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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空洞含有ポリエステル系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20231129BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20231129BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B27/36
C08J9/00 A CFD
B32B5/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022099127
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2018137016の分割
【原出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2022125074
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】加田 義典
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168089(JP,A)
【文献】特開2014-111790(JP,A)
【文献】特開2017-197760(JP,A)
【文献】特開2006-241471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08J 7/04 - 7/06
C08J 9/00 - 9/42
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を含有するポリエステル層(A層)の両面に、無機粒子を含有するポリエステル系樹脂からなるポリエステル層(B層)が積層された空洞含有ポリエステル系フィルムであって、前記A層がポリエステル樹脂とポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂とを含有する組成物からなり、
ポリエステル系フィルムを構成する全ポリエステル樹脂に対して、イソフタル酸成分由来のエステル構成単位を含むポリエステル樹脂を含有し、ポリエステル系フィルムを構成する全エステル構成単位に対するイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有率が0.2モル%以上2.0モル%以下である空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
塗れ性や接着性を改良するための塗布層が少なくとも片面に設けられた、請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
見かけ密度が0.8~1.3g/cmである請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
B層中の無機粒子の含有量が5~40質量%である請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
塗布層はポリエステル樹脂で構成され、滑剤粒子を含む、請求項2に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
ラベル、ステッカー、カード、又は包装材料に用いられることを特徴とする請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
A層中のポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であり、
B層中の無機粒子が、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカから選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
光学濃度が0.55以上(厚み50μm換算)であり、かつ色調b値が4以下(厚み50μm換算)である請求項1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【請求項9】
ポリエステル系フィルム中の環状3量体オリゴマーの含有量が、0.60質量%以下である請求項2~のいずれかに記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量産性に優れ、オリゴマー含有量が少なくオリゴマー析出の抑制ができ、かつ隠蔽性や白色度に優れた空洞含有ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂を主成分とした紙代替物である合成紙は、天然紙に比べて、耐水性、吸湿寸法安定性、表面安定性などに優れており、ラベルやステッカー、ポスター、記録紙、包装材料などに数多く利用されている。また、反射率や白色度にも優れていることから、ディスプレイや照明器具の反射板などにも利用されている。合成紙の主原料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが用いられているが、特に、ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル系樹脂は、その優れた機械的特性、熱的特性などから、広範囲な用途に展開されている。
【0003】
紙と類似した機能を有するフィルムを得る方法としては、一般的に、微細な空洞をフィルム内部に多量に含有させる方法や、平坦なフィルムにサンドブラスト処理やケミカルエッチング処理、マット化処理などの表面処理を行うことで粗面化する方法などが挙げられる。これらの中で、前者の微細な空洞をフィルム内部に多量に含有させる方法は、紙のような隠蔽性や白色度が得られるだけでなく、フィルム自体を軽量化できるため、面積辺りのコストを抑えられる点や、適度な柔軟性やクッション性が得られるため、印刷時における画像鮮明性が優れる点などのメリットから、数多く採用されている。
【0004】
