(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両の後方監視システム及び車両の後方監視方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231129BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231129BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20231129BHJP
【FI】
G08G1/16 D
H04N7/18 J
B60R1/26 100
(21)【出願番号】P 2022046660
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】津田 隆太
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188635(JP,A)
【文献】特開2013-239015(JP,A)
【文献】特開平10-315888(JP,A)
【文献】特開平11-353565(JP,A)
【文献】特開2006-027556(JP,A)
【文献】特開2007-235529(JP,A)
【文献】特開2009-093332(JP,A)
【文献】特開2010-079455(JP,A)
【文献】特開2016-072940(JP,A)
【文献】特開2019-069657(JP,A)
【文献】特開2019-185105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
H04N 7/18
B60R 1/00 - 1/04
B60R 1/08 - 1/31
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視システムであって、
前記車両に設けられ、前記車両の後方の路面を撮像する単眼カメラである下部カメラと、
前記車両の、前記下部カメラより上方に配置され、前記車両の後方の前記路面を撮像する単眼カメラである上部カメラと、
前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である上部鳥瞰ビューに変換する変換部と、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の差分から前記路面にある前記物体を検出する物体検出部と、
前記物体検出部が検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定部と、
を備え
、
前記物体検出部は、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の、差分の面積から前記物体の高さを検出することを特徴とする車両の後方監視システム。
【請求項2】
前記物体検出部は、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の差分がある位置から前記物体の位置を検出する、請求項1に記載の車両の後方監視システム。
【請求項3】
車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視システムであって、
前記車両に設けられ、前記車両の後方の路面を撮像する単眼カメラである下部カメラと、
前記車両の、前記下部カメラより上方に配置され、前記車両の後方の前記路面を撮像する単眼カメラである上部カメラと、
前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図であ
って、前記路面にある前記物体の前記下部カメラ画像では前記物体に隠れて映っていなかった部分が補正部として画像補正された下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図であ
って、前記路面にある前記物体の前記上部カメラ画像では前記物体に隠れて映っていなかった部分が補正部として画像補正された上部鳥瞰ビューに変換する変換部と、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、
それぞれの前記補正部の差分から前記路面にある前記物体
の位置、高さ、及び前記車両の車幅方向の幅を検出する物体検出部と、
前記物体検出部が検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定部と、
を備えることを特徴とする車両の後方監視システム。
【請求項4】
前記物体検出部は、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、
それぞれの前記補正部の差分がある位置から前記物体の位置を検出する、請求項
3に記載の車両の後方監視システム。
【請求項5】
前記物体検出部は、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、
それぞれの前記補正部の差分の前記車両の前後方向の長さ
と前記車両の車幅方向の最短幅から前記物体の高さ
と前記物体の幅を検出する、請求項
