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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231129BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231129BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 302
G05D1/02 N
G05D1/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021164486
(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公開番号】P2023055285
(43)【公開日】2023-04-18
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-129554(JP,A)
【文献】特開2018-161085(JP,A)
【文献】特開2017-127207(JP,A)
【文献】特表2002-536089(JP,A)
【文献】実開昭56-068597(JP,U)
【文献】特開2018-093799(JP,A)
【文献】特開2019-115299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0106422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/02
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能な走行車体と、
前記走行車体に設けられ、前記圃場において作業を行う作業機と、
前記走行車体に設けられ、衛星測位システムから測位情報を受け取り、受け取った前記測位情報に基づいて前記走行車体の位置情報を取得する位置取得装置と
記走行車体の走行基準となる予定走行経路を作成し、作成した前記予定走行経路に沿って前記走行車体を自律走行させる制御を含む各部の制御を行う制御装置と、
作業者の入力操作を受け付け、受け付けた前記作業者の入力操作を前記制御装置へ送る入力操作部と
を備える作業車両であって
前記制御装置は、
前記位置情報に基づいて前記予定走行経路を作成可能であり、前記作業者の入力操作に応じて前記予定走行経路を作成可能であり、
前記入力操作部は、
前記作業車両が自律作業を行う圃場に対応する圃場領域を表示するとともに、前記作業車両へ自律作業を命令するための命令ブロックを表示する画面であり、
前記命令ブロックは、
前記予定走行経路を作成するための命令を含む要素であり、実際の圃場における前記作業車両への特定の命令が関連付けられ、前記画面に表示される前記圃場領域内に前記作業者の操作によって任意に配置可能であり、前記圃場領域内の任意の位置に配置されることで、実際の圃場内の対応する地点における前記作業車両の特定の行動を可能とする
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
記制御装置は、
前記画面に表示される圃場領域内に前記命令ブロックが配置されることで、前記命令ブロックに対応する前記走行車体の自律走行を含む各部の制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記測位情報に基づいて当該作業車両が作業を行う圃場を指定し、
前記制御装置は、
前記画面に表示される圃場領域外にはみ出すような前記命令ブロックの配置を禁止する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記命令ブロックは、
前記画面に表示される圃場領域内において、命令に対応する制御が開始される制御開始ポイントと、命令に対応する制御が終了する制御終了ポイントとを有し、
前記制御装置は、
前記画面に表示される圃場領域の外形線に沿って配置される前記命令ブロック以外の命令ブロックの角度を任意に指定可能とする
ことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記命令ブロックは、
前記予定走行経路を作成するための要素となるメイン命令ブロックを含み、
前記制御装置は、
一方の前記メイン命令ブロックの前記制御終了ポイントと他方の前記メイン命令ブロックの前記制御開始ポイントとが接続されると一連の経路とし、
前記メイン命令ブロックのうち所定のメイン命令ブロックが接続されると前記予定走行経路の作成を完了したと判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記命令ブロックは、
前記予定走行経路を作成するための要素以外のサブ動作の要素となるサブ命令ブロックを含み、
前記制御装置は、
前記画面に表示される圃場領域内に前記サブ命令ブロックが配置されることで、前記サブ命令ブロックに対応する前記サブ動作に関する命令を実行する
ことを特徴とする請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、
当該作業車両の手動操作による圃場の3辺の走行で該圃場の外形を認識し、
前記圃場の外形に基づいて前記予定走行経路を自動作成するとともに、自動作成した前記予定走行経路を前記要素に分解し、分解した前記予定走行経路を編集可能とする
ことを特徴とする請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記メイン命令ブロックは、
前記制御開始ポイントから前記制御終了ポイントまでを結ぶ直線に沿って前記走行車体を操舵制御する命令、または、前記制御開始ポイントから前記制御終了ポイントへ向かう方位に従って前記走行車体を操舵制御する命令となる直進ブロックを含む
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の作業車両。
【請求項9】
前記メイン命令ブロックは、
前記画面に表示される圃場領域の角部に配置可能であり、前記制御開始ポイント側の辺から対向する辺を結ぶ直線に対して直交する辺が前記制御終了ポイント側となる90度旋回ブロックを含み、
前記90度旋回ブロックは、
当該90度旋回ブロックが配置される領域内で前記走行車体を旋回制御する命令となり、
前記制御装置は、
前記90度旋回ブロックが配置されると、前記制御開始ポイント側の辺から対向する辺を結ぶ直線に対して直交する方位で前記制御終了ポイントを通過するよう前記走行車体を制御する
