(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】フィブリノーゲン検査
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20231129BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20231129BHJP
C12N 9/64 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/37
C12N9/64 Z
(21)【出願番号】P 2020537653
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019051926
(87)【国際公開番号】W WO2019068940
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2022-01-24
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523032847
【氏名又は名称】ペンタファーム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Pentapharm AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, マイケル, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】プン, サン
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-066996(JP,A)
【文献】特公昭57-010718(JP,B1)
【文献】特表2012-522498(JP,A)
【文献】特表2005-533033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/37
C12N 9/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法であって、
サンプルにセリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]及び検出基質を添加することを含み、
前記検出基質は、前記セリンエンドペプチダーゼの作用を介した酵素的切断によって、検出可能な成分を放出する検出基質であり、
前記検出可能な成分を検出することを含む、方法。
【請求項2】
酵素的切断反応を含み、フィブリノーゲンの酵素的切断は、前記サンプル中に存在する検出基質の酵素的切断と競合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素的切断の速度は、前記サンプル中のフィブリノーゲンレベルに依存する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出基質の酵素的切断の速度が、前記サンプル中の前記フィブリノーゲンレベルに反比例する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
CaCl
2の非存在下において及び/又はトロンビン活性の非存在下において実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
トロンビン阻害剤の存在を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検量線の生成及び/又はフィブリノーゲン標準物質の生成/存在を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルは、血液又は血漿から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
中央血液検査室若しくは中央臨床検査室、緊急治療室、病院外でさえも生じる緊急事態、医療現場、個人の家、小牧場、家畜小屋、又は簡易迅速検査(POCT)環境において使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の実行に使用するための診断キット
であって、
セリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]と、
前記セリンエンドペプチダーゼの作用を介した酵素的切断によって、検出可能な成分を放出する検出基質と、を含む、診断キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、サンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための新規で直接的な方法に関し、この方法は、緊急事態において特に有用である。新規な方法は、トロンビン形成に依存せず、一般的に使用される血液凝固アッセイに都合の悪い経口抗凝固薬又は他の化学物質の存在によって干渉されない。
【0002】
フィブリノーゲンは、主に肝臓によって合成され、正常範囲は1.5~3mg/ml血漿の間にある。フィブリノーゲンは、出血障害及び血栓形成において生じるクロット形成の一部である。通常の条件下では、フィブリノーゲン構成体は、トロンビン(第IIa因子)の作用によって活性化され、フィブリノーゲンのアルファポリペプチド鎖及びベータポリペプチド鎖のN末端から2つの短いペプチド、すなわちフィブリノペプチドA及びBが切断される。フィブリンモノマーの新しく形成されたN末端は、フィブリンモノマーのC末端と自然に相互作用し、フィブリンポリマーを形成し、これは、第XIIIa因子の影響下で、架橋され、クロット形成としても知られている架橋フィブリンポリマーを形成する。
【0003】
大量の失血の場合、トロンビン又はプロトロンビンは、レベルが非常に低下しているが、凝固カスケードをまだ十分に維持することができ、フィブリノーゲンが、危機的なレベルに達する第1の重要な凝固因子となる。血餅の質は、フィブリノーゲン濃度に非常に依存している。そのため、フィブリノーゲンの状況は、緊急入院に際して重要な情報となる。瞬時の正確なフィブリノーゲンレベル決定は、術前、術中、及び術後の段階で、特に、たとえば心臓又は肝臓の手術などのような出血リスクが高い外科手術の準備において医学的戦略を生み出すための最優先事項となる。フィブリノーゲンレベルが危機的な濃度を下回る場合、患者は、フィブリノーゲン濃縮物及びその他同種のもので補充される必要がある。
