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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】製氷機及び製氷機を備えた冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20231129BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F25C1/00 Z
F25D11/00 101B
F25C1/00 301Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019234065
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103033
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 利治
(72)【発明者】
【氏名】設楽 真輔
(72)【発明者】
【氏名】片桐 賢宏
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150785(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198177(WO,A1)
【文献】特開平06-101943(JP,A)
【文献】特開2005-098602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00-1/25
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる流路を有するヒートシンクと、
金属製の棒状部材が基端部から先端部にかけて下側に延びるように取り付けられた金属板と
を有し、前記ヒートシンクにより前記棒状部材が冷却される冷却部と、
上方が開口した液体貯蔵領域内に液体を収容可能な液体容器と、
給液管により前記液体容器内に液体を供給する液体供給部と、
を備え、
複数の前記棒状部材及び前記給液管が略一列に配置され、
前記開口から挿入された複数の前記棒状部材及び前記給液管の先端部が前記液体貯蔵領域内に位置し、
前記液体容器が、複数の前記棒状部材及び前記給液管が並んだ列に沿って延びた形状を有し、
前記列に沿った方向から見た断面視において、前記液体貯蔵領域が前記棒状部材の外側に生成される氷の外形に沿った形状を有することを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記液体貯蔵領域の側方において前記列に沿って延びた軸を回転軸として、前記液体容器を回転移動させる移動機構を更に備え、
前記移動機構により、前記液体容器が、前記開口が上方を向き前記液体貯蔵領域内に液体を貯蔵可能な製氷位置と、前記開口が側方を向き前記棒状部材の下側に前記液体容器が存在しない退避位置との間を回転移動することを特徴とする請求項1に記載の製氷機。
【請求項3】
前記液体容器が前記退避位置にある状態で、前記液体容器及び前記移動機構が取り付けられたフレームを、複数の前記棒状部材及び前記給液管に対して、前記列に沿った方向に引き出し可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の製氷機。
【請求項4】
前記液体供給部及び前記移動機構を制御する制御部を更に備え、
前記制御部の制御により、
前記液体供給部が、前記製氷位置にある前記液体容器に液体を供給する給液工程と、
前記給液工程の後、所定の時間、氷点下にした前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体貯蔵領域に収容された液体に浸かった状態にする製氷工程と、
前記製氷工程の後、前記移動機構が、前記液体容器を前記製氷位置から前記退避位置まで回転移動させる退避工程と、
前記退避工程の後、前記棒状部材を氷点より高い離氷温度にして、前記棒状部材の周囲に生成された氷を前記棒状部材から落下させる離氷工程と、
を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の製氷機。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の製氷機を備え、
前記製氷機の前記列が庫内の前後方向に沿うように配置され、
庫内を冷却するための冷却システムから分岐して、冷媒を前記製氷機の前記ヒートシンクへ供給することを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を凍らせて氷を生成する製氷機及びこの製氷機を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を凍らせて氷を生成する製氷機の中には、トレー内の液体に浸かった冷却突起を冷蔵庫の冷却システムの冷媒を用いて冷却することにより、製氷を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-150785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製氷機では、複数の冷却突起が縦横に並んで配置されているので、製氷機が大きな設置スペースを要する。特に、製氷機を冷蔵庫の庫内に配置した場合、製氷機が庫内の幅方向の領域を大きく占有すると、庫内の有効収納領域が減少する。仮に、庫内の製氷機の前後方向にスペースがあったとしても、貯蔵する食品や生成した氷の出し入れを考慮すると、そのスペースを有効利用するのは困難である。
また、縦横に並んだ冷却突起に応じてトレーの内容積も大きくなるので、多量の液体をトレーに供給する必要がある。トレー内に収容される液体の量が多いと、迅速な効率的な製氷が困難となる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、省スペースであり、かつ製氷のために供給する液体の量が少なく、迅速で効率的な製氷が可能な製氷機、及びこの製氷機を備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の製氷機は、
冷媒が流れる流路を有するヒートシンクと、
金属製の棒状部材が基端部から先端部にかけて下側に延びるように取り付けられた金属板と
を有し、前記ヒートシンクにより前記棒状部材が冷却される冷却部と、
上方が開口した液体貯蔵領域内に液体を収容可能な液体容器と、
給液管により前記液体容器内に液体を供給する液体供給部と、
を備え、
複数の前記棒状部材及び前記給液管が略一列に配置され、
前記開口から挿入された複数の前記棒状部材及び前記給液管の先端部が前記液体貯蔵領域内に位置し、
前記液体容器が、複数の前記棒状部材及び前記給液管が並んだ列に沿って延びた形状を有し、
