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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】部分加飾成形方法及びその部分加飾成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20231129BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B29C51/10
B29C51/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019041252
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142451
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】598163628
【氏名又は名称】布施真空株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】三浦 高行
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044285(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098737(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/186187(WO,A1)
【文献】特開昭54-132675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲とし、所定の部分加飾成形装置を用いて、この加飾成形範囲に加飾フィルムを密着させて被着体を部分加飾成形する、加飾フィルムによる部分加飾成形方法であって、
下方に開口した箱状ないし容器状の囲い枠体の内部に加飾フィルムを張設状態で収容し、被着体の上部に囲い枠体を接触させて加飾成形範囲を囲い、囲い枠体と加飾成形範囲の間に、加飾フィルムで仕切られた密閉状態の上空間と密閉状態の下空間とを区画形成し、
密閉状態の下空間及び上空間を、互いに等圧の所定の減圧状態である第一圧力状態としたのちに、下空間内を第一圧力状態に維持したまま、上空間のみを、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放することによって、囲い空間の加飾成形範囲に加飾フィルムを部分加飾成形することを特徴とする部分加飾成形方法。
【請求項2】
前記所定の部分加飾成形装置は、
下開口した箱状空間を有し、被着体の一端部である加飾成形範囲の外縁を囲って被着体上部に接触配置される囲い枠体と、
この箱状空間内に、前記加飾成形範囲を上に向けた被着体を収容する囲い枠体の内部にて横方向に拡げた加飾フィルムの周部を保持して加飾フィルムを張架し得る保持枠と、
被着体に接触した状態の囲い枠体内の密閉空間の圧力を減圧状態ないし大気圧解放状態に制御する圧力制御装置と、を具備してなり、
前記所定の部分加飾成形装置を用いて、
前記加飾成形範囲の平面投影面積よりも大きい加飾フィルムを、下開口した囲い枠体内の所定高さの位置で横方向に拡げ、加飾フィルムの周部を保持枠で保持した状態とするフィルムセット工程と、囲い枠体の下開口を被着体の加飾成形範囲に対向させ、囲い枠体の下開口に取り付けた弾性材を介して密着し、囲い枠体内の空間に加飾フィルムを挟んで密閉状態の上空間と下空間とを、被着体上に上下に連成する密閉工程と、
前記圧力制御装置によって、密閉状態の下空間及び密閉状態の上空間を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とする第一圧力調整工程と、
密閉状態の下空間内を第一圧力状態に維持したまま、前記圧力制御装置によって、前記密閉状態の上空間を、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放し、上下空間の圧力差によって、加飾フィルムを瞬間的に被着体へ均一に密着させる加飾成形工程と、を順に具備することを特徴とする、請求項1記載の部分加飾成形方法。
【請求項3】
前記加飾成形工程の後に、被着体の加飾成形範囲の周囲に調整枠をセットし、これらの上方から、加飾成形範囲外にはみ出した余分な加飾フィルム端を所定の切断軌道でレーザーカットするカット工程を更に備える、請求項2記載の部分加飾成形方法。
【請求項4】
前記密閉工程の後であって加飾成形工程の前に、
囲い枠体内の密閉空間に張設された加飾フィルムを、囲い枠体の内側面及び内部天面に備えた複数のヒーターによって上方及び側方から加熱して軟化延伸及び弛緩化させ、被着体に近接させたドローダウン状態とするドローダウン工程をさらに具備する、請求項記載の部分加飾成形方法。
【請求項5】
前記囲い枠体は、被着体上への配置接触部、又は保持枠の対向接触面への接触部の少なくともいずれかに、加圧接触によって弾性変形し得る弾性材を有してなり、
前記密閉工程は、被着体の加飾成形範囲を含む接触面又は被着体上に配置された囲い枠体の接触面と、前記保持枠の対向接触面と、を近接させて加圧接触させることで、被着体の加飾成形範囲の上面と、囲い枠体の枠内面と、加飾フィルムの下面とによって囲まれた囲い空間を気密形成する、請求項2又は3のいずれか記載の部分加飾成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面に接着剤層が設けられた加飾シートを真空状態で被着体に被着して加飾成形する、加飾シートによる加飾成形方法、及びこの加飾成形方法に使用する加飾成形装置に関し、特に、中空構造を有した比較的大型の被着体を対象とし、被着体の部分的な表面に加飾成形する部分加飾成形方法、及びこの部分加飾成形方法に使用する部分加飾成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体のような大型の被着体に対して部分的なフィルム加飾を行う部分オーバーレイ方法として、上部開口した収容チャンバーと下部開口した上ボックスとを、加飾フィルムを挟んだ状態で上下に組み合わせて、ボックス空間と収容空間とが上下に連成した成形空間を密閉形成し、この成形空間内の上下の空間に瞬間的な圧力差を生じさせることで、成形空間内に収容した被着体Wの一部表面に加飾フィルムを減圧密着させるものが開示される(特許文献1)。
【0003】
また一方で、成形板材からなる大型の被着体においてはしばしば、成形面の裏側をロアパネルで補強し、アッパパネルとロアパネルとによって中空構造を形成したものが採用される。例えば自動車のフロントサスペンションメンバとして、アッパパネルとロアパネルとによって中空構造に形成され、横方向の各側部に前方のアーム取付け部と後方のアーム取付け部とを備えたものが開示される(特許文献2)。前記中空構造においては例えば、前方のアーム取付け部から前記後方のアーム取付け部へ実質的に直線状に伸びる縦壁を有しており、前記後方のアーム取付け部は、前記アッパパネルを横方向へ伸ばした部分と、前記ロアパネルに溶接され、横方向へ張り出されたブレースとによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-044285号公報
【文献】特開平6-72353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成形板材が中空構造の一部を部分加飾成形範囲に含む場合には、加飾フィルムによって加飾成形する際、成形板材の裏側が瞬間的かつ急激に減圧されることで、中空構造が圧潰変形してしまう。すなわち、加飾フィルムによる加飾成形においては、加飾成形範囲の成形板材を収容する収容空間と、加飾フィルムを境とした収容空間上部の上ボックス空間とを等圧状態にしておき、この等圧状態から、収容空間内をボックス空間に対して大幅に減圧した減圧状態へと、急激に状態変移させる。この急激な状態変移の際に収容空間は瞬間的な減圧状態となるため、収容空間内に中空構造を有した被着体が収容される場合は、この中空構造が減圧状態変移によって圧潰するなど、減圧化による変形等の影響を受けてしてしまう。
