(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】接着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20231129BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231129BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231129BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231129BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J11/04
C09J11/06
C09J133/00
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2021204926
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2018501073の分割
【原出願日】2017-01-25
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2016035409
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】頼 華子
(72)【発明者】
【氏名】増子 崇
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186361(JP,A)
【文献】特開2015-193704(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035354(WO,A1)
【文献】特開2012-190719(JP,A)
【文献】特開2010-044998(JP,A)
【文献】特開平10-237410(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0129185(KR,A)
【文献】特表2012-504668(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129600(WO,A1)
【文献】特開2013-095782(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060125(WO,A1)
【文献】特開2001-118961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/30
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 133/00
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリル樹脂(シリコーン-アクリル粒子を除く)、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラを含み、
前記(d)α-アルミナフィラが、純度99.90質量%以上の多面体のα-アルミナフィラを含有し、
前記(d)α-アルミナフィラの含有量が、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラの合計量100質量部に対して、60~95質量部であり、
前記(a)アクリル樹脂は、エポキシ基を含有するアクリル共重合体であり、重量平均分子量が500000~2000000であり、ガラス転移温度が-50℃~30℃であり、
前記(b)エポキシ樹脂が、二官能エポキシ樹脂と三官能以上のエポキシ樹脂(エポキシ基含有アクリル樹脂を除く)とを含有
し、
前記(c)硬化剤が、下記式(I)で表される化合物である、接着フィルム。
【化1】
[式(I)中、R
1
は、水素原子、炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、nは、1~3の整数を表し、mは、0~50の整数を表す。式(I)中、複数存在するR
1
及びnは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(d)α-アルミナフィラの平均粒径(d
50)が、前記接着フィルムの厚みの1/2以下である、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記(d)α-アルミナフィラの含有量が、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラの合計量100質量部に対して、60~90質量部である、請求項1又は2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
厚みが50μm以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム及びダイシング・ダイボンディングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子を載置したダイスパッド及びリード部の下部に接着剤を介して金属ベースを配置し、半導体装置用パッケージの放熱効果を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、金属ベース、半導体素子、ダイスパッド等の熱膨張率はそれぞれ異なるため、半導体素子が発熱を繰り返すことにより、金属ベースが剥離する、クラックが生じる等の問題がある。
【0003】
ところで、接着フィルムとして、例えば、高熱伝導粒子又は熱伝導性フィラーを含有する接着フィルムが知られている(例えば、特許文献2及び3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-198701号公報
【文献】特開2009-235402号公報
【文献】特開2014-68020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記用途に用いられる接着フィルムは、接着性と、熱硬化後の熱伝導性とに優れることが求められる。
【0006】
しかしながら、上記従来の接着フィルムは、接着性と熱硬化後の熱伝導性との両立の点で充分とはいえない。
【0007】
そこで、本発明は、接着性と、熱硬化後の熱伝導性とに優れる接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の具体的態様を以下に示す。
[1] (a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラを含み、上記(d)α-アルミナフィラが、純度99.90質量%以上の多面体のα-アルミナフィラを含有し、上記(d)α-アルミナフィラの含有量が、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラの合計量100質量部に対して、60~95質量部である、接着フィルム。
[2] 上記(d)α-アルミナフィラの平均粒径(d50)が、上記接着フィルムの厚みの1/2以下である、[1]に記載の接着フィルム。
[3] 上記(d)α-アルミナフィラの含有量が、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラの合計量100質量部に対して、60~90質量部である、[1]又は[2]に記載の接着フィルム。
[4] 上記(a)アクリル樹脂は、エポキシ基を含有するアクリル共重合体であり、重量平均分子量が100000以上であり、ガラス転移温度が-50℃~30℃である、[1]~[3]のいずれかに記載の接着フィルム。
[5] 厚みが50μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の接着フィルム。
[6] ダイシングフィルムと、当該ダイシングフィルム上に積層されたダイボンディングフィルムとを備え、上記ダイボンディングフィルムが、[1]~[5]のいずれかに記載の接着フィルムである、ダイシング・ダイボンディングフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着性と、熱硬化後の熱伝導性とに優れる接着フィルム及び当該接着フィルムを用いたダイシング・ダイボンディングフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
