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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空気圧工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/04 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B25C1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022088133
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2018036895の分割
【原出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2022105777
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-030474(JP,U)
【文献】特開2007-237374(JP,A)
【文献】特開2000-263466(JP,A)
【文献】特開2008-188741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力の圧縮空気が貯留されるエアチャンバと、
第1の圧力の圧縮空気で駆動される駆動機構と、
第1の圧力の圧縮空気を減圧して、大気圧より高圧で、第1の圧力より低圧の第2の圧力の圧縮空気を生成する減圧機構と、
前記減圧機構により減圧された第2の圧力の圧縮空気で作動し、前記駆動機構に対する第1の圧力の圧縮空気の供給の有無を切り替える弁機構と、
前記エアチャンバと前記駆動機構をつなぎ、第1の圧力の圧縮空気を前記駆動機構に供給する第1の空気流路と、
前記エアチャンバから前記減圧機構を通り前記弁機構に供給される第2の圧力の圧縮空気が通る第2の空気流路とを備え、
前記エアチャンバと前記弁機構を、前記減圧機構を通る前記第2の空気流路でつなぎ、前記減圧機構により減圧された第2の圧力の圧縮空気を、前記減圧機構から前記弁機構に供給す
空気圧工具。
【請求項2】
第1の圧力の圧縮空気が供給される供給口と前記弁機構の間に前記減圧機構を備えた 請求項1に記載の空気圧工具。
【請求項3】
手で把持されるハンドルを備え、
前記ハンドルに前記供給口と前記減圧機構を備えた
請求項2に記載の空気圧工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気で駆動される空気圧工具に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を動力源として打込シリンダで打込ピストンを作動させ、打込ピストンに結合したドライバを駆動してノーズに供給された釘等のファスナーを打ち込むようにした釘打機と称す空気圧工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、圧縮空気を動力源とする空気圧工具では、高圧の圧縮空気を使用することで大きな出力が得られる。また、空気圧工具では、機械的な動きを弁機構に伝達して弁機構を開閉するのではなく、空気圧とバネの力を利用して弁機構が開くようにして、弁機構の作動速度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-302442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空気圧工具では、駆動源に供給される圧縮空気と同じ高圧の圧縮空気で弁機構を作動させていた。