(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】炭化水素生成システム
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20231129BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20231129BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20231129BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20231129BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20231129BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20231129BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/02
C07C9/04
C07C11/02
C02F11/04 A
C10L3/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022531957
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023306
(87)【国際公開番号】W WO2021261417
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020106800
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】成相 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 巧
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 博之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 光亮
(72)【発明者】
【氏名】辻川 順
(72)【発明者】
【氏名】水上 範貴
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037535(JP,A)
【文献】特開2016-108382(JP,A)
【文献】特開2020-045430(JP,A)
【文献】特開平07-080309(JP,A)
【文献】特開2019-188281(JP,A)
【文献】特開2015-077575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C02F 11/04
C10L 3/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタと、
前記バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含む炭化水素プレ生成部と、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部と、
前記炭化水素生成部に供給される前記バイオガス中の二酸化炭素の濃度及び前記バイオガスの流量を計測する計測部と、
を備え、
前記計測部で計測される二酸化炭素の濃度及び前記バイオガスの流量に応じた量の水素が前記炭化水素生成部へ供給され
、
前記炭化水素プレ生成部の二酸化炭素転化率は80%以上である、炭化水素生成システム。
【請求項2】
前記炭化水素はパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含む、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項3】
前記炭化水素生成部は、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含む、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項4】
前記炭化水素生成部は、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置を含む、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項5】
前記炭化水素生成部は、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置と、前記FT合成装置から排出される未反応の二酸化炭素及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置とを含む、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項6】
前記炭化水素生成部は、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置と、
前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置とを含む、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項7】
メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタと、
前記バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含む炭化水素を生成するFT合成装置を含む炭化水素生成部と、
前記炭化水素生成部に供給される前記バイオガス中の二酸化炭素の濃度及び前記バイオガスの流量を計測する計測部と、
を備え、
前記計測部で計測される二酸化炭素の濃度及び前記バイオガスの流量に応じた量の水素が前記炭化水素生成部へ供給される、炭化水素生成システム。
【請求項8】