【0006】
この減圧による影響を回避するため、収容空間のうち中空構造の部分を上ボックス空間と通気バイパスして、中空構造の内部だけ部分的に上ボックス空間と等圧状態を保つ対策も考えられる。このような通気バイパスによって中空構造の内部だけ部分的に等圧状態を保つためには、中空構造を気密状態に保ち、中空構造の部分だけを上ボックス空間と等圧制御する構造が必要となる。
【0007】
しかしながら、前記中空構造は、成形板材からなる被着体のアッパパネルの裏側からロアパネルをスポット溶接やブロック溶接して形成されることから、中空構造を構成するロアパネルの一部には、しばしばヌスミ孔等の孔部が形成されたり、或いはアッパパネルとの間に隙間を有したりする。このため、中空構造の気密状態を保つことは構造上極めて困難であった。
【0008】
そこで本発明では、中空構造の一部を部分加飾成形範囲に含む場合であっても、中空構造の減圧状態変移による圧潰変形を回避して確実に部分加飾成形を行うことのできる部分加飾成形方法、及び部分加飾成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく以下の手段を講じている。
(1)被着体の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲とし、所定の部分加飾成形装置を用いて、
被着体の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲とし、所定の部分加飾成形装置を用いて、
この加飾成形範囲に加飾フィルムを密着させて被着体を部分加飾成形する、加飾フィルムによる部分加飾成形方法であって、
下方に開口した箱状ないし容器状の囲い枠体の内部に加飾フィルムを張設状態で収容し、被着体の上部に囲い枠体を接触させて加飾成形範囲を囲い、囲い枠体と加飾成形範囲の間に、加飾フィルムで仕切られた密閉状態の上空間(A)と密閉状態の下空間とを区画形成する。密閉状態の下空間(B)及び上空間(A)を、互いに等圧の所定の減圧状態としたのちに、下空間(B)内を第一圧力状態に維持したまま、上空間(A)のみを、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放することによって、囲い空間の加飾成形範囲に加飾フィルムを部分加飾成形することを特徴とする部分加飾成形方法。
(2)前記所定の部分加飾成形装置は、
下開口した箱状空間を有し、被着体の一端部である加飾成形範囲の外縁を囲って被着体上部に接触配置される囲い枠体と、
この箱状空間内に、前記加飾成形範囲を上に向けた被着体を収容する囲い枠体の内部にて横方向に拡げた加飾フィルムの周部を保持して加飾フィルムを張架し得る保持枠と、
被着体に接触した状態の囲い枠体内の密閉空間の圧力を減圧状態ないし大気圧解放状態に制御する圧力制御装置と、を具備してなり、
前記所定の部分加飾成形装置を用いて、
前記加飾成形範囲の平面投影面積よりも大きい加飾フィルムを、下開口した囲い枠体内の所定高さの位置で横方向に拡げ、加飾フィルムの周部を保持枠で保持した状態とするフィルムセット工程と、囲い枠体の下開口を被着体の加飾成形範囲に対向させ、囲い枠体の下開口に取り付けた弾性材を介して密着し、囲い枠体内の空間に加飾フィルムを挟んで密閉状態の上空間と下空間とを、被着体上に上下に連成する密閉工程と、
前記圧力制御装置によって、密閉状態の下空間及び密閉状態の上空間を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とする第一圧力調整工程と、
密閉状態の下空間内を第一圧力状態に維持したまま、前記圧力制御装置によって、前記密閉状態の上空間を、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放し、上下空間の圧力差によって、加飾フィルムを瞬間的に被着体へ均一に密着させる加飾成形工程と、を順に具備することを特徴とする。
また、前記加飾成形工程の後に、被着体の加飾成形範囲の周囲に調整枠をセットし、これらの上方から、加飾成形範囲外にはみ出した余分な加飾フィルム端を所定の切断軌道でレーザーカットするカット工程を更に備える。
また、前記密閉工程の後であって加飾成形工程の前に、
囲い枠体内の密閉空間に張設された加飾フィルムを、囲い枠体の内側面及び内部天面に備えた複数のヒーターによって上方及び側方から加熱して軟化延伸及び弛緩化させ、被着体に近接させたドローダウン状態とするドローダウン工程をさらに具備する。
【0010】
前記の第二密閉工程によれば、加飾成形範囲の加飾面のみを囲い枠で囲うことで、上部に加飾フィルムが張設された密閉状態の囲い空間を、第一圧力状態に制御された密閉状態の下空間内に形成することができる。前記の第二圧力調整工程によれば、密閉状態の囲い空間内を第一圧力状態に維持した状態のまま、上空間内を瞬間的に加圧することで、上空間と囲い空間の圧力差によって加飾成形範囲に瞬間的に加飾成形を行うことができる。また、前記の第二圧力調整工程によれば、上空間内と下空間内とを互いに等圧力のまま瞬間的に加圧することで、囲い空間を除く下空間内には急激な減圧化による圧潰等の影響が生じない。
【0011】
このように上空間と下空間の間の第三の密閉空間として、下空間内に囲い空間を形成することにより、被着体の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがない。
また、被着体を受け冶具等で支える場合でも、被着体の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を設ける必要がなく、被着体の減圧時の成形保持性能に拘らず、複雑な形状の被着体であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体の部分加飾成形を行うことができる。例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲において密閉状態の囲い空間が形成されることで、被着体の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもない。
【0012】
(3)前記第一圧力工程は、囲い空間を除く密閉状態の下空間内及び密閉状態の上空間内を同時に吸引して、大気圧よりも減圧させた第一圧力状態とする工程であり、
前記第二圧力調整工程は、前記第一圧力調整工程で第一圧力状態とした、囲い空間を除く密閉状態の下空間内及び密閉状態の上空間を、同時に大気圧に開放して、大気圧と等圧の第二圧力状態とする工程であることが好ましい。
【0013】
前記の工程であれば、圧力制御装置として少なくとも、上ボックス及び下ボックスに連通する連通管とこれに接続する減圧ポンプを有していればよく、簡易な機構をもって確実な圧力制御を行うことができる。
【0014】
(4)前記第一密閉工程は、横方向に拡げた加飾フィルムの縁部を、上下移動可能な保持枠によって保持固定し、
前記上空間と下空間とを連成することで、加飾フィルムを保持した保持枠を、前記下空間内ないし上空間内に収容するものであり、
前記第二密閉工程は、前記保持枠を下降させて、被着体の加飾成形範囲を含む接触上面又は被着体上に配置された囲い枠体の接触面と、前記保持枠の対向接触面と、を接触させることで、被着体の加飾成形範囲の接触上面と、囲い枠体の枠内面と、加飾フィルムの下面とによって囲まれた囲い空間を形成するものであることが好ましい。
【0015】
前記第一密閉工程によれば、上下移動可能な保持枠を、予め上開口の上部近傍ないし下開口の下部近傍に配置しており、この保持枠によって保持した加飾フィルムを、上下に密閉連成された上空間ないし下空間の内部に収容することとなる。この状態では下空間内に囲い空間は形成されておらず、その後の第一圧力調整工程によって、下空間全体が第一圧力状態に調整される。そして続く第二密閉工程によって、第一圧力状態で密閉された下空間内に、同じく第一圧力状態で密閉された囲い空間が形成される。密閉状態の下空間内で保持枠を上下移動させ、気密性を保つまで接触させることで、第一圧力状態の囲い空間が容易に形成されることとなる。また上下移動可能な保持枠を使用することで、被着体を上方へ大幅に動かすことなく、容易かつ確実に囲い空間を密閉形成することができる。
