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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231129BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20231129BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A01B69/00 303V
A01C11/02 331D
A01B69/00 303K
A01C11/02 311G
B62D6/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021105998
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023004371
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】高橋 努
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087292(JP,A)
【文献】特開2020-202789(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178294(WO,A1)
【文献】特開2019-113960(JP,A)
【文献】特開2021-029235(JP,A)
【文献】特開2002-358122(JP,A)
【文献】特開2020-146043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0144701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/00 - 11/02
B62D 6/00 - 6/10
G05D 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に設けられた苗植付部と、
前記走行車体の方位を検出する方位検出部と、
前記走行車体のメインフレームに、回動可能に設けられるフロアステップと、
前記メインフレームと前記フロアステップとの間に設けられ、前記フロアステップに作業者が乗っている場合にONになり、かつ、前記フロアステップに作業者が乗っていない場合にOFFになる第1リミットセンサと、
エンジンカバーに、回動可能に設けられる操縦席と、
前記エンジンカバーと前記操縦席との間に設けられ、前記操縦席に作業者が乗っている場合にONになり、かつ、前記操縦席に作業者が乗っていない場合にOFFになる第2リミットセンサと、
直進時と旋回時に、前記走行車体の舵角を制御し、前記走行車体を自動直進と自動旋回させる制御装置と、
を備え、
前記自動直進は、予め設定された直進経路に沿うように走行し、
前記自動旋回は、次工程の直進経路へ向かうように旋回終了地点で前記走行車体が理想方位となるように走行し、
前記制御装置は、
自動旋回時に、検出された前記走行車体の方位と、旋回における理想方位とにずれが生じた場合、
ずれた前記走行車体の方位を前記理想方位へ修正するために、前記理想方位とずれた前記走行車体の方位とに基づいて舵角を調節するための補正量を算出し、
前記算出した前記補正量に基づいて前記舵角を制御し、
前記制御は旋回後の自動直進に移行するまで実行され、
前記第2リミットセンサがOFFであり、かつ、前記第1リミットセンサがONである場合、自律走行中の加速、急減速、および、旋回を行わない、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検出された前記走行車体の方位に基づいて、所定時間後の前記走行車体の予測方位を予測し、
前記予測方位と前記理想方位とにずれが生じた場合、前記理想方位とずれた前記予測方位とに基づいて前記補正量を算出し、
前記算出した補正量に基づいて前記舵角を制御する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記予測方位を、前記検出された前記走行車体の方位と、前記走行車体の車速とから算出する、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記理想方位を旋回開始時に設定する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記補正量に基づいた舵角の制御を、前記旋回中に複数回実行し、補正回数を設定可能である、請求項1~4のいずれか1つに記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記方位に基づく前記舵角の制御を、次工程の直進制御に移行するまで実行する、請求項1~5のいずれか1つに記載の作業車両。
【請求項7】
記補正量を調整可能な調整部
を備える、請求項1~のいずれか1つに記載の作業車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記走行車体の方位が前記理想方位に対して、旋回外側を向いており、かつ前記走行車体の方位と前記理想方位との差が所定値以上である場合、前記自動旋回を中止し、前記走行車体を停止させる、請求項1~のいずれか1つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作装置を直進位置に保持し、走行車体を自動直進走行させる作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記作業車両は、旋回作業を作業者が操作しなければならず、旋回後の位置が次工程の位置に合わないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、精度の高い旋回を実行可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、走行車体(2)と、苗植付部(4)と、方位検出部(150)と、フロアステップ(33)と、第1リミットセンサ(212)と、操縦席(41)と、第2リミットセンサ(222)と、制御装置(100)とを備える。苗植付部(4)は、走行車体(2)に設けられる。方位検出部(150)は、走行車体(2)の方位を検出する。フロアステップ(33)は、走行車体(2)のメインフレーム(15)に、回動可能に設けられる。第1リミットセンサ(212)は、メインフレーム(15)とフロアステップ(33)との間に設けられ、フロアステップ(33)に作業者が乗っている場合にONになり、かつ、フロアステップ(33)に作業者が乗っていない場合にOFFになる。操縦席(41)は、エンジンカバー(30a)に、回動可能に設けられる。第2リミットセンサ(222)は、エンジンカバー(30a)と操縦席(41)との間に設けられ、操縦席(41)に作業者が乗っている場合にONになり、かつ、操縦席(41)に作業者が乗っていない場合にOFFになる。制御装置(100)は、直進時と旋回時に、走行車体(2)の舵角を制御し、走行車体(2)を自動直進と自動旋回させる。自動直進は、予め設定された直進経路に沿うように走行する。自動旋回は、次工程の直進経路へ向かうように旋回終了地点で走行車体(2)が理想方位となるように走行する。制御装置(100)は、自動旋回時に、検出された走行車体(2)の方位と、旋回における理想方位とにずれが生じた場合、ずれた走行車体(2)の方位を理想方位へ修正するために、理想方位とずれた走行車体(2)の方位とに基づいて舵角を調整するための補正量を算出し、算出した補正量に基づいて舵角を制御し、制御は旋回後の自動直進に移行するまで実行され、第2リミットセンサ(222)がOFFであり、かつ、第1リミットセンサ(212)がONである場合、自動旋回を行わない
