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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 61/00 20060101AFI20231129BHJP
   A01D 57/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A01D61/00 301L
A01D57/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022153899
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】谷上 智洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 光瑠
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】西崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】西山 洋平
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-29136(JP,A)
【文献】特開2016-140279(JP,A)
【文献】実開昭56-104324(JP,U)
【文献】実開昭58-7528(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 61/00
A01D 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(2)の下部側に走行装置(4)を設け、車台(2)の前部側に穀稈を圃場から刈り取り機体後方の脱穀装置(6)に搬送する刈取装置(15)を備えた収穫機において、刈取装置(15)に刈り取る穀稈の株径を検出する株径検出体(33L,33R)を設け、該株径検出体(33L,33R)が予め設定された株径以上であることを検出すると、穀稈の株元が刈られずに引き抜かれて搬送されていると判定し、搬送中の穀稈の株元を除去する株元除去装置(30L,30R)を作動させることを特徴とする収穫機。
【請求項2】
刈り取った各条の穀稈を挟持搬送する複数の左右株元搬送装置(29L,29R)に搬送される穀稈を合流させる部位の株元搬送装置(29)下部側に株元除去装置(30L,30R)を回転可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
株径検出体(33L,33R)の近くに粉塵濃度を検出する粉塵センサ(35L,35R)を設けると共に、株径検出体(33L,33R)に付着した夾雑物を除去する夾雑物除去装置(36L,36R)を設け、粉塵センサ(35L,35R)が設定値以上の粉塵量を検出すると夾雑物除去装置(36L,36R)を所定時間作動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の収穫機。
【請求項4】
走行装置(4)や刈取装置(15)等に駆動力を伝動する無段変速装置を設け、刈取装置(15)及び脱穀装置(6)への駆動を入り切りする刈脱クラッチを設け、刈取装置(15)に設けた搬送中の穀稈が詰まって移動できなくなったことを検出する詰まり検出装置が検出状態になると無段変速装置を中立にして機体を停止させると共に、刈脱クラッチを切状態に切り替えて刈取装置(15)及び脱穀装置(6)を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の収穫機。
【請求項5】
刈取装置(15)の刈高さ位置を検出する刈高さセンサ(40)を設け、該刈高さセンサ(40)の基準値を変更して刈高さを所望の高さに設定する刈高さ設定装置を設け、該刈高さ設定装置にて刈高さセンサ(40)の基準値を変更して刈高さを高くするほど、無段変速装置の出力上限を下方修正して、車速の最高速度を遅くすることを特徴とする請求項4に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数条の穀稈を同時に刈り取り、機体後方の脱穀装置に向けて合流させながら搬送する刈取装置を有し、穀稈の搬送量が多くなった際に、一対のスターホイルの噛合部の後方に穀稈の詰まりを解消する逃げ凹部を形成し、搬送中の穀稈が詰まりにくい構成としたコンバインがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-319026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、穀稈の丈や圃場の状態によっては穀稈を刈り取ることなく圃場から引き抜き、搬送経路に移動させてしまうことがある。