〔接着フィルム〕
本実施形態の接着フィルムは、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラを含み、上記(d)α-アルミナフィラが、純度99.90質量%以上の多面体のα-アルミナフィラを含有し、上記(d)α-アルミナフィラの含有量が、(a)アクリル樹脂、(b)エポキシ樹脂、(c)硬化剤及び(d)α-アルミナフィラの合計量100質量部に対して、60~95質量部であるものである。本実施形態の接着フィルムは、接着性と、熱硬化後の熱伝導性とに優れる。また、本実施形態の接着フィルムは、ラミネート性にも優れ、かつ、表面粗さも小さいものであり得る。
【0012】
ところで、上記特許文献2には、ワニスを用いて形成した一次フィルムに厚み方向の圧力をかけることにより接着フィルムを得ることが記載されている。一方で、本実施形態の接着フィルムによれば、一次フィルムに厚み方向の圧力をかける工程は必ずしも必要ではない。
【0013】
[(a)アクリル樹脂]
本実施形態に係る(a)アクリル樹脂(以下、場合により「(a)成分」という)は、1種のモノマーに由来する構造単位を有するアクリル重合体であってもよく、2種以上のモノマーに由来する構造単位を有するアクリル共重合体であってもよい。アクリル共重合体としては、例えば、アクリルゴムが挙げられる。アクリルゴムとしては、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一種と、アクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。(a)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(a)成分は、接着性、耐熱性、及び熱硬化後の耐吸湿性の観点から、反応性基(官能基)を有するものであってもよい。
【0015】
上記反応性基としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基、水酸基及びエポキシ基が挙げられる。
【0016】
反応性基を有するアクリル樹脂は、例えば、アクリルポリマーを得る重合反応において、上記反応性基を有するモノマー(グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等)を、反応性基が残存するように重合すること、又は、アクリルポリマーに対して反応性基を導入することにより製造できる。
【0017】
ワニス状態でのゲル化が低減され易い観点、並びにBステージ状態での硬化度の上昇及び硬化度の上昇に起因した接着力の低下が生じ難い観点から、上記反応性基は、エポキシ基であってもよい。すなわち、(a)成分は、エポキシ基を有するアクリル樹脂であってもよい。
【0018】
反応性基がエポキシ基である場合に、このような効果が奏される理由を、本発明者らは、以下のように推測する。
【0019】
反応性基が、例えば、カルボキシ基である場合、橋架け反応が進行し易く、ワニス状態でのゲル化及びBステージ状態での硬化度の上昇が生じることがあると考えられる。一方で、反応性基が、エポキシ基である場合、橋架け反応が生じ難く、ワニス状態でのゲル化及びBステージ状態での硬化度の上昇が生じ難いと考えられる。
【0020】
エポキシ基を有するアクリル樹脂としては、例えば、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートから選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有するアクリル樹脂が挙げられる。
【0021】
(a)成分は、接着性及び耐熱性が向上する観点から、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートに由来する構造単位を、(a)成分の全質量を基準にして、例えば、0.5質量%以上含むものであってもよく、2質量%以上含むものであってもよい。(a)成分は、ゲル化を低減する観点から、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートに由来する構造単位を、(a)成分の全質量を基準にして、例えば、6質量%以下含むものであってもよい。これらの観点から、(a)成分は、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートに由来する構造単位を、(a)成分の全質量を基準にして、例えば、0.5~6質量%を含むものであってもよく、2~6質量%含むものであってもよい。
【0022】
(a)成分は、例えば、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を含むものであってもよい。炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレートが挙げられる。炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びブチルメタクリレートが挙げられる。中でも、接着性の観点から、(a)成分は、エチル(メタ)アクリレート由来する構造単位及び/又はブチル(メタ)アクリレート由来する構造単位を含むものであってもよい。ここで、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0023】
(a)成分が、アクリル共重合体である場合、各モノマーの共重合比率は、共重合体のガラス転移温度(以下、場合により「Tg」という)を考慮して調整してもよい。
【0024】
(a)成分の製造に係る重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合及び溶液重合が挙げられる。
【0025】
(a)成分のTgは、Bステージ状態の接着フィルムにおいて、タック性が高まり難く、取り扱い性に優れる観点から、例えば、-50℃以上であってもよく、-10℃以上であってもよい。(a)成分のTgは、接着性及び耐熱性が向上する観点から、例えば、-50℃~30℃であってもよく、-10℃~30℃であってもよい。
【0026】
(a)成分の重量平均分子量は、接着性及び耐熱性が向上する観点から、100000以上であってもよい。
【0027】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で測定される、標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0028】
シート状及びフィルム状としたときに、強度及び可とう性が低下し難く、かつ、タック性が増大し難い観点から、(a)成分の重量平均分子量は、例えば、300000以上であってもよく、500000以上であってもよい。フロー性が大きく、配線の回路充填性に優れる観点から、(a)成分の重量平均分子量は、例えば、3000000以下であってもよく、2000000以下であってもよい。これらの観点から、(a)成分の重量平均分子量は、300000~3000000であることが好ましく、500000~2000000であることがより好ましい。
【0029】
(a)成分は、反応性基を有するアクリル樹脂であり、かつ、重量平均分子量が100000以上であることが好ましく、エポキシ基を含有するアクリル共重合体(エポキシ基含有アクリル共重合体)であり、かつ、重量平均分子量が100000以上であることがより好ましく、エポキシ基を含有するアクリル共重合体であり、重量平均分子量が100000以上であり、かつ、ガラス転移温度が-50℃~30℃であることが更に好ましい。
【0030】
接着性及び耐熱性が向上する観点から、(a)成分は、反応性基としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートに由来する構造単位を0.5~6質量%を含み、Tgが-50℃~30℃であり、重量平均分子量が100000以上であるアクリル共重合体であることが好ましい。
【0031】
グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートに由来する構造単位を0.5~6質量%含み、Tgが-10℃~30℃であり、重量平均分子量が100000以上であるアクリル共重合体としては、例えば、HTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0032】
[(b)エポキシ樹脂]
