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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】包装袋を用いた物品の収納方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65D81/03 200Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023082112
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2021549006の分割
【原出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2023096112
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019173614
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
(72)【発明者】
【氏名】佐々島 伸之
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-347848(JP,A)
【文献】特開2017-193373(JP,A)
【文献】特開2015-13684(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101232(WO,A1)
【文献】特開2021-29500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-17
B65D 57/00-59/08
B65D 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する物品収納用の包装袋を用いた物品の収納方法であって、
前記包装袋は、内包する物品を保護するためのシート状緩衝部を有し、
前記シート状緩衝部は、所定の伸張方向に伸張可能であり、前記伸張方向に対して交差する所定の延在方向に延びる複数の切れ込み部が千鳥状に設けられてなり、
前記開口部に少なくとも1つのフラップが接続され前記開口部と前記フラップとの接続 部近傍に前記シート状緩衝部の一端が接着され
前記シート状緩衝部の巻き付け端部を引き出して伸張することで立体状の緩衝セルを形成し、前記緩衝セルの形成された前記シート状緩衝部を、内包する前記物品に一周以上巻きつけることで前記緩衝セルによって形成される凹凸同士が噛み合わさり、前記物品を固定し衝撃から保護する包装袋
を用いた物品の収納方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、物品を包装する袋およびこの包装袋を用いた物品の収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装資材として、複数の空気室が設けられたエアクッションや発泡性のフォームクッション,片面段ボールなどの厚み方向に変形するシート状の緩衝材が用いられている。このような緩衝材で包装された物品は、輸送時や保管時に、包装袋に入れられることがある。
そこで、緩衝材を有する包装袋が開発されている。たとえば、複数の空気室が設けられた一対のシートの端縁どうしが封止された包装袋が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-182774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したような厚み方向に変形する緩衝材が包装袋に設けられると、物品が包装袋に入れられる前、即ち、未使用時の包装袋においても、緩衝材の厚みによって包装袋が嵩張るという課題がある。
本件の包装袋は、上記のような課題に鑑みて創案されたもので、未使用時の嵩張りを抑えることを目的の一つとする。また、簡便な方法で高い緩衝性が得られる物品の収納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は以下の要件を有する。
(1)一端に開口部を有する物品収納用の包装袋であって、前記包装袋は、内包する物品を保護するためのシート状緩衝部を有し、前記開口部に少なくとも1つのフラップが接続され、前記開口部と前記フラップとの接続部近傍に前記シート状緩衝部の一端が接着された包装袋。
【0006】
(2)前記シート状緩衝部は、所定の伸張方向に伸張可能であり、前記伸張方向に対して交差する所定の延在方向に延びる複数の切れ込み部が千鳥状に設けられてなる(1)に記載の包装袋。
(3)前記シート状緩衝部を収納する物品に一周以上巻きつけた後、前記包装袋内部へ物品を収納する(1)または(2)に記載の包装袋を用いた物品の収納方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、包装袋の開口部付近に一端を接着(固定)されたシート状緩衝部を収納する物品に一周以上巻きつけた後、前記包装袋内部へ物品を収納することによって、前記物品が宙吊り状態となり、落下などの衝撃から前記物品を保護することができる。
更に本発明の包装袋は、少量のシート状緩衝部によって優れた耐衝撃性が得られるため、未使用時の嵩張りを抑えることができる。
更に本発明の包装袋は、前記シート状緩衝部を所定の伸張方向に伸張可能であり、前記伸張方向に対して交差する所定の延在方向に延びる複数の切れ込み部が千鳥状に設けられてなるものとすることにより、いっそう未使用時の嵩張りを抑えることができる。
本発明の収納方法によれば、簡便な方法で高い緩衝性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aおよび図1Bは、包装袋の構成を説明するための展開図である。
