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特許7392698接合体、接合体の製造方法、および、接合体の有機残留物評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】接合体、接合体の製造方法、および、接合体の有機残留物評価方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20231129BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L21/52 C
G01N21/33
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021146645
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039507
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】費 舒杰
(72)【発明者】
【氏名】八十嶋 司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和生
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022193(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
G01N 21/33
H05K 3/34
B23K 35/363
B23K 35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体であって、
前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度が4以下であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体の製造方法であって、
前記第一部材と前記第二部材とを、はんだ材を介して積層する積層工程と、
前記はんだ材を介して積層した前記第一部材と前記第二部材と加熱処理してはんだ接合する接合工程と、
接合された前記第一部材と前記第二部材とを超音波洗浄する超音波洗浄工程と、
超音波洗浄工程の後に、紫外線を照射する紫外線照射工程と、
を有し、
前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度を4以下とすることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項3】
第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体の有機残留物評価方法であって、
前記接合体をイソプロパノールに浸漬して、前記接合体の有機残留物を抽出する抽出工程と、
有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定するUV吸収スペクトル測定工程と、
得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化する規格化工程と、
規格化したUV吸収スペクトルから波長300nmにおける吸光度を算出する吸光度算出工程と、
算出された前記吸光度から前記接合体の有機残留物量を評価する評価工程と、
を備えていることを特徴とする接合体の有機残留物評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体、接合体の製造方法、および、接合体の有機残留物評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった各種デバイスにおいては、金属部材からなる回路層の上に半導体素子等の電子部品が接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、例えば特許文献1,2に示すように、はんだ材を用いた方法が広く使用されている。最近では、環境保護の観点から、例えばSn-Ag系、Sn-In系、若しくはSn-Ag-Cu系等の鉛フリーはんだが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-083809号公報
【文献】特許第6566095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1,2に記載されたように、はんだ材を介して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した各種デバイス(接合体)においては、はんだ層中に、はんだ材に含まれる有機成分の残留物(有機残留物)が存在し接合強度の低下等の不具合を生じるおそれがあった。また、有機残留物が、基板表面、LEDやパワーモジュールなどの各種デバイスに悪影響を及ぼすことが懸念される。ワイヤボンディングなどの後工程をする際に、有機残留物がワイヤと基板表面との結合を妨害し、接合強度が低下するおそれがある。
【0005】
ここで、有機残留物について評価する方法としては、TG-DTA法による有機物の測定や、接合体を洗浄した洗浄液の電気伝導率を測定して有機物量を推定する方法等が挙げられる。
しかしながら、TG-DTA法では、精度が不十分であり、微量の有機残留物を評価することができなかった。また、接合体を洗浄した洗浄液の電気伝導率を測定する方法では、イオン性が弱い有機成分を十分に評価することができなかった。