前記列に沿った方向から見た断面視において、前記液体貯蔵領域が前記棒状部材の外側に生成される氷の外形に沿った形状を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数の棒状部材及び給液管が略一列に並び、液体容器がその列に沿って延びており、省スペースな製氷機を実現できる。例えば、複数の棒状部材及び給液管の列が冷蔵庫の庫内の前後方向に沿うように、この製氷機を配置した場合、製氷機の庫内の幅方向における占有領域を小さくできるので、庫内の収納領域を有効に活用できる。
また、液体貯蔵領域が生成される氷の外形に沿った形状を有するので、液体貯蔵領域の内容積も生成する氷の外形に合わせて小さくできる。このため、製氷のために液体容器に供給する液体の量も少なくできる。トレーの内容積も小さくできるので、液体貯蔵領域内に収容された液体を迅速に冷却して、短時間に効率的に製氷することができる。
これにより、省スペースであり、かつ製氷のために供給する液体の量が少なく、迅速で効率的な製氷が可能な製氷機を提供できる。
【0008】
また、本発明は、
前記液体貯蔵領域の側方において前記列に沿って延びた軸を回転軸として、前記液体容器を回転移動させる移動機構を更に備え、
前記移動機構により、前記液体容器が、前記開口が上方を向き前記液体貯蔵領域内に液体を貯蔵可能な製氷位置と、前記開口が側方を向き前記棒状部材の下側に前記液体容器が存在しない退避位置との間を回転移動することを特徴とする
【0009】
本発明によれば、液体貯蔵領域の側方に位置し、棒状部材及び給液管の列に沿って延びた軸を回転軸として、液体容器が回転移動する。棒状部材及び給液管の一列に並んでいるので、回転軸と液体容器の回転最外部との間の距離を短くできる。よって、液体容器の回転軌跡を小さくできるので、開口が側方を向いた退避位置においても、上下方向の占有スペースを小さくできる。これにより、上下方向においても省スペースな製氷機を提供できる。
【0010】
また、本発明は、
前記液体容器が前記退避位置にある状態で、前記液体容器及び前記移動機構が取り付けられたフレームを、複数の前記棒状部材及び前記給液管に対して、前記列に沿った方向に引き出し可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、一列に並んだ複数の棒状部材及び給液管の列に沿って引き出すので、省スペースを保ったまま、棒状部材及び給液管と干渉することなく、液体容器及び移動機構が取り付けられたフレームを容易に取り出し、元の位置に戻すことができる。このため、液体容器や移動機構のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明は、
前記液体供給部及び前記移動機構を制御する制御部を更に備え、
前記制御部の制御により、
前記液体供給部が、前記製氷位置にある前記液体容器に液体を供給する給液工程と、
前記給液工程の後、所定の時間、氷点下にした前記棒状部材の前記先端部から所定の領域が前記液体貯蔵領域に収容された液体に浸かった状態にする製氷工程と、
前記製氷工程の後、前記移動機構が、前記液体容器を前記製氷位置から前記退避位置まで回転移動させる退避工程と、
前記退避工程の後、前記棒状部材を氷点より高い離氷温度にして、前記棒状部材の周囲に生成された氷を前記棒状部材から落下させる離氷工程と、
を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、少ない液体の供給量で、短時間に効率的に複数の氷を生成することができる。
【0014】
また、本発明の冷蔵庫は、
上記の製氷機を備え、
前記製氷機の前記列が庫内の前後方向に沿うように配置され、
庫内を冷却するための冷却システムから分岐して、冷媒を前記製氷機の前記ヒートシンクへ供給することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、庫内における製氷機の幅方向の占有領域を小さくできるので、庫内の収納領域を有効に活用できる。更に、庫内に備えた製氷機により、製氷のために供給する液体の量を少なく、迅速で効率的な製氷が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明においては、省スペースであり、かつ製氷のために供給する液体の量が少なく、迅速で効率的な製氷が可能な製氷機、及びこの製氷機を備えた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の1つの実施形態に係る製氷機を斜め上方前側から見た斜視図である。
図1B図1Aに示す製氷機において、前面のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図1C図1Bに示す製氷機を斜め上方後側から見た斜視図である。
図2A】1つの実施形態に係る製氷機の冷却部、液体容器、移動機構及び給除液管を斜め上側から見た斜視図である。
図2B】1つの実施形態に係る製氷機の冷却部、液体容器、移動機構及び給除液管を斜め下側から見た斜視図である。
図3図2AのA-A断面図であって、本発明の1つの実施形態に係る製氷機を模式的に示す側面断面図である。
図4図3と同じ断面を示す図であって、本発明の1つの実施形態に係る製氷機の変形例を模式的に示す側面断面図である。
図5】本発明の1つの実施形態に係るヒートシンクの平面形状及びヒートシンクに接続された冷却システムを模式的に示す図である。
図6A図2Aの矢印B-Bから見た図であって、製氷位置にある液体容器と、冷却部及び給除液管との位置関係を示す側面図である。
図6B図2Aの矢印B-Bから見た図であって、退避位置にある液体容器と、冷却部及び給除液管との位置関係を示す側面図である。
図7】本発明の1つの実施形態に係る製氷機の制御構成を示すブロック線図である。
図8A】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される給液工程を模式的に示す側面断面図である。
図8B】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される製氷工程を模式的に示す側面断面図である。
図8C】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される除液工程を模式的に示す側面断面図である。
図8D】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される退避工程を模式的に示す側面断面図である。
図8E】本発明の1つの実施形態に係る製氷機で実施される離氷工程を模式的に示す側面断面図である。
図9】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する製氷機及び冷蔵庫は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。以下の記載及び図面では、製氷機及び冷蔵庫が水平面に設置された場合を想定して、上下方向を示してある。