微細な空洞をフィルム内部に発現させる方法としては、一般的に、ポリエステル系樹脂中に非相溶な熱可塑性樹脂(以下非相溶樹脂と呼ぶ)を混合し、ポリエステル系樹脂中に該非相溶樹脂を分散させたシートを得、少なくとも1軸方向に延伸することにより、ポリエステル系樹脂と非相溶樹脂間での界面剥離によって、空洞を発現させる方法が挙げられる。ポリエステル系樹脂に対して、空洞を発現させるための非相溶樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂(例えば、特許文献1~3参照)やポリスチレン系樹脂(例えば、特許文献4、5
参照)が好ましく利用されている。
【0005】
ポリエステル系樹脂には、一般的にオリゴマーが含有していることから、ラベルやステッカー、反射板として長期間使用される場合、ポリエステル系樹脂フィルムに含有しているオリゴマーがフィルム表面に析出することによりフィルム基材表面の品質が変化する懸念がある。例えば、フィルム表面に塗工した粘着層の粘着性が悪化したり、また表面反射率や輝度が低下するなどが起こりうる。またアニール加工や樹脂塗工などの後工程において、工程汚染が発生する懸念もある。空洞含有白色ポリエステル系樹脂フィルムからオリゴマーの析出を抑制する方法としては、フィルム基材に樹脂塗膜を積層する例示があるが、フィルム基材中に含まれるオリゴマー量を減少させているわけではないので効果は十分とは言えなかった(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭49-34755号公報
【文献】特開平2-284929号公報
【文献】特開平2-180933号公報
【文献】特公昭54-29550号公報
【文献】特開平11-116716号公報
【文献】特開2007-298963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来の微細空洞含有ポリエステル系樹脂フィルムが有する課題を解決しようとするものであって、量産性に優れ、オリゴマー含有量が少なくオリゴマー析出の抑制ができ、かつ隠蔽性や白色度に優れた空洞含有ポリエステル系フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 内部に空洞を含有する層(A層)の両面に無機粒子を含有するポリエステル系樹脂からなる層(B層)が積層された空洞含有ポリエステル系フィルムであって、前記A層がポリエステル樹脂とポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂を含有する組成物からなり、ポリエステル系フィルムを構成する全ポリエステル樹脂に対して、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を25質量%以上90質量%以下含有し、ポリエステル系フィルムを構成する全エステル構成単位に対するイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有率が0.2モル%以上2.0モル%以下である空洞含有ポリエステル系フィルム。
2. ポリエステル系フィルム中の環状3量体オリゴマーの含有量が、0.60質量%以下である上記第1に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
3. ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の極限粘度が、0.60dl/g以上0.75dl/g以下である上記第1又は第2に記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
4. A層中のポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂であることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
5. B層中の無機粒子が、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカから選ばれる少なくとも1種以上である上記第1~第4のいずれかに記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
6. 光学濃度が0.55以上(厚み50μm換算)であり、かつ色調b値が4以下(厚み50μm換算)である上記第1~第5のいずれかに記載の空洞含有ポリエステル系フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、量産性を維持しながら、オリゴマーの析出を抑制でき、隠蔽性や白色度に優れ、ラベルやステッカー、反射板などに好適に使用できる空洞含有ポリエステル系フィルムを提供でき、これらは前記のような長期間の使用においても粘着性や輝度などの表面品質の変化が少ないものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムにおいて、A層およびB層の主成分となるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。このようなポリエステル系樹脂の代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられ、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0011】
また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましい。
【0012】
本発明のポリエステル系樹脂の製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法などが挙げられる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂ペレットの極限粘度としては、製膜性や再生利用性などの点から0.50~0.9dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.55~0.85dl/gの範囲である。
【0014】
本発明におけるポリエステル樹脂には、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル系樹脂が含まれていることが好ましい。ペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル成型性や外観を良好にするため、結晶性の制御が行われており、その結果、ポリエステル樹脂中の全エステル構成単位に対して0.5モル%以上10.0モル%以下のイソフタル酸成分とエチレングリコールやジエチレングリコールに代表される任意のジオール成分に由来するエステル構成単位を含有しているものが使用されることがある。また、液相重合の後、さらに固相重合を行い、極限粘度を上げたポリエステルが用いられている