【0004】
現在、すべての利用可能な検査は、様々なレベルで引き起こされる血液凝固カスケードに依存し、サンプル中のフィブリノーゲンレベルを直接的に決定できない。血液又は血漿などのようなサンプルへのCaCl2の追加と同時に血液凝固の形成が測定される。検査の精度は、すべて前記血液凝固カスケードの様々な部分にねらいを定めるたとえばヘパリン、ビタミンKアンタゴニスト、又は直接的若しくはいわゆる新規経口抗凝血薬(DOAC若しくはNOAC)などのような薬剤によって非常に影響を及ぼされる又は干渉される。これらの干渉する薬剤は、患者に高いリスクを引き起こすかもしれない間違った結果をもたらし得る。
【0005】
最近のスタンダードは、高度な専門技術と共に、多くの時間を要し且つ特別なバッファー及びトロンビン試薬を必要とするいわゆる「Claussアッセイ」(Mackie et al,Thromb Haemost.2002 Jun;87(6):997-1005)である。検量線の作成は簡単ではない。この方法は、フィブリノーゲン濃度を求めた基準サンプルにおける血液凝固能力と検査サンプルにおける血液凝固能力との間での比較に基づく。他の因子、たとえば、定量化において無視することができない血液凝固の間の第XIII因子の関与、薬剤若しくはホルモンのような内因性若しくは外因性の発生源に由来する血液構成要素の違い、及び/又は様々なサプライヤーからの機器及び試薬における違いが、この方法を、多くのパラメーターからの干渉を受けやすいものにしている。よって、フィブリノーゲンレベルを直接測定することは不可能である。
【0006】
さらなる利用可能な方法は、プロトロンビン時間(PT)の決定であり、これは、終点測定の点からClaussアッセイに似ている、すなわち、血漿フィブリノーゲンレベルは、血液凝固カスケードに関与する因子の光学測定又は機械的強度測定によって間接的に定められる。この方法でも、フィブリノーゲンレベルの直接的な測定は不可能である。Claussアッセイと比較して、PTの結果は、さらに変化しやすい。DOAC/NOACによる干渉を無視することができない。
【0007】
別の可能な方法は、抗原-抗体特異的相互作用の原理を使用する、免疫に基づくELISAである。ELISA技術は、1ml当たりngの範囲での濃度の検出に基づく、すなわち、ELISAに適合する範囲に達するように、100万倍の濃サンプル希釈を必要とし、これは、測定の間に、非常に間違えやすく、時間がかかり、且つ誤差を招く。さらに、この検査は、典型的に、4時間の臨床検査時間を必要とし、したがって、緊急事態に適用可能ではない。検査の実行及び/又は判断は、熟練の技術者による多くの専門的技術を必要とする。
【0008】
したがって、緊急事態においてだけでなく、簡易迅速(point-of-care)検査(POCT)が付き物の臨床検査室、個人の家、又は小牧場若しくは家畜小屋などのような獣医の一般的な作業環境において、フィブリノーゲンレベルの(毎日の)測定を容易にし、凝固カスケードから独立して機能する、フィブリノーゲンレベルの定量的決定をもたらし、したがって抗凝固薬又は他の干渉する化学物質によって(悪)影響を及ぼされない、より正確で、信頼でき、直接的で、プラットフォーム非依存性で、且つ高速な方法を開発することは、現在進行中の課題である。
【0009】
驚いたことに、発明者らは、今や、ヒト又は動物の両方において適用可能である、サンプル中のフィブリノーゲンレベルの直接的及び定量的測定を可能にするそのような検査方法を開発した。新規な検査方法は、凝固カスケードの活性化を必要とせず、したがって、先行技術の検査方法、たとえばClaussアッセイ又はPTとは対照的に、トロンビンの形成から独立して機能する。
【0010】
新規な検査は、酵素反応速度に基づき、セリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、特にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]の活性が、たとえば血液又は血漿などのような与えられたサンプル中のフィブリノーゲンレベルに反比例する。新規な検査は、血液の凝固から独立して、すなわち、独立して且つトロンビン活性の測定なしで機能する。たとえば、CaCl2を介してのトロンビンの活性化に基づき、クロット形成が測定される米国特許第4692496号明細書又は国際公開第200136666号パンフレットにおいて記載される方法と異なり、新規な検査方法の原理は、血液の凝固カスケードの、たとえば内因的及び外因的経路両方の(意図的な)阻害に基づく。したがって、本発明によれば、フィブリノーゲンレベルは、サンプル中のフィブリノーゲン濃度の増加に反比例する、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼの酵素反応速度の変化を介して測定される。
【0011】
したがって、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンを測定するための新規な方法及びたとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するために使用される診断キットに関し、前記方法は、CaCl2の非存在下において及び/又はトロンビン活性の非存在下において実行される。
【0012】
特に、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンを測定するための新規な方法及びそのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するために使用される診断キットに関し、前記方法は、検量線の生成なしで及び/又はたとえばフィブリノーゲン標準物質などのような任意のさらなる基準物質の存在なしで直接適用される。
【0013】
さらに、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法において及びそのような測定に使用される診断キットにおいて使用されるセリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、特にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]に関する。
【0014】
