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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】界壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20231129BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20231129BHJP
   E04B 7/18 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E04B1/94 F
E04B2/74 551A
E04B7/18 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021024936
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127023
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】右田 恵里華
(72)【発明者】
【氏名】石川 和義
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健司
(72)【発明者】
【氏名】上谷 博
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 勝人
(72)【発明者】
【氏名】松丸 俊之
(72)【発明者】
【氏名】浅田 敬介
(72)【発明者】
【氏名】天田 高志
(72)【発明者】
【氏名】高矢 育美
(72)【発明者】
【氏名】宮原 啓之
(72)【発明者】
【氏名】下田 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】堀 一夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】神田 陽悦
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-304145(JP,A)
【文献】特開2007-211404(JP,A)
【文献】特開平06-322881(JP,A)
【文献】実開昭55-113408(JP,U)
【文献】特開2000-064566(JP,A)
【文献】特開2017-014798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 2/74
E04C 2/00-2/54
E04B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各住戸間を仕切る界壁構造であって、
第1水平方向に延びる第1梁と、
前記第1梁の側面から前記第1水平方向と直交する第2水平方向に延びる第2梁と、
前記第1梁の側面における前記第2梁の接続部分から所定距離だけ前記第1水平方向に離れた位置から延びる耐力ブレースであって、前記第1梁から遠ざかるに従い前記第2梁から離れるように傾斜して延びる耐力ブレース
前記第1梁の側面に対して前記第2梁側から取付けられる界壁材と、を備え、
前記界壁材は、
前記第1梁の側面を覆うための被覆部であって、前記第1水平方向の一方側から前記第2梁に予め設定された梁側被挿入部を受け入れ可能な第1切欠き部と、前記第1水平方向の他方側から前記耐力ブレースに予め設定されたブレース側被挿入部を受け入れ可能な第2切欠き部と、を有する被覆部と、
前記被覆部から下方に延出する延出部と、を備え、
前記被覆部は、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部とが互いに前記第1水平方向に離間するように、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部との間に介在する連結部を有している、界壁構造
【請求項2】
記被覆部及び前記延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記被覆部及び前記延出部の切断の目印となる切断目印線を有している、請求項1に記載の界壁構造
【請求項3】
前記第2梁は、前記梁側被挿入部よりも前記第1梁側の部分において前記梁側被挿入部を基準として前記耐力ブレースから離れる方向に窪む凹部を有し、
前記界壁材の厚みは、前記凹部によって前記第1梁と前記第2梁の前記梁側被挿入部との間に形成される間隙への前記連結部の挿入が可能となるように設定されており、
前記連結部の前記第1水平方向における幅寸法は、前記第2水平方向に沿って見る視点において、前記第2梁の前記梁側被挿入部と前記耐力ブレースとの間の最小間隙の前記第1梁上での寸法以上の値に設定されている、請求項1又は2に記載の界壁構造
【請求項4】
前記界壁材から成る下張り材と、
前記下張り材に対して前記第1梁の反対側から重ねられる上張り材と、を備え
前記上張り材は、
前記下張り材の前記被覆部を覆うための上張り被覆部であって、前記第1水平方向の一方側から前記第2梁の前記梁側被挿入部を受け入れ可能な第1上張り切欠き部と、前記第1水平方向の他方側から前記耐力ブレースの前記ブレース側被挿入部を受け入れ可能な第2上張り切欠き部と、前記第1上張り切欠き部と前記第2上張り切欠き部とが互いに前記第1水平方向に離間するように、前記第1上張り切欠き部と前記第2上張り切欠き部との間に介在する上張り連結部と、を有する上張り被覆部と、
前記上張り被覆部から下方に延出するとともに、前記下張り材の前記延出部を覆う上張り延出部と、を含み、
前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り連結部の前記第2上張り切欠き部側の端面は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜に応じて、前記下張り材の前記連結部の前記第2切欠き部側の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している、請求項3に記載の界壁構造
【請求項5】
前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り材における前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の前記第1水平方向の他方側の端面は、前記下張り材における前記被覆部及び前記延出部の前記第1水平方向の他方側の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している、請求項4に記載の界壁構造
【請求項6】
前記下張り材において前記被覆部及び前記延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記被覆部及び前記延出部の切断の目印となる切断目印線を有しており、
前記上張り材において前記上張り被覆部及び前記上張り延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2上張り切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の切断の目印となる上張り切断目印線を有しており、
前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り材における前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の前記上張り切断目印線に沿った切断後の端面は、前記下張り材における前記被覆部及び前記延出部の切断目印線に沿った切断後の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している、請求項4又は5に記載の界壁構造
【請求項7】
前記下張り材は、前記第2梁を挟んで前記第1梁の側面に対して取付けられ、互いに突き合わせ可能な端面を有する第1下張り材と第2下張り材とを含み、
前記上張り材は、前記第1下張り材と前記第2下張り材とにそれぞれ重ねられ、互いに突き合わせ可能な端面を有する第1上張り材と第2上張り材とを含み、
前記第1下張り材と前記第2下張り材との間の突き合わせ位置と、前記第1上張り材と前記第2上張り材との間の突き合わせ位置とは、前記第1水平方向において異なっている、請求項4~6のいずれか1項に記載の界壁構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の各住戸間を仕切る界壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の各住戸間を仕切る界壁構造には、所定の耐火性能が要求される。この場合、界壁構造においては、居住空間内に位置する界壁部のみならず、小屋裏空間内に位置する小屋裏界壁部においても、耐火性を有する構造とすることが求められている。このため、界壁構造を構成する界壁材としては、小屋裏界壁部も含めて石膏ボードなどが用いられる。
【0003】
小屋裏界壁部が設けられる小屋裏空間内には、界壁材が取付けられる第1梁と、その第1梁に直交するように接続される第2梁と、第1梁から傾斜方向に延びる耐力ブレースと、が配設されている。このような小屋裏空間内において第1梁に沿って界壁材を配設する場合、特許文献1に記載されるように、第2梁及び耐力ブレースとの干渉を回避するための切欠きを界壁材に形成することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2847384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
界壁材に切欠きを形成する作業は、施工現場において施工者によって行われる。この際、施工者は、界壁材に形成する切欠きの長さを設定するために、第2梁と耐力ブレースとの間の間隙の寸法を計測する作業を、第2梁及び耐力ブレースが配設される箇所ごとに行う必要があり、この作業は施工者にとっては非常に面倒なものである。このため、界壁構造の施工効率が低下する虞がある。
【0006】
しかも、第2梁及び耐力ブレースとの干渉を一括して回避するような大きな切欠きが界壁材に形成された場合には、小屋裏界壁部において耐火性を有する界壁材が存在しない隙間部分の面積が増大するため、小屋裏界壁部の耐火性を維持するために隙間部分を埋める作業が増加する虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、界壁構造の施工効率の向上を図ることが可能な界壁材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る界壁構造は、建物の各住戸間を仕切る界壁構造である。この界壁構造は、第1水平方向に延びる第1梁と、前記第1梁の側面から前記第1水平方向と直交する第2水平方向に延びる第2梁と、前記第1梁の側面における前記第2梁の接続部分から所定距離だけ前記第1水平方向に離れた位置から延びる耐力ブレースであって、前記第1梁から遠ざかるに従い前記第2梁から離れるように傾斜して延びる耐力ブレース、前記第1梁の側面に対して前記第2梁側から取付けられる界壁材と、を備える。前記界壁材は、前記第1梁の側面を覆うための被覆部であって、前記第1水平方向の一方側から前記第2梁に予め設定された梁側被挿入部を受け入れ可能な第1切欠き部と、前記第1水平方向の他方側から前記耐力ブレースに予め設定されたブレース側被挿入部を受け入れ可能な第2切欠き部と、を有する被覆部と、前記被覆部から下方に延出する延出部と、を備える。前記被覆部は、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部とが互いに前記第1水平方向に離間するように、前記第1切欠き部と前記第2切欠き部との間に介在する連結部を有している。
【0009】
