(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】波長変換膜、発光部材、認証装置、リストバンド型電子機器及び生体計測装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231129BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231129BHJP
C09B 67/22 20060101ALI20231129BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20231129BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02B5/20
H10K50/10
C09B67/22 F
C09B57/00 X
C09K11/06
C09K11/06 620
(21)【出願番号】P 2020566476
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001313
(87)【国際公開番号】W WO2020149368
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019005054
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美音
(72)【発明者】
【氏名】田畑 顕一
(72)【発明者】
【氏名】中林 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康生
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187637(WO,A1)
【文献】特開2000-230172(JP,A)
【文献】特表2007-518467(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008721(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/008325(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/013681(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/103907(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261652(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0166146(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108998026(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H10K 50/10
H05B 33/02
C09B 67/22
C09B 57/00
C09K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜であって、
赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備え
、かつ、
前記第1及び第2の色素が、スクアリリウム化合物である波長変換膜。
【請求項2】
前記波長変換膜から前記近赤外領域で発光される光の発光極大波長が、700~1500nmの範囲内である請求項1に記載の波長変換膜。
【請求項3】
前記波長変換膜から前記近赤外領域で発光される光の発光極大波長が、750~1400nmの範囲内である請求項1又は請求項2に記載の波長変換膜。
【請求項4】
赤色発光する面光源と、請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の波長変換膜とを備えた発光部材。
【請求項5】
前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項
4に記載の発光部材。
【請求項6】
請求項
4又は請求項
5に記載の発光部材を具備する認証装置。
【請求項7】
赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材を具備する認証装置。
【請求項8】
請求項
6又は請求項7に記載の認証装置を備え、手首静脈の撮像により生体認証を行
うリストバンド型電子機器。
【請求項9】
装着時に、光源が撮像部と同一平面上以外のリストバンド上のいずれかに具備されてい
る請求項8に記載のリストバンド型電子機器。
【請求項10】
請求項4又は請求項5に記載の発光部材が具備されてい
る生体計測装置。
【請求項11】
手首又は指の付け根で計測を行うパルスオキシメーターであ
る請求項10に記載の生体計測装置。
【請求項12】
手首又は指の付け根で計測を行う脈波センサーであ
る請求項10に記載の生体計測装置。
【請求項13】
赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材が具備され、
手首又は指の付け根で計測を行うパルスオキシメーターである生体計測装置。
【請求項14】
赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材が具備され、
手首又は指の付け根で計測を行う脈波センサーである生体計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換膜、発光部材、認証装置、リストバンド型電子機器及び生体計測装置に関し、特に、近赤外領域での発光と、膜の耐候性に優れた波長変換膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、面全体で均一発光し、自発光型の全固体発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」又は「OLED」ともいう。)の開発が盛んに行われている。
照明やディスプレイとして用いられる有機EL素子は、その構成によって任意の色に発光させることが可能であり、可視光のほか、近赤外光などの不可視光を発するものも知られている。近赤外光は、様々な分析機器などに用いられ、情報化社会において急速に注目を集める、人物が有する生体固有のデータ(指紋、静脈、虹彩、網膜、掌形、顔貌、体形、声紋等)を用いた生体認証用途としても活用されている。生体認証は、生体の一部や動作の特徴(生体情報)を使うため、鍵やパスワードに比べてセキュリティが高く、忘却や紛失などがないことが特徴である。よって、銀行のATM(Automated Teller Machine、現金自動支払機)、携帯電話機、PDA(Personal Data Assistant,携帯情報端末)、パーソナルコンピューター等におけるセキュリティ対策の重要性が増加するにつれて、企業及び個人の情報に対する不正アクセスや漏洩を防止することを目的とする技術として、非常に有用である。
【0003】
また、設置の自由度の観点から生体認証用の撮像装置の小型化は進み、光源としては薄膜である面光源(有機EL素子)が用いられる例が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このような近赤外発光する発光体は未だ限られた種類しか知られていない。
多色発光する有機EL素子を得るため、波長変換膜を介して発光波長を長波化する技術は広く用いられているが(例えば、特許文献2参照。)、近赤外領域での発光と、光及び熱などに対する耐性とを両立させたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-111674号公報
【文献】特開2007-157550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、近赤外領域での発光と、膜の光や熱に対する耐性、すなわち耐候性に優れた波長変換膜を提供することである。また、当該波長変換膜を用いて、耐候性に優れ、かつ、発光強度に優れた発光部材と、それを具備した認証装置、リストバンド型電子機器及び生体計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、波長変換膜中に、赤色光領域に吸収を有する第1の色素と、第1の色素の励起エネルギーを受け取り、近赤外領域で発光する第2の色素とを含有させることにより、近赤外領域での発光と、膜の耐久性及び耐候性に優れた波長変換膜等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
1.少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜であって、
赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備え、かつ、