【0019】
(1つの実施形態に係る製氷機)
図1Aは、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2を斜め上方前側から見た斜視図である。図1Bは、図1Aに示す製氷機2において、前面のカバー6を取り外した状態を示す斜視図である。図1Cは、図1Bに示す製氷機2を斜め上方後側から見た斜視図である。図2Aは、1つの実施形態に係る製氷機2の冷却部40、液体容器50、移動機構60及び給除液管70を斜め上側から見た斜視図である。図2Bは、1つの実施形態に係る製氷機2の冷却部40、液体容器50、移動機構60及び給除液管70を斜め下側から見た斜視図である。図3は、図2AのA-A断面図であって、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2を模式的に示す側面断面図である。図4は、図3と同じ断面を示す図であって、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2の変形例を模式的に示す側面断面図である。図5は、本発明の1つの実施形態に係るヒートシンク10の平面形状及びヒートシンク10に接続された冷却システムを模式的に示す図である。図6は、図2Aの矢印B-Bから見た図であって、製氷位置にある液体容器50と、冷却部40及び給除液管70との位置関係を示す側面図である。図6Bは、図2Aの矢印B-Bから見た図であって、退避位置にある液体容器50と、冷却部40及び給除液管70との位置関係を示す側面図である。図1Cでは、内部構造を視認できるように、一方の接続管14Bを取り外した状態で示してある。
はじめに、図1A図1B図1C図2A図2B図3図4図5図6A及び図6Bを参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2の概要を説明する。
【0020】
製氷機2は、液体を凍らせて氷を生成可能な冷却部40と、液体を貯蔵可能な液体容器50と、液体容器50を回転移動させる移動機構60と、液体容器50に液体を供給する液体供給部72と、液体容器50内の液体を除去する液体除去部74とを備える。図面には、実際に液体容器50に液体を供給し、液体容器50から液体を除去する給除液管70が示されている。給除液管70は、液体供給部72における給液管及び液体除去部74における除液管の両方の機能を果たす部材である。
冷却部40は、ピン42を介して製氷機2の本体に固定されている。給除液管70も、製氷機2の本体に固定されている。一方、液体容器50及び移動機構60は、保持部4Aを介して製氷機2の本体に着脱可能に構成されたフレーム4に取り付けられている。
【0021】
本実施形態に係る製氷機2は、独立した製氷機として構成されており、冷却部40に冷媒を供給するための冷却システム80を備える。ただし、これに限られるものではなく、後述するように、冷蔵庫に組み込まれて、冷蔵庫の冷却システムから冷媒が供給される場合もあり得る。製氷機2は、更に、製氷機2の構成機器を制御する制御部90を備える。
凍結させて氷を生成する液体として、飲料水をはじめとする任意の液体を用いることができる。
【0022】
<冷却部>
冷却部40は、図3に示す1つの実施形態及び図4に示す1つの実施形態の変形例によって、構成部材が異なる。
[1つの実施形態]
1つの実施形態では、冷却部40は、上側から下側にかけて、ヒートシンク10及び金属板20を備え、ヒートシンク10の下面と金属板20の上面が接合されている。金属板20は、板状のベース部22の下側の面に複数の棒状部材24が取り付けられている。
[変形例]
変形例では、冷却部40は、上側から下側にかけて、順にヒートシンク10、ペルチェ素子30、及び金属板20を備える。金属板20は、板状のベース部22の下側の面に複数の棒状部材24が取り付けられている。ペルチェ素子30は、ヒートシンク10と、金属板20との間に配置され、一方の面(上面)がヒートシンク10の面(下面)と接し、他方の面(下面)が金属板20の棒状部材24が取り付けられた面と反対側の面(上面)に接するようになっている。
何れの場合においても、複数の棒状部材24が略一列に並んで配置されている。ここでは、6本の棒状部材24が備えられた場合を示すが、これに限られるものではない。棒状部材24の個数として、2以上の任意の数を採用することができる。
【0023】
[ヒートシンク]
ヒートシンク10は、平板状の形状を有し、アルミ、銅のような熱伝導率の高い金属から形成される。ヒートシンク10は、内部に液状または霧状の冷媒が流れる流路12が設けられている。図5では、冷媒の流れを点線の矢印で示してある。図5には、平面視で3つの折り返し部を有する略M字形の流路12が示されているが、これに限られるものではない。ヒートシンク10の大きさに応じて、1つの折り返し部を有する流路や、3つより多い折り返し部を有する流路を用いることもできる。流路12の両端には、接続管14A,14Bが取り付けられている。
ヒートシンク10の構造として、金属板に溝状の流路が形成されているものや、金属薄板に流路となる冷却パイプが接合されているものを例示できる。後者の場合、金属薄板の片面に冷却パイプが接合されている場合も、冷却パイプの周囲を覆うよう金属薄板が接合されている場合もあり得る。熱伝導を考慮すると、冷却パイプ及び金属薄板が面で接触することが好ましい。金属薄板の厚みとして1~20mm程度を例示できる。ヒートシンク10の平面寸法は、後述する金属板20の平面寸法と同様である。
【0024】
本実施形態に係る冷却システム80では、図5に示すように、圧縮器82で圧縮された高圧の冷媒ガスが、凝縮器84で放熱して液体に戻り、毛細管内を通過中に減圧されて沸点が下がり、乾燥器86を経て、接続管14Aからヒートシンク10の流路12に入る。流路12を通過中に、液状または霧状の冷媒は周囲から熱を吸収して蒸発する。気化した冷媒は、接続管14Bから冷却システム80の配管を経て、圧縮器82に戻り、再び圧縮されるというサイクルを繰り返す。このような冷却サイクルにより、ヒートシンク10を氷点下の温度まで冷却することができる。
【0025】
[金属板]
金属板20は、アルミ、銅のような熱伝導率の高い金属から形成される。金属板20は、平板状のベース部22、及びベース部22に取り付けられた複数の金属製の棒状部材24を有する。棒状部材24は、基端部24Aから先端部24Bにかけて下側に延びるようにベース部22の下面に取り付けられている。
【0026】
図1A,1Bでは、6本の棒状部材24がベース部22に取り付けられている場合を示す。棒状部材24は、円形の断面形状を有し、外径が5~20mm程度、長さが30~80mm程度を例示することができる。棒状部材24の大きさ及び取り付ける本数により、ベース部22の平面形状が定まる。ヒートシンク10も、金属板20のベース部22とほぼ同様な平面形状が採用される。ヒートシンク10及び金属板20のベース部22の平面寸法として、前後方向の寸法として100~400mm程度を例示でき、左右方向の寸法として40~200mm程度を例示できる。ベース部22の厚みとしては、2~10mm程度を例示できる。
