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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】鋼管部材および建築物の沈下矯正方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/48 20060101AFI20231129BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
E02D27/48
E02D5/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021129148
(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公開番号】P2023023541
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】松谷 裕治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-322166(JP,A)
【文献】特開2011-052396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0270827(US,A1)
【文献】実開昭50-006103(JP,U)
【文献】登録実用新案第3016494(JP,U)
【文献】特開2016-089329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/48
E02D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の鋼管を連結する鋼管部材であって、
部材本体と、ジャッキを支持する受台と、を備え、
前記部材本体は、鋼管杭と同径の鋼管によって構成され、
前記部材本体の内周面には、裏当てリングを止めるストッパが設けられ、
前記受台は、前記部材本体の側面に直交する面を有する受板部を有し、前記受板部は、前記部材本体の前記側面から突出するように設けられる、
鋼管部材。
【請求項2】
鋼管部材を含む鋼管杭を地盤に設ける建築物の沈下矯正方法であって、
前記鋼管部材は、前記鋼管杭と同径の鋼管によって構成される部材本体と、前記部材本体に設けられる受台とを有し、
前記鋼管部材は、前記鋼管部材の内周面に裏当てリングを止めるストッパを有し、
前記建築物の基礎の下において前記鋼管杭を押し込む場所に穴を設ける第1工程と、
鋼管を連結しながら最初に押し込んだ前記鋼管が支持層に達するまで前記鋼管を押し込む第2工程と、
前記第2工程において最後に連結した前記鋼管に前記鋼管部材を連結する第3工程と、
前記鋼管部材にジャッキを載せて前記建築物の傾きを調整する第4工程と、
前記建築物の傾きの調整後、前記鋼管内に前記裏当てリングを配置した状態で、前記部材本体と前記基礎との間に前記鋼管部材と前記基礎との間の距離にあう前記鋼管を配置し、前記ストッパまで前記裏当てリングを落下させて前記裏当てリングを所定位置に配置し、前記鋼管を前記鋼管部材の前記部材本体に連結する第5工程と、を含む、
建築物の沈下矯正方法。
【請求項3】
前記第5工程において、前記部材本体の上端と、前記部材本体と前記基礎との間に配置される前記鋼管の下端との間に隙間を設けた状態で、前記部材本体の上端と前記鋼管の下端とを溶接する
請求項に記載の建築物の沈下矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管部材および建築物の沈下矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の不同沈下に伴う建築物の傾きを矯正する技術が知られている。
