルムは、低屈折率層、防汚層、帯電防止層及びプライマー層等のその他の層を有していてもよい。以下、その他の層の代表例である低屈折率層の実施形態を説明する。
【0087】
《低屈折率層》
防眩フィルムは低屈折率層を有していてもよい。低屈折率層は、低屈折率層の表面が防眩フィルムの第一主面となるように配置することが好ましい。例えば、防眩フィルムが、透明基材、樹脂層及び低屈折率層を有する場合、透明基材、樹脂層及び低屈折率層の順に積層して、低屈折率層の表面が防眩フィルムの第一主面となるように配置することが好ましい。
【0088】
低屈折率層の屈折率は、反射防止性の観点から、上限は1.48以下が好ましく、1.45以下がより好ましく、1.40以下がより好ましく、1.38以下がより好ましく、1.35以下がより好ましい。
なお、低屈折率層の屈折率を低くし過ぎると、低屈折率層の物理的強度が低下する場合がある。このため、低屈折率層の屈折率の下限は1.10以上が好ましく、1.20以上がより好ましく、1.26以上がより好ましく、1.28以上がより好ましく、1.30以上であることがより好ましい。
【0089】
また、低屈折率層の厚みは、80~120nmが好ましく、85~110nmがより好ましく、90~105nmがより好ましい。
【0090】
低屈折率層を形成する手法としては、ウェット法とドライ法とに大別できる。ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗工して形成する手法、バインダー樹脂組成物及び低屈折率粒子を含有する低屈折率層形成用塗布液を塗工して形成する手法が挙げられる。ドライ法としては、後述する低屈折率粒子の中から所望の屈折率を有する粒子を選び、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。
ウェット法は生産効率の点で優れており、ウェット法の中でも、バインダー樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液により形成することが好ましい。
【0091】
低屈折率粒子は、シリカ及びフッ化マグネシウム等の無機化合物からなる粒子、有機化合物からなる粒子のいずれであっても制限なく用いることができるが、低屈折率化により反射防止特性を向上する観点から、空隙を有する構造の粒子が好ましく用いられる。
空隙を有する構造をもつ粒子は、微細な空隙を内部に有しており、例えば、屈折率1.0の空気などの気体が充填されているので、それ自身の屈折率が低いものとなっている。このような空隙を有する粒子としては、無機系、又は有機系の多孔質粒子、中空粒子などが挙げられ、例えば、多孔質シリカ、中空シリカ粒子、又はアクリル樹脂などが用いられた多孔質ポリマー粒子や中空ポリマー粒子が挙げられる。
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
【0092】
低屈折率粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、50~400質量部であることが好ましく、100~300質量部であることがより好ましい。
【0093】
バインダー樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物は、低屈折率層中で硬化物となり、バインダー成分となる。
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物が挙げられ、これらの中でも電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
低屈折率層の熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物としては、樹脂層の熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物として例示したものが挙げられる。
【0094】
なお、ラジカル重合性化合物に関して、エチレン性不飽和結合基を4つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物のことを「多官能性(メタ)アクリレート系化合物」、エチレン性不飽和結合基を2~3つ有する(メタ)アクリレート系化合物のことを「低官能性(メタ)アクリレート系化合物」と定義した際に、ラジカル重合性化合物中の低官能(メタ)アクリレート系化合物の割合は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。低官能(メタ)アクリレート系化合物は、低屈折率層内で低屈折率粒子(特にシリカ粒子)を均一に分散しやすく、塗膜強度を高くしやすい点で好ましい。
また、低官能(メタ)アクリレート系化合物は、2つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましい。
【0095】
また、低屈折率層を形成するラジカル重合性化合物は、低屈折率層内で低屈折率粒子(特にシリカ粒子)を均一に分散しやすくする観点から、分子骨格の一部を変性しているものでも良い。例えば、ラジカル重合性化合物として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされた(メタ)アクリレート系化合物も使用することができる。特に、ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドで変性された(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
