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特許7392843ソーラーパネルのリサイクル方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置
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  • 特許-ソーラーパネルのリサイクル方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置 図1
  • 特許-ソーラーパネルのリサイクル方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置 図2
  • 特許-ソーラーパネルのリサイクル方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ソーラーパネルのリサイクル方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20231129BHJP
   B02C 17/20 20060101ALI20231129BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20231129BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20231129BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20231129BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20231129BHJP
   B09B 101/15 20220101ALN20231129BHJP
【FI】
B09B3/30 ZAB
B02C17/20
B02C19/00 B
B24C1/00 C
B24C11/00 Z
H01L31/04 560
B09B101:15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022522742
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035355
(87)【国際公開番号】W WO2022065479
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020161738
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都 健
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209219(JP,A)
【文献】特開2017-140580(JP,A)
【文献】特開2017-140618(JP,A)
【文献】特開2009-106875(JP,A)
【文献】特開2018-140353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルのリサイクル方法であって、
カバーガラスの厚さおよび前記カバーガラスの硬度を含む前記ソーラーパネルの特徴量を把握すること、
前記ソーラーパネルの特徴量に基づいて、処理条件を設定すること、
前記処理条件に基づいて、前記ソーラーパネルに対して処理媒体により衝撃力を付与して、前記ソーラーパネルの表面を覆う前記カバーガラスを前記ソーラーパネルから分離すること、
を含み、
前記カバーガラスを前記ソーラーパネルから分離させることは、
前記処理媒体を前記ソーラーパネルに衝突させて、前記カバーガラスにき裂を発生させること、
前記処理媒体をさらに衝突させて、前記き裂を成長させること、
前記処理媒体をさらに衝突させて、前記カバーガラスを前記ソーラーパネルより粒子状に脱離させること、
を含み、
前記処理条件は、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーを含み、
前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、前記カバーガラスの厚さと前記カバーガラスの硬度との積算に基づいて決定され、
前記処理媒体のビッカース硬さは、60~150Hvまたは350~550Hvであり、
前記処理媒体のビッカース硬さが60~150Hvである場合における、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、9.0×10 -4 ~5.0×10 -1 Jであり、
前記処理媒体のビッカース硬さが350~550Hvである場合における、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、1.0×10-3~5.3×10-1Jである、ソーラーパネルのリサイクル方法。
【請求項2】
前記処理媒体は、径が0.6~3.0mmの複数の粒子である、請求項1に記載のソーラーパネルのリサイクル方法。
【請求項3】
前記カバーガラスの分離に使用された前記処理媒体と、分離した前記カバーガラスの破片と、を含む粒子から、前記カバーガラスの破片を分離することを含む、請求項1または2に記載のソーラーパネルのリサイクル方法。
【請求項4】
ソーラーパネルをリサイクルするための装置であって、
前記ソーラーパネルに対して処理媒体により衝撃力を付与させる衝撃力付与機構と、
カバーガラスの厚さおよび前記カバーガラスの硬度を含む前記ソーラーパネルの特徴量を入力する入力部と、
