(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】トルク検出付きモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/24 20160101AFI20231129BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20231129BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02K11/24
G01L3/10 311
G01L5/00 H
(21)【出願番号】P 2020008003
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019105172
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古畑 均
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 篤
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-098718(JP,A)
【文献】特開2007-181327(JP,A)
【文献】特開2017-009292(JP,A)
【文献】特開2008-081907(JP,A)
【文献】特開2008-259317(JP,A)
【文献】実開昭55-115088(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/24
G01L 3/10
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子に永久磁石を備えたモータ部の回転軸の負荷側の一部に設けられた起歪部に添着された感歪抵抗体により前記回転軸のねじりトルクを検出するトルク検出付きモータであって、
前記モータ部は、前記回転子の前記永久磁石を支持して前記起歪部の少なくとも一部を覆うように設けられた磁性体の支持部材を含み、
前記回転軸の前記回転子から反負荷側へ延伸した部分には、前記感歪抵抗体と繋がって検出した前記ねじりトルクの信号を出力する回転基板が固定されていることを特徴とするトルク検出付きモータ。
【請求項2】
前記感歪抵抗体と前記回転基板とを繋ぐ配線が、前記感歪抵抗体から信号を出力する出力配線と、前記感歪抵抗体への電力供給配線とを含んで構成され、
前記回転軸の軸方向に沿った表面に複数の溝部が設けられ、前記出力配線と前記電力供給配線とがそれぞれ異なる前記各溝部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のトルク検出付きモータ。
【請求項3】
前記各溝部が、前記支持部材にて覆われていることを特徴とする
請求項2に記載のトルク検出付きモータ。
【請求項4】
前記支持部材が、前記トルク検出付きモータ内部の空間の一部を、前記永久磁石が配置されている第1空間と、前記感歪抵抗体が配置されている第2空間と、に区分するように設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のトルク検出付きモータ。
【請求項5】
前記第1空間が、前記永久磁石と、前記回転子の外周に設けられた固定子と、前記支持部材とに面した空間であって、前記第2空間が、前記支持部材と、前記起歪部とに面した空間であることを特徴とする請求項4に記載のトルク検出付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、令和1年6月5日付けの出願を基礎とする国内優先権主張の出願である。本発明は、産業用機械等に用いる、トルク検出機能付きのモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転軸に減速機を介さず直接トルクセンサを取付け、モータの出力トルクを常時検出することにより高精度の制御を行えるようにしたトルク検出付きモータが開示されている。このようなトルク検出付きモータは減速機を有しないので大きなトルクを出力することはできないが、減速機の脈動が無く高速回転できることから例えば細い電線を巻いてある部品の製造装置等に使用できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-223665号公報
【文献】特開2017-9292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1にて開示されているトルク検出部を有するモータでは、回転軸に生ずるねじりトルクを、回転軸に連結したトルクセンサ(起歪部)にて検出している。特許文献1では回転軸と起歪部が別体で構成されていることから、その連結部界面がトルク検出に影響して精密なトルク制御において改善の余地があった。またモータの回転範囲はロボットのアームやハンド用の用途が前提のため有限であって、モータが無限回転する場合に最適な構成に関しては開示されていない。
【0005】