ラジカル重合性化合物中のアルキレンオキサイド変性の(メタ)アクリレート系化合物の割合は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。また、アルキレンオキサイド変性の(メタ)アクリレート系化合物は、低官能(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、2つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましい。
【0096】
<防眩フィルムの物性>
防眩フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
なお、全光線透過率、及び、後述するヘイズを測定する際の光入射面は、第2主面側とする。
【0097】
防眩フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが0.3~10%であることが好ましく、0.4~7%であることがより好ましく、0.5~5%であることがさらに好ましい。
【0098】
防眩フィルムの総厚みは、下限は7μm以上であることが好ましく、22μm以上であることがより好ましく、32μm以上であることがさらに好ましく、52μm以上であることがよりさらに好ましい。また、防眩フィルムの総厚みは、上限は310μm以下であることが好ましく、210μm以下であることがより好ましく、160μmであることがさらに好ましく、100μmであることがよりさらに好ましい。
なお、防眩フィルムをフォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置、曲面形状を有する画像表示装置に適用する場合には、防眩フィルムの総厚みの上限は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0099】
<大きさ、形状等>
防眩フィルムは、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。また、枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2~500インチ程度である。「最大径」とは、防眩フィルムの任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、防眩フィルムが長方形の場合は、該領域の対角線が最大径となる。また、防眩フィルムが円形の場合は、直径が最大径となる。本発明の防眩フィルムは、最大径が1000mm以上の場合に、周辺のインテリアとの調和等の意匠性の観点でより顕著な効果を発揮できる点で好ましい。防眩フィルムの最大径が1300mm以上であることがより好ましい。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500~3000mm、長さは500~5000m程度である。ロール状の形態の防眩フィルムは、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)や円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。より具体的には、防眩フィルムが四角形状である場合には、縦横比は表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、横:縦=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられるが、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。
【0100】
[光学積層体]
本発明の光学積層体は、本発明の防眩フィルムと、他の光学部材とを積層してなるものである。
【0101】
他の光学部材としては、位相差フィルム及び偏光子等が挙げられる。光学積層体が偏光子を含む場合、偏光子の両側には偏光子保護フィルムを積層することが好ましい。なお、光出射側の偏光子保護フィルムとして、本発明の防眩フィルムを用いることもできる。
なお、本発明の光学積層体の光出射側の面は、本発明の防眩フィルムの第1主面とすることを要する。
【0102】
光学積層体は、各部材を枚葉の状態としてから貼り合わせた枚葉状の形態であってもよいし、ロール状の部材同士を貼り合わせてなるロール状の形態であってもよい。なお、枚葉状の積層体、及び、ロール状の積層体は、画像表示装置のサイズに合わせてカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しない端部は除外することが好ましい。
【0103】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる透明保護板Aと、前記偏光子の他方の側に配置されてなる透明保護板Bとを有してなり、前記透明保護板A及び前記透明保護板Bの少なくとも一方が、上述した本発明の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記偏光子と反対側を向くように前記防眩フィルムが配置されてなるものである。