このため、弁機構に大きな空気圧が掛かり、弁機構の作動時の摺動抵抗、操作負荷が大きく、弁機構の作動速度が低下する要因となっていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、空気圧による負荷を低減できるようにした空気圧工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、第1の圧力の圧縮空気が貯留されるエアチャンバと、第1の圧力の圧縮空気で駆動される駆動機構と、第1の圧力の圧縮空気を減圧して、大気圧より高圧で、第1の圧力より低圧の第2の圧力の圧縮空気を生成する減圧機構と、減圧機構により減圧された第2の圧力の圧縮空気で作動し、駆動機構に対する第1の圧力の圧縮空気の供給の有無を切り替える弁機構と、エアチャンバと駆動機構をつなぎ、第1の圧力の圧縮空気を駆動機構に供給する第1の空気流路と、エアチャンバから減圧機構を通り弁機構に供給される第2の圧力の圧縮空気が通る第2の空気流路とを備え、エアチャンバと弁機構を、減圧機構を通る第2の空気流路でつなぎ、減圧機構により減圧された第2の圧力の圧縮空気を、減圧機構から弁機構に供給す空気圧工具である。
【0008】
本発明では、弁機構は、第2の圧力の圧縮空気の供給、排気の切替で作動し、弁機構が作動することで、第1の圧力の圧縮空気が駆動機構に供給される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、駆動機構は、この駆動機構の駆動に適した第1の圧力の圧縮空気で駆動することができ、所望の出力を得ることができる。また、弁機構は、第1の圧力より低圧の第2の圧力で作動するので、弁機構に掛かる空気圧が小さくなり、作動時の摺動抵抗、操作荷重が低減されるので、空気圧よる負荷が低減される。よって、弁機構の作動速度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図である。
図2】メインバルブを高圧の圧縮空気で作動させる場合の課題を示す説明図である。
図3】起動バルブを高圧の圧縮空気で作動させる場合の課題を示す説明図である。
図4】起動バルブを低圧の圧縮空気で作動させる場合の効果を示す説明図である。
図5】第2の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の空気圧工具の一例である打込み工具としての釘打機の実施の形態について説明する。
【0012】
<第1の実施の形態の釘打機の構成例>
図1は、第1の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図である。
【0013】
第1の実施の形態の釘打機1Aは、動力源である流体としての圧縮空気で作動して打撃動作を行う打込シリンダ2と、図示しない外部のエアコンプレッサから供給された圧縮空気が貯留されるエアチャンバ3を備える。釘打機1Aは、一の方向に延伸する形状のハウジング10の内部に打込シリンダ2が設けられ、ハウジング10から他の方向に延伸するハンドル11の内部にエアチャンバ3が設けられる。また、釘打機1Aは、ハウジング10の内部で打込シリンダ2の下部の周囲に、ブローバックチャンバ31が設けられる。
【0014】
打込シリンダ2は駆動機構の一例で、図示しない釘等を打ち出すドライバ20と、ドライバ20が設けられた打込ピストン21を備え、打込ピストン21が摺動可能に設けられる。打込シリンダ2は、打込ピストン21が圧縮空気で押圧されることで打込ピストン21が移動し、ドライバ20を駆動する。
【0015】
エアチャンバ3は、ハンドル11の端部に設けた吸気口の一例であるエアプラグ30を介して、エアコンプレッサ等の圧縮空気源から圧縮空気が供給される。ブローバックチャンバ31は、打込動作後の打込ピストン21を初期位置にリターン駆動させるため、圧縮空気が供給される。ブローバックチャンバ31は、流入排出口31aを介して打込シリンダ2とつながる。流入排出口31aは、空気が流れる方向を1方向に規制する逆止弁31bを備える。逆止弁31bは、打込シリンダ2からブローバックチャンバ31へは空気を流し、ブローバックチャンバ31から打込シリンダ2への空気の逆流は規制する。
【0016】