また特許文献2にて開示されているモータ装置は、トルク検出に係る部分がモータの筐体外のシャフト(回転軸)先端にあり、また軸方向に並んで配置され、さらにスリップリングで信号を送信していることから、精密なトルク制御、小型化及び保守に関して改善の余地があった。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は、小型で無限回転に対応し、かつトルク制御を高精度に行うことができるトルク検出付きモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のトルク検出付きモータは、上記の目的を達成するために、
回転子に永久磁石を備えたモータ部の回転軸の負荷側の一部に設けられた起歪部に添着された感歪抵抗体により回転軸のねじりトルクを検出するトルク検出付きモータであって、
モータ部は、回転子の永久磁石を支持して起歪部の少なくとも一部を覆うように設けられた磁性体の支持部材を含み、
回転軸の回転子から反負荷側へ延伸した部分には、感歪抵抗体と繋がって検出したねじりトルクの信号を出力する回転基板が固定されている。
【0008】
請求項2に記載のトルク検出付きモータは、上記の目的を達成するために、
感歪抵抗体と回転基板とを繋ぐ配線が、感歪抵抗体から信号を出力する出力配線と、感歪抵抗体への電力供給配線とを含んで構成され、
回転軸の軸方向に沿った表面に複数の溝部が設けられ、出力配線と電力供給配線とがそれぞれ異なる各溝部に配置されている。
【0009】
請求項3に記載のトルク検出付きモータは、上記の目的を達成するために、各溝部が、支持部材にて覆われている。
【0010】
請求項4に記載のトルク検出付きモータは、上記の目的を達成するために
支持部材が、トルク検出付きモータ内の空間の一部を、前記永久磁石が配置されている第1空間と、感歪抵抗体が配置されている第2空間と、に区分するように設けられている。
【0011】
請求項5に記載のトルク検出付きモータは、上記の目的を達成するために
第1空間が、永久磁石と、回転子の外周に設けられた固定子と、支持部材とに面した空間であって、第2空間が、支持部材と、起歪部とに面した空間である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトルク検出付きモータによれば、小型で無限回転に対応し、かつトルク制御を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータの斜視外観図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータの断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング等の一部の部品を省略した斜視外観図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング及びモータの回転子等の一部の部品を省略した斜視外観図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータの感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路を含む回路構成図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るトルク検出付きモータの断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング等の一部の部品を省略した斜視外観図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るトルク検出付きモータのトルク検出部が検出したトルク信号の波形グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るトルク検出付きモータについて、図面を基に詳細な説明を行う。
【0015】
図1は本発明の第1の実施形態であるトルク検出付きモータの斜視図である。本発明の実施形態であるトルク検出付きモータ1は、回転軸2と、フランジ3と、ケーシング4a~4dを有している。回転軸2はモータの出力軸であって軸方向に渡って単一の略円柱部材である。フランジ3は、回転軸2を支持するベアリング5aを保持し、トルク検出付きモータ1を装置等に固定する穴を有した部材である。回転軸2は、負荷装置等に接続できるようにフランジ3から突出している。ケーシング4aは、モータの発熱を外部へ放射するヒートシンクを有してフランジ3と連結されている。ケーシング4bは、トルク検出のための電子回路を実装した回転基板16と、回転基板16へ電力を供給する部材とを外部から保護して、ケーシング4aに連結されている。またケーシング4bは、回転軸2を支持するベアリング5bを保持している。ケーシング4cは、回転軸2の回転位置を検出するロータリーエンコーダ20を外部から保護して、ケーシング4bに連結されている。ケーシング4dは、回転基板16及びロータリーエンコーダ20から送信されたそれぞれの信号を処理する回路を実装した固定基板18bを外部から保護している。
【0016】
図2は本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータの、
