(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】パーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
B60T 1/06 20060101AFI20231129BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60T1/06 G
F16H63/34
(21)【出願番号】P 2021048964
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 崚人
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】手島 篤司
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/024284(WO,A1)
【文献】特開2015-148295(JP,A)
【文献】国際公開第2011/141947(WO,A1)
【文献】特開平06-219249(JP,A)
【文献】実開平06-078132(JP,U)
【文献】特開2008-064233(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0793705(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
F16H 61/26-61/36
F16H 63/00-63/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングロック装置であって、
ディテントプレートに対して回動可能に連結された基端部と、前記基端部に対して反対側に位置する先端部とを有するパーキングロッドと、
前記パーキングロッドの前記先端部に設けられたテーパ状のパーキングカムと、
前記パーキングカムの移動を案内するように構成されたカム案内装置と、
を備え、
前記ディテントプレートが非パーキング位置からパーキング位置へと回動するとき、
前記パーキングロッドと共に移動した前記パーキングカムが、変速機ケースに回動可能に設けられたパーキングロックポールを、変速機の出力軸と共に回転するパーキングロックギヤと噛み合うように移動させ、
前記カム案内装置は、
円筒部と、前記円筒部の先端部から延びる部分円筒部と、前記円筒部の前記先端部から延びる部分テーパ部と、前記部分円筒部に設けられた回り止め部と、を有するカムガイドと、
前記カムガイドを収容するスリーブと、
を含み、
前記スリーブは、前記部分円筒部に外側から重なる円弧部を有し、
前記部分テーパ部の半径は、前記部分テーパ部が前記円筒部から離れるにつれて増大し、
前記回り止め部は、前記部分円筒部の外周面よりも径方向外側にはみ出している構成要素であり、
前記回り止め部が前記スリーブと当接するとともに前記カムガイドの内周面が前記パーキングカムと当接するとき、前記スリーブに対する前記カムガイドの回転を規制する、
パーキングロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーキングロック装置であって、
前記回り止め部は、前記部分円筒部の前記外周面に接続する面を有し、
前記回り止め部の前記面は、前記外周面と接続している箇所から、前記外周面の接線に沿って直線状に延びている、
パーキングロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパーキングロック装置であって、
前記スリーブの前記円弧部に突起があり、
前記突起と前記円弧部とは、前記円弧部の周方向において並んでおり、
前記回り止め部の前記面は、前記突起と当接するように構成されている、
パーキングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はパーキングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パーキングロック装置を開示している。パーキングロック装置は、シフトポジションの切換操作に応じて回動するシフトコントロールシャフトを備えている。さらに、パーキングロック装置は、シフトコントロールシャフトの回動に応じて回動する板状のディテントプレートを備えている。詳細には、ディテントプレートは、パーキング位置と非パーキング位置とに回動させられ得る。
【0003】
パーキングロック装置は、さらに、ディテントプレートに対して回動可能に連結されたパーキングロッドを備えている。ディテントプレートが非パーキング位置からパーキング位置に回動すると、パーキングロッドが非作動位置から作動位置に移動する。テーパ状のパーキングカムが、パーキングロッドの先端部に設けられている。パーキングロッドが非作動位置から作動位置に移動すると、パーキングカムが、パーキングロックポールを持ち上げる。
【0004】
パーキングカムが、パーキングロックポールを持ち上げると、パーキングロックポールが回動する。これによって、パーキングロックポールの爪部がパーキングロックギヤに噛み合う。