前記衝撃力付与機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ソーラーパネルの特徴量に基づいて処理条件を設定し、前記処理条件に基づいて前記衝撃力付与機構の作動を制御して、前記処理媒体を前記ソーラーパネルに衝突させて、前記カバーガラスにき裂を発生させ、前記処理媒体をさらに衝突させて、前記き裂を成長させ、前記処理媒体をさらに衝突させて、前記ソーラーパネルの表面を覆う前記カバーガラスを前記ソーラーパネルから粒子状に脱離させ、
前記処理条件は、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーを含み、
前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、前記カバーガラスの厚さと前記カバーガラスの硬度との積算に基づいて決定され、
前記処理媒体のビッカース硬さは、60~150Hvまたは350~550Hvであり、
前記処理媒体のビッカース硬さが60~150Hvである場合における、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、9.0×10 -4 ~5.0×10 -1 Jであり、
前記処理媒体のビッカース硬さが350~550Hvである場合における、前記処理媒体が前記ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、1.0×10-3~5.3×10-1Jである、装置。
【請求項5】
前記衝撃力付与機構は、径が0.6~3.0mmの複数の粒子である前記処理媒体を、前記ソーラーパネルに向かって投射させる、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記ソーラーパネルから分離されたカバーガラスの破片及び前記処理媒体と、前記カバーガラスが分離されたソーラーパネルと、に分離する第1の分離機構と、
前記第1の分離機構で分離された前記カバーガラスの破片及び前記処理媒体から、前記カバーガラスの破片を分離する第2の分離機構と、
を備える、請求項またはに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネルのリサイクル方法、およびソーラーパネルをリサイクルするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーパネルによる太陽光発電システムは、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーという観点から注目されてきており、急激に設備の導入が進んできている。ソーラーパネルの寿命は約25~30年に設定されており、その際にソーラーパネルを含む大量の廃棄物が生じることが予想されている。例えば、わが国の環境省の試算では、2039年には約80万トンの廃棄物の排出が予想されている。従って、ソーラーパネルをリサイクルし、循環するシステムの確立が急務である。
【0003】
図3は、一般的な太陽光パネルの一部分の断面図を模式的に示している。太陽光パネル100は、電極102bを備え、且つ配線102cで連結された太陽電池セル102aが、カバーガラス101と封止材102d(例えば、EVA(エチレン・ビニル・アセテート))とバックシート103とで密封されており、且つシール材104bを介して外枠104a(例えば、アルミニウム)がはめ込まれた、板状の構造物である。以下、太陽電池セル102aが封止材102dによって封止されている層102を発電層と呼称する。
【0004】
従来は、ソーラーパネルからのカバーガラスの分離が難しく、ソーラーパネル自体を粉砕して処理していた。しかし、カバーガラスを分離することができれば、カバーガラスはガラスとしてリサイクルでき、また、発電層などの電池部材からは銀やアルミなどの有価物の回収が見込まれる。即ち、ソーラーパネルからのカバーガラスを効率よく分離できる技術の確立が望まれている。
【0005】
特許文献1には、リサイクル対象の太陽電池パネルから、フレーム、出力ケーブル、端子ボックス、等を取り除く「分解工程」、ソーラーパネルにアニール処理を施してカバーガラスと封止材との接着力を低下させる「加熱軟化工程」、カバーガラスの一部を剥離させる「第1剥離工程」、カバーガラスを完全に剥離させる「第2剥離工程」、剥離されたカバーガラスを回収する「回収工程」、を備える、ソーラーパネルのリサイクル方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-110201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1における「加熱軟化工程」では、ソーラーパネルを加熱した後、室温まで徐冷させる。当該特許文献によれば、この加熱する時間は60~90分を要する。また、「第1剥離工程」においても、封止材を軟化させるために加熱処理を施す。従って、処理時間等の観点から新たなリサイクル方法の確立が望まれている。
【0008】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ソーラーパネルからカバーガラスを効率よく分離して、ソーラーパネルをリサイクルする方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、ソーラーパネルのリサイクル方法である。このリサイクル方法は、次の工程を含む。
(1)カバーガラスの厚さおよびカバーガラスの硬度を含むソーラーパネルの特徴量を把握すること。