図1における回転軸2を通って鉛直方向に平行な平面Pで切断した断面図である。トルク検出付きモータ1は、モータ部とねじりトルク検出手段と回転位置検出手段を有している。
【0017】
回転軸2は略円柱状の金属であって、ベアリング5aとベアリング5bとによって回転自在に支持されている。
【0018】
ベアリング5aとベアリング5bとは、例えば玉軸受である。ベアリング5aは、その外輪がフランジ3に嵌合して配置される。ベアリング5aは、その内輪にて回転軸2に例えばしまりばめで嵌合して挿入され、回転軸2の直径を増加させたことによる段差により軸方向が規制される。ベアリング5bは、その外輪が仕切り部材9bによって軸方向が規制されて、ケーシング4bに嵌合して配置されている。ベアリング5bは、その内輪にて回転軸2に例えばしまりばめで嵌合して挿入され、回転軸2に嵌め込んだ止め輪によって軸方向が規制される。なおベアリングの種類、配置及び位置の規制は例示であってこれに限るものではない。
【0019】
回転軸2の一部に起歪部2cが設けられている。起歪部2cは、例えば回転軸2の軸線を含む平面に平行であって、かつ回転軸2の軸線を中心として回転対称な複数の平面にて回転軸2を切断した形状を有する。この起歪部2cは、回転軸2の軸方向には強度を有していて変形しないが、断面積を小さくすることで回転軸2に生じたねじりトルクにより弾性変形する。本実施形態では起歪部2cは、
図4に示すように2つの向かい合う平行な平面を有しているが、これに限るものではない。そしてこの平面と円柱形状との境界部は断面積が徐々に変化する形状となっている。起歪部2cの各平面には、
図2には現れないが
図3及び
図4に示される感歪抵抗体Gが添着されている。
【0020】
回転軸2の軸方向の略中央部にはモータ部が形成されている。モータ部は例えば交流サーボモータであって、固定子6と、永久磁石7と、支持部材8とを含んでいる。固定子6は積層鉄心とこれを囲む巻線コイル等で構成される。そしてこの固定子6はケーシング4bに固着されている。
【0021】
固定子6の内側には、固定子6と所定の間隔にて回転子が配置されている。回転子は回転軸2に支持部材8を介して永久磁石7が取り付けられて構成される。本実施形態では支持部材8は例えば軟鉄などの磁性材料である。また本実施形態では回転子は、支持部材8の表面に永久磁石7を接着した表面磁石型(SPM)であるが、支持部材8を半径方向に拡大して支持部材8の内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石型(IPM)であってもよい。そして支持部材8は起歪部2cの軸方向の少なくとも一部を覆うように設けられている。
【0022】
感歪抵抗体Gは回転軸2に加わるねじりトルクに応じて起歪部2cに生ずる歪みを検出する。感歪抵抗体Gは検出した歪みを電気信号に変換するホイートストンブリッジ回路に組み込まれ、トルク検出手段の一部を構成している。このトルク検出手段の一部の回路が回転基板16に実装されている。
【0023】
回転基板16は環状の円板であって、カラー等の固定部材を介して回転軸2に固定されて、回転軸2と一緒に回転する。回転基板16は回転軸2の回転子の反負荷側の回転子から延伸した部分に固定されている。回転基板16は、抵抗変化検出回路33の一部と、A/D変換器31と、CPU32と、その他の整流回路及び安定化回路等とを備えている。抵抗変化検出回路33は、感歪抵抗体Gの抵抗変化を検出するホイートストンブリッジ回路と増幅器30を含む。
A/D変換器31は、抵抗変化検出回路33の出力をデジタル信号に変換する。
CPU32は、このデジタル信号を演算処理してねじりトルクの測定値を求める。そしてねじりトルクの測定値のデジタル信号は、回転基板16上に実装された送信素子17によって光信号に変換されて、無線通信にて固定基板18a上に実装された不図示の受信素子へ送られる。
【0024】
なお回転基板16とモータ部の回転子との軸方向での中間には、ケーシング4bに固定された仕切り部材9aが設けられ、仕切り部材9aはモータ部から出るノイズを低減している。
【0025】
固定基板18aと固定基板18bとは例えば基板間コネクタで機械的かつ電気的に接続されていて、固定基板18bはケーシング4d等に固定されている。
固定基板18a及び固定基板18bは、受光素子と、デジタル復調回路とを含んでいる。受光素子は、送信素子17が送信した光信号を電気信号に変換するフォトダイオードなどである。デジタル復調回路は、受光素子で電気信号に変換したデジタル変調信号からねじりトルクの測定値の信号をデジタル復調によって取り出す。そして固定基板18bは、配線ケーブルにより、トルク検出付きモータ1を制御する不図示の制御装置と繋がっている。
【0026】
回転軸2の回転基板16が固定された位置よりさらに反負荷側には、中空円柱状の2次側コアホルダ13が固定されている。そして2次側コアホルダ13の外周円柱面には、例えばフェライトシートなどの磁性体シートが巻回されて2次側コア14が形成されている。さらに2次側コア14の外周円筒面には、例えば銅線などの導電性の線材が巻回されて2次側コイル15が形成されている。
【0027】