【0104】
本発明の偏光板は、表示素子の光出射面とは反対側で用いてもよいが、表示素子の光出射面側で用いることが好ましい。
【0105】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。なお、これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0106】
<透明保護板>
偏光子の一方の側には透明保護板A、他方の側には透明保護板Bが配置される。
透明保護板A及び透明保護板Bとしては、プラスチックフィルム及びガラス等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム及びアクリルフィルムが挙げられ、機械的強度の観点から、これらの延伸フィルムが好ましい。ガラスは、アルカリガラス、窒化ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウ珪酸塩ガラス及び鉛ガラス等が挙げられる。また、偏光子を保護する透明保護板としてのガラスは、画像表示装置の他の部材と兼用することが好ましい。例えば、液晶表示素子のガラス基板と、偏光子を保護する透明保護板とを兼用することが好ましい。
なお、偏光子と透明保護板とは、接着剤を介して貼り合わせることが好ましい。接着剤は汎用の接着剤を用いることができ、PVA系接着剤が好ましい。
【0107】
本発明の偏光板は、透明保護板A及び透明保護板Bの両方が上述した本発明の防眩フィルムであってもよいが、透明保護板A及び透明保護板Bの一方が上述した本発明の防眩フィルムであることが好ましい。また、本発明の偏光板を表示素子の光出射面側に配置する偏光板として用いる場合には、偏光子の光出射面側の透明保護板が上述した本発明の防眩フィルムであることが好ましい。一方、本発明の偏光板を表示素子の光出射面とは反対側に配置する偏光板として用いる場合には、偏光子の光出射面とは反対側の透明保護板が上述した本発明の防眩フィルムであることが好ましい。
【0108】
[画像表示装置用の表面板]
本発明の画像表示装置用の表面板は、樹脂板又はガラス板上に防眩フィルムを貼り合わせてなり、前記防眩フィルムが上述した本発明の防眩フィルムであり、前記第1主面側の面が前記樹脂板又は前記ガラス板と反対側を向くように前記防眩フィルムを配置してなるものである。
【0109】
本発明の画像表示装置用の表面板は、防眩フィルムを貼り合わせた側の面が表面側(表示素子とは反対側)を向くようにして配置することが好ましい。
【0110】
樹脂板又はガラス板としては、画像表示装置の表面板として汎用的に使用されている樹脂板又はガラス板を用いることができる。
【0111】
樹脂板又はガラス板の厚みは、強度の観点から10μm以上であることが好ましい。樹脂板又はガラス板の厚みの上限は、通常は5000μm以下であるが、近年、画像表示装置の薄型化が好まれるため、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0112】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、表示素子上に上述した本発明の防眩フィルムの第1主面側の面が前記表示素子とは反対側を向くように配置してなり、かつ前記防眩フィルムを最表面に配置してなるものである(
図4参照)。
【0113】
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子(有機EL表示素子、無機EL表示素子)、プラズマ表示素子等が挙げられ、さらには、マイクロLED表示素子等のLED表示素子が挙げられる。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有していてもよい。
液晶表示素子の液晶の表示方式としては、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式、STN方式、TSTN方式等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子である場合、バックライトが必要である。バックライトは、液晶表示素子の防眩フィルムを有する側とは反対側に配置される。
【0114】
また、本実施形態の画像表示装置は、表示素子と防眩フィルムとの間にタッチパネルを有するタッチパネル付きの画像表示装置であってもよい。この場合、タッチパネル付きの画像表示装置の最表面に防眩フィルムを配置し、かつ、防眩フィルムの第1主面側の面が表示素子とは反対側を向くように配置すればよい。
【0115】
画像表示装置は、有効表示領域の最大径が1000mm以上であることが好ましく、1300mm以上であることがより好ましい。最大径が1000mm以上の場合に、周辺のインテリアとの調和等の意匠性の観点でより顕著な効果を発揮できる。
画像表示装置の有効表示領域とは、画像を表示し得る領域である。例えば、画像表示装置が表示素子を囲う筐体を有する場合、筐体の内側の領域が有効画像領域となる。
