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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】懸垂式搬送車及び保管システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65G1/04 551Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021555920
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034894
(87)【国際公開番号】W WO2021095350
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019204845
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】和田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和也
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070307(JP,A)
【文献】特開2012-240795(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207462(WO,A1)
【文献】特開平08-198407(JP,A)
【文献】特開平09-025087(JP,A)
【文献】特開平06-048513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に支持される軌道に沿って走行すると共に、床面に設置されたラックの棚部に物品を移載する懸垂式搬送車であって、
前記軌道に沿って走行する車輪と、前記車輪を駆動する駆動部と、を有する走行部と、
前記走行部から下方に吊り下げられると共に前記ラックの棚部に前記物品を移載する移載部を有する天井側部材と、
前記天井側部材に対して相対移動可能に設けられると共に前記床面又は前記床面に設置された部材との接触部を有する床面側部材と、
前記天井側部材と前記床面側部材との相対距離を検出する距離検出部と、を備える、懸垂式搬送車。
【請求項2】
前記天井側部材は、前記走行部から下方に延在するマストと、前記マストに沿って昇降可能に設けられると共に前記移載部が設けられる昇降部と、を有し、
前記懸垂式搬送車は、前記昇降部の昇降を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記距離検出部によって検出された前記相対距離に基づいて、前記ラックの棚部に前記物品を移載するときの前記昇降部の高さ位置を決定する、請求項1記載の懸垂式搬送車。
【請求項3】
前記床面側部材は、前記接触部である走行ローラと、前記床面に設けられたガイド部材にガイドされ、前記マストが鉛直方向から所定角度以上傾くことを防止する傾き防止用のガイドローラと、を有している、請求項2記載の懸垂式搬送車。
【請求項4】
前記距離検出部は、反射部材と、前記反射部材までの距離を検出する距離センサと、を含んで構成されており、
前記天井側部材には、前記反射部材及び前記距離センサの一方が配置され、前記床面側部材には、前記反射部材及び前記距離センサの他方が設けられている、請求項1~3の何れか一項記載の懸垂式搬送車。
【請求項5】
前記距離センサは、前記天井側部材に設けられ、前記反射部材は、前記床面側部材に設けられている、請求項4記載の懸垂式搬送車。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項記載の懸垂式搬送車と、
前記床面に設置されると共に、前記懸垂式搬送車の前記移載部によって前記物品が移載されるラックと、を備える、保管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、懸垂式搬送車及び保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動倉庫においてラックの棚部との間で物品を移載する搬送装置として、建屋の天井に支持された軌道を走行すると共に車輪を駆動する駆動部が設けられた走行部と、走行部に吊り下げられると共に、棚部との間で物品を受け渡しする移載部と、を有する搬送システムが知られている。
【0003】