固定基板18aには、2次側コア14及び2次側コイル15と対向する位置に1次側コア11が1次側コアホルダ10を中間に介して固定されている。1次側コア11は、断面形状がコ字型の突部を有する柱形状をしており、例えばフェライトなどの磁性体である。1次側コイル12は、例えば銅線などの導電性の線材であって、1次側コア11の2つの突部間に巻回して形成され、その端部は固定基板18aに接続されている。
【0028】
固定基板18a及び固定基板18bには、不図示の外部の制御装置と繋がったスイッチング回路等が設けられている。このスイッチング回路は、制御装置から供給された直流電流を交流電流に変換する。そしてこのスイッチング回路は1次側コイル12と結線されており、変換した交流電流を1次側コイル12へ出力する。但し、制御装置によって交流電流が供給される場合は、スイッチング回路は不要である。変換された交流電流は1次側コイル12に交流磁界を発生させ、2次側コイル15に電流を誘起する。よって2次側コイル15が1次側コイル12から非接触で電力を受電できる。2次側コイル15に誘起された交流電流は回転基板16内の整流回路と安定化回路とによって直流電圧へ変換され、直流電圧は抵抗変化検出回路33、A/D変換器31、CPU32などへ供給される。
【0029】
ロータリーエンコーダ20は、回転軸2の反負荷側の端部に接続配置されていて、回転軸2の回転位置を検出する。ロータリーエンコーダ20は、本実施形態では反射型光学式であるが、透過式であってもよいし、光学式に限らず磁力その他の方式によるものであっても良い。そしてロータリーエンコーダ20への電力供給及びロータリーエンコーダ20からの位置信号出力は、固定基板18bと繋がった不図示のコネクタ付きケーブルによって行われ、さらに外部の制御装置へ送られる。
【0030】
図3は本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング4a~4dや固定子6等の一部の部品を除いた斜視外観図である。
図4は本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング及びモータの回転子等の一部の部品を除いた斜視外観図である。具体的には
図3において、永久磁石7と支持部材8を省略したものが
図4である。
【0031】
感歪抵抗体Gは、起歪部2cの平面に添着されている。本発明の実施形態では起歪部2cの平面が軸線を対称線として2面設けられている。したがって感歪抵抗体G1、G2に対向して、
図3及び
図4には現れない感歪抵抗体G3、G4が設けられている。そして感歪抵抗体Gを含んで構成されるホイートストンブリッジ回路の配線を構成するため、中継端子部22が回転軸2の円柱面に設けられている。
図3及び
図4では、感歪抵抗体Gと中継端子部22との間の配線は省略されている。
【0032】
支持部材8によって外周を覆うように囲まれているのが、起歪部2cの一部と溝部2a、2bと配線19a、19bである。
【0033】
溝部2bは、回転軸2の軸方向の中央部にあって、軸方向に沿って回転軸2の表面に複数設けられている。例えば溝部2a、2bは回転軸2の軸線を回転対称として180度の角度間隔で対向した位置にそれぞれ設けられている。
【0034】
配線19aは、溝部2aに沿って設けられ、中継端子部22と回転基板16を電気的に接続する。配線19aは、例えば被覆された導線であり、両端部は中継端子部22と回転基板16とにハンダ付け等で接続されている。配線19bは、
図2に示すように溝部2aに対向した溝部2bに沿って設けられ、中継端子部22と回転基板16を電気的に接続する。配線19bも、例えば被覆された導線であり、両端部は中継端子部22と回転基板16とにハンダ付け等で接続されている。また配線19aと配線19bとは、幾つかの場所で不図示の接着剤などによって回転軸2及び溝部2a、2bに固定されている。
【0035】
感歪抵抗体Gは複数の剪断型歪みゲージで構成され、
図4に示すA方向回りで、感歪抵抗体G1、感歪抵抗体G2、感歪抵抗体G3、感歪抵抗体G4の順に配置されている。感歪抵抗体G1と感歪抵抗体G2は同一の基材に形成されて、最大感度の方向が回転軸2の軸方向にそれぞれ+45度と-45度の角度で配置されている。感歪抵抗体G3と感歪抵抗体G4も同一の基材に形成されて、感歪抵抗体G1及び感歪抵抗体G2と同様に起歪部2cに配置されている。したがって
図4における回転軸2をA方向に180度回転させると、感歪抵抗体G1があった位置に感歪抵抗体G3が来て、感歪抵抗体G2があった位置に感歪抵抗体G4が来ることになり、それぞれその最大感度の方向も同じものとなる。この構成にて感歪抵抗体Gは回転軸2のねじりトルクを検出する。
【0036】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータの感歪抵抗体Gを含むホイートストンブリッジ回路を含む構成図である。感歪抵抗体G1と感歪抵抗体G2は隣り合う辺にあって、感歪抵抗体G3と感歪抵抗体G4は隣り合う辺にある。そして感歪抵抗体G1と感歪抵抗体G3は向かい合う辺にあって、感歪抵抗体G2と感歪抵抗体G4は向かい合う辺にある。そして端T1と端T3に電源Eにより電圧を印加すると、端T2と端T4より電圧として信号+SIG、信号-SIGが出力される。信号+SIG、信号-SIGは増幅器30にて増幅され、次いでA/D変換器31でデジタル信号に変換され、CPU32にて演算されてトルク値が算出される。このトルク値は不図示の制御装置に送信されて、制御装置は実際のトルク値と目標とするトルク値との差分から指令値を演算して、この指令値を基にモータへ電流指令を行ってモータのトルクを制御する。
