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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】遠隔自動運転システムおよびサーバ
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231129BHJP
   B62D 65/18 20060101ALI20231129BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20231129BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20231129BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20231129BHJP
【FI】
G08G1/09 V
B62D65/18 Z
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023049333
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安山 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-017214(JP,A)
【文献】特開2021-062790(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/30
B62D 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔自動運転システムであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え
前記経由地情報は、前記経由地が前記遠隔制御を実行可能であるか否かに関する情報を含み、
前記無効化指示部は、
前記経由地で前記遠隔制御が実行不可である場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示し、
前記遠隔制御を実行可能なすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する、
遠隔自動運転システム。
【請求項2】
遠隔自動運転システムであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記経由地情報は、前記経由地で前記遠隔制御が実行されるか否かに関する情報を含み、
前記無効化指示部は、
前記経由地で前記遠隔制御が実行されない場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示し、
前記遠隔制御が実行されるすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する、
遠隔自動運転システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遠隔自動運転システムであって、
前記経由地情報は、前記経由地で前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する経由地無効化指示部を、前記経由地が備えるか否かに関する情報を含み、
前記無効化指示部は、前記経由地が前記経由地無効化指示部を備えない場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する、
遠隔自動運転システム。
【請求項4】
遠隔自動運転システムであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように前記無効化実行部に指示し、
前記無効化タイミングは、前記少なくとも一の経由地における前記遠隔制御が完了したタイミングである、
遠隔自動運転システム。
【請求項5】
遠隔自動運転システムであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記無効化実行部は、前記車両に備えられ、
前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、前記車両に備えられる無効化実行部に、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように指示し、
前記無効化タイミングは、前記少なくとも一の経由地における前記遠隔制御が完了したタイミングである、
遠隔自動運転システム。
【請求項6】
さらに、前記経由地情報を更新する経由地情報管理部を備える、請求項1,請求項2,請求項4,および請求項5のうちのいずれか一項に記載の遠隔自動運転システム。
【請求項7】
サーバであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え
前記経由地情報は、前記経由地が前記遠隔制御を実行可能であるか否かに関する情報を含み、
前記無効化指示部は、
前記経由地で前記遠隔制御が実行不可である場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示し、
前記遠隔制御を実行可能なすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する、
サーバ。
【請求項8】
サーバであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記経由地情報は、前記経由地で前記遠隔制御が実行されるか否かに関する情報を含み、
前記無効化指示部は、
前記経由地で前記遠隔制御が実行されない場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示し、
前記遠隔制御が実行されるすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する、
サーバ。
【請求項9】
サーバであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように前記無効化実行部に指示し、
前記無効化タイミングは、前記少なくとも一の経由地における前記遠隔制御が完了したタイミングである、
サーバ。
【請求項10】
サーバであって、
車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、
前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備え、
前記無効化実行部は、前記車両に備えられ、
前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、前記車両に備えられる無効化実行部に、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように指示し、
前記無効化タイミングは、前記少なくとも一の経由地における前記遠隔制御が完了したタイミングである、
サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔自動運転システムおよびサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両を製造するための製造システムにおいて、遠隔制御によって、車両を製造システムの組立ラインの終端から製造システムの駐車場まで走行させる車両走行方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔制御の機能は、車両を製造する工場から出荷する時点で無効化されることが検討されている。しかしながら、例えば、出荷後の経由地における車両の駐車や船舶の積み込みなど、出荷後における遠隔制御の要請がある。そのため、出荷後に遠隔制御が実行でき、かつ適正に無効化を実行するための技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]