圃場から引き抜かれた穀稈の根部付近には土塊が付着していることも多く、そのまま脱穀装置に向かわせると搬送経路上で詰まり、収穫作業が中断されるような事態になる恐れがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、穀稈の搬送経路上での詰まりを防止した収穫機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、車台2の下部側に走行装置4を設け、車台2の前部側に穀稈を圃場から刈り取り機体後方の脱穀装置6に搬送する刈取装置15を備えた収穫機において、刈取装置15に刈り取る穀稈の株径を検出する株径検出体33L,33Rを設け、該株径検出体33L,33Rが予め設定された株径以上であることを検出すると、穀稈の株元が刈られずに引き抜かれて搬送されていると判定し、搬送中の穀稈の株元を除去する株元除去装置30L,30Rを作動させる収穫機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、複数条の穀稈を刈らずに引き抜くと、穀稈同士が搬送経路で合流する際に挟持幅よりも大径になり、詰まりの原因となるので、株元除去装置30L,30Rで株元を切除することにより、穀稈の詰まりによる作業の中断を防止することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、刈り取った各条の穀稈を挟持搬送する複数の左右株元搬送装置29L,29Rに搬送される穀稈を合流させる部位の株元搬送装置29下部側に株元除去装置30L,30Rを回転可能に設けた請求項1に記載の収穫機である。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、刈り取った各条の穀稈を挟持搬送する複数の左右株元搬送装置29L,29Rに搬送される穀稈を合流させることにより、脱穀装置6の入口に穀稈が滞留することを防止できるので、刈取から脱穀までの作業を能率よく行える。
【0010】
穀稈を合流させる部位の株元搬送装置29下部側に株元除去装置30L,30Rを配置することにより、圃場から穀稈が引き抜かれていても、脱穀装置6に送り込む前に株元を切除して株径を小さくすることができるので、搬送詰まりを防止でき、作業能率の低下を防止することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、株径検出体33L,33Rの近くに粉塵濃度を検出する粉塵センサ35L,35Rを設けると共に、株径検出体33L,33Rに付着した夾雑物を除去する夾雑物除去装置36L,36Rを設け、粉塵センサ35L,35Rが設定値以上の粉塵量を検出すると夾雑物除去装置36L,36Rを所定時間作動させる請求項1または請求項2に記載の収穫機である。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、穀稈の刈取りにより生じる切屑や砂塵等の粉塵が株径検出体33L,33Rの周囲に溜まってくると、自動的に夾雑物除去装置36L,36Rが作動することにより、株径検出体33L,33Rの検出精度が低下することが防止され、地面から引き抜かれた穀稈の株元を確実に除去することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、走行装置4や刈取装置15等に駆動力を伝動する無段変速装置を設け、刈取装置15及び脱穀装置6への駆動を入り切りする刈脱クラッチを設け、刈取装置15に設けた搬送中の穀稈が詰まって移動できなくなったことを検出する詰まり検出装置が検出状態になると無段変速装置を中立にして機体を停止させると共に、刈脱クラッチを切状態に切り替えて刈取装置15及び脱穀装置6を停止する請求項1または請求項2に記載の収穫機である。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、株元除去装置30L,30Rにて株元を切断できない、または切断しても穀稈が搬送経路上に詰まってしまったときは、無段変速装置を中立にして機体を停止させることにより、無理に搬送しようとして無段変速装置に負荷がかかることを防止できる。
【0015】
また、刈脱クラッチが自動的に切状態になることにより、刈取装置15及び脱穀装置6に負荷がかかることを防止できるので、機体の耐久性が向上する。
【0016】
請求項5記載の発明は、刈取装置15の刈高さ位置を検出する刈高さセンサ40を設け、該刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを所望の高さに設定する刈高さ設定装置を設け、該刈高さ設定装置にて刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを高くするほど、無段変速装置の出力上限を下方修正して、車速の最高速度を遅くする請求項4に記載の収穫機である。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、刈高さ設定装置にて刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを高くするほど、無段変速装置の出力上限を下方修正して、車速の最高速度を遅くすることにより、高刈りにより圃場に残る刈り株を踏み越える際も、走行軌跡が乱れにくいので、刈取作業精度が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの側面図である。
図2】同上コンバインの刈取装置の要部の正面図である。
図3】同上コンバインの刈取装置の要部の側面図である。
図4】同上コンバインの刈取装置の要部の背面図である。