【0037】
図4と
図5において、例えば配線19aは出力配線であって、配線19bは電力供給配線である。したがってホイートストンブリッジ回路からの出力(+SIG、-SIG)が配線19aによって中継端子部22から回転基板16に接続されている。またホイートストンブリッジ回路への電力供給(+EXC、-EXC)が配線19bによって回転基板16から中継端子部22に接続されている。もちろん配線19bが出力配線であって、配線19aが電力供給配線という構成であっても良い。
【0038】
図6は本発明の第2の実施形態に係るトルク検出付きモータの断面図である。
図7は本発明の第2の実施形態に係るトルク検出付きモータのケーシング4a~4dや固定子6等の一部の部品を除いた斜視外観図である。ここでは
図2に示された本発明の第1の実施形態に係るトルク検出付きモータとの相違点のみ説明する。
【0039】
支持部材8は、回転軸2の負荷側(図面左側)に延伸部8aを有している。延伸部8aの内側面は、支持部材8が回転軸2と嵌合する面を延長して形成されている。そして延伸部8a、支持部材8、永久磁石7、固定子6、フランジ3及びベアリング5aは第1空間41に面しておりこれを画定する。また延伸部8a、支持部材8及び回転軸2の起歪部2cは第2空間42に面しておりこれを画定する。延伸部8aの端部は、ベアリング5aとは僅かな隙間を有して配設される。したがって延伸部8aを有する支持部材8は、トルク検出付きモータ内部の空間の一部を、永久磁石7が配置され少なくともその一部が配設された第1空間41と、感歪抵抗体Gを含む起歪部2cが配設された第2空間42とを区分している。
【0040】
図8は本発明の実施形態に係るトルク検出付きモータのトルク検出部が検出したトルクの波形を示したものである。
図8(a)は延伸部8aを備えたトルク検出付きモータすなわち第2の実施形態のトルク検出部が検出したトルク信号の波形グラフである。また
図8(b)は延伸部8aを備えていないトルク検出付きモータすなわち第1の実施形態のトルク検出部が検出したトルク信号の波形グラフである。両者は延伸部8aの有無以外は同一の条件で測定したものであって、トルク検出付きモータには同じトルクが加わっている。
【0041】
図8(a)と
図8(b)において、横軸は時間でありフルスケールで60秒であって、縦軸はトルクであり±0.005Nmの範囲で表示している。
図8(a)では、
図8(b)にてみられる比較的長いスパンでのドリフトが抑制されている。すなわち延伸部8aは、モータ部の永久磁石7及び固定子6から発生するノイズが、起歪部2cの感歪抵抗体Gへ影響を及ぼすことを低減している。ゆえに第2の実施形態のトルク検出付きモータは、第1の実施形態のトルク検出付きモータよりもさらに精確なトルク制御を行うことが求められる場合に有用である。
【0042】
本発明の実施形態によれば、回転軸と起歪部を一体構造として、モータの回転軸2の回転子近傍に起歪部2cを設けていることから、別体の部材を連結した時にその界面近傍に発生する影響が排除されて、高精度のトルク制御を実現し、かつ小型化することができる。また起歪部2cに添着された感歪抵抗体Gと回転基板16を接続する配線19a、19bが、回転軸2に設けられた溝部2a、2bに沿って配線され、磁性体である支持部材8によって覆われていることから、回転軸2の無限回転に適応し、耐ノイズ性も有している。さらに支持部材8、永久磁石7、固定子6、フランジ3及びベアリング5aで画定された第1空間41と、支持部材8及び回転軸2の起歪部2cで画定された第2空間42とは、延伸部8aによって区分されることからノイズの漏れを低減し、さらに精確なトルク制御が可能なトルク検出付きモータを提供することができる。
【0043】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の活用例として、電気電子部品製造装置等に使用される駆動部への適用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 :トルク検出付きモータ
2 :回転軸
2a :溝部
2b :溝部
2c :起歪部
3 :フランジ
4a :ケーシング
4b :ケーシング
4c :ケーシング
4d :ケーシング
5a :ベアリング
5b :ベアリング
6 :固定子
7 :永久磁石
8 :支持部材
8a :延伸部
9a :仕切り部材
9b :仕切り部材
10 :1次側コアホルダ
11 :1次側コア
12 :1次側コイル
13 :2次側コアホルダ
14 :2次側コア
15 :2次側コイル
16 :回転基板
17 :送信素子
18a :固定基板
18b :固定基板
19a :配線
19b :配線
20 :ロータリーエンコーダ
22 :中継端子部
30 :増幅器
31 :A/D変換器
32 :CPU(中央処理装置)
33 :抵抗変化検出回路
41 :第1空間
42 :第2空間
G、G1~G4 :感歪抵抗体