ことを特徴とする請求項5~8のいずれか一つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら作業を行う作業車両には、衛星測位システムを利用して現在の自己位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて予定走行経路を作成し、作成した予定走行経路に沿って自律走行が可能なものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-31596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業車両は、制御装置が圃場の外形などの情報から予定走行経路を自動作成するなど、作業者が任意に予定走行経路を決めることができないものであり、このようなことから、機体操作性や作業性を向上させる点について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、自律走行が可能な作業車両において、機体操作性や作業性を向上させることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る作業車両は、圃場を走行可能な走行車体と、前記走行車体に設けられ、前記圃場において作業を行う作業機と、前記走行車体に設けられ、衛星測位システムから測位情報を受け取り、受け取った前記測位情報に基づいて前記走行車体の位置情報を取得する位置取得装置と、前記位置情報に基づいて前記走行車体の走行基準となる予定走行経路を作成し、作成した前記予定走行経路に沿って前記走行車体を自律走行させる制御装置と、作業者の入力操作を受け付け、受け付けた前記作業者の入力操作を前記制御装置へ送る入力操作部とを備え、前記制御装置は、前記作業者の入力操作に応じて前記予定走行経路を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る作業車両によれば、自律走行が可能な作業車両において、機体操作性や作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る作業車両の概要を示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る作業車両の制御系を示すブロック図である。
図3図3は、自律走行の説明図である。
図4図4は、入力操作部を示す図である。
図5図5は、命令ブロックを示す図である。
図6図6は、予定走行経路の作成処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両の概要>
まず、図1を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1の概要を示す側面図である。実施形態に係る作業車両1は、操縦者(作業者ともいう)の操縦によって圃場F(図3参照)内を走行しながら対地作業を行う他、後述する制御装置100(図2参照)を中心とする制御系による各部制御によって、圃場F内を自律走行しながら対地作業を行う。
【0011】
なお、図1には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定している。このため、以下では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0012】
また、以下では、作業車両1として、圃場Fの土壌面に苗を植え付ける、乗用型の「苗移植機」を例に説明する。また、以下の説明では、苗移植機1または後述する走行車体2を指して「機体」という場合がある。
【0013】
図1に示すように、苗移植機1は、走行車体2と、作業機3と、位置取得装置4と、制御装置100と、情報端末120とを備える。なお、苗移植機1では、作業機3として「苗植付装置」を備える。
【0014】
走行車体2は、車体フレーム21と、走行輪として、左右一対の前輪22と、左右一対の後輪23とを備える。走行車体2では、たとえば、操舵輪を左右一対の前輪22とする。また、走行車体2では、駆動輪を、左右一対の後輪23、または、左右一対の前輪22および左右一対の後輪23とする。
【0015】
車体フレーム21の前部には、苗植付装置3などへ駆動力を伝達するミッションケース24と、エンジンEからの駆動力、すなわち、エンジンEの回転動力をミッションケース24へ出力する変速装置25(図2参照)とが設けられる。変速装置25は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。
【0016】
また、ミッションケース24の内部には、高速走行モードによる路上走行や、低速走行モードによる苗の植え付けを行う場合に走行車体2の各走行モードを切り替える副変速機構が設けられる。また、ミッションケース24の左右の外側部には、左右の前輪ファイナルケースが設けられる。左右の前輪ファイナルケースからそれぞれ外向きに突出する左右の車軸には、前輪22が取り付けられる。
【0017】
また、車体フレーム21の後部には、左右の後輪ギヤケースが設けられる。左右の後輪ギヤケースからそれぞれ外向きに突出する左右の車軸には、後輪23がそれぞれ取り付けられる。
【0018】
また、車体フレーム21の後部には、昇降装置26が設けられる。昇降装置26は、油圧式の昇降シリンダ26aおよび昇降リンク機構26bを介して、苗植付装置3を昇降させる。
【0019】
また、車体フレーム21には、エンジンE(図2参照)が搭載される。このエンジンEの回転動力は、ベルト伝動機構27および変速装置25を介して、ミッションケース24へと伝達される。ミッションケース24へ伝達された回転動力は、ミッションケース24に組み込まれた副変速機構によって変速された後、走行動力と外部取り出し動力とに分けられる。
【0020】
ミッションケース24へ伝達された回転動力から取り出された外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチケースへ伝達され、植付クラッチケースから植付伝動軸を介して、苗植付装置3へ伝達される。
【0021】
一方、ミッションケース24の後部には、左右のドライブシャフトが設けられる。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース24およびドライブシャフトを介して左右の後輪ギヤケースへ伝動される。
【0022】
走行車体2の前部には、ボンネット28が設けられる。ボンネット28の後部には、操縦パネルが設けられる。操縦パネルには、メータパネルや、各種情報を表示する表示画面などが設けられる。また、ボンネット28の後部には、ステアリングハンドル29が設けられる。なお。ステアリングハンドル29は、操縦者(作業者)が着席する操縦席30の前方に設けられる。また、ボンネット28には、操舵するステアリングハンドル29、変速装置25などを操作するための主変速レバー、副変速機構を操作するための副変速レバーなどが設けられる。
【0023】
また、走行車体2の後部には、圃場Fなどへ肥料を散布するための施肥装置31が設けられる。なお、施肥装置31は、「苗植付装置」と同様に、苗移植機1の作業機3を構成する場合がある。
【0024】
また、走行車体2の前部の左右側部には、複数の予備苗載せ台33を上下方向に重ねて配置する予備苗枠32が設けられ、苗植付装置3に補充される苗(苗マットともいう)などの作業資材が載置可能である。
【0025】
苗植付装置3は、苗タンク34と、植付装置35とを備える。苗タンク34は、所定の間隔ごとにフェンスで区切られ、圃場Fに植え付けるための苗マットが積載される。植付装置35は、苗タンク34の下方に設けられ、苗タンク34に積載された苗マットから苗を掻き取って圃場Fの土壌面に植え付ける。
