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特許7392922揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いるパウチ形電池ケースの製造方法
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  • 特許-揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いるパウチ形電池ケースの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いるパウチ形電池ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20231129BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20231129BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/124
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022563238
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2021012768
(87)【国際公開番号】W WO2022065815
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0124896
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チ、ホ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ハン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ジェオン オー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、キュ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジン ハク
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0028194(KR,A)
【文献】特開2009-113058(JP,A)
【文献】特開2007-75835(JP,A)
【文献】特開2002-292785(JP,A)
【文献】特開平7-39951(JP,A)
【文献】特開2007-253219(JP,A)
【文献】特開2002-208384(JP,A)
【文献】特開2020-77600(JP,A)
【文献】特開2020-104127(JP,A)
【文献】特開2012-216511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
B32B 15/00
B21D 22/00
B21D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体収納部に対応する大きさを持つ湾入形又は貫通形の開放溝が形成されており、シートが上面に位置するダイ;
前記開放溝に対応する形状を持つパンチであって、前記シートに対するディープドローイング(deep drawing)のために開放溝の上部に位置し、下降時に開放溝に導入されるパンチヘッド(punch head)を含むパンチ;
ディープドローイングのために前記シートの両端をダイに加圧固定するホルダー(holder);及び
前記パンチヘッドと接するシートの上面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部;
を含むパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項2】
前記パウチ形電池ケース成形装置は、前記シートの上面に供給された前記潤滑剤を回収する別の潤滑剤回収部が備えられていない、請求項1に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項3】
前記潤滑剤供給部は、前記潤滑剤を前記シートが延伸される部位にのみ供給する、請求項1または2に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項4】
前記潤滑剤は、揮発性潤滑剤である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項5】
前記シートは、ラミネートシートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項6】
前記パンチヘッドのうち、前記シートと接する部分は、少なくとも低摩擦力係数(frictional coefficient)の素材からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項7】