本実施形態に係る(b)エポキシ樹脂(以下、場合により「(b)成分」という)は、例えば、硬化して接着作用を呈するものである。
【0033】
(b)成分は、耐熱性の観点から、官能基を2つ以上有するエポキシ樹脂(二官能基以上のエポキシ樹脂)であることが好ましい。
【0034】
(b)成分の重量平均分子量は、耐熱性の観点から、例えば、5000未満であってもよく、3000未満であってもよく、2000未満であってもよい。
【0035】
(b)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;アミン型エポキシ樹脂;複素環含有エポキシ樹脂;及び脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。(b)成分としては、上記以外の一般に知られているエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0036】
市販のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1055、エピコート1004、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1003F及びエピコート1004F(以上、三菱化学株式会社製、商品名);DER-330、DER-301、DER-361、DER-661、DER-662、DER-663U、DER-664、DER-664U、DER-667、DER-642U、DER-672U、DER-673MF、DER-668、及びDER-669(以上、ダウケミカル社製、商品名);並びにYD8125(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0037】
市販のビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、YDF-2004及びYDF-8170C(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0038】
市販のフェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート152及びエピコート154(以上、三菱化学株式会社製、商品名);EPPN-201(日本化薬株式会社製、商品名);並びにDEN-438(ダウケミカル社製、商品名)が挙げられる。
【0039】
市販のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート180S65(三菱化学株式会社製、商品名);アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1280及びアラルダイトECN1299(以上、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名);YDCN-701、YDCN-702、YDCN-703及びYDCN-704(以上、新日鉄住金化学株式会社製、商品名);EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1020、EOCN-1025及びEOCN-1027(以上、日本化薬株式会社製、商品名);並びにESCN-195X、ESCN-200L及びESCN-220(以上、住友化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0040】
市販の多官能エポキシ樹脂としては、例えば、エポン1031S、エピコート1032H60及びエピコート157S70(以上、三菱化学株式会社製、商品名);アラルダイト0163(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名);デナコールEX-611、デナコールEX-614、デナコールEX-614B、デナコールEX-622、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-421、デナコールEX-411及びデナコールEX-321(以上、ナガセケムテックス株式会社製、商品名);並びにEPPN501H及びEPPN502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0041】
市販のアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート604(三菱化学株式会社製、商品名);YH-434(新日鉄住金化学株式会社製、商品名);TETRAD-X、及びTETRAD-C(以上、三菱ガス化学株式会社製、商品名);並びにELM-120(住友化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0042】
市販の複素環含有エポキシ樹脂としては、例えば、アラルダイトPT810(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0043】
市販の脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、ERL4234、ERL4299、ERL4221及びERL4206(以上、UCC社製、商品名)が挙げられる。
【0044】
(b)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(b)成分は、耐熱性の観点から、二官能エポキシ樹脂と三官能以上のエポキシ樹脂とを含有していてもよい。(b)成分が、二官能エポキシ樹脂と三官能以上のエポキシ樹脂とを含有する場合、二官能エポキシ樹脂の含有量は、熱硬化後の接着フィルムのTgを高める観点から、二官能エポキシ樹脂及び三官能以上のエポキシ樹脂の総質量を基準として、例えば、50質量%以上100質量%未満であってもよく、50~90質量%であってもよい。同様の観点から、三官能以上のエポキシ樹脂の含有量は、二官能エポキシ樹脂及び三官能以上のエポキシ樹脂の総質量を基準として、例えば、0超50質量%以下であってもよく、10~50質量%であってもよい。
【0046】
[(c)硬化剤]
本実施形態に係る(c)硬化剤(以下、場合により「(c)成分」という)は、(b)成分を硬化させることが可能なものであれば、特に限定することなく使用可能である。(c)成分としては、例えば、多官能フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物、ポリアミド、ポリスルフィド、並びに三フッ化ホウ素が挙げられる。
【0047】
多官能フェノール化合物としては、例えば、単環二官能フェノール化合物及び多環二官能フェノール化合物が挙げられる。単環二官能フェノールとしては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール及びカテコール、並びに、これらのアルキル基置換体が挙げられる。多環二官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール及びビフェノール、並びに、これらのアルキル基置換体が挙げられる。また、多官能フェノール化合物は、例えば、上記単環二官能フェノール化合物及び上記多環二官能フェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール化合物と、アルデヒド化合物との重縮合物であってもよい。当該重縮合物は、例えば、フェノール樹脂である。当該フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0048】
上記フェノール樹脂(フェノール樹脂硬化剤)の市販品としては、例えば、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH4150及びフェノライトVH4170(以上、DIC株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0049】
上記フェノール樹脂の水酸基当量は、接着性、耐熱性の観点から、例えば、250g/eq以上であってもよく、200g/eq以上であってもよく、150g/eq以上であってもよい。また、(c)成分としてのフェノール樹脂は、吸湿時の耐電食性が向上する観点から、ノボラック型又はレゾール型の樹脂であることが好ましい。
【0050】