図5】同上コンバインの刈取装置の要部の拡大正面図である。
図6】同上コンバインの静油圧式無段変速装置の制御フロー図である。
図7】同上コンバインの静油圧式無段変速装置及び刈脱クラッチの制御フロー図である。
図8】同上コンバインの静油圧式無段変速装置の制御フロー図である。
図9】同上コンバインの左右限界センサと真後ろセンサの配置を示す要部の平面図である。
図10】同上コンバインの排穀オーガ旋回の制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である収穫機としてのコンバイン1について添付図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、操縦者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0020】
<全体構成>
図1に示すように、コンバイン1は、車台2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3を張設した走行装置4を配設すると共に、該車台2上の左右に、フィードチェンに挟持して搬送供給される穀稈を脱穀選別処理する脱穀装置6と、その穀粒を一時貯留するグレンタンク7と、このグレンタンク7に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ8を載置配設し、この脱穀装置6の後端部に排藁処理装置9を装架する。排穀オーガ8は、穀粒の排出時にオーガ昇降シリンダ10を作動して起伏する。
【0021】
脱穀装置6の前方に、前端側から未刈穀稈を分草する分草体11と、分草した穀稈を引き起こす引起部12と、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部13と、刈り取った穀稈を掻き込むと共に搬送途中において扱深さを調節して前記フィードチェンへ引き継ぎを行う供給搬送部14等を有する刈取装置15を、刈取昇降シリンダにより土壌面に対して昇降自在なるよう車台2の前端部へ懸架配設して構成する。
【0022】
前記刈取装置15の後側上部にコンバイン1の各部の操作を行う操作部20と、操縦者が座る操作席21を設け、この操作席21の下方側にエンジン22を搭載し、後方側に前記グレンタンク7を配置している。
【0023】
操作席21に着座したオペレータによる前後操作により左右走行クローラ3へエンジン22からの駆動力を変速して伝達する無段変速装置の一例である静油圧式無段変速装置(HST)を中立及び前後進変速するHST切替モータを操作する主変速レバー24と、左右側への傾倒操作により直進時の左右操向作用及び各種旋回モードによる旋回作用を行わせるパワステレバー25と、刈取装置15及び脱穀装置6への駆動を入り切りする刈脱クラッチを操作する刈脱クラッチレバー26と、排穀オーガ8の駆動を入り切り操作するオーガ排出レバー27と、排穀オーガ8の旋回操作を行うロータリスイッチ28を操作部20に配設する。
【0024】
<刈取装置15>
刈取装置15は、未刈穀稈を分草する分草体11と、分草した穀稈を引き起こす引起部12と、引き起こした穀稈を刈り取る刈刃部13と、刈取後の穀稈の株元部を挟持して揚上搬送する株元搬送装置としての株元搬送チエン29及び穀稈の穂先側を係止保持して揚上搬送する穂先搬送チエンとからなる供給搬送部14等から構成される。
【0025】
図2図5に示しように、株元搬送装置としての株元搬送チエン29は、刈取装置15の左側で刈り取った穀稈を搬送する左株元搬送装置としての左株元搬送チエン29Lと刈取装置15の右側で刈り取った穀稈を搬送する右株元搬送装置としての右株元搬送チエン29Rと左株元搬送チエン29L及び右株元搬送チエン29Rを合流させて脱穀装置6フィードチェン始端部に引き継ぎように搬送する合流株元搬送装置としての合流株元搬送チエン29Mから構成される。
【0026】
左株元搬送チエン29L及び右株元搬送チエン29Rの合流部(合流株元搬送チエン29Mの始端部)には、左株元搬送チエン29L及び右株元搬送チエン29Rの下側に搬送部を挟んで搬送中の株元を除去する株元除去装置としての左右株元切断刃30L,30Rが設けられている。
【0027】
そして、該左右株元切断刃30L,30Rは、互いに先端部がラップして配置され各々左右電動モータ31L,31Rにて互いに逆方向に駆動回転して株元を切断する。
【0028】
なお、左右電動モータ31L,31Rは、株元搬送チエン29のチェーンガイドの開閉プレート39に取付けている。
【0029】
また、刈刃部13の刈刃ギアケース32には、刈り取られる穀稈の株元の株径(太さ)を検出する左右株径検出体としての左右カメラ33L,33Rが設けられ、刈り取られる穀稈の株元を撮影し、操作部20下方位置のケース内に設けた制御装置34が画像解析により株径を算出する。
【0030】
そして、制御装置34は、左右カメラ33L,33Rが検出した株径が所定株径よりも大きい場合、穀稈が刈刃部13にて切断されずに引き抜かれて搬送されていると判断して、左右電動モータ31L,31Rを作動させて左右株元切断刃30L,30Rを駆動回転して搬送中の株元を切断して土が付いている根部を除去し、株元搬送チエン29が詰まって作業が中断するのを防止することができる。
