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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20231129BHJP
【FI】
C02F1/40 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022023421
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120506
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519364071
【氏名又は名称】和泉産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513188309
【氏名又は名称】産機テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直章
(72)【発明者】
【氏名】武田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】大泉 東
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第116125024(CN,A)
【文献】国際公開第2015/037722(WO,A1)
【文献】特開平10-005754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮上する浮上油等を吸引する吸引装置であって、
吸引パイプと、
少なくとも一つのフロートが固定される下段アームと、
少なくとも一つのフロートが固定され、前記下段アームに対して前記吸引パイプの周りに相対回転可能な上段アームと、
前記下段アームに対して前記上段アームを所定の回転位置に保持する保持手段と、を備え
前記下段アームと前記上段アームの方向が揃った一列配列形態と、前記下段アームと前記上段アームが略直角な十字配列形態とに切替え可能である吸引装置。
【請求項2】
前記上段アーム又は前記下段アームの一方には、前記一列配列形態及び/又は前記十字配列形態において、前記上段アーム又は前記下段アームの他方に係合する係合プレートが固定されることを特徴とする請求項に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記上段アーム又は前記下段アームの一方を他方に付勢する弾性体を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記上段アームと前記下段アームが、前記吸引パイプに固定された2枚の止めワッシャの間に配置されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に浮上する油、スカム、スラッジ、又はゴミ等の微細異物等(浮上油等)を吸引する吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工業で用いられるマシニングセンターや工作機械等の加工機には、下部にクーラントタンクが具備されており、加工時における工具や部材の冷却、加工屑の洗い流しにタンク内のクーラントが循環使用されている。そしてクーラントタンク内には、被加工材の錆止油や加工機本体摺動部からの潤滑油剤がクーラントによって持ち込まれ、タンク液面には油分や微細な加工屑粉が浮遊する。この浮上油分や微細粉をそのままにしておくと、タンク内では浮上油を好む菌に起因するクーラントの劣化、腐敗が進み悪臭による作業環境悪化を引きおこす。また一方、微細粉は循環使用されるクーラントに混入し、加工機本体内のクーラントノズルを閉塞させ、クーラント不足が故の加工品質低下の原因となる。
【0003】
このため多くのクーラントタンクには、浮上油回収用のベルトスキマー等が、また微細粉や加工屑スラッジの回収除去のためのチップコンベアーやフィルター類の機器が標準的に付設されている。しかしながら、実操業ではこれらの機器だけではどうしても未回収の浮上油や浮遊微細粉がタンク内の液面に浮遊していき、前述の作業環境や加工品質上の悪化原因となる。
【0004】
近年これらの回収手段としての移動式回収装置が、知られている。すなわち移動式回収装置を用いて目的の複数台の加工機をまわり、クーラントタンク内からの回収を図り作業環境や加工品質の維持改善を行うものである。当該回収装置は、吸引装置と分離装置から構成され、両者間はホースを介して接続されている。
【0005】
タンク内クーラント液面に浮かべた吸引装置から、分離槽内の吸引ポンプの負圧力により液と共に浮上油・微細粉は吸引されて、分離装置へとホース内を運ばれていく。分離装置内ではフィルターや分離槽により、微細粉の除去や油水分離が行われ、異物、油が除かれたクーラントは別の経路でクーラントタンクに戻る。
【0006】
タンク内の液面変動やホースの動きにも拘わらず、安定した吸引のためには回収中における吸引装置の姿勢保持が重要であり、そのためには吸引装置の構成要素であるフロート配列が要になる。そこで、フロート配列を含めた吸引装置技術が例えば、特許文献1,2,3に示されている。
【0007】
図1は、特許文献1に開示された従来の吸引装置の斜視図であり、図中L字状に曲げられた吸引パイプ51、フロート52、吸引パイプ51の外側に上下方向に移動可能に嵌められた吸引ノズル53で構成されている。放射線状に張り出す3本の同じ長さのアーム54の先端に各1個のフロート52が結合されている。