上記フェノール樹脂は、耐湿性が向上する観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間置いた後の吸水率が2質量%以下のものであることが好ましい。また、(c)成分としてのフェノール樹脂は、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱重量減少率(昇温速度:5℃/min、雰囲気:窒素)が5重量%未満のものであることが好ましい。このようなフェノール樹脂を硬化剤として用いると、加熱加工時などにおいて揮発分が抑制されることで、耐熱性、耐湿性などの諸特性の信頼性が高くなり、また、加熱加工などの作業時の揮発分による機器の汚染を低減することができると考えられる。
【0051】
上記フェノール樹脂の具体例は、下記式(I)で表される化合物を含む。
【0052】
【0053】
式(I)中、R1は、水素原子、炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、nは、1~3の整数を表し、mは、0~50の整数を表す。式(I)中、複数存在するR1及びnは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0054】
式(I)で表される化合物としては、例えば、ミレックスXLC-シリーズ及び同XLシリーズ(以上、三井化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0055】
式(I)で表される化合物は、例えば、フェノール化合物とキシリレン化合物とを、無触媒又は酸触媒(酸性触媒)の存在下に反応させて得ることができる。なお、キシリレン化合物は、当該反応により、2価の連結基を形成し得る。
【0056】
式(I)で表される化合物の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-n-プロピルフェノール、m-n-プロピルフェノール、p-n-プロピルフェノール、o-イソプロピルフェノール、m-イソプロピルフェノール、p-イソプロピルフェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、2,4,6-トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-アリルフェノール、p-アリルフェノール、o-ベンジルフェノール、p-ベンジルフェノール、o-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-ヨードフェノール、p-ヨードフェノール、o-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール及びp-フルオロフェノールが挙げられる。上記フェノール化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
接着性、耐熱性、耐湿性の観点から、式(I)で表される化合物の製造に用いられるフェノール化合物は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、又はp-クレゾールであることが好ましい。
【0058】
式(I)で表される化合物の製造に用いられるキシリレン化合物としては、例えば、キシリレンジハライド及びキシリレンジグリコール、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
【0059】
上記キシリレン化合物の具体例は、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、α,α’-ジクロロ-m-キシレン、α,α’-ジクロロ-o-キシレン、α,α’-ジブロモ-p-キシレン、α,α’-ジブロモ-m-キシレン、α,α’-ジブロモ-o-キシレン、α,α’-ジヨード-p-キシレン、α,α’-ジヨード-m-キシレン、α,α’-ジヨード-o-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-p-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-m-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-o-キシレン、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、α,α’-ジメトキシ-m-キシレン、α,α’-ジメトキシ-o-キシレン、α,α’-ジエトキシ-p-キシレン、α,α’-ジエトキシ-m-キシレン、α,α’-ジエトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-p-キシレン、α,α’-n-プロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-イソプロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-m-キシレン及びα,α’-ジ-tert-ブトキシ-o-キシレンを含む。上記キシリレン化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記キシリレン化合物は、接着性、耐熱性、耐湿性の良好なフェノール樹脂を製造できる観点から、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、α,α’-ジクロロ-m-キシレン、α,α’-ジクロロ-o-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-p-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-m-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-o-キシレン、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、α,α’-ジメトキシ-m-キシレン、又はα,α’-ジメトキシ-o-キシレンであることが好ましい。
【0061】
上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の超強酸性イオン交換樹脂(例えば、ナフィオン(Nafion、Du Pont社製、商品名));天然及び合成ゼオライト化合物;及び、活性白土(例えば、酸性白土)が挙げられる。
【0062】
上記反応は、例えば、50~250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、かつ反応組成が一定になるまで行われる。
【0063】
反応時間は、原料及び反応温度に応じて適宜調整できる。反応時間は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定してもよい。反応時間は、例えば、1時間~15時間程度であってもよい。
【0064】
酸触媒の存在下において上記反応が進行すると、通常、水又はアルコールが生成する。
【0065】
一方で、例えば、キシリレン化合物としてα,α’-ジクロロ-p-キシレンのようなハロゲノキシレン誘導体を用いる場合、ハロゲン化水素ガスを生じながら無触媒にて反応が進行するため、必ずしも酸触媒を必要としない。
【0066】
フェノール化合物とキシリレン化合物との反応モル比は、通常、フェノール化合物が過剰となる条件とする。この場合、未反応フェノール化合物は、反応後に回収する。式(I)で表される化合物の重量平均分子量は、通常、フェノール化合物とキシリレン化合物との反応モル比により決定される。フェノール化合物が過剰であるほど、式(I)で表される化合物の重量平均分子量が、低下する傾向にある。
【0067】
上記フェノール樹脂は、例えば、アリルフェノール骨格を有するものであってもよい。アリルフェノール骨格を有するフェノール樹脂は、フェノール樹脂は、例えば、アリル化されていないフェノール樹脂を製造し、これにアリルハライドを反応させ、アリルエーテルを経て、クライゼン転移によりアリル化する方法により得ることができる。
【0068】
(c)成分としての上記アミン化合物としては、例えば、脂肪族又は芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩;脂肪族環状アミン化合物;グアニジン化合物;及び尿素誘導体が挙げられる。
【0069】