前記第1及び第2の色素が、スクアリリウム化合物である波長変換膜。
【0008】
2.前記波長変換膜から前記近赤外領域で発光される光の発光極大波長が、700~1500nmの範囲内である第1項に記載の波長変換膜。
【0009】
3.前記波長変換膜から前記近赤外領域で発光される光の発光極大波長が、750~1400nmの範囲内である第1項又は第2項に記載の波長変換膜。
【0011】
4.赤色発光する面光源と、第1項から第3項までのいずれか一項に記載の波長変換膜とを備えた発光部材。
【0012】
5.前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子である第4項に記載の発光部材。
【0013】
6.第4項又は第5項に記載の発光部材を具備する認証装置。
7.赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材を具備する認証装置。
【0014】
8.第6項又は第7項に記載の認証装置を備え、手首静脈の撮像により生体認証を行うリストバンド型電子機器。
【0015】
9.装着時に、光源が撮像部と同一平面上以外のリストバンド上のいずれかに具備されている第8項に記載のリストバンド型電子機器。
【0016】
10.第4項又は第5項に記載の発光部材が具備されている生体計測装置。
【0017】
11.手首又は指の付け根で計測を行うパルスオキシメーターである第10項に記載の生体計測装置。
【0018】
12.手首又は指の付け根で計測を行う脈波センサーである第10項に記載の生体計測装置。
13.赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材が具備され、
手首又は指の付け根で計測を行うパルスオキシメーターである生体計測装置。
14.赤色発光する面光源と、
少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜とを備え、
前記波長変換膜が、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、
前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた発光部材が具備され、
手首又は指の付け根で計測を行う脈波センサーである生体計測装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、近赤外領域での発光と、膜の光や熱に対する耐性、すなわち耐候性に優れた波長変換膜を提供することである。また、当該波長変換膜を用いて、耐候性に優れ、かつ、発光強度に優れた発光部材と、それを具備した認証装置、リストバンド型電子機器及び生体計測装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の波長変換膜は、赤色光を励起光として使用する第1の色素を膜中に含有することにより、一般的に変換技術に用いられる光(青~青緑)と比較してエネルギーの低い光である赤色光源を用いることが可能となるため、波長変換膜の劣化を抑制することができると推察される。
また、前記第1及び第2の色素である2種類の色素で光吸収(励起)と発光の役割を分担することにより、波長変換膜の劣化を防止することができる。
さらに、前記第1及び第2の色素として非常に耐候性が高い色素を使用した場合、このような色素を備えた波長変換膜も耐候性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の波長変換膜における第1の色素と第2の色素の吸収スペクトル及び発光スペクトルの関係を示した図
【
図2】本発明の発光部材の構成の一例を示す概略断面図
【
図3】封止構造を具備した本発明の波長変換膜の構成の一例を示す概略断面図
【
図4】赤色光カットフィルターを具備した本発明に係る波長変換膜の構成の一例を示す概略断面図
【
図5A】点光源を用いた指先における透過型のセンシングの一例を示す概略図
【
図5B】面光源を用いた指先における透過型のセンシングの一例を示す概略図
【
図5C】面光源を用いた指先における反射型のセンシングの一例を示す概略図
【
図6A】点光源を用いた指の付け根における透過型のセンシングの一例を示す概略図
【
図6B】面光源を用いた指の付け根における透過型のセンシングの一例を示す概略図
【
図7A】点光源を用いた手首におけるV字型のセンシングの一例を示す概略図
【
図7B】面光源を用いた手首におけるV字型のセンシングの一例を示す概略図
【
図7C】面光源を用いた手首における反射型センシングの一例を示す概略図
【
図7D】点光源を用いた手首における反射型センシングの一例を示す概略図
【
図8】リストバンド型電子機器の構成の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の波長変換膜は、少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜であって、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0022】
本発明の実施態様としては、波長変換膜から前記近赤外領域で発光される光の発光極大波長が、700~1500nmの範囲内であることが、近赤外領域での発光が得られる点で好ましい。特に、750nm~1400nm、さらには波長変換膜を認証装置(生体認証用)、リストバンド型電子機器及び生体計測装置(パルスオキシメーター、脈波センサー)に用いる場合、800~1000nmの範囲内であることが、水の吸収域に重ならず、ヘモグロビンの吸収域と重なりを有する点で好ましい。別の用途において、水溶液の検査では吸収を有する900nm以上、眼球検査ではアイセーフ帯である1400nm以上の波長が好ましい。
また、前記第1の色素の発光スペクトルと、前記第2の色素の吸収スペクトルの交点となる波長における発光又は吸収強度が、前記第2の色素の発光スペクトルでの発光極大波長における発光強度の1/4以上、さらには1/3以上であることが、第1の色素の発光スペクトルと第2の色素の吸収スペクトルとの重なりが大きくなり、第1の色素から第2の色素への効率的なエネルギー移動が可能となり、第2の色素、すなわち波長変換膜から得られる発光強度が高くなる点で好ましい。
【0023】
また、前記第1及び第2の色素が、スクアリリウム化合物であることが、非常に耐候性が高く、当該第1及び第2の色素を含有する波長変換膜耐候性にも優れる点で好ましい。
【0024】
本発明の波長変換膜は、赤色発光する面光源を備えた発光部材に好適に用いられる。
また、前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが、高い輝度均一性を得ることができるとともに、薄膜でフレキシブル性に優れ、耐久性に優れた発光部材を得られる点で好ましい。
さらに、本発明の発光部材は認証装置に好適に用いられる。
【0025】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、各図の説明において、構成要素の末尾に括弧内で記載した数字は、説明する図面に記載した符号を表す。さらに、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0026】
[本発明の波長変換膜の概要]
本発明の波長変換膜は、少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜であって、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えることを特徴とする。
本発明の波長変換膜は、後述する赤色発光する面光源、例えば、赤色発光の有機EL素子上に配置されて、面光源の可視光を近赤外光(IR)に変換する膜である。
【0027】
前記波長変換膜から得られる発光極大波長は、700~1500nmの範囲内であることが好ましく、750nm以上であることが近赤外領域での発光が得られる点でより好ましい。
本発明における「発光極大波長」とは、分光蛍光光度計(例えばF-7000(株式会社 日立ハイテクサイエンス製))を用いて、波長変換膜について発光スペクトルを測定したとき得られる発光スペクトルにおいて、最大かつ極大の発光強度を示す波長を発光極大波長という。また、同様に「吸収極大波長」とは、最大かつ極大の吸光度(吸収強度)を示す波長をいう。
また、このような波長変換膜を含む発光部材を生体認証装置として用いる場合、750nm~1400nm、さらには800~1000nmの範囲内であることが、水の吸収域に重ならず、ヘモグロビンの吸収域と重なりを有する点で好ましい。
【0028】
本発明の波長変換膜は、少なくとも2種以上の色素を備え、照射光を吸収して前記照射光より長波長の発光をする波長変換膜であって、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、前記第1の色素の励起エネルギーを吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の波長変換膜の形態や製造方法などは制限されず、目的用途に応じて適宜決定される。