前記炭化水素生成部は前記FT合成装置から排出される未反応の二酸化炭素及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含む、請求項7に記載の炭化水素生成システム。
【請求項9】
前記炭化水素生成部は前記バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含む、請求項7に記載の炭化水素生成システム。
【請求項10】
前記バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素プレ生成部をさらに備え、
前記炭化水素生成部は、前記炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、前記バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する、請求項7に記載の炭化水素生成システム。
【請求項11】
前記炭化水素プレ生成部は、メタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含む、請求項10に記載の炭化水素生成システム。
【請求項12】
前記バイオリアクタは発酵槽を含み、前記炭化水素生成部で生じた反応熱によって前記発酵槽が加温される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するため、天然ガスのような化石資源に代えてバイオマスのような再生可能エネルギーの利用が促進されている。バイオマスを利用する方法としては、バイオマスをメタン発酵して得られたメタンをエネルギー源として利用することが知られている。
【0003】
しかしながら、メタン発酵により得られるバイオガスには、メタンだけでなく、通常、十~数十パーセント程度の二酸化炭素も含まれている。そのため、高濃度のメタンが要求されるような都市ガスなどの原料としてバイオガスを直接利用することは容易でない。
【0004】
そこで、バイオガスのメタン濃度を高めることによって、高純度のメタンを製造する方法が開発されている。このような方法として、特許文献1には、バイオガスを物理吸収液及び化学吸収液に接触させることによって、バイオガスのメタン濃度を高める濃縮工程を含む、高純度メタンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法によれば、バイオガスのメタン濃度を高くすることができるため、高純度メタンを既存のガス導管に注入することによって、都市ガスとしての利用が期待される。しかしながら、上記方法では、バイオガスを吸収液に接触させるための吸収槽、及び吸収液を再生するための再生槽などが必要である。また、炭素循環や温暖化対策の観点から、バイオガスで生成される二酸化炭素は、大気中に放出することなく、有価物としてリサイクルされることが望ましい。
【0007】
そこで、本開示は、バイオガスに含まれる二酸化炭素を分離せずに有価物として利用可能な炭化水素生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る炭化水素生成システムは、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタを備える。炭化水素生成システムは、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部を備える。炭化水素生成システムは、炭化水素生成部に供給されるバイオガス中の二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量を計測する計測部を備える。炭化水素生成システムでは、計測部で計測される二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に応じた量の水素が炭化水素生成部へ供給される。
【0009】
炭化水素はパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含んでもよい。炭化水素生成部は、バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含んでもよい。炭化水素生成部は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置を含んでもよい。炭化水素生成部は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置と、FT合成装置から排出される未反応の二酸化炭素及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置とを含んでもよい。炭化水素生成部は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置と、バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置とを含んでもよい。炭化水素生成システムは、バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素プレ生成部をさらに備え、炭化水素生成部は、炭化水素プレ生成部から排出される未反応の二酸化炭素、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成してもよい。炭化水素プレ生成部はメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含み、炭化水素生成部はメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含んでもよい。