本開示の一形態によれば、遠隔自動運転システムが提供される。この遠隔自動運転システムは、車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備える。前記経由地情報は、前記経由地が前記遠隔制御を実行可能であるか否かに関する情報を含む。前記無効化指示部は、前記経由地で前記遠隔制御が実行不可である場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示し、前記遠隔制御を実行可能なすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、遠隔自動運転システムが提供される。この遠隔自動運転システムは、車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備える。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせて遠隔制御の無効化を実行することができる。したがって、出荷後に遠隔制御が実行でき、かつ適正に遠隔制御の無効化を実行することができる。
(2)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記経由地情報は、前記経由地が前記遠隔制御を実行可能であるか否かに関する情報を含んでよい。前記無効化指示部は、前記経由地で前記遠隔制御が実行不可である場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御を無効化するタイミングを、出荷後の経由地での遠隔制御の実施可能性に合わせたタイミングに決定することができる。
(3)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記無効化指示部は、前記遠隔制御を実行可能なすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせた適正なタイミングで無効化処理を実行することができる。
(4)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記経由地情報は、前記経由地で前記遠隔制御が実行されるか否かに関する情報を含んでよい。前記無効化指示部は、前記経由地で前記遠隔制御が実行されない場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御を無効化するタイミングを、出荷後の経由地が遠隔制御を実行するか否か合わせたタイミングに決定することができる。
(5)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記無効化指示部は、前記遠隔制御が実行されるすべての経由地での前記遠隔制御が完了したタイミングで前記無効化処理を実行するように、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせた適正なタイミングで無効化処理を実行することができる。
(6)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記経由地情報は、前記経由地で前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する経由地無効化指示部を、前記経由地が備えるか否かに関する情報を含んでよい。前記無効化指示部は、前記経由地が前記経由地無効化指示部を備えない場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、遠隔制御を無効化するタイミングを、出荷後の経由地での経由地無効化指示部の有無に合わせたタイミングに決定することができる。
(7)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように前記無効化実行部に指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせた適正なタイミングで無効化処理を実行することができる。
(8)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、前記無効化実行部は、前記車両に備えられてよい。前記無効化指示部は、前記経由地情報を用いて前記遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、前記車両に備えられる無効化実行部に、決定された前記無効化タイミングで前記無効化処理を実行するように指示してよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、無効化タイミングでの経由地制御装置等の外部の装置との通信を行うことなく無効化処理を実行することができる。
(9)上記形態の遠隔自動運転システムにおいて、さらに、前記経由地情報を更新する経由地情報管理部を備えてよい。
この形態の遠隔自動運転システムによれば、経由地の遠隔制御に関する情報を更新することにより、経由地の最新の状況に基づいて無効化タイミングを決定することができる。
(10)本開示の他の形態によれば、サーバが提供される。このサーバは、車両を製造する工場内の製造過程、および製造された前記車両を前記工場から出荷して目的地まで搬送する前記工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な前記車両であって、通信機能を有する通信部と、前記車両の運転制御を実行する運転制御部と、前記遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部とを備える前記車両を、前記遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、前記搬送過程において前記車両が経由する少なくとも一の経由地における前記遠隔制御に関する経由地情報を用いて前記無効化処理を実行するか否かを判定し、前記無効化処理を実行すると判定する場合に、前記無効化実行部に前記無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備える。
この形態のサーバによれば、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせて遠隔制御の無効化を実行することができる。したがって、出荷後に遠隔制御による車両の走行が実行でき、かつ適正に遠隔制御の無効化を実行することができる。
本開示は、遠隔自動運転システム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、車両、車両の製造方法、車両の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の遠隔自動運転システムの概略構成を示す説明図。
図2】サーバの内部機能構成を示すブロック図。
図3】製品情報の一例を示す説明図。
図4】経由地情報の一例を示す説明図。
図5】遠隔制御部の遠隔制御による車両の自動運転制御を示す説明図。
図6】車両の製造過程および搬送過程の概要を模式的に示した説明図。
図7】経由地制御装置の内部機能構成を示すブロック図。
図8】無効化処理の指示経路を模式的に示す説明図。