(2)ソーラーパネルの特徴量に基づいて処理条件を設定すること。
(3)処理条件に基づいて、ソーラーパネルに対して処理媒体により衝撃力を付与させて、カバーガラス(ソーラーパネルの表面を覆っている部材)をソーラーパネルから分離すること。
本発明の一側面によれば、ソーラーパネルの特徴量に基づいて処理条件を設定するので、カバーガラス下の発電層を破壊することなく、カバーガラスのみを適切に処理媒体によって分離することができる。
【0010】
本発明の一実施形態では、処理媒体は、径が0.6~3.0mmの粒子としてもよい。そして、ソーラーパネルからのカバーガラスの分離は、以下の工程を含む。
(1)処理媒体を前記ソーラーパネルに衝突させて、カバーガラスにき裂を発生させる。
(2)処理媒体をさらに衝突させて、き裂を成長させる。
(3)処理媒体をさらに衝突させて、カバーガラスをソーラーパネルより粒子状に脱離させる。
粒子状の処理媒体が繰り返し衝突させることで、カバーガラスのき裂を徐々に成長させて、且つ、その衝突力により発電層とカバーガラスとの密着力を低下させたうえで、カバーガラスを分離することができる。即ち、カバーガラスを分離する際の発電層へのダメージを低減させることができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、カバーガラスの分離に使用された処理媒体と、分離したカバーガラスの破片と、を含む粒子から、カバーガラスの破片を分離させることを含んでもよい。
カバーガラスの破片を適切に分離するので、カバーガラスの破片を回収してリサイクルに供することができる。
【0012】
本発明の一実施形態では、処理条件は、処理媒体がソーラーパネルに衝突する際のエネルギーを含んでもよい。また、処理媒体のビッカース硬さは、350~550HVであり、ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、1.0×10-3~5.3×10-1Jとしてもよい。また、処理媒体のビッカース硬さは、60~150HVであり、ソーラーパネルに衝突する際のエネルギーは、9.0×10-4~5.0×10-1Jとしてもよい。
カバーガラスを分離するための処理の条件を適切に制御することができる。
【0013】
本発明の別の側面は、ソーラーパネルをリサイクルするための装置である。この装置は、衝撃力付与機構と、入力部と、制御部と、を含む。衝撃力付与機構は、ソーラーパネルに対して処理媒体により衝突力を付与させる機構である。入力部は、ソーラーパネルの特徴量(カバーガラスの厚さおよびカバーガラスの硬度を含む)を入力する。制御部は、衝撃力付与機構を制御する。また、制御部は、ソーラーパネルの特徴量に基づいて処理条件を設定する。そして、設定された処理条件に基づいて衝撃力付与機構を制御して、カバーガラス(ソーラーパネルの表面を覆う部材)をソーラーパネルから分離する。
本発明の別の側面によれば、制御部は、ソーラーパネルの特徴量に基づいて処理条件を設定し、衝撃力付与機構は、設定された処理条件でソーラーパネルを処理するので、カバーガラス下の発電層を破壊することなく、カバーガラスのみを処理媒体により適切に分離することができる。
【0014】
本発明の一実施形態では、径が0.6~3.0mmの複数の粒子である処理媒体を、ソーラーパネルに向かって投射してもよい。処理媒体が繰り返し衝突することで、カバーガラスに発生したき裂が成長し、やがて粒子状に脱離される。従って、発電層にダメージを与えることなく、カバーガラスを分離することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、第1の分離機構と、第2の分離機構と、を備えてもよい。ここで、第1の分離機構は、「ソーラーパネルから分離されたカバーガラスの破片及び処理媒体」と、「カバーガラスが分離されたソーラーパネル」と、に分離する。また、第2の分離機構は、第1の分離機構で分離された「カバーガラスの破片及び処理媒体」から、「カバーガラスの破片」を分離する。
カバーガラスの破片を適切に分離する機構を備えるので、カバーガラスの破片を回収してリサイクルに供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ソーラーパネルのカバーガラスを分離してソーラーパネルをリサイクルする方法およびソーラーパネルをリサイクルするための装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る、カバーガラス処理装置を概略的に示す側面図である。
図2図1のA-A線断面矢視図である。
図3】本発明の実施形態における処理対象であるソーラーパネルの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る、ソーラーパネルをリサイクルするための装置(カバーガラス処理装置)を概略的に示す側面図である。図2は、図1のA-A線断面矢視図である。
図1図2に示すように、ソーラーパネルのカバーガラス処理装置1は、衝撃力付与機構12、キャビネット18、搬送機構14、第1の分離機構16、第2の分離機構6b、第3の分離機構6e、入力部2、制御部4を備えている。
【0019】
制御部4は、後述するがカバーガラス処理装置1の処理条件の設定、動作を含む種々の制御をおこなう。制御部4は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのモーションコントローラ、パーソナルコンピュータ(PC)などの各種演算装置等、カバーガラス処理装置1の動作を制御可能であるものを採用してよい。入力部2は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等、画像表示装置と協働してカバーガラス処理装置1の設定等を入力可能であるものを採用してよい。