前記パンチヘッドのうち、前記シートと接する部分は、少なくとも温度を昇降温可能な温度調節部を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項8】
前記潤滑剤供給部は、エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射可能な噴射ノズルを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項9】
前記噴射ノズルは、前記ホルダーに固定される、請求項8に記載のパウチ形電池ケース成形装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載されたパウチ形電池ケース成形装置を用いるパウチ形電池ケース製造方法であって、
(S1)前記ダイと前記パンチとの間に前記シートを配置する段階;
(S2)前記パンチヘッドと接触する前記シートの部分に前記潤滑剤を塗布する段階;及び
(S3)前記パンチを用いて前記シートを電池ケースとして成形する段階;
を含むパウチ形電池ケース製造方法。
【請求項11】
前記潤滑剤は、前記パンチヘッドの表面と前記シートの表面に同時に塗布される、請求項10に記載のパウチ形電池ケース製造方法。
【請求項12】
前記(S2)段階は、エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射する方法で行われる、請求項11に記載のパウチ形電池ケース製造方法。
【請求項13】
前記ホルダーに固定される噴射ノズルから前記エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射する、請求項12に記載のパウチ形電池ケース製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年09月25日付韓国特許出願第2020-0124896号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本願発明は、揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いるパウチ形電池ケースの製造方法に関する。具体的には、パウチ形電池ケースとして用いられるラミネートシートを直方体状に成形するパンチを含む装置であって、前記ラミネートシートの表面損傷を最小化するための揮発性潤滑油を前記ラミネートシートと前記パンチとの間に供給する揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置、及びこれを用いてパウチ形電池ケースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器と電気自動車などのエネルギ源として二次電池の需要が急増している。特に、高いエネルギー密度と放電電圧を有するリチウム二次電池の需要が非常に高い。
【0004】
リチウム二次電池は、形状によって、円筒形電池、角形電池、パウチ形電池などに区別できる。パウチ形電池は、高い集積度で積層されてよく、重量当たりのエネルギー密度が高く、安価で、変形させやすいという長所がある。パウチ形電池は、ラミネートシートを電池ケースとして使用し、このようなラミネートシートに形成された収納部に電極組立体と電解液が共に内蔵された構造を有する。
【0005】
パウチ形電池の収納部は、延性のラミネートシートを固定させた状態で、パンチでシートを加圧するディープドローイング(deep-drawing)方式によって形成される。ラミネートシートが有する延性の限界とパンチの加圧時に印加される摩擦力によって、ディープドローイングによって延伸される中にラミネートシートの外面上にピンホール(pin-hole)又はクラック(crack)などの外形上欠陥が発生する。
【0006】
ラミネートシートと接触するパンチの表面粗度を極端に下げても、持続した作業によって摩擦力が発生し、これによって外形上欠陥が発生する。特に、ラミネートシートの厚さを薄くする場合には、シートの成形性が減少して外形の欠陥が頻繁に発生する。このような理由で、電池ケースの厚さを減少させて電極組立体の厚さを増やすことによって大容量の二次電池を製造するには限界があった。
【0007】
このような問題を解決するために、ラミネートシートに別のフィルムを付加したり、ラミネートシートを2回以上パンチングして加工したりするなどの様々な試みがなされている。
【0008】
特許文献1は、ステンレス鋼箔の温間加工方法及び温間加工用の金型に関し、厚さが300μm以下であるオーステナイト系のステンレス鋼箔をパンチに対向するように配置し、パンチの肩部が接触するステンレス鋼箔の環状領域を30℃以下にすると同時に、環状領域の外部領域を40℃以上~100℃以下の温度にした状態で、ステンレス鋼箔に対してドローイング処理を施す方法である。
【0009】