【0016】
後述の実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠を囲い枠体に接触するまで下降させることで、被着体上に配置された囲い枠体の上接触面と、保持枠下部の対向接触面と、を接触させる。加飾成形範囲の平面視外方の被着体上には予め囲い枠体が接触配置されており、保持枠の枠内部には予め加飾フィルムが張架してセットされている。このため、前記囲い枠体と保持枠との対向接触によって、被着体の加飾成形範囲と囲い枠体の枠内面と加飾フィルムとに囲われた囲い空間が密閉形成される(図9(a)(b))。
【0017】
また後述の実施例2では、規制アングルを下降させ、規制アングルの下部に接触させた保持枠をベース枠体の枠底面に近接するように下降させることで、被着体の加飾成形範囲を含む接触面と、加飾フィルムとを接触させる。前記保持枠の下降によって、被着体の加飾成形範囲と加飾フィルムとに囲われた囲い空間が密閉形成される(図13(e))。
【0018】
(5)前記囲い枠体は、被着体上への配置接触部、又は保持枠の対向接触面への接触部の少なくともいずれかに、加圧接触によって弾性変形し得る弾性材を有してなり、
前記第二密閉工程は、被着体の加飾成形範囲を含む接触面又は被着体上に配置された囲い枠体の接触面と、前記保持枠の対向接触面と、を近接させて加圧接触させることで、被着体の加飾成形範囲の上面と、囲い枠体の枠内面と、加飾フィルムの下面とによって囲まれた囲い空間を気密形成するものであることが好ましい。
【0019】
前記囲い枠体を用いた第二密閉工程であれば、下降した保持枠との接触状態、或いは被着体上の配置接触の状態に因らず、囲い空間をより確実に気密形成することができる。尚後述の実施例では、囲い枠体全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材からなる。他の形態として、囲い枠体の外周部全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材によって覆設されてなるものでもよい。
【0020】
例えば後述の実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠を締付ベース体に近接するように下降させることで、被着体上に配置された囲い枠体の接触面と、前記保持枠の対向接触面と、を近接させて加圧接触させると共に、被着体上に配置された囲い枠体の接触面と、被着体の対向接触面と、を近接させて加圧接触させる。
【0021】
(6)被着体が加飾成形範囲を有する面の下部に開口部を有するものであって、
前記所定の部分加飾成形装置は、さらに、
前記被着体の開口部に係止して配設され、加飾成形範囲の外縁から被着体の平面視外方に一部分が突出し得る締付ベース体と、
締付ベース体と保持枠とを上下連結し、この上下連結距離を短縮させ得る連結棒と、を具備してなり、
前記収容工程は、締付ベース体を被着体の開口部に係止して配置した状態で、被着体を下ボックス内に収容するものであり、
前記フィルムセット工程は、保持枠を締付ベース体の上方かつ囲い枠体の上方に配置して、保持枠と締付ベース体とを、連結棒によって上下連結するものであり、
前記第二密閉工程は、上下連結した保持枠及び締付ベース体の上下連結距離を短縮させて、締付ベース体と保持枠との距離を近接させ、締付ベース体と保持枠とによって囲い枠体を上下に挟圧し、被着体の加飾成形範囲の上面と囲い枠体の枠内面と加飾フィルムとによって囲われた囲い空間を密閉形成することが好ましい。
【0022】
上記構成であれば、下開口した保持枠の弾性密着によって、加飾フィルムを介して上下に連成された囲い空間を、簡易にかつ確実に密閉形成することができる。
【0023】
前記保持枠は、保持枠32を備えた可搬式の本体枠22からなるものとし、前記圧力調整装置は、連通管1P/2P及びスイッチバルブSVを備えた可搬式の真空ポンプVPからなるものとしてもよい。また、前記レーザーカット装置は、必ずしも必須ではなく、必要に応じて手に握るハンドル付きのレーザー照射器32のみを備えた可搬式のカット装置を用いてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記構成によって、上空間と下空間の間の第三の密閉空間として、加飾フィルムと被着体の加飾成形範囲とに囲まれた囲い空間を形成し、囲い空間とその周囲の上空間及び下空間とで圧力差を生じさせて加飾成形している。これにより、被着体の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがないものとなった。また、被着体を受け冶具等で支える場合でも、被着体の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を受け冶具等に設ける必要がなく、複雑な形状の被着体であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体の部分加飾成形を行うことができるものとなった。これにより、例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲において密閉状態の囲い空間が形成されることで、被着体の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもなく、確実に圧力差による加飾成形を行うことができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1の部分加飾成形装置の第一状態図
図2】実施例1の部分加飾成形装置の第二状態図
図3】実施例1の部分加飾成形装置の第三状態図
図4】実施例1の部分加飾成形装置の第四状態図
図5】実施例1の部分加飾成形装置の第五状態図
図6】実施例1の部分加飾成形装置の第六状態図
図7図6のA-A拡大図
図8】実施例2の部分加飾成形装置の第一状態図
図9】実施例2の部分加飾成形装置の第二状態図
図10】実施例2の部分加飾成形装置の第三状態図
図11】実施例2の部分加飾成形装置の第四状態図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明の最良の形態につき、実施例1及び2として示す説明図と共に説明する。なお、以下に括弧付きで示す数字やアルファベットは図面参照のために便宜的に付した符号であり、構成の名称を特定し或いは内容を実施例の形態に限定するものではない。
【0027】
いずれの実施例においても、本発明の部分加飾成形方法は、被着体の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲とし、本発明の所定の部分加飾成形装置を用いて、この加飾成形範囲に加飾フィルムを密着させて被着体を部分加飾成形する、加飾フィルムによる部分加飾成形方法である。特に、加飾成形範囲の成形板材の一部に中空構造を有する被着体を、部分加飾成形の対象物とし、また特に、被着体の表面全体ではなく表面の一部である所定範囲を部分加飾成形範囲として、この部分加飾成形範囲にのみ加飾成形を行う部分加飾成形方法である。被着体として特に、後述の実施例1のように加飾成形範囲を有する面の下部に開口部を有するものを使用することができる。
【0028】
本発明の前記所定の部分加飾成形装置は、少なくとも、
上開口した下空間を有し、この下空間内に、前記加飾成形範囲を上に向けた被着体を収容する下ボックスと、
下開口した上空間を有し、この下開口と前記下ボックスの前記上開口とを対向させ、下開口と上開口との間に加飾フィルムを挟んだ状態で、上空間を前記下空間の上部に密閉連成し得る上ボックスと、