3又は4に記載の車両の後方監視システム。
【請求項6】
前記物体検出部は、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、
それぞれの前記補正部の差分の面積から前記物体の高さ
と前記物体の幅を検出する、請求項3又は4に記載の車両の後方監視システム。
【請求項7】
車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視方法であって、
監視制御部により、
前記車両に設けられた単眼カメラである下部カメラと、前記車両の、前記下部カメラより上方に配置された単眼カメラである上部カメラに前記車両の後方の路面を撮像させる撮像工程と、
前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である上部鳥瞰ビューに変換する変換工程と、
前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記下部カメラ画像と前記上部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の差分から前記路面にある前記物体を検出する物体検出工程と、
前記物体検出工程で検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定工程と、
を実施
し、
前記物体検出工程では、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の、差分の面積から前記物体の高さを検出することを特徴とする車両の後方監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の後方監視システム及び車両の後方監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には衝突防止を目的として車両の周囲の物体を検出する検出部を設けたものがある。検出部としてはソナーセンサ又はクリアランスソナーと呼ばれる超音波センサの一種が知られている(特許文献1)。また、検出部としてカメラを設け、カメラが撮像した画像から機械学習で物体を抽出する技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-23870号公報
【文献】特開2022-16027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、貨物車両の後方の物体を検出する場合、検出部を荷台である架装の上に搭載する必要がある。しかしながら貨物車両の架装の形状や寸法は用途に応じて多種多様である。そのため、特許文献1のようなクリアランスソナーを取り付ける場合、最適な位置が架装によって変わる。また架装には種々の突出部や可動部があるため、クリアランスソナーが照射した超音波がこれらに当たると架装を車両の周囲の物体と誤検出する可能性がある。そのため、クリアランスソナーを貨物車両に設けるのは取付位置や誤検出の問題から困難な場合があった。
【0005】
また特許文献2のような機械学習で物体を抽出する方法では機械学習のための膨大なデータと、そのデータを学習させる工数とコストが必要であるという問題があった。また、貨物車両のカメラの設置高さは架装によって多種多様であり、特定の高さに決められないため、設置高さによって物体の見え方が変わる。そのため精度良く機械学習ができない問題があった。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされたもので、単眼カメラが撮像した画像から車両後方の物体が車両に衝突する可能性の判定が簡易にできる車両の後方監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の一態様は、車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視システムであって、前記車両に設けられ、前記車両の後方の路面を撮像する単眼カメラである下部カメラと、前記車両の、前記下部カメラより上方に配置され、前記車両の後方の前記路面を撮像する単眼カメラである上部カメラと、前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である上部鳥瞰ビューに変換する変換部と、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の差分から前記路面にある前記物体を検出する物体検出部と、前記物体検出部が検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定部と、を備え、前記物体検出部は、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の、差分の面積から前記物体の高さを検出することを特徴とする。