特許文献1は、ドローイング処理のために加熱する方法を用いているが、潤滑油が揮発性であるか否かについては記載しておらず、しかも、潤滑油の除去方法については何ら記載もない。パウチ形電池は、ラミネートシートに電解液が直接接触するため、潤滑油がラミネートシートの表面に残存する場合には二次電池の性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0010】
また、特許文献1は、ステンレスを加工しており、金属自体の延性を高めるために温度を上げることができるが、本願発明に係るラミネートシートは、内外面に付着している樹脂層によって温度を上昇させることができないという不具合がある。
【0011】
特許文献2は、圧紛成形体の成形方法に関し、次の各工程を備える。原料粉末を準備する段階。第1パンチの外周面とダイの内周面との間に金型用潤滑剤を存在させ、この状態でそれらの第1パンチとダイを相対移動させ、ダイの内周面に金型用潤滑剤を塗布する段階。キャビティに原料粉末を充填し、その原料粉末を加圧して圧紛成形体を成形する段階。ここで、塗布工程では、第1パンチに形成された供給口から金型用潤滑剤を吐き出し、第1パンチに形成された排出口からその吐き出された金型用潤滑剤を回収しながら、ダイの内周面に金型用潤滑剤を塗布する。
【0012】
特許文献2は、潤滑剤を別の供給部を通じて供給し、また、これを別の回収部を通じて回収している。特許文献2は、加工する材料が粉末であるので、成形する過程で発生し得る粉末間の摩擦力を減らすために、ある程度の時間以上存在可能な潤滑油が必須であり、また、これを回収できる手段が備えられる必要がある。特許文献2は、成形する材料が粉末であり、これは、本願発明で使用するラミネートシートとは物理的な特性が非常に異なる。
【0013】
特許文献3は、圧延ツールに関し、円筒形隙間の内部方向の表面を機械加工するための、特に、滑面-圧延するための圧延ツールに関する。特許文献3の前記圧延ツールは、回転駆動可能な前記圧延ツール内に保持され、前記内部方向の表面に沿って前記ツールによって取られる一つ以上の圧延本体を含む。このような場合に、一つ以上の前記圧延本体は、前記圧延ツールの半径方向隙間内に挿入されており、半径方向隙間に沿って内部から外部に加圧された流体下に置かれてよい。特許文献3では、流体としてエアゾールを使用する。特許文献3のエアゾールはガスと混合された流体であり、静圧ベアリング及び潤滑のために作用する。このようなエアゾール形態の潤滑剤は使用の分野が特殊であり、本願発明のラミネートシート成形装置とは関連性がない。
【0014】
特許文献4は、低い摩擦性のパンチヘッドを備えた電池ケース成形装置に関し、電極組立体が内蔵され得る電極組立体収納部を含む電池ケースを成形する装置である。特許文献4の成形装置は、電極組立体収納部に対応する大きさを有する湾入形又は貫通形の開放溝が形成されており、電池ケース製造用シート基材が上面に位置するダイ;前記開放溝に対応する形状を持つパンチであって、シート状基材に対するディープドローイング(deep drawing)のために開放溝の上部に位置し、下降時に開放溝に導入されるパンチヘッド(punch head)が低摩擦力係数(frictional coefficient)の素材からなるパンチ、及びディープドローイングのために前記シート状基材の両端をダイに加圧固定するホルダー(holder)を含む。
【0015】
前述したように、素材の強度が高い場合に、表面粗度を減少させて摩擦力を下げても、継続した加工によって熱が発生し、ラミネートシートにピンホール(pin-hole)又はクラック(crack)などの外形上欠陥が発生する。特許文献4は、摩擦力を下げ、パンチの素材をポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene)のような樹脂とすることによって、ディープドローイング時に収納部コーナーにシワ及び白華現象が発生することを防止するためのものであるだけで、本願発明で認識する問題点を解決できずにいる。
【0016】
ラミネートシートは長い間パウチ形電池のケースとして使用されているが、これは、過去の市場に適するパウチ形電池の製造に適合な技術である。最近の市場環境の変化による高容量電池に対応しながらも不良率が低い成形装置及びこれを用いるパウチ形電池ケースの製造方法は依然として提示されずにいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
(特許文献1)韓国公開特許第2015-0060797号公報
(特許文献2)韓国公開特許第2014-0089377号公報
(特許文献3)韓国公開特許第2016-0032280号公報
(特許文献4)韓国公開特許第2018-0028194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本願発明は、上記のような問題点を解決するためのものであり、パウチ形電池ケースの成形において、
1)ラミネートシートの外面で発生し得る表面損傷を最小化し、
2)薄いラミネートシートを成形する時に、ピンホール(pin-hole)又はクラック(crack)を防止し、