【0005】
パーキングロックギヤはドライブギヤと連動して回転する。このため、パーキングロックポールの爪部がパーキングロックギヤに噛み合うことによって、ドライブギヤがロックされる。
【0006】
図13に示すように、特許文献1に開示されているパーキングロック装置は、カムガイド1094及びスリーブ1100を備え、これらがパーキングカムの移動を案内する。
図13は、互いに組み合わされたカムガイド1094及びスリーブ1100を示す斜視図である。
【0007】
カムガイド1094は、円筒部1094aと、円筒部1094aの外周面から径方向外側に延びる突起部1094bとを有する。さらに、カムガイド1094は、円筒部1094aの先端部から延びる部分円筒部1094cを有する。部分円筒部1094cはC字状であり、部分円筒部1094cの半径は、円筒部1094aの半径と同一である。さらに、カムガイド1094は、円筒部1094aの先端部から延びる部分テーパ部1094dを有する。円筒部1094aの中心軸と直交する断面において、部分テーパ部1094dは円弧状になっている。部分テーパ部1094dは、円筒部1094aから離れた部位ほど中心から離れるように径が大きくなっている。
【0008】
スリーブ1100は、カムガイド1094を収容する。詳細には、スリーブ1100は、部分円筒部1094cと重なり合う円弧部を有する。
カムガイド1094は、スリーブ1100に対してある程度の相対回転が可能である。部分テーパ部1094dがスリーブ1100の円弧部に設けられた端面1108に接触することにより、スリーブ1100に対するカムガイド1094の相対回転が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のパーキングロック装置においては、部分テーパ部1094dと端面1108とを接触させることによりスリーブ1100に対するカムガイド1094の相対回転を規制する。このため、端面1108が部分テーパ部1094dと面接触するように、端面1108及び部分テーパ部1094dの位置、形状、角度を設計する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
本開示の一態様によれば、パーキングロック装置であって、ディテントプレートに対して回動可能に連結された基端部と、前記基端部に対して反対側に位置する先端部とを有するパーキングロッドと、前記パーキングロッドの前記先端部に設けられたテーパ状のパーキングカムと、前記パーキングカムの移動を案内するように構成されたカム案内装置と、を備え、前記ディテントプレートが非パーキング位置からパーキング位置へと回動するとき、前記パーキングロッドと共に移動した前記パーキングカムが、変速機ケースに回動可能に設けられたパーキングロックポールを、変速機の出力軸と共に回転するパーキングロックギヤと噛み合うように移動させ、前記カム案内装置は、円筒部と、前記円筒部の先端部から延びる部分円筒部と、前記円筒部の前記先端部から延びる部分テーパ部と、前記部分円筒部に設けられた回り止め部と、を有するカムガイドと、前記カムガイドを収容するスリーブと、を含み、前記スリーブは、前記部分円筒部に外側から重なる円弧部を有し、前記部分テーパ部の半径は、前記部分テーパ部が前記円筒部から離れるにつれて増大し、前記回り止め部は、前記部分円筒部の外周面よりも径方向外側にはみ出している構成要素であり、前記回り止め部が前記スリーブと当接するとともに前記カムガイドの内周面が前記パーキングカムと当接するとき、前記スリーブに対する前記カムガイドの回転を規制する、パーキングロック装置が提供される。
【0012】
スリーブは、カムガイドの部分円筒部に外側から重なる円弧部を有する。そして、カムガイドは、部分円筒部に設けられた回り止め部を有する。回り止め部が円弧部に向かって移動するように、カムガイドがスリーブに対して回転する状況を想定する。回り止め部は、部分円筒部の外周面がなす円弧から径方向外側にはみ出している。このため、回り止め部が円弧部と当接する位置までカムガイドを回転させると、カムガイドは、カムガイドとスリーブとの間に隙間が生じるように移動する。しかしながら、カムガイドの部分円筒部が、スリーブとパーキングカムとの間に位置している場合、カムガイドの内側に位置するパーキングカムによってカムガイドの移動が規制されている。したがって、この場合には、回り止め部が円弧部に当接する位置までカムガイドを回転させることはできない。すなわちスリーブに対するカムガイドの回転が回り止め部によって規制される。このように、上記構成によれば、カムガイドの部分テーパ部と面接触する端面をスリーブに形成しなくてもカムガイドの回転を規制することができる。
【0013】
前記回り止め部は、前記部分円筒部の前記外周面に接続する面を有していてもよく、前記回り止め部の前記面は、前記外周面と接続している箇所から、前記外周面の接線に沿って直線状に延びていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、回り止め部が、部分円筒部の外周面がなす円弧から径方向外側にはみ出している構成を実現できる。したがって、カムガイドの部分テーパ部と面接触する端面をスリーブに形成しなくてもカムガイドの回転を規制することができる。