バイオリアクタは発酵槽を含み、炭化水素生成部で生じた反応熱によって発酵槽が加温されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バイオガスに含まれる二酸化炭素を分離せずに有価物として利用可能な炭化水素生成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る炭化水素生成システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る炭化水素生成部の例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る炭化水素生成部の例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る炭化水素生成システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る炭化水素生成システム1について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、バイオリアクタ10と、精製部20と、炭化水素生成部30と、水素供給部40と、計測部50と、制御部60とを備える。本実施形態に係る炭化水素生成システム1では、バイオリアクタ10で生成されるバイオガスを二酸化炭素回収装置などで回収せずに、炭化水素生成部30でバイオガスから炭化水素を生成することができる。そのため、バイオガスに含まれる二酸化炭素を分離せずに有価物として利用することができる。
【0014】
(バイオリアクタ10)
バイオリアクタ10は、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成する。バイオガスは、バイオマスを原料として生成することができる。バイオマスは、動植物に由来する資源であり、化石資源に代えてこのような再生可能エネルギーを利用することにより、地球温暖化の一因とされている二酸化炭素の排出を抑制することができる。バイオマスは、例えば、木材、草本、紙、家畜排せつ物、下水汚泥及び浄化槽汚泥などの生活排水、並びに食品廃棄物などの有機物を含む。バイオガスを効率的に生成するため、必要に応じ、供給される原料の粉砕及び希釈、並びに供給される原料中の異物の除去などの前処理が実施されたバイオマスがバイオリアクタ10に供給されてもよい。
【0015】
バイオリアクタ10は、原料の供給、発酵及び排出を一単位として繰り返す回分式であってもよく、原料の供給、発酵及び排出を、連続的に同時に行う連続式であってもよい。バイオリアクタ10は、メタン発酵処理を行う発酵槽を含んでいてもよい。バイオリアクタ10は、単一の発酵槽のみを含んでいてもよく、複数の発酵槽を含んでいてもよい。バイオリアクタ10は、発酵温度が最適な温度となるように発酵槽内の温度を所定の温度に加温する加温部を含んでいてもよい。
【0016】
バイオリアクタ10は発酵槽を含み、炭化水素生成部30で生じた反応熱によって発酵槽が加温されてもよい。後述するように、炭化水素生成部30は、メタネーション反応、及び、フィッシャー-トロプシュ反応などによって炭化水素を生成することができ、これらの反応は、一般的には発熱反応である。この反応熱によって発酵槽を加温することによって、反応によって生じた熱エネルギーを有効利用することができる。
【0017】
発酵槽には、メタン発酵を行うための微生物が保持されていてもよい。微生物の保持方法としては特に限定されないが、固定床法、流動床法、又はUSAB(上向流嫌気性汚泥床)法などが挙げられる。固定床法では、通常、微生物を担持させた担体が発酵槽内に充填される。流動床法では、通常、微生物を担持させた担体が発酵槽内に収容され、発酵槽内で流動する。USAB法では、通常、担体に担持させずに微生物を凝集させたグラニュールが発酵槽内に収容される。グラニュールの粒子径は、例えば0.5~2mm程度である。
【0018】
メタン発酵では、多くの嫌気性微生物により、バイオマスからメタンが生成される。具体的には、タンパク質、炭水化物及び脂質を含む有機物が加水分解され、アミノ酸、糖類及び脂肪酸が生成される。アミノ酸、糖類及び脂肪酸は、酢酸、二酸化炭素及び水素に分解される。そして、メタン生成菌によって、酢酸、二酸化炭素及び水素からメタンが生成される。また、バイオリアクタ10では、メタン発酵によって、消化液も生成される。
【0019】
メタン生成菌は、50℃~60℃のような高温度で活性を示す高温メタン生成菌を含んでいてもよく、35℃~38℃のような中温度で活性を示す中温メタン生成菌を含んでいてもよい。高温メタン生成菌を用いた場合には、メタン発酵の時間を短くすることができる。低温メタン菌を用いた場合には、発酵槽の加温に要する温度を低減することができる。
【0020】
(精製部20)
バイオガスには、上述のようにメタン及び二酸化炭素が含まれる。バイオガスに含まれる二酸化炭素は、例えば10体積%~40体積%である。ただし、バイオマスには、メタン及び二酸化炭素以外にも、原料となるバイオマスに含まれる成分によって硫化水素及びメチルメルカプタンなどの硫黄成分、有機ポリシロキサン、並びにアンモニアなどの不純物が含まれている場合がある。そのため、精製部20によって上記のような不純物を除去することにより、後述する炭化水素生成部30及び配管への不純物の付着、及び炭化水素生成部30の触媒の被毒などを抑制することができる。なお、これらの不純物を除去する必要性が低い場合には、精製部20が必要ないため、炭化水素生成システム1は精製部20を備えていなくてもよい。
【0021】
(炭化水素生成部30)
炭化水素生成部30は、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する。バイオリアクタ10によって生成されるバイオガス及び水素供給部40によって供給される水素を含む原料から炭化水素を生成することによって、バイオガスに含まれる二酸化炭素を有価物として利用することができ、化石資源の使用を低減することができる。生成物中の二酸化炭素量を低減することができるため、化学吸収法などを用いた二酸化炭素回収装置などで回収する必要性が低くなり、バイオガスから二酸化炭素を回収するために必要な設備の設置及び維持費用を低減することができる。
【0022】