図9】工場内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図10】経由地での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図11】第2実施形態の遠隔自動運転システムの構成を模式的に示す説明図。
図12】第3実施形態の遠隔自動運転システムが実行する工場内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図13】第4実施形態の遠隔自動運転システムが実行する工場内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の遠隔自動運転システム500の概略構成を示す説明図である。遠隔自動運転システム500は、遠隔制御によって、車両100の自動運転を制御する。具体的には、遠隔自動運転システム500は、遠隔制御によって、車両100を製造する工場FC内の製造過程で車両100を自動走行させる。また、遠隔自動運転システム500は、製造過程で製造された車両100が工場FCから出荷されて、車両100の販売店などの目的地までの搬送過程において、工場FC外の経由地に設けられる経由地制御装置400を介して工場FC外の車両100を自動走行させることも可能である。本実施形態において、車両100は、例えば、乗用車、トラック、バス、ならびに工事用車両などである。本明細書では、製品として完成した状態と、製造途中の半製品・仕掛品の状態とを総じて「車両」と呼ぶ。
【0009】
図1に示すように、工場FCには、前工程50と、後工程60と、車両100の走路RTとが備えられている。走路RTは、前工程50と後工程60とを繋ぐ工場FC内の車両100の搬送区間である。工場FCは、1つの建物である場合や、1箇所の敷地や住所に存在する場合などには限定されず、例えば、製造過程における各工程が複数の建物、複数の敷地、複数の住所等に亘って存在してもよい。「工場FC内」には、車両100が完成してから、完成した車両100が出荷のために荷積みされる待機場所までの範囲も含まれる。また、「車両100が工場FC内を走行する」とは、車両100が、走路RTなど、複数の場所に存在する工程間の搬送区間を走行する場合を含み、工程内を走行する場合を含み、また、例えば、車両100が複数の場所に存在する工場の間を移動するために、私道に限らず工場の間の公道を走行する場合を含む。なお、以下の説明において、工場FCの所在地が日本国内である例を用いて説明する。
【0010】
前工程50は、例えば、車体に部品を組み付ける組み立て工程である。後工程60は、例えば、車両100の検査工程である。前工程50から払い出された車両100は、後工程60の仕掛品となり、走行先である後工程60へと走路RTを走行する。車両100は、後工程60への投入許可が得られると後工程60に投入される。車両100は、後工程60としての検査工程を終えると製品として完成され、後述するように、出荷を待機するための工場FC内の待機場所へと走行する。その後、車両100は、車両100ごとに対応する仕向国へと出荷される。「仕向国」とは、工場FCで製造された車両100の出荷先を意味する。
【0011】
前工程50および後工程60を含む工場FC内の各工程には、車両100の製造情報を管理するための工程管理装置が備えられている。「製造情報」には、例えば、工程による処理の進行状況、仕掛品の数、処理中の製品の数、工程ごとの製造時間、各工程による処理の開始時刻および完了時刻、各工程に存在する車両100の車両識別情報、1日の製造予定数、車両100を1台製造するための工程の目標製造時間などが含まれる。目標製造時間は、「タクトタイム」と呼ばれることがある。「車両識別情報」とは、車両100を個別に識別可能な種々の情報を意味する。車両識別情報には、例えば、車両100ごとに与えられるID情報、車両100の車種・色・形状などの仕様情報、車両100の仕掛かり中の工程の名称などの生産管理情報などが含まれる。車両識別情報は、例えば、車両100に付されたRF-ID(Radio Frequency-Identification:無線移動識別)タグ等から取得することができる。複数の車両100が、1ロットごとなどのグループ単位で製造される場合には、ロット番号などを車両識別情報とすることもできる。また、車両識別情報は、走路RT上の座標や工場FC内の座標など、工場FC内における車両100の位置情報などであってもよい。各工程の工程管理装置は、各工程に設けられる図示しないカメラやセンサなどから、各工程の車両100の製造状況を取得し、取得した製造状況をサーバ300に送信する。各工程の製造状況は、工場FCの各工程の製造状況を統括管理する生産管理装置に送信されてもよい。なお、前工程50および後工程60は、組み立て工程や検査工程に限らず、前工程50および後工程60による処理後の車両100が遠隔制御によって走行可能であれば種々の工程を採用することができる。
【0012】
車両100は、通信部190と、受電装置150と、バッテリ120と、PCU130と、モータ140と、ECU(Electronic Control Unit)180とを備えている。通信部190は、例えばドングルなど、車両100に搭載される無線通信装置である。通信部190は、車両100の制御などに用いられ得るCAN(Controller Area Network)通信、および故障診断などに用いられ得るダイアグノシス通信を用いて通信する通信機能を備えている。CAN通信は、多方向に送信または受信を行うことができる通信規格であり、ダイアグノシス通信は、要求と応答を1対1で対応付けることができる通信規格である。通信部190は、例えば、工場FC内のアクセスポイント70を介して、ネットワーク72に接続されたサーバ300や、車両100の生産情報を統括管理する図示しない生産管理装置、経由地制御装置400などの車両100の外部の装置との無線通信などを行う。通信部190は、車両100の遠隔制御の制御信号や遠隔制御を無効化する制御信号をサーバ300や経由地制御装置400から受信する。
【0013】
受電装置150は、外部の給電装置などから供給される交流電力を整流器によって直流電力に変換し、負荷としてのバッテリ120に供給する。バッテリ120は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの充電可能な二次電池である。バッテリ120は、例えば、数百Vの高電圧バッテリであり、車両100の走行に利用される電力を蓄えている。外部の給電装置から受電装置150に供給される電力、ならびにモータ140によって発電された回生電力がバッテリ120に供給されると、バッテリ120が充電される。
【0014】
モータ140は、例えば、交流同期モータであり、電動機および発電機として機能する。モータ140が電動機として機能するとき、モータ140は、バッテリ120に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ140の出力は、減速機および車軸を介して車輪に伝達される。車両100の減速時には、モータ140は、車輪の回転を利用する発電機として機能し、回生電力を発電する。モータ140とバッテリ120との間には、PCU(Power Control Unit)130が電気的に接続されている。
【0015】
PCU130は、インバータ、昇圧コンバータ、ならびにDC/DCコンバータを有している。インバータは、バッテリ120から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力をモータ140に供給する。インバータは、モータ140から供給される回生電力を直流電力に変換してバッテリ120に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力がモータ140に供給されるときに、バッテリ120の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ120に蓄えられた電力を補機等に供給する場合に、バッテリ120の電圧を降圧する。
