(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空間認識装置、空間認識方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231129BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20231129BHJP
G01S 17/87 20200101ALI20231129BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231129BHJP
G06Q 10/08 20230101ALI20231129BHJP
【FI】
G01B11/00 A
B65G1/00 501C
G01S17/87
G05D1/02 H
G06Q10/08
(21)【出願番号】P 2017170377
(22)【出願日】2017-09-05
【審査請求日】2020-08-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】内村 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将人
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】九鬼 一慶
【審判官】中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-248819(JP,A)
【文献】特開2009-162709(JP,A)
【文献】特開2014-186693(JP,A)
【文献】特開2017-039188(JP,A)
【文献】特開2007-050952(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022657(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01S 7/00- 7/51
G01S 17/00-17/95
G06Q 10/08
G05D 1/02
B65G 1/00- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物
のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの
移動状態
の解析
又は判定をする解析部、
を備える空間認識装置。
【請求項2】
前記反射光から得られる情報の分布は前記反射光の強度が強度閾値を超える範囲の分布であり、前記解析部は、前記反射光の強度が強度閾値を超える範囲の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物との位置を少なくとも解析する
請求項1に記載の空間認識装置。
【請求項3】
前記反射光から得られる情報の分布は前記光の照射時刻から前記反射光の受信時刻までの時間に基づく前記各座標に対応する実空間上の反射点までの距離の分布であり、前記解析部は、前記反射光の距離の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物との位置を少なくとも解析する
請求項1に記載の空間認識装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記反射板に設けられた反射領域の分布に基づいて、前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物との識別情報を解析する
請求項2に記載の空間認識装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記反射板に設けられた凹凸の分布に基づいて、前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物との識別情報を解析する
請求項3に記載の空間認識装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記荷物の移動状態に基づく作業の良否を解析する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の空間認識装置。
【請求項7】
検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物
のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの
移動状態
の解析
又は判定をする
空間認識方法。
【請求項8】
空間認識装置のコンピュータを、
検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物
のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの
移動状態
の解析
又は判定をする解析手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間認識装置、空間認識方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある空間内を移動する移動体の位置を認識するために、照射した光の反射光を解析する技術が特許文献1、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-152434号公報
【文献】特開2002-188918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多様な物体が載置され静止構造物が同じパターンで数多く並んでいるような空間内において、運搬装置やその運搬装置によって運ばれる物体などの移動体の位置やそれらの移動体の移動に基づく作業の良否を容易にまた低コストに認識できる技術が必要となっている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる空間認識装置、空間認識方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、空間認識装置は、検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動状態の解析又は判定をする解析部、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、空間認識方法は、検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動状態の解析又は判定をすることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、空間認識装置のコンピュータを、