【0026】
また、苗植付装置3の下方には、土壌面の凹凸を整地する整地ロータ36が設けられる。苗植付装置3は、整地ロータ36で均した土壌面に苗を植え付ける。また、整地ロータ36の後方には、土壌面を滑走するフロート(センターフロートおよびサイドフロート)37が設けられる。
【0027】
位置取得装置4は、アンテナフレーム38を介して、走行車体2の上方に設けられる。位置取得装置4は、走行車体2の位置を所定の周期で測定し、走行車体2の現在の緯度および経度などの位置情報P(図2参照)を取得する。位置取得装置4は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波(測位情報)を受信して走行車体2(苗移植機1)の位置情報Pを測位可能であり、かつ、計時可能である。
【0028】
なお、位置取得装置4による位置情報Pに基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、たとえば、別々の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、直進制御用ECU(Electronic Control Unit)に格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、旋回制御用ECUに格納される。なお、直進制御用ECUおよび旋回制御用ECUは、後述する制御部110(図2参照)に含まれる。
【0029】
制御装置100(図2参照)は、苗移植機1に搭載された制御部110(図2参照)と、後述する情報端末120とによって構成される。なお、制御装置100は、制御部110および情報端末120のうちのいずれか一方のみで構成されてもよい。また、たとえば、制御装置100が苗移植機1の制御部110のみで構成される場合、以下で説明する情報端末120が行う処理も制御部110が行う。
【0030】
情報端末120は、たとえば、作業者W(図3参照)が携行可能なタブレット端末である。情報端末120は、インターネットなどの通信ネットワークへの接続が可能であり、通信ネットワークを介して作業管理装置(図示せず)と互いに接続可能である。この場合、作業管理装置は、いわゆるクラウドコンピューティングが可能なシステムである。情報端末120と作業管理装置とは、たとえば、無線LAN(Local Area Network)で接続される。
【0031】
また、情報端末120は、制御部121(図2参照)と、入力操作部122とを備える。制御部121は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される。
【0032】
入力操作部122は、たとえば、各種情報を表示するとともに作業者Wの入力操作を受け付けるタッチ画面である。入力操作部122は、受け付けた作業者Wの入力操作を制御装置100(制御部110)へ送る。入力操作部122は、苗移植機1(図1参照)へ命令するための後述する命令ブロック50を表示する画面(タッチ画面)である。なお、入力操作部122は、表示部(画面)と各種キーやボタンなどの操作部とが別々に設けられたものでもよい。また、入力操作部122は、情報端末120の画面ではなく、機体側の表示画面でもよい。
【0033】
このような情報端末120は、電子制御によって各部を制御可能なように、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部を備えてもよい。
【0034】
作業管理装置は、CPUなどを有する処理装置やROM、RAM、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、さらには、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0035】
苗移植機1は、作業者Wによる情報端末120の操作で特定の圃場Fにおける苗の植え付け作業の設定を行うことができる。
【0036】
<作業車両の制御系>
次に、図2を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1における制御装置100を中心とする制御系について説明する。図2は、実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の制御系を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置100は、苗移植機1の制御部110と、上記情報端末120とによって構成される。
【0037】
制御部110は、エンジンEの回転制御、走行車体2(図1参照)の走行速度や操舵制御、苗植付装置3の昇降制御などを行う。
【0038】
制御部110は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPUなどを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場F(図3参照)ごとに予め設定された走行車体2の後述する予定走行経路R(図3参照)などの必要なデータ類が記憶される、ハードディスク、ROM、RAMなどによって構成される記憶部を備える。
【0039】
図2に示すように、制御部110には、位置取得装置(GNSS)4、方位センサ40、エンジン回転センサ41、車速センサ42、変速センサ43、切れ角センサ44などが接続される。また、制御部110には、エンジンE、変速装置25、ステアリング装置39、昇降装置26などが接続される。
【0040】
方位センサ40は、たとえば、走行車体2の進行方向の絶対方位角(たとえば、「北」を0°(360°)、「東」を90°、「南」を180°、「西」を270°)を検出する。方位センサ40は、一定時間ごとに絶対方位角を検出し、検出した絶対方位角を制御部110などへ送信する。
【0041】
エンジン回転センサ41は、エンジンEの回転数を検出する。車速センサ42は、走行車体2の走行速度(車速)を検出する。変速センサ43は、変速装置25において複数の変速段のうちいずれの変速段であるかを検出する。切れ角センサ44は、操舵輪である前輪22(図1参照)の切れ角を検出する。
【0042】
制御部110には、位置取得装置4から圃場Fにおける走行車体2の現在の位置情報P、方位センサ40から走行車体2の絶対方位角、エンジン回転センサ41からエンジンEの回転数、車速センサ42から走行車体2の車速、変速センサ43から現在の変速段、切れ角センサ44から前輪22の切れ角がそれぞれ入力される。
【0043】
なお、制御部110は、走行車体2を自律走行させる場合、切れ角センサ44の検出値を用いて、たとえば、前輪22の切れ角をフィードバックしながらステアリングハンドル29(図1参照)に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングハンドル29を操舵制御する。
【0044】