炭化水素生成部30は、反応器を含んでおり、反応器に供給される原料が通過する流路内に触媒が配置されてもよい。原料が触媒に接触することによって炭化水素を生成することができる。炭化水素は、例えば、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。パラフィンはアルカンを意味し、オレフィンはアルケンを意味する。これらの炭化水素は、エネルギー源及び化学品の原料として用いることができるため、利用価値が高い。
【0023】
炭化水素は、後述するように、メタネーション反応、及び、フィッシャー-トロプシュ反応などによって生成することができる。これらの反応は、一般的には発熱反応であり、条件によっては触媒層の温度が700℃以上にもなる。しかしながら、バイオガスにはメタンが含まれており、炭化水素により二酸化炭素の濃度が薄まるため、比較的温和な条件で反応を進めることができる。そのため、反応熱の発生を抑制することができ、触媒層及び反応器の耐熱温度を低くすることができる。これらの反応条件は、例えば反応温度が200℃~400℃であり、反応器内の圧力が0.1MPa~10MPaである。
【0024】
炭化水素生成部30は、バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置31を含んでいてもよい。メタネーション反応では、二酸化炭素と水素とを含む原料からメタンと水とを含む生成物を生成することができる。そのため、生成物から水を除去することにより、メタン濃度の高い生成物を得ることができる。したがって、炭化水素生成部30によって得られるメタンは、工場内のエネルギー源として直接使用したり、都市ガスとして直接供給したりすることができる。メタネーション装置31は、シェルアンドチューブ型反応器のような多管式反応器などの公知の反応装置を含んでいてもよい。
【0025】
メタネーションによって生成されるメタンの選択率は高く、例えば、原料に含まれる二酸化炭素のうち、85%以上の二酸化炭素からメタンが生成される。メタンが生成される割合は、反応条件に依存し、90%以上である場合もあり、95%以上である場合もある。
【0026】
メタネーション装置31で使用される触媒は、メタンを生成することができれば特に限定されず、例えばニッケル触媒又はルテニウム触媒などの公知の触媒を使用することができる。ニッケル触媒はニッケルを活性成分として含む触媒であり、ルテニウム触媒はルテニウムを活性成分として含む触媒である。活性成分の含有量は、触媒全体の0.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。ニッケルを活性成分として含む場合には、活性成分の含有量は、触媒全体の10質量%以上であることが好ましく、ルテニウムを活性成分として含む場合には、活性成分の含有量は、触媒全体の0.5質量%以上であることが好ましい。コスト及び高いメタン選択性の観点から、メタネーション装置31にはニッケル触媒が設けられることが好ましい。
【0027】
炭化水素生成部30は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成するFT合成装置32を含んでいてもよい。フィッシャー-トロプシュ反応では、二酸化炭素と水素とを含む原料から、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成することができる。
【0028】
パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方は、炭素数が1から4の炭化水素を含んでいることが好ましい。炭素数が1から4のパラフィンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン及びブタンが挙げられる。炭素数が1から4のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン及び1,3-ブタジエンが挙げられる。なお、これらの中でも、炭素数が2以上4以下のオレフィンは、プラスチックの原料になるため有用である。また、FT合成装置32で生成される生成物は、上記以外の化合物を含んでいてもよい。FT合成装置32は、例えば、シェルアンドチューブ型反応器のような多管式反応器、流動層型反応器又はスラリー床型反応器などの公知の反応装置を含んでいてもよい。
【0029】
フィッシャー-トロプシュ反応によって生成される生成物は、通常、複数種類の炭化水素を含んでいる。フィッシャー-トロプシュ反応によって生成される生成物には、例えば、原料に含まれる二酸化炭素のうち、20%以上85%未満の二酸化炭素からパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素が生成される。炭化水素が生成される割合は、反応条件に依存し、35%以上である場合もあり、50%以上である場合もある。また、炭化水素が生成される割合は、65%以下である場合もあり、55%以下である場合もある。
【0030】
FT合成装置32で使用される触媒は、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成することができれば特に限定されず、例えば鉄触媒又はコバルト触媒などの公知の触媒を使用することができる。鉄触媒は軽質炭化水素を主に生成することができ、コバルト触媒はワックスを含む重質炭化水素を主に生成することができる。また、鉄触媒はオレフィン及びパラフィンを主として生成することができ、コバルト触媒はパラフィンを主として生成することができる。なお、鉄触媒は鉄を活性成分として含む触媒であり、コバルト触媒はコバルトを活性成分として含む触媒である。活性成分の含有量は、触媒全体の10質量%以上であることが好ましい。FT合成装置32には鉄触媒が設けられることが好ましい。これにより、プラスチックの原料にもなる軽質オレフィン(低級オレフィン)を生成することができる。
【0031】
炭化水素生成部30は、メタネーション装置31及びFT合成装置32の少なくともいずれか一方を含んでもよい。すなわち、炭化水素生成部30は、メタネーション装置31のみを含んでいてもよく、FT合成装置32のみを含んでいてもよく、メタネーション装置31及びFT合成装置32の両方を含んでいてもよい。
【0032】