このため、はんだ層を介して接合された接合体における有機残留物を精度良く評価することができず、有機残留物を確実に低減した接合体を提供することが困難であった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、はんだ層を介して接合された接合体において、有機残留物が十分にかつ確実に低減されており、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、接合体の製造方法、および、有機残留物量を精度良く評価可能な接合体の有機残留物評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の接合体は、第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体であって、前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度が4以下であることを特徴としている。
【0008】
本発明の接合体によれば、前記接合体をイソプロパノールに浸漬し、前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定しているので、接合体に含まれる有機残留物量を精度良く評価することができる。
そして、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度が4以下に制限されているので、接合体に含まれる有機残留物量が十分に低減されており、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明の接合体の製造方法は、第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体の製造方法であって、前記第一部材と前記第二部材とを、はんだ材を介して積層する積層工程と、前記はんだ材を介して積層した前記第一部材と前記第二部材と加熱処理してはんだ接合する接合工程と、接合された前記第一部材と前記第二部材とを超音波洗浄する超音波洗浄工程と、超音波洗浄工程の後に紫外線を照射する紫外線照射工程と、を有し、前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度を4以下とすることを特徴としている。
【0010】
本発明の接合体の製造方法によれば、接合された前記第一部材と前記第二部材とを超音波洗浄する超音波洗浄工程と、超音波洗浄工程の後に紫外線を照射する紫外線照射工程と、を有しているので、接合体の有機残留物を十分に低減することができる。
そして、前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、前記有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度を4以下とすることができ、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制可能な接合体を製造することができる。
【0011】
本発明の接合体の有機残留物評価方法は、第一部材と第二部材とがはんだ層を介して接合された接合体の有機残留物評価方法であって、前記接合体をイソプロパノールに浸漬して、前記接合体の有機残留物を抽出する抽出工程と、有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定するUV吸収スペクトル測定工程と、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化する規格化工程と、規格化したUV吸収スペクトルから波長300nmにおける吸光度を算出する吸光度算出工程と、算出された前記吸光度から前記接合体の有機残留物量を評価する評価工程と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の接合体の有機残留物評価方法によれば、前記接合体をイソプロパノールに浸漬して前記接合体に含まれる有機残留物を抽出し、有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度を算出し、この波長300nmにおける吸光度から前記接合体の有機残留物量を評価しているので、接合体に含まれる有機残留物量を精度良く評価することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、はんだ層を介して接合された接合体において、有機残留物が十分にかつ確実に低減されており、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、接合体の製造方法、および、有機残留物量を精度良く評価可能な接合体の有機残留物評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の有機残留物評価方法のフロー図である。
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法のフロー図である。
図4】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の説明図である。
図5】実施例におけるワイヤせん断評価の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態である接合体、接合体の製造方法、および、接合体の有機残留物評価方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る接合体10は、図1に示すように、第一部材11と第二部材12とが、はんだ層13を介して接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)と半導体素子(第二部材12)とが、はんだ層13を介して接合された半導体装置とされている。
【0017】
ここで、回路層(第一部材11)は、例えば、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、鉄又は鉄合金等の導電性に優れた金属で構成されており、本実施形態では、鉄合金(コバール)で構成されたものとされている。なお、回路層(第一部材11)の接合面には、Au等の貴金属膜が成膜されていることが好ましい。