3)従来の成形装置及びそれを用いた方法を大きく変形しなく、
4)従来に使用するラミネートシートをそのまま使用しながらも、
5)成形後にも残渣がない効果的なパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いたパウチ形電池ケース製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記のような問題点を解決するために、本願発明は、電極組立体収納部に対応する大きさを有する湾入形又は貫通形の開放溝が形成されており、シートが上面に位置するダイ;前記開放溝に対応する形状を持つパンチであって、前記シートに対するディープドローイング(deep drawing)のために開放溝の上部に位置し、下降時に開放溝に導入されるパンチヘッド(punch head)を含むパンチ;ディープドローイングのために前記シートの両端をダイに加圧固定するホルダー(holder);及び、前記パンチヘッドと接するシートの上面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部;
を含むパウチ形電池ケース成形装置を提供する。
【0020】
前記パウチ形電池ケース成形装置は、前記シートの上面に供給された前記潤滑剤を回収する別の潤滑剤回収部が備えられなく、前記潤滑剤供給部は、前記潤滑剤を前記シートが延伸される部位にのみ供給することができる。
【0021】
本願発明に係る無洗浄潤滑剤又は揮発性潤滑剤は、成形による熱、又は加工後放置時の常温の温度によって揮発する潤滑剤である。本願発明に係る揮発性潤滑剤は、別個の脱脂工程を必要としない。潤滑性を上げるために、極少量の油性剤を配合することも可能である。本願発明に係る揮発性潤滑剤は、送風や温風を用いてより速く乾燥させることができる。
【0022】
従来の金属プレス加工には潤滑剤が使用されている。本願発明に係るラミネートシートは、外周辺が樹脂層をなしているので、従来の金属プレス加工には、潤滑剤、特に揮発性潤滑剤を使用すると問題が発生し得る。前記揮発性潤滑剤は、高い揮発性によって洗浄剤と類似の性質を帯びることができ、樹脂層に浸透しやすいため、ラミネートシートの表面にムラを発生させる問題がある。ムラの発生した成形品は不良品として廃棄される。
【0023】
したがって、使用する場合には、樹脂層に浸透しない潤滑剤を使用しなければならないが、この場合、揮発性が低いため、加工後に別の洗浄過程が必要である。
【0024】
本願発明は、このような揮発性潤滑剤を用いて成形する時の問題点を認識し、噴射ノズルをパンチと非常に近くに配置し、成形直前に揮発性潤滑剤を供給し、成形の終わった後には直ちに送風や温風を用いて速く前記揮発性潤滑剤を除去するパウチ形電池ケース成形装置を提供する。
【0025】
これにより、ムラなどの不良が発生する問題を解消し、しかも、成形で発生し得るピンホール又はクラックなどの損傷を防止することができる。
【0026】
本願発明において、前記シートは、ラミネートシートを含む。前記ラミネートシートは、パウチ形電池に使用できる如何なるラミネートシートも適用可能である。
【0027】
本願発明に係るラミネートシートは、例えば、熱融着性の第1樹脂層、物質遮断性の金属層、及び外層としての第2樹脂層の積層構造であるか、又は熱融着性の樹脂層及び物質遮断性の金属層が積層された構造であってもよい。
【0028】
前記熱融着性の第1樹脂層は、電解液の侵入を抑制するために、吸湿性が低く、電解液によって膨脹又は侵食しない素材として、例えば、ポリオレフィン(polyolefin)系樹脂が使用されてよい。
【0029】
前記物質遮断性の金属層は、ガス、湿気などの異物の流入又は漏出を防止する機能の他にも電池ケースの強度を向上させることができるように、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用されてよい。
【0030】
前記第2樹脂層は、電池ケースの外層を形成する高分子樹脂層であり、外部環境に対して優れた耐性を有するように所定以上の引張強度と耐候性が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ナイロンなどが使用されてよい。
【0031】
前記パンチヘッドのうち、前記シートと接する部分は、少なくとも低摩擦力係数(frictional coefficient)の素材からなってよく、前記低摩擦力係数の素材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びナイロンからなる群から選ばれる一つであってよい。
【0032】
前記パンチヘッドのうち、前記シートと接する部分は、少なくとも温度を昇降温できる温度調節部を含むことができる。温度を昇温させることによって、前記シートの延性を挙げることができる他、ディープドローイング加工後にも残っている潤滑剤を速く昇華又は蒸発させることができる。
【0033】