ことがある。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂ペレットは、通常はペットボトルを洗浄、粉砕し、加熱溶融して再ペレット化したものであるが、さらに固相重合して極限粘度を高めたものを使用しても構わない。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の極限粘度は、0.60~0.75dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.60dl/g以上であると、得られたフィルムが破断し難くなり、フィルム製造を安定的に操業しやすく好ましい。一方、極限粘度が0.75dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。一般的にポリエチレンテレフタレート樹脂を固相重合すると樹脂中に含まれるオリゴマー量、中でも含有量が最も多いPET環状3量体は、液相重合したものに比べて少ないものになる。ペットボトルからなるリサイクルされたポリエステル樹脂に含まれる環状3量体オリゴマーの上限は好ましくは0.7質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは0.4質量%である。
【0015】
空洞含有ポリエステル系フィルムに対するペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは25質量%であり、より好ましくは30質量%であり、さらに好ましくは50質量%である。25質量%以上であると、空洞含有ポリエステル系フィルムに含まれるオリゴマーが少なくなり、オリゴマーの析出を抑制することができるので好ましい。さらにリサイクル樹脂の活用の面においては、含有率が多いことは、環境負荷低減への貢献の点で好ましい。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは90質量%であり、より好ましくは85質量%である。
【0016】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルム中に含まれるオリゴマー量、中でも含有量が最も多いエステル環状3量体の上限は好ましくは0.60質量%であり、より好ましくは0.55質量%であり、より好ましくは0.40質量%である。エステル環状3量体の含有量が0.60質量%以下であると、フィルムからのオリゴマー析出を抑制し易くなり好ましい。
【0017】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全エステル構成単位に占めるイソフタル酸成分に由来するエステル構成単位の含有量の下限は好ましくは0.2モル%であり、より好ましくは0.5モル%であり、さらに好ましくは0.9モル%である。フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全エステル構成単位に占めるイソフタル酸成分由来のエステル構成単位の含有量の上限は好ましくは2.0モル%であり、より好ましくは1.8モル%であり、さらに好ましくは1.5モル%である。2.0モル%以下であると、結晶性が低下しづらく、熱収縮率を低くすることができるので好ましい。なお、イソフタル酸成分に由来するエステル構成単位とは、ジカルボン酸成分としてのイソフタル酸成分と、エチレングリコールやジエチレングリコールなどに代表される任意のジオール成分からなるエステル構成単位を意味している。
【0018】
次に、本発明で使用されるポリエステル樹脂に非相溶性の熱可塑性樹脂について説明する。本発明で使用されるポリエステル樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂中に分散状態で均一に混入し延伸時にベース樹脂との界面で剥離を起こして空洞形成源となるものであればどの様な樹脂であっても構わないが、好ましいものを例示すると、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を複合して使用することもでき、あるいはこれらを共重合させることによってポリエステルとの間に適度な親和性を付与することも可能である。これらの中でもポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を好ましく用いくことができる。
【0019】
上記非相溶樹脂の好ましい配合量は、最終的に得られるフィルムに求められる空洞形成量や延伸条件などによっても変わってくるが、通常は樹脂組成物全量中に占める比率で3 質量%以上~40質量%未満、より好ましくは5~30質量%の範囲から選定される。3 質量%以上であれば、延伸工程で空洞が確実に形成でき、軽量性や柔軟性、描画性、筆記性等が得られ易くなるので好ましい。一方、40質量%未満であると、延伸性が良好に保たれる他、耐熱性、強度あるいは腰の強さが保持されて好ましい。
【0020】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、これらのポリエステル樹脂もしくは任意に使用されるポリプロピレン系樹脂中には、少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、艶消し剤、顔料、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤又はその他の添加剤などが含有されていてもよい。特に、ポリプロピレン系樹脂の酸化劣化を抑えるために、酸化防止剤もしくは熱安定剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤および熱安定剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダートフェノール系、リン系、ヒンダードアミン系などが挙げられ、これらは単体でも併用して使用してもよい。含有量としては、1~50000ppmの範囲が好ましい。
【0021】