【0016】
ECU180は、車両100に搭載され、車両100の各種の制御を実行する。ECU180は、HDD、光記録媒体、半導体メモリ等のメモリと、中央演算処理装置としてのCPUなどを備えている。CPUがメモリに格納された各種のコンピュータプログラムを実行することによって、無効化実行部182、運転制御部184などの各種の機能が実現される。運転制御部184は、車両100の運転制御を実行する。「運転制御」とは、例えば、加速度、速度、ならびに舵角の調整などである。遠隔制御による運転制御では、運転制御部184は、通信部190を介してサーバ300から受信した遠隔制御の制御信号に従い、車両100に搭載された各アクチュエータを制御する。また、ECU180は、PCU130を制御することによって、バッテリ120とモータ140との間の電力の授受を制御する。
【0017】
無効化実行部182は、車両100の遠隔制御を無効化する無効化処理を行う。より具体的には、無効化実行部182は、通信部190を介したダイアグノシス通信により、遠隔制御による運転制御の無効化を車両100に要求する無効化指示を、サーバ300の無効化指示部316、あるいは経由地制御装置400の経由地無効化指示部416から受信する。「遠隔制御による運転制御の無効化」とは、運転制御部184の機能のうち、遠隔制御にしたがって運転制御を実行する機能が失われることを意味する。無効化指示を受信した無効化実行部182は、遠隔制御の制御要求を無効化する状態とへ遷移する。遠隔制御による運転制御を無効化することにより、第三者からの不当な車両100の遠隔制御を防ぐことができる。遠隔制御の無効化には、所定の条件を満たす場合に無効化された遠隔制御を有効な状態に復元可能な可逆な無効化と、復元不能な不可逆な無効化とが含まれる。可逆な無効化は、例えば、運転制御部184の機能のうち、遠隔制御にしたがって運転制御を実行する機能を担うプログラムを暗号化し、所定の権限を有する者のみによって複合可能な状態にされることによって実現することができる。不可逆な無効化は、例えば、当該プログラムの削除や、当該機能を有するハードウェア等との接続を物理的に切断するなどの方法によって実現することができる。本実施形態では、特段の説明が無い限り、不可逆的な無効化を実行する例を用いて説明する。ECU180は、セキュリティ強化の観点から、さらに、FPGA(Field Programable Gate Array)およびフラッシュメモリなどを搭載したセキュアマイコン、およびHSM(Hardware Security Module)などを備えることが好ましい。
【0018】
遠隔自動運転システム500は、車両検出器と、サーバ300とを備えている。車両検出器は、車両100の位置や向きなどを検出する。本実施形態では、車両検出器は、カメラ80である。カメラ80は、走路RTと、走行する車両100とを撮像できる位置に固定されている。カメラ80は、走路RTに対する車両100の相対位置を確認可能な画像を取得する。カメラ80による撮像画像は、車両100の遠隔制御に利用される。カメラ80による撮像画像を用いることにより、カメラ、ミリ波レーダ、LiDARなどの車両100に搭載された検出器を用いることなく、遠隔制御による車両100の自動走行を実行することができる。ただし、遠隔自動運転システム500による遠隔制御中の衝突防止などのために、車両100に搭載された検出器が補助的に利用されてもよい。車両検出器は、工場FCに設置され、車両100の位置や向きが取得可能であれば、例えば、赤外線センサ、レーザセンサ、超音波センサ、ミリ波レーダ、LiDARなど、カメラ80以外の車両100を検出可能な種々の検出器が用いられてもよい。
【0019】
図2は、サーバ300の内部機能構成を示すブロック図である。サーバ300は、中央演算処理装置としてのCPU310と、記憶装置320と、通信部390とを備えており、これらは、内部バスやインターフェース回路等を介して相互に接続されている。通信部390は、ネットワーク72を介して車両100や経由地制御装置400などとの通信を行うための回路である。
【0020】
記憶装置320は、たとえば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等である。記憶装置320の読み書き可能な領域には、例えば、各工程あるいは生産管理装置から取得した製品情報322と、経由地制御装置400から取得した経由地情報324とが格納される。
【0021】
図3は、製品情報322の一例を示す説明図である。製品情報322には、車両識別情報ID1-ID4と、仕向国と、搬送過程において当該仕向国の目的地に到着するまでに経由する第一経由地および第二経由地との対応関係が示されている。図3の例では、車両識別情報ID1を有する車両100は、経由地として第一港PT1および第二港PT2を経由して米国の販売店へと出荷される。車両識別情報ID2を有する車両100は、第三港PT3のみを経由して日本国内の販売店へと出荷される。なお、経由地は、第一経由地と第二経由地との2つの経由地が設定される場合に限らず、単数や3以上の複数の経由地が設定されてもよい。製品情報322は、経由地制御装置400に共有され、経由地制御装置400に製品情報422として格納される。
【0022】
図4は、経由地情報324の一例を示す説明図である。経由地情報324には、経由地ごとの遠隔制御に関する情報が示されている。「遠隔制御の可否」とは、例えば、遠隔制御のための基盤(infrastructure)が整備されているか否かであり、遠隔制御による車両100の自動走行を各経由地が実行できるか否かを示している。遠隔制御のための基盤とは、例えば、車両100との通信機能や車両検出器など、車両100の遠隔制御に用いられる設備、車両100が走行できる走路などである。なお、経由地情報324は、経由地制御装置400が取得する製品情報422が共有されることによって取得され、経由地制御装置400によって逐次に最新の状態に更新される。
【0023】
「遠隔制御の実施」とは、経由地が遠隔制御を実施するか否かを示している。「経由地無効化指示部の有無」とは、各経由地の経由地制御装置400が経由地無効化指示部416を備えているか否かを示している。なお、経由地情報324には、「遠隔制御の可否」、「遠隔制御の実施」、「経由地無効化指示部の有無」のすべての項目が含まれなくてもよく、これらの項目のうち少なくともいずれか一つの項目が含まれればよく、これらの項目が任意に組み合わせられてもよい。
【0024】
図4の例では、第一港PT1、第二港PT2、第五港PT5は、遠隔制御が「可」であり、遠隔制御の実施が「する」であり、経由地無効化指示部の有無が「あり」である。したがって、第一港PT1、第二港PT2、第五港PT5では、遠隔制御による車両100の自走搬送が実行され得る。第三港PT3では、遠隔制御が「可」であるが、遠隔制御の実施は「しない」状態である。第四港PT4では、メンテナンス中につき遠隔制御が「不可」の状態である。第六港PT6では、経由地無効化指示部の有無が「なし」の状態である。したがって、第三港PT3、第四港PT4、第六港PT6では、遠隔制御による車両100の自走搬送は行われない。
【0025】
図2に戻り、記憶装置320には、本実施形態において提供される機能を実現するための各種プログラムが格納されている。記憶装置320に記憶されたコンピュータプログラムがCPU310によって実行されることにより、CPU310は、遠隔制御部312、無効化指示部316、ならびに経由地情報取得部318などとして機能する。これらの機能の一部または全部はハードウェア回路によって構成されてもよい。経由地情報取得部318は、経由地制御装置400から経由地情報324を取得する。