この界壁材によれば、建物の各住戸間を仕切る界壁構造を構成するものであって、第1梁の側面を覆うための被覆部と、当該被覆部から下方に延出する延出部とを備える。界壁材の被覆部は、第2梁に予め設定された梁側被挿入部を受け入れ可能な第1切欠き部と、耐力ブレースに予め設定されたブレース側被挿入部を受け入れ可能な第2切欠き部と、第1切欠き部と第2切欠き部との間に介在する連結部とを有している。このような構成の被覆部では、第2梁との干渉を回避するように第1切欠き部が梁側被挿入部を受け入れるとともに、耐力ブレースとの干渉を回避するように第2切欠き部がブレース側被挿入部を受け入れ、且つ、第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に連結部が配置された状態で、被覆部によって第1梁の側面を覆うことができる。
【0010】
この際、界壁材においては、梁側被挿入部及びブレース側被挿入部を受け入れるための第1切欠き部及び第2切欠き部が被覆部に予め形成されているので、施工者は、切欠きの長さを設定するために第2梁と耐力ブレースとの間の間隙の寸法を計測する作業や切欠きを形成する作業を、施工現場において行う必要がない。このため、界壁構造の施工効率の向上を図ることができる。しかも、被覆部によって第1梁の側面を覆った状態において第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に連結部が配置されるので、界壁構造において切欠きの形成に応じて耐火性を有する界壁材が存在しない隙間部分の面積が増大するのを、可及的に抑止することができる。このため、界壁構造の耐火性の低下を抑制することが可能であるとともに、隙間部分を埋める作業の効率化を図ることができる。
【0011】
上記の界壁構造において、前記被覆部及び前記延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記被覆部及び前記延出部の切断の目印となる切断目印線を有している。
【0012】
この態様では、被覆部及び延出部を切断目印線に沿って切断することにより、耐力ブレースの第2梁に対する傾斜角度に応じて第2切欠き部の長さを、ブレース側被挿入部の第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整することができる。これにより、界壁構造において第2切欠き部の形成に応じて界壁材が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分を埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0013】
上記の界壁構造において、前記第2梁は、前記梁側被挿入部よりも前記第1梁側の部分において前記梁側被挿入部を基準として前記耐力ブレースから離れる方向に窪む凹部を有している。そして、前記界壁材の厚みは、前記凹部によって前記第1梁と前記第2梁の前記梁側被挿入部との間に形成される間隙への前記連結部の挿入が可能となるように設定されており、前記連結部の前記第1水平方向における幅寸法は、前記第2水平方向に沿って見る視点において、前記第2梁の前記梁側被挿入部と前記耐力ブレースとの間の最小間隙の前記第1梁上での寸法以上の値に設定されている。
【0014】
この態様では、界壁材においては、被覆部の連結部の幅寸法が第2梁の梁側被挿入部と耐力ブレースとの間の最小間隙の第1梁上での寸法以上の値に設定され、且つ、第1梁と梁側被挿入部との間隙への連結部の挿入が可能である。このような構成では、被覆部によって第1梁の側面を覆った状態において、連結部は、第1梁と梁側被挿入部との間隙に挿入された状態で第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に配置される。これにより、第1梁と梁側被挿入部との間隙において界壁材が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分を埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0015】
また、界壁材を第1梁の側面に対して第2梁側から取付ける際には、第2梁と耐力ブレースとの間において、界壁材の姿勢が第1梁の側面に対して傾斜した姿勢から側面に沿った姿勢へと姿勢変更するように界壁材を回転させつつ第2梁側に移動させる。これにより、連結部が大きな幅を持っていても、当該連結部が第1梁と梁側被挿入部との間隙に挿入された状態で第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に配置されるように、第1梁の側面に対して界壁材を取付けることができる。
【0016】
上記の界壁構造において、前記界壁材から成る下張り材と、前記下張り材に対して前記第1梁の反対側から重ねられる上張り材と、を備える。前記上張り材は、前記下張り材の前記被覆部を覆うための上張り被覆部であって、前記第1水平方向の一方側から前記第2梁の前記梁側被挿入部を受け入れ可能な第1上張り切欠き部と、前記第1水平方向の他方側から前記耐力ブレースの前記ブレース側被挿入部を受け入れ可能な第2上張り切欠き部と、前記第1上張り切欠き部と前記第2上張り切欠き部とが互いに前記第1水平方向に離間するように、前記第1上張り切欠き部と前記第2上張り切欠き部との間に介在する上張り連結部と、を有する上張り被覆部と、前記上張り被覆部から下方に延出するとともに、前記下張り材の前記延出部を覆う上張り延出部と、を含む。そして、前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り連結部の前記第2上張り切欠き部側の端面は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜に応じて、前記下張り材の前記連結部の前記第2切欠き部側の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している。
【0017】
この界壁材によれば、被覆部及び延出部を備えた上記の界壁材から成る下張り材と、下張り材に対して重ねられ上張り被覆部及び上張り延出部を備えた上張り材とを含む二重構造に構成されている。このような二重構造の界壁材において、上張り材の上張り被覆部では、第2梁との干渉を回避するように第1上張り切欠き部が梁側被挿入部を受け入れるとともに、耐力ブレースとの干渉を回避するように第2上張り切欠き部がブレース側被挿入部を受け入れ、且つ、第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に上張り連結部が配置された状態で、上張り被覆部によって下張り材の被覆部を覆うことができる。これにより、一重構造の場合と比較して界壁材の耐火性を高めることができる。
【0018】
しかも、上張り材が下張り材に重ねられた状態において、上張り材における上張り連結部が、耐力ブレースの第2梁に対する傾斜に応じて、下張り材における連結部とは第1水平方向に異なる位置に位置している。具体的には、上張り連結部の第2上張り切欠き部側の端面は、耐力ブレースの第2梁に対する傾斜に応じて、下張り材の連結部の第2切欠き部側の端面よりも第2梁から離れた位置に位置している。これにより、下張り材上において第2梁と耐力ブレースとの間の間隙に上張り材が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分を埋める作業の効率化を図ることができる。
【0019】
上記の界壁構造において、前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り材における前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の前記第1水平方向の他方側の端面は、前記下張り材における前記被覆部及び前記延出部の前記第1水平方向の他方側の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している。
【0020】
また、上記の界壁構造において、前記下張り材において前記被覆部及び前記延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記被覆部及び前記延出部の切断の目印となる切断目印線を有している。また、前記上張り材において前記上張り被覆部及び前記上張り延出部は、前記耐力ブレースの前記第2梁に対する傾斜角度に応じて前記第2上張り切欠き部の前記第1水平方向における長さを、前記ブレース側被挿入部の前記第1水平方向における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の切断の目印となる上張り切断目印線を有している。そして、前記上張り材が前記下張り材に重ねられた状態において、前記上張り材における前記上張り被覆部及び前記上張り延出部の前記上張り切断目印線に沿った切断後の端面は、前記下張り材における前記被覆部及び前記延出部の切断目印線に沿った切断後の端面よりも前記第2梁から離れた位置に位置している。
【0021】
この態様では、上張り材が下張り材に重ねられた状態において、上張り材及び下張り材の各々に第1水平方向の他方側から他の通常界壁材が突き合わせられる場合、上張り材における他方側の端面又は上張り切断目印線に沿った切断後の端面と他の通常界壁材との突き合わせ位置は、下張り材における他方側の端面又は切断目印線に沿った切断後の端面と他の通常界壁材との突き合わせ位置とは、第1水平方向において異なっている。このため、下張り材と通常界壁材との間の突き合わせ部分と、上張り材と通常界壁材との間の突き合わせ部分との連通が回避された状態とすることができる。これにより、突き合わせ部分に起因して界壁構造の耐火性が低下することを抑制することができる。
【0022】
上記の界壁構造において、前記下張り材は、前記第2梁を挟んで前記第1梁の側面に対して取付けられ、互いに突き合わせ可能な端面を有する第1下張り材と第2下張り材とを含み、前記上張り材は、前記第1下張り材と前記第2下張り材とにそれぞれ重ねられ、互いに突き合わせ可能な端面を有する第1上張り材と第2上張り材とを含む。そして、前記第1下張り材と前記第2下張り材との間の突き合わせ位置と、前記第1上張り材と前記第2上張り材との間の突き合わせ位置とは、前記第1水平方向において異なっている。
【0023】
この態様では、下張り材を構成する第1下張り材と第2下張り材との間の突き合わせ位置と、上張り材を構成する第1上張り材と第2上張り材との間の突き合わせ位置とは、第1水平方向において異なっている。このため、第1下張り材と第2下張り材との間の突き合わせ部分と、第1上張り材と第2上張り材との間の突き合わせ部分との連通が回避された状態とすることができる。これにより、突き合わせ部分に起因して界壁構造の耐火性が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、界壁構造の施工効率の向上を図ることが可能な界壁材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る界壁材によって構成される界壁構造が適用された建物の概略構成を示す斜視図である。
図2】建物の小屋裏空間内に配設される第1梁、第2梁及び耐力ブレースと界壁構造との位置関係を示す斜視図である。
図3】建物の小屋裏空間における、第1梁と、第2梁及び耐力ブレースとの位置関係を示す図であって、下方側から見た図である。
図4】界壁構造における小屋裏界壁部を構成する小屋裏界壁材を下方側から見た場合の断面図である。
図5】小屋裏界壁材を構成する通常界壁材及びプレカット界壁材の各々の下張り材が第1梁に沿って取付けられた状態の平面図である。
図6】小屋裏界壁材を構成する通常界壁材及びプレカット界壁材の各々の上張り材が第1梁に沿って取付けられた状態の平面図である。
図7】プレカット界壁材のプレカット下張り材を構成する第1下張り材及び第2下張り材を示す平面図である。
図8】プレカット界壁材のプレカット上張り材を構成する第1上張り材及び第2上張り材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る界壁材について、図面に基づいて説明する。
【0027】
[界壁構造が適用された建物について]