【0020】
衝撃力付与機構12は、粒子状の処理媒体Sを連続的に投射する。衝撃力付与機構12は、駆動源と投射機構とを備える。駆動源には、例えば電動モータが使用される。また投射機構には、駆動源によって回転駆動される羽根車が使用可能である。本実施形態では、衝撃力付与機構12は、モータに連結された羽根車を有しており、これに処理媒体Sを送り込み、高速で回転する羽根車の遠心力を利用して処理対象物(ソーラーパネル100)に向けて処理媒体Sを投射する構成とした。
【0021】
衝撃力付与機構12の別の構成として、処理媒体Sを圧縮空気と共に噴射する方式を用いることができる。この場合、ノズルの内部で発生した負圧によって処理媒体を吸引し、圧縮空気と共に噴射する機構としてもよい。また、処理媒体Sが収容された加圧容器を圧縮空気により加圧し、処理媒体SをノズルSに向かう気流に送り込むことで、ノズルからの圧縮空気と共に噴射する機構としてもよい。
【0022】
衝撃力付与機構12のさらに別の構成として、処理媒体を液体及び圧縮空気と共に噴射する方法を用いることができる。
【0023】
キャビネット18は、処理媒体Sが投射され、カバーガラス101の分離を行う領域を覆っており、内部に処理室Rを画成する。
【0024】
搬送機構14は、ソーラーパネル100を処理媒体Sが投射される領域に搬送し、またカバーガラス101が除去されたソーラーパネル100をキャビネット18の外部に搬出する。搬送機構14は、ベルトコンベア、振動フィーダ、チェーンコンベア、ローラーコンベア、等を用いることができる。本実施形態では、ベルトコンベアを用いた。
【0025】
第1の分離機構16は、「ソーラーパネル100における発電層102上から分離されたカバーガラス101、処理媒体S、(分離処理によって生じた)その他の粒子」と「発電層102」と、に分離する機構である。本実施形態における第1の分離機構16は、圧縮空気によるブロアやブラシやスクレーパなど、外力によって分離する機構を用いた。
【0026】
第1の分離機構16の別の構成として、搬送機構14として振動フィーダを用い、ソーラーパネル100が載置される搬送部にスクリーンを用いてもよい。この場合、搬送機構14が第1の分離機構16を兼ねることができる。
【0027】
第3の分離機構6e、は、第1の分離機構によって分離された「カバーガラス101、処理媒体S、その他の粒子」から、「その他の粒子」を分離し回収する機構である。第3の分離機構6eは、風力によって選別する構成としてもよい。なお、第3の分離機構6eは、「その他の粒子」の発生量が少ない場合等、必要に応じて省略することができる。
【0028】
第2の分離機構6bは、第1の分離機構によって分離された「カバーガラス101、処理媒体S、その他の粒子」から、「カバーガラス101」と「処理媒体S」とを分離する機構である。第3の分離機構にて分離された「カバーガラス101、処理媒体S」は、第2の分離機構6bにて、「処理媒体S」と「カバーガラス101」とに分離される。第2の分離機構6bは、篩、風力選別装置、磁力選別装置、などから選択することができる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0029】
次に、上記のように構成されたソーラーパネルのカバーガラス処理装置1の動作について説明する。本実施形態において処理されるソーラーパネル100は、図3におけるアルミニウム外枠104a、シール材104bからなるフレーム部104は除去され、カバーガラス101、発電層102、バックシート103からなる積層体のみの状態で分離装置1に供給される。
【0030】
(1)まず作業者は、入力部2に、処理されるソーラーパネル100の特徴量を入力する。この特徴量は、カバーガラスの厚さおよびカバーガラスの硬度を含んでいる。
(2)制御部4は、入力されたソーラーパネル100の特徴量に基づいて、処理条件を設定する。設定された処理条件に基づき、衝撃力付与機構12を含む各機構を制御する信号が、各機構に出力される。
(3)次いで、搬送機構14が作動し、搬送機構14に載置されたソーラーパネル100が、キャビネット18内の衝撃力付与機構12直下に搬送される。そして、衝撃力付与機構12の作動により、無数の処理媒体Sがソーラーパネル100に向かって連続的に投射される。処理媒体Sの投射により、カバーガラス101に衝撃力が付与される。この衝撃力により、以下の態様でカバーガラス101は分離される。
a)投射初期では、カバーガラス101に無数の小さなき裂を発生させる。
b)さらに投射を続けて衝撃力を付与し続けることで、このき裂が深さ方向に成長する。
c)カバーガラス101のき裂は所謂「クモの巣状」になっている。即ち、き裂が発電層102まで到達すると、カバーガラス101と発電層102との界面における接触面積が小さくなるので、密着力が弱くなる。この状態でさらに投射による衝撃力を付与し続けることで、カバーガラス101が粒子状に脱離する。
上記の(2)の工程で設定された処理条件により処理を行うことで上記の態様でカバーガラスを分離させるので、処理による発電層102へのダメージを抑制することができる。
【0031】
(4)処理されたソーラーパネル100は、図1紙面右側方向に搬送され、第1の分離機構16によって、分離されたカバーガラス101や処理媒体Sを除去する。処理媒体Sを除去された発電層102とバックシート103からなる積層体は、搬送機構14により更に搬送されてリサイクルのため回収される。