【0026】
無効化指示部316は、工場FC内の車両100の無効化実行部182に無効化処理の実行を指示する。無効化指示部316は、車両100が経由地などの工場FC外にある場合には、経由地制御装置400が有する経由地無効化指示部416に無効化処理の実行を車両100に指示するための指示を行う。本実施形態では、無効化指示部316は、さらに、搬送過程における遠隔制御に関する情報を用いて、車両100の遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定する。無効化指示部316は、決定された無効化タイミングで無効化処理を実行するように無効化実行部182または経由地無効化指示部416に指示する。
【0027】
無効化指示部316は、「搬送過程における遠隔制御に関する情報」として、図3および図4で示した車両100の製品情報322および経由地情報324を参照する。製品情報322を参照することにより、仕向国および経由地を、車両100ごとに取得することができる。さらに、経由地情報324を参照することにより、無効化処理が実行される無効化タイミングを、車両100ごとに決定することができる。
【0028】
遠隔制御部312は、遠隔制御によって、工場FC内の車両100の自動走行を実行する。より具体的には、遠隔制御部312は、通信部390を介して、車両100の遠隔制御を要求する制御信号を車両100に送信する。車両100が遠隔制御の要求を受け付けると、ECU180によって制御信号に従った運転制御が実現され、この結果、車両100が自動的に走行する。遠隔制御による自動走行を利用した車両100の搬送を、「自走搬送」とも呼ぶ。車両100の自走搬送により、車両100が走行する際の人為的な事故を抑制または防止することができる。
【0029】
図5は、遠隔制御部312の遠隔制御による車両100の自動運転制御を示す説明図である。図5の例では、走路RTは、互いに連続する第一走路RT1と、第二走路RT2と、第三走路RT3と、第四走路RT4とを含んでいる。第一走路RT1と、第二走路RT2とは、直角のカーブを介して互いに接続されている。第三走路RT3と、第四走路RT4との間には、駐車場PAが接続されている。遠隔制御部312は、通常時には、車両100を走路RTに沿って後工程60への投入位置PGまで走行させる。
【0030】
車両検出器としてのカメラ80は、図5に示すように、走路RTおよび駐車場PAの車両100を上方から俯瞰する画像を取得する。カメラ80の数は、カメラ80の画角などを考慮して、走路RTおよび駐車場PAの全体を撮像することが可能な数で設定されている。図5の例では、カメラ80は、第一走路RT1の全体を含む範囲RG1を撮像可能なカメラ801と、第二走路RT2の全体を含む範囲RG2を撮像可能なカメラ802と、第三走路RT3および第四走路RT4の全体を含む範囲RG3を撮像可能なカメラ803と、駐車場PAの全体を含む範囲RG4を撮像可能なカメラ804とを含んでいる。なお、カメラ80は、車両100の上方からの画像に限らず、車両100の前方、後方、側方などからの画像を取得してもよい。また、これらの画像を取得するカメラが任意に組み合わせられてもよい。
【0031】
走路RTには、車両100が走行すべき目標ルートが予め設定されている。遠隔制御部312は、カメラ80によって取得される走路RTと車両100との画像を所定の時間間隔で解析しながら、ECU180に車両100の運転制御を実行させる。遠隔制御部312が目標ルートに対する車両100の相対位置を逐次に調節することによって、車両100は、目標ルートに沿って走行することができる。なお、遠隔制御には、車両100全体の画像が用いられてもよく、車両100に設けられるアライメントマークなど、車両100の一部の画像が用いられてもよい。
【0032】
図5に示す位置P1のように、各走路の接続位置では、接続される各走路に対応するカメラ80の画角が互いに重複するように構成されている。位置P1の例では、第一走路RT1に対応するカメラ801の画角と、第二走路RT2に対応するカメラ802の画角とが互いに重複する。前工程50から払い出された車両100は、カメラ801の撮像画像を利用した遠隔制御によって位置P1まで走行する。位置P1に到達すると、カメラ801に代えてカメラ802が取得する撮像画像を用いた遠隔制御に切り替えられ、車両100は、第二走路RT2を走行する。同様に、第三走路RT3および第四走路RT4の走行にはカメラ803による撮像画像が用いられ、駐車場PAの走行にはカメラ804による撮像画像が用いられる。このように、遠隔制御部312は、解析する撮像画像を走路RTの範囲ごとに適宜に切り替えながら車両100の遠隔制御を行う。遠隔制御部312は、遠隔制御により、車両100を走路RTから駐車場PAへと走行させて、走路RTから待避させることができ、さらに、駐車場PAの駐車位置P2に停車させることができる。
【0033】
図6は、車両100の製造過程および搬送過程の概要を模式的に示した説明図である。図6に示すように、「工場FC内」には、図6の左端に示す前工程50および後工程60を含む車両100の製造工程から、完成した車両100が車両運搬車CC1などによる荷積みを待機する待機場所FGまでが含まれる。「工場FC外」には、車両100が車両運搬車CC1に荷積みされてから、図5の右端の販売店DLに到達するまでが含まれる。以下、特に断らない限りにおいて、図3および図4で示した米国への出荷を例に用いて説明する。
【0034】
図6には、日本国内の工場FCで製造されたあとに、第一経由地および第二経由地を経由して仕向国である米国の販売店DLへと出荷される過程が模式的に示されている。第一経由地と、第二経由地とのそれぞれには、経由地制御装置400が設けられている。製造過程で完成された車両100は、待機場所FGで車両運搬車CC1に荷積みされると、搬送過程へと移行する。荷積みされた車両100は、車両運搬車CC1により、第一経由地の一例である第一港PT1まで輸送される。第一港PT1では、所定の開始位置PS1から自走搬送によって、輸送船SHの待機位置PG1まで走行して船積みされる。船積みされた車両100は、輸送船SHにより、第二経由地の一例である第二港PT2まで輸送される。第二港PT2に到達した車両100は、所定の開始位置PS2から自走搬送によって、待機位置PG2まで走行する。車両100は、車両運搬車CC2に荷積みされて販売店DLまで輸送される。
【0035】
図7は、経由地制御装置400の内部機能構成を示すブロック図である。経由地制御装置400は、中央演算処理装置としてのCPU410と、記憶装置420と、通信部490とを備えており、これらは、内部バスやインターフェース回路等を介して相互に接続されている。通信部490は、ネットワーク72を介して、車両100、サーバ300、ならびに異なる経由地の経由地制御装置400などとの通信を行うための回路である。
【0036】
記憶装置420は、たとえば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)等である。記憶装置420に記憶されたコンピュータプログラムがCPU410によって実行されることにより、CPU410は、経由地遠隔制御部412、経由地無効化指示部416、ならびに経由地情報管理部418などとして機能する。記憶装置420の読み書き可能な領域には、例えば、製品情報422と、経由地情報424とが格納される。製品情報422は、サーバ300に格納されている製品情報322と略同じデータであり、サーバ300から共有される。
【0037】