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る界壁材によって構成される界壁構造1が適用された建物100は、例えば、複数の住戸を有する集合住宅である。図1の例では、建物100は、複数階建ての集合住宅である。この場合、界壁構造1は、下層階の床材101と天井材102との間の空間を各住戸に対応して複数の居住空間S2に仕切るとともに、天井材102と上層階の床材103との間の空間を各住戸に対応して複数の小屋裏空間S1に仕切る。建物100の各住戸においては、小屋裏空間S1に対して上下方向D1の下方に居住空間S2が位置している。
【0028】
図1に加えて図2に示されるように、建物100の小屋裏空間S1内には、第1梁10と、第2梁11と、耐力ブレース12と、第1梁10に対して平行に延びる梁10Sとが配設されている。
【0029】
第1梁10は、上下方向D1と直交する第1水平方向D2に延びる梁である。第1梁10は、上層階の床材103を下方側から支持するとともに、界壁構造1の延在方向を規定する。つまり、界壁構造1は、第1梁10に沿って配設される。第1梁10は、断面H形の鋼材から構成されている。具体的には、第1梁10は、第1水平方向D2に延びる第1梁本体10Aと、第1梁本体10Aの上端から第1水平方向D2と直交する第2水平方向D3に突出した第1上フランジ部10Bと、第1梁本体10Aの下端から第2水平方向D3に突出した第1下フランジ部10Cとを有している。第1梁10は、第1上フランジ部10Bにおいて上層階の床材103を支持し、第1下フランジ部10Cにおいて界壁構造1を支持するための支持部8の取付けを許容する。なお、図2に示されるように、第1梁10に対して第2水平方向D3に所定の間隔をあけて平行に延びるように、梁10Sが設けられている。この梁10Sは、第1梁10と同様に、断面H形の鋼材から構成されており、上フランジ部と下フランジ部とを有している。
【0030】
第2梁11は、第1梁10の側面から第1水平方向D2と直交する第2水平方向D3に延びる梁であり、第1梁10に接続される。第1梁10には、第1水平方向D2に所定の間隔をあけて複数の第2梁11が接続されている。第2梁11は、上層階の床材103を下方側から支持する。第2梁11は、第1梁10と同様に、断面H形の鋼材から構成されている。具体的には、第2梁11は、第2水平方向D3に延びるとともに第1梁10の第1梁本体10Aに接続される第2梁本体11Aと、第2梁本体11Aの上端から第1水平方向D2に突出した第2上フランジ部11Bと、第2梁本体11Aの下端から第1水平方向D2に突出した第2下フランジ部11Cとを有している。第2梁11は、第2上フランジ部11Bにおいて上層階の床材103を支持する。
【0031】
本実施形態では、図3に示されるように、第2梁11は、第2水平方向D3に延びる接続部材11Dを介して第1梁10に接続されている。接続部材11Dは、第1梁10の第1梁本体10Aと第2梁11の第2梁本体11Aとの間を接続する。これにより、第2梁11は、第2下フランジ部11Cよりも第1梁10側の部分において第2下フランジ部11Cを基準として耐力ブレース12から離れる方向に接続部材11Dまで窪む凹部を有している。この凹部によって、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間に間隙GPが形成される。換言すると、第2梁11は、第1梁10と第2下フランジ部11Cとの間に間隙GPが形成されるように、接続部材11Dを介して第1梁10に接続されている。第1梁10と第2下フランジ部11Cとの間の間隙GPには、接続部材11Dの一部が露出している。
【0032】
耐力ブレース12は、第1梁10の第1下フランジ部10Cと梁10Sの下フランジ部との間に架設される線状材であり、建物100の構造を補強する。第1梁10と梁10Sとの間には、複数の耐力ブレース12が架設される。耐力ブレース12は、第1梁10の側面における第2梁11の接続部分から所定距離だけ第1水平方向D2に離れた位置から、梁10Sに向かって延びる。本実施形態では、耐力ブレース12は、第1梁10から遠ざかるに従い第2梁11から離れるように第2梁11に対して傾斜して延びて、梁10Sの下フランジ部に接続される。
【0033】
図3に示されるように、1つの第2梁11に注目した場合、当該第2梁11を挟んで第1水平方向D2の両側にそれぞれ耐力ブレース12が架設されている。図3の例では、第2梁11の第1水平方向D2一方側に架設される耐力ブレース12は、第2梁11に対して傾斜角度αで傾斜するように延びており、第2梁11の第1水平方向D2他方側に架設される耐力ブレース12は、第2梁11に対して傾斜角度βで傾斜するように延びている。耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度α,βは、耐力ブレース12の架設箇所を下から見上げたときに第2梁11と耐力ブレース12との間に仮想される直角三角形RTの辺の比によって推定することができる。具体的には、前記直角三角形RTは、耐力ブレース12に沿って延びる直線を斜辺cとし、第2梁11に沿って延びる直線を対辺bとし、第2梁11から耐力ブレース12に向かって垂直に延びる直線を底辺aとする直角三角形である。このような直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比によって耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度α,βを推定することができる。耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度は一定ではなく、耐力ブレース12の架設箇所ごとに異なる傾斜角度が設定される。図3の例では、傾斜角度αは傾斜角度βよりも小さい角度に設定されている。
【0034】
なお、第2水平方向D3に沿って見る視点において、第1梁10の第1下フランジ部10Cの突出端面上における、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の最小間隙の寸法(以下、「基準間隙寸法」という)GL1は、第2梁11に対する耐力ブレース12の傾斜角度に応じて異なるものであり、当該傾斜角度が小さくなるに従い基準間隙寸法GL1は小さくなる。また、第2梁11の第2下フランジ部11Cにおける第1梁10に対向した角部から耐力ブレース12までの第1水平方向D2に沿った離間距離(以下、「基準離間距離」という)GL2についても、第2梁11に対する耐力ブレース12の傾斜角度に応じて異なるものであり、当該傾斜角度が小さくなるに従い基準離間距離GL2は小さくなる。なお、基準離間距離GL2は、基準間隙寸法GL1よりも大きい値である。
【0035】
[界壁構造について]
図2に示されるように、建物100の各住戸間を仕切る界壁構造1は、第1梁10に沿うように配設される。界壁構造1は、小屋裏界壁部2Aと、居住界壁部2Bと、支持部8とを備えている。
【0036】
小屋裏界壁部2Aは、界壁構造1において建物100の小屋裏空間S1内に位置する界壁部を構成するものであり、小屋裏界壁材3を有している。小屋裏界壁材3は、耐火性を有する板状の壁材であり、例えば石膏ボードから構成されている。この小屋裏界壁材3の詳細については後述する。
【0037】
居住界壁部2Bは、界壁構造1において建物100の居住空間S2内に位置する界壁部を構成するものであり、居住界壁材2B1を有している。居住界壁材2B1は、耐火性を有する板状の壁材であり、例えば石膏ボードから構成されている。居住界壁材2B1は、その上端が小屋裏界壁材3の下端に突き合わせられた状態で配設される。本実施形態では、居住界壁材2B1は、下張り材2B11と、下張り材2B11に重ねられる上張り材2B12とから成る二重構造に構成されている。これにより、一重構造の場合と比較して居住界壁材2B1の耐火性を高めることができる。
【0038】
支持部8は、界壁構造1において小屋裏界壁材3及び居住界壁材2B1を支持するための構造である。図2に示されるように、支持部8は、上部ランナー81と、下部ランナー82と、界壁スタッド83と、受け部材84とを含む。
【0039】
上部ランナー81は、第1水平方向D2に延びるように、第1梁10の第1下フランジ部10Cの下面に取付けられた枠部材である。下部ランナー82は、第1水平方向D2に延びるように、上部ランナー81の下方側に配置された枠部材である。界壁スタッド83は、矩形筒状の柱材であって、上部ランナー81と下部ランナー82との間で上下方向D1に延びるように立設される。上部ランナー81と下部ランナー82との間には、複数の界壁スタッド83が立設される。各界壁スタッド83は、上端が上部ランナー81に固定されるとともに下端が下部ランナー82に固定される。受け部材84は、第1梁10における第1上フランジ部10Bの第2水平方向D3の端縁から突出するように、上層階の床材103に固定される部材である。なお、受け部材84は、第1梁10における第1上フランジ部10Bに固定される場合もある。
【0040】
上記のように構成される支持部8は、小屋裏界壁材3及び居住界壁材2B1が界壁スタッド83に対してビス部材によって固定されることにより、小屋裏界壁材3及び居住界壁材2B1を支持する。この際、小屋裏界壁材3は、その上端部が受け部材84にビス止めされる。また、小屋裏界壁材3は、界壁スタッド83にビス止めされるとともに、上部ランナー81にビス止めされてもよい。同様に、居住界壁材2B1は、界壁スタッド83にビス止めされるとともに、下部ランナー82にビス止めされてもよい。
【0041】
[小屋裏界壁材について]
次に、図2及び図3に加えて図4図8を参照しながら、界壁構造1の小屋裏界壁部2Aを構成する小屋裏界壁材3について詳細に説明する。
【0042】
小屋裏界壁材3は、支持部8に支持されることにより、建物100の小屋裏空間S1内において第1梁10に沿って配設される、耐火性を有する板状の壁材である。小屋裏界壁材3は、第1梁10の側面における第2梁11の接続部分の近傍位置に配置されるプレカット界壁材5と、第1水平方向D2においてプレカット界壁材5に隣接して配置される通常界壁材4とから構成されている。
【0043】
通常界壁材4は、矩形板状に形成される。通常界壁材4は、第1梁10の、第2梁11との接続部分の近傍位置以外の側面を覆うように配設される。この際、通常界壁材4は、その下端が居住界壁材2B1の上端に突き合わせられるとともに、第1水平方向D2の端部がプレカット界壁材5に突き合わせられた状態で配設される。なお、通常界壁材4は、その上端部が受け部材84にビス止めされるとともに、上端部以外の領域部分が界壁スタッド83にビス止めされる。本実施形態では、通常界壁材4は、居住界壁材2B1と同様に、下張り材41と、下張り材41に重ねられる上張り材42とから成る二重構造に構成されている。これにより、一重構造の場合と比較して通常界壁材4の耐火性を高めることができる。
【0044】
[プレカット界壁材について]
プレカット界壁材5は、第1梁10の、第2梁11との接続部分の近傍位置の側面を覆うように配設される。プレカット界壁材5は、第1梁10の側面に対して第2梁11側から取付けられることにより、界壁構造1の小屋裏界壁部2Aを構成するための界壁材である。本実施形態では、プレカット界壁材5は、プレカット下張り材6と、プレカット下張り材6に対して第1梁10の反対側から重ねられるプレカット上張り材7とから成る二重構造に構成されている。これにより、一重構造の場合と比較してプレカット界壁材5の耐火性を高めることができる。
【0045】
プレカット下張り材6は、その厚みが、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPの寸法よりも小さい値に設定されている。プレカット上張り材7の厚みは、特に限定されるものではない。本実施形態では、プレカット下張り材6及びプレカット上張り材7の両者の厚みの合計値は、例えば、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPの寸法よりも大きい。
【0046】
<プレカット下張り材の構成>
