(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コンクリート組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20231129BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20231129BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B18/08 Z
C04B14/02 Z
(21)【出願番号】P 2020049172
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 建佑
(72)【発明者】
【氏名】細川 佳史
(72)【発明者】
【氏名】久田 真
(72)【発明者】
【氏名】皆川 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎太郎
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-119885(JP,A)
【文献】特開2018-068239(JP,A)
【文献】特開2012-101962(JP,A)
【文献】特表平07-501038(JP,A)
【文献】特開平08-231255(JP,A)
【文献】特開2002-274905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメント及びエコセメントから選択される1以上のセメントと、骨材とを含有するモルタル組成物又はコンクリート組成物であって、
セメントとともにポゾランを含有させ、該ポゾランの含有量がセメント及びポゾランの総量に対して2.5~60質量%であり、
骨材の一部又は全部としてセメントクリンカーを含み、該セメントクリンカーの含有量が骨材及びセメントクリンカーの総量に対して
50~100体積%であり、かつ
ポゾランの含有量と、セメントクリンカーの含有量とが下記式(1);
0.32x-1.5≦y≦0.5x+10 (1)
〔式中、xは骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量(体積%)を示し、yはセメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たす、モルタル組成物又はコンクリート組成物。
【請求項2】
ポルトランドセメントが普通ポルトランドセメントである、請求項1記載のモルタル組成物又はコンクリート組成物。
【請求項3】
ポゾランがフライアッシュである、請求項1又は2記載のモルタル組成物又はコンクリート組成物。
【請求項4】
ポルトランドセメント及びエコセメントから選択される1以上のセメントと、骨材とを含有するモルタル又はコンクリートにおいて、
セメントとともにポゾランを含有させ、該ポゾランの含有量をセメント及びポゾランの総量に対して2.5~60質量%とし、
骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換して該セメントクリンカーの含有量を骨材及びセメントクリンカーの総量に対して
50~100体積%とし、
ポゾランの含有量と、セメントクリンカーの含有量とを下記式(1);
0.32x-1.5≦y≦0.5x+10 (1)
〔式中、xは骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量(体積%)を示し、yはセメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たすように調整する、モルタル又はコンクリートの強度低下及び発熱量増加の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポゾランは、水の存在下で水酸化カルシウムと化学反応してセメント質化合物を形成し得る物質の総称であり、その一つにフライアッシュがある。フライアッシュを混合したコンクリートは、例えば、長期強度の増強や乾燥収縮の減少等の優位な性能を発現できることが知られている(特許文献1)。
【0003】
セメントクリンカーは、セメントの原料をキルン等で焼成して得られた焼塊であり、例えば、セメントクリンカーを骨材として使用したコンクリートは、ひび割れに対する自己治癒性能やリサイクル性の向上等の優位な性能を付与できることが知られている(特許文献2~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-51398号公報
【文献】特開平9-86983号公報
【文献】特開平11-217251号公報
【文献】特開平8-231255号公報
【文献】特開平10-130045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フライアッシュを混和材として使用したコンクリートは、初期強度が低下すること、中性化抵抗性が低下することが指摘されている。このうち、特に初期強度の低下は、コンクリート打ち込み後の脱型時期の遅延や、湿潤養生期間の長期化により、工期が延長しやすくなる。そこで、硬化促進剤の使用や、練り混ぜ水の加温養生等によって初期強度を向上させることが考えられるが、コスト面で不利になる。
また、セメントクリンカーを骨材として使用したコンクリートは、発熱量が増加するという課題が存在することを本発明者らは新たに見出した。発熱量の増加は、大断面の部材として用いられるコンクリートの劣化の一つである温度ひび割れの原因となり、コンクリート構造物の機能の低下や、耐久性の低下を招来する。そこで、混合セメント・混合材の使用や、単位セメント量の低下、材料温度の低下等によってコンクリート温度を低下させることが考えられるが、単位セメント量等の低下には、高性能な化学混和剤が必要となるため、コスト上昇や品質管理の煩雑さが避けられない。