なお、有効画像領域の最大径とは、有効画像領域内の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、有効画像領域が長方形の場合は、該領域の対角線が最大径となる。また、有効画像領域が円形の場合は、該領域の直径が最大径となる。
【0116】
本発明の画像表示装置は、ベゼル(枠)を有するものであってもよく、ベゼル(枠)の表面が平滑なものが好ましい。本発明の画像表示装置の防眩フィルムは、非常にきめ細やかな外観であり、ざらつき感を抑制したものであるため、ベゼル(枠)の表面が平滑な画像表示装置に関して、電源OFF時のベゼルとベゼル内との外観を類似させることができ、画像表示装置の一体感を高めることができる。なお、ベゼル(枠)の表面が平滑とは、ベゼル(枠)の表面が汎用の鏡面仕上げがされてなることをいう。
【0117】
本発明の画像表示装置は、フォルダブル型の画像表示装置、ローラブル型の画像表示装置であることも好ましい。この場合、防眩フィルムは、上述した折り曲げ耐性を有するものが好ましい。
【実施例】
【0118】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0119】
1.測定及び評価
以下のように、実施例及び比較例の防眩フィルムの測定及び評価を行った。なお、各測定及び評価時の雰囲気は、温度23±5℃、湿度40~65%とした。また、各測定及び評価の開始前に、対象サンプルを前記雰囲気に30分以上晒してから測定及び評価を行った。結果を表1~2に示す。
【0120】
1-1.表面形状の測定
実施例及び比較例の防眩フィルムを10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。切断した防眩フィルムの第2主面側をパナック社製の光学透明粘着シート(商品名:パナクリーンPD-S1)を介して、縦10cm×横10cmの大きさの黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス 品番 :DFA502K、厚み2.0mm)に貼り合わせたサンプルを作製した。
表面粗さ測定器(型番:SE-3400/小坂研究所社製)を用いて、計測ステージにサンプルが固定かつ密着した状態となるようにセットしたのち、下記の測定条件により、下記の測定項目について、各サンプルの樹脂層側(第1主面側)の表面形状を測定した。明細書本文の記載に基づき、測定はサンプルごとに16箇所で行い、最小値及び最大値を除外した14箇所の平均値を、各実施例及び比較例のθa2.5、θa0.8、S2.5、S0.8、Ra2.5、Ra0.8、Rz0.8とした。
<測定条件>
[表面粗さ検出部の触針]
小坂研究所社製の商品名SE2555N(先端曲率半径:2μm、頂角:90度、材質:ダイヤモンド)
[表面粗さ測定器の測定条件]
・JISモード:JIS1994
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・縦倍率:50000倍
・横倍率:5倍
・スキッド:用いる(測定面に接触あり)
・カットオフフィルタ種類:ガウシャン
・ダイナミックレンジ:ワイド
・オーバースケール:エラーモード
・不感帯レベル:10%
・tp/PC曲線:ノーマル
・サンプリングモード:c=1500
・動作モード:ノーマル
・レベリング:オールデータ
・評価長さ:カットオフの5倍
・予備長さ:カットオフの0.5倍
・検出器:PUDJ2US(レバー水平時高さ7.85mm、長さ30mm)
<測定項目>
・カットオフ値2.5mmの平均傾斜角θa2.5
・カットオフ値0.8mmの平均傾斜角θa0.8
・カットオフ値2.5mmのJIS B0601:1994の局部山頂平均間隔S2.5
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の局部山頂平均間隔S0.8
・カットオフ値2.5mmのJIS B0601:1994の算術平均粗さRa2.5
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の算術平均粗さRa0.8
・カットオフ値0.8mmのJIS B0601:1994の十点平均粗さRz0.8
【0121】
1-2.鏡面光沢度
グロスメーター(村上色彩技術研究所製、商品名GM-26PRO)により、1-1で作製したサンプルの樹脂層側(第1主面側)のJIS Z8741:1997の鏡面光沢度(20度及び60度)を測定した。なお、光源が安定するよう事前に装置の電源スイッチをONにしてから15分以上待ち、装置に付属の標準板により標準合わせを行ったうえでサンプルを測定した。標準合わせは標準板の黒色ガラス面が測定面になるように試料台にセットし、標準板に定められた値になるようにスパン調整用ツマミで調整した。また、明細書本文の記載に基づき、測定はサンプルごとに16箇所で行い、最小値及び最大値を除外した14箇所の平均値を、各実施例及び比較例の20度鏡面光沢度(G20)及び60度鏡面光沢度(G60)とした。
【0122】
1-3.全光線透過率
実施例及び比較例の防眩フィルムを10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、各サンプルのJIS K7361-1:1997の全光線透過率を測定した。なお、光源が安定するよう事前に装置の電源スイッチをONにしてから15分以上待ち、入口開口(測定サンプルを設置する箇所)に何もセットせずに校正を行い、その後に入口開口に測定サンプルをセットして測定した。また、明細書本文の記載に基づき、測定はサンプルごとに16箇所で行い、最小値及び最大値を除外した14箇所の平均値を、各実施例及び比較例の全光線透過率とした。光入射面は透明基材側とし、指紋がつかないよう、また皺が入らないよう設置した。