【0027】
本実施形態に係る金属板20は、棒状部材24の基端部24A側に雄ネジが設けられ、ベース部22に設けられた孔部に形成された雌ネジと螺合するようになっている。このような構造により、棒状部材24を容易に交換して取り付けることができる。本実施形態に係る棒状部材24は、円形の断面形状を有するが、これに限られるものではなく、多角形、星形、ハート形をはじめとする任意の断面形状を有する棒状部材に取り替えることもできる。また、溶接や蝋付けにより、棒状部材24をベース部22に接合することもできる。棒状部材24の冷却効果を考慮すると、中実の棒状部材24が好ましいが、加工性等を考慮して、中空の棒状部材24を採用することもできる。
【0028】
[ペルチェ素子]
ペルチェ素子30は、異なる2種類の金属または半導体を接合して電流を流すと、接合点で熱の吸収・放出が起こるペルチェ効果を利用した素子である。ペルチェ素子30に対して、所定の方向に電流を流すと、一方の面が吸熱側となり、他方の面が放熱側となる。そして、ペルチェ素子30に対して、逆の方向に電流を流すと、吸熱側となる面及び放熱側となる面が逆転する。本実施形態では、既知の任意のペルチェ素子を用いることができる。
本実施形態に係るペルチェ素子30の幅、奥行き寸法として、20~100m程度を例示でき、厚みとして2~20mm程度を例示できる。ヒートシンク10や金属板20の大きさに合わせて、複数のペルチェ素子30を配置することもできる。
【0029】
[冷却部の固定構造]
ペルチェ素子30を備えない場合には、ヒートシンク10の下面及び金属板20の上面と密着するように、例えば、ボルトナットのような締結部材を用いて互いに固定することができる。
一方、ペルチェ素子30を備える場合には、ペルチェ素子30の両面がヒートシンク10の面下及び金属板20の上面と密着するような固定構造を有する。例えば、ペルチェ素子30を挟み込むように配置されたヒートシンク10及び金属板20を、ボルトナットのような締結部材を用いて互いに固定することができる。ボルト軸に引張応力がかかるように締結することにより、ヒートシンク10の下面及びペルチェ素子30の上面を密着させ、ペルチェ素子30の下面及び金属板20の上面を密着させることができる。
ただし、この固定方法に限られるものではなく、その他の任意の固定手段を用いて、冷却部40の固定構造を形成することができる。
【0030】
<液体容器>
液体容器50は、例えば、弾性を有する樹脂材料から形成される。液体容器50は、底面部50Aと底面部50Aから立設した側壁部50Bとに囲まれた液体貯蔵領域Rを有する。液体貯蔵領域Rの上方は開口している。金属板20の棒状部材24は、この開口Sを介して、液体貯蔵領域R内に挿入され、棒状部材24の先端部24Bから所定の領域が液体貯蔵領域R内に配置されるようになっている。後述する給除液管70も、この開口Sを介して、液体貯蔵領域R内に挿入される。
【0031】
本実施形態に係る製氷機2では、冷媒により冷却されたヒートシンク10からの冷却により、金属製の棒状部材24が氷点下の温度となる。棒状部材24の先端部24Bから所定の領域が液体容器50の液体貯蔵領域内に配置されるようになっているので、棒状部材24の液体に浸かった部分の周囲に氷を生成することができる。所定の領域として、棒状部材24の先端部24Bから8~40mm程度を例示することができる。
更に、ペルチェ素子30を備える場合には、ヒートシンク10による冷却に加え、ペルチェ素子30による冷却も加わるので更に低い温度で冷却でき、金属板20の棒状部材24の周囲に短時間に氷を生成することができる。
【0032】
本実施形態では、6本の棒状部材24が略一列に並んで配置され、液体貯蔵領域Rもその列に沿って細長く延びた形状を有する。その列に沿った方向から見た断面視において(図3図4参照)、液体貯蔵領域Rの底面を形成する底面部50A及び側面を形成する側壁部50Bは滑らかな曲線部を介して繋がり、上方が開口している。底面部50A及び側壁部50Bで画定された液体貯蔵領域Rは、棒状部材24の外側に生成される氷の外形に沿った形状を有する。特に、生成する氷の外形に合わせた傾斜面が形成されている。これに伴い、液体貯蔵領域Rを囲む液体容器50の外殻も、棒状部材24の外側に生成される氷の外形に沿った形状を有する。
【0033】
これにより、液体貯蔵領域Rの内容積を生成する氷の外形に合わせて小さくできる。よって、製氷のために液体容器に供給する液体の量も少なくできる。更に、液体貯蔵領域R内に収容された液体の温度を冷却部40で迅速に低下させることができ、これにより短時間に氷を生成する効率的な製氷が実現できる。
本実施形態では、液体容器50を構成する側壁部50Bと繋がり、上方の開口Sを一部覆うリブ50Cが設けられている。
【0034】
<シャフト部>
図2A,2Bに示すように、液体容器50には、液体貯蔵領域Rの延在方向に沿って延びたシャフト部52が設けられている。液体容器50のシャフト部52の一方の端部は、後述する移動機構60の駆動軸に連結されている。一方、液体容器50のシャフト部52の他方の端部は、製氷機2のフレーム4に取り付けられた軸受部62に回転自在に支持されている。移動機構60もフレーム4に取り付けられている。
【0035】
このような構成により、シャフト部52の中心軸Cを回転中心として、液体容器50が回転可能になっている。移動機構60の駆動力により、液体容器50の液体貯蔵領域Rの側方に配置された回転軸Cを中心にして、液体容器50を回転移動させることができる。
つまり、本実施形態に係る製氷機2では、液体容器50の液体貯蔵領域Rの側方において、複数の棒状部材24が並んだ列に沿って延びた軸Cを回転軸として、液体容器50を回転移動させる移動機構60を備えている。
【0036】
また、液体容器50には、突起54が設けられている。後述するように、突起54を製氷機2のフレーム部と当接させた状態で、移動機構60により液体容器50を回転させることにより、弾性を有する液体容器50を捻って、液体容器50内の氷を離氷させることができる。
【0037】
<移動機構>
移動機構60は、液体容器50を回転移動させるように構成されている。移動機構60の駆動モータが起動して駆動軸が回転すると、液体容器50は点Cを回転中心として回転する。移動機構60は、例えば、駆動モータの駆動力により、液体容器50を時計回り・反時計回りに回転移動させることができる(図2Bの両矢印参照)。
【0038】
図3図4及び図6Aに示すような液体容器50の位置を、製氷位置と称する。液体容器50が製氷位置にいる場合には、液体容器50の液体貯蔵領域Rの開口Sが上方を向いて、液体を液体貯蔵領域R内に貯蔵可能である。金属板20の棒状部材24は、この開口Sを介して先端部から所定の領域が液体貯蔵領域R内に配置される。