このような搬送システムでは、走行部から繰り出される吊持部材の距離(長さ)と棚部の位置とが関連付けて記憶されている。すなわち、天井の高さ位置を基準として、ラックとの間で物品を受け渡しするときの移載部の位置決めが行われている。ところが、軌道を支持する天井は、例えば気温又は雪の影響でたわむことがある。この場合、床面に設置されるラックの棚部の高さ位置と天井の高さ位置との間の相対位置関係が変動するので、移載部による物品の受け渡しが妨げられることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5339165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題に対し、特許文献1の搬送システムでは、ラックのそれぞれに距離センサを設け、軌道に設けられたブラケットまでの距離(ラックの棚部の高さ位置を基準とした天井の高さ位置までの相対距離)を取得している。これにより、ラックごとのラックの高さ位置と天井の高さ位置との間の距離、すなわち、天井の歪み量が取得される。そして、天井の歪み量を取得すれば、取得された歪み量に基づいて移載部による物品の受け渡し位置を補正したり、移載部のメンテナンスを行ったりする対応が可能となる。しかしながら、上記従来の方法では、ラックの全てに距離センサを設ける必要があり、コストが増加する。
【0006】
そこで、本発明の一側面の目的は、安価な構成で、天井の歪み量の取得が可能となる懸垂式搬送車及び保管システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る懸垂式搬送車は、天井に支持される軌道に沿って走行すると共に、床面に設置されたラックの棚部に物品を移載する懸垂式搬送車であって、前記軌道に沿って走行する車輪と、前記車輪を駆動する駆動部と、を有する走行部と、走行部から下方に吊り下げられると共にラックの棚部に物品を移載する移載部を有する天井側部材と、天井側部材に対して相対移動可能に設けられると共に床面又は床面に設置された部材との接触部を有する床面側部材と、天井側部材と床面側部材との相対距離を検出する距離検出部と、を備える。
【0008】
この構成の懸垂式搬送車では、天井に支持された軌道を走行する走行部に吊り下げられる天井側部材に対し上下方向(鉛直方向)に移動可能に設けられると共に床面又は床面に設置された部材に接触する床面側部材を設け、距離検出部が天井側部材と床面側部材との間の相対距離を取得している。これにより、懸垂式搬送車が位置する地点における床面の高さ位置を基準とした天井の高さ位置までの距離、すなわち、天井の歪み量が取得される。この構成の懸垂式搬送車では、懸垂式搬送車にのみ距離センサを設ければよいので、安価な構成で、天井の歪み量の取得が可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係る懸垂式搬送車では、天井側部材は、走行部から下方に延在するマストと、マストに沿って昇降可能に設けられると共に移載部が設けられる昇降部と、を有し、懸垂式搬送車は、昇降部の昇降を制御するコントローラを更に備え、コントローラは、距離検出部によって検出された相対距離に基づいて、ラックの棚部に物品を移載するときの昇降部の高さ位置を決定してもよい。この構成では、天井に歪みが生じた場合であっても、当該歪み量に基づいて昇降部の昇降位置が決定されるので、移載部による物品の受け渡しを適切に行わせることができる。
【0010】
本発明の一側面に係る懸垂式搬送車では、床面側部材は、接触部である走行ローラと、床面に設けられたガイド部材にガイドされ、マストが鉛直方向から所定角度以上傾くことを防止する傾き防止用のガイドローラと、を有していてもよい。この構成では、走行ローラ及びガイドローラが設けられる床面側部材が天井側部材に対して移動可能に設けられているので、天井が歪んだ場合であっても、走行ローラの損傷が抑制され、また、傾き防止用のガイドローラがガイドから外れることを抑制できる。
【0011】
本発明の一側面に係る懸垂式搬送車では、距離検出部は、反射部材と、反射部材までの距離を検出する距離センサと、を含んで構成されており、天井側部材には、反射部材及び距離センサの一方が配置され、床面側部材には、反射部材及び距離センサの他方が設けられていてもよい。この構成では、安価かつ簡易な構成で、天井側部材と床面側部材との間の相対距離を取得することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る懸垂式搬送車は、距離センサは、天井側部材に設けられ、反射部材は、床面側部材に設けられていてもよい。この構成では、天井側部材と床面側部材とを跨いで、距離センサとコントローラとを接続するケーブルを配線しなくも済むため、ケーブルの損傷を抑制できる。
【0013】