前記潤滑剤供給部は、エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射できる噴射ノズルを含むことができ、前記噴射ノズルは前記ホルダーに固定されてよい。
【0034】
本願発明は、また、前記パウチ形電池ケース成形装置を用いるパウチ形電池ケース製造方法において、(S1)前記ダイと前記パンチとの間に前記シートを配置する段階;(S2)前記パンチヘッドと接触する前記シートの部分に前記潤滑剤を塗布する段階;及び、(S3)前記パンチを用いて前記シートを前記電池ケースに成形する段階;を含むパウチ形電池ケース製造方法を提供する。
【0035】
前記潤滑剤は、前記パンチヘッドの表面と前記シートの表面に同時に塗布され、前記(S2)段階は、エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射する方法で行われてよい。前記ホルダーに固定される噴射ノズルから前記エアゾール(Aerosol)状態の潤滑剤を噴射することができる。
【0036】
本願発明は、前記ラミネートシートの上面に成形用フィルム部材を付着させて電池ケースを成形した後、前記成形用フィルム部材を脱離させる方法も提供することができる。
【0037】
前記成形用フィルム部材は、基材フィルム、及びラミネートシートに対する脱離可能な状態の付着のために前記基材フィルムの一面に形成されている接着層を含んでいてよい。このとき、前記基材フィルムは、高分子樹脂フィルム、又は金属フィルム、又はこれらの複合フィルムからなるものであってよい。前記成形用フィルム部材は、基材フィルムと接着層の単層構造、又は基材フィルムと接着層が2以上の回数で積層された多層構造を有するものであってよい。前記高分子樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びナイロンからなる群から選ばれる一つ以上の素材を含むことができる。前記成形用フィルム部材は、平面視で、ディープドローイングされる成形予定部位をカバーする大きさの長方形の形状を有してよい。
【0038】
本願発明は、また、前記(S3)段階が、ラミネートシートをパンチで加圧して第1深さまで延伸させる過程;及び、前記第1深さまで延伸された状態で第1深さ対比105%~200%である第2深さまでさらに加圧して延伸させる過程を含むことができる。
【0039】
通常のラミネートシートは、それの厚さが増加する場合に成形性が増大するが、その反対の場合には成形性が減少する性質を有するので、シートの成形性を確保すると同時に電池ケースの厚さを薄く構成することが難しいという問題点がある。
【0040】
本願発明に係る電池ケース製造方法は、揮発性潤滑剤と付加的にラミネートシートに成形用フィルム部材を付着させた状態でディープドローイング工程を行い、延伸される部位に過度に集中する応力を分散させることによって、外形の欠陥を最小化すると同時にシートの成形性を増加させることができる。
【0041】
電極組立体収納部が形成された後には、シートに付着しているフィルム部材を脱離させ、薄い厚さを有する収納部を形成することができ、これによって一つの電池セルが収容可能な電極組立体の個数を増加させることができ、よって、高いエネルギー密度を有する二次電池のための電池ケースを提供することができる。
【0042】
電池ケースを成形するディープドローイングでは、ラミネートシート全般にわたって均一に延伸がなされるのではなく、特定部位のみが過度に延伸された形態で収納部が形成され、このような理由で、集中的に延伸がなされた部位には、相当な大きさの応力がかかり、クラック又はピンホールなどの欠陥が発生してしまう。本願発明は、当該部位に揮発性潤滑剤を塗布することによって、当該部位の摩擦力を減らし、当該部位のみが過度に延伸されることを防止することができる。
【0043】
一方、さらに、当該部位のみが過度に延伸されることを防止するために、ラミネートシートをパンチで加圧して第1深さまで延伸させる過程;及び、前記第1深さまで延伸された状態で、第1深さ対比105%~200%である第2深さまでさらに加圧して延伸させる過程が行われてよい。このとき、好ましい前記第1深さは2mm~10mmであってよい。
【0044】
本願発明は、また、フィルム部材が付着している状態のラミネートシートを提供することができる。具体的には、電極組立体の装着のための収納部をディープドローイングによって形成して電池ケースを製造するディープドローイング用ラミネートシートは、熱融着性の第1樹脂層、物質遮断性の金属層、及び外層としての第2樹脂層が接合された積層シート、又は熱融着性の樹脂層及び物質遮断性の金属層が接合された積層シートを含んでおり、前記積層シートの一面又は両面に脱離可能な状態で成形用フィルム部材が付着している構造であってもよい。
【0045】
電池ケースは、その用途又は目的に応じて、様々な厚さを有するラミネートシートを使用する。例えば、従来の厚さ200μmのシートから製造された電池ケースは、それに比べて薄い厚さを有しながら成形性の増加したシートから製造可能であり、結果的に、従来に比べて薄い厚さの収納部を有する電池ケースを提供することが可能になる。