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、作業車両は、精度の高い旋回を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、作業車両を示す側面図である。
図2図2は、作業車両を示す平面図である。
図3図3は、苗移植機の制御装置を中心とした制御系を示すブロック図である。
図4図4は、自動旋回を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る自動旋回処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、変形例に係る苗移植機の調整ダイヤルを示す図である。
図7図7は、変形例に係る苗移植機の一部を模式的に示す側面図である。
図8図8は、変形例に係る苗移植機の一部を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(作業車両の概要)
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。図1は、作業車両1を示す側面図である。図2は、作業車両1を示す平面図である。
【0010】
なお、以下の説明では、前後方向とは、作業車両1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。作業車両1の進行方向とは、直進時において、操縦席41からハンドル35(ステアリング装置)に向かう方向である(図1および図2参照)。
【0011】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(作業者ともいう。)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0012】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
実施形態では、作業車両1を、圃場作業装置として苗植付部4を備え、圃場に苗を受け付ける乗用型の苗移植機1として説明する。図1および図2に示すように、苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、圃場に苗を植え付ける昇降可能な苗植付部4を備える。
【0014】
走行車体2の後部上側には施肥装置5の本体部分が配置される。なお、作業車両1が苗移植機1ではない場合、種子を供給する播種装置などを作業装置として備える場合がある。
【0015】
走行車体2は、車輪であり駆動輪である、左右の前輪10および後輪11を備える四輪駆動車両である。走行車体2の車体骨格を構成するメインフレーム15の前側には、苗植付部4などに駆動力を伝達するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力、すなわち、エンジン30で発生した回転をミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置14とが設けられる。
【0016】
無段変速装置14は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。以下では、無段変速装置がHST14である場合を説明する。
【0017】
ミッションケース13内には、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの苗の植え付け時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える副変速機構16が設けられる。ミッションケース13の左右側方には、前輪ファイナルケース10aが設けられ、左右の前輪ファイナルケース10aの操向方向を変更可能な前輪支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸10bに前輪10が取り付けられる。
【0018】
また、メインフレーム15の後部側には、横方向に設けられた後部フレーム22(図2参照)の左右両側に後輪ギヤケース11aが取付けられ、後輪ギヤケース11aからそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸11bに後輪11がそれぞれ取り付けられる。
【0019】
また、後部フレーム22の上部には、昇降リンク機構3を支持する左右のリンク支持フレーム23が上方に向けて突設される。左右のリンク支持フレーム23の下部側で、かつ、左右の間には、左右一対のロワリンクアーム24が設けられる。左右のロワリンクアーム24の左右の間に、油圧により作動する昇降シリンダ25が設けられる。
【0020】
昇降シリンダ25の上方には、アッパリンクアーム26が設けられ、平行リンク機構である昇降リンク機構3が構成される。なお、それぞれ一端が走行車体2側に連結された、左右のロワリンクアーム24と、昇降シリンダ25と、アッパリンクアーム26の他端側とは、苗植付部4の前部に装着される。
【0021】
また、メインフレーム15上には、エンジン30が搭載される。エンジン30の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST14を介してミッションケース13に伝達される。ミッションケース13に伝達された回転動力は、ミッションケース13内の副変速機構16により変速された後、走行動力と外部取り出し動力に分けられる。
【0022】
また、エンジン30の回転動力は、図示しない油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HST14や、ハンドル35のパワーステアリング機構88(図3参照)や、昇降シリンダ25などに供給される。
【0023】
ミッションケース13に伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチケース27に伝達され、植付クラッチケース27から植付伝動軸67によって苗植付部4に伝達される。
【0024】
一方、ミッションケース13の後部には、左右のドライブシャフト42が設けられる。エンジン30からの回転動力は、ミッションケース13およびドライブシャフト42を介して左右の後輪ギヤケース11aに伝動される。
【0025】