本開示の一態様は、車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視システムであって、前記車両に設けられ、前記車両の後方の路面を撮像する単眼カメラである下部カメラと、前記車両の、前記下部カメラより上方に配置され、前記車両の後方の前記路面を撮像する単眼カメラである上部カメラと、前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図であって、前記路面にある前記物体の前記下部カメラ画像では前記物体に隠れて映っていなかった部分が補正部として画像補正された下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図であって、前記路面にある前記物体の前記上部カメラ画像では前記物体に隠れて映っていなかった部分が補正部として画像補正された上部鳥瞰ビューに変換する変換部と、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、それぞれの前記補正部の差分から前記路面にある前記物体の位置、高さ、及び前記車両の車幅方向の幅を検出する物体検出部と、前記物体検出部が検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示の他の態様は、車両の後方にある物体を監視する車両の後方監視方法であって、監視制御部により、前記車両に設けられた単眼カメラである下部カメラと、前記車両の、前記下部カメラより上方に配置された単眼カメラである上部カメラに前記車両の後方の路面を撮像させる撮像工程と、前記下部カメラが撮像した前記路面の画像である下部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である下部鳥瞰ビューに変換し、前記上部カメラが撮像した前記路面の画像である上部カメラ画像を、前記路面を上方から見た平面図である上部鳥瞰ビューに変換する変換工程と、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記下部カメラ画像と前記上部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の差分から前記路面にある前記物体を検出する物体検出工程と、前記物体検出工程で検出した前記物体が前記車両に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性を前記車両の運転手に知得させる衝突可能性判定工程と、を実施し、前記物体検出工程では、前記上部鳥瞰ビューと前記下部鳥瞰ビューを比較して、前記上部カメラ画像と前記下部カメラ画像では前記路面にある前記物体に隠れて映っていなかった部分の、差分の面積から前記物体の高さを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、単眼カメラが撮像した画像から車両後方の物体が車両に衝突する可能性の判定が簡易にできる車両の後方監視システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る後方監視システムを備えた貨物車両の側面図である。
【
図2】後方監視システムを示す機能ブロック図である。
【
図3】後方監視システムで貨物車両の後方の物体を検出する手順を説明するための図であって、(a)は側面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図4】(a)は下部カメラが撮像した車両後方の画像である下部カメラ画像の模式図であって、(b)は上部カメラが撮像した車両後方の画像である上部カメラ画像の模式図である。
【
図5】(a)は
図4(a)の下部カメラ画像を下部鳥瞰ビューに変換した模式図であって、(b)は
図4(b)の上部カメラ画像を上部鳥瞰ビューに変換した模式図である。
【
図6】本実施形態に係る後方監視システムを用いた後方監視方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に好適な実施形態を詳細に説明する。ここでは後方監視システム1として、バンボディ型の荷台107を備えた車両であるトラック100の荷台107の後方の路面109上の物体を検出するシステムを例示している。また、以下の図ではX方向をトラック100の前後方向、Y方向をトラック100の車幅方向、Z方向を鉛直方向として図示している。
【0012】
まず、
図1を参照してトラック100の構造の概要を説明する。
図1に示すトラック100はトラック100を構成する装置を支持する構造体であるシャシ103、シャシ103の前端に設けられた運転室であるキャブ105、キャブ105の後方のシャシ103に設けられた荷台107、及び後方監視システム1を備える。
【0013】
次に、
図1~
図5を参照して後方監視システム1の構造の詳細を説明する。後方監視システム1は荷台107の後方の路面109上の物体を検出して、検出した物体とトラック100が衝突する可能性がある場合は、衝突する可能性をトラック100の運転手に知得させるシステムである。
図1及び
図2に示すように後方監視システム1は下部カメラ3、上部カメラ5、及び監視制御部13を備える。
【0014】