前記形態としては、面光源とは別途に支持体上に製造し面光源に重ねて用いてもよく、又は、面光源上に積層されていてもよい。若しくは、接着剤や封止膜と役割を兼ねていてもよい。また、
図4に示すように、波長変換されずに放射されてきた赤色光を除外するための赤色光カットフィルターを積層又は含んでもよい。厚さについても、用途に応じて適宜決定されるが、0.01~500μmの範囲内であることがフレキシブル性及び小型化の観点で好ましく、より好ましくは0.1~200μm、さらに好ましくは1~100μmの範囲内である。
【0030】
製造方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法などによって、前記2種以上の色素(発光色素)を含む波長変換膜形成用組成物を支持体上に一時的又は恒久的に付与することができる方法を挙げることができる。また、スピンコート法などの湿式法で製造する場合、使用する溶媒は特に制限されないが、例えば、水やアルコール系、ジオール系、ケトン系、エステル系、エステル系、芳香族炭化水素系(ハロゲンを含有してもよい)、脂肪族又は脂肪族炭化水素系の溶媒などが挙げられる。
【0031】
また、波長変換膜形成用組成物を形成する際に、前記発光色素を溶解又は分散させるため、マトリックス材料として、公知の樹脂材料等を用いてもよい。前記発光色素の発光波長に影響を及ぼさない観点から、非極性の樹脂材料が好適に用いられ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラート(PVB)、トリアセチルセルロース(TAC)、ニトロセルロースなどのセルロースエステルなどが挙げられる。
【0032】
本発明における2種以上の発光色素は、これら全てを一つの層中に含有させるほか、複数の色素を別々のマトリックス材料に溶解又は分散させ、複数回に分けて積層させてもよい。
【0033】
さらに、必要に応じて前記発光色素の他に、着色剤や光安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、難燃剤、無機添加剤、透明化剤、紫外線吸収剤、充填剤、光散乱性粒子といった周知の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
(光散乱性粒子)
上述のうち、光散乱性粒子とは、波長変換膜中に入ってきた光を多重散乱させる機能を持った粒子である。これらを添加することで、波長変換膜に進入した光は膜中での光路長が伸び、波長変換膜内部で波長変換される機会が増えるので、波長変換効率が向上する。さらに、波長変換膜界面の反射により、波長変換膜内部に戻ってきた光を再度散乱することで、光取り出し効率の向上が見込める。
【0035】
光散乱性粒子の平均粒子径は、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が0.01μm未満であると、波長変換膜中において充分な光散乱性を得ることが出来ず、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、添加量(質量%)が同じであっても光散乱粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。
【0036】
光散乱性粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等
)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる
。なお、光散乱性粒子の粒子径は、光散乱性粒子の形状が球状でない場合、同体積を有す
る真球状の値とすることができる。
【0037】
光散乱性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であっても良いが、屈折率が高いほど、粒子の散乱性能が高まるため、中でも高屈折率を有する無機微粒子であることが好ましい。
【0038】
高屈折率を有する有機微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ及びベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
【0039】
高屈折率を有する無機微粒子としては、例えば、ケイ素、ジルコニウム、チタン、インジウム、亜鉛、アンチモン、セリウム、ニオブ及びタングステン等の中から選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、具体的には、SiO2、ZrO2、TiO2、BaTiO3、In2O3、ZnO、Sb2O3、ITO、CeO2、Nb2O5及びWO3等が挙げられ、中でも、TiO2、BaTiO3、ZrO2、CeO2及びNb2O5が好ましく、TiO2が最も好ましい。また、TiO2の中でも、アナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性が低いため膜の耐候性が高くなり、更に屈折率も高いことから好ましい。
【0040】
また、これらの粒子は、波長変換膜に含有させるために、分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施したものを用いるか、あるいは表面処理を施さないものを用いるかを選択することができる。
【0041】
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いても良く、複数種を組み合わせて用いても良い。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理材としては、異種無機酸化物又は金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
【0042】
波長変換膜の全固形分質量に対する光散乱性粒子の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が0.1質量%未満であると、光散乱効果が充分に得られないおそれがあり、また、光散乱性粒子の含有量が20質量%を超えると、光散乱性粒子が多すぎるために透過率が低下する。
【0043】
(赤色光カットフィルター)
赤色光カットフィルターの材質としては、ガラス、樹脂などが挙げられ、誘電体多層膜や、吸収色素を含有する膜を形成することで、赤色光を除外するものが使用できる。赤色光カットフィルターは、市販品を用いてもよく、又は、上記の膜を波長変換膜上に製膜するか、独立して作製した後に、波長変換膜と組み合わせて使用してもよい。
【0044】
また、波長変換膜を介した発光に関して、波長変換膜中に2種の発光色素(以下、短い発光極大波長を有する色素から順に第1の色素、第2の色素という。)が含まれる場合を例に、
図1を参照して説明する。
光源から発せられた赤色光によって第1の色素は励起され、その励起エネルギーが第2の色素に移動する。この第2の色素から得られる発光が波長変換膜からの発光となる。この機構から、第1の色素は赤色光領域(600~700nm)に吸収域を有し、特に吸収極大波長が600~700nmの波長領域に含まれるものが好ましい。また、第2の色素は第1の色素から励起エネルギーを受け取るため、第1の色素の発光スペクトルと第2の色素の吸収スペクトルの重なりが大きいことが好ましい。
なお、二種の色素間でのエネルギー移動については、電子の共鳴によってエネルギーが直接移動する蛍光共鳴エネルギー移動(フェルスター共鳴エネルギー移動ともいう)が1つの要因であるが、本発明ではこれに限定されない。この他、色素間での再吸収によっても、得られる発光を長波化することが可能である。フェルスター共鳴エネルギー移動が生じる場合、前記各スペクトルの重なりの大きさは重なり積分値Jといい、下記数式で算出されることが知られている。
【0045】
【0046】
上式のf
Dは規格化されたドナー(エネルギー供与体)発光スペクトル、E
Aはアクセプター(エネルギー受容体)のモル吸光係数、λは波長を示す。
また、第1の色素及び第2の色素のスペクトルが交わる波長におけるスペクトルの強度(
図1に示すAの強度)が、第2の色素の発光極大波長における強度(
図1に示すBの強度)の1/4以上となることがより好ましく、1/3以上となることが特に好ましい。ただしこの際、全てのスペクトル(両色素の発光及び吸収)は、最大値(強度)が一定となるよう規格化したものである。
【0047】