なお、左右のドライブシャフト42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42に対する動力伝達を入切するサイドクラッチ44(図3参照)が配置される。図1に示すように、操縦席41の前側下部であり、かつ、左右一側には、左右のサイドクラッチ44を入切操作するサイドクラッチペダル43aが設けられる。
【0026】
左右のサイドクラッチペダル43aのうち、旋回内側のサイドクラッチペダル43aを踏み込んでサイドクラッチ44を切状態にしてからハンドル35を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪11の駆動回転を完全に遮断することができる。
【0027】
走行車体2の前側上部には、各部の操作を行う操縦パネル38を上部に配置されたボンネット39が設けられる。操縦パネル38には、モニタ86(図3参照)などが設けられる。
【0028】
また、ボンネット39には、走行車体2を操舵するハンドル35、HST14や苗植付部4を操作する変速操作レバー36、副変速機構16を操作する副変速操作レバー37などが設けられる。
【0029】
また、ボンネット39の前側には、開閉可能なフロントカバー40が設けられる。フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル35の操舵に左右の前輪10および左右の前輪ファイナルケース10aの下部側を回動させる連動機構が設けられる。前輪10は、例えば、ハンドル35の操舵に応じて転舵する操舵輪である。
【0030】
ボンネット39よりも後側で、かつ、エンジン30の上方位置には、エンジン30の上部および側部を覆うエンジンカバー30aが設けられ、エンジンカバー30aの上部には操縦者が着席する操縦席41が設けられる。
【0031】
操縦席41の後側であって、メインフレーム15の後端側には、施肥装置5が設けられる。施肥装置5の駆動力は、左右の後輪ギヤケース11aの左右一側から施肥装置5に臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0032】
エンジンカバー30aおよびボンネット39の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ33が形成される。フロアステップ33は、図2に示すように、一部格子状であり、たとえば、フロアステップ33を歩く操縦者の靴などについた泥が落ちても、落ちた泥などが圃場に落下する。
【0033】
また、フロアステップ33の後方には、図2に示すように、リヤステップ330が連接される。リヤステップ330の表面には、作業時に足が滑りにくくなるように、たとえば、複数の突起パターンが形成された滑り止め加工が施されることが好ましい。
【0034】
また、走行車体2の前側であり、かつ、左右両側には、苗枠支柱51に複数の予備苗載せ台52を上下方向に間隔を空けて配置する予備苗枠50がそれぞれ設けられ、苗植付部4に補充される苗や肥料袋などの作業資材が載置可能となっている。
【0035】
また、昇降リンク機構3の後端部には、圃場に植え付ける苗を積載する苗タンク53が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に装着されている。苗タンク53には、上下方向に長い苗仕切フェンス54が左右方向に所定間隔を空けてそれぞれ配置される。苗タンク53の下方には、積載された苗を掻き取って圃場に植え付ける苗植付装置55が配置される。
【0036】
苗植付装置55は、苗仕切フェンス54により区切られた植付作業条数と同数、すなわち、8条同時に植え付けるものであり、植付伝動ケース56が苗タンク53の下方に間隔を空けて4つ配置され、植付伝動ケース56の左右両側に回転しながら植込杆58により苗を取って圃場に植え付ける植付ロータリ57がそれぞれ装着される。
【0037】
施肥装置5は、肥料が貯留される施肥ホッパ70が、苗植付部4の作業条数と同数(図2に示す例では、8条分)に仕切られている。なお、8条分の施肥ホッパ70は、左右方向に長いため肥料の投入や着脱の利便性が低下するので、4条ずつに仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0038】
施肥ホッパ70の下部には、肥料を設定量ずつ供給する繰出装置71が1条ごとに設けられる。繰出装置71の下方には、肥料を移動させる搬送風が通過する通風ダクト72が左右方向に設けられる。繰出装置71の下方には、苗植付部4の苗植付位置の近傍に肥料を案内する施肥ホース73が設けられる。また、通風ダクト72の一側端部には、ブロア用電動モータ76により作動して搬送風を発生するブロア74が設けられる。
【0039】
図1および図2に示すように、苗植付部4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと、左右2つずつのサイドフロート62L、62Rとが、軸まわりに回動自在に設けられる。なお、センターフロート62Cおよび左右のサイドフロート62L、62Rを総称してフロート62という場合がある。
【0040】
また、苗植付部4の下方において、フロート62よりも前側には、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63が設けられる。など、整地ロータ63には、左右他側の後輪ギヤケース11aからロータ伝動シャフト63aを介して駆動力が伝達される。
【0041】
また、図1に示すように、苗植付部4の左右両側には、左右いずれか一方が圃場面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝を形成する線引きマーカ65がそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカ65は、左右一側が接地すると他側が上方に離間し、旋回時に苗植付部4を上昇させたときには左右両側共に上方に離間し、旋回後に苗植付部4が下降すると、左右一側が上方に離間して他側が接地する。
【0042】
また、図1および図2に示すように、走行車体2の左右中央部であり、かつ、ボンネット39の前方には、上下方向に長いセンターマスコット66が設けられる。センターマスコット66を左右の線引きマーカ65により圃場に形成された溝に合わせることにより、直前の作業条の作業位置に合わせた走行が可能になり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0043】
なお、圃場の土質によっては、左右の線引きマーカ65により形成されたガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカ65よりも前側に設けられた左右のサイドマーカ19を用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカ19を外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方にサイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