本発明において、空洞含有ポリエステル系フィルムには、隠蔽性や白色度を向上させるため、ポリエステル系樹脂中または非相溶樹脂中に、無機粒子を必要に応じて含有することができる。前記無機粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫化亜鉛等が挙げられるが、隠蔽性や白色度の観点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカが好ましい。また、これらの無機粒子は、単体で用いても、もしくは二種類以上併用してもよい。これらの粒子は、予めポリエステル樹脂中もしくは非相溶樹脂中に添加することにより、フィルム内に含有させることができる。
【0022】
本発明において、ポリエステル系樹脂または非相溶樹脂に、無機粒子を混合する方法としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル系樹脂と非相溶樹脂をドライブレンド後、そのまま製膜機に投入する方法、ポリエステル系樹脂と非相溶樹脂をドライブレンド後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練しマスターバッチ化する方法などが挙げられる。
【0023】
次に、本発明における空洞含有ポリエステル系フィルムの製膜方法について説明するが、特にこれらに限定されるものではない。例えば、前述の組成物からなる混合物を通常の方法で乾燥後、T字の口金からシート状に溶融押出し、静電印加法などにより、キャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸フィルムが得られる。次いで、該未延伸フィルムを延伸・配向処理するが、以下では、最も一般的に用いられる逐次二軸延伸方法、特に未延伸フィルムを長手方向に縦延伸し、次いで幅方向に横延伸する方法を例に説明する。まず、長手方向への縦延伸工程では、フィルムを加熱し、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で2.5~5.0倍に延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱媒体を用いる方法でもよく、それらを併用してもよいが、フィルムの温度を(Tg-10℃)~(Tg+50℃)の範囲とすることが好ましい。次いで1軸延伸フィルムをテンターに導入し、幅方向に(Tg-10℃)~Tm-10℃以下の温度で2.5~5倍に延伸することで2軸延伸フィルムが得られる。但し、Tgはポリエステル系樹脂のガラス転移温度、Tmはポリエステルの融点である。また上記より得られるフィルムに対し、必要に応じて熱処理を施すことが好ましく、処理温度としては(Tm-60℃)~Tmの範囲で行うのが好ましい。
【0024】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムは、層構成として、ポリエステル系樹脂と非相溶を含有する組成物からなり、内部に空洞を含有する層(A層)の両面に無機粒子を含有するポリエステル系樹脂からなる層(B層)が積層された積層構造を形成する必要がある。非相溶樹脂を含むA層が表層に露出した場合、一部の露出した非相溶樹脂分散粒子が、ロール汚れなどの工程汚染を発生させてしまうので好ましくない。
【0025】
A層の両面に積層されたB層の厚みの和の割合としては、空洞発現性や非相溶樹脂の露出抑制の観点から、フィルム全体の厚みに対して、1~40%の範囲が好ましく、5~30%であることがより好ましい。B層の厚みの和が1%以上であると、A層における非相溶樹脂のフィルム表面への露出を抑制できて好ましい。一方、B層の厚みの和が40%以下であると、十分な軽量性やクッション性を得るためのA層における空洞を形成させることが容易となり好ましい。
【0026】
本発明において、B層に含有する無機粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫化亜鉛等が挙げられるが、隠蔽性や白色度の観点から、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。また、これらの無機粒子は、単体で用いても、もしくは二種類以上併用してもよい。これらの粒子は、予めポリエステル系樹脂中に添加することにより、フィルム内に含有させることができる。
【0027】
B層中に含有する無機粒子の平均粒子径の上限値は、後加工で印刷層などを設ける際の印刷品位の点から、5.0μmであることが好ましく、より好ましくは3.0μm、特に好ましくは2.5μmである。また、無機粒子の平均粒子径の下限値は、フィルム製造工程及び後加工工程での滑り性や隠蔽性の点から、0.1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.2μmである。なお、無機粒子の平均粒子径の測定方法は、フィルムの断面の無機粒子を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察を行い、凝集していない無機粒子20個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行うことができる。本発明の目的を満たすものであれば、無機粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない無機粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された無機粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0028】
B層中の無機粒子の含有量は5~40質量%が好ましく、より好ましくは7~30質量%の範囲である。含有量が5質量%以上であると、隠蔽性や白色度を向上させることができて好ましい。一方、含有量40質量%以下であると、製膜性が良好に保たれる他、フィルムの機械的強度が保持されて好ましい。B層中の無機粒子のフィルム全体に対する含有率は1~30質量%が好ましく、より好ましくは2~20質量%の範囲である。含有量が1質量%異常であると、隠蔽性や白色度を向上させることが容易であり好ましい。一方、含有量30質量%以下であると、製膜性製膜性が良好に保たれる他、フィルムの機械的強度が保持されて好ましい。
【0029】