本発明に係る前記2種以上の発光色素としては、例えば、重水素化トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ネオジム(III):Nd(hfa-D3)、ピロメテン系ホウ素などの錯体や、希土類イオンを内包する無機ナノ物質、インジウムヒ素、硫化鉛などからなる量子ドットナノ粒子、水溶性シリコンナノ粒子などの他、スクアリリウム、クロコニウム、チアジアゾール、シアニン、フタロシアニン、クロコニウム、ローダミン、エオシン、フルオレセイン、トリフェニルメタン、ポルフィリン、ペリレン、チオフェン系などやAdv.Funct.Mater.2019,1807623.に記載のペリレンビスイミド、テリレンビスイミド、ピロロピロールシアニン、ランタノイド、イリジウム錯体、プラチナ錯体、熱活性型遅延蛍光色素、共役系ポリマー、カーボンナノチューブなどの発光色素を用いることができる。これらの発光色素の膜中の濃度は、十分な発光強度及び濃度消光の抑制の観点から、0.05~4.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.15~2.5質量%である。
また、前記2種以上の発光色素の中でも、発光色素であるスクアリリウム化合物が、近赤外光領域にシャープな吸収を示す化合物として、以前より有機太陽電池の増感色素や電子写真感光体の電荷発生材料、蛍光プローブなどに用いられており、さらに、赤外発光領域での耐久性が高く、かつ発光効率に優れており、本発明における発光色素として、特に好ましく用いることができる。よって、第1及び第2の色素のいずれかがスクアリリウム化合物であることが好ましく、さらにその両方がスクアリリウム化合物であることがより好ましい。
本発明に係るスクアリリウム化合物の合成方法については、特に限定されず、例えば、特開平5-155144号公報、特開平5-239366号公報、特開平5-339233号公報、特開2000-345059号公報、特開2002-363434号公報、特開2004-86133号公報、特開2004-238606号公報等に記載の周知一般の反応を用いて得ることができる。
【0048】
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物〉
本発明に係るスクアリリウム化合物の種類は、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0049】
【0050】
上記一般式(1)において、A及びBは、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水環、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、それぞれ隣接する置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。R1~R4はそれぞれ置換基を表し、少なくとも一つは芳香族炭化水素環を有する。また、R1~R4は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
【0051】
A及びBで表される芳香族炭化水素環(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいう)は、炭素数6~18の置換又は無置換の芳香族炭化水素環であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等を挙げることができる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。また、A及びBで表される芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等を挙げることができる。
【0052】
一般式(1)において、R1~R4で表される置換基、並びにA及びBが有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル
基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジタートブチル基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、アミノ基、ヒドロキシ基、シリル基が挙げられる。
【0053】
また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0054】
このうち、R1~R4で表される置換基は、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましい。
【0055】
R1~R4で表されるアルキル基としては、炭素数6~10の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0056】
R1~R4で表される芳香族炭化水素基としては、炭素数6~18の置換又は無置換の芳香族炭化水素基が好ましい。例えば芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等)が挙げられる。好ましくは、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
【0057】
隣接する置換基同士が環を形成する場合としては、その環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環等を挙げることができる。
【0058】
〈一般式(2)で表される構造を有する化合物〉
さらに、前記一般式(1)において、A若しくはB、又はその両方にヒドロキシ基を有していることが、発光性の向上の観点から好ましく、分子内のπ共役が拡張され、発光極大波長が長波化する観点から、下記一般式(2)で表されることがより好ましい。
【0059】
【0060】
上記一般式(2)において、E1~E4はそれぞれ置換基を表す。m1~m4はそれぞれ0又は1~5の整数を表す。R及びR′はそれぞれ置換基を表し、n及びn′はそれぞれ0又は1~3の整数を表す。なお、m1~m4、n及びn′が2以上の場合、E1~E4、R及びR′はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
E1~E4、R及びR′で表される置換基の構造は、上記で詳細に説明した一般式(1)の置換基と同義である。なお、E1~E4で表される置換基としては、特に、メチル基、エチル基、t-ブチル基等のアルキル基が好ましく、R及びR′で表される置換基としては、水素原子又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0062】
本発明に係るスクアリリウム化合物は、例えば、Chemistry of Materials,第23巻、4789ページ(2011年)、The Journal of Physical Chemistry,第91巻、5184ページ(1987年)に記載の方法、又は、これらの文献に記載の参照文献に記載の方法を参照することにより合成することができる。
【0063】
本発明に係る第1の色素は、600~700nm(赤色光領域)に吸収極大波長を有することが好ましい。
【0064】
以下に、本発明に係る第1の色素、スクアリリウム化合物、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物の代表例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0065】
【0066】
また、以下に本発明に係る第2の色素、スクアリリウム化合物、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物の代表例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
さらに、本発明に係る第1の色素及び第2の色素に用いられる化合物として、下記に示す文献1記載のピロロピロールシアニン色素や、文献2記載のジシアノビニル置換スクアリリウム色素等も好適に用いられる。
【0073】
【0074】
文献1:Fischer_et_al- Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 3750 -3753
文献2:Mayerh-ffer_et_al- Chem. Eur. J. 2013, 19, 218 - 232
【0075】
また、本発明に係る第1の色素及び第2の色素に用いられる化合物として、下記一般式(1a)~(1d)及び一般式(4)~(11)で表される構造を有する化合物(1a)~(1d)及び化合物(4)~(11)も好適に用いられる。以下、各一般式(1a)~(1d)及び一般式(4)~(11)についての説明とともに、各化合物を例示する。
【化10】
(一般式(1a)において、各Rcは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRcのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は下記式(P)で表される構造を有する基(P)を表す。)
【0076】
【化11】
(一般式(P)において、※は置換部位を表す。Qは単結合又は2価の連結基を表す。nは1~9の整数を表す。R
51は水素原子又はメチル基を表す。)]
【0077】