図5及び図7に示されるように、プレカット下張り材6は、第2梁11を挟んで第1水平方向D2に並んで配置されるように第1梁10の側面に取付けられる第1下張り材61と第2下張り材62とを含む。第1下張り材61は第2梁11の第1水平方向D2一方側に配置され、第2下張り材62は第2梁11の第1水平方向D2他方側に配置される。
【0047】
第1下張り材61は、界壁構造1の小屋裏界壁部2Aを構成するための界壁材であって、第1梁10の側面を覆うための板状の被覆部611と、被覆部611から下方に延出する板状の延出部612とを備えている。
【0048】
被覆部611は、被覆本体6111と、第1切欠き部6112と、第2切欠き部6113と、連結部6114と、第3切欠き部6115とを有している。
【0049】
被覆本体6111は、矩形板状に形成される。被覆本体6111は、第1梁10の側面を覆うとともに、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端6111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接する。被覆本体6111の第1水平方向D2における幅寸法LW1は、所定の値に設定される。
【0050】
第1切欠き部6112は、被覆本体6111の一端6111aから第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れ可能に切欠かれた部分である。なお、第2梁11の第2下フランジ部11Cは、第2梁11に予め設定された梁側被挿入部の一例である。被覆本体6111の一端6111aからの第1切欠き部6112の切欠き長さL1は、第2梁本体11Aからの第2下フランジ部11Cの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定される。
【0051】
第2切欠き部6113は、被覆本体6111の一端6111aとは反対の他端6111bから耐力ブレース12に予め設定されたブレース側被挿入部121を受け入れ可能に切欠かれた部分である。
【0052】
連結部6114は、第1切欠き部6112と第2切欠き部6113とが互いに第1水平方向D2に離間するように第1切欠き部6112と第2切欠き部6113との間に介在するとともに、被覆本体6111と延出部612とを連結する。連結部6114の第1水平方向D2における幅寸法W1は、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の間隙の基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。但し、連結部6114が第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置されることを考慮すると、連結部6114の第1水平方向D2における幅寸法W1は、基準間隙寸法GL1以上であり、且つ、第2梁11の第2下フランジ部11Cにおける第1梁10に対向した角部から耐力ブレース12までの第1水平方向D2に沿った基準離間距離GL2以下の値に設定されることが望ましい。既述の通り、基準間隙寸法GL1及び基準離間距離GL2は、第2梁11に対する耐力ブレース12の傾斜角度に応じて異なる。このため、本実施形態では、第1梁10と梁10Sとの間に架設される複数の耐力ブレース12のうち、第2梁11に対する傾斜角度が最小の耐力ブレース12を対象とした基準間隙寸法GL1及び基準離間距離GL2に基づいて、連結部6114の第1水平方向D2における幅寸法W1が設定される。
【0053】
既述の通り、プレカット下張り材6の厚みは、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPの寸法よりも小さい値に設定されている。しかも、被覆本体6111の一端6111aからの第1切欠き部6112の切欠き長さL1は、第2梁本体11Aからの第2下フランジ部11Cの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定されている。更には、連結部6114の第1水平方向D2における幅寸法W1は、基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。このため、被覆本体6111が第1梁10の側面を覆うとともに、被覆本体6111の一端6111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態において、連結部6114は、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入された状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置される。
【0054】
第1下張り材61において連結部6114を第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置させるときの手順は、次に通りである。まず、第1切欠き部6112が第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れ可能な位置に位置するとともに、第2切欠き部6113が耐力ブレース12のブレース側被挿入部121を受け入れ可能な位置に位置し、更には、被覆本体6111が第1梁10の側面に対して傾斜した姿勢で受け部材84に当接した状態とする。この際、連結部6114は、第2梁11と耐力ブレース12との間において、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPよりも外側に位置している。そして、被覆本体6111を、他端6111bが第1梁10に近づくように回転させつつ一端6111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接するように第1水平方向D2に移動させる。これにより、連結部6114の幅寸法W1が基準間隙寸法GL1以上の値に設定されていても、連結部6114が、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入された状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置されるように、第1梁10の側面に対して第1下張り材61を取付けることができる。
【0055】
第3切欠き部6115は、被覆本体6111の一端6111aから第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れ可能に切欠かれた部分である。被覆本体6111の一端6111aからの第3切欠き部6115の切欠き長さLL1は、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。なお、第3切欠き部6115の切欠き長さLL1は、第1切欠き部6112の切欠き長さL1と同様に、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定されていてもよい。この場合、被覆本体6111における第3切欠き部6115に対して第1水平方向D2に隣接する領域部分は、被覆本体6111が第1梁10の側面を覆った状態において、第1梁10と第2梁11の第2上フランジ部11Bとの間隙に挿入された状態となる。このような被覆本体6111における第3切欠き部6115に対応した領域部分を、第1梁10と第2梁11の第2上フランジ部11Bとの間隙に挿入させるときの手順は、連結部6114を第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入させる場合の手順と同様である。
【0056】
第1下張り材61の延出部612は、第1切欠き部6112及び第2切欠き部6113の下方に位置するように、連結部6114を介して被覆本体6111と連結される。延出部612は、矩形板状に形成される。延出部612は、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端612aが被覆本体6111の一端6111aよりも突出するように形成されている。延出部612の一端612aの、被覆本体6111の一端6111aに対する第1水平方向D2に沿った突出長さWW1は、第2梁11における第2梁本体11Aの厚みと略同じ値以上に設定される。一方、延出部612の一端612aとは反対の他端612bは、被覆本体6111の他端6111bと同一直線上に位置している。
【0057】
図7に示されるように、第1下張り材61においては、被覆本体6111及び延出部612は、それぞれの他端6111b,612bに沿った直線状の複数の切断目印線51A,51B,51Cを有している。複数の切断目印線51A、51B,51Cの各々は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて第2切欠き部6113の第1水平方向D2における切欠き長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、被覆本体6111及び延出部612の切断の目印となる線である。
【0058】
既述の通り、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度は、耐力ブレース12の架設箇所を下から見上げたときに第2梁11と耐力ブレース12との間に仮想される直角三角形RTにおける、底辺aと対辺bとの長さの比によって推定することができる(図3参照)。つまり、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度は、計測器を用いて計測する必要はない。複数の切断目印線51A,51B,51Cの各々は、仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比に基づいて、被覆本体6111及び延出部612に付される。これにより、複数の切断目印線51A,51B,51Cの各々は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて被覆本体6111及び延出部612に付されたものとなる。なお、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度によっては、被覆本体6111及び延出部612に切断目印線を付す必要がない場合も有り得る。
【0059】
複数の切断目印線51A,51B,51Cにおいては、切断目印線51Aが被覆本体6111及び延出部612の各他端6111b,612bから最も離れた位置に付されており、切断目印線51Cが各他端6111b,612bから最も近い位置に付され、切断目印線51Bが切断目印線51Aと切断目印線51Cとの間の位置に付されている。例えば、切断目印線51Aは、被覆本体6111の一端6111aから離間距離LLL1だけ離れた位置に付されており、仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比を示す「a:b」が「0.5:1」である場合における、被覆本体6111及び延出部612の切断の目印となる線である。切断目印線51Bは、仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比を示す「a:b」が「1:1」である場合における、被覆本体6111及び延出部612の切断の目印となる線である。切断目印線51Cは、仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比を示す「a:b」が「1.5:1」である場合における、被覆本体6111及び延出部612の切断の目印となる線である。
【0060】
被覆本体6111及び延出部612が各切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断されることにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度が小さくなるに従い第2切欠き部6113の切欠き長さが短くなるように、当該切欠き長さを調整することができる。