釘打機1Aは、ハウジング10の一方の端部に、ドライバ20が入るノーズ12を備えると共に、ノーズ12に図示しない釘を供給するマガジン13を備える。ノーズ12は、ドライバ20の移動方向に沿って延伸する。なお、釘打機1Aの使用形態を考慮して、ノーズ12を備える側を下方向とする。
【0017】
釘打機1Aは、エアチャンバ3内の圧縮空気の流入・流出を規制して打込ピストン21を往復移動させるメインバルブ4と、メインバルブ4を作動させる起動バルブ5Aを備える。また、釘打機1Aは、メインバルブ4及び起動バルブ5Aに減圧された圧縮空気を供給する減圧バルブ55を備える。減圧バルブ55は減圧機構の一例で、ハンドル11の内部に設けられ、エアチャンバ3に供給された第1の圧力の圧縮空気を、第1の圧力より小さく大気圧より大きい第2の圧力に減圧して起動バルブ5Aに供給する。
【0018】
第1の圧力の圧縮空気は、打込シリンダ2を作動させる駆動用として適した値に圧力が設定された圧縮空気であり、第2の圧力の圧縮空気は、メインバルブ4及び起動バルブ5Aを作動させる制御用として適した値に圧力が設定された圧縮空気である。以下の説明では、第1の圧力の圧縮空気を高圧の圧縮空気と称し、第2の圧力の圧縮空気を低圧の圧縮空気と称す。
【0019】
釘打機1Aは、エアチャンバ3から打込シリンダ2に供給される高圧の圧縮空気が通る第1の空気流路である高圧空気流路32と、エアチャンバ3から減圧バルブ55を通り起動バルブ5Aに供給される低圧の圧縮空気が通る第2の空気流路である低圧空気流路33を備える。
【0020】
メインバルブ4は弁機構の一例で、エアチャンバ3から打込シリンダ2内への高圧の圧縮空気の流入、打込シリンダ2内から外部への高圧の圧縮空気の排出を切り替えることで、打込ピストン21を往復移動させる。
【0021】
メインバルブ4は、打込シリンダ2の上端部の外周側に上下動可能に設けられる。また、メインバルブ4は、バネ41の力で閉じる方向である上方に付勢される。更に、メインバルブ4は、減圧バルブ55で減圧された低圧の圧縮空気が、起動バルブ5Aを介して下室42に供給され、低圧の圧縮空気の空気圧で上方向に押される。これにより、メインバルブ4は、非作動時はバネ41の力及び空気圧で上方に付勢されて上死点位置にあり、エアチャンバ3と打込シリンダ2との上端開放部を遮断じている。
【0022】
起動バルブ5Aは弁機構の一例で、ハンドル11に上下動可能に設けられ、バネ51の力で閉じる方向である上方に付勢される。また、起動バルブ5Aは、減圧バルブ55で減圧された低圧の圧縮空気が下室52に供給され、低圧の圧縮空気の空気圧で上方に押される。
【0023】
起動バルブ5Aは、往復移動可能に設けられるバルブステム50を備える。バルブステム50は、起動バルブ5Aに上下動可能に設けられ、バネ51の力で下方に付勢される。また、バルブステム50は、減圧バルブ55で減圧された低圧の圧縮空気が供給され、低圧の圧縮空気の空気圧で下方に付勢される。
【0024】
釘打機1Aは、起動バルブ5Aを作動させる一の操作を受けるトリガ6Aと、釘が打たれる被打込材に押し付けられる他の操作を受けて移動するコンタクトアーム8Aと、一の操作を受けたトリガ6Aの動作及び他の操作を受けたコンタクトアーム8Aの動作で作動可能に設けられ、起動バルブ5Aの作動の有無を切り替えるコンタクトレバー7を備える。
【0025】
トリガ6Aは、ノーズ12が設けられる側であるハンドル11の一の側に設けられる。トリガ6Aは、ハウジング10に近い側である一方の端部側が軸60により回転可能に支持される。また、トリガ6Aは、軸60で支持される側と反対側、すなわち、ハウジング10から遠い側である他方の端部側が、軸60を支点とした回転動作で、ノーズ12が備えられている側に移動する方向にバネで付勢される。
【0026】
コンタクトレバー7は、一方の端部に、起動バルブ5Aのバルブステム50を押すことが可能な作用部70を備え、他方の端部が軸71によりトリガ6Aに回転可能に支持される。また、コンタクトレバー7は、軸71で支持される側と反対側、すなわち、作用部70が備えられる一方の端部側が、軸71を支点とした回転動作で、ノーズ12が備えられている側に移動する方向に、捩じりコイルばね等のバネで付勢される。