図2】緩衝材の上に内包しようとする物品を置いた状態を示す斜視図である。
図3図2の縦断面図である。
図4】緩衝材で内包しようとする物品を巻いた状態を示す斜視図である。
図5図4の縦断面図である。
図6】緩衝材で巻いた物品を包装袋内に収納した状態を示す斜視図である。
図7図6の縦断面図である。
図8】物品を収納しフランジ部を閉じた状態を示す斜視図である。
図9図8の縦断面図である。
図10】本発明の一態様の包装袋の未使用時を示す斜視図である。
図11図10の縦断面図である。
図12】本発明の一態様の包装袋から緩衝材を引き出した状態を示す斜視図である。
図13図12の縦断面図である。
図14】本発明の一態様の包装袋から緩衝材を更に引き出した状態を示す斜視図である。
図15】未伸張状態の緩衝部の要部を拡大して示す平面図である。
図16】伸張状態の緩衝部の要部を拡大して示す斜視図である。
図17図16のA-A断面を示す断面図である。
図18】本発明の別の一態様を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態としての包装袋について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0010】
包装袋とは、物品を包装する袋(物品収容用の包装袋)である。本実施形態では、包装される物品を保護する緩衝部が本体袋に設けられた包装袋を説明する。
この包装袋を構成する本体袋および緩衝部は、紙あるいは樹脂といった同一の材料から形成されることが好ましい。ただし、本体袋および緩衝部のそれぞれを異なる材料から形成してもよい。
以下の実施形態では、開口が上向きに配置された状態の包装袋について述べる。なお、重力の作用方向を下方とし、下方の反対方向を上方とする。
【0011】
[1.包装袋の構成]
まず、図1を参照して、包装袋の本体袋1を説明する。
本体袋1は、フラップ1aで開閉される開口が上部に形成された包装袋型に設けられる。ここでは、本体袋1として角形包装袋を例示するが、長形包装袋や洋形包装袋を本体袋に用いてもよい。また、ここでは、本体袋1としてマチ無しの包装袋型を例示するが、マチ付包装袋であってもよい。
【0012】
本体袋1は、開口部とフラップ1aとの接続部近傍にシート状緩衝部2の一端3b(シート状緩衝部側接着部)を接着するための接着部3a(本体袋側接着部)を有する。図1の例では折線部6(組み立て時折り部)を谷折りにして糊代部1cを糊付けして包装袋を組み立てるが、包装袋の組み立て方法は図1の例に限定されるものではない。
【0013】
(シート状緩衝部)
シート状緩衝部2は本体袋1と同じ材質で構成されていることが包装袋をリサイクルする上で好ましい。また、シート状緩衝部2は伸縮性のある材料で構成されていることが好ましい。
環境負荷の観点から、本体袋1とシート状緩衝部2の両方が紙製であることが好ましい。
【0014】
図1に示すように、矩形状のシート状緩衝部2(緩衝シート材)の1つの端部には、本体袋1との貼付領域3b(シート状緩衝部側接着部)を有し、貼付領域3bは本体袋1の貼付領域3a(本体袋側接着部)と接合してシート状緩衝部2を本体袋1に接着(固定)する。
【0015】
シート状緩衝部2は、貼付領域3bから対向する端部4(シート状緩衝部巻き付け端部)へ向かう方向(伸張方向)に伸縮性を有すること(伸張可能であること)が好ましい。伸縮性を有するシート状緩衝部2としては、軟質樹脂シート、折り畳まれたシート、所定 の延在方向(伸張方向に交差する方向)に延びる複数の切れ込み部が千鳥状に設けられた シート等が好ましい。
【0016】
これらシートの中でも特に複数の切れ込み部が千鳥状に設けられたシートが好ましい。
【0017】
図15を参照して、未伸張状態のシート状緩衝部2を説明する。
シート状緩衝部2には、多数の切れ込み部23aが切り込まれて形成されている。これらの切れ込み部23aは、シート状緩衝部2の少なくとも一部に設けられている。
切れ込み部23aは、懸架方向(ここでは上下方向)に対して直交する方向(以下「幅 方向」という)に延びている。
【0018】
この切れ込み部23aは、幅方向に沿って断続的に並んで設けられている。すなわち、幅方向に隣接する切れ込み部23aどうしの間には、切り込まれていない非切れ込み部23bが設けられている。
切れ込み部23aの寸法を「L1」とし、非切れ込み部23bの寸法を「L2」とすれば、不等式1「L1>L2」が満たされる。
【0019】
ここで、切れ込み部23aおよび非切れ込み部23bが幅方向に沿って交互に並んで設けられた一行の配向を第一パターンP1とする。また、第一パターンP1の切れ込み部23aおよび非切れ込み部23bとは半ピッチずらされて配置された切れ込み部23a′および非切れ込み部23b′が幅方向に沿って交互に並んで設けられた他行の配向を第二パターンP2とする。これらの第一パターンP1および第二パターンP2は、懸架方向に沿って交互に並んで設けられる。
【0020】
詳細に言えば、第一パターンP1における切れ込み部23aの幅方向中心Caと第二パターンP2における非切れ込み部23b′の幅方向中心Cb′とが懸架方向に沿って並んで配置される。同様に、第一パターンP1における非切れ込み部23bの幅方向中心Cbと第二パターンP2における切れ込み部23a′の幅方向中心Ca′とが懸架方向に沿って並んで配置される。
【0021】
このような切れ込み部23a,23a′および非切れ込み部23b,23b′が設けられた本体部23を有する緩衝部20は、切れ込み部23a,23a′に対応した形状の刃部(カッタ)が外周に設けられたロータリダイカッタによって、切れ込まれていないシート材を回転しながら切り込むことで製造される。または、切れ込み部23a,23a′に対応した形状の刃部が設けられた平板ダイカッタによって、切り込まれていないシート材をプレスしながら切り込むことで、シート状緩衝部2が製造される。