加飾成形範囲の平面投影面積よりも大きい枠孔を有し、この枠孔内に、横方向に拡げた加飾フィルムの周部を保持して加飾フィルムを張架し得る保持枠と、
前記上ボックスが下ボックスの上部に密閉配置された状態で、上空間内及び下空間内の圧力を制御する圧力制御装置と、を具備してなる。
【0029】
本発明の部分加飾成形方法は、前記所定の部分加飾成形装置を用いて、少なくとも以下の各工程を行う。
すなわち、前記加飾成形範囲の平面投影面積よりも大きい加飾フィルムを、下開口した囲い枠体内の所定高さの位置で横方向に拡げ、加飾フィルムの周部を保持枠で保持した状態とするフィルムセット工程と、囲い枠体の下開口を被着体の加飾成形範囲に対向させて囲い枠体の下開口に取り付けた弾性材を介して弾性密着し、囲い枠体内の空間に加飾フィルムを挟んで密閉状態の上空間と下空間とを、被着体上に上下に連成する密閉工程と、
囲い枠体内の密閉空間に張設された加飾フィルムを、囲い枠体の内側面及び内部天面に備えたヒーター221H,220Hによって加熱してドローダウン(軟化延伸及び弛緩化)させ、被着体に近接させるドローダウン工程と、
前記圧力制御装置によって、密閉状態の下空間及び密閉状態の上空間を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とする第一圧力調整工程と、
密閉状態の下空間内を第一圧力状態に維持したまま、前記圧力制御装置によって、前記密閉状態の上空間を、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放し、上下空間の圧力差によって、ドローダウンした加飾フィルムを瞬間的に被着体へ均一に密着させる加飾成形工程と、
加飾成形工程の後に、被着体の加飾成形範囲の周囲に調整枠をセットし、これらの上方から、加飾成形範囲外にはみ出した余分な加飾フィルム端を所定の切断軌道でレーザーカットするカット工程と、からなる各工程である。
【0030】
以下、各工程につき説明する。
先ず、フィルムセット工程として、下方に開口した箱状ないし容器状の囲い枠体(2)の内部に加飾フィルム(F)を張設状態(S1)で収容し、密閉工程として、被着体(W)の上部に囲い枠体(2)を接触させて加飾成形範囲(CA)を囲い、囲い枠体(2)と加飾成形範囲(CA)の間に、加飾フィルムで仕切られた密閉状態の上空間(A)と密閉状態の下空間(B)とを区画形成する。
【0031】
なお囲い枠体(2)には、下方の開口端から所定の高さだけ上方の位置に、加飾フィルム(F)を保持する保持枠(23)が内装されており、また、開口した枠体下端に、被着体へ弾性接触して密着する下方先細り断面の密着枠20が形成される。また、前記保持枠(23)よりも下方及び上方の枠体側面に、それぞれ連通管(1P)及び(2P)が接続される。上下の連通管(1P)(2P)は囲い枠体(2)の外部に設置された圧力制御装置に接続されている。
【0032】
次に、ドローダウン工程として、図2に示すように、囲い枠体(2)の内部に張設した加飾フィルムFを、枠内天面に備えた上部ヒーター220H及び枠内側面に備えた側部ヒーター221Hによって過熱してドローダウン状態とする。
【0033】
次いで第一圧力調整工程として、図3に示すように、圧力制御装置の真空ポンプVPによって密閉状態の下空間(B)及び上空間(A)を、互いに等圧の所定の減圧状態とする。その後、加飾成形工程として、下空間(B)内を第一圧力状態に維持したまま、上空間(A)のみを、前記減圧状態から瞬間的に大気圧開放することによって、図4に示すように、囲い空間の加飾成形範囲に加飾フィルムを部分加飾成形することを特徴とする。
【0034】
加飾成形後は、保持枠23の保持を解除して、保持枠を加飾成形範囲から取り外した後に、カット工程として、図5図6に示すように、加飾成形範囲の周囲に調整枠(4)を取り付け、調整枠(4)の上方からレーザーカット装置(3)をセットして、図7に示すように、保持枠外にはみ出した余分な加飾フィルム端FEを、レーザー光3Lの反射先の切断縁で切断する。図7では、リアスポイラの下方傾斜面からなる背面WSの所定位置を切断縁とし、上方からのレーザー光照射を、傾斜鏡面を有する反射枠42の内面で反射させて、側方光に方向転換させてレーザーカットするものとしている。なお、レーザー照射器32はアーム31に支持され、アーム31はカット装置本体30の下部面内を設定軌道に従って移動するように位置制御されている(図7)。
【0035】
また、前記所定の部分加飾成形装置は、
下開口した箱状空間を有し、被着体の一端部である加飾成形範囲の外縁を囲って被着体上部に接触配置される囲い枠体(2)と、
この箱状空間内に、前記加飾成形範囲を上に向けた被着体を収容する囲い枠体の内部にて横方向に拡げた加飾フィルムの周部を保持して加飾フィルムを張架し得る保持枠(23)と、
被着体に接触した状態の囲い枠体内の密閉空間の圧力を減圧状態ないし大気圧解放状態に制御する圧力制御装置と、
加飾成形範囲外にはみ出た余分な加飾フィルム端FEを切断するレーザーカット装置(3)と、レーザーカット装置(3)によるレーザー光を反射させて切断位置を調整する調整枠(4)と、を具備してなることを特徴とする。
【0036】
本発明の加飾成形方法は、上記第二密閉工程よって、下空間内に密閉状態の囲い空間を形成し、さらに上記第二圧力調整工程によって、囲い空間のみを周囲の上空間及び下空間に対し減圧状態に状態変移させることで、密閉状態に囲われた囲い空間下縁の加飾成形範囲に加飾フィルムを部分加飾成形する。密閉空間の下空間、密閉空間の上空間の他に、3つ目の密閉空間である囲い空間を形成し、この囲い空間のみを減圧状態に瞬間状態変移させるため、加飾成形範囲の成形板材の下部に中空構造を含んでいたとしても、当該中空構造は下空間に含まれることとなり、減圧変移による中空構造の減圧による圧潰等の影響を回避することができる。
【0037】
上記中空空間の形成手段として、実施例1では、加飾成形範囲の外周を囲って被着体上に配置された囲い枠体と、横方向すなわち略水平方向に張架させた加飾フィルムを保持したまま囲い枠体上方から囲い枠体に降下接触させる上下可動式の保持枠と、を備えてなる。また上記中空空間の形成手段として、実施例2では、加飾成形範囲の外周を囲って下空間の上半部を区画するベース枠体と、横方向すなわち略水平方向に張架させた加飾フィルムを保持したまま被着体上方から被着体に降下接触させる上下可動式の保持枠と、を備えてなる。なお、実施例2の構造においてさらに加飾成形範囲の外周を囲って被着体上に配置された囲い枠体を備えてもよい。
以下、実施例の各構成につき詳述する。
【実施例1】
【0038】
図1図10に示す実施例1の部分加飾成形装置は、被着体(W)の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲(MA)とし、この加飾成形範囲(MA)に加飾フィルム(F)を密着させて被着体(W)を部分加飾成形する部分加飾成形装置であって、
上開口した下空間を有し、この下空間内に、前記加飾成形範囲(MA)を上に向けた被着体(W)を収容する下ボックス(1)と、
下開口した上空間(A)を有し、この下開口と前記下ボックス(1)の前記上開口とを対向させ、下開口と上開口との間に加飾フィルム(F)を挟んだ状態で、上空間(A)を前記下空間の上部に密閉連成し得る上ボックス(2)と、
加飾成形範囲(MA)の平面投影面積よりも大きい枠孔を有し、この枠孔内に、横方向に拡げた加飾フィルム(F)の周部を保持して加飾フィルム(F)を張架し得る保持枠(32)と、
前記上ボックス(2)が下ボックス(1)の上部に密閉配置された状態で、上空間(A)内及び下空間内の圧力を制御する圧力制御装置と、を具備し、これらの構造に加えてさらに、
前記被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の外縁を囲って被着体(W)上部に接触配置される囲い枠体(2)と、
前記被着体(W)の開口部(WH1)に係止して配設され、加飾成形範囲(MA)の外縁から被着体(W)の平面視外方に一部分が突出し得る締付ベース体(3)と、