下部カメラ3はトラック100に設けられ、トラック100の荷台107の後方の路面109を撮像する単眼カメラである。具体的なカメラの構造は公知の単眼カメラを用いればよい。また下部カメラ3が路面109を撮像する際の光源は図示しないテールランプ等の、トラック100の後端に設置された灯火類で十分であるが、赤外線カメラのように光源を必要としないカメラを用いてもよい。
【0015】
具体的な下部カメラ3の、前後方向の設置位置は、トラック100の後方を撮像しやすくするため、トラック100の後端であるのが好ましい。下部カメラ3の、車幅方向の設置位置は車幅方向の中心位置であると、車幅方向左右の同じ長さの領域を撮像できるので、好ましい。下部カメラ3の高さ方向の設置位置は、車両後方の物体を撮像できる位置で、なるべく下方に設けられる。ただし、設置位置が低すぎると下部カメラ3が路面109と接触する可能性があるため、路面109と接触しない範囲で設定する。具体的には
図1に示すようにシャシ103の後端に設けられるのが好ましい。
【0016】
下部カメラ3の撮像範囲は
図3(a)及び
図3(b)に示す撮像範囲R1のように、トラック100の後方の路面109を含む。下部カメラ3の画角及び光軸A2は、撮像範囲R1を撮像できるように設定する。なお、下部カメラ3は路面109付近に設けられるため、光軸A2は水平でよい。ただし下部カメラ3は荷台107の後端が撮像範囲R1に入っているのが好ましい。撮像した画像における荷台107の後端と検出した物体の距離が求めやすいためである。
【0017】
例えば、
図3(b)に示すように、トラック100が白線33、35で囲まれた駐車領域41、43、45のうち、駐車領域43に駐車しようとしてX1の向きに後進していたとする。また、駐車領域43にはロードコーン等の高さH1の支柱31が建てられており、一次的に駐車できない領域であったとする。この場合、下部カメラ3が撮像した画像である下部カメラ画像G1を模式的に示すと
図4(a)に示すようになる。
図4(a)に示すように下部カメラ3が撮像した下部カメラ画像G1は少なくとも荷台107の後端、白線33、35、及び支柱31が映っている。ただし下部カメラ画像G1では支柱31の背後の部分は支柱31に隠れており、映っていない。
【0018】
図1及び
図2に示す上部カメラ5はトラック100の、下部カメラ3より上方に配置され、トラック100の後方の路面109を撮像する単眼カメラである。具体的な上部カメラ5の構造は下部カメラ3の構造と同じである。
【0019】
具体的な上部カメラ5の前後方向の設置位置は、下部カメラ3と同様にトラック100の後方を撮像しやすくするため、トラック100の後端であるのが好ましい。上部カメラ5の車幅方向の設置位置は下部カメラ3と同様である。上部カメラ5の高さ方向の設置位置は、車両後方の物体を撮像できる位置で、なるべく上方に設けられる。本実施形態では下部カメラ3と上部カメラ5の撮像した映像を鳥瞰ビューに変換し、鳥瞰ビューの差分から物体を検出するが、下部カメラ3と上部カメラ5高さの差が大きくなるほど鳥瞰ビューの差分が大きくなり、より高さが低い物体を検出できるためである。具体的には歩行者として幼児を検出できる程度の高さに設置するのが好ましく、荷台107の上端かつ後端に設けるのが、より好ましい。
【0020】
上部カメラ5の撮像範囲は
図3(a)及び
図3(b)に示す撮像範囲R1のように、トラック100の後方の路面109を含む。上部カメラ5の画角及び光軸A1は、撮像範囲R1を撮像できるように設定する。ただし上部カメラ5は荷台107の後端が撮像範囲R1に入っているのが好ましい。撮像した画像における荷台107の後端と検出した物体の距離が求めやすいためである。
【0021】
例えば、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、トラック100が駐車領域43に駐車しようとしてX1の向きに後進していた場合に、上部カメラ5が撮像した画像である上部カメラ画像G2を模式的に示すと
図4(b)に示すようになる。
図4(b)に示すように上部カメラ5が撮像した上部カメラ画像G2は少なくとも荷台107の後端、白線33、35、及び支柱31が映っている。上部カメラ画像G2も支柱31の背後の部分は支柱31に隠れており、映っていない。ただし上部カメラ画像G2は下部カメラ3よりも上方から撮像した画像であるため、支柱31に隠れている部分は
図4(a)に示す下部カメラ3が撮像した下部カメラ画像G1で支柱31に隠れている部分よりも小さい。
【0022】
図2に示す監視制御部13は下部カメラ3と上部カメラ5が撮像したトラック100の後方の下部カメラ画像G1及び上部カメラ画像G2から物体を検出するコンピュータである。監視制御部13は、検出した物体がトラック100に衝突する可能性がある場合は、衝突する可能性を運転手に知得させるコンピュータでもあり、例えばキャブ105に設けられる。
図2に示すように監視制御部13は変換部15、物体検出部17、及び衝突可能性判定部19を備える。
【0023】
変換部15は下部カメラ3が撮像した路面109の下部カメラ画像G1を、路面109を上方から見た平面図である下部鳥瞰ビューT1に変換する部分である。変換部15は上部カメラ5が撮像した路面109の上部カメラ画像G2を、路面109を上方から見た平面図である上部鳥瞰ビューT2に変換する部分でもある。下部鳥瞰ビューT1及び上部鳥瞰ビューT2を生成する際の仮想視点は撮像範囲R1の図心の上方とすればよい。また鳥瞰ビューの生成手段は公知の画像処理技術を用いればよい。また、