本発明の課題は、硬化体の強度低下及び発熱量増加を同時に抑制し得るモルタル組成物又はコンクリート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、セメントとともにポゾランを含有させ、骨材の一部又は全部を特定物質に置換したうえで、ポゾランの含有量及び特定物質の含有量が一定の関係を満たすように制御することで、硬化体の強度を確保しつつ発熱量上昇を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕ポルトランドセメント及びエコセメントから選択される1以上のセメントと、骨材とを含有するモルタル組成物又はコンクリート組成物であって、
セメントとともにポゾランを含有させ、該ポゾランの含有量がセメント及びポゾランの総量に対して2.5~60質量%であり、
骨材の一部又は全部としてセメントクリンカーを含み、該セメントクリンカーの含有量が骨材及びセメントクリンカーの総量に対して10~100体積%であり、かつ
ポゾランの含有量と、セメントクリンカーの含有量とが下記式(1);
0.32x-1.5≦y≦0.5x+10 (1)
〔式中、xは骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量(体積%)を示し、yはセメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たす、モルタル組成物又はコンクリート組成物。
〔2〕ポルトランドセメントが普通ポルトランドセメントである、前記〔1〕記載のモルタル組成物又はコンクリート組成物。
〔3〕ポゾランがフライアッシュである、前記〔1〕又は〔2〕記載のモルタル組成物又はコンクリート組成物。
〔4〕ポルトランドセメント及びエコセメントから選択される1以上のセメントと、骨材とを含有するモルタル又はコンクリートにおいて、
セメントとともにポゾランを含有させ、該ポゾランの含有量をセメント及びポゾランの総量に対して2.5~60質量%とし、
骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換して該セメントクリンカーの含有量を骨材及びセメントクリンカーの総量に対して10~100質量%とし、
ポゾランの含有量と、セメントクリンカーの含有量とを下記式(1);
0.32x-1.5≦y≦0.5x+10 (1)
〔式中、xは骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量(体積%)を示し、yはセメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たすように調整する、モルタル又はコンクリートの強度低下及び発熱量増加の抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化体の強度低下及び発熱量増加を同時に抑制し得るモルタル組成物又はコンクリート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
〔モルタル組成物又はコンクリート組成物〕
本発明のモルタル組成物又はコンクリート組成物は、セメントとともにポゾランを含有させ、骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換したうえで、ポゾランの含有量及びセメントクリンカーの含有量が一定の関係を満たすように制御することを特徴とするものである。
ここで、本発明のモルタル組成物又はコンクリート組成物において、セメント及びポゾランは「結合材」として機能し、骨材及びセメントクリンカーは「骨材」として機能する。以下の説明において、セメント及びポゾランの総称として「結合材」を使用する。
【0010】
(セメント)
セメントとして、ポルトランドセメント及びエコセメントから選択される1以上を含有する。即ち、ポルトランドセメント及びエコセメントは、それぞれ単独で用いても、併用してもよい。
ポルトランドセメントとしては、例えば、JIS R 5210に規定されるポルトランドセメントが挙げられる。具体的には、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントは、1種又は2種以上用いることができる。
また、エコセメントとしては、 JIS R 5214に規定されるエコセメントが挙げられる。具体的には、普通エコセメント、速硬エコセメントを挙げることができる。エコセメントは、1種又は2種以上用いることができる。
中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0011】
セメントのブレーン比表面積は、通常2500~5000cm2/gであり、好ましくは3000~4500cm2/gである。このような比表面積とすることで、水和反応が活発になり硬化体の強度が向上しやすくなる。
【0012】
(ポゾラン)
本発明においては、結合材としてセメントとともにポゾランを含有させる。ここで、本明細書において「ポゾラン」とは、それ自体は水硬性を持たないが、セメントの水和反応によって生成する水酸化カルシウムと反応してカルシウムシリケート系水和物を生成する物質をいう。セメントをポゾランと共存させると、上記したポゾラン反応が長期間継続するため、硬化体の強度を十分に発現することができる。
【0013】
ポゾランとしては、ポゾラン反応を起こす物質であれば特に限定されず、天然ポゾランでも、人工ポゾランでもよい。なお、ポゾランは、1種又は2種以上用いることができる。
天然ポゾランとしては、例えば、火山灰、珪藻土、オパール質シリカ、麦飯石、珪化木粉末、カオリン鉱物の未焼成物、天然ゼオライト、パイロフェライト、シラス、白土が挙げられる。