前記一般式(1a)で表される構造を有する化合物(1a)において、4個のRcが全て同じアルキル基(a)又は基(P)である、化合物の例示を表Iに示す。表Iには、化合物名と該化合物が有するRcの種類を列記した。なお、表Iにおいて、化合物名は略号のみを示した。以下に示す他の化合物を例示する表においても同様に化合物名は略号のみを示す。
【0078】
表Iにおいて、「n-butyl」はn-ブチル基を、「n-pentyl」はn-ペンチル基を、「n-hexyl」はn-ヘキシル基を、「n-heptyl」はn-ヘプチル基を、「n-octyl」はn-オクチル基を、「n-nonyl」はn-ノニル基を、「n-decyl」はn-デシル基を、「n-undecyl」はn-ウンデシル基を、「n-dodecyl」はn-ドデシル基をそれぞれ示す。基(a1)を(a1)で示す。基(P)を(P)で示し、例えば、(P)(Q=-CH2-,n=2,R11=CH3)のように、Qの種類、nの数、R11の種類を「(P)」の後の括弧内に示す。ただし、Qが単結合の場合はQの表記を省略した。後述する他の化合物に係る表の記載についても、同様である。
また、以下に示す各表において、基(a1)は1-プロピルブチル基、基(a2)は1-エチルペンチル基、基(a3)は2,4,4-トリメチルペンチル基、基(a4)はイソブチル基、基(a5)は2-エチルブチル基、基(a6)は2-エチルヘキシル基、基(a7)2-ブチルオクチル基である。
【0079】
【0080】
【0081】
(一般式(1c)において、各Rdは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRdのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記一般式(P)で表される構造を有する基(P)を表す。各Xaは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基又はフェニル基を表す。mは、0~4の整数を表す。)
【0082】
前記一般式(1c)で表される構造を有する化合物(1c)において、4個の(Xa)mが全て同じ(Rd及び(Xa)mが結合したベンゼン環において、それぞれの(Xa)mが同じ)である化合物の例示を表IIに示す。また、4個のRdは全て同じアルキル基(a)又は基(P)である。表IIには、化合物名と該化合物が有するRdの種類、Rdが結合する炭素原子以外の炭素原子に結合する基又は原子を、Rdの隣から順にX11、X12、X13、X14で示した。表IIにおいて、「-O-(a2)」は、連結基として-O-が結合した基(a2)を示す。また、「2,4,6-trimethoxyphenyl」は2,4,6-トリメトキシフェニル基を、「Me」はメチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ示す。後述する他の化合物に係る表の記載についても、同様である。
【0083】
【0084】
【0085】
(一般式(1b)において、各Raは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。各Rcは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRcのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記一般式(P)で表される構造を有する基(P)を表す。)
【0086】
前記一般式(1b)で表される構造を有する化合物(1b)において、2個のRaが同じアルキル基であり、かつ4個のRcが全て同じアルキル基(a)又は基(P)である、化合物の例示を表IIIに示す。表IIIには、化合物名と該化合物が有するRc及びRaの種類を列記した。
【0087】
【0088】
【0089】
(一般式(1d)において、各Raは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。各Reは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。各Xaは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基又は置換又は無置換のフェニル基を表し、4位に結合する場合のXaは、前記式(D)で表される構造を有する基であってもよい。mは、0~4の整数を表す。ただし、一般式(1d)においては、Raのいずれかが炭素数4~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基(a)を表すか、4個のReのうち少なくとも1個が、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記式(P)で表される構造を有する基(P)を表すか、又は前記4位にXaとして前記式(D)で表される構造を有する基が結合する。)
【0090】
前記一般式(1d)で表される構造を有する化合物(1d)において、2個のRa、4個のRe及び、4個の(Xa)mが全て同じである化合物の例示を表IVに示す。2個のRaは、メチル基、エチル基(表中、「Et」で示す。)又はアルキル基(a)である。4個のReは全て同じアルキル基(a)、基(P)、メチル基又はフェニル基である。表IVには、化合物名と該化合物が有するRa及びReの種類、Reが結合する炭素原子以外の炭素原子に結合する基又は原子を、Reの隣から順にX11、X12、X13及びX14で示した。なお、X12が基(A)のベンゼン環における4位に相当する。表IVにおける「(D)-1」は下記式で表される構造を有する基を示す。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
前記一般式(4)で表される構造を有する化合物(4)においては、R1及びR5がNHCORa基、OH基、NHSO2Rb基、又はNHPO(ORf)(ORg)基であることが好ましく、各Raがアルキル基(a)である構成が好ましい。表Vにそのような化合物(4)を例示する。表中、「tolyl」はトリル基を示す。
【0095】
【0096】
【0097】
前記一般式(5)で表される構造を有する化合物(5)においては、R1及びR5がNHCORa基、OH基、NHSO2Rb基、又はNHPO(ORf)(ORg)基であることが好ましく、各Raがアルキル基(a)である構成が好ましい。表VIにそのような化合物(5)を例示する。
【0098】
【0099】
【0100】
前記一般式(6)~(8)で表される構造を有する各化合物(6)~(8)の具体的な例示を、それぞれ表VII、表VIII及び表IXに示す。また、下記表において、「-O-(a4)」は、連結基として-O-が結合した基(a4)を示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
前記一般式(9)~(11)で表される構造を有する各化合物(9)~(11)の具体的な例示を、それぞれ表X、表XI及び表XIIに示す。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
さらに、本発明に係る第1の色素及び第2の色素に用いられる化合物として、下記化合物も用いることができる。
【化20】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
なお、前記した例示化合物は、第1及び第2の色素のいずれにも使用可能であるが、好ましくは、以下のとおりである。
【0147】
【0148】
(第1の色素及び第2の色素の両方での使用が好ましい例示化合物)
化合物Da-1~16、Da-20~25、Da-28~33、Da-38、Da-39、Da-41~55、化合物De-1~7
【0149】
(第2の色素として使用が好ましい例示化合物)
化合物Da-17~19、Da-26、Da-27、Da-34~37、Da-40、化合物Db-1~14、化合物Dc-1~14、化合物Dd-1~5
【0150】
[発光部材]
本発明の発光部材は、赤色発光する面光源と、上述した波長変換膜とを備えたことを特徴とする。すなわち、発光部材は、赤色発光する面光源と、赤色光領域に吸収極大波長を有する第1の色素と、第1の色素の発光を吸収し、近赤外領域で発光する第2の色素と、を備えた上述した波長変換膜と、を備える。
【0151】
<発光部材の基本構成>
図2に、本発明の発光部材の基本的な構成を示す。
図2に示す発光部材(1)は、赤色発光(R)する面光源(2)、例えば、赤色発光(R)の有機EL素子上に、面光源(2)の可視光を近赤外光(IR)に変換する波長変換膜(3)の配置した構成である。
なお、波長変換膜(3)は、上述した本発明の波長変換膜であるので、その詳細な説明はここでは省略し、面光源の詳細についてのみ以下に説明する。
【0152】
<面光源>
本発明に係る面光源は、少なくとも赤色発光する特性を備えた光源であり、好ましくは、均一発光させたときに輝度均一性が70%以上である面光源であり、具体的な面光源としては、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
【0153】