経由地遠隔制御部412は、遠隔制御部312と同様の機能を有しており、遠隔制御によって、経由地の車両100の自動走行を実現する。経由地遠隔制御部412は、通信部490を介して、車両100の遠隔制御を要求する制御信号を車両100に送信する。
【0038】
図6の例では、第一港PT1の経由地制御装置400が有する経由地遠隔制御部412は、遠隔制御によって、第一港PT1で車両100を自動走行させることができる。具体的には、経由地遠隔制御部412は、第一港PT1の開始位置PS1から、船積み後の待機位置PG1までの自走搬送を実現する。第二港PT2の経由地制御装置400が有する経由地遠隔制御部412は、遠隔制御によって、第二港PT2で車両100を自動走行させることができる。具体的には、経由地遠隔制御部412は、第二港PT2の開始位置PS2から待機位置PG2までの自走搬送を実現する。
【0039】
経由地情報管理部418は、経由地情報424を管理する。経由地情報管理部418は、例えば、経由地制御装置400による自動更新やユーザからの入力を受け付けて、経由地情報424を更新する。経由地情報管理部418は、経由地情報424をサーバ300や他の経由地の経由地制御装置400に、更新した経由地情報424を共有する。これにより、サーバ300や他の経由地の経由地制御装置400との間で最新の経由地情報424を共有することができる。
【0040】
経由地無効化指示部416は、無効化指示部316と同様の機能を有しており、経由地の車両100の無効化実行部182に無効化処理の実行を指示する。経由地無効化指示部416は、サーバ300の無効化指示部316からの無効化指示にしたがって、車両100に無効化処理の実行を指示する。経由地無効化指示部416は、サーバ300の無効化指示部316からの無効化指示に代えて、またはそれとともに、記憶装置420に格納された製品情報422と経由地情報424とを用いて無効化タイミングを決定し、決定された無効化タイミングにしたがって車両100に運転制御の無効化の要求を送信してもよい。
【0041】
図8は、無効化処理の指示経路を模式的に示す説明図である。図8に示すように、工場FC内の車両100の無効化処理を実行する場合には、サーバ300の無効化指示部316が、ダイアグノシス通信により、車両100の無効化実行部182に無効化処理の実行を指示する。無効化要求を受信した無効化実行部182は、遠隔制御の制御要求を無効化する。
【0042】
経由地の車両100の無効化処理を実行する場合には、サーバ300の無効化指示部316が、経由地制御装置400の経由地無効化指示部416に無効化処理を実行させるための指示を行う。経由地無効化指示部416は、ダイアグノシス通信により、車両100の無効化実行部182に無効化処理の実行を指示する。無効化要求を受信した無効化実行部182は、遠隔制御の制御要求を無効化する。
【0043】
図9は、本実施形態の遠隔自動運転システム500が実行する工場FC内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、検査工程としての後工程60による処理の完了を受け付けた無効化指示部316により開始される。本フローは、車両100が工場FC内の待機場所FGに到着したことを無効化指示部316が受け付けたことによって開始されてもよい。
【0044】
ステップS10では、遠隔制御により後工程60から走行を開始した車両100は、工場FC内の出荷の待機場所FGに到着する。なお、後工程60から待機場所FGまでが自走搬送されない場合には、本フローは、工場FC内の遠隔制御によるすべての自動搬送が完了したタイミングで開始されてもよい。
【0045】
ステップS20では、無効化指示部316は、製品情報322および経由地情報324を参照して、車両100の遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定する。無効化指示部316は、決定された無効化タイミングで、無効化処理の実行を指示する制御信号を生成する。本実施形態において、無効化タイミングは、製造過程および搬送過程における遠隔制御がすべて完了したタイミングである。無効化タイミングは、製造過程および搬送過程における残りすべての経由地で車両100の遠隔制御が実行されなくなったタイミングということもできる。無効化指示部316は、製品情報322を参照して、車両100の車両識別情報に対応する経由地を取得する。無効化指示部316は、取得した経由地に対応する遠隔制御の可否、遠隔制御の実施、ならびに経由地無効化指示部416の有無を参照し、遠隔制御が完了するタイミングを無効化タイミングとして決定する。
【0046】
無効化指示部316は、出荷後の経由地の少なくともいずれかで車両100の遠隔制御が実行される場合には、無効化タイミングを、最後に遠隔制御が実行される経由地での遠隔制御が完了したタイミングに決定する。なお、当該タイミングよりも後の所定のタイミングを無効化タイミングとしてもよい。また、経由地制御装置400が無効化タイミングを取得するか、あるいは経由地制御装置400が製品情報422を参照して無効化タイミングを決定することによって、経由地無効化指示部416が当該無効化タイミングで無効化処理を実行してもよい。
【0047】
図3および図4で示したように、車両識別情報ID1の車両100が米国へ出荷される例では、第二経由地である第二港PT2で最後の遠隔制御が実行される。そのため、無効化指示部316は、無効化タイミングを、遠隔制御を実行可能なすべての経由地で遠隔制御が完了したタイミングである第二港PT2での遠隔制御の完了時点に決定する。
【0048】
車両識別情報ID2の車両100が日本国内に出荷される例では、第一経由地である第三港PT3で遠隔制御の実施がされない。すなわち、出荷後のすべての経由地で車両100の遠隔制御が実行されないため、無効化指示部316は、無効化タイミングを、工場FC内の待機場所FGに到着した時点に決定する。この場合には、無効化指示部316は、無効化処理を実行するための制御信号を生成し、車両100の無効化実行部182に送信する。
【0049】
車両識別情報ID3の車両100が欧州に出荷される例では、第四港PT4で遠隔制御が不可であるが、第五港PT5で遠隔制御が実行される。そのため、無効化指示部316は、無効化タイミングを第五港PT5での遠隔制御の完了時点に決定する。車両識別情報ID4の車両100が中国に出荷される場合には、第六港PT6に経由地無効化指示部416が備えられない。そのため、無効化指示部316は、無効化タイミングを工場FC内の待機場所FGに到着した時点に決定する。
【0050】
ステップS30では、待機場所FGの車両100において、無効化実行部182は、無効化指示部316からの無効化処理を実行するための制御信号の受信を待機する。無効化指示を受信した場合(S30:YES)、処理をステップS50に移行する。ステップS50では、運転制御部184により、遠隔制御による運転制御が無効化される。さらに、無効化処理の実行結果が、サーバ300や経由地制御装置400に出力されてもよい。
【0051】
無効化指示を取得しなかった場合には(S30:NO)、無効化実行部182は、処理をステップS40に移行し、予め定められた時間が経過するまで、無効化指示の指令信号の受信を待機する。予め定められた時間内に無効化指示を受信できなければ(S40:YES)、無効化実行部182は、無効化処理を実行することなく、処理を終了させる。
【0052】
図10は、本実施形態の遠隔自動運転システム500が実行する経由地での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、車両100が経由地に到着したことを検出した無効化指示部316あるいは経由地無効化指示部416によって開始される。無効化指示部316あるいは経由地無効化指示部416は、例えば、RF-IDタグ等から車両識別情報を取得し、処理の対象となる車両100を識別することによって、車両100の経由地への到着を検出する。