また、本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムには、印刷用インキやコーティング剤などの塗れ性や接着性を改良するために、その少なくとも片面に塗布層を設けても構わない。該塗布層を構成する化合物としては、ポリエステル樹脂が好ましいが、この他にも、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂などの通常のポリエステル系フィルムの接着性を向上させる手段として開示させている化合物が適用可能である。またこれら易接着層の密着耐久性を向上させるために架橋構造を形成させてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0030】
塗布層には、表面に滑り性やマット性、インキ吸収性などを付与するために、滑剤粒子を含むこともできる。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0031】
塗布層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレーコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる。塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗布する方法、延伸処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能である。
【0032】
このようにして得られた空洞含有ポリエステル系フィルムは、製膜工程で発生した耳部や破断トラブルなどで生じた屑フィルムからなる自己再生原料をA層に使用することが可能である。自己再生原料の含有量としては、原料コスト低減、白色度および製膜性の観点から、A層中の各組成合計量に対して、5~60質量%が好ましい。また、B層中に自己再生原料を含有してもかまわないが、白色度の悪化および自己再生原料中の非相溶樹脂の露出の観点から、含有しないことが好ましい。
【0033】
本発明における空洞含有ポリエステル系フィルムは、見かけ密度が0.8~1.3g/cm3であることが好ましく、0.90~1.2g/cm3がより好ましい。見かけ密度が0.8g/cm3以上であると、空洞が多過ぎず、印刷加工などの後加工時や使用時において、取り扱い性が良好であり好ましい。1.3g/cm3以下であると、十分な軽量性やクッション性が得られて好ましい。尚、見かけ密度は、後述の評価方法にて記載した測定法より得られる値である。
【0034】
本発明における空洞含有ポリエステル系フィルムは、光学濃度(OD値)が0.55以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましい。OD値が0.55以上であると、十分な隠蔽性が得られ、ラベルなどに用いた場合、印刷時の画像の鮮明性が得られて好ましい。OD値の上限は1.5であることが好ましい。1.5以下であると、白色度とコスト面の関係において好ましい。尚、OD値は、後述の評価方法にて記載した測定方法より得られる厚み50μm換算での値である。
【0035】
本発明における空洞含有ポリエステル系フィルムは、色調b値が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは3.0以下である。b値が4.0以下であると、白色度が満足できるレベルとなり、ラベルなどにした場合、印刷時の鮮明性が得られて好ましい。色調b値の下限は-5.0であることが好ましい。b値が-5.0以上であると、フィルムの青味が強くなり過ぎず、印刷基材として用いた際に解像性をバランスよく満たすことができて好ましい。
【0036】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムの厚みは任意であるが、20~300μmであることが好ましい。
【0037】
このようにして得られた空洞含有ポリエステルフィルムは、量産性に優れ、オリゴマー含有量が少なくオリゴマー析出の抑制ができ、かつ軽量性やクッション性に優れ、隠蔽性や白色度も良好であり、ラベル、カード、包装材料、反射材などの基材として好適に用いられる。
【実施例
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各評価項目は次の方法で測定した。
【0039】
(1)極限粘度[η]
フェノール/ テトラクロロエタン= 60 /40(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0040】
(2)イソフタル酸量
原料ポリエステル及びフィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸に由来するエステル構成単位の含有率は、以下の方法で算出した。サンプルを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比1/1)0.1mlに溶解後、0.5mlのトリクロロエチレンを加え、135℃で溶解させて試料溶液を調整し、NMR(「GEMINI-200」;Varian社製)を用いてプロトンのNMRを測定した。所定のプロトンのピーク強度を算出して、エステル構成単位100モル%中のテレフタル酸由来のエステル構成単位およびイソフタル酸由来のエステル構成単位の含有率(モル%)を算出した。
【0041】
(3)ポリエステルフィルム中の環状三量体の含有量
ポリエステルフィルム中の環状三量体の含有量は以下の方法で測定した。細砕したフィルム試料100mgを精秤し、ヘキサフルオロイソプロパノ-ル/クロロホルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロホルム20mlを加えて希釈した。これにメタノ-ル10mlを加えてポリマ-を沈殿させた後、濾過した。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とした。次いで下記の高速液体クロマトグラフ法で環状三量体を定量した。
【0042】
(測定条件)
装置:L-7000(日立製作所製)カラム:μ-Bondasphere C18 5μ 100オングストローム 3.9mm×15cm(Waters製)
溶媒:溶離液A:2%酢酸/水(v/v)
溶離液B:アセトニトリル
グラジエントB%:10→100%(0→55分)
流速:0.8ml/分
温度:30℃
検出器:UV-258nm
【0043】
(4)見かけ密度
フィルムを5.0cm四方の正方形に4枚切り出し、4枚を重ね合わせマイクロメーターを用いて有効数字4桁で、総厚みの場所を変えて10点測定し、4枚重ね合わせた厚みの平均値を求めた。この平均値を4で除して有効数字3桁に丸め、一枚あたりの平均厚み(t:μm)とした。同試料4枚の質量(w:g)を有効数字4 桁で自動上皿天秤を用いて測定し、次式より見かけ密度を求めた。なお、見かけ密度は有効数字3桁に丸めた。