本発明の一側面に係る保管システムは、上記の懸垂式搬送車と、床面に設置されると共に、懸垂式搬送車の移載部によって物品が移載されるラックと、を備える。この構成の保管システムに含まれる懸垂式搬送車では、天井に支持された軌道を走行する走行部に吊り下げられる天井側部材に対し上下方向に移動可能に設けられると共に床面又は床面に設置された部材に接触する床面側部材を設け、距離検出部が天井側部材と床面側部材との間の相対距離を取得している。これにより、懸垂式搬送車が位置する地点における床面の高さ位置を基準とした天井の高さ位置までの距離、すなわち、天井の歪み量が取得される。この構成の保管システムでは、懸垂式搬送車にのみ距離センサを設ければよいので、安価な構成で、天井の歪み量の取得が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、安価な構成で、天井の歪み量の取得が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る保管システムの構成を側面図である。
図2図2は、図1の懸垂式搬送車を斜め上方から見た斜視図である。
図3図1の懸垂式搬送車の床面側ユニットの概略構成を示す正面図である。
図4図1の懸垂式搬送車の床面側ユニット及びマストを拡大して示した側面図である。
図5図1の懸垂式搬送車の機能構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して一実施形態に係る懸垂式搬送車1及び保管システム100について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、説明の便宜のため、以後の説明は、懸垂式搬送車1の進行方向を「前」、その反対方向を「後」、懸垂式搬送車1を前方から見たときの幅方向における右方を「右」、左方を「左」、鉛直方向を「上」「下」と称する場合がある。
【0017】
保管システム100は、例えば半導体製造工場等に設置される自動倉庫に設けられている。図1に示されるように、保管システム100は、懸垂式搬送車1とラック3とを備えている。ラック3は、懸垂式搬送車1の走行経路に沿って配置されると共に床面Fに設置されている。懸垂式搬送車1は、FOUP(Front Opening Unify Pod)等の物品Aを搬送すると共にラック3の棚部3Aとの間で物品Aを受け渡し(移載)する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、懸垂式搬送車1は、天井側ユニット(天井側部材)20と、床面側ユニット(床面側部材)50と、コントローラ10と、を備えている。天井側ユニット20は、第一走行台車(走行部)21Aと、第二走行台車(走行部)21Bと、第一マスト31Aと、第二マスト31Bと、下部フレーム35と、昇降部40と、を備えている。
【0019】
第一走行台車21A及び第二走行台車21Bは、懸垂式搬送車1の上部に配置されており、走行方向に連なりながらそれぞれ軌道4に沿って走行する。軌道4は、図示しない吊り金具等を用いて、天井から吊下状に設置されている。
【0020】
第一走行台車21Aは、駆動輪(車輪)23と、従動輪24と、走行モータ(駆動部)25と、を備える。駆動輪23は、走行モータ25としての電動モータによって駆動され、軌道4に接触しながら回転することで第一走行台車21Aを走行させる。従動輪24は、軌道4の適宜の部位に接触することで、第一走行台車21Aの走行方向が軌道4に沿うように案内する。第二走行台車21Bの構成は第一走行台車21Aと実質的に同一であるため、説明を省略する。
【0021】
上部フレーム26は、軌道4に平行となるように細長く形成された枠状(梯子状)の部材であり、軌道4の幅方向中央に配置されている。上部フレーム26の長手方向両端部には、ブロック状に形成されたジョイント部材27A,27Bが固定されている。上部フレーム26と、ジョイント部材27A,27Bと、を含む構造体が、第一走行台車21Aと第二走行台車21Bとを互いに連結するように配置されている。
【0022】
上部フレーム26の前端部には、ジョイント部材27Aを介して、第一マスト31Aの上端部が固定されている。上部フレーム26の後端部には、ジョイント部材27Bを介して、第二マスト31Bの上端部が固定されている。第一マスト31A及び第二マスト31Bは、何れも上下方向に細長く形成されている。言い換えれば、第一マスト31A及び第二マスト31Bは、第一走行台車21A及び第二走行台車21Bに吊り下げられると共に下方に延在する部材である。また、二つの第一マスト31A及び第二マスト31Bは、何れも軌道4の左右方向中央に配置される。
【0023】
第一マスト31A及び第二マスト31Bの下端部同士は、軌道4と平行となるように配置された下部フレーム35に接続されている。下部フレーム35は、第一下部フレーム35A、第二下部フレーム35B、及び第三下部フレーム35Cを有している。第一下部フレーム35Aは、第一マスト31Aの下端に固定され、第二下部フレーム35Bは、第二マスト31Bの下端に固定され、第三下部フレーム35Cは、第一下部フレーム35Aと第二下部フレーム35Bとを接続している。