上記アミン化合物の具体例は、N,N-ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]-5-ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジフェニルアミン、N-メチルアニリン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、トリルビグアニド、グアニル尿素及びジメチル尿素を含む。上記アミン化合物は、例えば、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;グアナミン酸;メラミン酸;エポキシ化合物とジアルキルアミン化合物との付加化合物;アミンとチオ尿素との付加化合物;及びアミンとイソシアネートとの付加化合物であってもよい。これらのアミン化合物は、室温での活性が低減される観点から、例えば、アダクト型の構造を有していてもよい。
【0070】
(c)成分としての上記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0071】
(c)成分としての上記有機リン化合物は、有機基を有するリン化合物であれば特に限定されない。上記有機リン化合物としては、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド、リン酸トリ(ジクロロプロピル)、リン酸トリ(クロロプロピル)、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、フェニルフォスフォン酸、トリフェニルフォスフィン、トリ-n-ブチルフォスフィン及びジフェニルフォスフィンが挙げられる。
【0072】
(c)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
[(d)α-アルミナフィラ]
本実施形態に係る(d)α-アルミナフィラ(以下、場合により(d)成分という)は、(d1)純度99.90質量%以上の多面体のα-アルミナフィラ(以下、場合により(d1)成分という)を含有する。なお、本明細書において、多面体とは、表面の構成部分として複数の平面を有する立体をいう。複数存在する平面は、それぞれ曲面を介して交わっていてもよい。多面体は、例えば、表面の構成部分として4~100の平面を有していてもよい。
【0074】
(d)成分は、(d1)成分以外のα-アルミナフィラ(例えば、球状のα-アルミナフィラ)を更に含有していてもよい。この場合、(d)成分における(d1)成分の含有量は、(d)成分の全質量を基準として、例えば、50質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。また、(d)成分は、例えば、(d1)成分からなる態様、すなわち、(d)成分は(d1)成分であってもよい。
【0075】
(d)成分の平均粒径(d50)は、接着強度、ラミネート性及び信頼性が更に向上する観点から、接着フィルムの厚みの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましい。(d)成分の平均粒径(d50)は、例えば、接着フィルムの厚みの1/1000以上であってもよく、1/500以上であってもよく、1/100以上であってもよい。
【0076】
(d)成分の平均粒径(d90)は、接着強度、ラミネート性及び信頼性が更に向上する観点から、接着フィルムの厚みの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であること更に好ましい。(d)成分の平均粒径(d90)は、例えば、接着フィルムの厚みの1/1000以上であってもよく、1/500以上であってもよく、1/100以上であってもよい。
【0077】
なお、本明細書において、平均粒径(d50)は、粒度分布の積算値が50%に相当する粒径をいい、平均粒径(d90)は、粒度分布の積算値が90%に相当する粒径をいう。
【0078】
(d)成分は、例えば、平均粒径(d50)が異なる2種以上のα-アルミナフィラの混合物であってもよい。この場合、混合物の平均粒径(d50)及び平均粒径(d90)が、上述の範囲内であることが好ましい。
【0079】
本実施形態の接着フィルムにおける(a)成分の含有量は、弾性率が低下する観点及び成形時のフロー性を付与する観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、例えば、3質量%以上であってもよい。(a)成分の含有量は、貼付け荷重が少ない場合でも流動性が低下し難く、回路充填性に優れる観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、例えば、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。これらの観点から、上記(a)成分の含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、3~40質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが更に好ましい。
【0080】
本実施形態の接着フィルムにおける(b)成分の含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、例えば、3質量%以上であってもよい。(b)成分の含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、例えば、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。(b)成分の含有量は、熱硬化後の接着性、耐熱性、耐吸湿性の観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計質量を基準として、例えば、3~40質量%であってもよく、3~30質量%であってもよく、3~20質量%であってもよい。
【0081】
本実施形態の接着フィルムにおける(c)成分の含有量は、(b)成分の硬化反応を進行させることができれば、特に制限は無いが、(b)成分中のエポキシ基1当量を基準として、エポキシ基と反応可能な(c)成分中の活性基(水酸基、アミノ基、酸無水物基、リン原子を含有する基等)が、例えば、0.01~5.0当量の範囲であってもよく、0.8~1.2当量の範囲であってもよい。
【0082】
例えば、(c)成分がフェノール樹脂である場合、本実施形態の接着フィルムにおける(c)成分の含有量は、接着フィルムとしたときの硬化性が向上する観点から、(b)成分のエポキシ当量と、フェノール樹脂の水酸基当量の当量比(エポキシ当量/水酸基当量)で、例えば、0.70/0.30~0.30/0.70であってもよく、0.65/0.35~0.35/0.65であってもよく、0.60/0.30~0.30/0.60であってもよく、0.55/0.45~0.45/0.55であってもよい。
【0083】
本実施形態の接着フィルムにおける(d)成分の含有量は、上述のとおり、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量100質量部に対して、60~95質量部である。(d)成分の含有量は、接着フィルムの熱伝導率が更に向上する観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量100質量部に対して、例えば、65質量部以上であってもよく、70質量部以上であってもよい。(d)成分の含有量は、接着フィルムの可撓性及び接着性が向上する観点から、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量100質量部に対して、例えば、90質量部以下であってもよい。これらの観点から、(d)成分の含有量は、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計量100質量部に対して、例えば、60~90質量部であってもよく、70~90質量部であってもよい。
【0084】
[その他の成分]
本実施形態の接着フィルムは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、硬化促進剤、(d)成分以外のフィラー、カップリング剤及びイオン捕捉剤が挙げられる。