【0061】
第2下張り材62は、第1梁10の側面を覆うための板状の被覆部621と、被覆部621から下方に延出する板状の延出部622とを備えている。
【0062】
第2下張り材62の被覆部621は、第1下張り材61と同様に、被覆本体6211と、第1切欠き部6212と、第2切欠き部6213と、連結部6214と、第3切欠き部6215とを有している。
【0063】
被覆本体6211は、矩形板状に形成される。被覆本体6211は、第1梁10の側面を覆うとともに、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端6211aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接する。被覆本体6211の第1水平方向D2における幅寸法LW2は、第1下張り材61の被覆本体6111の第1水平方向D2における幅寸法LW1と略同じ値に設定される。
【0064】
第1切欠き部6212は、被覆本体6211の一端6211aから第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れ可能に切欠かれた部分である。被覆本体6211の一端6211aからの第1切欠き部6212の切欠き長さL2は、第2梁本体11Aからの第2下フランジ部11Cの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定される。この際、第1切欠き部6212の切欠き長さL2は、第1下張り材61の第1切欠き部6112の切欠き長さL1と同じ値に設定される。
【0065】
第2切欠き部6213は、被覆本体6211の一端6211aとは反対の他端6211bから耐力ブレース12に予め設定されたブレース側被挿入部121を受け入れ可能に切欠かれた部分である。
【0066】
連結部6214は、第1切欠き部6212と第2切欠き部6213とが互いに第1水平方向D2に離間するように第1切欠き部6212と第2切欠き部6213との間に介在するとともに、被覆本体6211と延出部622とを連結する。連結部6214の第1水平方向D2における幅寸法W2は、第1下張り材61の連結部6114と同様に、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の間隙の基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。この際、連結部6214の第1水平方向D2における幅寸法W2は、第1下張り材61の連結部6114の幅寸法W1と同じ値に設定される。
【0067】
被覆本体6211が第1梁10の側面を覆うとともに、被覆本体6211の一端6211aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態において、連結部6214は、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入された状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置される。なお、第2下張り材62において連結部6214を第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置させるときの手順は、上述した第1下張り材61の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
第3切欠き部6215は、被覆本体6211の一端6211aから第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れ可能に切欠かれた部分である。被覆本体6211の一端6211aからの第3切欠き部6215の切欠き長さLL2は、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。この際、第3切欠き部6215の切欠き長さLL2は、第1下張り材61の第3切欠き部6115の切欠き長さLL1と同じ値に設定される。なお、第3切欠き部6215の切欠き長さLL2は、第1切欠き部6212の切欠き長さL2と同様に、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定されていてもよい。この場合、被覆本体6211における第3切欠き部6215に対して第1水平方向D2に隣接する領域部分は、被覆本体6211が第1梁10の側面を覆った状態において、第1梁10と第2梁11の第2上フランジ部11Bとの間隙に挿入された状態となる。このような被覆本体6211における第3切欠き部6215に対応した領域部分を、第1梁10と第2梁11の第2上フランジ部11Bとの間隙に挿入させるときの手順は、連結部6214を第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入させる場合の手順と同様である。
【0069】
第2下張り材62の延出部622は、第1切欠き部6212及び第2切欠き部6213の下方に位置するように、連結部6214を介して被覆本体6211と連結される。延出部622は、矩形板状に形成される。延出部622は、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端622aが被覆本体6211の一端6211aと同一直線上に位置するか、若しくは、一端622aが被覆本体6211の一端6211aよりも退避するように形成されている。具体的には、第1下張り材61の延出部612の突出長さWW1が第2梁11における第2梁本体11Aの厚みと略同じ値に設定される場合には、第2下張り材62の延出部622の一端622aは、被覆本体6211の一端6211aと同一直線上に位置する。第1下張り材61の延出部612の突出長さWW1が第2梁11における第2梁本体11Aの厚みよりも大きい値に設定される場合には、第2下張り材62の延出部622の一端622aは、被覆本体6211の一端6211aよりも退避する。一方、延出部622の一端622aとは反対の他端622bは、被覆本体6211の他端6211bと同一直線上に位置している。
【0070】
図7に示されるように、第2下張り材62においては、被覆本体6211及び延出部622は、それぞれの他端6211b,622bに沿った直線状の複数の切断目印線51A,51B,51Cを有している。複数の切断目印線51A,51B,51Cの各々は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて第2切欠き部6213の第1水平方向D2における切欠き長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、被覆本体6211及び延出部622の切断の目印となる線である。第2下張り材62における複数の切断目印線51A,51B,51Cの各々は、第1下張り材61の場合と同様に、耐力ブレース12の架設箇所を下から見上げたときの仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比に基づいて、被覆本体6211及び延出部622に付される。例えば、第2下張り材62における切断目印線51Aは、被覆本体6211の一端6211aから離間距離LLL2だけ離れた位置に付されている。この際、第2下張り材62における切断目印線51Aの離間距離LLL2は、第1下張り材61における切断目印線51Aの離間距離LLL1と略同じ値に設定される。被覆本体6211及び延出部622が各切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断されることにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度が小さくなるに従い第2切欠き部6213の切欠き長さが短くなるように、当該切欠き長さを調整することができる。
【0071】
上記構成の第1下張り材61と第2下張り材62とからなるプレカット下張り材6は、各連結部6114,6214が第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入されて第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置された状態で、各被覆本体6111,6211によって第1梁10の側面を覆うように配設される。しかも、第1下張り材61及び第2下張り材62では、第2梁11との干渉を回避するように各第1切欠き部6112,6212が第2下フランジ部11Cを受け入れるとともに、耐力ブレース12との干渉を回避するように各第2切欠き部6113,6213がブレース側被挿入部121を受け入れる。更に、第1下張り材61及び第2下張り材62では、第2梁11との干渉を回避するように各第3切欠き部6115,6215が第2上フランジ部11Bを受け入れる。
【0072】
この際、プレカット下張り材6においては、第1下張り材61及び第2下張り材62の各被覆本体6111,6211の各一端6111a,6211aが第2梁11における第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接するとともに、第1下張り材61の延出部612の一端612aと第2下張り材62の延出部622の一端622aとが突き合わせられる。第1下張り材61の延出部612の一端612aと第2下張り材62の延出部622の一端622aとは、第1下張り材61と第2下張り材62とが第2梁11を挟んで第1梁10の側面に対して取付けられた状態において、互いに突き合わせ可能な端面となる。また、第1下張り材61及び第2下張り材62において、各被覆本体6111,6211の各他端6111b,6211bと、各延出部612,622の各他端612b,622bとは、通常界壁材4の下張り材41に突き合わせられる。各被覆本体6111,6211及び各延出部612,622が切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断された場合には、その切断後の端面が通常界壁材4の下張り材41に突き合わせられる。更に、各延出部612,622の下端は、居住界壁材2B1の下張り材2B11の上端に突き合わせられる。
【0073】
なお、プレカット下張り材6においては、第1下張り材61及び第2下張り材62の各被覆本体6111,6211の上端部が受け部材84にビス止めされるとともに、それ以外の各被覆本体6111,6211の領域部分、並びに各延出部612,622が界壁スタッド83にビス止めされる。
【0074】
第1下張り材61及び第2下張り材62においては、第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れるための各第1切欠き部6112,6212、並びに、耐力ブレース12のブレース側被挿入部121を受け入れるための各第2切欠き部6113,6213が予め形成されている。更には、第1下張り材61及び第2下張り材62においては、第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れるための各第3切欠き部6115,6215が予め形成されている。このため、施工者は、切欠きの長さを設定するために第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙の寸法を計測する作業や切欠きを形成する作業を、施工現場において行う必要がない。このため、界壁構造1の施工効率の向上を図ることができる。
【0075】
しかも、第1下張り材61及び第2下張り材62においては、各被覆本体6111,6211によって第1梁10の側面を覆った状態で、第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に各連結部6114,6214が配置されるので、界壁構造1において切欠きの形成に応じて耐火性を有するプレカット下張り材6が存在しない隙間部分の面積が増大するのを、可及的に抑止することができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下を抑制することが可能であるとともに、隙間部分をシーリング材で埋める作業の効率化を図ることができる。また、隙間部分を埋めるシーリング材の使用量を少なくすることができる。