【0027】
コンタクトアーム8Aは、ノーズ12の延伸方向に沿って移動可能に設けられ、ノーズ12の先端側に、被打込材に突き当てられる突き当て部80を備える。また、コンタクトアーム8Aは、コンタクトレバー7を作動させる押圧部81を備える。コンタクトアーム8Aは、バネ83でノーズ12の先端側から突出する方向に付勢される。
【0028】
コンタクトアーム8Aは、被打込材に突き当て部80が突き当てられて押されることで、初期位置から、押圧部81でコンタクトレバー7を作動させる作動位置まで移動する。
【0029】
コンタクトレバー7は、コンタクトアーム8Aに押されることで、軸71を支点とした回転動作で、初期位置から、バルブステム50を押して起動バルブ5Aを作動させることが可能な作動可能位置まで移動する。
【0030】
トリガ6Aは、操作が解除された状態では、軸60を支点とした回転動作で初期位置に移動する。トリガ6Aは、引く操作により、軸60を支点とした回転動作で、初期位置から、作動可能位置に移動したコンタクトレバー7で起動バルブ5Aを作動させることが可能な操作位置まで移動する。
【0031】
<第1の実施の形態の釘打機の動作例>
次に、各図を参照して、第1の実施の形態の釘打機1Aの動作について説明する。
【0032】
初期状態では、図1に示すように、トリガ6Aが引かれておらず、初期位置にあり、また、コンタクトアーム8Aが被打込材に押しけられておらず、初期位置にある。このため、コンタクトレバー7も初期位置にある。
【0033】
図1に示す初期状態から、コンタクトアーム8Aが被打込材に押し付けられて、当該コンタクトアーム8Aが初期位置から作動位置に移動すると、コンタクトアーム8Aの押圧部81が、コンタクトレバー7を押す。これにより、コンタクトレバー7が、軸71を支点とした回転動作で、初期位置から起動バルブ5Aのバルブステム50を押して起動バルブ5Aを作動させることが可能な作動可能位置に移動する。なお、コンタクトレバー7が作動可能位置に移動しても、トリガ6Aが操作位置に移動しなければ、コンタクトレバー7でバルブステム50は押されない。
【0034】
初期状態からコンタクトアーム8Aが被打込材に押し付けられて作動位置に移動した後、トリガ6Aが引かれて、当該トリガ6Aが初期位置から操作位置に移動すると、作動可能位置にあるコンタクトレバー7の作用部70が起動バルブ5Aのバルブステム50を押す。
【0035】
起動バルブ5Aは、バルブステム50が所定量上方向に移動することで、下室52内の低圧の圧縮空気が排気される。下室52の低圧の圧縮空気が排気されると、バネ51の力よりも起動バルブ5Aの作用面53に作用する空気圧の方が大きくなり、起動バルブ5Aが下方に移動して、流路40を開く。
【0036】
流路40が開くと、メインバルブ4の下室42内の低圧の圧縮空気が排気されるので、バネ41の力よりもメインバルブ4の作用面43に作用する空気圧の方が大きくなり、メインバルブ4が下方に移動する。これにより、エアチャンバ3内の高圧の圧縮空気が打込シリンダ2に供給される。
【0037】
これにより、打込シリンダ2が高圧の圧縮空気で作動して、打込ピストン21が図示しないファスナー、本例では釘を打ち出す方向に移動し、ドライバ20で図示しない釘の打ち込み動作が行われる。また、打込シリンダ2内の空気の一部が、流入排出口31aからブローバックチャンバ31に供給される。打ち込み動作後、ブローバックチャンバ31から打込シリンダ2に圧縮空気が供給され、ドライバ20を復帰させる方向に打込ピストン21が移動する。
【0038】
<第1の実施の形態の釘打機の作用効果例>
図2は、メインバルブを高圧の圧縮空気で作動させる場合の課題を示す説明図、図3は、起動バルブを高圧の圧縮空気で作動させる場合の課題を示す説明図である。
【0039】