【0024】
昇降部40は、第一マスト31A及び第二マスト31Bの間に架け渡されるように配置されている。昇降部40は、後述の第一ベルト(吊持部材)41A及び第二ベルト(吊持部材)41Bによって吊り下げ支持されている。この昇降部40は、第一マスト31A及び第二マスト31Bの長手方向、すなわち上下方向に沿って移動可能(昇降可能)に構成されている。昇降部40には、当該昇降部40の移動方向を案内する公知の案内機構が設けられている。この案内機構は、例えば、第一マスト31A及び第二マスト31Bに接触可能な複数の小さなローラ(図示せず)により構成することができる。
【0025】
昇降部40には、懸垂式搬送車1と、例えばラック3の棚部3Aとの間で物品Aの移載を行う移載部42が設けられている。移載部42は、左右水平方向に伸縮可能なアーム部42Aを備え、アーム部42Aの先端に物品Aを載せることが可能に構成されている。ただし、移載部42は、例えばロボットアーム等の他の構成を用いてもよい。
【0026】
第一巻上装置43A及び第二巻上装置43Bは、対をなすように第一走行台車21A及び第二走行台車21Bに配置されている。第一巻上装置43A及び第二巻上装置43Bは、昇降部40を吊り下げる二本のベルト、すなわち第一ベルト41A及び第二ベルト41Bに対応して配置されている。第一巻上装置43A及び第二巻上装置43Bは同時に駆動され、第一ベルト41A及び第二ベルト41Bをそれぞれ巻き上げ及び繰り出しすることにより、昇降部40を昇降させる。第一ベルト41A及び第二ベルト41Bそれぞれの巻き上げ及び繰り出しは、昇降モータ45を駆動させることによって行われる。
【0027】
ここで、図4に示されるように、床面Fには、板状の第一ガイド部(床面に設置された部材)91と、L字状の第二ガイド部(ガイド部材)92,92と、が設けられている。第一ガイド部91は、走行ローラ(接触部)52が転動可能なガイド面91Aを有している。第二ガイド部92は、ガイドローラ53が転動可能なガイド面92Aを有している。
【0028】
図1に示されるように、床面側ユニット50は、第一ガイドユニット50Aと、第二ガイドユニット50Bと、を有している。図3及び図4に示されるように、第一ガイドユニット50Aは、第一下部フレーム35Aに上下方向に移動可能に固定されている。第二ガイドユニット50Bは、第二下部フレーム35Bに上下方向に移動可能(天井側部材に対して相対移動可能)に固定されている。第一ガイドユニット50Aは、本体フレーム51と、走行ローラ52と、ガイドローラ53と、接続部55と、支持部57と、を有している。
【0029】
本体フレーム51は、左右方向に延びる部材であり、走行ローラ52とガイドローラ53と接続部55とが取り付けられている。走行ローラ52は、第一ガイド部91に接触可能に設けられている。本実施形態では、走行ローラ52は、ガイド面91Aを転動可能に設けられている。走行ローラ52は、下方に凸状の取付部51Aに回転可能に設けられた軸部51Bに取り付けられている。ガイドローラ53は、第一マスト31A及び第二マスト31Bが鉛直方向から所定角度以上傾くのを防止するために設けられている。ガイドローラ53は、ガイド面92Aを転動可能に設けられている。ガイドローラ53は、本体フレーム51の下面に取り付けられている。接続部55及び支持部57は、第一ガイドユニット50Aを第一マスト31Aに移動可能に取り付けるための部材である。
【0030】
接続部55は、リニアガイド58を支持する支持部57が接続されている。リニアガイド58は、レールの延在方向に滑らかに運動させるための公知の案内部材である。リニアガイド58は、第一マスト31Aに対して第一ガイドユニット50Aを上下方向に移動可能に設ける部材であり、スライド部58Aと、レール部58Bと、を有している。スライド部58Aはレール部58Bの延在方向にスライド可能に設けられている。レール部58Bは、第一マスト31Aに固定されており、スライド部58Aは、支持部57、すなわち、第一ガイドユニット50Aに設けられている。
【0031】
図3に示されるように、懸垂式搬送車1には、天井側ユニット20と第一ガイドユニット50Aとの間の相対距離を取得する距離検出部60が設けられている。距離検出部60は、距離センサ61と、反射板62とを含んで構成されている。第一マスト31Aには、ブラケット59Aを介して距離センサ61が設けられている。第一ガイドユニット50Aにおける本体フレーム51の上面51Cには反射板(反射部材)62が設けられている。距離センサ61は、反射板62までの距離を検知する。すなわち、距離センサ61は、天井側ユニット20と第一ガイドユニット50Aとの間の相対距離を取得する。距離センサ61は、検知した距離をコントローラ10に送信する。
【0032】