【0044】
また、図1に示すように、苗移植機1は、位置取得装置150を備える。位置取得装置150は、苗移植機1の現在の位置、および方位を取得する。位置取得装置150は、例えば、方位センサや、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位手段を含む。位置取得装置150は、複数の装置によって構成されてもよい。位置取得装置150は、カメラや、超音波センサを含んでもよく、圃場における旋回位置を取得し、旋回位置までの距離を検出してもよい。
【0045】
例えば、位置取得装置150は、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の現在の位置情報、および方位情報を作成し、現在の位置、および方位を取得する。位置取得装置150は、たとえば、取付ステー59に取り付けられ、走行車体2の上方に配置される。
【0046】
位置取得装置150による位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置取得装置150内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)100aに格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット39に収容された旋回制御用ECU100bに格納される。なお、直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、後述する制御装置100(図3参照)に含まれる。直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、同一のECUに格納されてもよい。
【0047】
(苗移植機の制御系)
次に、図3を参照して苗移植機1の制御系について説明する。図3は、苗移植機1の制御装置100を中心とした制御系を示すブロック図である。苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御装置(以下、コントローラという。)100を備える。
【0048】
コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ100は、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0049】
コントローラ100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ80、油圧制御弁81、82、植付クラッチ作動ソレノイド83、サイドクラッチ作動ソレノイド84、HST14モータ85、線引きマーカ昇降モータ87、ステアリングモータ95、デフロック切替モータ96などが接続される。
【0050】
スロットルモータ80は、エンジン30の吸気量を調節するスロットルを作動させることにより、エンジン30の出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁81は、昇降シリンダ25の伸縮動作を制御する。油圧制御弁82は、パワーステアリング機構88を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド83は、植付クラッチ27aを作動させる。
【0051】
サイドクラッチ作動ソレノイド84は、後輪11(図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ44を作動させる。なお、サイドクラッチ44は、左右の後輪11にそれぞれ設けられ、サイドクラッチ作動ソレノイド84は、各サイドクラッチ44に対応して2つ設けられる。
【0052】
HST14モータ85は、HST14のトラニオンの回動角度を変更することで、HST14の斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ95は、自動旋回制御が行われる場合に、前輪10(図1参照)の舵角(操舵量)を調整するステアリング装置であるハンドル35を駆動するモータである。ステアリングモータ95は、ハンドル35を回動させる。線引きマーカ昇降モータ87は、線引きマーカ65を昇降させる。
【0053】
デフロック切替モータ96は、左右の走行車輪、具体的には、左右の前輪10を同じ回転速度で回転させるデファレンシャルロック機構97(以下、デフロック機構と称する。)の作動、および作動停止を切り替えるモータである。デフロック機構97が入り状態になることで、左右の走行車輪が同じ回転速度で回転する。
【0054】
コントローラ100には、検出装置である、回転数センサ90、操舵量センサ91、傾斜センサ92などが接続される。回転数センサ90は、左右の後輪11に対応して2つ設けられ、左右の後輪11の回転数をそれぞれ検出する。なお、回転数センサ90は、左右の前輪10の回転数を検出してもよい。
【0055】
操舵量センサ91は、ステアリング装置であるハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の舵角を検出する。操舵量センサ91は、例えば、ピットマンアームに連結する軸上に設けられる。なお、操舵量は、ハンドル35が予め設定された直進位置になった場合の値を基準値として、左右方向それぞれに検出される。傾斜センサ92は、走行車体2の傾きである傾斜角を検出する。
【0056】
また、コントローラ100には、操作信号として、変速操作レバー36、副変速操作レバー37、自律走行切替スイッチ46、植付部昇降スイッチ47、自動直進切替スイッチ45、自動旋回切替スイッチ48、線引きマーカ自動昇降スイッチ49などから信号が入力される。
【0057】
自律走行切替スイッチ46は、自律走行を実行するか否かを切り替えるスイッチである。具体的には、自律走行切替スイッチ46は、走行モードを自律走行モード、または手動走行モードに切り替えるスイッチである。例えば、自律走行切替スイッチ46が「ON」である場合、走行モードが自律走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「OFF」である場合、走行モードが手動走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「ON」にされると、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48が「ON」になる。なお、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48は、いったん「ON」になった場合であっても、操縦者の操作によって「OFF」に変更可能である。
【0058】
植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4を昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。植付部昇降スイッチ47は、「上昇」、および「降下」位置に変更される。