検出範囲に位置する移動体と当該移動体が運ぶ荷物とにそれぞれ設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する少なくとも3つ以上の光学装置から前記光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得し、前記検出範囲の各座標における前記反射光から得られる情報の分布に基づいて前記反射板が設けられた前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの位置の遷移を検出し、前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動軌跡を解析することにより前記移動体と当該移動体が運ぶ荷物のそれぞれの移動状態の解析又は判定をする解析手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多様な物体が載置され静止構造物が同じパターンで数多く並んでいるような空間内において、運搬装置やその運搬装置によって運ばれる物体などの移動体の位置やそれら移動体の移動に基づく作業の良否を容易にまた低コストに認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による空間認識システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による空間認識装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による空間認識装置の機能ブロックを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による空間認識装置の処理フローを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるセンシング情報の具体例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による移動体の座標の算出概要を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による反射板の第一の他の例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による反射板の第二の他の例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による空間認識装置の最小構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による空間認識装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による空間認識装置を備えたフォークリフトを含む空間認識システムの概要を示す図である。
図1で示すフォークリフト10は、多様な物体が載置され静止構造物が同じパターンで数多く並んでいるような空間内を移動する移動体の一例である。フォークリフト10はフォークリフト10の移動できる空間に載置されるコンテナ20等の荷物を運搬する。フォークリフト10には反射板R1が設けられている。またフォークリフト10が運搬するコンテナ20等の荷物には反射板R2が設けられている。反射板R1、反射板R2・・を総称して反射板Rと呼ぶこととする。フォークリフト10が複数のコンテナ20を同時に運搬する場合にはそれら複数のコンテナ20それぞれに反射板Rが設けられてよい。
【0012】
空間内に配置される静止構造物は例えば柱や壁などである。
図1で示すように空間認識システム100において一例としては角柱状や円柱状の柱にレーダ装置2が設けられる。
図1においてはレーダ装置2a、2b、2cのレーダ装置を示している。レーダ装置2a、2b、2cを総称してレーダ装置2と呼ぶこととする。レーダ装置2は複数の柱や壁などの静止構造物に取り付けられていてよい。レーダ装置2は通信ネットワークを介して空間認識装置1と通信接続されている。レーダ装置2は、空間認識装置1の制御に基づいて空間内に光を照射し、その光の反射位置からの反射光を受光する。反射板Rにおいて反射しレーダ装置2で受光した反射光の受光強度は、反射板R以外の位置で反射してレーダ装置2で受光した反射光の受光強度に比べて強い。
【0013】
レーダ装置2は検出範囲の像面を細かく分割した各ピクセルに対応する各反射位置それぞれに対して光を照射し、その反射位置から反射した反射光から得られる受光強度や距離の情報を空間認識装置1へ出力する。空間認識装置1は、光の反射位置に応じた反射光から得られる受光強度や距離等の情報をレーダ装置2から取得し、その情報の分布に基づいて反射板Rが設けられたフォークリフト10やコンテナ20の位置や状態を解析する。空間認識装置1は、反射板Rに設けられた反射領域の分布に基づいて、反射板Rが設けられたフォークリフト10やコンテナ20の識別情報を解析してもよい。また、空間認識装置1は、反射板Rに設けられた凹凸の分布に基づいて、反射板Rが設けられたフォークリフト10やコンテナ20の識別情報を解析してもよい。
【0014】
図2は同実施形態による空間認識装置のハードウェア構成を示す図である。
空間認識装置1は、CPU(Central Processing Unit)201、IF(Interface)202、通信モジュール203、ROM(Read Only Memory)204、RAM(Random Access Memory)205、HDD(Hard Disk Drive)206などの構成を備えている。通信モジュール203は空間認識装置1と通信を行う。IF202は、例えば空間認識装置1と通信接続された操作端末3との間のインタフェースである。
【0015】
図3は同実施形態による空間認識装置の機能ブロックを示す図である。
空間認識装置1は制御部101、解析部102、移動体情報取得部103、表示部104、記録部105の各機能部を備える。