【0123】
1-4.ざらつき感
実施例及び比較例の防眩フィルムを横884mm×縦498mm(対角1015mm)に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。切断した防眩フィルムの第2主面側と、防眩フィルムと同一サイズに切断した黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス 品番 :DFA502K、厚み2.0mm)とを、パナック社製の光学透明粘着シート(商品名:パナクリーンPD-S1)を介して貼り合わせたサンプルを作製した。該サンプルは、600mm幅のローラーを用いて、気泡が入らないように注意して作製した。該サンプルは、画像表示装置の電源がOFFである場合と等価の状態とみなすことができる。
該サンプルを水平な台に第1主面が上になるように設置し、明室環境下(該サンプルの第一主面上の照度が500~1000lux。照明:Hf32形の直管三波長形昼白色蛍光灯。照明の位置は水平台から鉛直方向2m上方の高さ)で、照明(蛍光灯)の反射光が観察されるあらゆる角度からざらつき感を目視で評価した。評価は、該サンプルの第1主面の中心より直線距離50cmの位置から行った。
評価のポイントは下記(1)及び(2)として、下記(1)及び(2)を何れも満たすものを3点、下記(1)及び(2)の一方のみを満たすものを2点、下記(1)及び(2)を何れも満たさないものを1点として、20人の被験者(20歳台~50歳台の各年代で5名ずつ)が評価した。20人の評価の平均点を算出し、下記基準によりランク付けした。
<評価ポイント>
(1)照明(蛍光灯)の反射領域の中心領域を注視した際に、該領域のざらつき感(細かな異物感)が弱く、極めて細やかな外観である。
(2)照明(蛍光灯)の反射領域の中心から外れた周辺領域を注視した際に、該領域のざらつき感(凹凸感)が弱く、極めて細やかな外観である。
<評価基準>
AA:平均点が2.7以上
A:平均点が2.5以上2.7未満
B:平均点が2.2以上2.5未満
B-:平均点が2.0以上2.2未満
C:平均点が1.5以上2.0未満
D:平均点が1.5未満
【0124】
1-5.防眩性
1-1で作製したサンプルを第1主面が上になるように水平な台に設置し、明室環境下(1-4のざらつき感の評価と同等の明室環境下)で該サンプルの第1主面の中心より直線距離50cm上方から目視にて、被験者20人(20歳台~50歳台の各年代で5名ずつ)により、観測者自身の映り込みが気にならない程度の防眩性が得られているか否かを下記の基準により評価した。
A:良好と答えた人が14人以上
B:良好と答えた人が7~13人
C:良好と答えた人が6人以下
【0125】
1-6.ギラツキ
実施例及び比較例の防眩フィルムを10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。次に、水平な台に対角800mm(横697mm×縦392mm)の4K解像度の液晶表示装置を設置し、さらに該防眩フィルムの第2主面側をパナック社製の光学透明粘着シート(商品名:パナクリーンPD-S1)を介して、液晶表示面に貼り合わせた。その状態で液晶表示装置の画面を緑表示として、該防眩フィルムより直線距離50cm上方のあらゆる角度から、防眩フィルムを貼り合わせた箇所のギラツキ(映像光の微細な輝度のばらつき)が目立つか否かを目視で評価した。評価の環境は明室環境下(1-4のざらつき感の評価と同等の明室環境下)とした。
ギラツキを感じないものを3点、どちらともいえないものを2点、ギラツキを強く感じるものを1点として、20人の被験者(20歳台~50歳台の各年代で5名ずつ)が評価した。20人の評価の平均点を算出し、下記基準によりランク付けした。
<評価基準>
A:平均点が2.5以上
B:平均点が2.0以上2.5未満
C:平均点が1.5以上2.0未満
D:平均点が1.5未満
【0126】
2.防眩フィルムの作製
[実施例1]
上記式(1)~(4)を満たす表面形状をシミュレーションにより設計し、設計した表面形状をレーザー微細加工でステンレス鋼板に再現した雄型を作製した。該雄型の表面形状は、表1の実施例1の樹脂層(第1主面)の表面形状と略同一のものである。次いで、電鋳加工により該雄型の凹凸形状を反転した、成形用の型(雌型)を作製した。次いで、該雌型に電離放射線放射線硬化性樹脂組成物(アクリルモノマー(和光純薬社製のメタクリル酸メチル)50部、多官能性アクリルモノマー(新中村化学工業社製の商品名「NKエステルA-TMPT-3EO」)45部、及び光重合開始剤(IGM Resins B.V.社製の商品名「オムニラッド184」)5部からなる組成物)を流し込み、この上に厚み100μmのポリエステルフィルム(東洋紡社製の商品名コスモシャインA4300)を密着させた。この状態のままポリエステルフィルム側から紫外線を照射し、電離放射線放射線硬化性樹脂組成物を硬化させたのち、ポリエステルフィルム及び樹脂を金型から剥離し、透明基材上に樹脂層を備えた実施例1の防眩フィルムを得た。樹脂層の厚みは4.0μmであった。該防眩フィルムは樹脂層側の面が第1主面である。