人工ポゾランとしては、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン等の粘土鉱物の焼成物、人工ゼオライト、もみ殻灰や藁焼成灰等のイネ科植物に代表されるケイ酸植物(ケイ素集積植物)の焼成灰、シリカダスト、シリカゾル、沈降シリカ、パルプスラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、廃ガラス粉末を挙げることができる。
中でも、人工ポゾランが好ましく、フライアッシュが更に好ましい。なお、フライアッシュとしては、例えば、「JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)」に規定されるI種、II種、III種及びIV種を適宜選択して使用することができるが、中でも、硬化体の強度発現性や混和剤の使用量の観点から、フライアッシュI種もしくはII種が好ましい。
ポゾランの「JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)」に規定される28日活性度指数は、硬化体の強度低下及び発熱量の増加を抑制する観点から70~100%が好ましく、75~90%がより好ましく、80~90質量%が更に好ましい。
【0014】
ポゾランの含有量は、セメント及びポゾランの総量に対して2.5~60質量%であるが、3.5~60質量%が好ましく、5~55質量%がより好ましく、10~50質量%が更に好ましい。このような含有量とすることで、硬化体の発熱量増加を抑制しやすくなる。
【0015】
(骨材)
骨材としては、粗骨材、細骨材を挙げることができる。ここで、本明細書において「粗骨材、細骨材」とは、JIS A 0203:2014に定義される粗骨材、細骨材を意味する。即ち、「粗骨材」とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材をいい、また「細骨材」とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材をいう。
【0016】
粗骨材は、例えば、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」附属書A及びJIS A5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定される粗骨材が挙げられる。具体的には、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、スラグ粗骨材、再生骨材等を挙げることができる。なお、粗骨材は、1種又は2種以上用いることができる。
【0017】
粗骨材の絶乾密度は、通常2.5~2.8g/cm3であり、粗骨材の吸水率は、通常3.0質量%以下である。なお、粗骨材の絶乾及び吸水率は、例えば、JIS A 1110-2006に準拠して測定することができる。
【0018】
細骨材は、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材及びJIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」で規定される砂が挙げられる。具体的には、川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ、溶融スラグ等のスラグ由来の砂等を挙げることができる。なお、細骨材は、1種又は2種以上用いることができる。
【0019】
細骨材の表乾密度は、通常2.4~3.0g/cm3であり、細骨材の吸水率は、通常3.0質量%以下である。なお、細骨材の表乾密度及び吸水率は、例えば、JIS A 1109-2006に準拠して測定することができる。
【0020】
(セメントクリンカー)
本発明においては、骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換する。ここで、本明細書において「セメントクリンカー」とは、CaO原料、Al2O3原料、Fe2O3原料及びSiO2原料を粉砕して混合し、ロータリーキルン等で焼成して得られるものであり、普通ポルトランドセメントクリンカー、早強ポルトランドセメントクリンカー、低熱ポルトランドセメントクリンカー、中庸熱ポルトランドセメントクリンカー、エコセメントクリンカー等が挙げられる。
セメントクリンカーは、いずれも鉱物として、3CaO・SiO2(C3S)や2CaO・SiO2(C2S)で表されるカルシウムシリケート、4CaO・Al2O3・Fe2O3(C4AF)で表されるカルシウムアルミノフェライト、3CaO・Al2O3(C3A)で表されるカルシウムアルミネートを含有する。なお、各鉱物の含有率はJIS R 5202又はJIS R 5204による化学分析の結果から、ボーグ式や粉末X線回折(XRD)リートベルト解析によって求めることができる。
【0021】
中でも、セメントクリンカーとしては、ボーグ式で求めた場合に、C3Sを50~70質量%、C2Sを5~30質量%、C3Aを3~15質量%、C4AFを5~20質量%含有するものが好ましく、C3Sを55~65質量%、C2Sを10~20質量%、C3Aを5~12質量%、C4AFを7~15質量%含有するものが更に好ましい。このような鉱物組成とすることで、硬化体の強度を十分に発現することができる。
【0022】
セメントクリンカーの含有量は、骨材及びセメントクリンカーの総量に対して10~100体積%であるが、15~100体積%が好ましく、20~100体積%がより好ましく、40~80体積%が更に好ましい。このような含有量とすることで、硬化体の強度発現性がより優れたものになる。
【0023】
そして、本発明においては、ポゾランの含有量とセメントクリンカーの含有量とが下記式(1)の関係を満たすときに、硬化体の強度低下と発熱量増加とを同時に抑制できることを見出した。