また、半導体素子(第二部材12)の接合面には、Au等の貴金属膜が成膜されていることが好ましい。
【0018】
はんだ層13を構成するはんだ材は、接合する第一部材11および第二部材12の接合面の材質に応じて、適宜選択される。
本実施形態において、回路層(第一部材11)の接合面、および、半導体素子(第二部材12)の接合面が貴金属(Au)で構成されている場合には、はんだ材としては、例えば、Sn-Ag-Cu系はんだ、Au-Sn系はんだ、Sn-Cu系はんだ、等を適用することができる。
本実施形態では、はんだ層13を構成するはんだ材は、Snの含有量が10mass%以上80mass%以下とされ、残部がAuおよび不可避不純物とされたAu-Snはんだとされている。
【0019】
そして、本実施形態である接合体10においては、接合体10をイソプロパノールに浸漬し、接合体10の有機残留物を抽出した抽出液を得て、この抽出液のUV吸収スペクトルを測定し、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度が4以下とされている。
上述のように、本実施形態である接合体10においては、イソプロパノールに浸漬して得られた抽出液のUV吸収スペクトルを測定することにより、有機残留物を評価したものである。
【0020】
ここで、本実施形態である接合体の有機残留物評価方法について、図2を参照して説明する。
【0021】
(抽出工程S01)
上述の接合体10を、純度99.99vol%のイソプロパノールに浸漬することにより、接合体10に含まれる有機残留物をイソプロパノールへ抽出し、有機残留物を抽出した抽出液を得る。
なお、抽出工程S01における浸漬時間は、10分以上60分以下の範囲内とすることが好ましい。
また、この抽出工程S01においては、浸漬した接合体10およびイソプロパノールに対して超音波を付与することが好ましい。
【0022】
(UV吸収スペクトル測定工程S02)
次に、得られた抽出液について、UV吸収スペクトルを測定して、抽出液のUV吸収スペクトルを得る。UV吸収スペクトル得る方法としては、一般的な分光光度計、および、HPLC装置のUV吸収スペクトル検出器を用いることが可能である。
また、有機残留物の抽出を実施していない純度99.99vol%のイソプロパノール(以下、ベース液と記載)についても、抽出液と同様にUV吸収スペクトルを測定して、ベース液のUV吸収スペクトルを得る。
【0023】
(規格化工程S03)
次に、抽出液のUV吸収スペクトルにおいて、波長207nmの吸光度を100として、UV吸収スペクトルの各波長における吸光度を規格化する。
同様に、ベース液のUV吸収スペクトルにおいて、波長207nmの吸光度を100として、UV吸収スペクトルの各波長における吸光度を規格化する。
【0024】
(吸光度算出工程S04)
次に、抽出液の波長300nmにおける規格化した吸光度とベース液の波長300nmにおける規格化した吸光度との差分を求めて、この差分を「波長300nmにおける吸光度」とする。
【0025】
(評価工程S05)
次に、算出された「波長300nmにおける吸光度」から接合体10の有機残留物について評価する。
本実施形態では、「波長300nmにおける吸光度」が4以下である場合に、有機残留物が十分に低減されたものと評価する。
【0026】
上述のように、接合体10の有機残留物を評価することにより、接合体10の内部や周辺の有機残留物の量を精度良く評価することが可能となる。
そして、「波長300nmにおける吸光度」が4以下とすることにより、はんだ層13の内部や周辺の有機残留物が十分に低減されていることになり、第一部材11と第二部材12との接合強度の向上を図ることが可能となる。
なお、接合体10における「波長300nmにおける吸光度」は、4以下とすることが好ましく、1以下とすることがさらに好ましい。
【0027】
次に、本実施形態である接合体10の製造方法について、図3および図4を参照して説明する。
【0028】
(はんだ材塗布工程S11)
図4に示すように、第一部材11の接合面および第二部材12の接合面の一方又は両方に、はんだ材23を塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。
【0029】
はんだ材23は、金属粉末とフラックス(溶剤、チキソ剤、活性剤、樹脂)とを含むものとされている。
金属粉末は、上述したSn-Ag-Cu,Au-Sn,Sn-Cuであり、これらは、合金粉末であってもよいし、混合粉末であってもよい。本実施形態では、Au粉末とSn粉末の混合粉末とされている。
【0030】
フラックスに含まれる溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系、炭化水素類、テルペン系及びテルペノイド系等の溶剤が用いられる。具体的には、ベンジルアルコール、エタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール 、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、ドデカン、テトラデセン、α-テルピネオール、2-メチル2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソブチルアジペート、へキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2-ターピニルオキシエタノール、2-ジヒドロターピニルオキシエタノール、シトラール、リナロール、リモネン、カルバクロール、ピネン、ファルネセンなどが単独又はこれらを混合して用いられる。
【0031】