【0015】
前記スリーブの前記円弧部に突起があってもよく、前記突起と前記円弧部とは、前記円弧部の周方向において並んでおり、前記回り止め部の前記面は、前記突起と当接するように構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、回り止め部の面がスリーブの突起と当接することによって、スリーブに対するカムガイドの回転が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係るパーキングロック装置を備えるトランスアクスルの概略図。
【
図2】
図1の2-2線に沿う断面図であり、パーキングロック装置の主要部を示す図。
【
図3】
図2の3-3線に沿う断面図であり、パーキングロック装置の作動部分を示す図。
【
図4】
図3に示すケースの開口の中へと順次組付けられるカムガイド、スリーブ、及びストッパープレートを分解して示す斜視図。
【
図5】
図3に示すケース内に組み付けられた状態のカムガイド及びスリーブを示す斜視図。
【
図6】
図3の6-6線に沿う断面図であり、カムガイドとスリーブのみを示す図。
【
図7】スリーブとカムガイドとの関係を示す模式図。
【
図8】
図7の状態からカムガイドをスリーブに対して回転させた状態を示す模式図。
【
図9】突起が設けられていない第1変更例を示す図。
【
図10】
図9の状態からカムガイドをスリーブに対して回転させた状態を示す模式図。
【
図11】第2変更例を示す図であり、
図9に示す構成から回り止め部を変更した図。
【
図12】
図11の状態からカムガイドをスリーブに対して回転させた状態を示す模式図。
【
図13】従来のカムガイド及びスリーブを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態に係るパーキングロック装置について、図面を参照して説明する。
<パーキングロック装置を備えるトランスアクスルの概略>
図1は、パーキングロック装置28を備えるトランスアクスル10の概略図である。
図1において、トランスアクスル10は、FF(フロントエンジンフロントドライブ)形式のハイブリッド車両に設けられている。このトランスアクスル10は、ハウジング12を備える。ハウジング12は、ケース12a、ケース12b、及びカバー12cが相互に組付けられて成る。ケース12a、ケース12b、及びカバー12cは、例えばアルミダイカスト製である。さらに、ハウジング12内において、トランスアクスル10は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2と、第1遊星歯車装置14及び第2遊星歯車装置16とを備える。さらに、トランスアクスル10は、減速歯車装置18と、差動歯車装置20とを備える。第1電動機MG1及び第2電動機MG2の各々は、電動モータとしても発電機としても機能する。第1遊星歯車装置14及び第2遊星歯車装置16の各々は、シングルピニオン型である。なお、上記ケース12a、12b、及びカバー12cは、変速機ケースに相当するものである。
【0019】
また、トランスアクスル10は、回転自在に支持された入力軸13を備える。入力軸13は、走行用の主駆動力源としての図示しない例えばエンジン等の出力軸(クランク軸)22と同心状に配置されている。そして、入力軸13は、急激なトルク変動による脈動を吸収して減衰させるためのダンパー装置24を介して、上記出力軸22に動力伝達可能に連結されている。
【0020】
第1遊星歯車装置14は、エンジンで発生したトルクを機械的に第1電動機MG1と減速歯車装置18とに分配するための動力分配機構として機能するものである。この第1遊星歯車装置14は、入力軸13に連結されたキャリヤCA1と、第1電動機MG1に連結されたサンギヤS1と、ドライブギヤ26の内周面に固設されたリングギヤR1とを備えている。ドライブギヤ26は、変速機の出力軸に相当する。なお、上記ドライブギヤ26の外周面には、パーキングロック装置28の一部を構成するパーキングロックギヤ30が固設されている。
【0021】
第2遊星歯車装置16は、第2電動機MG2の減速機構として機能するものである。この第2遊星歯車装置16は、第2電動機MG2に連結されたサンギヤS2と、ケース12bに連結されたキャリヤCA2と、ドライブギヤ26の内周面に固設されたリングギヤR2とを備えている。
【0022】
第1電動機MG1は、主として発電機として用いられ、エンジンにより第1遊星歯車装置14を介して回転駆動されることにより発生した電気エネルギーを、例えばバッテリ等の蓄電装置に充電するものである。なお、第1電動機MG1は、発電機として用いられるだけに限らず、例えばエンジン始動時や高速走行時等においては電動モータとしても用いられる。
【0023】