特許文献1には、次の事項が開示されている。建築物の基礎の所定部位の下に穴を掘り、穴の底面に鋼管杭を立てて、油圧ジャッキによって鋼管杭を地盤に圧入する。この作業を最初の鋼管杭が支持層に達するまで新たな鋼管杭を順次繋ぎながら繰り返す。基礎の複数の所定部位において杭が打ち終わった後、鋼管杭の上端に受け台を溶接し、受け台の上に油圧ジャッキを載せて、油圧ジャッキによって建築物を水平にする。この後、油圧ジャッキをジャーナルジャッキに交換する。地盤の養生後、ジャーナルジャッキによって建築物の傾きの調整を行う。そして、受け台から基礎下面までの距離に合う長さの管状のスペーサをジャーナルジャッキの傍に取り付けて受け台の上面に溶接し、ジャーナルジャッキを撤去する。その後、管状のスペーサのまわりをモルタル等で固定し、穴を土砂で埋め戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-27829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物に関して従来の矯正方法の場合、基礎の傾きの矯正後、建築物は、複数の鋼管によって構成される杭と、杭の上端に設けられる受け台と、受け台と基礎の下面との間に配置される支持部材とによって支持される。支持部材は、受け台に固定されているが、杭と直接に連結されていない。このため、従来の矯正方法による杭の強度は、基礎下において鋼管が連続する杭の強度に比べて低くなる虞がある。このような観点で、杭の構造および建築物の沈下矯正方法に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する鋼管部材は、2個の鋼管を連結する鋼管部材であって、部材本体と、ジャッキを支持する受台と、を備え、前記部材本体は、鋼管杭と同径の鋼管によって構成され、前記受台は、前記部材本体の側面に直交する面を有する受板部を有し、前記受板部は、前記部材本体の前記側面から突出するように設けられる。
【0006】
この構成によれば、地盤に埋まった鋼管に鋼管部材を連結した状態で、鋼管部材の受台にジャッキを載せることができる。さらに、鋼管部材の部材本体に鋼管を連結することができる。このように、部材本体に鋼管を連結することができるため、鋼管部材と鋼管との間に板部材が介在する場合に比べて、鋼管杭の強度を向上できる。
【0007】
(2)上記(1)の鋼管部材において、前記部材本体の内周面には、裏当てリングを止めるストッパが設けられる。この構成によれば、部材本体に対して裏当てリングを所定の位置に配置できる。
【0008】
(3)上記課題を解決する建築物の沈下矯正方法は、鋼管部材を含む鋼管杭を地盤に設ける建築物の沈下矯正方法であって、前記鋼管部材は、前記鋼管杭と同径の鋼管によって構成される部材本体と、前記部材本体に設けられる受台とを有し、前記建築物の基礎の下において前記鋼管杭を押し込む場所に穴を設ける第1工程と、鋼管を連結しながら最初に押し込んだ前記鋼管が支持層に達するまで前記鋼管を押し込む第2工程と、前記第2工程において最後に連結した前記鋼管に前記鋼管部材を連結する第3工程と、前記鋼管部材にジャッキを載せて前記建築物の傾きを調整する第4工程と、前記建築物の傾きの調整後、前記鋼管部材と前記基礎との間の距離にあう前記鋼管を前記鋼管部材の前記部材本体に連結する第5工程と、を含む。
【0009】
この構成によれば、上下方向に互いに連結された鋼管を有する鋼管杭によって、基礎を支持できる。これによって、建築物の荷重が直接に支持層に伝達され易くなる。
【0010】
(4)上記建築物の沈下矯正方法において、前記鋼管部材は、前記鋼管部材の内周面に裏当てリングを止めるストッパを有し、前記第5工程において、前記鋼管部材と前記基礎との間の距離にあう前記鋼管を前記鋼管部材に連結する際、前記鋼管内に前記裏当てリングを配置した状態で、前記部材本体と前記基礎との間に前記鋼管を配置し、前記ストッパまで前記裏当てリングを落下させて前記裏当てリングを所定位置に配置する。この構成によれば、所定位置に配置された裏当てリングを介して、鋼管と鋼管部材とを溶接によって互いに連結できる。
【0011】
(5)上記建築物の沈下矯正方法において、前記第5工程において、前記部材本体の上端と、前記部材本体と前記基礎との間に配置される前記鋼管の下端との間に隙間を設けた状態で、前記部材本体の上端と前記鋼管の下端とを溶接する。この構成によれば、鋼管と鋼管部材とを強固に連結できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の鋼管部材および建築物の沈下矯正方法によれば、鋼管杭の強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鋼管部材の斜視図。
図2】基礎の下に穴が設けられた状態の地盤の断面図。
図3】油圧ジャッキによって鋼管が押し込まれる状態の地盤の断面図。