【0022】
第一パターンP1の切れ込み部23aに対して懸架方向のうち一方(図16では上方)のシート片は、第二パターンP2の切れ込み部23a′および非切れ込み部23b′に対する位置によって第一片部31,第二片部32および第三片部33に大別される。
第一片部31は、第一パターンP1の切れ込み部23aのうち幅方向一方(図16では左方)と第二パターンP2の切れ込み部23a′のうち幅方向他方(図16では右方)とで挟まれる部位である。第二片部32は、第一パターンP1の切れ込み部23aの幅方向中央と第二パターンP2の非切れ込み部23b′とで挟まれる部位である。第三片部33は、第一パターンP1の切れ込み部23aのうち幅方向他方と第二パターンP2の切れ込み部23a′のうち幅方向一方とで挟まれる部位である。
【0023】
また、第一パターンP1の切れ込み部23aに対して懸架方向のうち他方のシート片は、上記の片部31,32,33と同様に、第四片部34,第五片部35および第六片部36に大別される。
第四片部34は、第一パターンP1の切れ込み部23aのうち幅方向一方と第二パターンP2の切れ込み部23a′の幅方向他方とで挟まれる。第五片部35は、第一パターンP1の切れ込み部23aの幅方向中央と第二パターンP2の非切れ込み部23a′とで挟まれる。第六片部36は、第一パターンP1の切れ込み部23aのうち幅方向他方と第二パターンP2の切れ込み部23a′のうち幅方向一方とで挟まれる。
【0024】
つづいて、図16および図17を参照して、伸張状態のシート状緩衝部2を説明する。
図16に示すように、伸張状態のシート状緩衝部2は、非伸張状態のシート状緩衝部2と比較して、懸架方向(図16の上下方向)に伸びている。このときのシート状緩衝部2では、非伸張状態におけるシート状緩衝部2の厚み方向へ片部31~36が立ち上がり、立ち上がった片部31~36によって立体状の緩衝セル40が形成される。言い換えれば、一つの切れ込み部23aに対して周囲に配置された片部31~36が立ち上がることで、一つの緩衝セル40が出現する。
【0025】
詳細に言えば、図16に示すように、第一片部31に対応する第一壁部41,第二片部32に対応する第二壁部42,第三片部33に対応する第三壁部43,第四片部34に対応する第四壁部44,第五片部35に対応する第五壁部45および第六片部36に対応する第六壁部46が、六角筒の各側壁をなすように緩衝セル40において立設される。
【0026】
なお、シート状緩衝部2が破損しない範囲で幾何学的に最も伸張した状態(以下「最大伸張状態」という)では、第一壁部41および第四壁部44が同一平面に沿うとともに、第三壁部43および第六壁部46が他の同一平面に沿って第一壁部41および第四壁部44と対向する。そのため、最大伸張状態の緩衝セル40では、四角筒の各側壁をなすように壁部41~46が立設される。
【0027】
シート状緩衝部2を物品に巻き付けたとき、立体状の緩衝セル40によって形成されるシート状緩衝部2の凹凸同士が噛み合わさりシート状緩衝部2が巻き戻されることを防止し、物品を固定し衝撃から保護する効果を高めることができる。
【0028】
[2.包装袋の使用手順]
つぎに、包装袋の使用方法(包装袋を用いた物品の収納方法)を説明する。
図2および図3に示すように、はじめにシート状緩衝部2を広げた上に、内包する物品5を置く。
次に、図4および図5に示すように、物品5にシート状緩衝部2をたとえば一周以上巻きつけていく。このときシート状緩衝部2を適度に伸張した状態で巻き付けることが好ましい。
図6および図7に示すように、(シート状緩衝部2の物品5に巻き付けていない部分の物品5の懸架方向の最大伸張長さ)-(シート状緩衝部2の物品5に巻き付けていない部分の懸架方向の未伸張時長さ)が、物品5を本体袋1に収納したときの本体袋1の底から物品5までの長さ以上とすることが好ましい。
最後に図8および図9に示すように、フラップ1aを閉じて物品5の収納を完了する。このようにして包装袋の内部(包装袋内部)へ物品5を収容する。
【0029】
上記のように巻き付ける方法を採用することによって、包装袋が本体袋の底部を下にして落下したときに、物品5に巻き付いたシート状緩衝部2の物品5に巻き付けていない部分が延びて衝撃を和らげ、物品5を保護することができる。
【0030】
[3.その他の態様]
図10~14を用いて本発明の他の実施形態を示す。
この実施形態では、シート状緩衝部2の端部4が本体袋1の開口部のフラップが設けられていない側に仮固定されている。端部4と開口部は、ミシン目又はハーフカットにより、仮固定されており、使用する際に切り離し、本体袋1内に収納されていたシート状緩衝部2を引き出し、上記包装袋の使用手順で説明した方法で物品を収納することができる。
図18に示す別の態様では切り離し部1bの中央にプルタブ7が設けられており、シート状緩衝材端部の切り離しを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 本体袋
1a フラップ
1b 切り離し部
1c 糊代部
2 シート状緩衝部
3a 本体袋側接着部
3b シート状緩衝部側接着部
4 シート状緩衝部巻き付け端部
5 物品
6 組み立て時折り部
7 プルタブ
23a,23a′ 切れ込み部
23b,23b′ 非切れ込み部
31,32,33,34,35,36 片部
40 緩衝セル
41,42,43,44,45,46 壁部
a,Ca′ 切れ込み部23a,23a′の幅方向中心
b,Cb′ 非切れ込み部の23b,23b′幅方向中心
1 切れ込み部23a,23a′の幅方向寸法
2 非切れ込み部23b,23b′の幅方向寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18