【0024】
0.32x-1.5≦y≦0.5x+10 (1)
【0025】
〔式中、xは骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量(体積%)を示し、yはセメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量(質量%)を示す。〕
【0026】
本発明においては、硬化体の強度低下抑制及び発熱量増加抑制を同時に、より高水準で実現するために、ポゾランの含有量とセメントクリンカーの含有量が、下記式(2)の関係を満たすことが好ましく、下記式(3)の関係を満たすことが更に好ましい。
【0027】
0.35x-1.5≦y≦0.45x+8.5 (2)
0.35x-1.5≦y≦0.4x+6 (3)
【0028】
〔式中、x及びyは、前記と同義である。〕
【0029】
この場合において、上記式(2)の関係を満たすときは、セメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量は、5~50質量%が好ましく、10~40質量%が更に好ましく、また骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量は、15~80体積%が好ましく、20~70体積%が更に好ましい。
また、上記式(3)の関係を満たすときは、セメント及びポゾランの総量に対するポゾランの含有量は、5~45質量%が好ましく、10~40質量%が更に好ましく、また骨材及びセメントクリンカーの総量に対するセメントクリンカーの含有量は、15~80体積%が好ましく、20~70体積%が更に好ましい。
このような含有量とすることで、硬化時における発熱量を十分に抑制し、強度発現性がより一層優れたものとなる。
【0030】
本発明のモルタル組成物又はコンクリート組成物は、骨材と結合材との質量比(骨材/結合材)が、硬化体の強度低下及び発熱量増加の抑制の観点から、1.0~10が好ましく、1.5~9がより好ましく、2~8が更に好ましい。なお、質量比の算出において、「結合材」はセメント及びポゾランの総量を、「骨材」は骨材とセメントクリンカーの総量を使用するものとする。下記の説明においても同様である。
【0031】
本発明のモルタル組成物及びコンクリート組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和材を配合してもよい。混和材としては、例えば、AE材、減水材、膨張剤、発泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、凝結遅延剤、促進剤、急結剤、分離低減剤、起泡剤、発泡剤、防凍剤、耐寒促進剤、撥水剤、白華防止剤、繊維等が挙げられる。
【0032】
本発明のモルタル組成物及びコンクリート組成物は、通常用いられる混練器具により上記した各成分を混合することで調製することができる。混錬器具としては特に限定されず、例えば、ハンドミキサ、傾胴ミキサ、パン型ミキサ、二軸ミキサ等が挙げられる。
【0033】
また、本発明のモルタル組成物及びコンクリート組成物は、水と混合してペーストとして調製することもできる。
水としては、例えば、JIS A 5303付属書Cに規定される上水道水、該上水道水以外の水(例えば、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水)を挙げることができる。
【0034】
水と結合材との質量比(水/結合材)は、硬化体の強度低下及び発熱量増加の抑制の観点から、30~70が好ましく、30~65がより好ましく、40~60が更に好ましい。
【0035】
本発明のモルタル組成物又はコンクリート組成物は、硬化体の強度低下及び発熱量増加が抑制されており、温度上昇によるひび割れが起こり難く、強度にも優れるため、各構造体の製造に使用することができる。例えば、コンクリート組成物は、生コンクリート、プレキャストコンクリート製品、プレミックス製品等に使用できる。
【0036】
〔モルタル又はコンクリートの強度低下及び発熱量増加の抑制方法〕
モルタル又はコンクリートの強度低下及び発熱量増加の抑制方法は、セメントとともにポゾランを含有させ、骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換したうえで、ポゾランの含有量及びセメントクリンカーの含有量が上記式(1)に示す関係を満たすように調整するものである。なお、セメント、ポゾラン、骨材及びセメントクリンカーの具体的構成は、上記において説明したとおりである。また、ポゾランの含有量及びセメントクリンカーの含有量の好適な態様、両含有量の好適な関係式についても、上記において説明したとおりである。
【0037】
本発明のモルタル、コンクリートは、本発明のモルタル組成物、コンクリート組成物を用いて製造されるため、硬化体の強度発現性に優れ、発熱量増加も抑制されている。
例えば、水/結合材の質量比を0.5としたモルタルの圧縮強度を、材齢28日において、好ましくは60N/mm2以上、より好ましくは70N/mm2以上、更に好ましくは80N/mm2以上とすることができる。
また、水/結合材の質量比を0.5としたモルタルの曲げ強度を、材齢28日において、好ましくは10N/mm2以上、より好ましくは11N/mm2以上、更に好ましくは12N/mm2以上とすることができる。
なお、圧縮強度及び曲げ強度は、「JIS R 5201 セメントの物理試験方法」に準拠して測定することができる。
更に、水/結合材の質量比を0.5としたときに、材齢7日までのモルタルの温度の上昇を、好ましくは50℃以下、より好ましくは48℃以下、更に好ましくは46℃以下に抑えることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