図4】新たな鋼管が配置される状態の地盤の断面図。
図5】鋼管に鋼管部材が連結された状態の地盤の断面図。
図6】鋼管部材に調整ジャッキが載せられた状態の地盤の断面図。
図7】鋼管部材に鋼管が配置された状態の鋼管部材付近の拡大図。
図8】鋼管部材に鋼管が配置されて裏当てリングが所定位置に配置された状態の鋼管部材付近の拡大図。
図9】穴が埋め戻された状態の地盤の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<鋼管部材および鋼管杭>
図1を参照して、本実施形態の鋼管部材20を説明する。
建築物3は、地盤1に設けられる基礎2の上に建てられる。地盤1が軟弱な場合、建築物3の重みによって地盤1の不同沈下が生じ、建築物3が傾く。このような場合、建築物3の傾きを矯正する目的で鋼管杭10が地盤1に埋められる。建築物3は、鋼管杭10によって支持される。一例では、基礎2の下に、複数の鋼管杭10が埋められ、複数の鋼管杭10によって建築物3が支持される。鋼管杭10は、支持層に届くように構成される。鋼管部材20は、鋼管杭10の構成要素の1つである。
【0015】
鋼管杭10は、基礎2の下に設けられる穴4に入るように、複数の要素に分割される。具体的には、鋼管杭10は、複数の鋼管11と鋼管部材20とを備える。鋼管11は、円筒形に構成される。1または複数の鋼管11と、鋼管部材20と、鋼管部材20の上に配置される鋼管11(以下、鋼管11Aともいう。)とが連結されることによって、鋼管杭10が構成される。鋼管部材20は、鋼管杭10において上から2番目に配置される。鋼管11は、1つずつ地盤1に押し込まれる。地盤1に押し込まれた鋼管11に他の鋼管11が継ぎ足される。鋼管11が継ぎ足された杭(すなわち、複数の鋼管11からなる杭)は、更に地盤1に押し込まれることによって、支持層に向かって深くに進行する。
【0016】
鋼管部材20は、2個の鋼管11を連結する。具体的には、鋼管部材20は、基礎2の下に配置される鋼管11Aと、地盤1に埋まった鋼管11のうちの最も上の鋼管11との間に配置されて、鋼管部材20を介して2個の鋼管11を連結する。鋼管部材20は、調整ジャッキ31を支持する。一例では、調整ジャッキ31として、サポートジャッキ40が用いられる。サポートジャッキ40は、筒体41と、筒体41に対して進退するボルト42とを有する(図7参照)。ボルト42にはナット43が係合する。ボルト42においてナット43が筒体41に接触する位置に配置されることによって、筒体41に対してボルト42の位置が固定される。
【0017】
図1に示されるように、鋼管部材20は、部材本体21と、ジャッキを支持する受台22と、を備える。部材本体21は、円筒形に構成される。部材本体21は、鋼管杭10の鋼管11と同径の鋼管によって構成される。
【0018】
受台22は、部材本体21の側面21Aに直交する面を有する受板部23を有する。受板部23は、部材本体21の側面21Aから突出するように設けられる。
一例では、部材本体21は、2個の受台22を有する。一方の受台22は、部材本体21に対して他方の受台22の反対側に設けられる。2個の受台22は、部材本体21に対して、部材本体21の中心線Cに関する径方向に延びる。受台22は、受板部23と、受板部23の下に間隔をあけて受板部23と平行に配置される下板部24と、受板部23と下板部24とを繋ぐ縦板部25と、斜交部26と、を備える。受板部23、下板部24、および縦板部25は、H型鋼等によって構成される。受板部23、下板部24、および縦板部25は、溶接によって部材本体21に接続される。斜交部26は、部材本体21の側面21Aおよび下板部24に対して斜めに設けられる。斜交部26は、部材本体21の側面21Aと下板部24の下面に溶接される。下板部24は、斜交部26によって支持される。
【0019】
受板部23は、部材本体21の上端21Bから所定距離を隔てたところに設けられる。これによって、鋼管部材20の上に配置される鋼管11Aと、鋼管部材20との連結が行い易くなる。一例では、鋼管11Aは、溶接によって、鋼管部材20に連結される。
【0020】
溶接によって鋼管11Aと鋼管部材20とが連結される場合に、裏当てリング36が用いられる(図8参照)。裏当てリング36は、鋼管部材20の上に配置される鋼管11Aと鋼管部材20とが連結された場合に、鋼管11Aと鋼管部材20との連結部分の内側に配置される。