図2では変換部15が監視制御部13の構成に含まれているが、下部カメラ3及び上部カメラ5自体が変換部15を持っていてもよい。さらに、アラウンドビューモニタのように、鳥瞰ビューを表示する装置をトラック100が備えている場合、アラウンドビューモニタに表示する鳥瞰ビューを生成する装置を変換部15として流用してもよい。
【0024】
図4(a)に示す下部カメラ3が撮像したトラック100の後方の下部カメラ画像G1を下部鳥瞰ビューT1に変換した模式図を
図5(a)に示す。
図4(b)に示す上部カメラ5が撮像したトラック100の後方の上部カメラ画像G2を上部鳥瞰ビューT2に変換した模式図を
図5(b)に示す。
【0025】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、白線33、35のように高さがないものは下部鳥瞰ビューT1と上部鳥瞰ビューT2では、実際の形状と差がない。また下部鳥瞰ビューT1と上部鳥瞰ビューT2では表示された白線33、35の形状や寸法に違いは無い。一方で、支柱31のように高さがあるものは、下部鳥瞰ビューT1と上部鳥瞰ビューT2に映る形状と、実際の形状とが大きく異なっている。また下部鳥瞰ビューT1と上部鳥瞰ビューT2を比較しても、表示された形状や寸法に大きな違いがある。具体的には下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2では支柱31に隠れて映っていなかった部分の後方が支柱31と同じものとして画像補正されている。支柱31はトラック100の車幅方向の中央付近にあるため、下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2では支柱31に隠れて映っていなかった部分の後方が台形状の補正部65として画像補正されている。補正部65の大きさは
図5(b)に示す上部鳥瞰ビューT2の方が
図5(a)に示す下部鳥瞰ビューT1より小さい。上部鳥瞰ビューT2は上部カメラ5が撮像した路面109の上部カメラ画像G2を鳥瞰ビューに変換したものであるため、下部カメラ画像G1と比べて、支柱31の背後に隠れている部分が小さいためである。
【0026】
図2に示す物体検出部17は上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して、下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2では路面109にある支柱31に隠れて映っていなかった補正部65の差分64から路面109にある支柱31を検出する部分である。具体的には差分64から物体としての支柱31の位置、高さ、及び車幅方向の幅を検出する。これらを検出する具体的な手段は以下の手段を例示できる。
【0027】
まず、上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して見え方が異なる部分、具体的には
図5(a)及び
図5(b)に示す上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1の補正部65の差分64を抽出する。この部分が、物体が存在する部分の後方である。
【0028】
次に、物体の平面上の位置については、上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して、差分64の位置から物体の平面上の位置を検出できる。具体的には、
図5(a)に示す差分64は支柱31の後方にあるため、差分64の位置と、実際の支柱31の位置には相関がある。そのため、この相関として、予め実験で求めたものを
図2に示すように差分相関情報17aとして物体検出部17が有する構成とし、差分64の位置を差分相関情報17aに当てはめて支柱31の位置を求めてもよい。なお差分64の位置と、実際の支柱31の位置の相関は実験ではなく計算で求めてもよい。また、差分64は補正部65の一部であり、補正部65は支柱31と同じものとして画像補正された部分である。そのため、補正部65の前端61を支柱31の中心位置として検出してもよい。支柱31の位置が検出できれば支柱31とトラック100のキャブ105の後端との距離Dも上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1から検出できる。
【0029】
次に、支柱31の高さを検出する手段は以下の2通りを例示できる。まず上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して、差分64の前後方向の長さΔLから物体の高さを検出する手段を例示できる。長さΔLは支柱31が高くなるほど大きくなるため、長さΔLと、支柱31の高さには相関があるためである。このような、差分64の長さΔLと、物体の実際の高さの相関は、予め実験で求めたものを