第2電動機MG2は、主として電動モータとして用いられ、単独で、或いはエンジンと共にドライブギヤ26を回転駆動するものである。なお、第2電動機MG2は、電動モータとして用いられるだけに限らず、例えば車両の減速時等においては発電機としても用いられる。
【0024】
減速歯車装置18は、ドライブギヤ26と差動歯車装置20との間に設けられて減速機構として機能するものである。この減速歯車装置18は、ドライブギヤ26に噛み合うドリブンギヤ34を備えている。ドリブンギヤ34は、入力軸13と平行に設けられたカウンター軸32に固設されている。また、減速歯車装置18は、カウンター軸32に固設されたドライブギヤ36と、ドライブギヤ36に噛み合うドリブンギヤ40とを備えている。ドリブンギヤ40は、差動歯車装置20のデフケース38に固設されている。
【0025】
差動歯車装置20は、良く知られた傘歯車式のものであって、回転差を許容しつつ2つの駆動軸42をそれぞれ回転駆動させるものである。
このように構成されたトランスアクスル10においては、エンジンと第1電動機MG1と第2電動機MG2とのうち、少なくとも1つにおいてトルクが発生する。発生させられたトルクが、ドライブギヤ26、減速歯車装置18、及び差動歯車装置20を介して2つの駆動軸42に伝達されるようになっている。
【0026】
<パーキングロック装置>
以下、パーキングロック装置28に関して詳しく説明する。パーキングロック装置28は、ドライブギヤ26と共に回転するパーキングロックギヤ30をそのパーキングロックギヤ30の軸心O1まわりの回転不能に固定する。これにより、パーキングロック装置28は、上記トランスアクスル10における駆動軸42の回転をロックする。
【0027】
図2は、
図1の2-2線に沿う断面図であり、パーキングロック装置28の主要部を示す。
図2は、ケース12bの開口側から見たケース12b内のパーキングロック装置28の主要部を示す。
図3は、
図2の3-3線に沿う断面図であり、パーキングロック装置28の作動部分を示す。
【0028】
図2に示すように、パーキングロック装置28は、パーキングロックギヤ30を備えている。さらに、パーキングロック装置28は、ケース12bに軸心O2まわりの回動可能に支持された基端部を有するパーキングロックポール44を備えている。パーキングロックポール44は、軸心O2まわりに回動することで上記パーキングロックギヤ30に対して接近及び離間可能である。このパーキングロックポール44は、パーキングロックギヤ30に接近するように回動させられたときにパーキングロックギヤ30と噛み合う爪部46を有している。
図2は、パーキングロックポール44の爪部46がパーキングロックギヤ30と噛み合う状態を示している。そして、パーキングロックポール44は、パーキングロックギヤ30を回転不能に固定する噛合位置と、パーキングロックギヤ30の回転を許容する非噛合位置との間で回動させられる。
図2は、噛合位置にあるパーキングロックポール44を示している。すなわち、パーキングロックポール44はパーキングロックギヤ30に接近するように回動させられることによって、爪部46がパーキングロックギヤ30に噛み合っている。パーキングロックポール44はパーキングロックギヤ30から離間するように回動させられることによって、爪部46がパーキングロックギヤ30に噛み合わなくなる。すなわち、この場合、パーキングロックポール44は、非噛合位置にある。なお、パーキングロックポール44は、付勢スプリング(図示せず)により常時上記非噛合位置に向けて付勢されており、その付勢力の他に外力が作用しない状態のときには上記非噛合位置に位置させられるようになっている。
【0029】
図3に示されているシフトコントロールシャフト50は、トランスアクスル10のシフトポジションの切換操作に応じて回動する。パーキングロック装置28は、シフトコントロールシャフト50に固設されて、予め設定された複数の回動位置のいずれか1つに回動させられる板状のディテントプレート52を備えている。このディテントプレート52は、予め設定されたパーキング位置、リバース位置、ニュートラル位置、ドライブ位置、及びマニュアル位置のいずれか1つに位置決めされるようになっている。リバース位置、ニュートラル位置、ドライブ位置、及びマニュアル位置のいずれも、非パーキング位置と称され得る。ディテントプレート52は、これらの位置に対応したカム面形状を有する外周端縁を備えている。ディテントプレート52は、パーキングレバー又は節度板などとも称されるものである。
図3に示すように、ディテントプレート52は、ボス部54と、ボス部54から外周側へ突き出す扇型の第1アーム部56と、を有する。第1アーム部56の外周端縁部のカム面58には、第1凹部60、第2凹部62、第3凹部64、第4凹部66、及び第5凹部67が形成されている。第1凹部60は、ディテントプレート52をパーキング位置に位置決めするために用いられる。第2凹部62は、ディテントプレート52をリバース位置に位置決めするために用いられる。第3凹部64は、ディテントプレート52をニュートラル位置に位置決めするために用いられる。第4凹部66は、ディテントプレート52をドライブ位置に位置決めするために用いられる。第5凹部67は、ディテントプレート52をマニュアル位置に位置決めするために用いられる。そして、上記カム面58には、板状のばね68の先端部に回転可能に支持された係合ローラ70が当接している。板状のばね68の基端部は、ケース12bに固定されている。このばね68は、カム面58に向けて係合ローラ70を所定の押圧力で付勢している。このため、係合ローラ70が第1凹部60内に落ち込むことによりディテントプレート52がパーキング位置に位置決めされる。