【0076】
また、第1下張り材61及び第2下張り材62においては、各連結部6114,6214の第1水平方向D2における幅寸法W1,W2が、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の間隙の基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。このため、各被覆本体6111,6211によって第1梁10の側面を覆った状態において、各連結部6114,6214は、第1梁10と第2梁11の第2下フランジ部11Cとの間隙GPに挿入された状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置される。これにより、第1梁10と第2梁11との間隙GPにおいてプレカット下張り材6が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分をシーリング材で埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0077】
また、第1下張り材61及び第2下張り材62において、各第3切欠き部6115,6215の切欠き長さLL1,LL2を第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さよりも小さい値に設定した場合を想定する。この場合、上述の通り、各被覆本体6111,6211における各第3切欠き部6115,6215に対して第1水平方向D2に隣接する領域部分は、第1梁10と第2梁11の第2上フランジ部11Bとの間隙に挿入された状態となる。これにより、第1梁10と第2梁11との間隙においてプレカット下張り材6が存在しない隙間部分の面積をより小さくすることができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分をシーリング材で埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0078】
また、各連結部6114,6214の幅寸法W1,W2が基準間隙寸法GL1以上の値に設定されているので、例えば基準間隙寸法GL1未満の幅寸法を有する連結部とした場合と比較して、各連結部6114,6214の強度を高めることができる。これにより、第1下張り材61及び第2下張り材62を界壁スタッド83に対してビス止めするときの衝撃によって、各連結部6114,6214に割れ等の損傷が生じるのを可及的に抑制することができる。
【0079】
また、第1下張り材61及び第2下張り材62においては、各被覆本体6111,6211及び各延出部612,622が複数の切断目印線51A,51B,51Cを有している。このため、各被覆本体6111,6211及び各延出部612,622を切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断することにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて各第2切欠き部6113,6213の長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整することができる。これにより、界壁構造1において各第2切欠き部6113,6213の形成に応じてプレカット下張り材6が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分をシーリング材で埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0080】
<プレカット上張り材の構成>
プレカット上張り材7は、プレカット下張り材6に対して第1梁10の反対側から重ねられる上張り材である。図6及び図8に示されるように、プレカット上張り材7は、第2梁11を挟んで第1水平方向D2に並んで配置されるように第1梁10の側面に取付けられる第1上張り材71と第2上張り材72とを含む。第1上張り材71は第2梁11の第1水平方向D2一方側において第1下張り材61に重ねられて配置され、第2上張り材72は第2梁11の第1水平方向D2他方側において第2下張り材62に重ねられて配置される。
【0081】
第1上張り材71は、第1下張り材61の被覆部611を覆うための板状の上張り被覆部711と、上張り被覆部711から下方に延出するとともに、第1下張り材61の延出部612を覆う板状の上張り延出部712とを備えている。
【0082】
上張り被覆部711は、上張り被覆本体7111と、第1上張り切欠き部7112と、第2上張り切欠き部7113と、上張り連結部7114と、第3上張り切欠き部7115とを有している。
【0083】
上張り被覆本体7111は、矩形板状に形成される。上張り被覆本体7111は、第1下張り材61の被覆本体6111を覆うとともに、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端7111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接する。
【0084】
第1上張り切欠き部7112は、上張り被覆本体7111の一端7111aから第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れ可能に切欠かれた部分である。上張り被覆本体7111の一端7111aからの第1上張り切欠き部7112の切欠き長さL3は、第2梁本体11Aからの第2下フランジ部11Cの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。この際、第1上張り切欠き部7112の切欠き長さL3は、第1下張り材61の第1切欠き部6112の切欠き長さL1よりも大きい値に設定される。
【0085】
第2上張り切欠き部7113は、被覆本体7111の一端7111aとは反対の他端7111bから耐力ブレース12のブレース側被挿入部121を受け入れ可能に切欠かれた部分である。
【0086】
上張り連結部7114は、第1上張り切欠き部7112と第2上張り切欠き部7113とが互いに第1水平方向D2に離間するように第1上張り切欠き部7112と第2上張り切欠き部7113との間に介在するとともに、上張り被覆本体7111と上張り延出部712とを連結する。上張り連結部7114の第1水平方向D2における幅寸法W3は、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の間隙の基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。但し、上張り連結部7114が第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置されることを考慮すると、上張り連結部7114の第1水平方向D2における幅寸法W3は、基準間隙寸法GL1以上であり、且つ、第2梁11の第2下フランジ部11Cにおける第1梁10に対向した角部から耐力ブレース12までの第1水平方向D2に沿った基準離間距離GL2以下の値に設定されることが望ましい。本実施形態では、上張り連結部7114の第1水平方向D2における幅寸法W3は、基準離間距離GL2と略同じ値に設定される。
【0087】
上張り被覆本体7111が第1下張り材61の被覆本体6111を覆うとともに、上張り被覆本体7111の一端7111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態において、上張り連結部7114は、第1下張り材61の連結部6114に重ねられた状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置される。
【0088】
第3上張り切欠き部7115は、上張り被覆本体7111の一端7111aから第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れ可能に切欠かれた部分である。上張り被覆本体7111の一端7111aからの第3上張り切欠き部7115の切欠き長さLL3は、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。この際、第3上張り切欠き部7115の切欠き長さLL3は、第1下張り材61の第3切欠き部6115の切欠き長さLL1と同じ値に設定される。
【0089】
第1上張り材71の上張り延出部712は、第1上張り切欠き部7112及び第2上張り切欠き部7113の下方に位置するように、上張り連結部7114を介して上張り被覆本体7111と連結される。上張り延出部712は、矩形板状に形成される。上張り延出部712は、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端712aが上張り被覆本体7111の一端7111aと同一直線上に位置するか、若しくは、一端712aが上張り被覆本体7111の一端7111aよりも退避するように形成される。具体的には、上張り連結部7114の幅寸法W3が第1下張り材61の連結部6114の幅寸法W1と同じ値に設定される場合には、上張り延出部712の一端712aは、上張り被覆本体7111の一端7111aと同一直線上に位置する。上張り連結部7114の幅寸法W3が第1下張り材61の連結部6114の幅寸法W1よりも大きい値に設定される場合には、上張り延出部712の一端712aは、上張り被覆本体7111の一端7111aよりも退避する。一方、上張り延出部712の一端712aとは反対の他端712bは、上張り被覆本体7111の他端7111bと同一直線上に位置している。
【0090】
ここで、第1上張り材71の上張り被覆本体7111の第1水平方向D2における幅寸法LW3は、第1下張り材61の被覆本体6111の第1水平方向D2における幅寸法LW1よりも大きい値に設定される。このため、第1上張り材71が第1下張り材61に重ねられた状態において、上張り被覆本体7111の一端7111aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態では、上張り被覆本体7111及び上張り延出部712の各他端7111b,712bは、第1下張り材61における被覆本体6111及び延出部612の各他端6111b,612bよりも第2梁11から離れた位置に位置することになる。
【0091】
図8に示されるように、第1上張り材71においては、上張り被覆本体7111及び上張り延出部712は、それぞれの他端7111b,712bに沿った直線状の複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cを有している。複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cの各々は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて第2上張り切欠き部7113の第1水平方向D2における切欠き長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、上張り被覆本体7111及び上張り延出部712の切断の目印となる線である。上張り被覆本体7111及び上張り延出部712が各上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断されることにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度が小さくなるに従い第2上張り切欠き部7113の切欠き長さが短くなるように、当該切欠き長さを調整することができる。
【0092】