見かけ密度(g/cm3)=w/(5.0×5.0×t×10-4×4)
【0044】
(5)光学濃度(OD値)
伊原電子工業株式会社製透過濃度計「Ihac-T5型」を用いて測定し、フィルム厚み50μmに換算した。尚、光学濃度の値が高いほど隠蔽性が大きいことを示す。
【0045】
(6)色調b値
色調b値は、日本電色社製色差計(ZE6000)を用いて、JIS-8722により測定し、フィルム厚み50μmに換算した。このb値が小さい程、白色度が高く、黄色味が弱いと判断した。
【0046】
(7)オリゴマー付着評価
フィルムを160℃のステンレス板で熱プレスし、プレス前後でのステンレス板の汚れ程度を目視にて判定した。プレス圧は4.9×106N/m2(5kgf/cm2)とし、一回30秒で30回実施し、評価の判定は以下のとおりとした。フィルムに易接着樹脂を塗布したフィルムは塗布層面の汚れを評価した。
◎:ステンレス板に汚れは見えなかった。
○:ステンレス板に少し汚れは見えたが、実用的には問題ないレベルだった。
×:ステンレス板に白い汚れがはっきり見えた。
【0047】
[ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)の調製]
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらにトリポリ燐酸ナトリウム水溶液をシリカ粒子に対しナトリウム原子として0.1質量%含有させ、遠心分離処理により粗粒部を35%カットし、且つ目開き5μmの金属フィルターで濾過処理を行った平均粒子径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量として0.2質量部添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.62dl/gであり、PET環状3量体オリゴマー含有量は0.69質量%であった。(以後、PET樹脂(I)と略す。)
【0048】
[ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の調製]
上記、極限粘度0.62dl/gのPET樹脂(I)の製造において、シリカ粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(II)を得た。(以後、PET樹脂(II)と略す。)PET環状3量体オリゴマー含有量は0.69質量%であった。
【0049】
[酸化チタン含有マスターペレット(M1)の調製]
上記、極限粘度0.62dl/gのPET樹脂(II)50質量%に、平均粒径0.3μm(電顕法)のアナターゼ型二酸化チタンを50質量%混合したものをベント式2軸押出機に供給し、混練りして酸化チタン含有マスターペレット(M1)を得た。PET環状3量体オリゴマー含有量は0.70質量%であった。
【0050】
[空洞形成剤の調製]
ポリエステル系樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂である、溶融粘度1,300ポイズのポリメチルペンテン(PMP)樹脂60質量%、溶融粘度2,000ポイズのポリプロピレン(PP)樹脂20質量%、及び溶融粘度3,900ポイズのポリスチレン(PS)樹脂20質量%をペレット混合して、285℃に温調したベント式二軸押出機に供給、混練して空洞形成剤を得た。
【0051】
[ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂(III)の調整]
飲料用ペットボトルから残りの飲料やラベルなどの異物を除去した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルターを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルターで濾別し、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットしてポリエステル樹脂(III)を得た。得られたポリエステル樹脂(III)のエステル構成単位の割合は、テレフタル酸由来のエステル構成単位/イソフタル酸由来のエステル構成単位=98.6/1.4(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.65dl/gであり、PET環状3量体オリゴマー含有量は0.38質量%であった。
【0052】
[共重合ポリエステル樹脂水分散液(a)の調製]
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10~0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500、軟化点60℃の共重合ポリエステル系樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル系樹脂300質量部とブチルセロソルブ140質量部とを160℃で3時間撹拌して粘稠な溶融液を得、この溶融液に水560質量部を徐々に添加し、1時間後に均一な淡白色の固形分濃度30%の共重合ポリエステル樹脂水分散液(a)を得た。
【0053】
[ポリウレタン系樹脂水溶液(b)の調製]
アジピン酸、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(モル比:4/2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80~90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40~50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%の重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(b)を得た。
【0054】
[易接着樹脂層形成用塗布液(c)の調製]