【0021】
鋼管部材20において、部材本体21の内周面には、裏当てリング36を止めるストッパ27が設けられる。ストッパ27は、溶接によって部材本体21の内周面に設けられる。ストッパ27は次のように使用される。鋼管部材20の上に鋼管11Aを配置する前に予め鋼管11Aの内側に裏当てリング36が配置される。鋼管部材20の上に鋼管11Aを配置すると裏当てリング36が落ちる。ストッパ27は、鋼管11Aから落ちる裏当てリング36を受け止める(図8参照)。ストッパ27は、裏当てリング36がストッパ27によって支持された状態で裏当てリング36が鋼管11Aと部材本体21とに亘るように構成される。
【0022】
<建築物の沈下矯正方法>
図2図9を参照して、建築物3の沈下矯正方法を説明する。図2図4は、所定方向からみた地盤1および基礎2の断面図であり、図5図9は、図2図4における所定方向と90度異なる方向からみた地盤1および基礎2の断面図である。建築物3の沈下矯正方法は、地盤1の不同沈下によって建築物3に傾きが生じた場合に、建築物3の傾きを矯正する目的で用いられる方法である。建築物3の沈下矯正方法では、鋼管部材20を含む鋼管杭10を地盤1に設ける。鋼管部材20は、上記に示した構造を有する。
【0023】
建築物3を矯正する工程の前に、予め、建築物3の沈下量が測量される。建築物3の沈下量に基づいて、鋼管杭10を押し込む場所が決められる。一例では、基礎2の複数箇所それぞれの下に鋼管杭10が打ち込まれる。
【0024】
建築物3を矯正する工程は、少なくとも5つの工程を含む。
図2に示されるように、第1工程では、建築物3の基礎2の下において鋼管杭10を打ち込む場所に穴4を設ける。一例では、穴4の深さは、0.5m以上2m以下である。
【0025】
図3および図4に示されるように、第2工程では、鋼管11を連結しながら最初に押し込んだ鋼管11が支持層に達するまで鋼管11を押し込む。
具体的には、基礎2の下に設けた穴4の底面に鋼管11を立てる。次いで、鋼管11の上端と基礎2の下面との間に油圧ジャッキ30を配置し、油圧ジャッキ30の上端を基礎2の下面に付ける。油圧ジャッキ30のジャッキアップによって、建築物3の荷重を鋼管11に伝達して、鋼管11を地盤1に押し込む。鋼管11の上面が穴4の底面の近くに位置したとき、地盤1に埋まった鋼管11に新たな鋼管11を溶接によって連結する。そして、最初の鋼管11と同様の方法によって、鋼管11が連結されて長くなった杭を油圧ジャッキ30によって地盤1に押し込む。地盤1に押し込まれた鋼管11に新たな鋼管11を連結する連結作業を、最初の鋼管11が支持層に達するまで繰り返し行う。最初の鋼管11が支持層に達したか否かについては、油圧ジャッキ30によって鋼管11が地盤1に押し込まれるか否かによって判断する。油圧ジャッキ30のジャッキアップによって基礎2が持ち上がるとき、最初の鋼管11が支持層に達したと判断する。
【0026】
図5に示されるように、第3工程では、第2工程において最後に連結した鋼管11に鋼管部材20を連結する。具体的には、鋼管部材20の受台22が基礎2の下に位置するように、鋼管部材20の部材本体21を鋼管11に連結する。このとき、鋼管部材20の部材本体21の上に油圧ジャッキ30を載せて、建築物3の傾きが水平になるようにジャッキアップを行ってもよい。鋼管部材20の部材本体21と鋼管11との連結は、鋼管11同士の連結と同様であり、溶接によって行われる。
【0027】
第4工程では、鋼管部材20上に設置された油圧ジャッキ30によって建築物3の傾きを調整する。ジャッキアップ後に、2個の受台22それぞれにおいて、受台22の受板部23と基礎2の下面との間に調整ジャッキ31を配置する。そして、調整ジャッキ31のロッドを鉄板35を介して基礎2の下面に付ける。調整ジャッキ31としてサポートジャッキ40が使用される。
【0028】
図6に示されるように、調整ジャッキ31の配置後、油圧ジャッキ30は撤去される。その後、調整ジャッキ31によって基礎2が支持された状態で、暫くの期間、地盤1が養生される。鋼管杭10は、養生期間に支持層に食い込むことによって安定する。養生期間後、建築物3の傾きを調整する。具体的には、調整ジャッキ31のジャッキアップまたはジャッキダウンによって建築物3の傾きを微調整する。
【0029】