【0059】
植付部昇降スイッチ47が「上昇」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の非作業位置まで上昇し、苗植付装置55が停止する非作業状態となる。植付部昇降スイッチ47が「降下」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の作業位置まで降下し、苗植付装置55が作動する作業状態となる。すなわち、植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチである。なお、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチが別途設けられてもよい。
【0060】
線引きマーカ自動昇降スイッチ49は、ハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「ON」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御が実行される。一方、線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「OFF」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御は、実行されない。
【0061】
自動直進切替スイッチ45は、自動直進の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動直進切替スイッチ45が「ON」にされている場合には、後述する走行アシスト機能が有効となり、自動直進を実行可能となる。自動直進切替スイッチ45が「OFF」にされている場合には、走行アシスト機能が無効となり、自動直進を実行不能となる。
【0062】
自動旋回切替スイッチ48は、自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされている場合には、後述する旋回アシスト機能が有効となり、自動旋回を実行可能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、旋回アシスト機能が無効となり、自動旋回を実行不能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、自動旋回を実行する条件が成立している場合であっても、自動旋回は実行されない。
【0063】
また、コントローラ100には、位置取得装置150から走行車体2の現在の位置情報、走行車体2の方位などが入力される。コントローラ100は、走行車体2が自動で走行しながら作業を行う自律走行モードを実行する。
【0064】
また、コントローラ100には、遠隔操作装置170(以下、「リモコン」と称する。)から各種情報が入力される。例えば、コントローラ100は、受信機180(図1参照)を介して、リモコン170から各種情報が入力される。受信機180は、例えば、取付ステー59(図1参照)に取り付けられ、走行車体2の前方側の上方に配置される。なお、受信機180は、複数設けられてもよい。
【0065】
リモコン170は、苗移植機1を遠隔操作可能である。リモコン170は、スマートフォンなどの端末装置であってもよい。リモコン170は、作業者の操作に応じた制御信号を送信する。リモコン170は、Wi-fi(登録商標)や、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などの近距離無線通信によってコントローラ100と通信可能に接続されるが、これに限られず、近距離無線通信に加えて、あるいは代えて通信ネットワークなどを介して通信可能に接続されてもよい。
【0066】
(自律走行モード)
ここで、苗移植機1による、圃場における自律走行(自動走行)について説明する。コントローラ100(図3参照)は、前輪10(図1参照)の操舵量をフィードバックしながらステアリングモータ95(図3参照)を制御してハンドル35(図3参照)を操作する自律走行モードを有する。自律走行モードは、自動直進モードと、自動旋回モードとを含む。
【0067】
自動直進モードは、走行車体2が予め設定された直進経路に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、直進するモードである。自動直進モードでは、苗植付部4によって圃場に苗を植え付けつつ、走行車体2が操縦者の操作によらず直進する。すなわち、走行車体2を自動直進させつつ、圃場に苗を移植する走行アシスト機能が有効となり、走行アシスト機能が実行される。
【0068】
自動旋回モードは、走行車体2が所定の旋回位置に到達すると、苗植付部4による苗の植え付けを停止し、走行車体2が予め設定された理想方位に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、旋回するモードである。所定の旋回位置は、例えば、作業を行った工程の走行距離や、作業を行った工程に関する位置情報などによって設定される。
【0069】
自動旋回モードでは、例えば、苗植付部4が上昇し、非作業状態にされ、走行車体2が操縦者の操作によらず旋回する。すなわち、苗植付部4による苗の植え付けを行わずに、走行車体2を旋回させる旋回アシスト機能が有効となり、旋回アシスト機能が実行される。
【0070】
次に、自動旋回モードにおける旋回方法について説明する。自動旋回モードでは、前輪10の舵角が、所定舵角に対して補正された値となるように、ハンドル35が駆動される。所定舵角は、予め設定された量である。所定舵角に対する補正方法について、以下説明する。
【0071】
自動旋回モードでは、図4に示すように、旋回開始地点から、走行車体2が、所定の旋回中心から、所定の半径となる円弧(理想軌跡)上を走行するように、理想方位が設定される。所定の半径は、走行車体2の種類に応じて設定される。所定の半径は、例えば、植付作業条数に応じて設定される。図4は、自動旋回を説明する図である。なお、所定の半径は、操縦パネル38に設けられたダイヤルなどによって設定されてもよい。
【0072】
所定の旋回中心は、旋回開始地点と、走行車体2の直進経路情報、および所定の半径に基づいて設定される。具体的には、旋回開始地点から、直進経路に直交する方向の延びる仮想線上であり、旋回開始地点から所定の半径離れた箇所が、所定の旋回中心に設定される。
【0073】
また、旋回終了地点は、直進経路に直交する方向の延びる仮想線上であり、所定の旋回中心から所定の半径離れた地点に設けられる。また、次工程における直進経路は、旋回終了地点から延び、前工程の直進経路に平行な経路として設定される。
【0074】
次に、所定の旋回中心を原点とし、仮想線をx軸とするxy座標が設定される。そして、x軸方向における走行車体2の位置情報と、所定の旋回中心を原点とする円弧情報(所定の半径)とに基づいて、y軸方向における走行車体2の位置情報が算出される。
【0075】