【0031】
なお、左右電動モータ31L,31Rが作動していない時は、左右株元切断刃30L,30Rは遊転状態で株元搬送チエン29の穀稈搬送の支障とはならない。
【0032】
また、左右カメラ33L,33Rの近くには、LED等で空間内の粉塵を照らして粉塵の密度を測定する左右粉塵センサ35L,35Rと左右カメラ33L,33Rに付着した夾雑物を除去する左右夾雑物除去装置としての左右エアノズル36L,36Rを設けている。
【0033】
そして、制御装置34は、左右粉塵センサ35L,35Rが設定値以上の粉塵量を検出すると、左右エアノズル36L,36Rを左右カメラ33L,33Rに向けて一定時間作動させる。
【0034】
従って、穀稈の刈取収穫により生じる切屑や砂塵等の粉塵が左右カメラ33L,33Rの周囲に溜まってくると、自動的に左右エアノズル36L,36Rが作動することにより、左右カメラ33L,33Rの検出精度が低下することが防止され、地面から引き抜かれた穀稈の株元を確実に除去することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、左右株径検出体として左右カメラ33L,33Rを示したが、左株元搬送チエン29L及び右株元搬送チエン29Rの合流部(合流株元搬送チエン29Mの始端部)の搬送方向手前の搬送路に株径検出体として挟持圧検出センサを設けても良い。
【0036】
挟持圧検出センサは、株径が大きくなって挟持圧が所定値よりも大きくなったことを検出して、制御装置34は、該検出により穀稈が刈刃部13にて切断されずに引き抜かれて搬送されていると判断して、左右電動モータ31L,31Rを作動させて左右株元切断刃30L,30Rを駆動回転して搬送中の株元を切断して土が付いている根部を除去し、株元搬送チエン29が詰まって作業が中断するのを防止する。
【0037】
即ち、左右株径検出体は、株径が検出できれば如何なるセンサでも良い。
【0038】
また、刈取装置15先端部の底面には、圃場に設置して刈取装置15の刈高さ位置を検出する刈高さセンサ40を設けている。
【0039】
そして、制御装置34は、該刈高さセンサ40による圃場からの刈取装置15の高さ位置を検出して、刈取昇降シリンダを作動させて刈高さが所定値になるように刈取装置15を昇降制御する。
【0040】
そして、操作部20に設けた刈高さ設定装置にて、刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを所望の高さに設定できる。
【0041】
そして、図6の制御フロー図に示すように、制御装置34は、刈高さ設定装置にて刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを高くするほど、静油圧式無段変速装置の出力上限を下方修正して、車速の最高速度を遅くする。
【0042】
また、制御装置34は、刈高さ設定装置にて刈高さセンサ40の基準値を変更して刈高さを低くするほど、静油圧式無段変速装置の出力上限を上方修正して、車速の最高速度を速くする。
【0043】
従って、刈高さが地表から高くなるほど無段変速装置の出力上限を低位で規制することにより、高刈りにより圃場に残る刈り株を踏み越える際も、走行軌跡が乱れにくいので、刈取作業精度が維持される。
【0044】
また、刈取装置15の株元搬送チエン29に搬送中の穀稈が詰まって移動できなくなったことを検出する詰まり検出装置を設けている。
【0045】
そして、図7の制御フロー図に示すように、制御装置34は、詰まり検出装置が搬送中の穀稈が詰まって移動できなくなったことを検出し、詰まり検出後の所定時間内に移送が再開されなければ、HST切替モータを作動させて中立とし、静油圧式無段変速装置の出力を停止して機体を停止させる。
【0046】
同時に、刈脱クラッチを切状態に切り替えて、刈取装置15及び脱穀装置6を停止する。
【0047】
そして、静油圧式無段変速装置の出力を停止して所定時間後に、エンジン22を停止する。
【0048】
従って、左右株元切断刃30L,30Rにて株元を切断できない、または切断しても穀稈が搬送経路上に詰まってしまったときは、静油圧式無段変速装置を中立にして機体を停止させることにより、無理に搬送しようとして静油圧式無段変速装置に負荷がかかることを防止できる。
【0049】
また、刈脱クラッチが自動的に切状態になることにより、刈取装置15及び脱穀装置6に負荷がかかることを防止できるので、機体の耐久性が向上する。
【0050】
図8は、田植作業が疎植の場合と通常の場合で車速の上限を変更する制御フロー図である。
【0051】
田植作業が疎植で苗植付けを行った圃場では、1株の株径(太さ)が通常で苗植付けを行った圃場と比較して大きく、分けつ数も多いので、通常速度で刈取り作業を行うと脱穀装置6に過負荷がかかり適切な収穫作業が行えないような事態が発生する。
【0052】
そこで、操作部20に疎植モードと通常モードに切り替えるモード切替スイッチを設け、該モード切替スイッチが通常モードであれば静油圧式無段変速装置を通常の最高走行速度とし、モード切替スイッチが疎植モードであれば静油圧式無段変速装置を規制して最高走行速度を下方修正する。
【0053】