制御部110は、位置取得装置4、方位センサ40、エンジン回転センサ41、車速センサ42、変速センサ43、切れ角センサ44などの検出結果に基づいて、エンジンE、変速装置25、ステアリング装置39、昇降装置26などを制御する。
【0045】
制御装置100では、走行車体2を自律走行させる場合には、苗植付装置3による苗の植え付け作業に応じた予定走行経路Rが、圃場Fごとに設定され、データ化されて記憶部などに記憶される。なお、予定走行経路Rは、圃場Fの形状や大きさなどに応じて設定される。
【0046】
制御部110は、位置取得装置4の測定結果に基づいて、記憶部に記憶された予定走行経路Rに沿って走行しながら作業を行うよう、エンジンE、変速装置25、ステアリング装置39、昇降装置26などを制御する。
【0047】
また、制御部110は、上記したように、たとえば、作業者W(図3参照)が携行可能な情報端末120と無線接続される。制御部110は、作業者Wの操作による情報端末120からの指示信号に基づいて、苗移植機1の各部を制御する。なお、制御部110では、苗移植機1の機体情報データベースを有し、型式などの情報の受け渡しを情報端末120から行うことができるように構成されてもよい。
【0048】
<自律走行>
次に、図3を参照して実施形態に係る作業車両(苗移植機)1の圃場Fにおける自律走行について説明する。図3は、自律走行の説明図である。なお、図3には、上方から見た、圃場Fを自律走行する作業車両(苗移植機)1を模式的に示している。
【0049】
たとえば、作業者Wによる情報端末120の操作に応じて自律走行する苗移植機1の場合、制御装置100(図2参照)は、たとえば、苗植付装置3(図1参照)の作業幅や、圃場Fの形状や面積などが含まれる情報などに基づいて、適切な旋回位置などが規定された予定走行経路Rを作成する。
【0050】
苗移植機1は、たとえば、圃場F内の予め設定された作業エリア内で作業を行うよう、予め設定された作業開始点Pから作業終了点Pまで、予定走行経路Rに沿って直進と旋回とを繰り返しながら苗の植え付け作業を行う。
【0051】
たとえば、予定走行経路R(R1)は、直進経路Rと、90度旋回経路RT1とを有する。直進経路Rは、苗移植機1による直進しながら苗の植え付け工程(直進工程)を行う経路である。90度旋回経路RT1は、互いの延長線が直交する直進経路Rの終始の端部同士を結ぶ経路であり、苗移植機1による直進経路Rから次の直進経路Rへ移動するための90度旋回工程を行う経路である。なお、図3においては、予定走行経路R1における作業終了点Pを省略している。
【0052】
また、たとえば、予定走行経路R(R2)は、直進経路Rと、180度旋回経路RT2とを有する。直進経路Rは、苗移植機1による直進しながら苗の植え付け工程(直進工程)を行う経路である。180度旋回経路RT2は、互いに平行で隣接する直進経路Rの終始の端部同士を結ぶ経路であり、苗移植機1による直進経路Rから次の直進経路Rへ移動するための180度旋回工程を行う経路である。
【0053】
ここで、本実施形態では、作業者Wが情報端末120の入力操作部122(図1参照)に対して入力操作することで、作業者Wが任意に予定走行経路Rを作成することができる。
【0054】
<入力操作部>
次に、図4を参照して入力操作部122について説明する。図4は、入力操作部122を示す図である。なお、図4には、入力操作部122を有する情報端末120を模式的に示している。
【0055】
図4に示すように、情報端末120の入力操作部であるタッチ画面122には、予定走行経路Rを作成する場合の操作画面において、自律作業を行う圃場F(図3参照)に対応する圃場領域Aが表示される。そして、作業者W(図3参照)は、タッチ画面122に表示された圃場領域A内に、タッチ画面122に表示される後述する命令ブロック50(図4参照)を配置することで、予定走行経路Rを作成するなどの制御を実行させることができる。
【0056】
<命令ブロック>
次に、図5を参照して命令ブロック50について説明する。図5は、命令ブロック50を示す図である。情報端末120のタッチ画面122(いずれも、図4参照)には、作業者W(図3参照)が所定の操作を行うことで、たとえば、図5に示すような平面的な命令ブロック50が表示される。
【0057】
命令ブロック50は、タッチ画面122に表示された圃場領域A図4参照)内において、作業者Wによって任意に配置される。
【0058】
図5に示すように、命令ブロック50は、メイン命令ブロック51と、サブ命令ブロック52とを含む。メイン命令ブロック51は、予定走行経路Rを作成するための要素となる。メイン命令ブロック51は、直進ブロック511と、90度旋回ブロック512と、180度旋回ブロック513とを含む。
【0059】
直進ブロック511は、苗移植機1または走行車体2(いずれも、図1参照)に直進するよう命令するための要素である。また、直進ブロック511は、命令に応じて制御を開始または終了する、制御開始ポイント53aと、制御終了ポイント53bとを有する。
【0060】
制御開始ポイント53aは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する直進命令に対応する制御を開始する。制御終了ポイント53bは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する直進命令に対応する制御を終了する。なお、直進制御の開始や終了は、制御開始ポイント53aおよび制御終了ポイント53bに基づいて、制御装置100(図2参照)により実行される。
【0061】
すなわち、直進ブロック511は、走行車体2(苗移植機1)を直進させるよう、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bまでを結ぶ直線に沿って走行車体2(苗移植機1)を操舵制御する命令となる。または、直進ブロック511は、走行車体2(苗移植機1)を直進させるよう、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bへ向かう方位に従って走行車体2を操舵制御する命令となる。なお、直進ブロック511は、実際の直進経路にあわせて直進方向の長さを可変とする。
【0062】
このような直進ブロック511によって、作業者Wが直感的、かつ、容易に走行車体2(苗移植機1)の直進を定義することができる。
【0063】
また、直進ブロック511が制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとを有することで、前の工程と次の工程との接続が明確となる。
【0064】
90度旋回ブロック512は、走行車体2(苗移植機1)に90度旋回するよう命令するための要素である。90度旋回ブロック512は、圃場領域Aの角部に配置可能である。また、90度旋回ブロック512は、直進ブロック511と同様、命令に応じて制御を開始または終了する、制御開始ポイント53aと、制御終了ポイント53bとを有する。
【0065】