図7に示されるように、第5工程では、建築物3の傾きの調整後、鋼管部材20と基礎2との間の距離にあう鋼管11Aを、鋼管部材20と基礎2との間に配置し、鋼管11Aを鋼管部材20の部材本体21に連結する。鋼管11Aの長さは、鋼管部材20と基礎2との間の距離よりも若干短い。鋼管部材20と基礎2との間の距離にあう鋼管11Aは、所定の長さの鋼管11を切断することによって作成される。
【0030】
鋼管11Aを鋼管部材20に連結する際、鋼管11A内に裏当てリング36を配置する。そして、鋼管11A内に裏当てリング36を配置した状態で、鋼管部材20の部材本体21と基礎2との間に鋼管11Aを配置する。鋼管11Aの中心と部材本体21の中心とが合うと、ストッパ27の位置まで裏当てリング36が落下し、裏当てリング36はストッパ27によって受け止められる。このようにして、裏当てリング36は、鋼管部材20の部材本体21および鋼管11Aに対して所定位置に配置される。具体的には、裏当てリング36は、部材本体21および鋼管11Aに亘るように配置される。
【0031】
次に、図8に示されるように、鋼管11Aの上端を基礎2の下面に接触させる。そうすると、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと、鋼管11Aの下端11Bとの間に数mm~10mm程度の隙間が生じる。鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと、鋼管11Aの下端11Bとの間に隙間が設けられる状態が維持されるように、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと鋼管11Aの下端11Bとの間には楔またはスペーサ37が配置される。そして、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと、鋼管11Aの下端11Bとの間に隙間を設けた状態で、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと鋼管11Aの下端11Bとを溶接する。この後、調整ジャッキ31を取り外しても良い。
【0032】
図9に示されるように、調整ジャッキ31を取り外した後、基礎2において鋼管杭10が接触する部分をコンクリート7等で固める。例えば、基礎2の下部と、基礎2の下に配置される鋼管11Aとの周りに型枠8を設置し、型枠8内にコンクリート7等を充填し、コンクリート7等を硬化させる。この後、穴4を土もしくは土嚢6によって埋め戻す。
【0033】
本実施形態の作用を説明する。
鋼管部材20の部材本体21は、鋼管11と同じ構造を有する。さらに、鋼管部材20は、鋼管部材20の下に配置される鋼管11と、鋼管部材20の上に配置される鋼管11Aとを連結する。さらに、鋼管部材20は受台22を備える。このため、地盤1に埋まった鋼管11に鋼管部材20を設けて、鋼管部材20に載せた油圧ジャッキ30で建築物3の傾きを調整した後、鋼管部材20と基礎2との間に鋼管11Aを配置して、鋼管11Aと鋼管部材20とを連結できる。鋼管部材20の部材本体21は、鋼管11と同じ構造を有する。このため、鋼管杭10は、同じ構造の鋼管11が連結された1本の構造体になる。この構造によって、建築物3の荷重が直接に支持層に伝達され易くなる。また、次の効果もある。従来の鋼管杭の構造では、連続していなかったため鋼管杭10の支持力の算定は複雑であった。しかし、本実施形態の鋼管杭10の構造では、1本の連続した杭として、鋼管杭10の支持力の算定ができる。したがって、本実施形態の鋼管杭10では、支持力の算定が容易になるというメリットがある。
【0034】
本実施形態の効果を説明する。
(1)鋼管部材20は、部材本体21と、調整ジャッキ31を支持する受台22と、を備える。部材本体21は、鋼管杭10の鋼管11と同径の鋼管によって構成される。受台22は、部材本体21の側面21Aに直交する面を有する受板部23を有する。受板部23は、部材本体21の側面21Aから突出するように設けられる。
【0035】
この構成によれば、地盤1に埋まった鋼管11に鋼管部材20を連結した状態で、鋼管部材20の受台22にジャッキを載せることができる。さらに、鋼管部材20の部材本体21に鋼管11Aを連結することができる。このように、部材本体21に鋼管11Aを連結することができるため、鋼管部材20と鋼管11Aとの間に板部材が介在する場合に比べて、鋼管杭10の強度を向上できる。