圧縮空気を動力源とする釘打機1A等の打込み工具では、高圧の圧縮空気を使用することで大きな出力が得られる。そのため、エアコンプレッサから高圧の圧縮空気が供給される。また、打込み工具では、トリガの動きを機械的にメインバルブに伝達してメインバルブを開閉するのではなく、空気圧とバネの力を利用して、人の操作に比較して高速でメインバルブが開くようにしている。このため、起動バルブ5A及びメインバルブ4にも圧縮空気が供給されているが、従来は、打込シリンダ2を作動させる高圧の圧縮空気がエアチャンバ3から直接起動バルブ5Aに供給される構成であった。
【0040】
メインバルブ4の下室42に、打込シリンダ2に供給される圧縮空気と同じ高圧の圧縮空気が供給される構成では、図2に示すように、下室42を封止するOリング等の封止部材44a、メインバルブ4を封止する封止部材44bに大きな空気圧が掛かる。
【0041】
これにより、封止部材44a、44bの変形量が大きくなり、封止部材44a、44bによるメインバルブ4への押圧力が大きくなる。このため、メインバルブ4が作動する際の摺動抵抗が大きくなり、メインバルブ4の動作速度が低下し応答性が悪化する。
【0042】
これに対し、メインバルブ4の下室42に、大気圧より高い圧力で、かつ、打込シリンダ2に供給される圧縮空気より低圧の圧縮空気が供給される構成では、下室42を封止するOリング等の封止部材44a、メインバルブ4を封止する封止部材44bに掛かる空気圧が、高圧の圧縮空気に比べて低くなる。
【0043】
これにより、封止部材44a、44bの変形量が抑制され、封止部材44a、44bによるメインバルブ4への押圧力が小さくなる。このため、メインバルブ4が作動する際の摺動抵抗の増加が抑制され、メインバルブ4の動作速度が抑制され応答性が向上する。
【0044】
また、メインバルブ4の下室42に、打込シリンダ2に供給される圧縮空気と同じ高圧の圧縮空気が供給される構成では、図3に示すように、起動バルブ5Aが開くと、流路40に高圧の圧縮空気が流れることで、流路40に露出したOリング等の起動バルブ5Aの封止部材54に大きな空気圧が掛かる。これにより、封止部材54が起動バルブ5Aから外れる可能性がある。
【0045】
これに対し、メインバルブ4の下室42に、大気圧より高い圧力で、かつ、打込シリンダ2に供給される圧縮空気より低圧の圧縮空気が供給される構成では、起動バルブ5Aが開くことで流路40に露出したOリング等の起動バルブ5Aの封止部材54に掛かる空気圧が、高圧の圧縮空気に比べて低くなる。これにより、封止部材54が起動バルブ5Aから外れることが抑制される。
【0046】
図4は、起動バルブを低圧の圧縮空気で作動させる場合の効果を示す説明図である。起動バルブ5Aは、バルブステム50が空気圧を受ける第1の受圧面56と第2の受圧面57の面積の差で作動する。
【0047】
すなわち、起動バルブ5Aを通り作動室58に圧縮空気が供給されると、バルブステム50は、第1の受圧面56と第2の受圧面57の両方に空気圧が掛かる。バルブステム50は、第1の受圧面56の面積が第2の受圧面57の面積より大きいので、起動バルブ5Aからバルブステム50が突出する方向へバルブステム50が移動する。
【0048】
バルブステム50に掛かる空気圧をP、第1の受圧面56の面積をS1、第2の受圧面57の面積をS2とすると、バルブステム50を移動させる力Fは、以下の(1)式で表される。
F=(S1-S2)×P・・・(1)
【0049】
バルブステム50が第1の受圧面56と第2の受圧面57の面積の差で作動する構成では、上記(1)式から、バルブステム50を移動させる力Fを小さくすることができる。但し、バルブステム50に、打込シリンダ2に供給される圧縮空気と同じ高圧の圧縮空気が供給される構成では、バルブステム50を移動させる力Fが、第1の受圧面56と第2の受圧面57の面積の差に空気圧を乗じた値であることから、バルブステム50を、トリガ6Aを介して押す操作荷重が大きくなる。
【0050】
これに対し、バルブステム50に、大気圧より高い圧力で、かつ、打込シリンダ2に供給される圧縮空気より低圧の圧縮空気が供給される構成では、バルブステム50を移動させる力Fが小さくなり、バルブステム50を、トリガ6Aを介して押す操作荷重が低減される。