図3は、パーキング位置に位置決めされたディテントプレート52を実線で示している。係合ローラ70が第2凹部62内に落ち込むことによりディテントプレート52がリバース位置に位置決めされる。係合ローラ70が第3凹部64内に落ち込むことによりディテントプレート52がニュートラル位置に位置決めされる。係合ローラ70が第4凹部66内に落ち込むことによりディテントプレート52がドライブ位置に位置決めされる。係合ローラ70が第5凹部67内に落ち込むことによりディテントプレート52がマニュアル位置に位置決めされる。
図3は、マニュアル位置に位置決めされたディテントプレート52を2点鎖線で示している。
【0030】
また、パーキングロック装置28は、ディテントプレート52に対して回動可能に連結された基端部と、基端部に対して反対側に位置する先端部とを有するパーキングロッド74を備える。パーキングロッド74の基端部は、ディテントプレート52のボス部54から外周側へ突き出す第2アーム部73に回動可能に連結されている。ディテントプレート52がパーキング位置に向かって回動するとき、パーキングロッド74は、基端部から先端部に向かう方向において移動する。さらに、パーキングロック装置28は、パーキングロッド74の先端部に設けられたテーパ状のパーキングカム76と、パーキングカム76を案内するカム案内装置78とを備えている。カム案内装置78は、カムガイド94と、カムガイド94を収容するスリーブ100とを含む。パーキングロッド74が基端部から先端部に向かう方向において移動するとき、カム案内装置78は、パーキングロッド74と共に移動するパーキングカム76を案内する。すなわち、カム案内装置78は、ディテントプレート52が非パーキング位置からパーキング位置へ回動するときに、パーキングカム76を案内する。これによって、パーキングカム76は、ケース12bに回動可能に設けられたパーキングロックポール44をドライブギヤ26と共に回転するパーキングロックギヤ30と噛み合う噛合位置へ移動させる。
【0031】
パーキングロッド74は、ディテントプレート52がパーキング位置に向かって回動するとき、ケース12b内から、第1電動機MG1に対応する側のケース12bの開口部に向かって突き出される。
図3は、ディテントプレート52がマニュアル位置に位置決めされたときのパーキングロッド74及びディテントプレート52を2点鎖線で示す。
図3は、ディテントプレート52がパーキング位置に位置決めされたときのパーキングロッド74及びディテントプレート52を実線で示す。
【0032】
パーキングカム76は、パーキングロッド74の先端部に向かうほど小径となるように比較的に緩やかな勾配を有してテーパ状に形成された第1テーパ状カム面80を備えている。さらに、パーキングカム76は、第1テーパ状カム面80に隣接して設けられた第2テーパ状カム面82を備えている。第2テーパ状カム面82は、パーキングロッド74の先端部に向かうほど小径となるように比較的に急な勾配を有してテーパ状に形成されている。パーキングカム76は、パーキングロッド74の先端部に嵌め入れられた円筒状部材である。パーキングロッド74の先端部には、円筒状のストッパー84が嵌め着けられている。ストッパー84はパーキングカム76に隣接している。また、パーキングロッド74の基端部の近くには、カシメ部86が形成されている。そして、パーキングカム76は、カシメ部86とパーキングカム76との間に予圧状態で介在されたコイルスプリング88により、ストッパー84に向けて付勢されている。
【0033】
図3及び
図4に示すように、ケース12b内には、円筒面形状に形成された第1受面92と、第1受面92より大径の第2受面96とが形成されている。第2受面96は、第1受面92の軸心O3を共有して第1受面92のケース12bの開口側に隣接して形成されている。カムガイド94は、パーキングカム76を案内する内周面90を有する。カムガイド94は、円筒状であり、ケース12b内に円筒面状に形成された第1受面92に径方向すなわち軸心O3の直角方向の移動不能に嵌め入れられている。スリーブ100は、第1受面92のケース12bの開口側に隣接する第2受面96によりパーキングロックポール44とは反対側の位置において受けられている。スリーブ100は、カムガイド94によってパーキングロックポール44へ向かう移動が規制されている。スリーブ100は、カムガイド94のケース12bの開口側に隣接して設けられている。スリーブ100は、半円筒状であり、テーパ状案内凹面98を有する。テーパ状案内凹面98は、ディテントプレート52がリバース位置からパーキング位置へ回動するとき、パーキングカム76をパーキングロックポール44へ向かうように案内する。さらに、ストッパープレート(固定部材)104が、