制御部101は、空間認識装置1に備わる各機能を制御する。
解析部102は、検出範囲に位置するフォークリフト10やコンテナ20等の移動体に設けられた反射板Rに光を照射しその反射光を受光するレーダ装置2から光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得する。解析部102は、レーダ装置2の検出範囲の各座標における反射光から得られる情報の分布に基づいて反射板Rが設けられたフォークリフト10やコンテナ20等の移動体の位置や状態を解析する。
移動体情報取得部103は空間認識装置1が解析した結果検出したフォークリフト10やコンテナ20などの移動体ID等の情報を取得する。
表示部104は操作端末3に設けられたモニタ等に警告情報や移動体の位置情報などの表示情報を出力する。
記録部105は解析部102の解析結果等の情報をROM204やRAM205等の記憶部に記録する。
【0016】
図4は空間認識装置の処理フローを示す図である。
次に空間認識装置の処理フローについて順を追って説明する。
管理者は操作端末3を操作して空間認識装置1を起動する。これにより空間認識装置1の制御部101はレーダ装置2に処理開始を指示する。レーダ装置2は自装置の検出範囲の各方向に光を照射し、反射位置で反射した反射光を受光する。レーダ装置2は一例としては検出範囲に位置する各物体から反射した反射光の強度を、その光の照射方向毎に検出するものであってよい。レーダ装置2は1秒や数ミリ秒など所定の間隔毎に、検出範囲の各方向に照射した光の反射光の強度を空間認識装置1へ出力する。フォークリフト10が移動することによりレーダ装置2の検出範囲も変動する。制御部101は所定の間隔毎に、レーダ装置2から受信した検出範囲内の各光照射方向に対応する反射光の受信強度やその反射光の反射位置までの距離を含むセンシング情報を生成する(ステップS101)。制御部101はセンシング情報を解析部102へ出力する。センシング情報には検出範囲の像面を細かく分割した各ピクセルを示す情報と、それら各ピクセルに対応する各反射位置からの反射光の受光強度と、各ピクセルに対応する反射位置までの距離とが少なくとも含まれる。
【0017】
図5はセンシング情報の具体例を示す図である。
解析部102は検出範囲のセンシング情報を受信すると、センシング情報から受光量などの反射光強度が所定の値以上となる高強度範囲A2のデータ群を取り出す。高強度範囲A2のデータ群は、一例としては検出範囲内において反射光の強度(受光量)が高い高強度範囲A2に対応する照射位置からの反射光の強度を示す。
図5で示す高強度範囲A2のデータ群は、当該範囲A2において縦方向13行、横方向17列の分割された各ピクセルの光の照射方向に対応する反射光の強度を一例として示している。解析部102は高強度範囲A2の各ピクセルの列方向に順次、反射光強度が閾値以上かを判定し、反射高強度が閾値以上のピクセルを特定する。解析部102はその反射光強度が閾値以上のピクセルの特定処理を高強度範囲A2の各行について行う。解析部102は反射光強度が閾値以上のピクセル群の範囲を、解析対象の反射板Rの範囲と判定する(ステップS102)。
【0018】
高強度範囲A2において解析部102が検出した反射板Rと推定される範囲のピクセル群の列方向や行方向の範囲が所定のピクセル数未満である場合には、解析部102はほぼ反射板Rの範囲が点として認識されるような遠い位置にフォークリフト10やコンテナ20等の移動体が位置すると判定できる。また高強度範囲A2において解析部102が検出した反射板Rと推定される範囲のピクセル群の列方向や行方向の範囲が検出範囲の全体を覆うようなピクセル数以上である場合には、解析部102は反射板Rが設けられたフォークリフトやコンテナ20などの移動体はかなり近い位置に位置すると判定できる。解析部102は一例としては、反射板Rと推定される範囲のピクセル群が点として認識されるような数少ないピクセル数で構成される場合には、移動体は遠い位置であると推定できるためそれら反射板Rと推定される範囲を解析対象から除くようにしてもよい。解析部102は解析対象の反射板Rの範囲と判定した高強度範囲A2内の各ピクセル番号やそれぞれのピクセルの反射光強度と各ピクセルが示す反射位置までの距離を含む反射板データを生成する(ステップS103)。
【0019】
解析部102は反射板データをセンシング情報内から生成した場合、その反射板データが示す反射板Rの範囲の形状をパターン認識により解析する(ステップS104)。解析部102は認識した反射板Rの形状を示す形状IDを移動体情報取得部103へ出力する。移動体情報取得部103は形状を示す形状IDに紐づいてHDD206等の記憶部に記録される移動体IDを読み取る(ステップS105)。なお、ある特定の反射板Rの形状には一つの移動体IDのみが紐づいてHDD206に記録されていることとする。移動体IDは例えばフォークリフト10のIDや、コンテナ20のIDであってよい。
【0020】
解析部102は同じ移動体IDの検出した各反射板データに対応するセンシング情報を特定し、それらセンシング情報を送信した各レーダ装置2を特定する。例えば
図1に示すようにレーダ装置2a、2b、2cそれぞれの出力したセンシング情報から生成された反射板データに基づいて、解析部102が同じ移動体IDを同時刻と推定できる時間内に検出したとする。この場合、解析部102はレーダ装置2a、2b、2cの座標をHDD206から読み取る(ステップS106)。解析部102は、ステップS105で読み取った移動体IDを所定の時間内で3以上のレーダ装置2からのセンシング情報により生成された反射板データに基づいて検出できたかを判定する(ステップS107)。Yesの場合には解析部102は、各反射板データから得られる反射板Rの範囲の中央部分のピクセルの距離を取得する。そして解析部102はその移動体IDが示す移動体の位置を算出する(ステップS108)。ステップS107の判定がNoの場合にはステップS101の処理に戻り、レーダ装置2から受信した信号に基づいて次のセンシング情報の生成からの処理を繰り返す。
【0021】
図6は移動体の座標の算出概要を示す図である。