例えば、走行車体2のx軸方向における位置が「c」である場合、式(1)を用いて、y軸方向における位置「d」が算出される。ここでは、所定の半径を「1200mm」とする。
【0076】
+d=1200・・・(1)
【0077】
走行車体2の位置(c、d)における理想方位は、位置(c、d)における円弧の接線方向である。そのため、位置(c、d)における理想方位αは、式(2)に示される。
【0078】
α=tan-1(d/c)・・・(2)
【0079】
走行車体2の実際の方位βは、位置取得装置150によって検出される。そのため、走行車体2の方位βと、理想方位αとの差aは、「a=α-β」として算出される。
【0080】
1度の舵角(ハンドル35の操舵量)に対する走行車体2の角速度変化が、実測により、例えば、0.04度/secである場合、舵角の補正量uは、「u=a/0.04」として算出される。1度の舵角(ハンドル35の操舵量)に対する走行車体2の角速度変化は、例えば、操縦パネル38に設けられたダイヤルなどによって設定されてもよい。
【0081】
自動旋回モードにおける前輪10の舵角は、所定舵角に、算出された補正量uを加算することで算出される。このような補正は、例えば、自動旋回を開始した直後から行われる。また、このような補正は、例えば、自動旋回が終了するまで実行される。すなわち、方位に基づく前輪10の舵角の補正は、次工程の直進制御に移行するまで実行される。上記補正は、コントローラ100によって実行される。
【0082】
理想方位が、円弧(理想軌跡)に対する接線方向に設定されることで、理想方位の算出が容易となる。そのため、例えば、演算速度が遅いコントローラ100によっても、理想方位を素早く算出することができる。従って、苗移植機1は、コストダウンできる。
【0083】
また、コントローラ100は、自動旋回時の舵角が、最大切れ角から、旋回内側のサイドクラッチ44が入り状態にならない範囲で、補正を実行する。
【0084】
なお、補正は、自動旋回によって所定の角度旋回した後に行われてもよい。所定の角度は、例えば90度である。例えば、旋回開始から90度旋回した後に、補正が開始される。これにより、補正が過剰に作用した場合に、走行車体2が畔に接触することを抑制することができる。
【0085】
また、コントローラ100は、自動旋回中に、上記補正を1回行われてもよく、複数回行われてもよい。コントローラ100は、上記補正の回数を設定可能であってもよい。これにより、例えば、圃場状態によって、ハンドル35や、走行車体2の追従性がわかるため、作業者は、補正間隔を、圃場状態に基づいて設定することができる。そのため、苗移植機1は、自動旋回時に精度良く旋回することができる。
【0086】
次に、実施形態に係る自動旋回処理について図5を参照し説明する。図5は、実施形態に係る自動旋回処理を説明するフローチャートである。
【0087】
コントローラ100は、走行車体2が旋回開始地点に到達したか否かを判定する(S100)。走行車体2が旋回開始地点に到達していない場合(S100:No)、コントローラ100は、今回の処理を終了する。
【0088】
走行車体2が旋回開始地点に到達した場合(S100:Yes)、コントローラ100は、理想方位を設定する(S101)。
【0089】
コントローラ100は、自動旋回を実行する(S102)。コントローラ100は、走行車体2の位置取得装置150によって検出される走行車体2の方位と、理想方位とのずれが補正された舵角となるように、前輪10の舵角を制御する。具体的には、コントローラ100は、前輪10の舵角が、補正された舵角となるように、ステアリングモータ95を制御する。
【0090】
コントローラ100は、走行車体2が、旋回終了地点に到達したか否かを判定する(S103)。走行車体2が旋回終了地点に到達していない場合(S103:No)、コントローラ100は、自動旋回を継続する(S102)。
【0091】
走行車体2が旋回終了地点に到達した場合(S103:Yes)、コントローラ100は、自動旋回を終了する(S104)。
【0092】
苗移植機1は、走行車体2と、苗植付部4と、位置取得装置150と、コントローラ100とを備える。苗植付部4は、走行車体2に設けられる。位置取得装置150は、走行車体2の方位を検出する。コントローラ100は、旋回時に、走行車体2の舵角を制御し、走行車体2を自動旋回させる。コントローラ100は、自動旋回時に、検出された走行車体2の方位と、旋回における理想方位とのずれを補正し、舵角を制御する。
【0093】
これにより、苗移植機1は、自動旋回時に精度良く旋回することができる。
【0094】
コントローラ100は、理想方位を、旋回開始時に設定する。これにより、コントローラ100は、旋回開始地点から始まる旋回を、理想方位に基づいて実行することができる。そのため、苗移植機1は、自動旋回時に精度良く旋回することができる。
【0095】
コントローラ100は、自動旋回時の舵角が、最大切れ角から、旋回内側のサイドクラッチ44が入り状態にならない範囲で、補正を実行する。
【0096】
これにより、苗移植機1は、ステアリングモータ95に過剰な負荷がかかることを抑制し、ステアリングモータ95の劣化を抑制することができる。また、苗移植機1は、自動旋回時に、舵角が補正されることで、サイドクラッチ44が入り状態になることを抑制し、自動旋回時に走行車体2の挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0097】
コントローラ100は、方位に基づく舵角の補正を、次工程の直進制御に移行するまで実行する。
【0098】
これにより、苗移植機1は、自動旋回による旋回を精度良く行うことができる。
【0099】
(変形例)
変形例に係る苗移植機1は、位置取得装置150によって検出された走行車体2の方位に基づいて、所定時間後の走行車体2の予測方位を予測し、予測方位と、理想方位とのずれを補正し、舵角を制御してもよい。所定時間は、予め設定された時間であり、例えば、1秒程度である。具体的には、変形例に係る苗移植機1は、予測方位を、検出された走行車体2の方位と、走行車体2の車速とに基づいて、予測方位を予測する。また、理想方位は、所定時間後の走行車体2における理想方位である。例えば、現在の走行車体2の位置が「(c、d)」であり、理想方位が「θ」であり、車速が「v」である場合、所定時間後の走行車体2の位置は、「(c+vcosθ、d+sinθ)」となる。予測方位は、「(c+vcosθ、d+sinθ)」における理想方位である。
【0100】
これにより、変形例に係る苗移植機1は、所定時間後の走行車体2と、所定時間後の理想方位とに基づいて、走行車体2の舵角を制御できる。すなわち、変形例に係る苗移植機1は、先読みした舵角に基づいて走行車体2を自動旋回できる。従って、変形例に係る苗移植機1は、走行車体2の自動旋回の精度を向上させることができる。
【0101】
変形例に係る苗移植機1は、図6に示すように、自動旋回における補正量を調整可能な調整ダイヤル200(調整部)を備えてもよい。調整ダイヤル200は、例えば、操縦パネル38に設けられる。図6は、変形例に係る苗移植機1の調整ダイヤル200を示す図である。