【0046】
本願発明は、また、上記の、課題を解決するための手段の如何なる可能な組合せでも提供可能である。
【発明の効果】
【0047】
本願発明は、上記のような問題点を解決するためのものであり、パウチ形電池ケースの成形において、
1)ラミネートシートの外面で発生し得る表面損傷を最小化し、
2)薄いラミネートシートを成形する時に、ピンホール(pin-hole)又はクラック(crack)を防止し、
3)従来の成形装置及びそれを用いた方法を大きく変形しなく、
4)従来に使用するラミネートシートをそのまま使用しながらも、
5)成形後にも残渣がない効果的なパウチ形電池ケース成形装置及びこれを用いたパウチ形電池ケース製造方法を提供することができる。
【0048】
以上に説明したように、本願発明に係る電池ケース製造方法は、ラミネートシートに揮発性潤滑剤を塗布させた状態でディープドローイング工程を行うことによって、延伸部位に過度に集中する応力を分散させ、シートの収納部の成形性を増加させることができ、収納部が形成された後には揮発性潤滑剤を昇華又は蒸発させることによって、外形の欠陥が最小化し、厚さの減少した電池ケースを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本願発明の一実施例に係るパウチ形電池ケース成形装置の平面模式図である。
図2】本願発明の一実施例に係る電池ケースを製造する一連の過程を示す模式図である。
図3】本願発明の一実施例に係る電池ケースを製造する一連の過程を示す模式図である。
図4】本願発明の一実施例に係る電池ケースを製造する一連の過程を示す模式図である。
図5】本願発明の一実施例に係る電池ケースを製造する一連の過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本願発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するとき、関連する公知機能又は構成に関する具体的な説明が本願発明の要旨を却って曖昧にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0051】
なお、図面中、類似の機能及び作用をする部分に対しては同一の図面符号を使用する。明細書全体を通じて、ある部分が他の部分と連結されているとしているとき、これは、直接に連結されている場合の他に、それらの間にさらに他の素子を介在して間接に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むということは、別に断らない限り、他の構成要素を除外する意味ではなく、他の構成要素をさらに含んてもよいことを意味する。
【0052】
また、構成要素を限定又は付加して具体化する説明は、特に制限がない限り、いかなる発明に適用されてもよく、特定の発明に限定しない。
【0053】
また、本願発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、特に言及されない限り、複数である場合も含む。
【0054】
また、本願発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって、「又は」は、特に言及されない限り、「及び」も含むものである。したがって、「A又はBを含む」とは、Aを含む、Bを含む、A及びBを含む、3つのいずれの場合をも意味する。
【0055】
また、全ての数値範囲は、明確に除外するとの記載がない限り、両端の値とその間における全ての中間値を含む。
【0056】
以下、本願発明を、図面を参照して詳細な実施例のように説明する。
【0057】
図1は、本願発明の一実施例に係るパウチ形電池ケース成形装置の平面模式図である。
【0058】
図1を参照すると、本願発明の一実施例に係る成形装置100は、ラミネートシート1に電極組立体の装着のための収納部を成形する装置であり、そのために、ダイアセンブリー20及びパンチ30を含む。
【0059】
ダイアセンブリー20は、ラミネートシート1の成形予定部位1aに隣接したラミネートシート1の外周部を定位置固定させるための構成であり、収納部に対応する形状に形成されている湾入部22、及び平面視で、湾入部22の両側に位置しており、その上端にラミネートシート1を装着する外周壁23を含んでいるダイ21と、外周壁23の上側部に対応する位置で押下してラミネートシート1の外周部を定位置固定させるホルダー24を含む。
【0060】
パンチ30は、ダイアセンブリー20によって定位置固定された状態のラミネートシート1の成形予定部位1aを加圧し、ディープドローイング方式によってラミネートシート1に収納部の形状を成形するための構成である。このとき、パンチ30のうち、下降時に開放溝に導入されるパンチヘッド33の外周辺は、ディープドローイングによってラミネートシート1が延伸される過程でラミネートシート1が破損しないようにラウンド状になっている。前記パンチヘッド33をパンチと呼ぶ場合もあるが、本願発明では、当該部分をパンチヘッド33として区別し、これを含む全体をパンチ30と呼ぶ。