炭化水素生成部30は、例えば
図2に示すように、FT合成装置32と、メタネーション装置31とを含んでいてもよい。FT合成装置32は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成してもよい。メタネーション装置31は、FT合成装置32から排出される未反応の二酸化炭素及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成してもよい。
【0033】
FT合成装置32は、二酸化炭素からパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成することができるが、メタネーション装置31と比較して炭化水素に変換されずにFT合成装置32から排出される未反応の二酸化炭素が多い傾向にある。そこで、FT合成装置32の後段にメタネーション装置31を直列に配置することにより、メタネーション装置31によって未反応の二酸化炭素からメタンを高い選択率で生成することができる。そのため、炭化水素生成部30から未反応物として排出される二酸化炭素の量を低減するとともに、未反応の二酸化炭素を有効利用することができる。また、生成物中の二酸化炭素の濃度を低減することができるため、生成物中の熱量を向上させることができる。なお、FT合成装置32は、炭化水素だけでなく水も生成するため、FT合成装置32とメタネーション装置31との間に、水を除去可能な気液分離器が設けられていることが好ましい。
【0034】
また、
図3に示すように、炭化水素生成部30は、FT合成装置32と、メタネーション装置31とを含んでいてもよい。FT合成装置32は、バイオガス及び水素を含む原料からフィッシャー-トロプシュ反応によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成してもよい。メタネーション装置31は、バイオガス及び水素を含む原料からメタネーションによってメタンを生成してもよい。
【0035】
このように、メタネーション装置31とFT合成装置32とを並列に配置することにより、メタネーション装置31によって高い選択率でメタンを生成することができる。また、FT合成装置32によってパラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成することができる。さらに、メタネーション装置31で生成されたメタンとFT合成装置32で生成された炭化水素を混合することにより、メタネーション装置31で生成されたガスの熱量を調整することもできる。
【0036】
なお、
図2及び
図3では、メタネーション装置31とFT合成装置32とが直列又は並列に配置される形態について説明した。しかしながら、炭化水素生成部30は、これらの組み合わせであってもよい。例えば、
図3の形態のようにメタネーション装置31とFT合成装置32とが並列に配置され、FT合成装置32の後段に
図2の形態のようにメタネーション装置31が直列に配置されてもよい。
【0037】
また、
図2及び
図3では、2つの異なる水素供給部40がFT合成装置32及びメタネーション装置31に水素を供給する例について説明したが、共通する水素供給部40によってFT合成装置32及びメタネーション装置31に水素が供給されてもよい。
【0038】
メタネーション装置31は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。同様に、FT合成装置32は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。反応器の数は適宜定めることができるが、バイオガス中の二酸化炭素濃度が高い場合、炭化水素生成部30は複数の反応器を含んでいることが好ましい。一方、バイオガス中の二酸化炭素濃度が低い場合、炭化水素生成部30は単一の反応器のみを含んでいてもよい。メタネーション装置31及びFT合成装置32が複数の反応器を含む場合、各反応器は直列に配置されてもよく、並列に配置されてもよい。
【0039】
炭化水素生成部30で生成された生成物が複数種類の炭化水素を含む場合、炭化水素生成システム1は化学構造に応じた炭化水素を分留などによって分離する分離装置を備えてもよい。分離装置は、脱メタン塔、脱エタン塔、脱エチレン塔、脱プロパン塔、脱プロピレン塔、脱ブタン塔及び脱ブテン塔のような少なくとも1つの分離塔を含んでいてもよい。これらの分離塔によって、複数種類の炭化水素を、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン及びブテンなどのような化学構造に応じて分離することができる。
【0040】
(水素供給部40)
水素供給部40は炭化水素生成部30に水素を供給する。水素供給部40は、
図1に示すように、水素生成部41及び水素タンク42を含んでいてもよい。水素生成部41は、水素を生成することができれば特に限定されないが、再生可能エネルギーを利用して水素を生成することが好ましい。再生可能エネルギーを利用することにより、炭化水素生成システム1全体として二酸化炭素排出量を低減することができる。水素生成部41は、例えば、太陽光、風力及び水力などの再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解して水素を生成してもよい。また、水素供給部40は、バイオマスをガス化して水素を生成してもよい。水素タンク42は、水素生成部41で生成された水素を貯蔵してもよく、水素が充填された市販の水素タンクを用いてもよい。
【0041】
水素は、水素生成部41から水素タンク42を介さずに炭化水素生成部30に直接供給されてもよく、水素タンク42から炭化水素生成部30に供給されてもよい。二酸化炭素と水素とを含む混合ガスは、圧縮機によって圧縮され、炭化水素生成部30に供給されてもよい。
【0042】
(計測部50)