移動機構60により、液体容器50を製氷位置から軸Cを回転軸として回転させ、図2A図2B及び図6Bに示すような、液体容器50の液体貯蔵領域Rの開口Sが側方を向いて、金属板20の棒状部材24の下側に液体容器50が存在しない位置まで回転させることができる。この液体容器50の位置を退避位置と称する。製氷位置及び退避位置の間の液体容器50の回転角度は、主に、金属板20の棒状部材24及び液体容器50の位置関係、並びに回転中心となる点Cの位置によって異なるが、70度から120度の範囲が適切であると考えられる。
【0039】
以上のように、複数の棒状部材24及び給除液管70が略一列に配置され、液体容器50が、複数の棒状部材24及び給除液管70が並んだ列に沿って延びた形状を有しているので、横方向において、省スペースな製氷機2を実現できる。移動機構60も、回転軸Cに沿って見た側面視において、液体容器50の側方であって、液体容器50と一部重なるように配置されているので、横方向における省スペースに貢献している。
【0040】
液体容器50は、液体貯蔵領域Rの側方において、一列に並んだ複数の棒状部材24及び給除液管70の列に沿って延びた軸Cを回転軸として回転移動する。このため、回転軸Cと液体容器50の回転最外部との間の距離Dを短くできる。よって、液体容器50の回転軌跡を小さくできるので、開口Sが側方を向いた退避位置においても、上下方向、斜め方向の占有スペースを小さくできる。これにより、上下方向においても省スペースな製氷機2を提供できる。
【0041】
移動機構60により、液体容器50を製氷位置から軸Cを回転軸として回転させ、退避位置を通り越して、液体容器50の液体貯蔵領域Rの開口Sが下方を向く位置まで回転させることもできる。この場合、液体容器50の外面に設けられた突起54が製氷機2のフレーム部と当接し、この状態で移動機構60により液体容器50を更に回転させることにより、弾性を有する液体容器50を捻って、液体容器50の内壁に凍結付着した氷を離氷させることができる。
【0042】
<液体供給部/液体除去部>
本実施形態では、液体容器50内に液体を供給する液体供給部72、及び液体容器50内から液体を排出する液体除去部74を兼用した機構を有する。この液体供給部72及び液体除去部74の兼用機構は、主に、液体を貯蔵する貯蔵容器と、吸引方向及び吐出方向を逆転可能な給除液ポンプと、給除液管70と、それらを接続する給除液流路とから構成される。液体供給部72及び液体除去部74を兼用することにより、部品点数を減らし、特に、給除液管70だけが液体容器50内に挿入されるので、液体容器50周りの省スペースが図れる。
【0043】
後述する制御部90の制御により、給除液ポンプを給液側に駆動すると、貯蔵容器内の液体が、給除液流路を介して、給排液ポンプから給除液管70に流れて、給除液管70の先端開口70Aから液体容器50内に流入する。
制御部90の制御により、給除液ポンプ除液側に駆動すると、液体容器50内の液体が給除液管70の先端開口70Aから吸い込まれ、給除液流路を介して、給除液管70から給排液ポンプを流れて貯蔵容器内に流入する。このとき、戻りの液体を貯蔵容器内に流入させる前に、フィルタを通過させることが好ましい。フィルタの濾過機能により、貯蔵容器内の液体の可溶物または不溶物の濃度上昇を抑えて、高品質な氷の生成が実現できる。
ただし、液体供給部72及び液体除去部74を兼用する機構は一例であって、液体供給部72及び液体除去部74ごとに、個別の給液ポンプ及び除液ポンプ、並びに個別の給液管及び除液管を備えることもできる。
【0044】
何れの場合も、液体容器50は製氷位置において液体を貯蔵可能であって、上方が開口されている。よって、給除液管70(または給液管及び除液管)の先端領域を上方の開口Sから液体容器50内に差し込むだけなので、液体容器50を回転移動させるときに、部材間の干渉を容易に防ぐことができる。
【0045】
更に、給除液管70(または給液管及び除液管)は、複数の棒状部材24とともに略一列に並んでいる。液体容器50が、その列に沿って延びるように形成されているので、製氷機2の省スペースが図れる。仮に、給除液口を液体容器50の底部に設けた場合には、液体容器50を回転移動させるとき、他の部材との干渉が増え、給除液ホースの取り回しが複雑になる。
【0046】
<フレームの着脱機構>
液体容器50は、シャフト部52により移動機構60の駆動軸及び軸受部62に回転自在に取り付けられ、移動機構60の駆動軸及び軸受部62はフレーム4に取り付けられている。液体容器50が製氷位置にいるとき、棒状部材24及び給除液管70は液体容器50の液体貯蔵領域R内に挿入されている。しかし、移動機構60により、液体容器50を退避位置まで回転移動させると、棒状部材24及び給除液管70は液体容器50の外側に位置し、棒状部材24及び給除液管70の下方には、液体容器50が存在しない状態になる。よって、液体容器50及び移動機構60を、複数の棒状部材24及び給除液管70が並んだ列に沿った方向に移動させても、互いに干渉しない。
【0047】
図1Cに示すように、フレーム4の両側に保持部4Aが突設して設けられており、製氷機2の本体側の指示部材にスライド可能に取り付けられている。また、フレーム4の後壁部4Bには、切り欠き8が設けられている。このため、液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を、図1Cの矢印に示す方向に引き出すことができる。
つまり、液体容器50が退避位置にある状態で、液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を、複数の棒状部材24及び給除液管70に対して、複数の棒状部材24及び給除液管70が並んだ列に沿った方向に引き出し可能に構成されている。これにより、液体容器50及び移動機構60を製氷機2から外に取り外すことができる。
【0048】
同様に、製氷機2から取り外されていた液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を、上記と逆方向にスライドさせて、フレーム4を元の装着位置に戻すこともできる。また、棒状部材24及び給除液管70が略一列に並んでいるので、干渉を避けるための切り欠き8の幅を狭くすることができ、機械強度に優れたフレーム4を実現できる。
【0049】
複数の棒状部材24が取り受けられた冷却部40は、ヒートシンク10に冷媒を供給する配管が固定されるため、移動させることは容易ではない。給除液管70も、液体を供給または除去するために配管が固定されるので、移動させることは容易ではない。一方、移動機構60は、電力ケーブルや信号ケーブルをコネクタ部で取り外すことにより、液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を容易に移動させることができる。
【0050】