【0102】
変形例に係る苗移植機1は、走行車体2の方位が理想方位に対して、旋回外側を向いており、かつ走行車体2の方位と理想方位との差が所定値以上である場合、自動旋回を中止し、走行車体2を停止させてもよい。
【0103】
変形例に係る苗移植機1は、走行車体2の方位が理想方位に対して、旋回外側を向いており、かつ走行車体2の方位と理想方位との差が所定値以上である場合、自動旋回がずれていることをモニタ86に表示してもよい。
【0104】
これらにより、変形例に係る苗移植機1は、自動旋回中に、理想方位に対して、走行車体2が大回りで旋回することを抑制し、例えば、所望される旋回終了地点に対して、走行車体2が左右方向にずれることを抑制することができる。
【0105】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回時に、例えば、90度旋回した後に、所定距離直進し、さらに90度旋回してもよい。変形例に係る苗移植機1は、旋回時に、上記する方位に基づいた舵角の補正を実行する。
【0106】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回終了時に、次工程における直進制御の目標線に対する走行車体2のずれを算出してもよい。
【0107】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回中に、次工程における直進制御の目標線に対する走行車体2のずれを予測してもよい。例えば、変形例に係る苗移植機1は、スリップが無い場合における、次工程における直進制御の目標線に対する走行車体2のずれを予測してもよい。変形例に係る苗移植機1は、理想方位と、走行車体2の方位を比較し、方位の差があった箇所をスリップが発生した箇所として判定してもよい。
【0108】
変形例に係る苗移植機1は、舵角と、位置取得装置150から取得した車速によって、理想的な角速度を算出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、ハンドル35の角度と、車速とによって、旋回中にハンドル35を戻し始めてから旋回終了までに変化する走行車体2の方位を算出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、理想的な角速度の積算によって、機体方位を算出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、理想的な角速度、および方位を、自動旋回開始時から計測してもよい。
【0109】
変形例に係る苗移植機1は、位置取得装置150から取得した方位が、一定の閾値を超えるたびに、理想的な方位との差を記録してもよい。変形例に係る苗移植機1は、理想的な方位との差を、自動旋回中の決められた複数箇所で算出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、複数箇所で算出された理想的な方位との差に基づいて、旋回終了地点における走行車体2の左右方向の位置ずれを予測してもよい。
【0110】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回を開始してから90度旋回した後から、旋回終了地点までの間に、理想的な方位との差の記録を終了し、得られたデータに基づいて、旋回終了地点における走行車体2の左右方向の位置ずれを予測してもよい。
【0111】
変形例に係る苗移植機1は、旋回終了地点における走行車体2の左右方向の位置ずれを予測する際に、各方位の差のデータと、旋回終了地点の1つ前の方位の差との差分を用いてもよい。
【0112】
変形例に係る苗移植機1は、理想方位との差の記録を、前工程における直進工程の目標線と、走行車体2の方位との角度が旋回方向に正となる方位から開始してもよい。
【0113】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回中に、旋回終了地点における走行車体2の左右方向の位置ずれを算出し、算出した位置ずれから旋回終了地点における走行車体2の方位を算出する。そして、変形例に係る苗移植機1は、車速と、舵角からハンドル35を戻し始めるタイミングを決定してもよい。これにより、変形例に係る苗移植機1は、旋回終了地点において、走行車体2の方位を理想方位にすることができる。
【0114】
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回が終了した場合に、旋回終了地点における、次工程の直線制御が行われる直線との距離、および方位の関係を算出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、算出した関係に基づいて、次回の自動旋回時に理想方位を算出してもよい。
【0115】
変形例に係る苗移植機1は、図7に示すように、メインフレーム15に、ストッパ210と、スプリング211と、リミットセンサ212とが設けられてもよい。具体的には、ストッパ210、スプリング211、およびリミットセンサ212は、メインフレーム15の上面に設けられる。ストッパ210、スプリング211、およびリミットセンサ212は、メインフレーム15とフロアステップ33との間に設けられる。図7は、変形例に係る苗移植機1の一部を模式的に示す側面図である。
【0116】
変形例に係る苗移植機1において、フロアステップ33は、作業者の昇降に応じて回動可能である。例えば、フロアステップ33は、後端を中心に僅かに回動可能となるように、メインフレーム15に設けられる。ストッパ210は、フロアステップ33に作業者が乗った場合、すなわち、作業者が苗移植機1に乗車した場合に、フロアステップ33に当接し、フロアステップ33を支持する。
【0117】
スプリング211は、フロアステップ33に搭乗者が乗っていない場合に、フロアステップ33が、リミットセンサ212から離間するように、フロアステップ33を持ち上げる。
【0118】
リミットセンサ212は、フロアステップ33に作業者が乗った場合に、「ON」になり、フロアステップ33に作業者が乗っていない場合に、「OFF」となる。すなわち、リミットセンサ212は、作業者の昇降を検知する。
【0119】
変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ212が「ON」の場合、リモコン170からの制御出力を制限する。これにより、苗移植機1に作業者が乗車して作業を行っている場合に、リモコン170による苗移植機1の操作を制限する。例えば、リモコン170は、HST14のオフ側の出力のみを実行できる。そのため、苗移植機1に乗車して作業を行っている場合に、苗移植機1が、作業者の意図しない動きを実行することを抑制し、作業者の安全性を向上させることができる。
【0120】