【0051】
なお、バルブステムが単一の受圧面に空気圧を受ける構成でも、同様の効果が得られる。
【0052】
<第2の実施の形態の釘打機の構成例>
図5は、第2の実施の形態の釘打機の一例を示す要部構成図である。
【0053】
第2の実施の形態の釘打機1Bは、動力源である流体としての圧縮空気で作動して打撃動作を行う打込シリンダ2と、図示しない外部のエアコンプレッサから供給された圧縮空気が貯留されるエアチャンバ3を備える。釘打機1Bは、一の方向に延伸する形状のハウジング10の内部に打込シリンダ2が設けられ、ハウジング10から他の方向に延伸するハンドル11の内部にエアチャンバ3が設けられる。また、釘打機1Bは、ハウジング10の内部で打込シリンダ2の下部の周囲に、ブローバックチャンバ31が設けられる。
【0054】
駆動機構である打込シリンダ2は、図示しない釘等を打ち出すドライバ20と、ドライバ20が設けられた打込ピストン21を備え、打込ピストン21が摺動可能に設けられる。打込シリンダ2は、打込ピストン21が圧縮空気で押圧されることで打込ピストン21が移動し、ドライバ20を駆動する。
【0055】
エアチャンバ3は、ハンドル11の端部に設けた吸気口であるエアプラグ30を介して、エアコンプレッサ等の圧縮空気源から圧縮空気が供給される。ブローバックチャンバ31は、打込動作後の打込ピストン21を初期位置にリターン駆動させるため、圧縮空気が供給される。ブローバックチャンバ31は、流入排出口31aを介して打込シリンダ2とつながる。流入排出口31aは、空気が流れる方向を1方向に規制する逆止弁31bを備える。逆止弁31bは、打込シリンダ2からブローバックチャンバ31へは空気を流し、ブローバックチャンバ31から打込シリンダ2への空気の逆流は規制する。
【0056】
釘打機1Bは、ハウジング10の一方の端部に、ドライバ20が入るノーズ12を備えると共に、ノーズ12に図示しない釘を供給するマガジン13を備える。ノーズ12は、ドライバ20の移動方向に沿って延伸する。なお、釘打機1Bの使用形態を考慮して、ノーズ12を備える側を下方向とする。
【0057】
釘打機1Bは、エアチャンバ3内の圧縮空気の流入・流出を規制して打込ピストン21を往復移動させるメインバルブ4と、メインバルブ4を作動させる起動バルブ5Bを備える。また、釘打機1Bは、メインバルブ4及び起動バルブ5Bに減圧された圧縮空気を供給する減圧バルブ55を備える。減圧機構である減圧バルブ55は、ハンドル11の内部に設けられ、エアチャンバ3に供給された第1の圧力の圧縮空気を、第1の圧力より小さく大気圧より大きい第2の圧力に減圧して起動バルブ5に供給する。
【0058】
第1の圧力の圧縮空気は、打込シリンダ2を作動させる駆動用として適した値に圧力が設定された圧縮空気であり、第2の圧力の圧縮空気は、メインバルブ4及び起動バルブ5Bを作動させる制御用として適した値に圧力が設定された圧縮空気である。以下の説明では、第1の圧力の圧縮空気を高圧の圧縮空気と称し、第2の圧力の圧縮空気を低圧の圧縮空気と称す。
【0059】
釘打機1Bは、エアチャンバ3から打込シリンダ2に供給される高圧の圧縮空気が通る第1の空気流路である高圧空気流路32と、エアチャンバ3から減圧バルブ55を通り起動バルブ5に供給される低圧の圧縮空気が通る第2の空気流路である低圧空気流路33を備える。
【0060】
弁機構であるメインバルブ4は、エアチャンバ3から打込シリンダ2内への高圧の圧縮空気の流入、打込シリンダ2内から外部への高圧の圧縮空気の排出を切り替えることで、打込ピストン21を往復移動させる。
【0061】
メインバルブ4は、打込シリンダ2の上端部の外周側に上下動可能に設けられる。また、メインバルブ4は、バネ41の力で閉じる方向である上方に付勢される。更に、メインバルブ4は、減圧バルブ55で減圧された低圧の圧縮空気が、起動バルブ5を介して下室42に供給され、低圧の圧縮空気の空気圧で上方向に押される。これにより、メインバルブ4は、非作動時はバネ41の力及び空気圧で上方に付勢されて上死点位置にあり、エアチャンバ3と打込シリンダ2との上端開放部を遮断じている。