計測部50は、炭化水素生成部30に供給されるバイオガス中の二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量を計測する。炭化水素生成システム1では、計測部50で計測される二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に応じた量の水素が炭化水素生成部30へ供給される。バイオガスに含まれる二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量は、バイオリアクタ10、微生物及び原料に含まれるバイオマスの状態など複数の要素によって変動するおそれがある。そのため、予め定められた一定量の水素が炭化水素生成部30に供給される場合、上記複数の要素によって炭化水素生成部30に供給される二酸化炭素の量が変動し、目的の炭化水素を効率よく得ることができないおそれがある。また、目的の化学構造を有する炭化水素を効率よく得るためには、炭化水素生成部30に供給される二酸化炭素と水素とを最適な比率にすることが好ましい。
【0043】
そこで、バイオガス中の二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量を計測し、二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に応じて水素を炭化水素生成部30に供給する。これにより、二酸化炭素と水素との比率が所定の範囲内になるように調整された混合ガスを炭化水素生成部30に供給することができる。これにより、バイオガス中の二酸化炭素から所望の化学種の炭化水素を効率よく生成することができる。
【0044】
炭化水素生成部30に供給される二酸化炭素に対する水素の量の比は、目的とする化学種によって適宜設定することができるが、例えばモル比で1以上であってもよく、2以上であってもよい。また、炭化水素生成部30に供給される二酸化炭素に対する水素の量の比は、例えばモル比で8未満であってもよく、5未満であってもよい。なお、メタネーションの場合、H2/CO2比=4.0付近が好ましい。また、オレフィン合成の場合、H2/CO2=3.0付近が好ましい。
【0045】
計測部50は、濃度計及び流量計を含んでいてもよい。濃度計は、二酸化炭素の濃度を測定することができれば特に限定されず、公知の濃度計を用いることができる。流量計は、バイオガスの流量を測定することができれば特に限定されず、公知の流量計を用いることができる。計測部50は、濃度及び流量を測定可能な一体型の計測器を含んでいてもよく、濃度計及び流量計がそれぞれ分離した別体型の複数の計測器を含んでいてもよい。水素供給部40は、計測部50で生成された二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に関連する信号に基づいて水素供給量を調整してもよい。
【0046】
(制御部60)
炭化水素生成システム1は、水素供給部40から供給される水素供給量を制御する制御部60を備えていてもよい。制御部60は、例えば、計測部50で生成された信号に基づいて水素供給部40が供給する水素の量を算出してもよい。制御部60は、算出された量の水素が炭化水素生成部30に供給されるように水素供給部40を制御してもよい。制御部60は、ポンプなどの流量調整器によって炭化水素生成部30に供給される水素の量を調整してもよい。制御部60は、水素生成部41及び水素タンク42の少なくともいずれか一方の水素供給量を制御してもよい。水素供給部40が水素生成部41及び水素タンク42を含む場合、制御部60は、水素タンク42の残量に応じて水素生成部41が生成する水素の量を制御してもよい。
【0047】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み込み、プログラムに従って演算及び制御などの命令を実行することができる。プログラムには、例えば、二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量から水素の供給量を算出する処理が含まれていてもよい。プログラムはROM以外の記録媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。RAMは、計測部50などから取得した情報を記憶し、CPUはRAMに記憶された情報を読み出して演算などの処理に用いることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタ10と、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部30とを備える。炭化水素生成部30では二酸化炭素から炭化水素が生成されるため、バイオガスに含まれる二酸化炭素を、化学吸収法などを用いた二酸化炭素回収装置などで分離せずに有価物として利用することができる。そのため、二酸化炭素回収装置に必要な設置及び維持費用を低減することができる。また、バイオガスを原料とするため、天然ガスなどの化石資源の使用を低減することもできる。
【0049】
また、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、炭化水素生成部30に供給されるバイオガス中の二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量を計測する計測部50をさらに備える。そして、計測部50で計測される二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に応じた量の水素が炭化水素生成部30へ供給される。そのため、二酸化炭素と水素との比率が所定の範囲内になるように調整された混合ガスを炭化水素生成部30に供給することができ、バイオガス中の二酸化炭素から目的とする炭化水素を効率よく生成することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る炭化水素生成システム1について
図4を用いて説明する。
【0051】