図2に示すようにケース12bの開口部に例えばボルト102により固定され、スリーブ100の端部と係合する。これによって、ストッパープレート104は、スリーブ100の軸心O3まわりの回転及びケース12bの開口部に向かう移動を規制する。
【0034】
図4は、ケース12bの開口の中へと順次組付けられるカムガイド94、スリーブ100、及びストッパープレート104を分解して示す斜視図である。
図5は、ケース12b内に組み付けられた状態のカムガイド94及びスリーブ100のみを示す斜視図である。
図4に示すように、第1受面92は、パーキングロックギヤ30の軸心O1に平行な方向の軸心O3まわりに約240°程度の部分円筒面状に形成されている。第2受面96は、第1受面92の軸心O3方向に隣接し且つ第1受面92と同心に形成されている。第2受面96は、第2受面96の半径r2が第1受面92の半径r1よりも大きくなるように形成されている。上記第1受面92及び第2受面96は、アルミダイカスト製のケース12bに対して例えばエンドミル等の円筒状の回転式刃物により切削仕上げ加工が施されることで形成されている。
【0035】
<パーキングロック装置が備えるカムガイドの詳細>
カムガイド94は、円筒部94aと、平板状の突起部94bと、を有する。また、カムガイド94は、円筒部94aの先端部から延びる部分円筒部94cと、円筒部94aの先端部から延びる部分テーパ部94dと、を有する。さらに、カムガイド94は、部分円筒部94cに設けられた回り止め部94eを有する。
【0036】
円筒部94aは、カムガイド94においてスリーブ100とは反対側に位置する。軸心O3から見た円筒部94aの半径は、第1受面92の半径r1と略一致する。円筒部94aは第1受面92に受けられる。
【0037】
突起部94bは、円筒部94aの軸心O2方向の寸法と同じ幅寸法を有し、円筒部94aから外周側に向けて径方向に突設されている。
また、カムガイド94の部分円筒部94cは、半円状であり、スリーブ100に対応する側に設けられている。軸心O3から見た部分円筒部94cの半径は、一定である。すなわち、部分円筒部94cの半径は、円筒部94aの半径r1と同じである。
【0038】
部分テーパ部94dの半径は、部分テーパ部94dが円筒部94aから離れるにつれて増大する。換言すると、軸心O3から見た部分テーパ部94dの半径は、ストッパープレート104に近づくにつれて大きくなっている。このため、カムガイド94は、テーパ状案内凹面98によりパーキングロックポール44に向かって案内されるパーキングカム76と干渉しにくい。円筒部94aと、第1受面92の縁部に位置した段付部端面106と、が当接している。さらに、部分円筒部94cが第1受面92からはみ出している。すなわち、カムガイド94の軸心O3方向の長さは、第1受面92の軸心O3方向の長さよりも長くなるように形成されている。なお、本実施形態では、カムガイド94は、一枚の板材からプレス加工によって曲成されることにより構成される。
【0039】
回り止め部94eは、部分円筒部94cの外周面よりも径方向外側にはみ出している構成要素である。詳細には、回り止め部94eは、部分円筒部94cの外周面に接続する面を有する。回り止め部94eの面は、部分円筒部94cの外周面と接続している箇所から、外周面の接線に沿って直線状に延びている。後述するように、回り止め部94eがスリーブ100と当接するとともにカムガイド94の内周面90がパーキングカム76と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。
【0040】
<パーキングロック装置が備えるスリーブの詳細>
スリーブ100は、カムガイド94の部分円筒部94cに外側から重なる円弧部111を有する。
【0041】
円弧部111は、約180°程度の部分円筒状である。円弧部111は、第2受面96とカムガイド94の部分円筒部94cとの間に形成された半円環状の隙間に嵌め入れられている。円弧部111がカムガイド94の部分円筒部94cと重ねられており、これによりスリーブ100はパーキングロックポール44に向かう移動が規制されている。
【0042】
スリーブ100の円弧部111に突起107がある。突起107と円弧部111とは、円弧部111の周方向において並んでいる。突起107は、円弧部111から鉛直方向に延びている。突起107の外面は、ケース12bの第2受面96に面接触する。すなわち、突起107の外面は円弧状である。突起107の内面は、直線形状となっている。後述するように、回り止め部94eの面が突起107と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の軸心O3を中心にした反時計回り方向の回転が規制される。また、パーキングロックポール44がカム案内装置78の中で激しく動く際、突起107がケース12bに押圧される。すなわち、突起107はケース12bに対するカム案内装置78の動きを規制できる。なお、突起部94bがケース12bと当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の軸心O3を中心にした時計回り方向の回転が規制される。これは、部分テーパ部94dに相当する構成要素が、端面110に相当する部位に接触することによって回転を規制する先行技術文献の構成と相違する。