制御開始ポイント53aは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する90度旋回命令に対応する制御を開始する。制御終了ポイント53bは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する90度旋回命令に対応する制御を終了する。90度旋回ブロック512では、圃場領域A内に配置された状態では、90度旋回ブロック512の制御開始ポイント53a側の辺54aから対向する辺54aを結ぶ直線に対して直交する辺54bが制御終了ポイント53b側となる。なお、90度旋回制御の開始や終了は、制御開始ポイント53aおよび制御終了ポイント53bに基づいて、制御装置100により実行される。
【0066】
すなわち、90度旋回ブロック512は、90度旋回ブロック512が配置される領域内で走行車体2(苗移植機1)を90度旋回制御する命令となる。90度旋回ブロック512が配置されると、制御装置100は、90度旋回ブロック512の制御開始ポイント53a側の辺54aから対向する辺54aを結ぶ直線に対してに対して直交する方位で制御終了ポイント53bを通過するよう、走行車体2(苗移植機1)を制御する。
【0067】
このような90度旋回ブロック512によって、作業者Wが直感的、かつ、容易に走行車体2の90度旋回を定義することができる。
【0068】
また、90度旋回ブロック512が制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとを有することで、前の工程と次の工程との接続が明確となる。
【0069】
180度旋回ブロック513は、走行車体2(苗移植機1)に180度旋回するよう命令するための要素である。また、180度旋回ブロック513は、直進ブロック511や90度旋回ブロック512と同様、命令に応じて制御を開始または終了する、制御開始ポイント53aと、制御終了ポイント53bとを有する。
【0070】
制御開始ポイント53aは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する180度旋回命令に対応する制御を開始する。制御終了ポイント53bは、圃場領域A内において、走行車体2(苗移植機1)に対する180度旋回命令に対応する制御を終了する。180度旋回ブロック513では、圃場領域A内に配置された状態では、制御開始ポイント53a側の辺54aと同じ辺54aが制御終了ポイント53b側となる。制御終了ポイント53bは、制御開始ポイント53aから、たとえば、作業幅の約半分の距離をあけた位置に設定される。なお、180度旋回制御の開始や終了は、制御開始ポイント53aおよび制御終了ポイント53bに基づいて、制御装置100により実行される。
【0071】
すなわち、180度旋回ブロック513は、180度旋回ブロック513が配置される領域内で走行車体2(苗移植機1)を180度旋回制御する命令となる。180度旋回ブロック513が配置されると、制御装置100は、制御開始ポイント53aを通過する方位と平行かつ反対の向きとなる方位で制御終了ポイント53bを通過するよう、走行車体2(苗移植機1)を制御する。
【0072】
また、180度旋回ブロック513では、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bまでの距離が一定以上となるように、任意の大きさへ変更可能である。なお、180度旋回ブロック513では、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bまでの距離が一定以下になるサイズへの変更はできない。
【0073】
このような180度旋回ブロック513によって、作業者Wが直感的、かつ、容易に走行車体2の180度旋回を定義することができる。
【0074】
また、180度旋回ブロック513が制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとを有することで、前の工程と次の工程との接続が明確となる。
【0075】
サブ命令ブロック52は、予定走行経路Rを作成するための要素以外のサブ動作の要素となる。サブ動作としては、苗移植機1の場合、たとえば、苗の植え付け作業などの対地作業の開始・終了や、苗の植え付けモードなどの作業モードの切り替えなどがある。
【0076】
サブ命令ブロック52は、たとえば、開始ブロック521と、終了ブロック522と、手動ブロック523と、自動ブロック524とを含む。開始ブロック521は、走行車体2(苗移植機1)の自律走行を開始するよう命令する要素である。終了ブロック522は、走行車体2(苗移植機1)の自律走行を終了するよう命令する要素である。
【0077】
手動ブロック523は、走行車体2(苗移植機1)を手動走行モードとするよう命令する要素である。なお、手動走行モードでは、作業者(操縦者)Wが走行車体2(苗移植機1)を手動操作することで、走行車体2(苗移植機1)を制御することができる。自動ブロック524は、走行車体2(苗移植機1)を自動走行モードとするよう命令する要素である。なお、自動走行モードでは、走行車体2(苗移植機1)を、上記したように自律走行させて、自動制御することができる。
【0078】
また、手動ブロック523および自動ブロック524は、対応する各走行モードを開始または終了する制御を含ませてもよい。すなわち、たとえば、手動ブロック523を、手動開始ブロック523aと、手動終了ブロック523b(いずれも、図6参照)との2種類用意してもよい。また、手動ブロック523および自動ブロック524の開始および終了をそれぞれ命令する別の命令ブロック50(52)を別途用意してもよい。
【0079】
また、サブ命令ブロック52として、「進入禁止エリア」を指示(命令)する進入禁止ブロックを有してもよい。進入禁止ブロックは、制御開始ポイント53aおよび制御終了ポイント53bを有するものではないため、いずれの経路(メイン命令ブロック51)とも接続不可となる。進入禁止ブロックの命令は、他の命令ブロック50よりも優先される。進入禁止ブロックが配置された場合には、苗移植機1が進入禁止エリアへと到達すると、苗移植機1が即座に停止(停車)する。すなわち、進入禁止ブロックが配置された場合、制御装置100は、圃場F外への逸脱防止制御と同様の制御を行う。
【0080】
なお、上記したような命令ブロック50は、各命令ブロック50ごとに平均作業時間の情報を有してもよい。これにより、予定走行経路Rが作成されると、平均作業時間の合計を予定作業時間として設定することができる。
【0081】
<予定走行経路の作成処理>
次に、図6を参照して制御装置100(図2参照)による予定走行経路Rの作成処理について説明する。図6は、予定走行経路Rの作成処理の説明図である。
【0082】
制御装置100は、作業者W(図3参照)によるタッチ画面(図2参照)からの入力操作に応じて、予定走行経路Rを作成する。このように、作業者Wの入力操作に応じて予定走行経路Rが作成可能なことから、作業者Wが任意に予定走行経路Rを決めることができる。これにより、自律走行の自由度を高めることができ、機体操作性や作業性を向上させることができる。たとえば、圃場Fにおける特有の条件(圃場F内に鉄塔や給水栓があるなど)や、作業者Wの好みや作業形態などにあわせた予定走行経路Rを作成することができる。