一列に並んだ複数の棒状部材24及び給除液管70の列に沿って引き出すので、省スペースを保ったまま、棒状部材24及び給除液管70と干渉することなく、液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を容易に取り出し、元の位置に戻すことができる。このため、液体容器50や移動機構60のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る製氷機2は、冷媒が流れる流路を有するヒートシンク10と、金属製の棒状部材24が基端部24Aから先端部24Bにかけて下側に延びるように取り付けられた金属板20とを有し、ヒートシンク10により棒状部材24が冷却される冷却部40と、上方が開口した液体貯蔵領域R内に液体を収容可能な液体容器50と、給除液管70により液体容器50内に液体を供給する液体供給部72と、を備え、複数の棒状部材24及び給除液管70が略一列に配置され、開口Sから挿入された複数の棒状部材24及び給除液管70の先端部が液体貯蔵領域R内に位置し、液体容器50が、複数の棒状部材24及び給除液管70が並んだ列に沿って延びた形状を有し、この列に沿った方向から見た断面視において、液体貯蔵領域Rが棒状部材24の外側に生成される氷の外形に沿った形状を有する。
これにより、省スペースであり、かつ製氷のために供給する液体の量が少なく、迅速で効率的な製氷が可能な製氷機2を提供できる。
【0052】
(制御部)
図7は、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2の制御構成を示すブロック線図である。
次に、図7を参照しながら、制御部90を含む本実施形態に係る製氷機2の制御構成の説明を行う。ここでは、ペルチェ素子30を含む制御構成を例にとって説明する。
制御部90は、移動機構60のモータの駆動制御により、液体容器50を回転させて、製氷位置及び退避位置の間を回転移動させるとともに、液体容器50を捻って離氷を行うことができる。
【0053】
制御部90は、液体供給部72として機能する給除液ポンプを制御して、給液側に駆動させることにより、液体容器50に液体を供給することができる。同様に、制御部90は、液体除去部74として機能する給除液ポンプを制御して、除液側に駆動させることにより、液体容器50内の液体を貯蔵容器に戻すことができる。更に、ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90は、ペルチェ素子30に供給する電力の方向及び大きさを制御することにより、一方の面が吸熱側となり、他方の面が放熱側となるように両面間での温度差を形成することができる。
【0054】
制御部90の制御により、液体供給部72が、製氷位置にある液体容器50の液体貯蔵領域内に液体を供給する。制御部90が、例えば冷却システム80内の切替弁を制御して、冷却システム80で低温になった冷媒をヒートシンク10内に流す。低温の冷媒が流れるヒートシンク10による冷却で、金属板20の棒状部材24を氷点下の製氷温度にすることができる。これにより、棒状部材24の液体に浸かった領域の周囲に氷を生成することができる。
【0055】
更に、ペルチェ素子30を備える場合には、低温の冷媒が流れるヒートシンク10による冷却に加え、ヒートシンク10及び金属板20の間に配置されたペルチェ素子30による冷却も加えることができるので、冷媒だけを用いて棒状部材24を冷却する構成よりも更に低い温度で冷却でき、金属板20の棒状部材24の周囲に短時間に氷を生成することができる。
【0056】
制御部90が移動機構60を制御して、液体容器50を、製氷位置から金属板20の棒状部材24の下側に液体容器50が存在しない退避位置へ回転移動させる。そして、制御部90により、棒状部材24を氷点より高い離氷温度にすることにより、生成された氷を棒状部材24から落下させることができる。落下した棒状部材24は、下方に配置された氷収納容器56に収納される。
【0057】
ペルチェ素子30を備えない場合には、棒状部材24を離氷温度にする1つの手段として、制御部90により冷却システム80内の切替弁を切り替えて、凝縮器84、毛細管を通過して低温になった冷媒の代わりに、圧縮器82を出た直後の高温の冷媒をヒートシンク10に流すことが考えられる、これにより、ヒートシンク10の温度が上昇し、熱伝導で金属板20の棒状部材24も温度が上昇して、氷点より高い離氷温度に達する。
【0058】
ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90により、ヒートシンク10の面と接する側が吸熱側となり、金属板20の面と接する側が発熱側となるように、ペルチェ素子30に通電することにより、金属板20の棒状部材24の温度を上げて、速やかに離氷温度にすることができる。この場合、ヒートシンク10に、冷却システム80で低温になった冷媒を流し状態でも、ペルチェ素子30により棒状部材24の温度を離氷温度にすることができる。
【0059】
(制御処理)
次に、制御部90による制御処理の説明を行う。図8Aから図8Eは、本発明の1つの実施形態に係る製氷機2で実施される各工程を模式的に示す側面断面図であって、図8Aは給液工程を示し、図8Bは製氷工程を示し、図8Cは除液工程を示し、図8Dは退避工程を示し、図8Eは、離氷工程を示す。
【0060】
(製氷プロセス)
液体容器50が製氷位置にあり、液体容器50内に液体が貯蔵されていない初期状態から開始する場合を例にとって説明する。ここでは、液体容器50に液体を供給する給液工程、棒状部材24の周囲に氷を生成する製氷工程、液体容器50を製氷位置から退避位置へ回転移動させる退避工程、棒状部材24から生成された氷を落下させる離氷工程を詳細に説明する。
【0061】
<給液工程(図8A参照)>、
液体供給部72が、製氷位置において上方が開口した液体容器50に液体を供給する。具体的には、制御部90の制御により、液体供給部72の給除液ポンプの駆動モータを給液方向に駆動させる。これにより、給除液ポンプは、貯蔵容器内の液体を吸い上げ、給除液流路及び給除液管70を介して、液体容器50に液体を供給する。制御部90は、液面センサからの信号またはタイマの計時により、液体容器50内の液体の高さが所定の高さに達したと判別したとき、給除液ポンプの稼働を停止する。給液工程により、金属板20の棒状部材24の先端部24Bから所定の領域Lが液体容器50内の液体に浸かった状態となる。
【0062】
<製氷工程(図8B参照)>
上記の給液工程の後、所定の時間、製氷温度にした金属板20の棒状部材24の先端部24Bから所定の領域Lが液体容器50に収容された液体に浸かった状態にする製氷工程を行う。具体的には、制御部90の制御により、冷却システム80で低温になった冷媒をヒートシンク10に流す。内部の流路12を流れる冷媒の蒸発により氷点下の温度になったヒートシンク10による冷却で、金属板20の棒状部材24が氷点下の製氷温度になる。
【0063】