チキソ剤としては、例えば、硬化ヒマシ油、水素添加ひまし油、カルナバワックス、アミド類、ヒドロキシ脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール類、蜜蝋、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が単独又はこれらを混合して用いられる。
活性剤としては、例えば、アジピン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸のような脂肪酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸のようなヒドロキシ脂肪酸、酸化防止剤、界面活性剤、アミン類等を添加して用いられる。
樹脂としては、例えば、重合ロジン、天然ロジン、精製ロジン等が用いられる。
【0032】
(積層工程S12)
次に、図4に示すように、上述のはんだ材23を介して、第一部材11と第二部材12とを積層する。
【0033】
(接合工程S13)
次に、図4に示すように、はんだ材23を介して積層された第一部材11および第二部材12を加熱処理して、はんだ層13を形成し、第一部材11と第二部材12とを接合する。
ここで、加熱処理時には、はんだ材23に含まれるフラックスの有機成分が分解してガスが発生することになる。
【0034】
なお、接合工程S13における加熱温度は、特に限定されないが、200℃以上300℃以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、加熱処理時には、積層体に対して0MPa以上0.0007MPa以下の圧力で積層方向に加圧してもよい。
【0035】
(超音波洗浄工程S14)
次に、図4に示すように、はんだ層13を介して接合された第一部材11および第二部材12を洗浄溶媒25に浸漬し、超音波を付与することにより、接合体10を超音波洗浄する。
ここで、洗浄溶媒25としては、温水(温度50℃以上80℃以下)、パインアルファ溶液等、を用いることが好ましい。
また、超音波の付与時間は、10分以上60分以下の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
(紫外線照射工程S15)
次に、超音波洗浄後に乾燥させた後、はんだ層13を介して接合された第一部材11および第二部材12に対して、紫外線をはんだ層13を含めた接合体10全体に対し、接合体10全体の表面へ照射する。紫外線の波長は160nm以上175nm以下とすることが好ましく、照度としては100mW/cm以上150mW/cm以下とすることが好ましい。
上述した超音波洗浄工程S14と紫外線照射工程S15とにより、接合体10の有機残留物を低減し、接合体10における「波長300nmにおける吸光度」を4以下とする。
なお、紫外線の照射時間は、5分以上60分以下の範囲内とすることが好ましい。
【0037】
上述したはんだ材塗布工程S11、積層工程S12、接合工程S13、超音波洗浄工程S14、紫外線照射工程S15により、本実施形態である接合体10が製造される。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体10によれば、接合体10をイソプロパノールに浸漬して接合体10に含まれる有機残留物を抽出し、有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定しているので、接合体10に含まれる有機残留物量を精度良く評価することができる。
そして、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化し、規格化したUV吸収スペクトルから求められる波長300nmにおける吸光度が4以下に制限されているので、接合体10に含まれる有機残留物量が十分に低減されており、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態である接合体10の製造方法によれば、はんだ層13を介して接合された第一部材11と第二部材12とを超音波洗浄する超音波洗浄工程S14と、超音波洗浄工程S14の後に、はんだ層13を介して接合された第一部材11と第二部材12に対して紫外線を照射する紫外線照射工程S15と、を有しているので、接合体10の有機残留物を十分に低減することができる。
よって、接合体10の波長300nmにおける吸光度を4以下とすることができ、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制可能な接合体10を製造することができる。
【0040】
また、本実施形態である接合体10の有機残留物評価方法によれば、図2に示すように、接合体10をイソプロパノールに浸漬して接合体の有機残留物を抽出する抽出工程S01と、有機残留物を抽出した抽出液のUV吸収スペクトルを測定するUV吸収スペクトル測定工程S02と、得られたUV吸収スペクトルを、波長207nmの吸光度を100として規格化する規格化工程S03と、規格化したUV吸収スペクトルから波長300nmにおける吸光度を算出する吸光度算出工程S04と、算出された波長300nmにおける吸光度から接合体の有機残留物量を評価する評価工程S05と、を備えているので、接合体10に含まれる有機残留物量を精度良く評価することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例
【0042】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0043】
第一部材として、鉄合金(コバール)板(250mm×150mm×厚さ0.1mm)の表面に、下地層としてNiめっき(厚さ0.5~1.0μm)を形成し、このNiめっきの上にAuめっき(厚さ0.05μm)を形成した基板を準備した。
第二部材として、接合面にAuめっき(厚さ0.05μm)を施したダミーチップ(1mm×1mm×厚さ0.04mm)を準備した。
【0044】