【0083】
図6に示すように、制御装置100は、予定走行経路Rの作成処理において、タッチ画面122に表示された圃場領域A内に、直進ブロック511、90度旋回ブロック512、180度旋回ブロック513などのメイン命令ブロック51(図5参照)、開始ブロック521、終了ブロック522、手動開始ブロック523aおよび手動終了ブロック523bなどのサブ命令ブロック52(図5参照)が配置されると、各命令ブロック50(図5参照)の配置に応じて、予定走行経路Rを作成する。
【0084】
なお、メイン命令ブロック51の大きさは、苗移植機1がメイン命令ブロック51に対応する命令を実行するために必要な領域となる。また、制御装置100は、メイン命令ブロック51が直進ブロック511の場合、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bまでを結ぶ直線に対して一定以上の方位のずれが検出されると、エラー状態として、たとえば、タッチ画面122に表示するなど、作業者Wへ報知する。エラー状態でない場合には、制御装置100は、制御終了ポイント53bへ近づくように苗移植機1を直進制御する。
【0085】
また、制御装置100は、メイン命令ブロック51が90度旋回ブロック512の場合、苗移植機1の方位が制御終了ポイント53b側の辺54b(図5参照)に対して直交する方位から一定以上のずれが検出されると、90度旋回ブロック512の領域内でリトライを行うように苗移植機1を制御してもよい。
【0086】
また、制御装置100は、メイン命令ブロック51が180度旋回ブロック513の場合、苗移植機1の方位が制御開始ポイント53a側の辺54aと直交する方位(進行方向の方位)から一定以上ずれていることが検出されると、180度旋回ブロック513の領域内でリトライを行うように苗移植機1を制御してもよい。また、制御装置100は、メイン命令ブロック51が180度旋回ブロック513の場合、制御開始ポイント53a側の辺54aに対して苗移植機1が平行かつ反対向きの方位となる状態で制御終了ポイント53bを通過するよう、苗移植機1の操作制御を行う。
【0087】
また、制御装置100は、一方のメイン命令ブロック51(たとえば、直進ブロック511)の制御終了ポイント53bと、他方のメイン命令ブロック51(たとえば、90度旋回ブロック512)の制御開始ポイント53aとが接続されると一連の経路とする。
【0088】
また、制御装置100は、圃場領域A内において、開始ブロック521によって予定走行経路Rの作成開始と判断し、終了ブロック522によって予定走行経路Rの作成終了と判断する。
【0089】
なお、制御装置100は、所定のメイン命令ブロック51(たとえば、直進ブロック511E)が接続されると、予定走行経路Rの作成完了と判断してもよい。このように、メイン命令ブロック51同士の制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとの接続で一連の経路を作成し、さらに、所定のメイン命令ブロック51(直進ブロック511E)が接続されることで予定走行経路Rの作成完了と判断するため、経路同士の接続を一意に決めることができ、予定走行経路Rが意図したものと異なる経路となるのを防止することができる。
【0090】
また、制御装置100は、メイン命令ブロック51で形成される経路の途中にサブ命令ブロック52が配置される場合には、サブ命令ブロック52が介在していても、メイン命令ブロック51による経路が接続されているものと判断する。
【0091】
また、制御装置100は、予定走行経路Rが完成して、圃場領域A内に命令ブロック50が存在しない領域がある場合には、作業が行われない領域が存在することを示す点灯表示やメッセージ表示などを、たとえば、情報端末120に実行させてもよい。また、制御装置100は、予定走行経路Rが完成して、圃場領域A内に命令ブロック50が存在しない領域がある場合には、命令ブロック50が存在しない領域を強調表示させてもよい。
【0092】
また、制御装置100は、予定走行経路Rが完成して、圃場領域A内に命令ブロック50が存在しない領域がサブ命令ブロック52の手動開始ブロック523aまたは手動終了ブロック523bと接する連続する領域である場合には、連続する領域全体を手動作業領域として設定する。
【0093】
また、制御装置100は、予定走行経路Rが完成して、圃場領域A内に命令ブロック50が重複する領域がある場合には、重複領域が存在することを示す点灯表示やメッセージ表示などを、たとえば、情報端末120に実行させてもよい。
【0094】
そして、制御装置100は、命令ブロック50に対応する苗移植機1または走行車体2(いずれも、図1参照)の自律走行を含む各部の制御を行う。このように、作業者Wによる命令ブロック50の配置に応じて制御を行うため、苗移植機1(図1参照)による作業を作業者Wが直感的にプログラムすることができる。これにより、入力操作性を向上させることができる。
【0095】
また、制御装置100は、位置取得装置4(図1参照)が受け取った測位情報または過去の作業情報に基づいて苗移植機1が作業を行う圃場F(図1参照)を指定するとともに、圃場領域A外にはみ出すような命令ブロック50(メイン命令ブロック51)の配置を禁止する。このように、命令ブロック50(メイン命令ブロック51)の圃場領域A外の配置を禁止することで、苗移植機1の圃場F外への逸脱を防止することができる。
【0096】
また、制御装置100は、作業者Wによって入力操作される場合に、圃場領域Aの外形線に沿って配置された命令ブロック50(すなわち、圃場Fの端縁部に配置された命令ブロック50)以外の命令ブロック50の角度を任意に指定可能としてもよく、これにより、矩形以外のいわゆる変形圃場や特殊な経路にも対応可能となり、圃場F内において予定走行経路Rの自由度が高まり、機体操作性および入力操作性をさらに向上させることができる。
【0097】
また、制御装置100は、圃場領域A内にサブ命令ブロック52(たとえば、手動ブロック523)が配置されることで、サブ命令ブロック52(手動ブロック523)に対応するサブ動作(手動走行モードへの切り替え動作)に関する命令(たとえば、サブ動作の許可、禁止および属性決定・変更の少なくともいずれか)を実行する。これにより、苗の植え付け作業などの対地作業の開始・終了や、苗の植え付けモードなどの作業モードの切り替えなどのサブ動作を苗移植機1に実行させることができ、作業の自由度を高めることができ、機体操作性や作業性をさらに向上させることができる。
【0098】
また、制御装置100は、苗移植機1の手動操作による圃場Fの3辺の走行で圃場Fの外形を認識する。そして、制御装置100は、認識した圃場Fの外形に基づいて予定走行経路Rを自動作成し、自動作成した予定走行経路Rを、直進および旋回(90度旋回、180度旋回)などの要素に分解し、分解した予定走行経路Rを作業者Wによって編集可能とする。このように、自動作成した予定走行経路Rの分解・編集も可能なため、予定走行経路Rの作成の自由度を高めつつ、予定走行経路Rの作成をさらに容易に行うことができる。