一方、ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90の制御により、ペルチェ素子30のヒートシンク10と接する側が放熱側となり、金属板20と接する側が吸熱側となるように、ペルチェ素子30に電力を供給することにより、製氷温度の棒状部材24の更なる冷却を行う。
つまり、ペルチェ素子30により、棒状部材24を有する金属板20側から吸熱して、ヒートシンク10側に放熱するので、低温の冷媒が流れる流路を有するヒートシンクによる冷却に加えて、ペルチェ素子30による冷却が加わり、金属板20の棒状部材24の温度を、冷媒だけを用いた場合の温度よりも更に低い温度にすることができる。これにより、金属板20の棒状部材24の周囲に短時間に氷を生成することができる。
【0064】
そして、タイマによる計時により所定の時間Tが経過したと判別したとき、製氷工程を終了する。図7Bに示すように、金属板20の棒状部材24の先端部から所定の領域Lの周囲を覆うように氷Gを生成することができる。所定の時間Tは、ペルチェ素子30を備える場合と備えない場合に応じて、異なる値を設定できる。ペルチェ素子30を備える場合には、制御部90は、ペルチェ素子30への電力供給を停止する。
【0065】
<除液工程(図8C参照)>
上記の製氷工程の後、制御部90の制御により、液体除去部74が液体容器50内に残留する液体を除去する。具体的には、制御部90の制御により、給除液ポンプを除液方向に駆動させる。これにより、給除液ポンプは、給除液管70及び給除液流路を介して、液体容器50内の液体を吸い出して、貯蔵容器に戻す。このとき、貯蔵容器に戻る液体は、貯蔵容器の戻り経路入口に配置されたフィルタにより濾過された後、貯蔵容器に流入する。
【0066】
給除液管70の先端開口70Aは、液体容器50の底面から高さHの位置に配置されているので、少なくとも底面から高さHまでの領域に液体が残留する。後述する退避工程において、液体容器50を退避位置に回転移動するが、退避位置おいて、液体容器50は、液体容器50に設けられたリブ50Cにより、所定の量の液体を収容可能な構造を有する。除液工程後も液体容器50内に残留する底面から高さHまでの領域の液体の量は、退避位置で液体容器50に貯蔵可能な所定の量以下になっている。
【0067】
以上のように、除液工程では、製氷工程の後、液体除去部74が液体容器50内に残留する液体の一部を除去して、液体容器50内に残留する液体の量を所定の量以下にする。このように、液体除去部74により、液体容器50内に残留する液体の量を所定の量以下にすることができるので、後述する退避工程で、確実に残留した液体を液体容器50内に貯蔵したまま、液体容器を回転移動させることができる。
【0068】
<退避工程(図8D参照)>
上記の製氷工程の後、制御部90の制御により、移動機構60が、残留した液体を液体容器50内に貯蔵したまま、液体容器50を製氷位置から金属板20の棒状部材24の下側に液体容器50が存在しない退避位置まで回転移動させる。移動機構60の駆動モータを駆動させることにより、製氷位置から退避位置まで、液体容器50を70度から120度の範囲で回転させる。このような移動回転角度により、後述する離氷工程で金属板20の棒状部材24から生成された氷Gを落下させても、液体容器50と干渉する虞がない。
【0069】
液体容器50には、液体容器50を構成する側壁部50Bと繋がり、上方の開口Sを一部覆うリブ50Cが設けられているので、退避位置において、所定の量の液体がリブ50Cにより液体容器50内に堰き止められるようになっている。このような液体容器50の構造により、退避工程における液体容器50の回転移動中や、退避位置において、液体容器50から液体が流出する虞がない。よって、周囲に液体が飛び散る、流出した液体が凍結して固着するといった問題を防ぐことができる。
【0070】
<離氷工程(図8E参照)>
退避工程の後、制御部90の制御により、金属板20の棒状部材24を離氷温度にして、棒状部材の周囲に生成された氷Gを棒状部材24から落下させる。落下した氷Gは、下方に配置された氷収納容器56に収納される。
金属板20の棒状部材24を離氷温度にするには、ペルチェ素子30を備えない場合には、低温の冷媒の代わりに、圧縮器82を出た直後の高温の冷媒をヒートシンク10に流すことにより、ヒートシンク10の温度を上昇させ、熱伝導で金属板20の棒状部材24の温度を上昇させて、氷点より高い離氷温度にすることができる。
【0071】
一方、ペルチェ素子30を備える場合には、ヒートシンク10の面と接する側が吸熱側となり、金属板20の面と接する側が発熱側となるように、ペルチェ素子30に通電することにより、金属板20の棒状部材24の温度を上げて、速やかに離氷温度にすることができる。これにより、短い製氷サイクルを確実に実現できる。この場合、ヒートシンク10には、冷却システム80で低温になった冷媒を流したままの状態で、ペルチェ素子30により棒状部材24の温度を離氷温度にすることができる。
以上のような制御処理により、少ない液体の供給量で、短時間に効率的に複数の氷を生成することができる。
【0072】
上記の離氷工程の後、制御部90の制御により、移動機構60が、残留した液体を液体容器50内に貯蔵したまま、液体容器50を退避位置から製氷位置へ回転移動させて、次の製氷プロセスを行う。次の製氷プロセスを行うとき、残留した液体を利用することができる。残留した液体は、前の製氷プロセスにおいて、金属板20の棒状部材24で冷却されており、新たに供給される液体の温度より低温になっている。このため、2回目以降の製氷プロセスの製氷工程では、凍結させる液体の温度が予め低いので、短時間に効率的に製氷を行うことができる。
【0073】
一連の製氷プロセスが終了した後、残留した液体を凍結させる。そして、移動機構60により、液体容器50を回転させ、退避位置を通り越して、液体容器50の外面に設けられた突起54が製氷機2のフレーム部を当接させ、弾性を有する液体容器50を捻って、液体容器50の凍結した残留液を離氷させることができる。
【0074】
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫)
図9は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫100を模式的に示す側面断面図である。図9では、冷媒の流れを点線の矢印で示す。図9を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫100の説明を行う。冷蔵庫100は、上記の実施形態に係る製氷機2を備えている。
【0075】