図2に示すように差分相関情報17aとして物体検出部17が有してもよい。この場合、物体検出部17は差分64の長さΔLを求め、求めた値を差分相関情報17aに当てはめて物体の高さを検出する。また、長さΔLと、支柱31の高さの相関は実験値ではなく、計算で求めてもよい。
【0030】
支柱31の高さを検出する手段としては上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して、補正部65の差分64の面積ΔSから物体の高さを検出する手段も例示できる。面積ΔSは支柱31が高くなるほど大きくなるため、面積ΔSと、支柱31の高さには相関があるためである。この相関は実験で求めたものを差分相関情報17aとして物体検出部17が有してもよいし、計算で求めてもよい。
【0031】
差分64の長さΔLと、面積ΔSのどちらを用いるかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。例えば差分64の長さΔLから物体の高さを検出する手段は、差分64の面積ΔSから物体の高さを検出する手段と比べて物体の高さとの相関が強いため、検出精度の点で有利である。一方で差分64の面積ΔSから物体の高さを検出する手段は、長さΔLを算出する手段と比べて、長さを求めるための基準点を設定する必要がないため、面積ΔSを算出する処理が容易である点で有利である。
【0032】
次に、支柱31の幅を検出する手段は以下の2通りを例示できる。まず上部鳥瞰ビューT2と下部鳥瞰ビューT1を比較して、差分64の車幅方向の幅から物体の幅を検出する手段を例示できる。例えば
図5(a)に示す下部鳥瞰ビューT1の補正部65の差分64のY方向の最短幅ΔWを検出する。最短幅ΔWは支柱31の幅が長くなるほど長くなるため、最短幅ΔWと、支柱31の幅には相関があるためである。差分64の最短幅ΔWと、物体の実際の幅の相関は、予め実験で求めたものを
図2に示す差分相関情報17aとして物体検出部17が有してもよいし、計算で求めてもよい。
【0033】
支柱31の幅を検出する手段としては補正部65の差分64の面積ΔSから物体の幅を検出する手段も例示できる。例えば
図5(a)に示す下部鳥瞰ビューT1の補正部65の差分64の面積ΔSから支柱31の幅を検出する。面積ΔSは支柱31の幅が長くなるほど大きくなるため、面積ΔSと、支柱31の幅には相関があるためである。この相関は実験で求めたものを差分相関情報17aとして物体検出部17が有してもよいし、計算で求めてもよい。
【0034】
図2に示す衝突可能性判定部19は物体検出部17が検出した物体がトラック100に衝突する可能性を判定し、衝突する可能性があると判定した場合は衝突の可能性をトラック100の運転手に知得させる装置である。衝突の可能性をトラック100の運転手に知得させる手段としては
図2に示すようにキャブ105にスピーカ25を設けて音で衝突する可能性を伝えてもよい。またキャブ105内に文字や図形を表示する液晶等の表示部23を設けて、表示部23に文字で衝突する可能性を伝えてもよい。特にトラック100のキャブ105内にアラウンドビューモニタがある場合、アラウンドビューモニタを表示部23として用い、アラウンドビューモニタに表示された映像のうち、検出された物体を強調表示することで衝突する可能性を伝えてもよい。
【0035】
このように後方監視システム1は、下部カメラ3と上部カメラ5が撮像したカメラ画像から生成した鳥瞰ビューを比較して、カメラ画像では物体に隠れて映っていなかった部分の差分64から物体を検出して車両に衝突する可能性を判定する。そのため、後方監視システム1は単眼カメラが撮像した画像からトラック100の後方の物体がトラック100に衝突する可能性の判定が簡易にできる。特に、アラウンドビューモニタのように、鳥瞰ビューを表示する装置をトラック100が備えている場合、アラウンドビューモニタに表示する鳥瞰ビューを生成する装置を変換部15として流用できる。そのため、画像処理用の装置やソフトウェアを追加せずにトラック100の後方の物体がトラック100に衝突する可能性の判定が簡易にできる。
【0036】
具体的に衝突可能性判定部19が衝突の可能性があると判定する基準は、トラック100の後端と、物体検出部17が検出した物体、
図3では支柱31との距離Dが予め定められた所定の距離以下になった場合を例示できる。予め定められた所定の距離とは、トラック100の運転手がブレーキを踏めば支柱31と衝突する前にトラック100が停止する距離、つまり制動距離に、予め定められた安全率を乗じた値である。
【0037】
このように支柱31とトラック100の後端との距離Dが予め定められた所定の距離以下になった場合に衝突の可能性があると判定することで、運転手が衝突の可能性を知得した時点でブレーキを踏めば、支柱31と衝突するのを回避できる。
【0038】