図4に示すように、炭化水素生成システム1は、第1実施形態に係る炭化水素生成システム1と同様に、バイオリアクタ10、精製部20、炭化水素生成部30、水素供給部40、計測部50及び制御部60を備えている。さらに、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、二酸化炭素回収装置70、炭化水素プレ生成部35、水素供給部45、計測部51及び制御部61を備えている。
【0052】
バイオリアクタ10、精製部20、炭化水素生成部30、水素供給部40、計測部50及び制御部60については、第1実施形態に係る炭化水素生成システム1と同様であるため、説明を省略する。また、炭化水素プレ生成部35、水素供給部45、計測部51、及び制御部61については、上述した炭化水素生成部30、水素供給部40、計測部50及び制御部60と同様であるため、説明を省略する。また、水素供給部45は水素生成部46及び水素タンク47を含んでおり、水素生成部46及び水素タンク47は、水素生成部41及び水素タンク42と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
二酸化炭素回収装置70は、二酸化炭素発生源から排出される二酸化炭素を含有するガスから二酸化炭素を回収する。二酸化炭素発生源は、例えば、燃料が燃焼されることによって二酸化炭素を排出する発電所及び工場などである。二酸化炭素回収装置70は、回収対象となる二酸化炭素を含有するガスから、回収対象となるガスよりも高い二酸化炭素濃度のガスを放散する。二酸化炭素回収装置70は、例えば、化学吸収法、圧力スウィング吸着法、温度スウィング吸着法、又は膜分離濃縮法などによって二酸化炭素を回収することができる。
【0054】
二酸化炭素回収装置70から放散される二酸化炭素の濃度は、バイオガス中の二酸化炭素濃度よりも大きくてもよい。二酸化炭素回収装置70によって放散されるガスは、例えばモル比で90%以上の二酸化炭素を含有する。二酸化炭素回収装置70から放散される二酸化炭素の濃度は、モル比で95%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0055】
二酸化炭素回収装置70から放散される高濃度の二酸化炭素は、炭化水素プレ生成部35に供給される。炭化水素プレ生成部35に供給されるガス中の二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量は、計測部51によって計測される。水素供給部45は、水素供給部40と同様に、計測部51で生成された二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に関連する信号に基づいて水素供給量を調整してもよい。制御部61は、制御部60と同様に、計測部51で生成された信号に基づいて水素供給部45が供給する水素の量を算出してもよい。制御部61は、制御部60と同様に、算出された量の水素が炭化水素プレ生成部35に供給されるように水素供給部45を制御してもよい。制御部61は、制御部60と同様に、水素生成部46及び水素タンク47の少なくともいずれか一方の水素供給量を制御してもよい。そして、計測部51で計測される二酸化炭素の濃度及びバイオガスの流量に応じた量の水素は、炭化水素プレ生成部35へ供給される。
【0056】
炭化水素プレ生成部35は、バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成してもよい。炭化水素プレ生成部35で生成される炭化水素は、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。炭化水素プレ生成部35は、炭化水素生成部30と同様に、メタネーション装置及びFT合成装置の少なくともいずれか一方を含んでもよい。また、メタネーション装置は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。同様に、FT合成装置は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。メタネーション装置及びFT合成装置が複数の反応器を含む場合、各反応器は直列に配置されてもよく、並列に配置されてもよい。
【0057】
炭化水素プレ生成部35と炭化水素生成部30とを接続する配管には冷却器81及び気液分離器82が設けられていてもよい。炭化水素プレ生成部35で生成された生成物は、冷却器81によって冷却され、生成物に含まれる水分が凝縮し、気液分離器82で生成物から水分が除去される。水分が除去された生成物は炭化水素生成部30に供給される。
【0058】
炭化水素生成部30は、炭化水素プレ生成部35から排出される未反応の二酸化炭素、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成してもよい。炭化水素生成部30で生成される炭化水素は、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。炭化水素生成部30は、上記実施形態と同様に、メタネーション装置31及びFT合成装置32の少なくともいずれか一方を含んでもよい。また、メタネーション装置31は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。同様に、FT合成装置32は、単一の反応器のみを含んでいてもよく、複数の反応器を含んでいてもよい。メタネーション装置31及びFT合成装置32が複数の反応器を含む場合、各反応器は直列に配置されてもよく、並列に配置されてもよい。
【0059】
炭化水素生成部30で生成された生成物を排出する排出口には、接続配管が設けられ、接続配管には冷却器83及び気液分離器84が設けられていてもよい。炭化水素生成部30で生成された生成物は、冷却器83によって冷却されて水分が凝縮し、気液分離器84で水分が除去される。
【0060】