冷蔵庫100は、冷凍室102A及び冷蔵室102Bを備える。冷凍室102A及び冷蔵室102Bの背面側には、仕切板106で仕切られた入側流路104A,Bが設けられている。冷凍室102A側の入側流路104Aには、蒸発器140が配置され、その上方にファン170が配置される。冷凍室102Aの背面側の外部の機械室には、蒸発器140と連通した圧縮器110が配置されている。圧縮器110で圧縮された冷媒(気体)が凝縮器120で液化され、毛細管内を通過中に減圧されて沸点が下がり、乾燥器130を経て、三方弁160へ達する。図9では、乾燥器130が機械室内に示されているが、実際には三方弁160の近くに配置されている。
【0076】
三方弁160により、冷媒は、冷蔵庫100の蒸発器140に直接流入する流路と、製氷機2のヒートシンク10内を流れた後、蒸発器140に流入する流路とに切り替えられる。製氷機2で製氷を行なわない場合には、冷媒が直接、蒸発器140に流入する。そして、冷媒は蒸発器140で庫内の気体の熱を奪って気化し、気化した冷媒が圧縮器110で再び圧縮されるというサイクルを繰り返す。以上のように、圧縮器110、凝縮器120、乾燥器130、蒸発器140等が連通した冷蔵庫の冷却システム150が構築されている。
【0077】
製氷機2で製氷を行う場合には、三方弁160の切り替えにより、冷媒は、接続管14Aを介してヒートシンク10の流路12に流入する。流路12を通過中に、液状または霧状の冷媒の一部は周囲から熱を吸収して蒸発し、気化した冷媒が、接続管14Bを介して、蒸発器140の入側に達する。ヒートシンク10で気化する冷媒の量は、冷却システム150で循環する冷媒の容量に比べて小さいので、蒸発器140に入る時点で、冷媒は全体として液状または霧状の状態を保っている。よって、冷媒は蒸発器140で庫内の気体の熱を奪って気化し、気化した冷媒が圧縮器110で再び圧縮されるというサイクルを繰り返す。
三方弁160での切り替えを行わずに、常に、直接、蒸発器140に流入する冷媒の流れと、ヒートシンク10を経てから蒸発器140に流入する冷媒の流れとが生じるようにすることもできる。
【0078】
冷凍室102A側の入側流路104A及び冷蔵室102B側の入側流路104Bの間には、ダンパ180が配置されている。図9では、ダンパ180が閉の状態を示す。
ダンパ180が閉の状態では、圧縮器110及びファン170が駆動すると、冷凍室102A内の気体が流動し、蒸発器140を通過した冷気が仕切板106に設けられた吹出口106Aから、冷凍室102A内に流入する。図9の一点鎖線の矢印に示すように、流入した気体は、冷凍室102A内を循環して、再び、入側流路104A内の蒸発器140の下側に戻る。このような蒸発器140を通過して冷却された気体の循環により、冷凍室102A内を冷却することができる。ダンパ180が開の状態では、冷蔵室102B側にも冷気が循環する。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫100は、上記の実施形態に係る製氷機2を備え、庫内を冷却するための冷却システム150から分岐して、液状または霧状の低温の冷媒を製氷機2のヒートシンク10へ供給することができる。これにより、冷却部40の金属板20の棒状部材24を製氷温度にすることができる。
また、製氷機2がペルチェ素子30を備える場合には、冷蔵庫100の冷却システム150を利用したヒートシンク10による冷却に加え、ペルチェ素子30による冷却も加わるので、冷媒だけを用いた場合よりも、棒状部材24の製氷温度を更に低下させることができる。
【0080】
離氷工程においては、図示されていない切替弁を用いて、圧縮器110からの高温の冷媒を製氷機2のヒートシンク10へ供給することができる。これにより、冷却部40の金属板20の棒状部材24を氷点より高い離氷温度にすることができる。
また、製氷機2がペルチェ素子30を備える場合には、冷却システム150から低温の冷媒をヒートシンク10へ供給する状態のまま、ペルチェ素子30への通電方向を製氷時と逆転させることにより、金属板20の棒状部材24の温度を上げて、速やかに離氷することができる。
また、離氷工程では、三方弁160を切り替えて、冷媒がヒートシンク10に供給されないようにすることもできる。
【0081】
以上のように、製氷機2を備え、庫内を冷却するための冷却システム150から分岐して、冷媒を製氷機2のヒートシンク10へ供給する冷蔵庫100においても、製氷のために供給する液体の量を少なく、迅速で効率的な製氷が可能である。
【0082】
本実施形態では、複数の棒状部材24及び給除液管70が並んだ列が庫内の前後方向に沿うように、製氷機2が配置されている。よって、庫内における製氷機2の幅方向の占有領域を小さくできるので、庫内の有効収納領域の減少を抑制できる。
仮に、平面視において同様な専有面積を有するが、前後方向の寸法は小さく、幅方向の寸法が大きいように、製氷機2を庫内に配置した場合を考える。この場合、庫内における製氷機2の幅方向の占有領域が大きくなるので、貯蔵スペースが制限される。一方、庫内の製氷機の前後方向にスペースが生じる可能性はある。しかし、製氷機の後側のスペースは、食品等の出し入れが困難であり、製氷機の前側のスペースは、食品等を置くと、製氷機で生成した氷を取り出すのが困難になる。よって、庫内の有効収納領域が減少する。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫100では、庫内における製氷機2の幅方向の占有領域を小さくできるので、庫内の収納領域を有効に活用できる。更に、庫内に備えた製氷機2により、製氷のために供給する液体の量を少なく、迅速で効率的な製氷が可能になる。
特に、液体容器50及び移動機構60が取り付けられたフレーム4を、製氷機2の本体から着脱可能になっている。よって、冷蔵庫100の前側の開口から、フレーム4を容易に出し入れすることができ、液体容器50や移動機構60のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0084】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0085】
2 製氷機
4 フレーム
4A 保持部
4B 後壁部
6 カバー
8 切り欠き
10 ヒートシンク
12 流路
14A,14B 接続管
20 金属板
22 ベース部
24 棒状部材
24A 基端部
24B 先端部
30 ペルチェ素子
40 冷却部
42 ピン
50 液体容器
50A 底面部
50B 側壁部
50C リブ
52 シャフト部
54 突起
56 氷収納容器
60 移動機構
62 軸受部
70 給除液管
70A 先端開口
72 液体供給部
74 液体除去部
80 冷却システム
82 圧縮器
84 凝縮器
86 乾燥器
90 制御部
100 冷蔵庫
102A 冷凍室
102B 冷蔵室
104A,B 入側流路
106 仕切板
106A 吹出口
110 圧縮器
120 凝縮器
130 乾燥器
140 蒸発器
150 冷却システム
160 三方弁
170 ファン
180 ダンパ
R 液体貯蔵領域
S 開口
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9