本発明でいう面光源とは、広がりのある面全体から均一な光を放射する光源であり、これに対する光源としては、発光ダイオード(light emitting diode:LED)などに代表される点光源がある。面光源は、前記点光源に比較して、一般的に発光輝度のむらがなく影をつくらないため、居室内空間の照明、又はディスプレイなどのバックライト用途の他に、生体認証用の撮像装置の照明などに好適に用いることができ、生体認証用の撮像装置に用いる場合、面光源としては、有機エレクトロルミネッセンス素子、μLED(マイクロLED)などが好ましい。
【0154】
本発明に係る面光源においては、OLEDのフレキシブル性を生かすため、基材としてはフレキシブル性を有する樹脂フィルムを用いることがより好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン等、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)又はアペル(商品名三井化学社製)に代表されるシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0155】
(有機EL素子)
本発明の面光源としては、有機EL素子を適用することが好ましい態様である。
【0156】
面光源として本発明に好適な有機EL素子としては、例えば、基材上に陽極及び陰極を有し、発光層を含む有機機能層群が対向する位置にある陽極及び陰極に挟持されている構成を挙げることができる。更に、目的に応じて、封止部材やガスバリアー層、光取出し層等の各機能層を適宜組み合わせて構成して良い。
【0157】
本発明に係る有機EL素子における代表的な構成例について、以下に列挙するが、本発明に適用可能な有機EL素子の構成としては、これらに例示する構成に限定されるものではない。
【0158】
(1)陽極/発光層//陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
本発明に適用可能な有機EL素子を構成する具体的な各構成層の詳細やその製造方法については、特に限定はなく、公知の構成材料や製造方法を適用することができる。例えば、特開2013-089608号公報、特開2014-120334号公報、特開2015-201508号公報、国際公開第2018/51617号等に記載されている内容を参照することができる。
【0159】
(輝度均一性)
本発明に係る面光源においては、面光源を均一発光させたとき、下式(1)で規定する輝度均一性が、70%以上であることが好ましい。
【0160】
点光源として、例えば、LEDを適用した場合には、輝度均一性はおおむね50%以下であり、処理なしに生体認証用の光源として適用した場合には、光源が有する輝度の不均一な部分(ムラ)を、測定対象物の画像として誤認識してしまうため、認証率の低下を招く場合が多い。
【0161】
本発明においては、生体認証装置としての認証精度を保証するため観点から、輝度均一性としては、80%程度であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0162】
面光源の輝度均一性の測定方法としては、例えば、特開2007-265850号公報及び特開2009-21336号公報等に記載されるように、コニカミノルタ社製の分光放射輝度計(CS-1000)を用いて、面光源の発光輝度分布を測定する。
【0163】
具体的には、面光源(例えば、有機EL素子)の発光輝度が1000cd/cm2となる条件で駆動・発光させ、発光面を微小領域、例えば、2~5mm角に分割し、各領域の輝度をそれぞれ測定したときの最小輝度(cd/cm2)と最大輝度(cd/cm2)を求め、下式(1)によって輝度均一性の評価を行う。
【0164】
式(1)
輝度均一性(%)=〔発光面における最小輝度(cd/cm2)/発光面における最大輝度(cd/cm2)〕×100
本発明において、面光源の輝度均一性を更に向上させる方法としては、例えば、電極の給電点を増やすこと、電極をグリッド状にすること、陽極と陰極間の距離が最小となるような位置に配置すること、面光源を蒸着ではなく塗布法で作製すること等が挙げられ、これらの各技術を適宜選択、又は複数の方法を組み合わせることも好ましい。
【0165】
[認証装置]
本発明の認証装置は、上述した発光部材を具備することを特徴とする。本発明の認証装置は、様々な技術を用いて対象物の認証を行う認証装置として、画像を読み取り認証する撮像装置、及びこれを搭載した携帯電話などのモバイル機器、現金自動取引装置、ディスプレイ、ファクシミリ、スキャナ、複合機などがある。近年の情報化社会においては、高精度な認証技術が要求されることから、生体認証(バイオメトリクス)に関する研究が盛んになっている。生体認証は、各個人の生体的特徴(動作や生体の一部)を採取し、あらかじめ登録した特徴データと比較した類似度を測定並びに判定することにより個人を認識する。
【0166】
生体情報としては、手のひら及び指の静脈、指紋、掌形、虹彩、網膜、顔、筆跡、音声、匂い等がある。中でも、小型化が可能である点や盗難のおそれがない点、高セキュリティ性などといった暗点から、静脈を用いた認証(静脈認証装置)が特に注目を集めている。
【0167】
静脈認証は、静脈中を流れる還元ヘモグロビンが近赤外光を吸収する性質を利用した認証方法であり、認証装置に用いる光源は近赤外光であり、850nm付近に発光極大を有するものがより好ましい。静脈認証は、指先に近赤外線を照射し、得られた静脈部が影となった画像を、あらかじめ登録しておいたデータと照合することにより認証を行う。静脈認証方式では、抽出するデータ量が少ないため、高速処理が可能であるほか、近赤外光を照射して初めて目視での確認が可能となるため、生体の同一部分を認証する技術である指紋認証と比較して偽造や盗難が起こりにくい。さらに、静脈パターンは生体内部に存在する情報であるため、外部の影響を受けにくく半永久的に変化しないことや、不適応者が非常に少ないことといった点でも優位性がある。
【0168】
静脈認証装置の具体的な構成としては、例えば、近赤外光を発する光源と、光源を調整する制御部、指先からの透過光又は反射光を検出して画像を得る撮像部、画像処理を行う認証部、抽出データを保存し登録する記憶部、登録データとの照合を行う演算部などから構成される。
【0169】
現在の静脈認証では、一般に、発光ダイオード(LED)などの複数の点光源を用いて照射を行っているが、LEDは発光部の形状が球状である点光源のため、複数個並べることにより輝度にムラが生じ、得られる撮像の認識率が低下してしまう。さらに、そもそもLEDは個々の光量が厳密には均一ではないため、照射光量を調整する制御部には複雑なシステムが要求されている。そこで、本発明の生体認証装置においては、光源として輝度均一性を有する面光源、より具体的にはOLEDを用いることが好ましい態様である。なお、面光源を静脈認証装置として用いる場合、例えば、40mm×10mmの長方形の形態が好ましい。
【0170】
本発明の認証装置は種々の機器に搭載させることができるが、リストバンド型電子機器に搭載されることが一つの特徴である。
【0171】
本発明のリストバンド型電子機器とは、特に限定されないが、例えば、ブレスレット、腕時計、スマートウォッチ、腕時計型スマートフォンなどが挙げられ、無線通信により生体認証情報を発信することができる機器である。
【0172】
本発明のリストバンド型電子機器の好ましい形態として、装着時に光源が撮像部と同一平面上以外のリストバンド上のいずれかに具備されている。装着時に光源が撮像部と同一平面上以外のリストバンド上のいずれかに具備されることで、生体表面の反射光による認証に不要な生体情報の影響を低減でき、生体内で散乱した近赤外光での生体情報を受光できるため、静脈撮像を容易にする。手首の撮像部分は特に限定されないが、手首の外側もしくは内側での静脈撮像が認証に適している。
【0173】
光源の位置は、装着時に撮像部と同一平面上以外のリストバンド上のいずれかであれば限定されないが、より認証に不要な生体情報の影響を低減するためには、撮像部の中心点、光源の中心点、手首断面の中心点、これら三点のなす角度が、好ましくは30~180度の範囲内であり、さらに好ましくは45~180度の範囲内であり、特に好ましくは90~180度の範囲内であることが挙げられる。
【0174】
光源の数は、特に限定されないが、消費電力の観点から、1~3個の範囲で設置することが好ましい。
【0175】
撮像部は、特に限定されないが、静脈パターンを広角に撮影するため、広角カメラの使用が好ましい。
【0176】
《生体計測装置》
生体計測装置は、現在社会において、日々の健康管理や医療現場での使用に欠かせない機器になっている。その一方で、センサーを身体に装着する必要性があることから、QOL(quality of life、「生活の質」、「生命の質」ともいう。)との両立が課題となっている。
【0177】
本発明の発光部材は、「生体の窓」の領域に発光を有するため、生体計測装置への搭載に適している。
【0178】