さらに、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法において及びそのような測定に使用される診断キットにおいて使用される(検出)基質、たとえば人工又は天然の(検出)基質、好ましくは人工の(検出)基質に関し、前記方法は、特に、セリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、特にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]による前記基質の触媒的切断を含む。
【0015】
さらに、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法において、及びそのような測定に使用される診断キットにおいて、及びそのような測定に使用される診断キットにおいて使用される、検出可能な成分に関し、前記方法は、特に、前記セリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、特にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]の作用を介しての(検出)基質の触媒的切断による前記検出可能な成分の放出を含む。
【0016】
本明細書において使用されるように、フィブリノーゲンに関する用語「レベル」、「状況」、又は「濃度」は、本明細書において区別なく使用される。たとえば血液又は血漿などのような、与えられたサンプル中のフィブリノーゲンのレベルは、セリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]について検出された活性に反比例する。
【0017】
本明細書において使用される用語「酵素活性」は、タンパク分解活性、すなわち、当技術分野において知られており、本明細書において定義される方法を通して測定することができる(検出)基質からの検出可能な成分の放出をもたらす、本明細書において定義される(検出)基質の切断を指す。
【0018】
一実施形態では、本明細書において定義される方法/診断キットは、たとえば、クロット形成をもたらすフィブリン重合の阻害剤、特に、ヘパリンを含むが、これに限定されないトロンビン阻害剤などのようなプロテアーゼ阻害剤を含む。
【0019】
たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法において使用される、本発明の実行に及びそのような測定に使用される診断キットにおいて使用される適したセリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、特にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]は、たとえば、好ましくはB.モジェニ(B.moojeni)、カイサカ(B.atrox)、ジャララカ(B.jararaca)、E.ピラミダム(E.pyramidum)、カーペットバイパー(E.carinatus)、A.ロドストマ(A.rhodostoma)、タイワンハブ(P.mucrosquamatus)、C.ロドストマ(C.rhodostoma)、又はヒガシダイヤガラガラヘビ(C.adamanteus)から選択されるアメリカヘビ属、マムシ属、トゲクサリヘビ属(Echis)、ハブ属、カロセラスマ属(Calloselasma)、トリメレスルス属、又はガラガラヘビ属由来のヘビ毒などのようなヘビ毒酵素から選択されてもよい。より好ましくは、酵素は、ボスロプス・モジェニ(Bothrops moojeni)(バトロキソビンとして知られている)若しくはカイサカ(Bothrops atrox)の毒から単離される又はバトロキソビン(UniProtKB-P04971など)と少なくとも約60、70、80、90、95、若しくはさらに100%などのように少なくとも約55%同一である酵素であり、カロビン(calobin)、アンクロッド(商品名Viprinex(登録商標)の下で売られている)、フラボキソビン(flavoxobin)、クロタラーゼ(crotalase)として知られている酵素及び本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼ活性を有するさらなる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0020】
そのような測定に使用される診断キットを含む本発明の実行に使用される適した(検出)基質は、任意の人工又は天然の(検出)基質、特に人工の基質から選択されてもよく、これは、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼの作用を介して触媒的に切断することができ、本明細書において定義される基質からの検出可能な成分の放出をもたらす。
【0021】
したがって、一実施形態では、本発明は、たとえば血液又は血漿などのようなサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法において及びそのような測定に使用される診断キットにおいて使用される検出可能な成分に連結された(検出)基質に関する。
【0022】
検出方法は、POCデバイス又は臨床検査において現在使用されている機械的(非クロットベースの)、電流測定(電気化学)、光学、電気機械的、光電気化学、電気発生、又はフォトメカニカル(photo-mechanical)検出を含むが、これらに限定されない。検出方法/技術は、検出可能な成分に連結された前記(検出)基質、特に人工の基質から前記セリンエンドペプチダーゼの前記酵素的切断によって放出された検出可能な成分の検出/測定に基づく。(検出)基質、特に人工の基質からの検出可能な成分の放出は、適切な方法/技術にとって検出可能な/測定可能なシグナルにおける変化をもたらす。特に、検出可能な成分は、(光)電気化学、電流発生(amperogenic)、色素生成、及び/又は蛍光発生を原理とする方法を通して検出することができる/測定することができる。
【0023】
一実施形態では、人工の基質は、表1における式(I)~(X)による基質、たとえば商品名Pefachrome(登録商標)TH、Electrozyme TH、H-D-フェニルアラニル-ピペコリル-アルギニン-p-アミノ-p-メトキシジフェニルアミン(PPAAM)、トルオールスルホニル-グリシル-プロリニル-アルギニン-4-アミド-2-クロロフェノールの下で知られているものなど、又は国際公開第2009053834号パンフレット(たとえば段落[0047])、国際公開第2000050446号パンフレット(たとえば5~6頁)、若しくは国際公開第2016049506号パンフレット(たとえば段落[0018]及び[0019])による基質、又はN末端部に代替の保護基を有する式(I)~(X)の基質並びに/又は保護基と式(I)~(X)において示される第1のN末端アミノ酸との間にさらなるアミノ酸が導入された式(I)~(X)の基質を含むが、これらに限定されない。当業者は、どの保護基、たとえばブチルオキシカルボニル、ホルミル、及びその他同種のものを使用するべきであるかを知っている。