従って、田植作業が疎植で苗植付けを行った圃場では、モード切替スイッチを疎植モードにして静油圧式無段変速装置を規制して最高走行速度を下方修正し、脱穀装置6に十分なトルクが確保できるようにして脱穀精度を確保して適切な収穫作業が行える。
【0054】
<排穀オーガ8>
グレンタンク7は、車台2後部の右側に配置され、後部側に回動支点を設けて前部側が機体外方に向けて回動して、メンテナンスが行える一般的な構成である。
【0055】
グレンタンク7内部の下部には横排出螺旋50が設けられておりグレンタンク7内の穀粒を縦排出筒51下部まで送り、縦排出筒51内には縦排出螺旋52が設けられており排穀オーガ8基部まで送り、排穀オーガ8内にはオーガ排出螺旋53が設けられており排穀オーガ8先端部の排出口8aから機外に穀粒を排出する。なお、オーガ排出レバー27の操作にて、横排出螺旋50、縦排出螺旋52及びオーガ排出螺旋53が駆動回転してグレンタンク7内の穀粒が排穀オーガ8先端部の排出口8aから排出される。
【0056】
縦排出筒51は、機体に固定の下部縦排出筒51aの上端部に上部縦排出筒51bの下端部が回転自在に嵌合され、ロータリスイッチ28の操作にてオーガ回動モータ54が作動して上部縦排出筒51b下端部に固定した従動ギア55を回転させて上部縦排出筒51bが回転し、上部縦排出筒51bの上端部に基部が設けられた排穀オーガ8が収納位置から左右旋回する。
【0057】
オーガ昇降シリンダ10は、操作部20に設けたオーガ昇降スイッチの操作にて伸縮作動して、排穀オーガ8を昇降させる。
【0058】
ここで、図9及び図10に基づいて、排穀オーガ8を収納位置から左右旋回させる構成及び作用について説明する。
【0059】
図9に示すように、下部縦排出筒51aの上端部に排穀オーガ8の旋回限界位置を検出する右限界センサ56R及び左限界センサ56Lと排穀オーガ8が機体真後ろに旋回した位置を検出する真後ろセンサ56Bを設け、排穀オーガ8と共に回転する上部縦排出筒51b下端部に各センサ56R,56L,56Bを作動させるセンサ接触体57を設ける。
【0060】
ロータリスイッチ28を停止位置から右旋回位置すると、オーガ回動モータ54が作動して排穀オーガ8が右旋回し、所望の位置でロータリスイッチ28を停止位置にすると、オーガ回動モータ54が停止して排穀オーガ8は所望の位置で旋回を停止する。
【0061】
また、ロータリスイッチ28を停止位置から左旋回位置すると、オーガ回動モータ54が作動して排穀オーガ8が左旋回し、所望の位置でロータリスイッチ28を停止位置にすると、オーガ回動モータ54が停止して排穀オーガ8は所望の位置で旋回を停止する。
【0062】
上記のロータリスイッチ28を停止位置から右旋回位置または左旋回位置にして排穀オーガ8が右旋回または左旋回している際に、センサ接触体57が右限界センサ56Rまたは左限界センサ56Lに接当すると、右旋回限界または左旋回限界であるので、オーガ回動モータ54が停止して排穀オーガ8は旋回を停止する。
【0063】
図10に示すように、ロータリスイッチ28を停止位置から真後ろ位置すると、図9の矢印で示すようにオーガ回動モータ54が作動して排穀オーガ8が左旋回すると同時にタイマーが作動する。
【0064】
タイマーは、排穀オーガ8が収納位置から左旋回して真後ろ位置に到達する時間を設定しており、タイマーの設定時間が経過するとオーガ回動モータ54を停止させて排穀オーガ8が真後ろ位置で停止する。
【0065】
そして、タイマーの設定時間が経過していなくても真後ろセンサ56Bが検出状態になると、オーガ回動モータ54を停止させて排穀オーガ8が真後ろ位置で停止する。
【0066】
これは、排穀オーガ8が収納位置から左旋回した位置で停止していた状態で、ロータリスイッチ28を停止位置から真後ろ位置すると、タイマーの設定時間だけ左旋回させると真後ろ位置を通過してしまうので、真後ろセンサ56Bが検出状態になるとオーガ回動モータ54を停止させて排穀オーガ8が真後ろ位置で停止するようにしている。
【符号の説明】
【0067】
2 車台
4 走行装置
6 脱穀装置
15 刈取装置
29 株元搬送装置(株元搬送チエン)
29L 左株元搬送装置(左株元搬送チエン)
29R 右株元搬送装置(右株元搬送チエン)
30L,30R 株元除去装置(左右株元切断刃)
33L,33R 株径検出体(左右カメラ)
35L,35R 粉塵センサ
36L,36R 夾雑物除去装置(左右エアノズル)
40 刈高さセンサ
【要約】
【課題】穀稈の丈や圃場の状態によっては穀稈を刈り取ることなく圃場から引き抜き、搬送経路に移動させてしまうことがある。圃場から引き抜かれた穀稈の根部付近には土塊が付着していることも多く、そのまま脱穀装置に向かわせると搬送経路上で詰まり、収穫作業が中断されるような事態になる恐れがある。
【解決手段】車台の下部側に走行装置を設け、車台の前部側に穀稈を圃場から刈り取り機体後方の脱穀装置に搬送する刈取装置15を備えた収穫機において、刈取装置15に刈り取る穀稈の株径を検出する株径検出体を設け、該株径検出体が設定された株径以上であることを検出すると、穀稈の株元が刈られずに引き抜かれて搬送されていると判定し、搬送中の穀稈の株元を除去する株元除去装置30L,30Rを作動させる。
【選択図】図2
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図10