【0062】
起動バルブ5Bは弁機構の一例で、ハンドル11に上下動可能に設けられ、バネ51の力で閉じる方向である上方に付勢される。また、起動バルブ5Bは、減圧バルブ55で減圧された低圧の圧縮空気が下室52に供給され、低圧の圧縮空気の空気圧で上方に押される。
【0063】
釘打機1Bは、起動バルブ5Bを作動させる電磁バルブ59を備える。電磁バルブ59は電磁弁の一例で、起動バルブ5Bの下室52を開閉することで低圧の圧縮空気の流れを制御し、起動バルブ5Bを作動させる。
【0064】
釘打機1Bは、起動バルブ5Bを作動させる一の操作を受けるトリガ6Bと、釘が打たれる被打込材に押し付けられる他の操作を受けて移動するコンタクトアーム8Bを備える。
【0065】
トリガ6Bは、ノーズ12が設けられる側であるハンドル11の一の側に設けられる。トリガ6Bは、ハウジング10に近い側である一方の端部側が軸60により回転可能に支持される。また、トリガ6Bは、軸60で支持される側と反対側、すなわち、ハウジング10から遠い側である他方の端部側が、軸60を支点とした回転動作で、ノーズ12が備えられている側に移動する方向にバネで付勢される。
【0066】
コンタクトアーム8Bは、ノーズ12の延伸方向に沿って移動可能に設けられ、ノーズ12の先端側に、被打込材に突き当てられる突き当て部80を備える。また、コンタクトアーム8Bは、バネ83でノーズ12の先端側から突出する方向に付勢される。
【0067】
釘打機1Bは、トリガ6Bの操作で作動する第1のスイッチ90と、コンタクトアーム8Bの操作で作動する第2のスイッチ91を備える。また、釘打機1Bは、第1のスイッチ90及び第2のスイッチ91の作動の有無で電磁バルブ59を作動させる制御部92と、制御部92等に電源を供給するバッテリ等の電源部93を備える。
【0068】
コンタクトアーム8Bは、被打込材に突き当て部80が突き当てられて押されることで、初期位置から、押圧部81で第2のスイッチ91を作動させる作動位置まで移動する。
【0069】
トリガ6Bは、操作が解除された状態では、軸60を支点とした回転動作で初期位置に移動する。トリガ6Bは、引く操作により、軸60を支点とした回転動作で、初期位置から、第1のスイッチ90を作動させることが可能な操作位置まで移動する。
【0070】
<第2の実施の形態の釘打機の動作例>
次に、各図を参照して、第2の実施の形態の釘打機1Bの動作について説明する。
【0071】
初期状態では、図5に示すように、トリガ6Bが引かれておらず、初期位置にあり、また、コンタクトアーム8Bが被打込材に押しけられておらず、初期位置にある。このため、第1のスイッチ90及び第2のスイッチ91が共に非作動である。第1のスイッチ90が非作動状の状態をOFF、第2のスイッチ91が非作動の状態をOFFとする。
【0072】
図5に示す初期状態から、コンタクトアーム8Bが被打込材に押し付けられて、当該コンタクトアーム8が初期位置から作動位置に移動すると、押圧部81で第2のスイッチ91が押されて第2のスイッチ91が作動し、ONとなる。
【0073】
初期状態からコンタクトアーム8Bが被打込材に押し付けられて作動位置に移動した後、トリガ6Bが引かれて、当該トリガ6Bが初期位置から操作位置に移動すると、第1のスイッチ90が作動し、ONとなる。第2のスイッチ91がONの状態で第1のスイッチ90がONになると、制御部92は電磁バルブ59を作動させる。すなわち、コンタクトアーム8Bが被打込材に押し付けられて作動位置に移動した状態で、トリガ6Bが操作されて操作位置に移動すると、電磁バルブ59が作動する。これに対し、先にトリガ6Bが操作されて操作位置に移動して第1のスイッチ90がONとなり、次にコンタクトアーム8Bが被打込材に押し付けられて作動位置に移動して第2のスイッチ91がONとなっても、電磁バルブ59は作動しない。
【0074】