締付ベース体(3)と保持枠(32)とを上下連結し、この上下連結距離を短縮させ得る連結棒と、を具備してなる。
【0039】
下ボックス(1)及び上ボックス(2)は、対向させた下開口と上開口との間に、加飾フィルム(F)を張架した保持枠(32)を挟んで、上空間(A)と下空間とを上下に連成して共に密閉状態とし得る。
【0040】
(下ボックス(1))
下ボックス(1)は、図1~3又は図4~5に示すように、大型の被着体(W)全体を収容し得る下空間(B)を有した箱型の六面体において、前面と上面の2面にそれぞれ前開口(101)と上開口(102)とが形成され、さらに、前開口(101)を密閉閉塞可能な前扉(14)と、底内に引き出し可能に収容された底板(13)とがスライド移動可能に付属される。また箱型の六面体の周囲を囲って作業用足場(15F)と作業用足場(15F)に連なる昇降階段(15S)とが設けられる。前扉(14)は、開状態(O)では下ボックス(1)の片側部に固定されたスライド台(24)の前面にスライド移動し(図2図4)、閉状態(S)では前開口(101)全体を塞ぐように下ボックス(1)の前面にスライド移動する(図5)。なお、このスライド移動はスライド台(24)の前面に水平形成された扉レール(241)によってスライド方向が規制され、閉状態(S)ではガスケット(141)によって前開口(101)を密閉状態で閉塞する。
底板(13)は前開口(101)が開状態(O)のときに前開口よりも前方へ引き出し可能にスライド支持され、引き出し状態(O)で被着体(W)を載置したのちに収納状態(I)で被着体(W)を下ボックス(1)内に収容する(図2~3、図4~5)。下ボックス(1)の側部には、圧力制御装置(真空ポンプVP、スイッチバルブSV、電磁バルブOVからなる、囲い枠体内の圧力を減圧又は大気圧に切替える制御装置をいう。)に連通した連通管(1P)が接続される。
【0041】
圧力制御装置は囲い枠体内の圧力を減圧又は大気圧に切替える制御装置であって、具体的には図1図4に示すように、真空ポンプVP、スイッチバルブSV、電磁バルブOVからなる。
【0042】
図2に示す前セット工程においては、この下ボックス(1)の底板(13)を引き出し状態として底板状に被着体(W)を載置し、被着体(W)の開口部(WH1,WH2,WH3)に2本の板状の締付ベース体(31)を挿通させて、締付ベース体(31)の両端の接続孔(31C)が被着体(W)の左右に突出した状態とする。2本の締付ベース体(31)は被着体(W)の側部に突出した接続孔(31C)同士を連結器(312)で連結させておく。
【0043】
そして図3に示す収容工程において、被着体(W)の上部に囲い枠体(2)たる気密枠(2)を接触させて加飾成形範囲(MA)を囲った状態とし、下空間内に被着体(W)及び囲い枠体(2)を収容した状態とする。このとき連結器(312)を取り外し、締付ベース体(31)の高さを規制する縦方向の連結棒(34)を接続孔(31C)に接続する。また、続く保持工程のために、上開口(102)の開口上部近傍に下保持枠(321)をセットする。
【0044】
(上ボックス)
上ボックス(2)は、スライド台(24)上を左右にスライド移動可能なスライド保持枠の上側部に支持されると共に、支持アーム(211)によって上下に昇降移動可能に支持される。上ボックス(2)の側部には、図示しない圧力制御装置に連通した連通管(1P)が接続される。上ボックス(2)は方形の天板の四方を縦方向の側枠(21)で囲われることで、内部の上空間(A)を有する。側枠(21)の枠下面(22)が下ボックスの側上面(12)に対向してなる。図8に示す第一密閉工程において上ボックス(2)の枠下面(22)と下ボックスの側上面(12)とが、保持規制体(4)の保持バンド(41)を挟んで当接し、上空間及び下空間の密閉状態を形成する。
【0045】
上空間内には、保持した加飾フィルム(F)を加熱する加熱ヒーター(2H)が配置される。加熱ヒーター(2H)は第一密閉工程の後に加飾フィルム(F)を加熱してドローダウン状態の加飾フィルム(F´)とする。ドローダウン状態の加飾フィルム(F´)は半溶融化することで自重によって湾曲した垂れ下がり状態と成り、圧力変動時に加飾成形可能な状態となっている(図9)。
(保持枠(32))
保持枠(32)は、加飾成形範囲(MA)の平面投影面積よりも大きい加飾フィルム(F)の周部を、上開口の上方又は下開口の下方で横方向に拡げて張架した状態で、枠孔内に保持した状態とし得る。
【0046】
(囲い枠体(2))
囲い枠体(2)は、加飾成形範囲(MA)の平面投影面積よりも大きい枠孔(330)を有して平面視四方枠状に一体形成された方形枠である。枠内面(331)は枠孔中心方向寄り且つ上方寄りの斜め方向を法線とする傾斜面で形成され、解放状態で所定の枠高さ(33H)を有してなる。囲い枠体(2)は弾性材で周囲をおおわれてなり、図9に示す第二密閉工程において弾性変形することで、枠高さ(33H)は圧縮されたより小さい枠高さ(33H´)となる。
【0047】
(囲い空間(C))
加飾フィルム(F)を保持して張架した保持枠(32)と、囲い枠体(2)とは、密閉状態の下空間において接触することで、保持枠(32)に保持して張架された加飾フィルム(F)を囲い空間(C)上縁とし、加飾成形範囲(MA)の被着体(W)を囲い空間(C)下縁として、囲い枠体(2)の枠内部に密閉状態の囲い空間(C)を形成する。
【0048】
(圧力制御装置)
圧力制御装置は、密閉状態の下空間及び密閉状態の上空間(A)を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とし得ると共に、密閉状態の囲い空間(C)内を第一圧力状態に維持したまま、前記密閉状態の囲い空間(C)を除く密閉状態の下空間と密閉状態の上空間(A)とを、前記減圧状態から瞬間的に加圧し、互いに等圧の第二圧力状態とし得る。
(部分加飾成形方法)また本発明の実施例1の部分加飾成形方法は、前記所定の部分加飾成形装置を用いて、囲い空間(C)の加飾成形範囲(MA)に加飾フィルム(F)を部分加飾成形する方法であって、以下の各工程を含む。
被着体(W)の上部に囲い枠体(2)を接触させて加飾成形範囲(MA)を囲い、かつ、下ボックス(1)内に被着体(W)及び囲い枠体(2)を収容した状態とする収容工程と、
前記加飾成形範囲(MA)の平面投影面積よりも大きい加飾フィルム(F)を、上開口の上方又は下開口の下方で横方向に拡げ、加飾フィルム(F)の周部を保持枠(32)で保持した状態とするフィルムセット工程と、
下ボックス(1)の上開口と上ボックス(2)の下開口とを対向させ、下開口と上開口との間に加飾フィルム(F)を挟んで上空間(A)と下空間とを上下に連成し、密閉状態の上空間(A)と密閉状態の下空間とを形成する第一密閉工程と、
前記圧力制御装置によって、密閉状態の下空間及び密閉状態の上空間(A)を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とする第一圧力調整工程と、
前記密閉状態の下空間において、加飾フィルム(F)又はその周部の保持枠(32)と、囲い枠体(2)と、を互いに接触させ、囲い枠体(2)の枠内部に密閉状態の囲い空間(C)を形成する第二密閉工程と、
密閉状態の囲い空間(C)内を第一圧力状態に維持したまま、前記圧力制御装置によって、前記密閉状態の囲い空間(C)を除く密閉状態の下空間と密閉状態の上空間(A)とを、前記減圧状態から瞬間的に加圧し、互いに等圧の第二圧力状態とする第二圧力調整工程と、からなる各工程を含む。
【0049】
前記の第二密閉工程によれば、加飾成形範囲(MA)の加飾面のみを囲い枠で囲うことで、上部に加飾フィルム(F)が張設された密閉状態の囲い空間(C)を、第一圧力状態に制御された密閉状態の下空間内に形成することができる。前記の第二圧力調整工程によれば、密閉状態の囲い空間(C)内を第一圧力状態に維持した状態のまま、上空間(A)内を瞬間的に加圧することで、上空間(A)と囲い空間(C)の圧力差によって加飾成形範囲(MA)に瞬間的に加飾成形を行うことができる。また、前記の第二圧力調整工程によれば、上空間(A)内と下空間内とを互いに等圧力のまま瞬間的に加圧することで、囲い空間(C)を除く下空間(B)内には圧力差による影響が生じない。