なお、衝突可能性判定部19が衝突の可能性を判定する基準となる予め定められた距離は、トラック100と物体の相対速度や移動する向きによって異なる場合がある。例えば物体が支柱31のような設置物ではなく歩行者のような移動体の場合で、歩行者が車両に向かって歩いている場合は、予め定められた所定の距離は、物体が支柱31のように動かない設置物の場合よりも短くなる。また、トラック100が物体に相対的に近づいている場合、トラック100や物体の速度が速くなるほど予め定められた所定の距離は短くなる。そのため、衝突可能性判定部19はトラック100に設けられた舵角センサ27や速度センサ29からトラック100の進行する向きや速度を取得して予め定められた所定の距離を設定する。また所定の時間間隔で下部カメラ3と上部カメラ5に路面109を撮像させて鳥瞰ビューを生成して差分64から物体を検出し、差分64の位置や大きさの変動を取得することで、物体の移動速度と向きを検出して予め定められた所定の距離を設定する。より具体的には、トラック100と物体が互いに近づく向きに相対的に移動しており、かつ相対速度が速くなるほど、所定の距離を短く設定する。
【0039】
このように、衝突可能性判定部19がトラック100と、検出した物体の相対速度及び移動する向きに基づき所定の距離を設定することで、トラック100と、検出した物体が衝突する可能性をより高い精度で判定できる。
【0040】
また、衝突可能性判定部19は検出した物体の内、予め定められた高さ以上の高さの物体のみを、衝突する可能性がある物体として扱う。予め定められた高さとは、
図3(a)に示すようにトラック100の路面109からの高さのうち、最も低い部分の高さである最低地上高H2を例示できる。最低地上高H2よりも高さが低い物体は路面109上の小石のようにトラック100の荷台107に衝突する可能性が低いためである。
【0041】
なお、
図2に示す変換部15、物体検出部17、及び衝突可能性判定部19は各々をハードウェアで構成してもよい。あるいはこれらの機能をコンピュータに実行させるソフトウェアと、ソフトウェアの指令に基づきこれらの機能を実行する汎用コンピュータで構成してもよい。以上が後方監視システム1の構造の詳細の説明である。
【0042】
次に後方監視システム1を用いた後方監視方法の手順について、
図6を参照して簡単に説明する。まず
図2に示す監視制御部13や監視制御部13の変換部15は、下部カメラ3と上部カメラ5に所定の時間間隔でトラック100の後方の路面109の撮像範囲R1を撮像させる指令を出す。指令を受けた下部カメラ3と上部カメラ5は撮像範囲R1を撮像し、撮像した下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2を変換部15に送信する(
図6のS1、撮像工程)。
【0043】
次に
図2に示す変換部15は、取得した下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2を下部鳥瞰ビューT1及び上部鳥瞰ビューT2に変換して物体検出部17に送信する(
図6のS2、変換工程)。物体検出部17は下部鳥瞰ビューT1と上部鳥瞰ビューT2を比較して、下部カメラ画像G1と上部カメラ画像G2では路面109にある物体に隠れて映っていなかった部分である補正部65の差分64を抽出する。さらに物体検出部17は、補正部65の差分64から路面109にある物体を検出して、検出した物体の位置、高さ、幅、移動速度と向き等を算出して衝突可能性判定部19に送信する(
図6のS3、物体検出工程)。
【0044】
次に、
図2に示す衝突可能性判定部19は、物体検出部17が検出した物体がトラック100に衝突する可能性があるか無いかを判定し、衝突する可能性があると判定した場合はS5に進み、衝突の可能性が無いと判定した場合はリターンする(
図6のS4)。S4で物体がトラック100に衝突する可能性があると判定した場合、衝突可能性判定部19は
図2に示す表示部23やスピーカ25を用いて衝突の可能性をトラック100の運転手に知得させる(
図6のS5)。なお、S4とS5を衝突可能性判定工程ともいう。以上が後方監視システム1を用いた後方監視方法の手順の説明である。
【0045】
このように本実施形態によれば後方監視システム1は下部カメラ3と上部カメラ5と、変換部15と、物体検出部17と、衝突可能性判定部19を備える。この構成では、下部カメラ3と上部カメラ5のカメラ画像から生成した鳥瞰ビューを比較して、カメラ画像では物体に隠れて映っていなかった部分の差分64から物体を検出してトラック100に物体が衝突する可能性を判定する。そのため、単眼カメラが撮像した画像からトラック100の後方の物体がトラック100に衝突する可能性の判定が簡易にできる。
【0046】
以上、実施形態に基づき本開示を説明したが本開示は実施形態に限定されない。当業者であれば本開示の技術思想の範囲内において各種変形例及び改良例に想到するのは当然のことであり、これらも当然に本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 :後方監視システム
3 :下部カメラ
5 :上部カメラ
13 :監視制御部
15 :変換部
17 :物体検出部
17a :差分相関情報
19 :衝突可能性判定部
23 :表示部
25 :スピーカ
27 :舵角センサ
29 :加速度センサ
31 :支柱
33、35 :白線
41、43、45 :駐車領域
61 :前端
64 :差分
65 :補正部
100 :トラック
103 :シャシ
105 :キャブ
107 :荷台
109 :路面