【0053】
ステップS100では、無効化処理の対象となる車両100が経由地の開始位置PS2に到着する。ステップS110では、到着した車両100が遠隔制御による自走搬送の対象の車両100であるか否かを確認する。車両100が遠隔制御の対象であるか否かは、例えば、車両100から取得される車両識別情報と、製品情報422とを照合することなどによって判定することができる。車両100が遠隔制御の対象であれば(S110:YES)、車両100は、経由地遠隔制御部412の遠隔制御にしたがった運転制御によって、目的値である待機位置PG2まで自動走行する。遠隔制御の対象でなければ(S110:NO)、車両100は、例えば、経由地の作業員などの手動運転にしたがった運転制御によって、待機位置PG2まで走行する。
【0054】
ステップS120では、車両100は、待機位置PG2に到着する。ステップS140では、無効化指示部316は、車両100の待機位置PG2への到着が、決定された無効化タイミングであるか否かを確認する。車両100の無効化タイミングでなければ(S140:NO)、無効化することなく処理を終了する。車両100が無効化タイミングであれば(S140:YES)、経由地無効化指示部416は、無効化指示部316からの遠隔制御を無効化するための指令信号の受信を待機する。経由地無効化指示部416は、無効化を実行するための指令信号を受信すると、車両100の無効化実行部182に無効化処理を実行させて、処理を終了する。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態の遠隔自動運転システム500は、車両100を遠隔制御によって走行させる遠隔制御部312と、車両100の遠隔制御を不可逆的に無効化する無効化処理を実行する無効化実行部182と、経由地情報324を用いて無効化処理を実行するか否かを判定し、無効化処理を実行すると判定する場合に、無効化実行部182または経由地無効化指示部416に無効化処理の実行を指示する無効化指示部316と、を備えている。出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせて遠隔制御の無効化することができる。したがって、出荷後に遠隔制御が実行でき、かつ適正に無効化を実行することができる。
【0056】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、経由地情報は、経由地が遠隔制御を実行可能であるか否かに関する情報を含み、無効化指示部316は、搬送過程における経由地で遠隔制御が実行不可である場合に、無効化処理を実行するように、無効化実行部182または経由地無効化指示部416に指示する。したがって、無効化するタイミングを、出荷後の経由地での遠隔制御の実施可能性に合わせたタイミングに決定することができる。
【0057】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、経由地情報は、経由地で遠隔制御が実行されるか否かに関する情報を含み、無効化指示部316は、搬送過程における経由地で遠隔制御が実行されない場合に、無効化処理を実行するように、無効化実行部182または経由地無効化指示部416に指示する。したがって、無効化するタイミングを、出荷後の経由地が遠隔制御を実行するか否か合わせたタイミングに決定することができる。
【0058】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、経由地情報324は、経由地が経由地無効化指示部416を備えるか否かに関する情報を含み、無効化指示部316は、搬送過程における経由地が経由地無効化指示部416を備えない場合に、無効化処理を実行するように、無効化実行部182または別の経由地の経由地無効化指示部416に指示する。したがって、無効化するタイミングを、出荷後の経由地での経由地無効化指示部416の有無に合わせたタイミングに決定することができる。
【0059】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、無効化指示部316は、遠隔制御を実行可能なすべての経由地で遠隔制御が完了したタイミングで無効化処理を実行するように、無効化実行部182または経由地無効化指示部416に指示する。したがって、搬送過程のすべての遠隔制御が完了した最先のタイミングで無効化することができ、遠隔制御の安全性を早期に確保することができる。
【0060】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、無効化指示部316は、経由地情報324を用いて遠隔制御を無効化する無効化タイミングを決定し、経由地無効化指示部416または無効化実行部182に、決定された無効化タイミングで無効化処理を実行するように指示する。したがって、出荷後の搬送過程での遠隔制御の要請に合わせた適正なタイミングで無効化処理を実行することができる。したがって、出荷後の遠隔制御を実行しつつ、無効化による遠隔制御の安全性を早期に確保することができる。
【0061】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、さらに、経由地情報424を更新する経由地情報管理部418を備える。経由地の遠隔制御に関する情報を更新することにより、経由地の最新の状況に基づいて無効化タイミングを決定することができる。
【0062】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態にかかる遠隔自動運転システム500の構成を模式的に示す説明図である。本実施形態の遠隔自動運転システム500の構成は、第1実施形態の構成と同様である。上記第1実施形態では、経由地で車両100の無効化処理を実行する場合には、サーバ300の無効化指示部316が、経由地制御装置400の経由地無効化指示部416に無効化処理の実行を車両100に指示させるための指示を送信する例を示した。これに対して、本実施形態では、図11に示すように、無効化指示部316は、経由地情報324を用いて無効化タイミングを決定すると、車両100の無効化実行部182に無効化タイミングで無効化処理を実行するように指示する。無効化タイミングが経由地での遠隔制御を終えたタイミングに決定された場合であれば、車両100は、当該タイミングに到達した時点で無効化処理を実行する。
【0063】
本実施形態の遠隔自動運転システム500によれば、無効化指示部316は、車両100の無効化実行部182に、決定された無効化タイミングで無効化処理を実行するように指示する。無効化タイミングに到達した際の無効化処理を、サーバ300や経由地制御装置400を介さず、車両100で完結させることができる。したがって、無効化タイミングでの経由地制御装置400等の外部の装置との通信を行うことなく無効化処理を実行することができる。
【0064】
C.第3実施形態:
図12は、第3実施形態にかかる遠隔自動運転システム500が実行する工場FC内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、図9で示した第1実施形態でのフローとは、ステップS30,S40,S50に代えて、ステップS32,S42,S52を備える点において相違する。上記第1実施形態では、無効化指示部316によって決定された無効化タイミングになると、無効化指示部316が無効化処理の実行を指示する制御信号を生成する例を示した。これに対して、本実施形態では、無効化タイミングになると、無効化実行部182が無効化処理を実行する点で相違する。また、無効化指示部316は、無効化実行部182による無効化処理の実行を中止させる無効化中止指示を示す制御信号を生成する。