【0127】
[実施例2~4]、[比較例1~3]
シミュレーションする表面形状を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4、及び、比較例1~3の防眩フィルムを得た。なお、実施例2~4及び比較例1~3の雄型の表面形状は、表1の実施例2~4及び比較例1~3の樹脂層(第1主面)の表面形状と略同一のものである。
【0128】
[実施例5]
透明基材(厚さ100μmのPETフィルム、製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、面内位相差(Re):3200nm、東洋紡社製)上に、下記処方の樹脂層塗布液1を塗布し、70℃、風速5m/sで30秒間乾燥した後、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して、樹脂層を形成し、実施例5の防眩フィルムを得た。樹脂層の膜厚は3.0μmであった。実施例5の防眩フィルムは、樹脂層側の面が第1主面である。
【0129】
<樹脂層塗布液1>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 20部
(ダイセル・サイテック製 KRM7804、9官能、重量平均分子量3000)
・イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 25部
(東亜合成社製、M-313)
・2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレートモノマー 10部
(商品名:NKエステル701A、新中村化学工業社製、2官能)
・光重合開始剤 6部
・シリコーン系レベリング剤 0.08部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSF4460)
・フッ素系レベリング剤:0.05質量部
(DIC社製、商品名「メガファック F―568」)
・透光性粒子 5部
(積水化成品社製、球状ポリアクリル-スチレン共重合体)
(平均粒子径2.0μm、屈折率1.515)
(粒子径1.8~2.2μmの粒子の割合が90%以上)
・無機微粒子分散液 155部
(日産化学社製、表面に反応性官能基が導入されたシリカ、溶剤MIBK、固形分35%)
(平均粒子径12nm)
・紫外線吸収剤A 5質量部
(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
(製品名:JF-79、城北化学工業社製)
(極大吸収波長:355nm)
・紫外線吸収剤 5質量部
(トリアジン系紫外線吸収剤)
(製品名:Tinuvin479、BASF社製)
(極大吸収波長:322nm)
・溶剤1 75部
(トルエン)
・溶剤2 50部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0130】
【0131】
【0132】
表1~2の結果から、実施例の防眩フィルムは、映り込みを抑制するとともに、表面のざらつき感を抑制して高級感を付与し得ることが確認できる。具体的には、実施例の防眩フィルムは、θa0.8が0.20度以上であるため、防眩性が良好なものであった。また、実施例の防眩フィルムは、θa0.8が0.70度以下であり、かつ、|θa2.5-θa0.8|が0.10度以下であるため、第1主面は、周期の短い凹凸を有する一方で、超低周波の凹凸の割合が少ない形状を有するものといえる。そして、かかる第1主面を有する実施例の防眩フィルムは、ざらつき感を抑制し、高級感を付与し得るものであることが確認できる。一方、比較例1~3の防眩フィルムは、θa0.8が0.20度以上であるため防眩性は良好であるものの、θa0.8が0.70度超、及び/又は、|θa2.5-θa0.8|が0.10度超であるため、ざらつき感を抑制できないものであった。
【0133】
3.連続折り畳み試験
上記実施例5の防眩フィルムをサンプル1として準備した。また、上記実施例5の基材を下記の基材に変更した以外は実施例5と同様にして作製した防眩フィルムを、サンプル2~9として準備した。
【0134】
・サンプル2:厚さ38μmのPETフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、面内位相差(Re):1140nm、Nz係数3.4、東洋紡社製)
・サンプル3:厚さ38μmのPETフィルム(面内位相差(Re):600nm、Nz係数23)(サンプル3の製法は後述)
・サンプル4:厚さ60μmのCOPフィルム
(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルム(登録商標)ZD14)
・サンプル5:厚さ20μmのCOPフィルム
(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルム(登録商標)ZT12)
・サンプル6:厚さ60μmのTACフィルム
(富士フイルム社製、フジタックTD60UL)
・サンプル7:厚さ25μmのTACフィルム
(富士フイルム社製 フジタックTJ25UL)
・サンプル8:厚さ40μmのアクリルフィルム