【0008】
同様に特許文献1では、図2のように図中フロート26を一列状アーム22両端に各1個配置した例も提示しており、開口部の狭い貯留タンクでの使用に好適としている。
【0009】
図3は、特許文献2による従来例であり、図中十字線状に伸びた同長アーム35の先端に各1個のフロート2を結合し、さらに各フロート2の内側に、小径のフロート4をさらに同様に各1個固定配列した吸引装置を例示している。また図4も同じく特許文献2によるもので、図中放射状に配列した計3個フロート55の内側に食い込むようさらに3個小径フロート4を配列して安定性の向上を期待している。
【0010】
図5は特許文献3による従来例であり、図中フロート6aを一列アームの両端に各1個固定配列したものであり、さらにホース8の捻じれによる吸引ノズル19の傾きの軽減化を図る構造としている。
【0011】
いずれの特許文献にみられる先行技術の共通項として、フロート数の多少に拘わらず、いずれもフロートの配列配置は固定であることがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第4837803号
【文献】特開平6-212613号公報
【文献】特開2015-199025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら特許文献1,2に記載の従来例で示された、フロートが3個以上放射状あるいは十字状に固定配列された吸引装置は、その外周専有面積が大きいためクーラントタンク等の貯留タンクの開口部が十分にない場合において、物理的にタンク内に入れることが出来ないが故、不適である。例えば、NC旋盤や小型マシニングセンター等のクーラントタンクでは、タンク内機器の占有スペースの関係上、開口部が狭く上記の吸引装置は使えないことが多い。従って、開口部が狭いタンクの場合は、寸法上の制限から特許文献1,3に例示の一列状2個フロート型吸引装置に限定される。
【0014】
開口部が十分にある場合は、2個フロート型も3個以上フロート型吸引装置のいずれも開口部に収まり使用はできるが、後者が構造上姿勢保持力に優れ、従って液面吸引性能が安定しているため、3個以上フロート型吸引装置の使用が好適である。
【0015】
このように、従来例の吸引装置ではフロートの配列配置が固定されているため、開口部が狭い場合用、十分にある場合用としてそれぞれ別の吸引装置を用いざるを得ない。従って例えば3個以上フロート型吸引装置の移動式回収装置では、開口部が狭いクーラントタンクの回収ができないといった不都合な点があった。
【0016】
また逆に一列状2個フロート型吸引装置の移動式回収装置は、狭い開口に使用できる利点はあるものの、大きな開口の場合には前述のように安定吸引のためには3個以上フロート型が好適なため、やはり狭い開口用に限定使用されている。
【0017】
そこで本発明は、クーラントタンクに代表される貯留タンクにおいて開口部が狭い場合でも、十分にある場合でも、簡便な手段でフロートの配列を変えて物理的に開口部から吸引装置を入れることができ、安定吸引ができる吸引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、液面に浮上する浮上油等を吸引する吸引装置であって、吸引パイプと、少なくとも一つのフロートが固定される下段アームと、少なくとも一つのフロートが固定され、前記下段アームに対して前記吸引パイプの周りに相対回転可能な上段アームと、前記下段アームに対して前記上段アームを所定の回転位置に保持する保持手段と、を備え、前記下段アームと前記上段アームの方向が揃った一列配列形態と、前記下段アームと前記上段アームが略直角な十字配列形態とに切替え可能である吸引装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸引装置によれば、狭い開口でも十分な開口幅のタンクにも用いることができることから、本発明の吸引装置を用いた移動式回収装置は機種によりクーラントタンク開口の異なる種々の加工機に対しても、浮上油や微細加工粉の回収が可能となり、利便性や有用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来例(特許文献1に記載)の吸引装置(3個フロート)の斜視図である。
図2】従来例(特許文献1に記載)の吸引装置(2個フロート)の斜視図である。
図3】従来例(特許文献2に記載)の吸引装置(8個フロート)の平面図である。
図4】従来例(特許文献2に記載)の吸引装置(6個フロート)の平面図である。
図5】従来例(特許文献3に記載)の吸引装置(2個フロート)の断面図である。
図6】本発明の一実施形態の吸引装置(4個フロート)一列配列形態の平面図である。
図7】本実施形態の吸引装置(4個フロート)一列配列形態の断面図である。
図8】本実施形態の吸引装置(4個フロート)十字配列形態の平面図である。
図9】本実施形態の吸引装置(4個フロート)十字配列形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の吸引装置を詳細に説明する。ただし、本発明の吸引装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0022】