【0032】
(5)キャビネット18の下部には、処理媒体回収部6aが配置されている。処理媒体回収部処理により分離したカバーガラス101、投射された処理媒体S、(処理によって生じた)その他の粒子、を、キャビネット18下部にある処理媒体回収部6aにより回収する。処理媒体回収部6aは例えばスクリューコンベア、バケットエレベータ等(図示せず)で構成される。(図2を参照)
【0033】
(6)処理媒体回収部6aにより回収された「カバーガラス101、処理媒体S、その他の粒子」は、第3の分離機構6eに移送される。「その他の粒子」は、「カバーガラス101、処理媒体S」に比べて質量が小さい粒子である。第3の分離機構6eは、集塵機(図示せず)が連結されており、集塵機の作動により発生した気流により、「その他の粒子」が分離される。分離された「その他の粒子」は、集塵機に回収される。
【0034】
(7)第3の分離機構6eで分離された「カバーガラス101、処理媒体S」は、第2の分離機構6bに移送される。そして、第2の分離機構6bの作動によって、「処理媒体S」と「カバーガラス101」とに分離される。分離したカバーガラスは、排出パイプ6dを通じて、外部に排出される。また、分離した処理媒体Sは、処理媒体供給部6cにより、衝撃力付与機構12に供給され、再度投射される。
【0035】
(ソーラーパネルの特徴量)
上記で入力部2に入力されるソーラーパネル100の特徴量とは、カバーガラスの厚さおよびカバーガラスの硬度の他、カバーガラス101の組成、封止材102dの組成、硬度、厚さ、バックシート103の組成、硬度、厚さ、および、ソーラーパネル100の温度等を含みえる。これらの特徴量は、ソーラーパネルの型番に関して予め得ることができる仕様情報から得られる。また、処理の前に適宜測定して得ても良い。
【0036】
上述の特徴量の他、シートおよび封止材の劣化具合(使用時の紫外線や熱、塩害や水の影響)、カバーガラスの破損具合(既に割れている、傷が入っているなど)、ソーラーパネルの形状(そり、曲がりなど)、カバーガラスの付着物(汚れ、ペンキ、泥、土など投射の妨げになるもの)等を特徴量として採用して良い。
【0037】
(処理条件)
上記のソーラーパネル100の特徴量に基づいて設定される処理条件は、カバーガラス101を分離するためにカバーガラス101に衝突する処理媒体Sのエネルギー量や処理媒体の種類、硬度、サイズ等を含み得る。
【0038】
本実施形態では、処理媒体Sがソーラーパネル100に衝突する際の処理媒体Sのエネルギー(衝突エネルギー)を制御する。このエネルギーは例えば下記の式によって制御部4によって計算される。
【0039】
【数1】
ここで、Sは、衝突エネルギー、kは実験により求められる定数、Gは、カバーガラスの厚さ、Gは、カバーガラスの硬度を表している。なお、衝突エネルギーSは、衝突媒体Sがソーラーパネル100に衝突する直前のエネルギーとする。
【0040】
処理媒体Sの材質は、金属(例えば、鉄、亜鉛、ステンレス)、セラミック(例えば、アルミナ、炭化ケイ素、ジルコン)、ガラス、樹脂(例えば、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂)、植物由来物(例えば、くるみ、ピーチ)など種々の材質から選択される。処理媒体Sの形状は、球状、多角形状、円柱状など種々の形状から選択される。例えば、金属の粒子の場合、スチールショットと呼ばれる球状粒子、グリッドと呼ばれる鋭角部を有する多角形状粒子、カットワイヤと呼ばれる円柱形状または円柱形状の角部を丸くした粒子、を選択できる。様々な材質や形状から、ソーラーパネル100の特徴量に基づいて、適宜選択して採用してよい。
【0041】
さらに、上述の衝突エネルギーSは、衝突媒体Sの硬度との関係が重要であることを見出した。例えば、処理媒体のビッカース硬さが350~550Hvである場合の衝突エネルギーSは、1.0×10-3~5.3×10-1Jである。例えば、処理媒体のビッカース硬さが60~150Hvである場合の衝突エネルギーSは、9.0×10-4~5.0×10-1Jである。なお、ビッカース硬さは、JIS Z0311:2004に準じて測定される数値である。
【0042】
以上述べたように、本実施形態においては、ソーラーパネル100の特徴量に基づいて、処理媒体Sの材質、硬度、形状、衝突エネルギー、等を設定し、ソーラーパネル100から、カバーガラス101を効率良く分離することができる。具体的には、カバーガラス101を分離する際に、発電層102へのダメージを抑制し、カバーガラス101をリサイクルできると共に、発電層102もリサイクルに供することができる。また、発電層102へのダメージが抑制されているので、回収したカバーガラス101の破片に不純物が混入することを防ぐことができる。カバーガラス101の破片の大きさは、処理媒体Sとは異なる質量、大きさとなるように処理条件を調整できるので、分離機構6bにおいて、篩、風選装置で容易に処理媒体Sとカバーガラス101を分離可能である。したがって、効率よくソーラーパネルのカバーガラスを分離してリサイクルする方法およびソーラーパネルのリサイクルを行うための装置を提供することができる。
【0043】
以上、本願発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【符号の説明】
【0044】
1 ソーラーパネルのカバーガラス処理装置
2 入力部
4 制御部
12 衝撃力付与機構
16 第1の分離機構
6b 第2の分離機構
100 ソーラーパネル
101 カバーガラス
S 処理媒体
図1
図2
図3