【0099】
また、制御装置100は、制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとが接続される場合、接続される2点にそれぞれ異なる操作指示属性値が付与されていれば、エラーとして検出する。また、制御装置100は、エラーが発生した場合、エラー状態が解消されるまで、接続を禁止する。
【0100】
また、制御装置100は、エラーが発生した場合には、命令ブロック50(たとえば、メイン命令ブロック51)の制御開始ポイント52aおよび制御終了ポイント53bなどの接続点を、たとえば、通常とは異なる色で表示する。制御装置100は、エラー状態が解消されると表示を元の色に戻す。
【0101】
また、制御装置100は、エラーが発生した場合には、タッチ画面122においてポップアップ画面を表示することで報知してもよい。制御装置100は、エラー状態が解消されるとポップアップ画面を消去する。ポップアップ画面には、ポップアップ画面を消去するボタンを有し、作業者Wがボタンを押してポップアップ画面を消去するように構成してもよい。
【0102】
また、制御装置100は、タッチ画面122に、発生しているエラーの一覧を表示してもよい。
【0103】
また、制御装置100は、命令ブロック50(たとえば、メイン命令ブロック51)の制御開始ポイント52aおよび制御終了ポイント53bなどの接続点が未接続の場合には、これらの接続点を、たとえば、通常とは異なる色で表示する。
【0104】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「植付上げ」、「植付下げ」、「植付クラッチ入り」、「植付クラッチ切り」、「条切り」を有する。なお、「条切り」では、たとえば、2条単位で条切り数を指定することができる。また、「条切り」では、たとえば、右側から任意の条数を切ることができる。また、「条切り」では、たとえば、左側から任意の条数を切ることができる。また、「条切り」では、たとえば、左右両側から連続して任意の条数を切ることができ、連続しない特定の位置の条は切らない。
【0105】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「自動操舵入り」、「自動操舵切り」を有する。また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「固定操舵角指示」を有する。なお、「固定操舵角指示」では、任意の操舵角を指示することができる。
【0106】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「論理判定」を有する。なお、「論理判定」では、特定の判定条件に対して、真の場合の動作と偽の場合の動作を指示することができる。また、「論理判定」では、特定の判定条件に対する動作として、「特殊命令セット」を指定することができる。なお、「特殊命令セット」としては、たとえば、「畦寄せ停止」がある。「畦寄せ停止」では、苗移植機1の畦寄せ停止を制御終了ポイント53bでの操作指示属性値の論理判定でのみ指定することができ、この動作を開始した接続点の情報を保持する。たとえば、動作再開の操作がなされた場合は、この動作を開始した接続点まで戻り(苗移植機1を後進させ)、経路設定で接続された次の命令ブロック50の動作へと移行する。このような「畦寄せ停止」では、苗移植機1を、畦まで直進させた後、畦から所定の距離手前で停止させる。
【0107】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「ロボットリセット」を有する。なお、「ロボットリセット」では、ロボット(苗移植機1)が保持している経路情報やその他の内部計算値などの記憶値をリセットし、電源投入直後と同等の状態とする。
【0108】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「操舵パラメータ変更」を有する。なお、「操舵パラメータ変更」では、操舵量の計算に関する複数の計算パラメータを個別に変更することができる。なお、「計算パラメータセット」として、複数の計算パラメータの任意の値の組み合わせを記録することができる。このような任意の組み合わせは、任意の名称で記録することができる。また、記録した名称で指定することで、任意の組み合わせをセットすることができる。
【0109】
また、制御装置100は、上記操作指示属性値として、たとえば、「センサフィルタ感度変更」を有する。
【0110】
また、制御装置100は、作成した予定走行経路Rを他の機種との間で共有することができる。この場合、該当機種を経路設定画面などで指定することで、該当機種の機能に応じて機能制限を行うことができる。また、該当機種の通信および経路の認識方法に応じて通信情報を変換することで、あらゆる機種に対応することができる。また、メーカおよび該当機種を経路設定画面などで指定することで、該当機種の機能に応じて機能制限を行うことができる。また、該当機種の通信および経路の認識方法に応じて通信情報を変換することで、あらゆる機種に対応することができる。
【0111】
なお、上記した実施形態では、情報端末120を用いた無線通信によって予定走行経路Rの作成や編集を行うことができるが、これに限定されず、有線通信によって予定走行経路Rの作成や編集を行うものであってもよいし、苗移植機1との通信機能を有しないPCなどの情報端末で予定走行経路Rの作成や編集を行うものであってもよい。なお、苗移植機1との通信機能を有しない情報端末で予定走行経路Rの作成や編集を行った場合には、苗移植機1と通信可能な情報端末へデータを渡す必要がある。
【0112】
また、上記した実施形態では、予定走行経路Rの開始点、すなわち、作業開始点P図3参照)に配置されるメイン命令ブロック51へと自動で到達するよう、苗移植機1が制御されてもよい。
【0113】
また、上記した実施形態では、作業車両1を「苗移植機」としているが、これに限定されず、たとえば、作業車両1を「農業用トラクタ」としてもよい。作業車両1が農業用トラクタの場合、たとえば、作業機3として耕耘機を備え、圃場F内の耕耘作業を行う。
【0114】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両1が実現される。
【0115】
(1)圃場Fを走行可能な走行車体2と、走行車体2に設けられ、圃場Fにおいて作業を行う作業機3と、走行車体2に設けられ、衛星測位システムから測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の位置情報Pを取得する位置取得装置4と、位置情報Pに基づいて走行車体2の走行基準となる予定走行経路Rを作成し、作成した予定走行経路Rに沿って走行車体2を自律走行させる制御装置100と、作業者Wの入力操作を受け付け、受け付けた作業者Wの入力操作を制御装置100へ送る入力操作部122とを備え、制御装置100は、作業者Wの入力操作に応じて予定走行経路Rを作成する、作業車両1。