本実施例で使用した材料は、以下のとおりである。
<使用材料>
(1)結合材
i)普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3、ブレーン比表面積3130cm2/g)
ii)フライアッシュ(密度:2.37g/cm3、ブレーン比表面積5190cm2/g、28日活性度指数85)
(2)細骨材
i)普通ポルトランドセメントクリンカー砂(絶乾密度:2.49g/cm3、表乾密度:2.50g/cm3、吸水率:0.54%)
ii)石灰石砕砂武甲産(絶乾密度:2.58g/cm3、表乾密度:2.63g/cm3、吸水率:1.95%)
(3)水 :上水道水
【0040】
結合材の化学組成を表1に示し、細骨材の化学組成を表2に示し、セメントクリンカーの鉱物組成を表3に示す。また、細骨材は、いずれもふるいで表4に示す粒度分布に調整して用いた。化学組成は、蛍光X線分析装置(商品名「ZSX PrimusII」、リガク社製)を用いて定量分析した。鉱物組成は、X線回折装置(商品名「D8 ADVANCE」、ブルカージャパン社製)、及び、解析ソフトウェア「DIFFRAC plus TOPAS(Ver3.0)」(ブルカージャパン社製)を用いて、リードベルト法によって解析した。具体的には、C3S、C2S、C3A、C4AF、及びカルサイトの各鉱物の理論プロファイルを、粉末X線回折の結果から得られた実測プロファイルにフィッティングして各晶質相の含有率を求めた。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
比較例1
ミキサに、普通ポルトランドセメントと、石灰石砕砂を、骨材と結合材との質量比(骨材/結合材の質量比)が2.25となる割合で入れたこと以外は、「JIS R 5201 セメントの物理試験方法」に準拠し、モルタル組成物を製造した。
【0046】
比較例2
普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して15質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0047】
比較例3
普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して30質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0048】
比較例4
石灰石砕砂の一部を、該石灰石砕砂に対して50体積%の普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0049】
実施例1
石灰石砕砂の一部を、該石灰石砕砂に対して50体積%の普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換し、普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して15質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0050】
実施例2
石灰石砕砂の一部を、該石灰石砕砂に対して50体積%の普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換し、普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して30質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0051】
比較例5
石灰石砕砂を全て(100体積%)普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0052】
比較例6
石灰石砕砂を全て(100体積%)普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換し、普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して15質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0053】
実施例3
石灰石砕砂を全て(100体積%)普通ポルトランドセメントクリンカー砂に置換し、普通ポルトランドセメントの一部を、該ポルトランドセメントに対して30質量%のフライアッシュに置換したこと以外は、比較例1と同様の操作により、モルタル組成物を製造した。
【0054】
[圧縮強度、曲げ強度]
実施例1~3及び比較例1~6のモルタル組成物を、40mm×40mm×160mmの型枠内に流し込み、材齢1日でモルタルを脱型した後、材齢28日まで水中養生を行い、圧縮強度試験及び曲げ強度試験を行った。なお、圧縮強度試験及び曲げ強度試験は、「JIS R 5201 セメントの物理試験方法」に準拠し、材齢1日、3日、7日及び28日の各時点におけるモルタルの圧縮強度及び曲げ強度試験を測定した。その結果を表5に示す。
【0055】
[最高温度]
実施例1~3及び比較例1~6のモルタル組成物を、20℃環境下で130mm×124mm×196mmの型枠内に流し込み、厚さ25mmの発砲スチロールで全面を覆い、熱電対を型枠内の中央部に埋め込み、材齢7日までモルタルの温度を計測した。材齢7日までのモルタルの最高温度を表5に示す。なお、いずれの水準も材齢7日で温度は低下中であることを確認した。
【0056】
【0057】
表5から、セメントとともにポゾランを含有させ、骨材の一部又は全部をセメントクリンカーに置換したうえで、ポゾランの含有量及びセメントクリンカーの含有量が一定の関係を満たすように制御したモルタル組成物とすることで、硬化体の強度を確保しつつ発熱量上昇を抑制できることがわかる。