変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ212が「ON」の場合、リモコン170からの制御出力を禁止してもよい。また、変形例に係る苗移植機1は、加速度情報に基づいて、リミットセンサ212が「ON」の場合、リモコン170からの制御出力を制限してもよい。加速度情報は、位置取得装置150によって得られてもよく、加速度センサなどから得られてもよい。
【0121】
変形例に係る苗移植機1は、図8に示すように、エンジンカバー30aに、ストッパ220と、スプリング221と、リミットセンサ222とが設けられてもよい。具体的には、ストッパ220、スプリング221、およびリミットセンサ222は、エンジンカバー30aの上面に設けられる。ストッパ220、スプリング221、およびリミットセンサ222は、エンジンカバー30aと操縦席41との間に設けられる。図8は、変形例に係る苗移植機1の一部を模式的に示す側面図である。
【0122】
変形例に係る苗移植機1では、操縦席41は、作業者の着座の有無に応じて回動可能である。例えば、操縦席41は、前端を中心に僅かに回動可能となるように、エンジンカバー30aに設けられる。
【0123】
リミットセンサ222は、操縦席41への着座を検出する。リミットセンサ222は、操縦席41に作業者が着座すると「ON」になり、操縦席41から作業者が離席すると「OFF」になる。なお、スプリング221は、操縦席41の緩衝装置としても機能する。
【0124】
変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ212、およびリミットセンサ222を設けてもよい。すなわち、変形例に係る苗移植機1は、作業者の乗車、および着座を検出してもよい。変形例に係る苗移植機1は、各リミットセンサ212、222における検出結果に基づいて、自律走行における制御を行う。
【0125】
例えば、変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ222が「OFF」であり、リミットセンサ212が「ON」である場合、作業者が離席して、補給作業を行っていると判定する。この場合、変形例に係る苗移植機1は、自律走行中の加速、急減速、および旋回を行わない。変形例に係る苗移植機1は、旋回の必要がある場合には、旋回よりも手前でゆっくり減速し、停車する。
【0126】
また、変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ212が「OFF」であり、リミットセンサ222が「OFF」である場合、リモコン170からの制御出力を禁止してもよい。変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ222が「ON」であり、リミットセンサ212が「ON」である場合、リモコン170は、HST14のオフ側の出力のみを実行できてもよい。
【0127】
変形例に係る苗移植機1は、リミットセンサ212が「OFF」であり、リミットセンサ222が「ON」である場合、モニタ86にエラー表示をしてもよい。
【0128】
変形例に係る苗移植機1は、苗の植え付け中に、作業者が減肥ボタンを操作することによって、減肥可能である。変形例に係る苗移植機1は、苗の植え付け作業開始から、作業終了までの間に、減肥を行った箇所の位置情報と、減肥量とをマップ化してもよい。なお、マップ化は、端末装置によって行われてもよい。変形例に係る苗移植機1は、減肥を行った箇所の位置情報と、減肥率とをマップ化してもよい。
【0129】
これらにより、作業者は、例えば、次回以降の作業において、減肥がされた箇所や、減肥率の計画を容易に確認できる。
【0130】
変形例に係る苗移植機1は、圃場毎に減肥を行った箇所の位置情報と、減肥量とをマップ化してもよい。また、変形例に係る苗移植機1は、指定される期間内で集計を行ってもよい。
【0131】
変形例に係る苗移植機1は、圃場毎に減肥を行った箇所の位置情報と、減肥量とのマップにおいて、マップの外周表示を、苗移植機1が移動することで作成される圃場形状の最外周のみを表示してもよい。
【0132】
変形例に係る苗移植機1は、例えば、営農支援ソフトなどによって作成された減肥マップに基づいて、モニタ86に減肥指示を表示してもよい。例えば、営農支援ソフトを有する装置から端末装置に減肥マップが送信され、端末装置から苗移植機1に送信される。苗移植機1は、現在の走行車体2の位置情報と、減肥マップとに基づいて、減肥指示をモニタ86に出力する。作業者は、モニタ86に表示された減肥指示に基づいて、減肥を実行する。なお、苗移植機1は、現在の走行車体2の位置情報と、減肥マップとに基づいて、減肥を実行してもよい。
【0133】
変形例に係る苗移植機1は、施肥ホッパ70の左右方向の端に、シートを設けてもよい。シートは、例えば、ポリ塩化ビニルである。シートは、施肥ホッパ70の本体部と、施肥ホッパ70の蓋とに取り付けられる。シートは施肥ホッパ70の本体部の内側、および施肥ホッパ70の蓋の内側に取り付けられる。シートは施肥ホッパ70の内側に折りたたむことができる。シートは、肥料の被ばくを抑制する。具体的には、シートは、肥料が空気にさらされることを抑制する。これにより、肥料の吸湿が抑制される。また、シートは、施肥ホッパ70から肥料が拡散することを抑制する。
【0134】
なお、シートは、施肥ホッパ70の内側を囲むように設けられ、施肥ホッパ70の蓋が閉じられる場合、内側に折りたたまれるように設けられてもよい。
【0135】
変形例に係る苗移植機1は、施肥ホッパ70内に空気を送り、施肥ホッパ70内の肥料を除湿してもよい。例えば、ブロア74の吸気口が施肥ホッパ70に接続される。ブロア74が作動することによって、施肥ホッパ70内の空気が吸引され、新たな空気が施肥ホッパ70内に送られる。施肥ホッパ70とブロア74とを接続するホースには、フィルターが設けられ、フィルターによって肥料粉、および水分を取り除いてもよい。
【0136】
なお、施肥ホッパ70の外部からブロア74に空気が吸引され、ブロア74によって施肥を移動させる搬送風の一部が、施肥ホッパ70内に送られてもよい。ブロア74から施肥ホッパ70に分岐する経路は、蛇腹によって形成されてもよい。
【0137】
変形例に係る苗移植機1は、位置取得装置150が取り付けられる取付ステー59に雨除け、および日よけを設けてもよい。雨除け、および日よけは、例えば、ターポリンシートである。雨除け、および日よけは、位置取得装置150よりも下方に設けられる。
【0138】
雨除け、および日よけは、位置取得装置150よりも上方に設けられてもよい。例えば、取付ステー59に雨除け、および日よけの芯部分が取り付けられ、雨除け、および日よけの本体部は、位置取得装置150を覆うように設けられる。これにより、雨除け、および日よけによって、位置取得装置150が保護される。
【0139】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 作業車両(苗移植機)
2 走行車体
4 苗植付部
100 制御装置(コントローラ)
150 位置取得装置(方位検出部)
200 調整ダイヤル(調整部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8