第1上張り材71における複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cの各々は、第1下張り材61の場合と同様に、耐力ブレース12の架設箇所を下から見上げたときの仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比に基づいて、上張り被覆本体7111及び上張り延出部712に付される。例えば、第1上張り材71における上張り切断目印線51Aは、上張り被覆本体7111の一端7111aから離間距離LLL3だけ離れた位置に付されている。この際、第1上張り材71における上張り切断目印線51Aの離間距離LLL3は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜に応じて、第1下張り材61における切断目印線51Aの離間距離LLL1よりも大きい値に設定される。つまり、第1上張り材71における各上張り切断目印線51A,51B,51Cの上張り被覆本体7111の一端7111aからの離間距離は、第1下張り材61における各切断目印線51A,51B,51Cの被覆本体6111の一端6111aからの離間距離よりも大きい値に設定される。このため、第1上張り材71が第1下張り材61に重ねられた状態において、第1上張り材71における上張り被覆本体7111及び上張り延出部712の上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面は、第1下張り材61における被覆本体6111及び延出部612の切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置することになる。
【0093】
第2上張り材72は、第2下張り材62の被覆部621を覆うための板状の上張り被覆部721と、上張り被覆部721から下方に延出するとともに、第2下張り材62の延出部622を覆う板状の上張り延出部722とを備えている。
【0094】
第2上張り材72の上張り被覆部721は、第1上張り材71と同様に、上張り被覆本体7211と、第1上張り切欠き部7212と、第2上張り切欠き部7213と、上張り連結部7214と、第3上張り切欠き部7215とを有している。
【0095】
上張り被覆本体7211は、矩形板状に形成される。上張り被覆本体7211は、第2下張り材62の被覆本体6211を覆うとともに、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端7211aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接する。
【0096】
第1上張り切欠き部7212は、上張り被覆本体7211の一端7211aから第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れ可能に切欠かれた部分である。上張り被覆本体7211の一端7211aからの第1上張り切欠き部7212の切欠き長さL4は、第2梁本体11Aからの第2下フランジ部11Cの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。この際、第1上張り切欠き部7212の切欠き長さL4は、第1上張り材71の第1上張り切欠き部7112の切欠き長さL3と同じ値に設定される。
【0097】
第2上張り切欠き部7213は、上張り被覆本体7211の一端7211aとは反対の他端7211bから耐力ブレース12のブレース側被挿入部121を受け入れ可能に切欠かれた部分である。
【0098】
上張り連結部7214は、第1上張り切欠き部7212と第2上張り切欠き部7213とが互いに第1水平方向D2に離間するように第1上張り切欠き部7212と第2上張り切欠き部7213との間に介在するとともに、上張り被覆本体7211と上張り延出部722とを連結する。上張り連結部7214の第1水平方向D2における幅寸法W4は、第1上張り材71の上張り連結部7114と同様に、第2梁11の第2下フランジ部11Cと耐力ブレース12との間の間隙の基準間隙寸法GL1以上の値に設定されている。この際、上張り連結部7214の第1水平方向D2における幅寸法W4は、第2梁11の第2下フランジ部11Cにおける第1梁10に対向した角部から耐力ブレース12までの第1水平方向D2に沿った基準離間距離GL2と略同じ値であって、第1上張り材71の上張り連結部7114の幅寸法W3と同じ値に設定される。
【0099】
上張り被覆本体7211が第2下張り材62の被覆本体6211を覆うとともに、上張り被覆本体7211の一端7211aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態において、上張り連結部7214は、第2下張り材62の連結部6214に重ねられた状態で第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置される。
【0100】
第3上張り切欠き部7215は、上張り被覆本体7211の一端7211aから第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れ可能に切欠かれた部分である。上張り被覆本体7211の一端7211aからの第3上張り切欠き部7215の切欠き長さLL4は、第2梁本体11Aからの第2上フランジ部11Bの第1水平方向D2に沿った突出長さと略同じ値に設定される。この際、第3上張り切欠き部7215の切欠き長さLL4は、第1上張り材71の第3上張り切欠き部7115の切欠き長さLL3と同じ値に設定される。
【0101】
第2上張り材72の上張り延出部722は、第1上張り切欠き部7212及び第2上張り切欠き部7213の下方に位置するように、上張り連結部7214を介して上張り被覆本体7211と連結される。上張り延出部722は、矩形板状に形成される。上張り延出部722は、第1水平方向D2と平行な幅方向の一端722aが上張り被覆本体7211の一端7211aよりも突出するように形成されている。上張り延出部722の一端722aの、上張り被覆本体7211の一端7211aに対する第1水平方向D2に沿った突出長さWW2は、第2梁11における第2梁本体11Aの厚みと略同じ値以上に設定される。一方、上張り延出部722の一端722aとは反対の他端722bは、上張り被覆本体7211の他端7211bと同一直線上に位置している。
【0102】
ここで、第2上張り材72の上張り被覆本体7211の第1水平方向D2における幅寸法LW4は、第2下張り材62の被覆本体6211の第1水平方向D2における幅寸法LW2よりも大きい値に設定される。このため、第2上張り材72が第2下張り材62に重ねられた状態において、上張り被覆本体7211の一端7211aが第2梁11の第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接した状態では、上張り被覆本体7211及び上張り延出部722の各他端7211b,722bは、第2下張り材62における被覆本体6211及び延出部622の各他端6211b,622bよりも第2梁11から離れた位置に位置することになる。
【0103】
図8に示されるように、第2上張り材72においては、上張り被覆本体7211及び上張り延出部722は、それぞれの他端7211b,722bに沿った直線状の複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cを有している。複数の上張り切断目印線51A、51B,51Cの各々は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて第2上張り切欠き部7213の第1水平方向D2における切欠き長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整するための、上張り被覆本体7211及び上張り延出部722の切断の目印となる線である。上張り被覆本体7211及び上張り延出部722が各上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断されることにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度が小さくなるに従い第2上張り切欠き部7213の切欠き長さが短くなるように、当該切欠き長さを調整することができる。
【0104】
第2上張り材72における複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cの各々は、第2下張り材62の場合と同様に、耐力ブレース12の架設箇所を下から見上げたときの仮想の直角三角形RTにおける底辺aと対辺bとの長さの比に基づいて、上張り被覆本体7211及び上張り延出部722に付される。例えば、第2上張り材72における上張り切断目印線51Aは、上張り被覆本体7211の一端7211aから離間距離LLL4だけ離れた位置に付されている。この際、第2上張り材72における上張り切断目印線51Aの離間距離LLL4は、第1上張り材71における上張り切断目印線51Aの離間距離LLL3と略同じ値に設定され、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜に応じて、第2下張り材62における切断目印線51Aの離間距離LLL2よりも大きい値に設定される。つまり、第2上張り材72における各上張り切断目印線51A,51B,51Cの上張り被覆本体7211の一端7211aからの離間距離は、第2下張り材62における各切断目印線51A,51B,51Cの被覆本体6211の一端6211aからの離間距離よりも大きい値に設定される。このため、第2上張り材72が第2下張り材62に重ねられた状態において、第2上張り材72における上張り被覆本体7211及び上張り延出部722の上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面は、第2下張り材62における被覆本体6211及び延出部622の切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置することになる。
【0105】
上記構成の第1上張り材71と第2上張り材72とからなるプレカット上張り材7は、各上張り連結部7114,7214が第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置された状態で、各上張り被覆本体7111,7211によって第1梁10の側面を覆うように配設される。しかも、第1上張り材71及び第2上張り材72では、第2梁11との干渉を回避するように各第1上張り切欠き部7112,7212が第2下フランジ部11Cを受け入れるとともに、耐力ブレース12との干渉を回避するように各第2上張り切欠き部7113,7213がブレース側被挿入部121を受け入れる。更に、第1上張り材71及び第2上張り材72では、第2梁11との干渉を回避するように各第3上張り切欠き部7115,7215が第2上フランジ部11Bを受け入れる。
【0106】
この際、プレカット上張り材7においては、第1上張り材71及び第2上張り材72の各上張り被覆本体7111,7211の各一端7111a,7211aが第2梁11における第2梁本体11Aの側面又は接続部材11Dに当接するとともに、第1上張り材71の上張り延出部712の一端712aと第2上張り材72の上張り延出部722の一端722aとが突き合わせられる。第1上張り材71の上張り延出部712の一端712aと第2上張り材72の上張り延出部722の一端722aとは、第1上張り材71及び第2上張り材72が第1下張り材61及び第2下張り材62にそれぞれ重ねられた状態において、互いに突き合わせ可能な端面となる。ここで、プレカット上張り材7における各上張り延出部712,722同士の突き合わせ位置は、プレカット下張り材6における各延出部612,622同士の突き合わせ位置とは、第1水平方向D2において異なっている。このため、第1下張り材61と第2下張り材62との間の突き合わせ部分と、第1上張り材71と第2上張り材72との間の突き合わせ部分との連通が回避された状態とすることができる。これにより、突き合わせ部分に起因して界壁構造1の耐火性が低下することを抑制することができる。
【0107】