本発明の発光部材を備えた生体計測装置としては、特に限定されないが、パルスオキシメーター、脈波センサー等が挙げられる。パルスオキシメーターでは、近赤外光と赤色光の2波長を用いて、血中の酸素濃度を測定することができる。
【0179】
医療現場でのパルスオキシメーターや脈波センサーは、一般的には指先に装着するため、入院患者などのQOLを低下させている。本発明の発光部材を備えたパルスオキシメーターや脈波センサーでは、面光源であることから、従来の点光源では困難な骨の太い部分(手首や指の付け根)でのセンシングを可能とし、指先の煩わしさを解消することができる。その理由については定かではないが、下記のように推察している。
【0180】
図5A~
図5Cは、発光部材として点光源及び面光源を用いた指先におけるセンシングの一例を示す概略図である。
【0181】
図5Aは、従来型の点光源11での指先の透過型のセンシングを表し、指の先端部13Aでは骨14が細いため点光源11であっても生体内を通過して光Lがセンサー12に到達する。
【0182】
図5Bは、本発明の面光源15を用いた指先の透過型のセンシングを表し、本発明の面光源15は発光面積が大きく、光Lの指向性も強くないため、面光源15とセンサー12の位置合わせの制限が劇的に緩和され、安定的に光Lが生体内を通過して、センサー12に届くことが達成されている。
【0183】
図5Cは、本発明の面光源15を用いた指先の反射型のセンシングを表し、本発明の面光源15は発光面積が大きく、光Lの指向性も強くないため、生体内での光Lの散乱が促進され、安定的に光Lが生体内で反射してセンサー12に届くことで、達成されている。
【0184】
図6A及び
図6Bは、発光部材として点光源及び面光源を用いた指の付け根におけるセンシングの一例を示す概略図である。
図6Aは、従来の点光源11を用いたセンシングを示す。
図6Aに示すように、指の付け根部13Bで、従来型の点光源11では発光面積が小さい上に光Lの指向性も強いため、光Lが骨14で遮られることが多く、点光源11とセンサー12の位置合わせがごく狭い範囲に限定されてしまうため、安定的なセンシングが難しい。
【0185】
一方、本発明の面光源15を用いた指の付け根におけるセンシングの場合には、
図6Bに示すように、発光面積が大きく光Lの指向性も強くないため、面光源15とセンサー12の位置合わせの制限が劇的に緩和され、安定的に光Lが生体内を通過してセンサー12に届くことが達成されている。
【0186】
図7A~
図7Dは、点光源及び面光源を用いた手首におけるセンシングの一例を示す概略図である。
【0187】
図7AのV字型や
図7Dの反射型の手首でのセンシングでは、従来型の点光源11を用いており、光Lの指向性が強いため、生体内での光Lの散乱が不十分で、センシングに十分な光量を受光できない問題がある。一方、
図7Bで示すV字型の手首におけるセンシングでは、本発明の発光部材である面光源15では、広い面積で光Lが生体内に入り、生体内での光散乱が活発となることでセンシングに必要な光量で生体情報を得ることが可能となる。同様に、
図7Cで示す反射型の手首のセンシングにおいても
図7Bと同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0188】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0189】
[実施例1:波長変換膜]
<波長変換膜1-1の作製>
下記の方法に従って、
図3に記載の構成からなる波長変換膜1-1を作製した。
ナスフラスコ中のトルエン溶液にポリスチレン(ACROS ORGANICS社製、重量平均分子量Mw=260000)を14.82%、第1の色素として色素A-1を0.18%(いずれも溶液中の質量%)となるように添加し、80℃に加熱撹拌して十分に溶解させた。
次いで、得られた混合溶液を、ガスバリアーフィルム上に、アプリケーターを用いて塗布し、室温で10分乾燥させた後、さらに80℃で10分加熱乾燥を行って発光色素層を形成した。その後、封止用の接着剤を付けたガスバリアーフィルムを用意して塗布面と張り合わせ、90℃の加熱条件で真空ラミネーターを用いて封止を行った。その後、110℃で30分加熱処理を行うことにより接着剤を硬化させ、波長変換膜1-1を作製した。得られた膜の厚さは40μmであった。なお、乾燥後の膜中の発光色素濃度は1.2%である。
なお、
図3において、発光色素層(5)の一方の面に接着剤層(6)を介してガスバリ
アーフィルム(4B)が張り合わされ、他方の面にはガスバリアーフィルム(4A)が貼り合されている。
【0190】
<波長変換膜1-2~1-7の作製>
前記波長変換膜1-1の作製において、第1の色素である色素A-1を前記した例示化合物1-1に変更した以外は同様にして波長変換膜1-2を作製した。
また、前記波長変換膜1-1の作製において、第1の色素を下記表Iに記載の各色素に変更し、かつ、第1の色素とともに下記表Iに記載の第2の色素を添加し、第1及び第2の色素の添加量を溶液中でそれぞれ0.03%及び0.15%となるように添加した以外は同様にして、波長変換膜1-3~1-7を作製した。
【0191】
なお、表Iに記載のA-1~A-3は下記のとおりであり、各例示化合物は前記したものである。また、第1の色素については、吸収極大波長を下記表に示した。
【化57】
【0192】
【0193】
(酸化チタン分散液の調製)
下記の方法に従って酸化チタン分散液を調製した。
酸化チタン(堺化学社製、R-42)とプロピレングリコールモノメチルエーテルを質量比50:50で混合して、撹拌装置で撹拌して酸化チタン分散液を調製した。
【0194】
<波長変換膜1-8の作製>
下記の方法に従って、
図3に記載の構成からなる波長変換膜1-8を作製した。
ナスフラスコ中のトルエン溶液にポリスチレン(ACROS ORGANICS社製、重量平均分子量Mw=260000)を24.58%、第1の色素として前記した例示化合物(1a)-1を0.13%、第2の色素として前記した例示化合物(1d)-40を0.05%、さらに上記で調整した酸化チタン分散液を0.5%(いずれも溶液中の質量%)となるように添加し、80℃に加熱撹拌して十分に溶解させた。
次いで、得られた混合溶液を、ガスバリアーフィルム上に、アプリケーターを用いて塗布し、室温で10分乾燥させた後、さらに80℃で10分加熱乾燥を行って発光色素層を形成した。その後、封止用の接着剤を付けたガスバリアーフィルムを用意して塗布面と張り合わせ、90℃の加熱条件で真空ラミネーターを用いて封止を行った。その後、110℃で30分加熱処理を行うことにより接着剤を硬化させ、波長変換膜1-8を作製した。得られた膜の厚さは80μmであった。なお、乾燥後の膜中の発光色素濃度は1.2%である。
なお、
図3において、発光色素層(5)の一方の面に接着剤層(6)を介してガスバリアーフィルム(4B)が張り合わされ、他方の面にはガスバリアーフィルム(4A)が貼り合されている。
【0195】
<波長変換膜1-9の作製>
前記波長変換膜1-8の作製において、酸化チタン分散液を添加せず、ポリスチレンの添加量を24.83%となるように添加した以外は同様にして、波長変換膜1-9を作製した。
【0196】
[評価]
上記で得た波長変換膜について、各評価を行った結果を表XIVに示した。
【0197】
<発光極大波長(λmax)>
各波長変換膜について、分光蛍光光度計 F-7000(株式会社 日立ハイテクサイエンス製)を用いて発光スペクトルの測定を行い、最大かつ極大の発光強度を示す波長(ピークトップの波長)を発光極大波長(λmax)とした。評価は下記の基準に従う。
◎:発光極大波長(λmax)が、750nm以上、1400nm以下である
○:発光極大波長(λmax)が、700nm以上、750nm未満である
×:発光極大波長(λmax)が、700nm未満である
【0198】
<耐候性>
各波長変換膜の表面に、スーパーキセノンウェザーメーター(SX120、スガ試験機株式会社製)を用いて光量100W/m2(300~400nm)、ブラックパネル温度63℃、湿度90%、試験時間100時間の条件にて耐候性の評価を行い、試験前後の発光極大波長の変化を観察した。評価は下記基準に従う。
○:発光強度に変化は見られない
△:発光強度の減少率が5%以内である
×:発光強度の減少率が5%より大きい
【0199】
【0200】
上記結果に示されるように、本発明の波長変換膜は、比較例の波長変換膜に比べて耐候性の点で優れていることが分かる。
【0201】
[実施例2:発光部材]
<有機EL素子Aの作製>
下記手順に従って、基材上に陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極を積層して封止を行い、ボトルエミッション型の有機EL素子Aを作製した。
【0202】
(陽極の形成)