【0050】
このように上空間(A)と下空間の間の第三の密閉空間として、下空間内に囲い空間(C)を形成することにより、被着体(W)の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがない。
また、被着体(W)を受け冶具等で支える場合でも、被着体(W)の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を設ける必要がなく、被着体(W)の減圧時の成形保持性能に拘らず、複雑な形状の被着体(W)であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体(W)の部分加飾成形を行うことができる。例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲(MA)において密閉状態の囲い空間(C)が形成されることで、被着体(W)の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもない。
(第一圧力工程、第二圧力調整工程)
前記第一圧力工程は、囲い空間(C)を除く密閉状態の下空間内及び密閉状態の上空間(A)内を同時に吸引して、大気圧よりも減圧させた第一圧力状態とする工程であり、
前記第二圧力調整工程は、前記第一圧力調整工程で第一圧力状態とした、囲い空間(C)を除く密閉状態の下空間内及び密閉状態の上空間(A)を、同時に大気圧に開放して、大気圧と等圧の第二圧力状態とする工程である。前記の工程であれば、圧力制御装置として少なくとも、上ボックス(2)及び下ボックス(1)に連通する連通管とこれに接続する減圧ポンプを有していればよく、簡易な機構をもって確実な圧力制御を行うことができる。
(囲い空間(C)の形成)
前記第一密閉工程は、横方向に拡げた加飾フィルム(F)の縁部を、上下移動可能な保持枠(32)によって保持固定し、
前記上空間(A)と下空間とを連成することで、加飾フィルム(F)を保持した保持枠(32)を、前記下空間内ないし上空間(A)内に収容するものであり、
前記第二密閉工程は、前記保持枠(32)を下降させて、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)を含む接触上面又は被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、前記保持枠(32)の対向接触面と、を接触させることで、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の接触上面と、囲い枠体(2)の枠内面と、加飾フィルム(F)の下面とによって囲まれた囲い空間(C)を形成するものである。
【0051】
前記第一密閉工程によれば、上下移動可能な保持枠(32)を、予め上開口の上部近傍ないし下開口の下部近傍に配置しており、この保持枠(32)によって保持した加飾フィルム(F)を、上下に密閉連成された上空間(A)ないし下空間の内部に収容することとなる。この状態では下空間内に囲い空間(C)は形成されておらず、その後の第一圧力調整工程によって、下空間全体が第一圧力状態に調整される。そして続く第二密閉工程によって、第一圧力状態で密閉された下空間内に、同じく第一圧力状態で密閉された囲い空間(C)が形成される。密閉状態の下空間内で保持枠(32)を上下移動させ、気密性を保つまで接触させることで、第一圧力状態の囲い空間(C)が容易に形成されることとなる。また上下移動可能な保持枠(32)を使用することで、被着体(W)を上方へ大幅に動かすことなく、容易かつ確実に囲い空間(C)を密閉形成することができる。
【0052】
特に実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を囲い枠体(2)に接触するまで下降させることで、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の上接触面と、保持枠(32)下部の対向接触面と、を接触させる。加飾成形範囲(MA)の平面視外方の被着体(W)上には予め囲い枠体(2)が接触配置されており、保持枠(32)の枠内部には予め加飾フィルム(F)が張架してセットされている。このため、前記囲い枠体(2)と保持枠(32)との対向接触によって、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)と囲い枠体(2)の枠内面と加飾フィルム(F)とに囲われた囲い空間(C)が密閉形成される(図9(a)(b))。
(囲い枠体(2))
前記囲い枠体(2)は、被着体(W)上への配置接触部、又は保持枠(32)の対向接触面への接触部の少なくともいずれかに、加圧接触によって弾性変形し得る弾性材を有してなり、
前記第二密閉工程は、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)を含む接触面又は被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、前記保持枠(32)の対向接触面と、を近接させて加圧接触させることで、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の上面と、囲い枠体(2)の枠内面と、加飾フィルム(F)の下面とによって囲まれた囲い空間(C)を気密形成するものである。
【0053】
前記囲い枠体(2)を用いた第二密閉工程であれば、下降した保持枠(32)との接触状態、或いは被着体(W)上の配置接触の状態に因らず、囲い空間(C)をより確実に気密形成することができる。尚後述の実施例では、囲い枠体(2)全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材からなる。他の形態として、囲い枠体(2)の外周部全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材によって覆設されてなるものでもよい。
【0054】
実施例1では具体的には囲い枠体(2)の表面部全体が弾性材で覆設されており、保持枠(32)との加圧接触、及び被着体(W)との加圧接触によって、囲い空間(C)側部の気密性を保つものとなっている。また実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を締付ベース体(3)に近接するように下降させることで、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、前記保持枠(32)の対向接触面と、を近接させて加圧接触させると共に、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、被着体(W)の対向接触面と、を近接させて加圧接触させる。
(締付ベース体(3)及び連結棒)
前記所定の部分加飾成形装置は、さらに、
前記被着体(W)の開口部(WH1)に係止して配設され、加飾成形範囲(MA)の外縁から被着体(W)の平面視外方に一部分が突出し得る締付ベース体(3)と、
締付ベース体(3)と保持枠(32)とを上下連結し、この上下連結距離を短縮させ得る連結棒と、を具備してなる。
前記収容工程は、締付ベース体(3)を被着体(W)の開口部(WH1)に係止して配置した状態で、被着体(W)を下ボックス(1)内に収容するものであり、
前記フィルムセット工程は、保持枠(32)を締付ベース体(3)の上方かつ囲い枠体(2)の上方に配置して、保持枠(32)と締付ベース体(3)とを、連結棒によって上下連結するものであり、
前記第二密閉工程は、上下連結した保持枠(32)及び締付ベース体(3)の上下連結距離を短縮させて、締付ベース体(3)と保持枠(32)との距離を近接させ、締付ベース体(3)と保持枠(32)とによって囲い枠体(2)を上下に挟圧し、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の上面と囲い枠体(2)の枠内面と加飾フィルム(F)とによって囲われた囲い空間(C)を密閉形成する。