また、第1上張り材71及び第2上張り材72において、各上張り被覆本体7111,7211の各他端7111b,7211bと、各上張り延出部712,722の各他端712b,722bとは、通常界壁材4の上張り材42に突き合わせられる。
【0108】
既述の通り、第1上張り材71が第1下張り材61に重ねられた状態において、上張り被覆本体7111及び上張り延出部712の各他端7111b,712bは、第1下張り材61における被覆本体6111及び延出部612の各他端6111b,612bよりも第2梁11から離れた位置に位置する。更に、第2上張り材72が第2下張り材62に重ねられた状態において、上張り被覆本体7211及び上張り延出部722の各他端7211b,722bは、第2下張り材62における被覆本体6211及び延出部622の各他端6211b,622bよりも第2梁11から離れた位置に位置する。このような場合には、第1上張り材71及び第2上張り材72と通常界壁材4の上張り材42との突き合わせ位置は、第1下張り材61及び第2下張り材62と通常界壁材4の下張り材41との突き合わせ位置とは、第1水平方向D2において異なっている。このため、第1下張り材61及び第2下張り材62と通常界壁材4の下張り材41との間の突き合わせ部分と、第1上張り材71及び第2上張り材72と通常界壁材4の上張り材42との間の突き合わせ部分との連通が回避された状態とすることができる。これにより、突き合わせ部分に起因して界壁構造1の耐火性が低下することを抑制することができる。
【0109】
また、第1上張り材71及び第2上張り材72において、各上張り被覆本体7111,7211及び各上張り延出部712,722が上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断された場合には、その切断後の端面が通常界壁材4の上張り材42に突き合わせられる。更に、各上張り延出部712,722の下端は、居住界壁材2B1の上張り材2B12の上端に突き合わせられる。
【0110】
既述の通り、第1上張り材71が第1下張り材61に重ねられた状態において、第1上張り材71における上張り被覆本体7111及び上張り延出部712の上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面は、第1下張り材61における被覆本体6111及び延出部612の切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置する。更に、第2上張り材72が第2下張り材62に重ねられた状態において、第2上張り材72における上張り被覆本体7211及び上張り延出部722の上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面は、第2下張り材62における被覆本体6211及び延出部622の切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置する。このような場合には、第1上張り材71及び第2上張り材72における上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面と通常界壁材4の上張り材42との突き合わせ位置は、第1下張り材61及び第2下張り材62における切断目印線51A,51B,51Cに沿った切断後の端面と通常界壁材4の下張り材41との突き合わせ位置とは、第1水平方向D2において異なっている(図4参照)。このため、第1下張り材61及び第2下張り材62と通常界壁材4の下張り材41との間の突き合わせ部分と、第1上張り材71及び第2上張り材72と通常界壁材4の上張り材42との間の突き合わせ部分との連通が回避された状態とすることができる。これにより、突き合わせ部分に起因して界壁構造1の耐火性が低下することを抑制することができる。
【0111】
なお、プレカット上張り材7においては、第1上張り材71及び第2上張り材72の各上張り被覆本体7111,7211の上端部が受け部材84にビス止めされるとともに、それ以外の各上張り被覆本体7111,7211の領域部分、並びに各上張り延出部712,722が界壁スタッド83にビス止めされる。
【0112】
第1上張り材71及び第2上張り材72においては、第2梁11の第2下フランジ部11Cを受け入れるための各第1上張り切欠き部7112,7212、並びに、耐力ブレース12のブレース側被挿入部121を受け入れるための各第2上張り切欠き部7113,7213が予め形成されている。更には、第1上張り材71及び第2上張り材72においては、第2梁11の第2上フランジ部11Bを受け入れるための各第3上張り切欠き部7115,7215が予め形成されている。このため、施工者は、切欠きの長さを設定するために第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙の寸法を計測する作業や切欠きを形成する作業を、施工現場において行う必要がない。このため、界壁構造1の施工効率の向上を図ることができる。
【0113】
しかも、図4に示されるように、第1上張り材71が第1下張り材61に重ねられた状態において、第1上張り材71の上張り連結部7114の第2上張り切欠き部7113側の端面は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜に応じて、第1下張り材61の連結部6114の第2切欠き部6113側の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置している。同様に、第2上張り材72が第2下張り材62に重ねられた状態において、第2上張り材72の上張り連結部7214の第2上張り切欠き部7213側の端面は、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜に応じて、第2下張り材62の連結部6214の第2切欠き部6213側の端面よりも第2梁11から離れた位置に位置している。これにより、第1下張り材61上において第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に第1上張り材71が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。同様に、第2下張り材62上において第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に第2上張り材72が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分を埋める作業の効率化を図ることができる。
【0114】
また、第1上張り材71及び第2上張り材72においては、各上張り被覆本体7111,7211及び各上張り延出部712,722が複数の上張り切断目印線51A,51B,51Cを有している。このため、各上張り被覆本体7111,7211及び各上張り延出部712,722を上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断することにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて各第2上張り切欠き部7113,7213の長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整することができる。これにより、界壁構造1において各第2上張り切欠き部7113,7213の形成に応じてプレカット上張り材7が存在しない隙間部分の面積を可及的に小さくすることができる。このため、界壁構造1の耐火性の低下をより効果的に抑制することが可能であるとともに、隙間部分をシーリング材で埋める作業の更なる効率化を図ることができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態に係るプレカット界壁材5について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0116】
上記の実施形態では、第1梁10と第2梁11との間に間隙GPが形成されるように接続部材11Dを介して第2梁11が接続された第1梁10に取付けられるプレカット界壁材5について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。プレカット界壁材5は、接続部材11Dを介さずに第2梁11が当接された第1梁10にも適用することができる。
【0117】
この場合、プレカット界壁材5を構成する第1下張り材61と第2下張り材62とからなるプレカット下張り材6は、各連結部6114,6214が第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置された状態で、各被覆本体6111,6211によって第1梁10の側面を覆うように配設される。しかも、第1下張り材61及び第2下張り材62では、第2梁11との干渉を回避するように各第1切欠き部6112,6212が第2下フランジ部11Cを受け入れるとともに、耐力ブレース12との干渉を回避するように各第2切欠き部6113,6213がブレース側被挿入部121を受け入れる。更に、第1下張り材61及び第2下張り材62では、第2梁11との干渉を回避するように各第3切欠き部6115,6215が第2上フランジ部11Bを受け入れる。また、第1下張り材61及び第2下張り材62においては、各被覆本体6111,6211及び各延出部612,622を切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断することにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて各第2切欠き部6113,6213の長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整することができる。
【0118】
また、プレカット界壁材5を構成する第1上張り材71と第2上張り材72とからなるプレカット上張り材7は、各上張り連結部7114,7214が第2梁11と耐力ブレース12との間の間隙に配置された状態で、プレカット下張り材6に重ねられる。しかも、第1上張り材71及び第2上張り材72では、第2梁11との干渉を回避するように各第1上張り切欠き部7112,7212が第2下フランジ部11Cを受け入れるとともに、耐力ブレース12との干渉を回避するように各第2上張り切欠き部7113,7213がブレース側被挿入部121を受け入れる。更に、第1上張り材71及び第2上張り材72では、第2梁11との干渉を回避するように各第3上張り切欠き部7115,7215が第2上フランジ部11Bを受け入れる。また、第1上張り材71及び第2上張り材72においては、各上張り被覆本体7111,7211及び各上張り延出部712,722を上張り切断目印線51A,51B,51Cに沿って切断することにより、耐力ブレース12の第2梁11に対する傾斜角度に応じて各第2上張り切欠き部7113,7213の長さを、ブレース側被挿入部121の第1水平方向D2における全体を受け入れ可能な最短の長さに調整することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 界壁構造
5 プレカット界壁材
51A,51B,51C 切断目印線
6 プレカット下張り材
61 第1下張り材
611,621 被覆部
6112,6212 第1切欠き部
6113,6213 第2切欠き部
6114,6214 連結部
612,622 延出部
62 第2下張り材
7 プレカット上張り材
71 第1上張り材
711,721 上張り被覆部
7112,7212 第1上張り切欠き部
7113,7213 第2上張り切欠き部
7114,7214 上張り連結部
712,722 上張り延出部
72 第2上張り材
10 第1梁
11 第2梁
11C 第2下フランジ部(梁側被挿入部)
12 耐力ブレース
121 ブレース側被挿入部
100 建物
D1 上下方向
D2 第1水平方向
D3 第2水平方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8