【0036】
(2)部材本体21の内周面には、裏当てリング36を止めるストッパ27が設けられる。この構成によれば、部材本体21に対して裏当てリング36を所定の位置に配置できる。
【0037】
(3)建築物3の沈下矯正方法は、少なくとも、第4工程と、第5工程とを含む。第4工程は、鋼管部材20の上に油圧ジャッキ30を載せて建築物3の傾きを調整する。その後、受台22に調整ジャッキ31を載せ、建築物3を支持する。第5工程は、建築物3の傾きの調整後、鋼管部材20と基礎2との間の距離にあう鋼管11Aを入れて、鋼管11Aを鋼管部材20の部材本体21に連結する。部材本体21は、鋼管杭10の鋼管11と同径の鋼管によって構成される。
【0038】
この構成によれば、上下方向に互いに連結された鋼管11を有する鋼管杭10によって、基礎2を支持できる。これによって、建築物3の荷重が直接に支持層に伝達され易くなる。
【0039】
(4)第5工程において、鋼管11A内に裏当てリング36を配置した状態で、部材本体21と基礎2との間に鋼管11Aを配置し、ストッパ27まで裏当てリング36を落下させて裏当てリング36を所定位置に配置する。この構成によれば、所定位置に配置された裏当てリング36を介して、鋼管11Aと鋼管部材20とを溶接によって互いに連結できる。
【0040】
(5)第5工程において、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと、部材本体21と基礎2との間に配置される鋼管11Aの下端11Bとの間に隙間を設ける。このように部材本体21と鋼管11Aとの間に隙間を設けた状態で、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと鋼管11Aの下端11Bとを溶接する。この構成によれば、鋼管11Aと鋼管部材20とを強固に連結できる。
【0041】
<変形例>
上記実施形態は、鋼管部材20および建築物3の沈下矯正方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。鋼管部材20および建築物3の沈下矯正方法は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0042】
・鋼管11同士の連結手段は、溶接に限られない。鋼管11の上端の周縁に沿うねじと、鋼管11の下端の周縁に沿うねじとの結合によって、鋼管11同士の連結が行われてもよい。ボルトによって、鋼管11同士の連結が行われてもよい。ボルトを使う場合には、鋼管11の周縁に沿うリング状の連結部材が使用される。連結部材と鋼管11とがボルトで締結される。また、連結部材と鋼管部材20とがボルトで締結される。鋼管11Aと鋼管部材20との連結手段も、上記と同様に、ねじの結合によって行われてもよく、また、ボルトおよび連結部材の使用によって行われてもよい。
【0043】
・上記実施形態のストッパ27の構造は、限定されない。ストッパ27は、ボルトによって構成されてもよい。例えば、ボルトは、部材本体21に貫通する貫通孔を挿通するように構成される。ボルトは、部材本体21の内周面に接触するようにボルトに取り付けられるナットによって、部材本体21に固定される。この場合、ボルトにおいて、部材本体21の内周面から突出する部分およびナットがストッパ27になる。
【0044】
・上記実施形態では、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bと、鋼管11Aの下端11Bとの間に隙間を設けている。これに対して、このような隙間を無くして、鋼管部材20の部材本体21の上端21Bに鋼管11Aの下端11Bを接触させて鋼管部材20の部材本体21と鋼管11Aとを溶接してもよい。この場合、鋼管11Aと基礎2の下面との間に隙間ができる。この隙間には、鉄製板材または楔が入れられる。
【符号の説明】
【0045】
1…地盤
2…基礎
3…建築物
4…穴
10…鋼管杭
11…鋼管
11A…鋼管
20…鋼管部材
21…部材本体
22…受台
23…受板部
27…ストッパ
31…調整ジャッキ
36…裏当てリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9