【0061】
ラミネートシート1は、固定ダイ21とホルダー24との間に位置するが、より詳細には、ラミネートシート1の成形予定部位1aを除く外周部が固定ダイ21の外周壁23の上端に装着され、これに対応する上側部にはホルダー24が位置している。また、ホルダー24の一側面には、揮発性潤滑剤を供給できる噴射ノズル40が備えられている。
【0062】
前記噴射ノズル40は、前記パンチヘッド33の移動部位と重ならず、好ましくは、成形予定部位1a、より好ましくは、前記パンチヘッド33がラミネートシート1を延伸する部位に揮発性潤滑剤を塗布する。図1には、前記噴射ノズル40が前記ホルダー24の一部の傾斜した面に固定されるとしているが、これは一つの例示であり、噴射ノズル40の目的とするラミネートシート1の上面に揮発性潤滑剤を塗布しながら前記パンチヘッド33の移動経路を干渉しない如何なる位置にも固定可能である。
【0063】
図1には2個の噴射ノズル40が表示されているが、これは必要によって増減可能である。
【0064】
前記パンチヘッド33のうち、前記ラミネートシート1と接する部分は、少なくとも温度を上げたり上げたりできる温度調節部(図示せず)を含むことができる。温度を上げることによって、前記シートの延性を高めることができるだけでなく、ディープドローイング加工後にも残っている潤滑剤を速く昇華又は蒸発させることができる。
【0065】
本願発明に係る成形装置100は、揮発性潤滑剤を回収するための別の潤滑剤回収部が備えられない。本願発明に係る揮発性潤滑剤は、ラミネートシート1に塗布され、ラミネートシート1がディープドローイングによって成形された後に極めて速く蒸発するので、別の潤滑剤回収部を備えずに済むという長所がある。
【0066】
図2図5は、本願発明の一実施例に係る電池ケースを製造する一連の過程を示す模式図である。
【0067】
図2を参照すると、ラミネートシート1の下面はダイアセンブリー20に固定されており、ラミネートシート1の上側には、成形予定部位1aを加圧するためのパンチ30が位置している。
【0068】
図1図2を共に参照すると、ラミネートシート1の下面が固定ダイ21の外周壁23の上端に装着された状態で、ラミネートシート1の上面がホルダー24によって加圧されて定位置固定される。ラミネートシート1がダイアセンブリー20によって定位置固定された後には、収納部形成のためのディープドローイング工程が行われる。ディープドローイング工程が行われる前に噴射ノズル40から揮発性潤滑剤が塗布される。
【0069】
図3を参照すると、ラミネートシート1に収納部を成形し始める前に、パンチ30がラミネートシート1の上面に接している様子が示されている。このとき、噴射ノズル40は、パンチ30の移動軌跡を干渉しない。
【0070】
パンチ30は、ラミネートシート1の上側に位置した状態で矢印方向に直線移動し、パンチの下端面が成形予定部位1aの上面に接する。
【0071】
次に、図4を参照すると、ラミネートシート1の成形予定部位1aをパンチで加圧してラミネートシート1に収納部を成形する過程が模式的に示されている。
【0072】
パンチ30がラミネートシート1に接した状態で連続して行われる工程段階であり、矢印方向に直線移動するパンチは、ラミネートシート1を加圧してラミネートシート1に収納部を成形する。
【0073】
具体的には、図1及び図4を共に参照すると、パンチ30は、ダイアセンブリー20によって固定されたラミネートシート1のうち成形予定部位1aを湾入部22の内面に密着するまで加圧して収納部を成形する。
【0074】
次に、図5を参照すると、収納部が形成されたラミネートシート1が最終的に製造された様子が示されている。
【0075】
前述したように、噴射ノズル40から揮発性潤滑剤を塗布し、収納部を形成するディープドローイング工程を行うことにより、ラミネートシート1において外形の欠陥を最小化できる他にも、延伸されるラミネートシート1の成形性を増加させることができ、よって、製造される電池ケースの厚さを減少させることができる。
【0076】
本願発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本願発明の範疇内で様々な応用及び変形が可能であろう。
【0077】
(符号の説明)
100:本願発明に係る成形装置
1:ラミネートシート
1a:成形予定部位
20:ダイアセンブリー
21:ダイ
22:湾入部
23:外周壁
24:ホルダー
30:パンチ
33:パンチヘッド
40:噴射ノズル
【産業上の利用可能性】
【0078】
本願発明は、パウチ形電池ケースとして用いられるラミネートシートを直方体状に成形するパンチを含む装置であって、前記ラミネートシートの表面損傷を最小化するための揮発性潤滑油を前記ラミネートシートと前記パンチとの間に供給する揮発性潤滑剤供給部を含むパウチ形電池ケース成形装置、及びこれを用いてパウチ形電池ケースを製造する方法に関し、産業上に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5