【0043】
また、スリーブ100は、円弧部111に接続され、カムガイド94とは反対側に位置する端部を有する。スリーブ100の端部は、内側においてテーパ状案内凹面98を有する。そして、スリーブ100は外周面112を有する。外周面112の半径は第2受面96の半径r2と略一致する。テーパ状案内凹面98の中心線は、外周面112の中心線と一致する軸心O3から、パーキングロックポール44に向かってへ所定距離だけずらされている。なお、スリーブ100は、例えば焼結(粉体冶金)により型成形される。
【0044】
ストッパープレート104は、ディテントプレート52がパーキング位置へ回動させられるときにパーキングロックポール44に向かって案内されるパーキングカム76と干渉する規制孔120を備える。すなわち、規制孔120は、パーキングカム76の持ち上がり量を規制する。このストッパープレート104は、
図2に示すようにボルト102によりケース12bに固定されている。また、スリーブ100が規制孔120の中に位置する。これにより、スリーブ100の軸心O3まわりの回転が規制されている。
【0045】
<トランスアクスルの回転のロック及びアンロックに係る動作>
ディテントプレート52が
図3にて2点鎖線で示すようにマニュアル位置に回動させられているときには、パーキングカム76がパーキングロックポール44を持ち上げない。このため、パーキングロックポール44が
図3にて2点鎖線で示すように非噛合位置に位置させられる。また、ディテントプレート52がその他の非パーキング位置(ドライブ位置、ニュートラル位置、又はリバース位置)に回動させられているとき、パーキングカム76がパーキングロックポール44を持ち上げない。また、ディテントプレート52が
図3にて実線で示すようにパーキング位置に回動させられているときには、パーキングカム76がパーキングロックポール44を持ち上げる。このため、パーキングロックポール44が付勢スプリングの付勢力に抗して
図3にて実線で示すように噛合位置に位置させられるようになっている。
【0046】
<スリーブのパーキングロックポールに向かう移動の規制>
図3に示すように、スリーブ100がカムガイド94に重ねられている。カムガイド94は、スリーブ100とパーキングロックポール44との間に位置している。このため、スリーブ100のパーキングロックポール44に向かう移動が規制されている。さらには、上記スリーブ100の外周面112が第2受面96内に嵌め入れられることにより、スリーブ100のパーキングロックポール44に向かう移動が規制されている。
【0047】
<本実施形態の作用>
図6は、
図3の6-6線に沿う断面図であり、カムガイド94とスリーブ100のみを示す断面図である。
図7及び
図8を参照して本実施形態の作用について説明する。
図7は、スリーブ100とカムガイド94との関係を示す模式図である。カムガイド94は、スリーブ100によって下から支えられている。
図8は、
図7の状態からカムガイド94をスリーブ100に対して回転させた状態を示す。
【0048】
カムガイド94がスリーブ100に対して回転するとき、カムガイド94の回り止め部94eがスリーブ100に干渉する。より詳しくは、回り止め部94eの面が突起107と当接する。このため、
図8に示すようにカムガイド94がスリーブ100から離れるように移動する。
【0049】
パーキングカム76がカムガイド94の内側にあるとき、カムガイド94はスリーブ100から離れるように移動できない。したがって、回り止め部94eがスリーブ100と当接するとともにカムガイド94の内周面90がパーキングカム76と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。より詳しくは、回り止め部94eの面が突起107と当接するとともにカムガイド94の内周面90がパーキングカム76と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。これは、部分テーパ部94dに相当する構成要素が、端面108に相当する部位に接触することによって回転を規制する先行技術文献の構成と相違する。
【0050】
<本実施形態の効果>
(1)スリーブ100は、カムガイド94の部分円筒部94cに沿って延びて重なっている円弧部111を有する。そして、カムガイド94は、部分円筒部94cに設けられた回り止め部94eを有する。回り止め部94eは、部分円筒部94cの外周面がなす円弧から径方向外側にはみ出している。このため、