図6は、本実施形態の吸引装置20の平面図であり、4個フロートが一列配列形態の吸引装置を示す。狭い開口の場合、一列配列にして用いる。
【0023】
図7は、図6の吸引装置20の垂直断面図を示す。L字状に曲げられた吸引パイプ10の垂直部先端から吸引ノズル11を介して、液面の浮上物(浮上油、微細粉等)は吸引され、当該吸引パイプ10の水平部端に結合されるホースを介して回収装置に運ばれる。
【0024】
吸引パイプ10の垂直部上部と下部にはそれぞれ上止めワッシャ12と下止めワッシャ17が吸引パイプ10に固定結合されている。従って、両止めワッシャ12,17間の寸法は一定である。両止めワッシャ12,17間には、上から弾性体(コイル状圧縮ばね13)、長手方向両端にフロート18を固定した上段アーム14、長手方向両端にフロート19を固定した下段アーム16が配置される。
【0025】
そして上段アーム14の下面中芯部には、馬蹄形すなわち逆U字状の係合プレート15が、図中に記載の向きで固定結合されている。フロート18,19をアーム14,16の上面に取り付けるため、必然的に上段アーム14は下段アーム16より短い。
【0026】
逆U字状の係合プレート15の下には、長手方向両端にフロート19を固定した下段アーム16が逆U字状の係合プレート15の垂直部15aに押さえつけられた状態で、下止めワッシャ17の上面に保持されている。上段アーム14、上段アーム14と一体の逆U字状の係合プレート15、下段アーム16はいずれも吸引パイプ10の垂直部に対し回転可能な篏合となっている。
【0027】
圧縮ばね13はその圧縮量により生じる反発力で、上段アーム14と一体の逆U字状の係合プレート15を、下止めワッシャ17で支持されている下段アーム16に押さえつけており、これにより一列配列形態が保持されている。さらに一列配列時は、逆U字状の係合プレート15の垂直部15aの高さだけ、圧縮ばね13の圧縮量が後述の十字配列時より大きく、従って圧縮ばね13の反力すなわち押さえつけ力も増えるため、一列配列形態を安定保持するのに寄与している。
【0028】
図8は、本実施形態の吸引装置20の平面図であり、4個フロートが十字配列形態の吸引装置20を示す。十分な開口がある場合、十字配列にして用いる。一列配列から十字配列へ、またその逆の配列へと切替えるには下段アーム16を手で固定し、別の片手で上段アーム14を少し持ち上げた状態すなわち少し圧縮ばね13を圧縮した状態で90°回転してやれば、簡単に別の配列形態に切替えることができる。
【0029】
図9は、図8の十字配列形態における上段アーム14中心線に沿った断面図である。十字配列時には逆U字状の係合プレート15は下段アーム16にまたがった状態を保持しており、例えば何らかの外力が生じ吸引装置20がタンク内壁に押されフロート配列が十字状からX字状に変形しようとしても当該プレート垂直部15aがストッパーの役目を果たすので、圧縮ばね13による押さえつけ力に加えて、十字配列形態の保持をより確実なものにしている。
【0030】
以上に本発明の実施形態の吸引装置を説明した。なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0031】
例えば上記実施形態では、フロート数が4個の例を説明したが、本発明はフロートの数、形状、大きさ、材質につき限定したものではない。図8に見られるように本発明の一実施形態においては、上下段アームの長さが違うが故に、上段アーム14方向の復元モーメントが下段アーム16方向のそれよりも小さく、十字配列使用時に液面に揺れがあった場合、吸引装置20が上段アーム14方向により傾くことが懸念される。上段アーム14方向の復元モーメントを増すため、上段アーム14の両端にフロート18を各2個ずつ設けて、吸引装置20のより安定した姿勢保持に寄与してもよい。
【0032】
上記実施形態では、狭い開口の場合、吸引装置を一列配列形態にし、広い開口の場合、吸引装置を十字配列形態にしているが、狭い開口の場合でも、一列配列形態にした吸引装置を開口内に入れ、その後、手動により一列配列形態から十字配列形態に切替えてもよい。さらに、圧縮ばねとカムを利用して開口内で自動的に替わるようにしてもよい。
【0033】
上記実施形態では、上止めワッシャと下止めワッシャとの間に上から圧縮ばね、上段アーム、下段アームを配置しているが、上段アーム、下段アーム、圧縮ばねを配置してもよい。また、係合プレートを下段アームに固定結合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、機械加工業、金属非金属加工業の加工機クーラントタンクや、洗浄液、メッキ塗装の脱脂工程液タンク、その他貯留タンクにおける浮上油、微細粉などの回収装置に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
10…吸引パイプ
11…吸引ノズル
12…上止めワッシャ
13…圧縮ばね(弾性体)
14…上段アーム
15…逆U字状の係合プレート
15a…逆U字状の係合プレートの垂直部
16…下段アーム
17…下止めワッシャ
18…フロート
19…フロート
20…吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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