【0055】
上記構成であれば、締付ベース体(3)と保持枠(32)とによって、囲い枠体(2)及び囲い枠体(2)で囲んだ被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の部分を挟み込むことで、囲い空間(C)を、簡易にかつ確実に密閉形成することができる。
【0056】
例えば後述の実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を締付ベース体(3)に近接するように下降させることで、加飾成形範囲(MA)下部の締付ベース体(3)と、加飾成形範囲(MA)上部の保持枠(32)との距離を近接させ、これら締付ベース体(3)と保持枠(32)とで囲い枠体(2)を上下に挟圧し、加飾成形範囲(MA)と囲い枠体(2)の枠内面と加飾フィルム(F)とによって囲われた囲い空間(C)を密閉形成する。
【実施例2】
【0057】
被着体(W)の一端部寄りの所定範囲の面を加飾成形範囲(MA)とし、所定の部分加飾成形装置を用いて、
この加飾成形範囲(MA)に加飾フィルム(F)を密着させて被着体(W)を部分加飾成形する、加飾フィルム(F)による部分加飾成形方法であって、
前記所定の部分加飾成形装置は、
下開口した上内部空間(A)を有し、内部空間内の所定の高さ方向の位置に加飾フィルム(F)を挟んで張設した状態で、この下開口を被着体の加飾成形範囲に対向させ、加飾フィルムによって仕切られた上空間(A)及び下空間(B)を前記下区画空間の上部に密閉連成し得る囲い枠体(2)と、
囲い枠体内にて高さ方向を移動可能に配設され、内部空間内で加飾フィルムを下開口の開口面と平行に張設保持し得ると共に、内部空間の下端に移動した状態で囲い枠体の下開口縁と密着する保持枠(3)と、
囲い枠体の下開口の開口縁に沿って密着する水平状の保持外枠を有すると共に、被着体の加飾成形範囲(CA)の範囲外縁からその外方までに密着する傾斜状の密着内枠を有した調整枠(4)と、
前記囲い枠体に接続可能な連通管を有し、連通管を通じて囲い枠体の内部空間内の圧力を制御する圧力制御装置と、を具備してなり、
前記所定の部分加飾成形装置を用いて、
加飾成形範囲(SA)の平面投影面積よりも大きい加飾フィルム(F)を、囲い枠体内で下開口と並行に拡げて、加飾フィルム(F)の周部を保持枠(3)で保持した状態とするフィルムセット工程と、
被着体の加飾成形範囲を囲って、被着体に調整枠(4)を密着させ、調整枠の保持外枠に囲い枠体を載置して密着させ、被着体(W)の加飾成形範囲上に、加飾フィルム(F)を挟んで上空間(A)と下区画空間とを上下に連成する第一密閉工程と、
前記圧力制御装置によって、密閉状態の内部空間を、互いに等圧の所定の第一圧力状態とする第一圧力調整工程と、
前記密閉状態の内部空間において、保持枠を下開口の下端にまで移動させて、加飾フィルム(F)及びその周部の保持枠(31)と、下開口の開口縁の内側に位置した調整枠(4)と、被着体の加飾成形範囲とで、密閉された囲い空間(B)を形成する区画工程と、

密閉状態の囲い空間(B)内を第一圧力状態に維持したまま、前記圧力制御装置によって、前記密閉状態の囲い空間(B)を除く密閉状態の上空間(A)を、前記減圧状態から瞬間的に加圧し、互いに等圧の第二圧力状態とする第二圧力調整工程と、からなる各工程を含み、
前記第二圧力調整工程によって、囲い空間(B)の加飾成形範囲(MA)に加飾フィルム(F)を部分加飾成形することを特徴とする、加飾フィルム(F)による部分加飾成形方法。
【0058】
前記の第二密閉工程によれば、加飾成形範囲(MA)の加飾面のみを囲い枠で囲うことで、上部に加飾フィルム(F)が張設された密閉状態の囲い空間(C)を、第一圧力状態に制御された密閉状態の下区画空間内に形成することができる。前記の第二圧力調整工程によれば、密閉状態の囲い空間(C)内を第一圧力状態に維持した状態のまま、上空間(A)内を瞬間的に加圧することで、上空間(A)と囲い空間(C)の圧力差によって加飾成形範囲(MA)に瞬間的に加飾成形を行うことができる。また、前記の第二圧力調整工程によれば、上空間(A)内と下区画空間内とを互いに等圧力のまま瞬間的に加圧することで、囲い空間(C)を除く下区画空間内には圧力差による影響が生じない。
【0059】
このように上空間(A)と下区画空間の間の第三の密閉空間として、下区画空間内に囲い空間(C)を形成することにより、被着体(W)の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがない。
また、被着体(W)を受け冶具等で支える場合でも、被着体(W)の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を設ける必要がなく、被着体(W)の減圧時の成形保持性能に拘らず、複雑な形状の被着体(W)であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体(W)の部分加飾成形を行うことができる。例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲(MA)において密閉状態の囲い空間(C)が形成されることで、被着体(W)の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもない。
【0060】
(囲いアングルの密閉形成)
実施例2では、規制アングル(42)を下降させ、規制アングル(42)の下部に接触させた保持枠(32)をベース枠体(16)の枠底面に近接するように下降させることで、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)を含む接触面と、加飾フィルム(F)とを接触させる。前記保持枠(32)の下降によって、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)と加飾フィルム(F)とに囲われた囲い空間(C)が密閉形成される(図13(e))。
【0061】
上記構成であれば、締付ベース体(3)と保持枠(32)とによって、囲い枠体(2)及び囲い枠体(2)で囲んだ被着体(W)の加飾成形範囲(MA)の部分を挟み込むことで、囲い空間(C)を、簡易にかつ確実に密閉形成することができる。
【0062】
例えば後述の実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を締付ベース体(3)に近接するように下降させることで、加飾成形範囲(MA)下部の締付ベース体(3)と、加飾成形範囲(MA)上部の保持枠(32)との距離を近接させ、これら締付ベース体(3)と保持枠(32)とで囲い枠体(2)を上下に挟圧し、加飾成形範囲(MA)と囲い枠体(2)の枠内面と加飾フィルム(F)とによって囲われた囲い空間(C)を密閉形成する。
【0063】
前記の第二密閉工程によれば、加飾成形範囲(MA)の加飾面のみを囲い枠で囲うことで、上部に加飾フィルム(F)が張設された密閉状態の囲い空間(C)を、第一圧力状態に制御された密閉状態の下空間内に形成することができる。前記の第二圧力調整工程によれば、密閉状態の囲い空間(C)内を第一圧力状態に維持した状態のまま、上空間(A)内を瞬間的に加圧することで、上空間(A)と囲い空間(C)の圧力差によって加飾成形範囲(MA)に瞬間的に加飾成形を行うことができる。また、前記の第二圧力調整工程によれば、上空間(A)内と下空間内とを互いに等圧力のまま瞬間的に加圧することで、囲い空間(C)を除く下空間(B)内には圧力差による影響が生じない。
【0064】
このように上空間(A)と下空間の間の第三の密閉空間として、下空間内に囲い空間(C)を形成することにより、被着体(W)の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがない。