【0085】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、特に制限は無く、例えば、イミダゾール化合物が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、4,5-ジフェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-ヘプタデシルイミダゾリン、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾリン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1-シアノエチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、及び1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。上記硬化促進剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、2E4MZ、2PZ-CN及び2PZ-CNS(いずれも、四国化成工業(株)製、商品名)が挙げられる。
【0086】
また、フィルムの使用期間が長くなる観点から、硬化促進剤は、潜在性を有する硬化促進剤であってもよい。このような硬化促進剤としては、例えば、エポキシ化合物とイミダゾール化合物との付加化合物が挙げられる。室温での活性が低減される観点から、硬化促進剤は、アダクト型の構造を有するものであってもよい。
【0087】
硬化促進剤の配合量は、保存安定性に優れる観点、及びポットライフを充分に確保し易い観点から、(b)成分及び(c)成分の総質量を基準として、例えば、5.0質量%以下であってもよく、3.0質量%以下であってもよい。硬化促進剤の配合量は、熱硬化後の接着性、耐熱性、耐湿性の観点から、(b)成分及び(c)成分の総質量を基準として、例えば、0.02質量%以上であってもよく、0.03質量%以上であってもよい。これらの観点から、硬化促進剤の配合量は、(b)成分及び(c)成分の総質量を基準として、例えば、0~5.0質量%であってもよく、0.02~3.0質量%であってもよく、0.03~3.0質量%であってもよい。
【0088】
((d)成分以外のフィラー)
本実施形態の接着フィルムは、フィルムの取り扱い性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与、耐湿性の向上などを目的として、上記(d)成分以外の各種フィラーを含んでいてもよい。このようなフィラーを構成する材料としては、例えば、α-アルミナ以外のアルミナ、窒化アルミニウム、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、窒化珪素、ダイヤモンド、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ及びアンチモン酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
熱伝導性が向上する観点から、上記フィラーを構成する材料は、結晶性シリカ、又は非晶性シリカであってもよい。溶融粘度の調整及びチクソトロピック性の付与の観点から、上記フィラーを構成する材料は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、結晶性シリカ、又は非晶性シリカであってもよい。耐湿性が向上する観点から、上記フィラーを構成する材料は、シリカ、水酸化アルミニウム、又はアンチモン酸化物であってもよい。
【0090】
本実施形態の接着フィルムが、(d)成分以外のフィラーを含有する場合、(d)成分以外のフィラーの含有量は、(d)成分の総質量100質量部に対して、例えば、50質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
【0091】
(カップリング剤)
本実施形態の接着フィルムは、例えば、異種材料間の界面結合が向上する観点から、各種カップリング剤を含んでいてもよい。当該カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤が挙げられる。
【0092】
シラン系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピル-トリメトキシシラン、3-(4,5-ジヒドロ)イミダゾール-1-イル-プロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン、3-クロロプロピル-メチルジメトキシシラン、3-クロロプロピル-ジメトキシシラン、3-シアノプロピル-トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン及びエトキシシランイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
チタン系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(n-アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアエチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタンチリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テタラプロピルオルソチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ-ビス(2,4-ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル-ビス-トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、テトラ-n-ブトキシチタンポリマー、トリ-n-ブトキシチタンモノステアレートポリマー、及びトリ-n-ブトキシチタンモノステアレートが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
アルミニウム系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトイス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-n-ブトキシド-モノ-エチルアセトアセテート、アルミニウム-ジ-イソ-プロポキシド-モノ-エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物;及び、アルミニウムイソプロピレート、モノ-sec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレートが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
Siウエハへ接着する場合の接着性等の観点から、上記カップリング剤は、シラン系カップリング剤であることが好ましい。
【0096】
本実施形態の接着フィルムがカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、その効果並びに耐熱性及びコストの観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計質量100質量部に対し、例えば、10質量部以下であってもよく、0.1~5質量部であってもよく、0.2~3質量部であってもよい。
【0097】
(イオン捕捉剤)
本実施形態の接着フィルムは、例えば、イオン性不純物を吸着させ、吸湿時の絶縁信頼性を向上する観点から、イオン捕捉剤を含んでいてもよい。当該イオン捕捉剤としては、例えば、銅がイオン化して溶け出すことを防止するために用いられる銅害防止剤が挙げられる。当該銅害防止剤としては、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤及び無機イオン吸着剤が挙げられる。
【0098】
トリアジンチオール化合物を成分とする銅害防止剤の市販品としては、例えば、ジスネットDB(三協化成株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0099】
ビスフェノール系還元剤としては、例えば、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-第三-ブチルフェノール)、及び4,4’-チオ-ビス-(3-メチル-6-第三-ブチルフェノール)が挙げられる。市販のビスフェノール系還元剤としては、例えば、ヨシノックスBB(吉富製薬株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0100】