図5に示されるように、コントローラ10(図1参照)は、懸垂式搬送車1の全体を制御する。より詳細には、コントローラ10は、走行モータ25と、昇降モータ45と、を制御する。コントローラ10は、例えば、第一走行台車21Aに設けられている。
【0033】
コントローラ10は、外部との信号の入出力等を行う入出力インタフェイス、処理を行うためのプログラム及び情報等が記憶されたROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体、CPU(Central Processing Unit)、及び通信回路等を有する。コントローラ10は、CPUが出力する信号に基づいて、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで各種処理を実行する。
【0034】
本実施形態の懸垂式搬送車1のコントローラ10は、棚部3Aごとに、第一走行台車21A及び第二走行台車21Bから繰り出される第一ベルト41A及び第二ベルト41Bの距離(長さ)と棚部3Aの高さ位置とを関連付けて記憶し、天井Cの高さ位置を基準として、ラック3の棚部3Aとの間で物品Aを受け渡しするときの移載部42の位置決めが行われている。本実施形態のコントローラ10は、距離センサ61によって検出された相対距離に基づいて、ラック3の棚部3Aに物品Aを移載するときの昇降部40の高さ位置を決定している。すなわち、所定の棚部3Aに物品Aを移載する際に、コントローラ10に記憶されたこれから移載しようとする棚部3Aに対する相対距離と、距離センサ61によって取得された、これから移載しようとする棚部3Aに対する相対距離とが異なる場合、繰り出される第一ベルト41A及び第二ベルト41Bの距離(長さ)を、予め記憶されている距離から補正する。
【0035】
上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100における作用効果について説明する。上記実施形態の懸垂式搬送車1では、天井Cを走行する第一走行台車21A及び第二走行台車21Bに吊り下げられる天井側ユニット20に対し上下方向に移動可能に設けられると共に床面に設けられた第一ガイド部91に接触する床面側ユニット50を設け、距離センサ61が天井側ユニット20と床面側ユニット50との間の相対距離を取得している。これにより、懸垂式搬送車1が位置する地点における床面Fの高さ位置を基準とした天井Cの高さ位置までの距離、すなわち、天井Cの歪み量が取得される。この構成の懸垂式搬送車1を備える保管システム100では、懸垂式搬送車1にのみ距離センサ61を設ければよいので、安価な構成で、天井Cの歪み量の取得が可能となる。
【0036】
また、このような構成により天井Cの歪みを取得できるので、軌道4が床面Fに設置されたラック3から吊り下げられる構成又はラック3に軌道4が支持される構成の保管システムとしなくてもよい。軌道4をラック3から吊り下げる構成又はラック3に軌道4が支持される構成の保管システムは、ラック3を頑強に構成する必要があり、重量が増加すると共にコストも増加する。また、このような保管システムの構成では、懸垂式搬送車1が走行する際に発生する軌道4の揺れがラック3(棚部3A)に伝達される。このような保管システムに対して上記実施形態の保管システム100では、ラック3に対して上記のような対応を図らなくても済むので、ラック3を形成するのに重量の増加及びコストの増加を抑制できる。上記実施形態の保管システム100では、ラック3と軌道4とは互いに独立して設けられているので、ラック3に発生する振動も抑制できる。
【0037】
上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100では、コントローラ10は、距離センサ61によって検出された相対距離に基づいて、ラック3の棚部3Aに物品Aを移載するときの昇降部40の高さ位置を決定している。これにより、天井Cに歪みが生じた場合であっても、当該歪み量に基づいて昇降部40の昇降位置が決定されるので、移載部42による物品Aの受け渡しが適切になされる。
【0038】
また、上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100では、距離センサ61によって検出された相対距離に基づいて移載部42の移載位置を適切に制御できるので、天井Cの歪みを考慮した棚部3Aを設計しなくてもよい。すなわち、天井Cの歪みを考慮した棚部3Aの間隔を確保しなくても済むので、上下方向のラック3のサイズを抑制できる。言い換えれば、上記実施形態の懸垂式搬送車1を有する保管システム100では、同じ建屋に設置できる棚部3Aの設置数の低減を抑制できる。
【0039】