また、被着体(W)を受け冶具等で支える場合でも、被着体(W)の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を設ける必要がなく、被着体(W)の減圧時の成形保持性能に拘らず、複雑な形状の被着体(W)であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体(W)の部分加飾成形を行うことができる。例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲(MA)において密閉状態の囲い空間(C)が形成されることで、被着体(W)の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもない。
【0065】
前記の工程であれば、圧力制御装置として少なくとも、上ボックス(2)及び下ボックス(1)に連通する連通管とこれに接続する減圧ポンプを有していればよく、連通管をバイパスさせて減圧ポンプに連通させることで、簡易な機構をもって確実な圧力制御を行うことができる。
【0066】
前記第一密閉工程によれば、上下移動可能な保持枠(32)を、予め上開口の上部近傍ないし下開口の下部近傍に配置しており、この保持枠(32)によって保持した加飾フィルム(F)を、上下に密閉連成された上空間(A)ないし下空間の内部に収容することとなる。この状態では下空間内に囲い空間(C)は形成されておらず、その後の第一圧力調整工程によって、下空間全体が第一圧力状態に調整される。そして続く第二密閉工程によって、第一圧力状態で密閉された下空間内に、同じく第一圧力状態で密閉された囲い空間(C)が形成される。密閉状態の下空間内で保持枠(32)を上下移動させ、気密性を保つまで接触させることで、第一圧力状態の囲い空間(C)が容易に形成されることとなる。また上下移動可能な保持枠(32)を使用することで、被着体(W)を上方へ大幅に動かすことなく、容易かつ確実に囲い空間(C)を密閉形成することができる。
【0067】
後述の実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を囲い枠体(2)に接触するまで下降させることで、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の上接触面と、保持枠(32)下部の対向接触面と、を接触させる。加飾成形範囲(MA)の平面視外方の被着体(W)上には予め囲い枠体(2)が接触配置されており、保持枠(32)の枠内部には予め加飾フィルム(F)が張架してセットされている。このため、前記囲い枠体(2)と保持枠(32)との対向接触によって、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)と囲い枠体(2)の枠内面と加飾フィルム(F)とに囲われた囲い空間(C)が密閉形成される(図9(a)(b))。
【0068】
実施例1のように囲い枠体(2)を用いた第二密閉工程であれば、下降した保持枠(32)との接触状態、或いは被着体(W)上の配置接触の状態に因らず、囲い空間(C)をより確実に気密形成することができる。実施例1では、囲い枠体(2)全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材からなる。他の形態として、囲い枠体(2)の外周部全体が、外接触部との気密性を保持する弾性材によって覆設されてなるものでもよい。
【0069】
実施例1では、連結棒を回転させ、保持枠(32)を締付ベース体(3)に近接するように下降させることで、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、前記保持枠(32)の対向接触面と、を近接させて加圧接触させると共に、被着体(W)上に配置された囲い枠体(2)の接触面と、被着体(W)の対向接触面と、を近接させて加圧接触させる。
【0070】
また実施例2では、規制アングル(42)を下降させ、規制アングル(42)の下部に接触させた保持枠(32)をベース枠体(16)の枠底面に近接するように下降させることで、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)を含む接触面と、加飾フィルム(F)とを接触させる。前記保持枠(32)の下降によって、被着体(W)の加飾成形範囲(MA)と加飾フィルム(F)とに囲われた囲い空間(C)が密閉形成される(図13(e))。
【0071】
実施例2のように被着体を受け冶具等で支える場合でも、被着体の下面側を同じ圧力とするための導圧回路を設ける必要がなく、被着体の減圧時の成形保持性能に拘らず、複雑な形状の被着体であっても、比較的簡易な構造で確実に被着体の部分加飾成形を行うことができる。例えば範囲の裏側に微細な穴ないし孔、溶接部、接着部、或いは内部空間が存在していた場合でも、被着面の部分加飾成形範囲において密閉状態の囲い空間が形成されることで、被着体の成形部分が変形したり欠損したりすることなく、また、圧力漏れが生じることもない。
【0072】
本発明では、被着体の上部に囲い枠体を接触させて加飾成形範囲を囲い、被着体を収容して密閉状態の上空間と密閉状態の下空間とを形成し、密閉状態の下空間及び上空間を、互いに等圧の所定の第一圧力状態としたのちに、加飾フィルムと加飾成形範囲の被着体とに上下を囲われた密閉状態の囲い空間を形成する。そして囲い空間内を第一圧力状態に維持したまま、囲い空間周囲の下空間と上空間とを、前記減圧状態から瞬間的に加圧し、互いに等圧の第二圧力状態とすることによって、囲い空間の加飾成形範囲に加飾フィルムを部分加飾成形する。但し下空間と上空間とは互いに等圧のまま瞬間的に加圧する。このように上空間と下区画空間の間の第三の密閉空間として、下区画空間内に囲い空間を形成することにより、被着体の加飾面の裏側に窪みや孔や隙間がある場合であっても、第二圧力工程による急激な圧力差による影響を受けることがない。
【0073】
前記の第二密閉工程によれば、加飾成形範囲の加飾面のみを囲い枠で囲うことで、上部に加飾フィルムが張設された密閉状態の囲い空間を、第一圧力状態に制御された密閉状態の下区画空間内に形成することができる。前記の第二圧力調整工程によれば、密閉状態の囲い空間内を第一圧力状態に維持した状態のまま、上空間内を瞬間的に加圧することで、上空間と囲い空間の圧力差によって加飾成形範囲に瞬間的に加飾成形を行うことができる。また、前記の第二圧力調整工程によれば、上空間内と下区画空間内とを互いに等圧力のまま瞬間的に加圧することで、囲い空間を除く下区画空間内には圧力差による影響が生じない。
【符号の説明】
【0074】
F、F´、F´´ 加飾フィルム
F0 加飾フィルムロール
MA 加飾成形範囲
MD 窪み部
W 被着体
WH1 WH2 WH3 開口部
1 下ボックス
1P 下連通管
11 側枠
12 枠上面
13 底板(O:引出し状態、I:収納状態)
14 前扉(O:開状態、S:閉状態)
141 ガスケット
101 前開口(O:開状態、S:閉状態)
102 上開口
16 ベース枠体(16)
161 側枠 162 上枠
17 受け冶具
18 支柱
2 上ボックス
2H ヒーター
2P 上連通管
21 側枠 211 支持アーム
22 枠下面 202 下開口
23 スライド保持枠
24 スライド台
241 扉レール
31 締付ベース体 31C 接続孔
32 保持枠(U:上昇位置、M:中間位置、L:下降位置)
321 下固定枠 322 上固定枠
33 囲い枠体(P:圧縮状態)
331H、33H、33H´ 枠厚さ
330 枠内
313、333、34 連結棒
A 上空間
B 囲い空間を除く下空間
C 囲い空間
32 フィルム保持枠
32A フィルム保持上枠 32B フィルム保持下枠
33 気密枠
34 枠駆動アーム
4 保持規制体(U:上昇位置、M:中間位置、L:下降位置)
41 保持バンド
42 規制アングル(U:上昇位置、M:中間位置、L:下降位置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11