はじめに、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製、以下、PENと略記する。)の陽極を形成する側の全面に、特開2004-68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を厚さ500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度が0.001mL/(m2・24h・atm)以下、水蒸気透過度が0.001g/(m2・24h)以下のガスバリアー性を有する可撓性の基材(ガスバリアーフィルム)を作製した。
【0203】
その後、厚さが150nmとなるよう、ITO(In2O3:SnO2=90:10 質量%比)をスパッタリング法で成膜した後、パターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が10mm×40mmとなるようにした。続いて、イソプロピルアルコールで超音波洗浄した後、乾燥窒素ガスで乾燥させて、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0204】
(有機機能層群の形成)
上記方法で作製した陽極を、露点-80℃以下、酸素濃度1ppm以下のグローブボックス内にて乾燥させたのち、真空蒸着装置内に移送した。真空蒸着装置内のるつぼ(モリブデン製、又はタングステン製の抵抗加熱用材料製)に、下記の記載の各有機機能層の構成材料を有機EL素子の作製に必要とする量を充填した。
【0205】
〈正孔注入層の形成〉
上記真空蒸着装置を1×10-4Paまで減圧し、化合物HIL-1(MTDATA)を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、陽極上に厚さ15nmの正孔注入層(以下、HILと表記)を形成した。
【0206】
〈正孔輸送層の形成〉
次いで、下記化合物HTL-1(α-NPD)をHIL上に蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層(HTL)を形成した。
【0207】
〈赤色リン光発光層の形成〉
続いて、発光ホストである化合物H-1とドーパントである化合物DP-1の入った加熱ボートをそれぞれ独立に通電し、H-1とDP-1の蒸着速度が100:6となるように調整し、厚さ20nmの赤色リン光発光層(EML)を形成した。
【0208】
〈電子輸送層の形成〉
次いで、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)の入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、EML上に厚さ25nmの電子輸送層(ETL)層を形成した。
【0209】
〈電子注入層の形成〉
次いで、LiFを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ1nmの電子注入層(EIL)を形成した。
【0210】
(陰極の形成)
続いて、アルミニウムを厚さ70nmで蒸着して、陰極を形成した。
【0211】
(封止構造の形成)
次いで、上記で得られた陽極~陰極までの積層体の陰極上に、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。封止基材は、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて厚さ1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートして作製した。
【0212】
この封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って、ディスペンサーを用いて熱硬化性接着剤を均一に塗布し、厚さ20μmの接着層を形成した。これを100Pa以下の減圧下で12時間乾燥させた。なお、熱硬化性接着剤としては、下記(A)~(C)構成成分を混合させたものを用いた。
【0213】
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
次いで、封止基材を露点温度-80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
【0214】
最後に、封止基材を積層体に対して密着・配置し、圧着ロールを用いて、温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/分の条件で密着封止し、その後、110℃で30分間の加熱処理を施すことにより、接着剤を硬化させ、有機EL素子Aを得た。
【0215】
有機EL素子Aの作製に用いた各構成材料の詳細は、以下のとおりである。
【0216】
【0217】
<発光部材2-1の作製>
上記で作製した面光源(有機EL素子A)のみの部材を発光部材2-1とした。
【0218】
<発光部材2-2~2-8の作製>
上記作製した面光源である有機EL素子Aの発光面と、下記表XVに記載の波長変換膜をそれぞれ密着させることにより、
図2で示す構成の発光部材2-2~2-8を作製した。
【0219】
[評価]
上記で得た発光部材2-1~2-8について、各評価を行った結果を表XVに示した。
<発光強度(相対値)>
各発光部材を10mA/cm2の電流を印加して発光させ、上記分光蛍光光度計F-7000(株式会社 日立ハイテクサイエンス製)を用いて発光スペクトルを測定した後、各発光部材の発光波長が800nmのときの発光強度を求め、発光部材2-3の発光強度を100とした時の相対値を求めた。
【0220】
【0221】
上記結果に示されるように、本発明の波長変換膜を備えた発光部材2-5~2-8は、比較例の波長変換膜を備えた発光部材に比べて発光強度の点で優れていることが分かる。また、中でも波長変換膜中に酸化チタン粒子を含む発光部材2-7の効果が顕著であることが分かる。
【0222】
[実施例3:生体認証装置を備えるリストバンド型電子機器]
<生体認証装置を備えるリストバンド型電子機器の作製>
図8に示すように、カメラと広角レンズからなる撮像部21を手首外側に、実施例2で作製した発光部材2-7を2個、装着時に撮像部と同一平面上以外のリストバンド上に備える、手首静脈撮像による生体認証機能を搭載したリストバンド型電子機器20を作製した。
【0223】
<生体認証装置を備えるリストバンド型電子機器での撮像>
図8に示すリストバンド型電子機器20を手首に装着し、個体固有の鮮明な静脈パターンを撮像することができた。
【0224】
[実施例4:指先の静脈撮像を用いた生体認証装置]
<指先の静脈撮像を用いた生体認証装置の作製>
図5Bに示すように、面光源15とセンサー(撮像部)12を、指13Aを挟んで正対するように配置して、指先の静脈撮像により、生体認証が可能な装置を作製した。
【0225】
<指先の静脈撮像を用いた生体認証装置での撮像>
作製した
図5Bに示す生体認証装置を用いて、指先の静脈撮像を行うことにより、個体固有の静脈パターンを撮像することができた。
【0226】
[実施例5:パルスオキシメーター]
<波長変換膜1-9の作製>
上記波長変換膜1-8の作製において、
図4に示すように、発光色素層5と接着剤層6との間に、さらに赤色光カットフィルター7を設けた以外は同様にして、波長変換膜1-9を作製した。
【0227】
<発光部材2-8の作製>
実施例1で作製した面光源である有機EL素子Aの発光面と、上記作製した波長変換膜2-1とを密着させることにより、
図1に示す構成の発光部材2-8を作製した。
作製した発光部材2-8が、有機EL素子Aの赤色光を放射せず、近赤外領域に発光を有する本発明の発光部材であることを確認した。
【0228】
<パルスオキシメーターの作製>
実施例2で作製した発光部材2-1と2-8(符号15で示す位置に配置)を、それぞれ
図7Bに示したように、光源から手首内部に進入して散乱した光が、センサー12で受光されるように配置して、パルスオキシメーターを作製した。
【0229】
(パルスオキシメーターでの酸素飽和度の測定)
作製したパルスオキシメーターを手首に装着し、酸素飽和度を測定することができた。
【0230】
上記結果に示されるように、本発明の波長変換膜を面光源と組み合わせて用いることにより、近赤外領域で発光する発光部材を得ることができる。さらに、この発光部材は、前述した生体認証をはじめとする各種認証装置の光源としても用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明は、近赤外領域での発光と、膜の光や熱に対する耐性、すなわち耐候性に優れた波長変換膜に利用することができる。また、当該波長変換膜を用いて、耐候性に優れ、かつ、発光強度に優れた発光部材と、それを具備した認証装置や、リストバンド型電子機器及び生体計測装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0232】
1 発光部材
2 面光源
3 波長変換膜
4A、4B ガスバリアーフィルム
5 発光色素層
6 接着剤層
7 赤色光カットフィルター
11 点光源
12 センサー
13A 指先
13B 指の付け根
14 骨
15 面光源
16 手首
20 リストバンド型電子機器
21 撮像部
IR 近赤外光
R 赤色発光
L 光