また、表1に示す金属粉末とフラックスとを含むはんだ材を準備した。なお、フラックスは、溶剤としてジエチレングリコールモノヘキシエーテルを52mass%,チキソ剤として硬化ヒマシ油を5mass%、チキソ剤としてアジピン酸を3mass%,樹脂として重合ロジンを40mass%、含有するものを用いた。
【0045】
第一部材の接合面に、上述のはんだ材を塗布厚さ200μmで塗布し、このはんだ材を介して第二部材を積層した。
この積層体を、窒素雰囲気で表1に示す条件で加熱処理し、はんだ層を介して第一部材と第二部材とを接合した。
【0046】
そして、接合後に、本発明例1~5および比較例1においては、表1に示す条件で超音波洗浄を行った。なお、比較例2,3においては、超音波洗浄を実施しなかった。
また、本発明例1~5および比較例1~3については、表1に示す条件で、紫外線を照射した。ここで、紫外線は波長172nmとし、照度140mW/cmとし、接合体全体に対し、照射した。
上述のようにして得られた接合体について、吸光度の算出、および、ワイヤせん断評価を、以下のように実施した。
【0047】
(吸光度)
得られた接合体を、スクリュー瓶(容量50mL)の中に入れるとともに、このスクリュー瓶に2mLのイソプロパノール(純度:99.99vol%)を入れ、超音波を5分間付与し、接合体に含まれる有機残留物を抽出した。その後、接合体を取り出して抽出液を得た。
HPLC装置(島津社製汎用HPLC Prominence)にカラムを搭載せずに抽出液を5μL注入し、HPLC装置に付属のUV吸収スペクトル検出器(SPD-20)を用いて、抽出液のUV吸収スペクトルを測定した。移動相はイソプロパノールとし、流速は0.1mL/min(3min)→1.0mL/min(5min)とした。
なお、有機残留物の抽出を実施していない純度99.99vol%のイソプロパノールについても、同様にUV吸収スペクトルを測定し、ベース液のUV吸収スペクトルを測定した。
【0048】
抽出液のUV吸収スペクトルにおいて、波長207nmの吸光度を100として、UV吸収スペクトルの各波長における吸光度を規格化した。同様に、ベース液のUV吸収スペクトルにおいても波長207nmの吸光度を100として、UV吸収スペクトルの各波長における吸光度を規格化した。
そして、波長300nmにおける規格化後の吸光度において、抽出液とベース液の吸光度の差分を求め、これを「吸光度」として表1に記載した。
【0049】
(ワイヤせん断評価)
得られた接合体のダミーチップ表面および基板表面(第一部材表面)に金ワイヤボンディングを行った。基板表面(第一部材表面)での接合箇所は、ダミーチップと基板との接合部端から500μm、ダミーチップと反対側に離れた箇所とした。
金ワイヤには、純度99.99mass%、直径25μmの金ワイヤを用いた。ボンディング条件については、ボンディング温度250℃、加圧力0.6Nで、ボール径は50μm用に電気トーチの出力条件を設定した。超音波印加時間は10msとした。
【0050】
そして、ワイヤの接合強度をせん断試験で評価した。図5に示すように、ワイヤボールに横方向の力を加えて破断させた。ワイヤボールと基板の接合部が破壊した時の力が170mNより大きい場合には「◎」、150mNより大きく170mL以下の場合は「〇」、150mN以下の場合には「×」と評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
比較例1においては、Sn-Ag-Cu系はんだを用いて接合し、超音波洗浄および紫外線照射を実施したが、「波長300nmにおける吸光度」が5.0となり、ワイヤせん断評価が「×」となった。有機残留物が十分に低減されておらず、有機残留物の影響により、ワイヤの接合強度が不足したためと推測される。
【0053】
比較例2においては、Au-Sn系はんだを用いて接合し、超音波洗浄を実施せず、外線照射を実施したが、「波長300nmにおける吸光度」が12.0となり、ワイヤせん断評価が「×」となった。有機残留物が十分に低減されておらず、有機残留物の影響により、ワイヤの接合強度が不足したためと推測される。
【0054】
比較例3においては、Sn-Cu系はんだを用いて接合し、超音波洗浄を実施せず、外線照射を実施したが、「波長300nmにおける吸光度」が15.0となり、ワイヤせん断評価が「×」となった。有機残留物が十分に低減されておらず、有機残留物の影響により、ワイヤの接合強度が不足したためと推測される。
【0055】
これに対して、本発明例1では、Sn-Ag-Cu系はんだを用いて接合し、超音波洗浄および紫外線照射を実施した結果、「波長300nmにおける吸光度」が0.5となり、ワイヤせん断評価が「◎」となった。
本発明例2,3では、Au-Sn系はんだを用いて接合し、超音波洗浄および紫外線照射を実施した結果、「波長300nmにおける吸光度」がいずれも0.5となり、ワイヤせん断評価が「◎」となった。
【0056】
本発明例4では、Sn-Cu系はんだを用いて接合し、超音波洗浄および紫外線照射を実施した結果、「波長300nmにおける吸光度」が0.9となり、ワイヤせん断評価が「◎」となった。
本発明例5では、Sn-Cu系はんだを用いて接合し、超音波洗浄および紫外線照射を実施した結果、「波長300nmにおける吸光度」が3.8となり、ワイヤせん断評価が「〇」となった。
【0057】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、はんだ層を介して接合された接合体において、有機残留物が十分にかつ確実に低減されており、有機残留物を起因とした接合強度の低下等の不具合の発生を抑制することが可能な接合体、接合体の製造方法、および、有機残留物量を精度良く評価可能な接合体の有機残留物評価方法を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
10 接合体
11 第一部材
12 第二部材
13 はんだ層
23 はんだ材
図1
図2
図3
図4
図5