電磁バルブ59が作動すると、下室52内の低圧の圧縮空気が排気される。下室52の低圧の圧縮空気が排気されると、バネ51の力よりも起動バルブ5の作用面53に作用する空気圧の方が大きくなり、起動バルブ5Bが下方に移動して、流路40を開く。
【0075】
流路40が開くと、メインバルブ4の下室42内の低圧の圧縮空気が排気されるので、バネ41の力よりもメインバルブ4の作用面43に作用する空気圧の方が大きくなり、メインバルブ4が下方に移動する。これにより、エアチャンバ3内の高圧の圧縮空気が打込シリンダ2に供給される。
【0076】
これにより、打込シリンダ2が高圧の圧縮空気で作動して、打込ピストン21が図示しないファスナー、本例では釘を打ち出す方向に移動し、ドライバ20で図示しない釘の打ち込み動作が行われる。また、打込シリンダ2内の空気の一部が、流入排出口31aからブローバックチャンバ31に供給される。打ち込み動作後、ブローバックチャンバ31から打込シリンダ2に圧縮空気が供給され、ドライバ20を復帰させる方向に打込ピストン21が移動する。
【0077】
<第2の実施の形態の釘打機の作用効果例>
起動バルブ5Bを電磁バルブ59で作動させる構成で、起動バルブ5Bに、打込シリンダ2に供給される圧縮空気と同じ高圧の圧縮空気が供給される構成では、下室52に高圧の圧縮空気が供給されるので、下室52を開閉する電磁バルブ59が、高圧の圧縮空気を封止できる必要がある。このため、電磁バルブ59を作動させるため大きな力が必要となり、装置が大型化し、また、消費電力が増大する。
【0078】
これに対し、起動バルブ5Bの下室52に、大気圧より高い圧力で、かつ、打込シリンダ2に供給される圧縮空気より低圧の圧縮空気が供給される構成では、電磁バルブ59を作動させるため力を小さくでき、装置の小型化を図り、消費電力低減できる。
【0079】
第2の実施の形態の釘打機1Bでは、トリガの操作によらずとも、電磁バルブ59を作動させることが可能であるから、据え置き型の釘打機に適用することも可能である。
【0080】
なお、第1の実施の形態の釘打機1A及び第2の実施の形態の釘打機1Bでは、減圧バルブ55をハンドル11に内蔵する構成としたが、エアコンプレッサから高圧の圧縮空気と低圧の圧縮空気が供給される構成であれば、第1の実施の形態の釘打機1A及び第2の実施の形態の釘打機1Bに減圧バルブ55を設けなくても良い。また、第1の実施の形態の釘打機1A及び第2の実施の形態の釘打機1Bとエアコンプレッサとの間に減圧バルブを備え、エアコンプレッサから供給される高圧の圧縮空気を、高圧の圧縮空気と低圧の圧縮空気に分岐して供給されるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、人が手で把持して使用する釘打ち機、ねじ締め機等の工具、その他の空気圧工具、据え置き型の空気圧工具に適用される。
【符号の説明】
【0082】
1A、1B・・・釘打機(打込み工具)、10・・・ハウジング、11・・・ハンドル、12・・・ノーズ、13・・・マガジン、2・・・打込シリンダ(駆動機構)、20・・・ドライバ、21・・・打込ピストン、3・・・エアチャンバ、30・・・エアプラグ(吸気口)、31・・・ブローバックチャンバ、31a・・・流入排出口、31b・・・逆止弁、32・・・高圧空気流路(第1の空気流路)、33・・・低圧空気流路(第2の空気流路)、4・・・メインバルブ(弁機構)、40・・・流路、41・・・バネ、42・・・下室、43・・・作用面、44a、44b・・・封止部材、5A、5B・・・起動バルブ(弁機構)、50・・・バルブステム、51・・・バネ、52・・・下室、53・・・作用面、54・・・封止部材、55・・・減圧バルブ(減圧機構)、56・・・第1の受圧面、57・・・第2の受圧面、58・・・作動室、59・・・電磁バルブ(電磁弁)、6A、6B・・・トリガ、60・・・軸、7・・・コンタクトレバー、70・・・作用部、71・・・軸、8A、8B・・・コンタクトアーム、80・・・突き当て部、81・・・押圧部、90・・・第1のスイッチ、91・・・第2のスイッチ、92・・・制御部、93・・・電源部
図1
図2
図3
図4
図5