炭化水素生成部30で生成された生成物には高濃度の炭化水素が含まれているため、そのまま工場内のエネルギー源として使用したり、都市ガスとして直接供給したりすることができる。また、オレフィンなどの炭化水素は、プラスチックの原料として使用することができる。炭化水素生成部30は上述したような分離装置で各種炭化水素が分離されてもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタ10と、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部30とを備える。炭化水素生成部30では二酸化炭素から炭化水素が生成されるため、バイオガスに含まれる二酸化炭素を、化学吸収法などを用いた二酸化炭素回収装置などで分離せずに有価物として利用することができる。また、バイオガスを原料とするため、天然ガスなどの化石資源の使用を低減することもできる。
【0062】
また、炭化水素生成システム1は、バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素プレ生成部35をさらに備えてもよい。炭化水素生成部30は、炭化水素プレ生成部35から排出される未反応の二酸化炭素、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成してもよい。
【0063】
これにより、炭化水素プレ生成部35で二酸化炭素が消費され、炭化水素プレ生成部35に供給されるよりも低い二酸化炭素濃度のガスが炭化水素生成部30に供給される。炭化水素プレ生成部35での二酸化炭素の分圧は高いため、炭化水素を効率的に生成することができる。また、炭化水素プレ生成部35から未反応の二酸化炭素も排出されるため、バイオガスに近い組成のガスを炭化水素生成部30に供給することができる。
【0064】
また、炭化水素プレ生成部35はメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含み、炭化水素生成部30はメタネーションによってメタンを生成するメタネーション装置を含んでもよい。これにより、高濃度の二酸化炭素を含むガス及びバイオガスから高濃度のメタンを含むガスを効率的に生成することができる。したがって、このようなガスを既存のガス導管に注入することによって、都市ガスとしての利用することが容易になる。
【0065】
炭化水素プレ生成部35がメタネーション装置を含み、炭化水素プレ生成部35での二酸化炭素転化率を70%、80%及び90%とした場合の炭化水素生成部30の入口のガス組成は以下の通りである。なお、ガス組成は、CO2+4H2→CH4+2H2Oの反応式に基づいてモル比で算出し、水は気液分離器82によって除去されたものと仮定した。
【0066】
【0067】
表1に示すように、炭化水素プレ生成部35から炭化水素生成部30に供給されるガスには、バイオガスと同様に、メタン及び二酸化炭素が含まれる。そのため、炭化水素プレ生成部35で生成される生成物を炭化水素生成部30に供給することにより、炭化水素プレ生成部35に供給されるガスよりもバイオガスに近い二酸化炭素濃度のガスを炭化水素生成部30に供給することができる。なお、バイオガスの組成に近づける観点から、炭化水素プレ生成部35の二酸化炭素転化率は80%以上であることが好ましい。
【0068】
炭化水素プレ生成部35は単一の反応器を含み、単一の反応器によって炭化水素生成部30に供給されるガスをバイオガスの組成に近づけてもよい。また、炭化水素プレ生成部35は複数の反応器を含み、複数の反応器によって炭化水素生成部30に供給されるガスをバイオガスの組成に近づけてもよい。なお、バイオガスの組成が近いとは、例えば、炭化水素プレ生成部35で生成され、炭化水素生成部30に供給されるガス中のメタン濃度が、バイオガスのメタン濃度に対して-10%~+10%の範囲内であることを意味する。
【0069】
なお、本実施形態においては、水素供給部40から炭化水素生成部30に供給される水素の供給量が制御部60によって制御されており、水素供給部45から炭化水素プレ生成部35に供給される水素の供給量が制御部61によって制御されている。しかしながら、共通する1つの水素供給部から炭化水素生成部30及び炭化水素プレ生成部35に水素が供給されてもよい。同様に、共通する1つの制御部によって水素供給部40及び水素供給部45の水素供給量が制御されてもよい。また、二酸化炭素回収装置70から排出されるガス中の二酸化炭素濃度は、バイオガス中の二酸化炭素濃度よりも変動が小さい傾向にある。そのため、炭化水素生成システム1は、計測部51及び制御部61を備えていなくてもよい。
【0070】
また、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタ10と、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部30とを備える。これにより、バイオガスに含まれる二酸化炭素を分離せずに有価物として利用することができる。そのため、炭化水素生成システム1は、計測部50及び制御部60を備えていなくてもよい。
【0071】
すなわち、炭化水素生成システム1は、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを生成するバイオリアクタ10と、バイオガスよりも二酸化炭素濃度が高いガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素プレ生成部35とを備えていてもよい。さらに、炭化水素生成システム1は、炭化水素プレ生成部35から排出される未反応の二酸化炭素、バイオガス及び水素を含む原料から炭化水素を生成する炭化水素生成部30を備えていてもよい。このような炭化水素生成システム1によっても、バイオガスに含まれる二酸化炭素を分離せずに有価物として利用することができる。また、炭化水素を効率的に生成することができ、バイオガスに近い組成のガスを炭化水素生成部30に供給することができる。
【0072】
特願2020-106800号(出願日:2020年6月22日)の全内容は、ここに援用される。
【0073】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 炭化水素生成システム
10 バイオリアクタ
30 炭化水素生成部
31 メタネーション装置
32 FT合成装置
35 炭化水素プレ生成部
50 計測部