共重合ポリエステル系樹脂の30質量%水分散液(a)を5.3質量部、自己架橋型ポリウレタン系樹脂水溶液(b)を14.6質量部、水を42.6質量部、およびイソプロピルアルコールを32.5質量部混合した。さらに、フッ素系界面活性剤(ポリオキシエチレン-2-パーフルオロヘキシルエチルエーテル)の10質量%水溶液(0.35質量部)、イソステアリルアミドメチルアンモニウム・エトサルフェート塩をエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解した17.5質量%溶液を1.6質量部添加した。次いで5質量%の重曹水溶液で上記混合物のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで上記混合物を精密濾過し、塗布液(c)を調製した。
【0055】
(実施例1)
[未延伸フィルムの製造]
前記PET樹脂(II)47質量%、およびポリエステル樹脂(III)40質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%を混合して真空乾燥を施し、空洞含有ポリエステルA層の原料とした。一方、前記PET樹脂(I)70質量%と酸化チタン含有マスターペレット(M1)30質量%とをペレット混合して真空乾燥を施し、無機粒子含有ポリエステルB層の原料とした。これらの原料を別々の押出機に供給し、285℃で溶融し、空洞含有ポリエステルA層と無機粒子含有ポリエステルB層とがB/A/Bの順になるよう積層し、厚み比率が10/80/10となるようにフィードブロックで接合し、Tダイから30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、2種3層構成の未延伸フィルムを製造した。
【0056】
[空洞含有ポリエステル系フィルム作製]
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール間で3.4倍に縦延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格20W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)、加熱した。このようにして得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。見かけ密度、OD値、色調b値の結果を表1に示した。
【0057】
(実施例2)
空洞含有ポリエステルA層の原料を、PET樹脂(II)27質量%、ポリエステル樹脂(III)60質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%に変更した以外は実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0058】
(実施例3]
空洞含有ポリエステルA層の原料を、ポリエステル樹脂(III)87質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%とした以外は実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0059】
(実施例4)
空洞含有ポリエステルA層の原料を、ポリエステル樹脂(III)87質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%とし、空洞含有ポリエステルB層の原料をPET樹脂(I)15質量%、ポリエステル樹脂(III)55質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)30質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0060】
(実施例5)
実施例3において、3.4倍に縦延伸した1軸延伸フィルムのキャスティングドラム接触面側に上記易接着樹脂層形成用塗布液(c)をリバースキスコート法により、乾燥後の樹脂固形分の厚みが0.3μmになるように塗布した。塗布層を有する一軸延伸フィルを乾燥しつつテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0061】
(実施例6)
実施例4において、3.4倍に縦延伸した1軸延伸フィルムのキャスティングドラム接触面側に上記易接着樹脂層形成用塗布液(c)をリバースキスコート法により、乾燥後の樹脂固形分の厚みが0.3μmになるように塗布した。塗布層を有する一軸延伸フィルを乾燥しつつテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0062】
(比較例1)
空洞含有ポリエステルA層の原料を、PET樹脂(II)87質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%に変更した以外は実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0063】
(比較例2)
空洞含有ポリエステルA層の原料を、PET樹脂(II)77質量%、ポリエステル樹脂(III)10質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、空洞形成剤8質量%に変更した以外は実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0064】
(比較例3)
比較例1において、3.4倍に縦延伸した1軸延伸フィルムのキャスティングドラム接触面側に上記易接着樹脂層形成用塗布液(c)をリバースキスコート法により、乾燥後の樹脂固形分の厚みが0.3μmになるように塗布した。塗布層を有する一軸延伸フィルを乾燥しつつテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。
【0065】
(比較例4)
空洞含有ポリエステルA層の原料を、PET樹脂(II)84質量%、酸化チタン含有マスターペレット(M1)5質量%、溶融粘度2,000ポイズのポリプロピレン(PP)樹脂10質量%、分散剤としてPEG(分子量4000)を1質量%添加した以に変更した以外は実施例1と同様の方法で空洞含有ポリエステル系フィルムを得た。結果を表1に示した。比較例4では分散剤を添加したため、ポリプロピレン系樹脂の分散粒子径が小さくなり、見かけ密度が大きく、隠蔽性が低下し、色調b値が増加した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリエステルフィルムによれば、量産性に優れ、オリゴマー含有量が少なくオリゴマー析出の抑制ができ、かつ隠蔽性や白色度に優れ、ラベルやステッカー、反射板などが提供でき、これらは長期間の使用においても粘着性や輝度などの表面品質の変化が少ない空洞含有ポリエステル系フィルムを提供することができる。