上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100では、走行ローラ52及びガイドローラ53が設けられる床面側ユニット50が天井側ユニット20に対して移動可能に設けられているので、天井Cが歪んだ場合であっても、走行ローラ52の損傷が抑制され、また、傾き防止用のガイドローラ53が第二ガイド部92から外れることを抑制できる。
【0040】
上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100では、距離検出部60は、反射板62と、反射板62までの距離を検出する距離センサ61と、を含んで構成されている。この構成では、安価かつ簡易な構成で、天井側ユニット20と床面側ユニット50との間の相対距離を取得することができる。また、距離センサ61が懸垂式搬送車1に設けられる構成では、距離センサ61がラック3等に設けられる場合と比べて設置スペースを確保し易く、外乱を抑制するカバー等も設けやすい。このため、距離センサ61によって取得される距離の精度を高めることができる。
【0041】
上記実施形態の懸垂式搬送車1及びこれを備える保管システム100では、距離センサ61は天井側ユニット20に設けられ、反射板62は床面側ユニット50に設けられている。これにより、天井側ユニット20と床面側ユニット50とを跨いで、距離センサ61とコントローラ10とを接続するケーブル(図示せず)を配線しなくも済むため、ケーブルの損傷を抑制できる。
【0042】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られない。発明の一側面の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
上記実施形態では、第一走行台車21A及び第二走行台車21Bの二つの走行台車を備える構成の懸垂式搬送車1を例に挙げて説明したが、一台の走行台車から構成されてもよい。また、第一マスト31A及び第二マスト31Bに沿って昇降部40が昇降される構成の懸垂式搬送車1を例に挙げて説明したが、天井Cに支持された走行台車から昇降部40が吊り下げられる構成であれば、第一マスト31A及び第二マスト31Bは備えられなくてもよい。
【0044】
上記実施形態及び変形例では、天井側ユニット20に対して床面側ユニット50を移動可能にする構成としてリニアガイド58を設ける例を挙げて説明したが、リニアガイド58に代えて、弾性部材及びシリンダ部材等、直線の往復運動可能な部材を配置してもよい。
【0045】
上記実施形態及び変形例では、距離検出部60が反射板62と反射板62までの距離を検出する距離センサ61とを含んで構成される例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、リニアガイド58を用いる場合には、レール部58Bに対するスライド部58Aの移動量を検出してもよいし、リニアガイド58に代えて弾性部材を用いる場合には、例えば、弾性部材の伸び量等を検出してもよい。
【0046】
上記実施形態及び変形例において、天井側ユニット20に距離センサ61を設け、床面側ユニット50に反射板62を設ける構成に代えて、床面側ユニット50に距離センサ61を設け、天井側ユニット20に反射板62を設けてもよい。
【0047】
上記実施形態及び変形例の懸垂式搬送車1の構成に加えて、ラック3までの水平方向(左右方向)距離を検出する距離センサを設けてもよい。この距離センサを備える構成では、物品A又は移載部42のアーム部42Aを移動させる方向における、ラック3を構成する水平方向の部材(棚部等)又は上下方向の部材(梁部材)等の検出の有無に基づいて、物品A又は移載部42のアーム部42Aの移動の有無を判定してもよい。これにより、物品A又は移載部42のアーム部42Aがラック3に衝突すること防止できる。
【0048】
上記実施形態及び変形例の保管システム100では、床面Fに第一ガイド部91が設置され、懸垂式搬送車1の走行ローラ52が第一ガイド部91に接触する例を挙げて説明したが、床面Fに第一ガイド部91が設置されず、走行ローラ52が床面Fに接触する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…懸垂式搬送車、3…ラック、3A…棚部、4…軌道、10…コントローラ、20…天井側ユニット(天井側部材)、21A…第一走行台車(走行部)、21B…第二走行台車(走行部)、25…走行モータ(駆動部)、31A…第一マスト、31B…第二マスト、40…昇降部、42…移載部、50…床面側ユニット、50A…第一ガイドユニット、50B…第二ガイドユニット、52…走行ローラ(接触部)、53…ガイドローラ、58…リニアガイド、60…距離検出部、61…距離センサ、62…反射板、91…第一ガイド部(床面に設置された部材)、92…第二ガイド部(ガイド部材)、A…物品、C…天井、F…床面。
図1
図2
図3
図4
図5