【0116】
このような作業車両1によれば、作業者Wの入力操作に応じて予定走行経路Rが作成可能なことから、作業者Wが任意に予定走行経路Rを決めることができる。これにより、自律走行の自由度を高めることができ、機体操作性や作業性を向上させることができる。
【0117】
(2)上記(1)において、入力操作部122は、作業車両1へ命令するための命令ブロック50を表示する画面であり、制御装置100は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域A内に命令ブロック50が配置されることで、命令ブロック50に対応する走行車体2の自律走行を含む各部の制御を行う、作業車両1。
【0118】
このような作業車両1によれば、上記(1)の効果に加えて、作業者Wによる命令ブロック50の配置に応じて制御を行うため、作業車両1による作業を作業者Wが直感的にプログラムすることができる。これにより、入力操作性を向上させることができる。
【0119】
(3)上記(2)において、制御装置100は、測位情報に基づいて作業車両1が作業を行う圃場Fを指定し、制御装置100は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域A外にはみ出すような命令ブロック50の配置を禁止する、作業車両1。
【0120】
このような作業車両1によれば、上記(2)の効果に加えて、命令ブロック50の圃場領域A外の配置を禁止することで、作業車両1の圃場F外への逸脱を防止することができる。
【0121】
(4)上記(3)において、命令ブロック50は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域A内において、命令に対応する制御が開始される制御開始ポイント53aと、命令に対応する制御が終了する制御終了ポイント53bとを有し、制御装置100は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域Aの外形線に沿って配置される命令ブロック50以外の命令ブロック50の角度を任意に指定可能とする、作業車両1。
【0122】
このような作業車両1によれば、上記(3)の効果に加えて、命令ブロック50が制御開始ポイント53aと制御終了ポイント53bとを有することで、前の工程と次の工程との接続が明確となり、また、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域Aの外形線に沿って配置される命令ブロック50以外の命令ブロック50の角度を任意に指定することが可能なため、機体操作性および入力操作性をさらに向上させることができる。
【0123】
(5)上記(4)において、命令ブロック50は、予定走行経路Rを作成するための要素となるメイン命令ブロック51を含み、制御装置100は、一方のメイン命令ブロック51の制御終了ポイント53bと他方のメイン命令ブロック51の制御開始ポイント53aとが接続されると一連の経路とし、メイン命令ブロック51のうち所定のメイン命令ブロック51が接続されると予定走行経路Rの作成を完了したと判断する、作業車両1。
【0124】
このような作業車両1によれば、上記(4)の効果に加えて、メイン命令ブロック51同士の接続、すなわち、経路同士の接続を一意に決めることができ、予定走行経路Rが意図したものと異なる経路となるのを防止することができる。
【0125】
(6)上記(5)において、命令ブロック50は、予定走行経路Rを作成するための要素以外のサブ動作の要素となるサブ命令ブロック52を含み、制御装置100は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域A内にサブ命令ブロック52が配置されることで、サブ命令ブロック52に対応するサブ動作に関する命令を実行する、作業車両1。
【0126】
このような作業車両1によれば、上記(5)の効果に加えて、予定走行経路Rの作成以外のサブ動作、たとえば、対地作業の開始・終了や作業モードの切り替えなどの動作を走行車体2や作業機3に実行させることができる。これにより、作業の自由度を高めることができ、機体操作性や作業性をさらに向上させることができる。
【0127】
(7)上記(6)において、制御装置100は、作業車両1の手動操作による圃場Fの3辺の走行で圃場Fの外形を認識し、圃場Fの外形に基づいて予定走行経路Rを自動作成するとともに、自動作成した予定走行経路Rを要素に分解し、分解した予定走行経路Rを編集可能とする、作業車両1。
【0128】
このような作業車両1によれば、上記(6)の効果に加えて、自動作成した予定走行経路Rの分解・編集も可能なため、予定走行経路Rの作成の自由度を高めつつ、予定走行経路Rの作成をさらに容易に行うことができる。
【0129】
(8)上記(5)~(7)のいずれかにおいて、メイン命令ブロック51は、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bまでを結ぶ直線に沿って走行車体2を操舵制御する命令、または、制御開始ポイント53aから制御終了ポイント53bへ向かう方位に従って走行車体2を操舵制御する命令となる直進ブロック511を含む、作業車両1。
【0130】
このような作業車両1によれば、上記(5)~(7)のいずれかの効果に加えて、直進ブロック511によって、作業者Wが直感的、かつ、容易に走行車体2の直進を定義することができる。
【0131】
(9)上記(5)~(8)のいずれかにおいて、メイン命令ブロック51は、画面(入力操作部122)に表示される圃場領域Aの角部に配置可能であり、制御開始ポイント53a側の辺54aから対向する辺54aを結ぶ直線に対して直交する辺54bが制御終了ポイント53b側となる90度旋回ブロック512を含み、90度旋回ブロック512は、90度旋回ブロック512が配置される領域内で走行車体2を旋回制御する命令となり、制御装置100は、90度旋回ブロック512が配置されると、制御開始ポイント53a側の辺54aから対向する辺54aを結ぶ直線に対して直交する方位で制御終了ポイント53bを通過するよう走行車体2を制御する、作業車両1。
【0132】
このような作業車両1によれば、上記(5)~(8)のいずれかの効果に加えて、90度旋回ブロック512によって、作業者Wが直感的、かつ、容易に走行車体2の旋回(90度旋回)を定義することができる。
【0133】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 作業車両(苗移植機)
2 走行車体
3 作業機(苗植付装置)
4 位置取得装置(GNSS)
50 命令ブロック
51 メイン命令ブロック
511 直進ブロック
512 90度旋回ブロック
52 サブ命令ブロック
53a 制御開始ポイント
53b 制御終了ポイント
54a 辺
54b 辺
100 制御装置
122 入力操作部(タッチ画面)
圃場領域
F 圃場
P 位置情報
R 予定走行経路
W 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6