解析部102は複数のレーダ装置2それぞれの位置と、各レーダ装置2から反射板Rの中央部分までの距離とを取得すると、それらの情報に基づいて移動体の位置を算出する。例えば解析部102は、レーダ装置2aの座標(x1,y1)を中心としそのレーダ装置2aからフォークリフト10の反射板Rの中央部分までの距離L1を半径とする第一の円と、レーダ装置2bの座標(x2,y2)を中心としそのレーダ装置2bからフォークリフト10の反射板Rの中央部分までの距離L2を半径とする第二の円と、レーダ装置2cの座標(x3,y3)を中心としそのレーダ装置2cからフォークリフト10の反射板Rの中央部分までの距離L3を半径とする第三の円との交点を算出する。解析部102はその交点をステップS105で読み取った移動体IDが示すフォークリフト10の座標であると特定する。同様に解析部102はフォークリフト10に積載されるコンテナ20の座標を算出する。
【0022】
出力部104は解析部102の算出したフォークリフト10やコンテナ20等の移動体の位置とその移動体のIDを操作端末3の表示部に表示された空間地図上に出力する(ステップS109)。出力部104は移動体IDに基づいてHDD206から移動体名を読み取り、その移動体名を移動体IDと共に空間地図上に出力してもよい。また出力部104は移動体IDに基づいてその移動体がコンテナ20である場合には、コンテナ20に含まれる商品名、商品ID、量などの情報をHDD206から読み取って空間地図上に出力してもよい。これにより管理者は空間における移動体の位置やその他の属性情報を認識することができる。制御部101は処理を終了するかを判定する(ステップS110)。制御部101は処理を終了しない場合にはステップS101からの処理を繰り返すよう制御する。
【0023】
解析部102は移動体IDそれぞれについて上述の位置の検出の処理を繰り返し行うことで、移動体それぞれの位置の遷移を検出することができる。これにより、解析部102はフォークリフト10の移動軌跡、コンテナ20の移動軌跡などを解析することができる。移動軌跡はフォークリフト10やコンテナ20などの各移動体の所定の間隔の時刻毎の3次元空間内の位置により示される情報である。解析部102はその移動体の軌跡が所定のパターンかどうか、速度が所定の速度であったかを解析して移動の状態の良否を判定するようにしてもよい。例えば解析部102は移動体の軌跡が所定のパターンから外れるパターンであると判定した場合は、移動体IDに紐づけて移動体の移動状態が悪いことを示す情報をHDD206等に記録する。また解析部102はコンテナ20の上げ下げの位置の軌跡に基づいて作業が丁寧であったか、安全であったかなどの情報を解析して、移動体IDに紐づけてその解析結果を記録するようにしてもよい。
【0024】
反射板Rは静止構造物に取り付けられていてもよい。例えば構造部に取り付けておくことで、その構造物の時間に応じた傾斜や移動を解析部102が解析するようにしてもよい。このような場合、静止構造物も移動体の一態様とすることができる。例えば棚のような静止構造物に反射板Rが取り付けられている場合、解析部102はその棚に設けられた反射板Rの位置の遷移に基づいて棚が倒れることを監視することができる。
【0025】
上述の処理によれば空間認識装置1は、静止構造物が同じパターンで数多く並び多様な物体が載置される空間において移動する移動体の位置を容易に認識することができる。また空間認識装置10は位置情報発信タグから発信された信号を解析して移動体の位置を特定する装置や、GNSSなどによる位置を解析して移動体の位置を特定する装置を備えなくてよく、移動体Rに反射板Rが備え付ければよいため、システムを構成する装置のコストを軽減することができる。また空間認識装置1は電子回路に影響を及ぼす電波を用いずに光により移動体の位置を測定する為、電波信号の発信を抑制されるエリアにおける移動体の位置の認識に有用である。
【0026】
なお上述の処理において解析部102は反射光強度が閾値以上となる範囲に基づいて反射板Rの範囲を判定している。しかしながら解析部102はさらに反射光強度が閾値以上となったピクセル範囲に隣接する反射光強度が閾値未満となったピクセルとの反射光強度の差が所定の閾値以上となる場合に、反射光強度が閾値以上となったピクセル範囲を解析対象の反射板Rの範囲と特定してもよい。
【0027】
図7は反射板の第一の他の例を示す図である。
コンテナ20に設けられた反射板R1やフォークリフト10に設けられた反射板R2にはQRコード(登録商標)などの2次元コード情報Dが印刷されていてもよい。この場合、解析部102は反射板Rの範囲と判定した高強度範囲A2において反射光強度が閾値未満となるピクセルと、反射光強度が閾値以上となるピクセルを2値に分けて、その2値画像が2次元コード情報Dであると判定する。解析部102は高強度範囲A2内の2値画像に基づいて、2次元コード情報Dを解析する従来の手法により、その反射板Rが示す移動体のIDを読み取るようにしてもよい。
【0028】
図8は反射板の第二の他の例を示す図である。
反射板Rは
図7で示すように凹凸がもうけられていてもよい。この場合、解析部102は反射板Rの範囲と判定した高強度範囲A2の各ピクセルに対応する反射位置までの距離を算出し、その距離に基づいて隣接するピクセル間の距離の差が大きいピクセルと、隣接するピクセル間の距離が小さいピクセルとを検出する。解析部102は隣接するピクセルとの距離の大小に基づいて各ピクセルを2値化して、その2値画像が2次元コード情報Dであると判定する。解析部102は高強度範囲A2内の2値画像に基づいて、2次元コード情報Dを解析する従来の手法により、その反射板Rが示す移動体のIDを読み取るようにしてもよい。
【0029】
図9は空間認識装置の最小構成を示す図である。
空間認識装置1は少なくとも解析部を備えればよい。
解析部102は、検出範囲に位置する移動体に設けられた反射板に光を照射しその反射光を受光する光学装置から光の照射方向に応じた反射光から得られる情報を取得する。解析部102は、検出範囲の各座標における反射光から得られる情報の分布に基づいて反射板が設けられた移動体の位置を少なくとも判定する。
【0030】
上述の空間認識装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0031】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1・・・空間認識装置
2・・・レーダ装置
3・・・操作端末
10・・・フォークリフト
20・・・コンテナ
101・・・制御部
102・・・解析部
103・・・車両情報取得部
104・・・表示部
105・・・記録部