【0065】
ステップS20で決定された無効化タイミングは、車両100の無効化実行部182に送信される。ステップS32では、無効化実行部182は、無効化指示部316からの無効化中止指示の受信を待機する。無効化中止指示が受信されれば(S32:YES)、無効化処理を実行することなく処理を終了する。制御信号が受信されなければ(S32:NO)、処理をステップS42に移行し、無効化タイミングに到達したか否かを確認する。無効化タイミングに到達していなければ(S42:NO)、処理をステップS32に戻す。無効化タイミングに到達すると(S42:YES)、無効化実行部182が無効化処理を実行し、ECU180は、遠隔制御による運転制御を無効化する。このように構成した場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
D.第4実施形態:
図13は、第4実施形態にかかる遠隔自動運転システム500が実行する工場FC内での無効化処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローは、図9で示した第1実施形態でのフローとは、ステップS30,S40,S50に代えて、ステップS33,S35,S43,S53を備える点において相違する。上記第1実施形態では、無効化指示部316によって決定された無効化タイミングになると、無効化指示部316が無効化処理の実行を指示する制御信号を生成する例を示した。これに対して、本実施形態では、無効化タイミングになると、無効化指示部316は、無効化処理の実行または無効化処理の非実行のいずれかを指示する制御信号を生成する。
【0067】
ステップS33では、無効化実行部182は、無効化指示部316からの制御信号の受信を待機する。制御信号を受信した場合(S33:YES)、無効化実行部182は、処理をステップS35に移行する。ステップS35では、無効化実行部182は、受信した制御信号が無効化処理の実行を指示するものか、無効化処理の非実行を指示するものかを確認する。無効化処理の実行を指示するものである場合(S35:YES)、無効化実行部182は、処理をステップS53に移行して遠隔制御を無効化する。無効化処理の非実行を指示するものである場合(S35:NO)、無効化実行部182は、遠隔制御を無効化することなく、処理を終了する。
【0068】
ステップS33において、制御信号を受信しない場合には(S33:NO)、無効化実行部182は、処理をステップS43に移行する。ステップS43では、無効化実行部182は、無効化タイミングに到達したか否かを確認する。無効化タイミングに到達していなければ(S43:NO)、無効化実行部182は、処理をステップS33に戻す。無効化タイミングに到達すると(S43:YES)、無効化実行部182は、処理をステップS53に移行して遠隔制御を無効化する。このように構成した場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
E.他の実施形態:
(E1)上記各実施形態では、遠隔制御を不可逆的に無効化する例を示したが、遠隔制御は可逆的に無効化されてもよい。可逆的な無効化であれば、自走搬送が実行されるたびに可逆的な無効化を実行することにより、セキュリティ強化を図ることができる。この場合には、セキュリティ強化の観点から、最後の遠隔制御が実行されたタイミングで不可逆的な無効化が実行されることが好ましい。
【0070】
(E2)上記第1実施形態では、経由地情報324は、遠隔制御の可否、遠隔制御の実施、経由地無効化指示部の有無が含まれる例を示した。これに対して、経由地情報324は、これらの情報のみには限定されず、例えば、図4に示すように、経由地がメンテナンスしているか否かなどの「経由地の状態」や「無効化実行部の稼働時間帯」などの遠隔制御に関する種々の情報が含まれてよい。
【0071】
(E3)上記各実施形態では、無効化指示部316は、経由地情報324を用いて無効化タイミングを決定する例を示した。これに対して、無効化タイミングは決定されなくてもよい。例えば、車両100が経由地に移動するたびに経由地情報324,424を確認し、確認結果に応じて無効化処理が実行してもよい。
【0072】
(E4)上記第1実施形態では、経由地制御装置400が経由地情報管理部418を備える例を示した。これに対して、経由地情報324,424が更新されない場合などには、経由地情報管理部418は備えられなくてもよい。
【0073】
(E5)上記各実施形態では、無効化指示部316および経由地情報取得部318がサーバ300に備えられる例を示した。これに対して、無効化指示部316、経由地情報取得部318などの機能の全部またはその一部は、車両100や経由地制御装置400などのサーバ300以外の装置に備えられてもよい。また、無効化実行部182は、車両100に限らず、サーバ300や経由地制御装置400に備えられてもよい。
【0074】
(E6)上記各実施形態では、経由地制御装置400が経由地無効化指示部416を備える例を示した。これに対して、経由地制御装置400は経由地無効化指示部416を備えなくてもよい。この場合には、無効化指示部316が経由地にある車両100の無効化実行部182に直接的に無効化処理の指示を出してよい。
【0075】
本開示に記載の制御及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0076】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
50…前工程、60…後工程、70…アクセスポイント、72…ネットワーク、80…カメラ、100…車両、120…バッテリ、140…モータ、150…受電装置、180…ECU、182…無効化実行部、184…運転制御部、190…通信部、300…サーバ、310…CPU、312…遠隔制御部、316…無効化指示部、318…経由地情報取得部、320…記憶装置、322…製品情報、324…経由地情報、390…通信部、400…経由地制御装置、410…CPU、412…経由地遠隔制御部、416…経由地無効化指示部、418…経由地情報管理部、420…記憶装置、422…製品情報、424…経由地情報、490…通信部、500…遠隔自動運転システム、801,802,803,804…カメラ、CC1,CC2…車両運搬車、DL…販売店、FC…工場、FG…待機場所、P2…駐車位置、PA…駐車場、PG…投入位置、PG1,PG2…待機位置、PS1,PS2…開始位置、PT1…第一港、PT2…第二港、PT3…第三港、PT4…第四港、PT5…第五港、PT6…第六港、RT…走路、RT1…第一走路、RT2…第二走路、RT3…第三走路、RT4…第四走路、SH…輸送船
【要約】
【課題】遠隔自動運転システムにおいて、出荷後に遠隔制御が実行でき、かつ適正に遠隔制御の無効化を実行することができる技術を提供する。
【解決手段】遠隔自動運転システムは、車両を製造する工場内の製造過程、および製造された車両を工場から出荷して目的地まで搬送する工場外の搬送過程において遠隔制御によって走行可能な車両であって、通信機能を有する通信部と、車両の運転制御を実行する運転制御部とを備える車両を、遠隔制御によって走行させる遠隔制御部と、遠隔制御を無効化するための無効化処理を実行する無効化実行部と、搬送過程において車両が経由する少なくとも一の経由地における遠隔制御に関する経由地情報を用いて無効化処理を実行するか否かを判定し、無効化処理を実行すると判定する場合に、無効化実行部に無効化処理の実行を指示する無効化指示部と、を備える。
【選択図】図9
図1
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13