無機イオン吸着剤としては、例えば、ジルコニウム系化合物、アンチモンビスマス系化合物、及びマグネシウムアルミニウム系化合物が挙げられる。市販の無機イオン吸着剤としては、例えば、IXE(東亞合成株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0101】
イオン捕捉剤の含有量は、添加による効果、並びに、耐熱性及びコストの観点から、接着フィルムの形成に用いる樹脂組成物(例えば、後述のワニス)の総量100質量部に対して、例えば、1~10質量部であってもよい。
【0102】
接着フィルムの厚みに特に制限はない。接着フィルムの厚みは、応力緩和効果及び埋め込み性が向上する観点から、例えば、5μm以上であってもよく、8μm以上であってもよい。接着フィルムの厚みは、コストを低減する観点から、例えば、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。これらの観点から、接着フィルムの厚みは、例えば、5~50μmであってもよく、5~40μmであってもよく、8~40μmであってもよい。
【0103】
[接着フィルムの製造方法]
本実施形態の接着フィルムは、例えば、上述の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び必要に応じ任意成分を溶剤に混合して調製したワニスを基材フィルム(例えば、キャリアフィルム)上に塗布し、塗布されたワニスから溶剤を除去することにより形成できる。
【0104】
ワニスを調製する際に使用する溶剤に特に制限は無い。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2-エトキシエタノール、トルエン、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン及びシクロヘキサノンが挙げられる。中でも、塗膜性が向上する観点から、上記溶剤は、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の高沸点溶剤であることが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
ワニスにおける溶剤の含有量は特に制限が無いが、ワニスにおける不揮発分の含有量は、ワニスの乾燥に必要となる熱量が低減され、コスト面に優れる観点から、ワニスの総質量を基準として、例えば、40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。ワニスにおける不揮発分の含有量は、ワニスの粘度が高まりすぎず、これに起因した塗膜の欠陥を低減し易い観点から、ワニスの総質量を基準として、例えば、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。これらの観点から、ワニスにおける不揮発分の含有量は、ワニスの総質量を基準として、例えば、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0106】
各成分の混合は、例えば、らいかい機、3本ロール、ビーズミル、又はこれらを組み合わせにより、行なうことができる。また、例えば、フィラー成分と低分子量物とを予め混合した後、高分子量物を配合することにより、混合に要する時間を短縮することもできる。また、ワニスは、基材フィルム上に塗布する前に、真空脱気により気泡を除去することが好ましい。
【0107】
次いで、調製したワニスを基材フィルム上に塗布し、例えば、加熱により溶剤を除去することにより、基材フィルム上に接着フィルムを形成できる。
【0108】
上記加熱の条件は、接着フィルムを完全に硬化させることなく、溶剤を除去することができる条件であれば特に制限はなく、例えば、接着フィルムの成分及びワニス中の溶剤の種類に応じて適宜調整できる。一般的な加熱条件は、例えば、80~140℃で5~60分間の条件である。
【0109】
接着フィルムは、加熱により、Bステージ程度まで硬化したものであってもよい。接着フィルム中に残存する溶剤は、接着フィルムの全質量を基準として、3質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0110】
上記基材フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルアミドフィルム、ポリエーテルアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0111】
上記基材フィルムには、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0112】
上記ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、カプトン(東レ・デュポン株式会社製、商品名)及びアピカル(株式会社カネカ製、商品名)が挙げられる。
【0113】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品としては、例えば、ルミラー(東レ・デュポン株式会社製、商品名)及びピューレックス(帝人株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0114】
〔ダイシング・ダイボンディングフィルム〕
本実施形態の接着フィルムは、例えば、ダイシング・ダイボンディングフィルムに適用し得る。以下、ダイシング・ダイボンディングフィルムの一実施形態について説明する。
【0115】
本実施形態のダイシング・ダイボンディングフィルムは、ダイシングフィルムと、当該ダイシングフィルム上に積層されたダイボンディングフィルムとを備える。ダイシングフィルムに特に制限は無く、例えば、用途等を考慮し、当業者の知識に基づいて適宜定めることができる。ダイシングフィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。上記ダイシングフィルムには、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が施されていてもよい。上記ダイシングフィルムは粘着性を有するものが好ましい。粘着性を有するダイシングフィルムとしては、例えば、上述のプラスチックフィルムに粘着性を付与したもの、及び上述のプラスチックフィルムの片面に粘着剤層を設けたものが挙げられる。上記粘着剤層は、例えば、液状成分及び高分子量成分を含み適度なタック強度を有する樹脂組成物(粘着剤層形成用樹脂組成物)から形成される。粘着剤層を備えるダイシングテープは、例えば、粘着剤層形成用樹脂組成物を上述のプラスチックフィルム上に塗布し乾燥すること、又は、粘着剤層形成用樹脂組成物をPETフィルム等の基材フィルムに塗布及び乾燥させて形成した粘着剤層を、上述のプラスチックフィルムに貼り合せることにより製造できる。タック強度は、例えば、液状成分の比率、高分子量成分のTgを調整することにより、所望の値に設定される。ダイボンディングフィルムは、上述した本実施形態の接着フィルムである。ダイシングフィルム及びダイボンディングフィルムは、例えば、直接接触していてもよく、粘着層等の他の層を介して積層されていてもよい。
【0116】
本実施形態のダイシング・ダイボンディングフィルムの製造方法に特に制限は無く、当業者の知識に基づいて適宜定めることができる。本実施形態のダイシング・ダイボンディングフィルムは、例えば、上記接着フィルムの製造方法において、基材フィルムに変えてダイシングフィルムを用いることにより製造し得る。また、本実施形態のダイシング・ダイボンディングフィルムは、例えば、本実施形態の接着フィルムと、ダイシングフィルムとを別々に用意し、これらを積層して一体化することによっても製造し得る。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0118】
下記の成分を準備した。
(a)アクリル樹脂成分:
・エポキシ基含有アクリルゴム:HTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製、商品名、重量平均分子量800000、Tg12℃)
(b)エポキシ樹脂成分:
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:YDF-8170C(新日鉄住金化学株式会社製、商品名、エポキシ当量:156)
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN-703(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)
(c)硬化剤成分:
・フェノール樹脂:XLC-LL(三井化学株式会社製、商品名)
フィラー成分:
・多面体α-アルミナ:スミコランダムAA-3(住友化学株式会社製、商品名、純度Al2O3≧99.90%、平均粒子径2.7~3.6μm)
・球状α-アルミナ:アルミナビーズCB-P05(昭和電工株式会社製、商品名、純度Al2O399.89%、平均粒子径4μm)
・球状アルミナ:DAW-05(デンカ株式会社製、商品名、純度Al2O3>99.8%、平均粒子径5μm)
・球状アルミナ:DAW-03(デンカ株式会社製、商品名、純度Al2O3>99.8%、平均粒子径4μm)
硬化促進剤:
・キュアゾール2PZ-CN(四国化成工業株式会社製、商品名)
カップリング剤:
・A-189(日本ユニカー株式会社製、商品名、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
・A-1160(日本ユニカー株式会社製、商品名、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン)
【0119】
(実施例1)
エポキシ基含有アクリルゴム HTR-860P-3(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)4.50質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂 YDF-8170C(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)4.00質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 YDCN-703(新日鉄住金化学株式会社製、商品名)1.00質量部、フェノール樹脂 XLC-LL(三井化学株式会社製、商品名)5.50質量部、硬化促進剤 キュアゾール2PZ-CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.01質量部、カップリング剤 A-189(日本ユニカー株式会社製、商品名)0.04質量部、及び、カップリング剤 A-1160(日本ユニカー株式会社製、商品名)0.08質量部からなる組成物に、固形分が57%程度になるようにシクロヘキサノンを加え、さらに多面体α-アルミナ スミコランダムAA-3(住友化学株式会社製、商品名)を85.00質量部加え、混合物を得た。
【0120】
上記混合物に、混合物の総質量と同等質量のジルコニアビーズ1mmφを加え、ビーズミルを用いて600rpmで30分間の撹拌を2回施した。撹拌後の混合物から、ろ過によりジルコニアビーズを取り除き、ワニスを得た。
【0121】
得られたワニスを、基材フィルムとしての、厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム A31(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名)上に塗布した。塗布したワニスを、120℃で5分間加熱乾燥して、基材フィルム上に厚さが25μmの接着フィルムを作製した。
【0122】
(実施例2)
各成分の配合量を表1に示す量に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。なお、表1中の配合量は、質量部を示す。
【0123】
(比較例1)
多面体α-アルミナを、球状α-アルミナ アルミナビーズCB-P05(昭和電工株式会社製、商品名)に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0124】
(比較例2)
多面体α-アルミナを、球状アルミナ DAW-05(デンカ株式会社製、商品名)に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0125】
(比較例3)
多面体α-アルミナを、球状アルミナ DAW-03(デンカ株式会社製、商品名)に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0126】
(比較例4及び比較例5)
各成分の配合量を表1に示す量に変更したこと以外は実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。
【0127】
[評価]
得られた接着フィルムについて、熱伝導率、表面粗さ Ra、接着力及びラミネート性を下記のとおり評価した。
【0128】
(熱伝導率)
基材フィルムから剥離した接着フィルムを複数枚貼り合わせ100μm以上600μm未満の厚みの積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムを、110℃で1時間、170℃で3時間硬化させて硬化フィルム(硬化物)を得た。得られた硬化フィルムを、10mm角に切断し、これを測定用サンプルとした。
【0129】
以下の方法により、測定用サンプルの、熱拡散率α(mm2/s)、比熱Cp(J/(g・℃)及び比重(g/cm3)を測定した。
・熱拡散率α(mm2/s):接着フィルムの厚さ方向についてレーザーフラッシュ法(NETZSCH製、LFA467HyperFlash(商品名))を用いて、25℃における熱拡散率αを測定した。
・比熱Cp(J/(g・℃)):DSC法(Perkin Elmer製、DSC8500(商品名))を用いて、昇温速度10℃/min、温度20~60℃の条件で測定することにより、25℃における比熱Cpを測定した。
・比重(g/cm3):電子比重計SD-200L(Mirage製、商品名)を用いて比重を測定した。
【0130】
得られた熱拡散率α、比熱Cp及び比重を下記式に導入して、熱伝導率(W/m・K)を算出した。
熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率α(mm2/s)×比熱Cp(J/(g・℃))×比重(g/cm3)
【0131】
(表面粗さ Ra)
基材フィルムから剥離した接着フィルムを、ホットロールラミネータ(80℃、0.3m/分、0.3MPa)を用いて、厚さ300μmのシリコンウエハに貼り合わせた後、110℃で1時間、170℃で3時間硬化して試料を得た。得られた試料の2.5mmの範囲での算術平均粗さ(Ra)を、微細形状測定機Surf corder ET200(小坂研究所製、商品名)を用いて算出した。
【0132】
(接着力)
基材フィルム上の接着フィルムを、ホットロールラミネータ(80℃、0.3m/分、0.3MPa)を用いて、半導体チップ(5mm角)に貼り合わせた。半導体チップ上の接着フィルムを、42alloyの基板に、120℃、250gで5秒圧着して接着した後、110℃で1時間、170℃で3時間硬化させて、試料を得た。得られた試料の吸湿試験前後でのせん断強度を万能ボンドテスター(Dage社製、シリーズ4000、商品名)を用いて測定した。吸湿試験の条件は、85℃/85%RH、48時間とした。
【0133】
せん断強度≧2.0MPaの場合を、「良好」、せん断強度<2.0MPaの場合を、「不良」として接着力を評価した。
【0134】
(ラミネート性)
基材フィルムと接着フィルムとの積層体を10mmの幅に切断した。積層体における接着フィルム面を、厚さ300μmのシリコンウエハに、ホットロールラミネータ(80℃、0.3m/分、0.3MPa)で貼り合わせた。その後、貼り合わせた接着フィルムを、小型卓上試験機 EZ-S 島津製作所製を用いて、25℃の雰囲気中で、90°の角度で、50mm/分の引張り速度で剥がしたときの90°ピール強度を測定した。90°ピール強度が20N/m以上の場合を「良好」、90°ピール強度が20N/m未満の場合を「不良」として、ラミネート性を評価した。
【0135】
【0136】
表1の結果から、実施例1、2の接着フィルムは、熱硬化後の熱伝導率が≧2W/m・Kであり、熱硬化後の熱伝導性に優れることがわかる。実施例1、2の接着フィルムは、接着性(接着力)及びラミネート性にも優れ、かつ、表面粗さも小さいことがわかる。