(大倉工業社製、OXIS(登録商標)-ZU、面内位相差1.5nm)
・サンプル9:厚さ30μmのアクリルフィルム
(大倉工業社製、OXIS(登録商標)-ZU、面内位相差1.3nm)
【0135】
<サンプル3のPETフィルムの作製>
まず、1kgのPET(融点258℃、吸収中心波長:320nm)と、0.1kgの紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)とを、混練機で280℃にて溶融混合し、紫外線吸収剤を含有したペレットを作製した。そのペレットと、融点258℃のPETを単軸押出機に投入し、280℃で溶融混練し、Tダイから押出し、25℃に表面温度を制御したキャストドラム上にキャストしてキャスティングフィルムを得た。キャスティングフィルム中の紫外線吸収剤の量はPET100質量部に対して1質量部であった。
【0136】
得られたキャスティングフィルムを、95℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間400mm(始点が延伸ロールA、終点が延伸ロールBであり、延伸ロールAおよびBは、それぞれ2本のニップロールを有する)の150mmの地点でのフィルム温度が103℃となるように、フィルム両面から乱流が生じるようにラジエーションヒーターにより加熱しながら、フィルムを流れ方向に3.6倍延伸し、その後一旦冷却した。
【0137】
続いて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、フィルム両面のコロナ放電処理面に、ガラス転移温度18℃のポリエステル樹脂、ガラス転移温度82℃のポリエステル樹脂、および平均粒径100nmのシリカ粒子を含む易滑層塗布液をインラインコーティングし、易滑層を形成した。
【0138】
次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃の熱風で予熱後、1段目105℃、2段目140℃の温度でフィルム幅方向に3.8倍延伸した。ここで、横延伸区間を2分割した場合、横延伸区間中間点におけるフィルムの延伸量(計測地点でのフィルム幅-延伸前フィルム幅)は、横延伸区間終了時の延伸量の80%となるように2段階で延伸した。横延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で段階的に180℃から熱処理温度240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に1%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に1%の弛緩処理を施し、その後、巻き取り、二軸延伸されたPETフィルム(厚み38μm)を得た。
【0139】
上記サンプル1~9に関して、明細書本文の連続折り畳み試験を実施し、下記の基準でフレキシブル性、折り癖及びマイクロクラックを評価した。折り癖及びマイクロクラックの評価手法は、明細書本文の記載にしたがった。
折り畳み条件(間隔φ、折り畳み回数)は表3の3パターンとした。また、その他の試験条件は、往復速度は80rpm(回毎分)、試験ストロークは60mm、屈曲角度は180度とした。また、樹脂層が内側になるように折り畳んだ。
【0140】
(1)フレキシブル性
連続折り畳み試験後の防眩フィルムの屈曲部を目視で観察し、下記の基準でフレキシブル性を評価した。なお、折り畳み試験前における各防眩フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、割れや破断は観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
A:折り畳み試験後においても、屈曲部に割れまたは破断が生じていなかった。
B:折り畳み試験後において、屈曲部に割れが若干生じていたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:折り畳み試験後において、屈曲部に割れまたは破断が生じていた。
【0141】
(2)折り畳み試験後の折り癖
連続折り畳み試験後の防眩フィルムの屈曲部を目視で観察し、下記の基準で折り癖を評価した。
A:折り癖が観察されなかった。
B:折り癖が若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:防眩フィルムに折り癖が明確に観察された。
【0142】
(3)折り畳み試験後のマイクロクラック
連続折り畳み試験後の防眩フィルムの屈曲部をデジタルマイクロスコープで観察し、下記の基準でマイクロクラックを評価した。
A:マイクロクラックが観察されなかった。
B:マイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
C:マイクロクラックが明確に観察された。
【0143】
【0144】
表3の連続折り畳み試験の結果から、いずれの樹脂系であっても膜厚が40μm以下であるほうが良好な傾向であった。COPにおいては、膜厚が60μm以下であれば、他の樹脂系より良好であるといえる。また、PETにおいては、Re及びNz係数を制御したほうが良好であった。
【符号の説明】
【0145】
A1:第1主面
A2:第2主面
10:透明基材
20:樹脂層
100:防眩フィルム
110:表示素子
120:画像表示装置