図8に示したように回り止め部94eが円弧部111と当接する位置までカムガイド94を回転させると、カムガイド94は、カムガイド94とスリーブ100との間に隙間が生じるように移動する。しかしながら、カムガイド94の部分円筒部94cが、スリーブ100とパーキングカム76との間に位置している場合、カムガイド94の内側に位置するパーキングカム76によってカムガイド94の移動が規制されている。したがって、この場合には、回り止め部94eが円弧部111に当接する位置までカムガイド94を回転させることはできない。すなわちカムガイド94のスリーブ100に対する回転が回り止め部94eによって規制される。このように、上記構成によれば、カムガイド94の部分テーパ部94dと面接触する端面をスリーブ100に形成しなくてもカムガイド94の回転を規制することができる。
【0051】
(2)上記構成によれば、回り止め部94eの面がスリーブ100の突起107と当接することによって、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。
(3)スリーブ100の突起107の内面は、直線形状となっている。スリーブ100は、型を用いて製造される。スリーブ100は、突起107の内面に沿う方向において、型から外すことが可能である。本実施形態とは異なり、突起の内面が円弧状となっている構成のスリーブを製造するためには、突起の内面を円弧状に加工する必要が生じる。したがって、本実施形態に係るスリーブ100は、突起の内面が円弧状となっている構成と比較して製造しやすい。
【0052】
(変更例)
その他、上記実施形態において変更可能な要素としては次のようなものがある。以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
<第1変更例>
図9及び
図10を参照して第1変更例を説明する。第1変更例では、上記実施形態と比較して、スリーブ100の突起107が省略されている。
図10は、
図9の状態からカムガイド94をスリーブ100に対して回転させた状態を示す。
【0054】
カムガイド94がスリーブ100に対して回転するとき、カムガイド94の回り止め部94eがスリーブ100に干渉する。このため、カムガイド94がスリーブ100から離れるように移動する。したがって、回り止め部94eがスリーブ100と当接するとともにカムガイド94の内周面90がパーキングカム76と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。
【0055】
<第2変更例>
図11及び
図12を参照して第2変更例を説明する。第2変更例では、第1変更例と比較して、回り止め部94eの形状が変更されている。第2変更例の回り止め部94eは、部分円筒部94cの外周面と接続している面が曲面になっている。そしてこの面は、部分円筒部94cの外周面よりも径方向外側にはみ出している。
図12は、
図11の状態からカムガイド94をスリーブ100に対して回転させた状態を示す。
【0056】
カムガイド94がスリーブ100に対して回転するとき、カムガイド94の回り止め部94eがスリーブ100に干渉する。このため、カムガイド94がスリーブ100から離れるように移動する。したがって、回り止め部94eがスリーブ100と当接するとともにカムガイド94の内周面90がパーキングカム76と当接するとき、スリーブ100に対するカムガイド94の回転が規制される。
【0057】
<その他の変更例>
・回り止め部94eは、部分円筒部94cの外周面よりも径方向外側にはみ出していればよい。すなわち、回り止め部94eの形状は上記の実施形態や第1変更例及び第2変更例に示した形状に限らない。回り止め部94eの形状は、部分円筒部94cの外周面よりも径方向外側にはみ出している形状であれば適宜変更可能である。
【0058】
・上記実施形態では、カムガイド94は、一枚の板材からプレス加工によって曲成されている。しかしながら、これは例示に過ぎない。カムガイド94は、粉体冶金により型成形で製造されてもよいし、鋼管材から機械加工で製造されてもよい。同様にスリーブ100の製造方法も適宜変更可能である。
【0059】
・突起部94bは省略されてもよい。
・上記実施形態では、パーキングロック装置28は、FF形式のハイブリッド車両のトランスアクスル10に設けられている。しかしながら、これは例示に過ぎない。パーキングロック装置28は、例えばFR形式等の他の駆動形式の車両が備える変速機に適用されてもよい。パーキングロック装置28は、例えば駆動力源としてエンジンのみを備える車両が備える変速機に適用されてもよい。パーキングロック装置28は、電気自動車等が備える変速機に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
26…ドライブギヤ
28…パーキングロック装置
30…パーキングロックギヤ
44…パーキングロックポール
52…ディテントプレート
74…パーキングロッド
76…パーキングカム
78…カム案内装置
94…カムガイド
94a…円筒部
94b…突起部
94c…部分円筒部
94d…部分テーパ部
94e…回り止め部
100…スリーブ
107…突起
111…円弧部