【0024】
【0025】
サンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための本明細書において記載される方法及びそのような測定に使用される診断キットは、本明細書において定義される酵素のタンパク分解活性の検出を含み、前記方法は、たとえばXprecia Stride(Siemens Healthcare)、CoaguChek(登録商標)(Roche Diagnostics)、i-Stat(登録商標)システム(Axonlab/Abbott)、ESR若しくはqLabsシステム(Operon Biotech&Healthcare)、Alere INRatio(登録商標)システム(Alere(商標))、LabPad(登録商標)(Avalun(登録商標))、microINR(iLine(登録商標) Microsystems)、Mission(登録商標)PT(Acon(登録商標))、又は血液分析の分野における検査室をベースとする検査若しくはPOCTのための当技術分野において使用される若しくは知られている他のシステムなどのような、そのようなタンパク分解活性の検出に適した任意のデバイスで実行することができる。
【0026】
本明細書において定義されるサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法及びそのような測定に使用される診断キットは、本明細書において定義される特定の検出可能な成分、すなわち、検出基質に連結された、たとえば蛍光発生基、色素生成基、電流発生基、及び/又は(光)化学基などのようなタンパク分解活性の検出を容易にする任意の化学基又は粒子群に連結された、定義される人工の及び/又は天然の基質、特に人工の基質に対する、たとえばバトロキソビンなどのような、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼのタンパク分解活性を測定することを含む。タンパク分解活性は、時間との関係、すなわちタンパク分解活性によるシグナル生成の速度で測定され、検出されるシグナルは、当技術分野において知られている様々な技術によって検出可能である、人工の及び/又は天然の、特に人工の基質の触媒的切断活性を指す。この速度は、フィブリノーゲンの存在によって影響を及ぼされる。pNAなどのような本明細書において定義される検出可能成分のタンパク分解放出は、たとえばOD405などのような特定のODで測定することができる。放出されるpNAが多くなるほど、OD405が高いほど、たとえばバトロキソビンなどのような酵素が速く働くほど、反応中に存在するフィブリノーゲンは少ない。
【0027】
本明細書において使用されるように、「OD405」の測定は、405nmの光線での光学濃度(OD)の測定を意味する。放出されたpNAは、反応に色を与え、これを最大吸収(405nmである)で測定することができる。
【0028】
したがって、サンプル中のハイレベルのフィブリノーゲン、すなわち、少なくとも約5mg/mlサンプルのレベルは、最も急勾配の曲線をもたらす、サンプル中少なくとも約0.3~0.6mg/mlサンプルの又はフィブリノーゲンが全くないフィブリノーゲンレベルと比較して、最小の急勾配の曲線をもたらす(検出、切断される基質が少ないことを指す)(
図1を参照されたい)。シグナル生成の速さは、サンプル中のフィブリノーゲン濃度に直接依存し、フィブリノーゲンの酵素的切断と検出可能な成分を含有する(人工の及び/又は天然の)基質の酵素的切断との間の競合の指標となり、両方の反応は、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼの活性によって触媒される。
【0029】
本発明の実行に使用される適したサンプルは、たとえばヒト又はたとえばウシ、ウマ、若しくは家で飼われる一般的なペットなどのような動物から単離されたなどのように、好ましくは哺乳類から単離された、未知の濃度のフィブリノーゲンを含有する任意の液体、特に血液又は血漿であってもよい。血液サンプルの場合、血液は、バキュテナー中に収集されてもよい全(静脈若しくは動脈)血キャピラリーサンプルの形態で患者/検査対象から又は指穿刺によって、新たに採取されてもよい(すなわち未処理の血液サンプル)。サンプルは、凍結サンプルの使用を含む任意の他の形態でさらに処理されてもよい(すなわち処理済みの血液サンプル)。本明細書において記載される方法はまた、未処理の形態をした又はたとえば凍結された、分離された、及びその他同種のものなどのように処理済みの形態をした血漿サンプルにも適用可能である。
【0030】
一実施形態では、本発明は、本明細書において定義されるサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法であって、前記サンプルは新鮮な全血から選択される方法及びそのような測定に使用される診断キットに関し、測定には、好ましくは、電流発生又は色素生成(検出)基質が存在する。
【0031】
一実施形態では、本発明は、本明細書において定義されるサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法であって、前記サンプルは血漿から選択される方法及びそのような測定に使用される診断キットに関し、測定には、好ましくは、色素生成又は電流発生(検出)基質が存在する。
【0032】
これまでに知られている典型的な臨床検査と比較した、本明細書において定義される、フィブリノーゲンレベルを測定するための方法及びそのような測定に使用される診断キットのいくつかの有利な特徴は、以下のとおりである:
(1)たとえば通常のPTと比較して、使用が簡単である
(2)検量線の生成を必要としない、すなわち、基準物質、たとえばフィブリノーゲン標準物質が必要とされない
(3)低費用で迅速に結果が出る
(4)患者サービスがずっと向上している、すなわちフィブリノーゲンレベルがより迅速でより正確に測定され、ふさわしい医学的又は外科的介入が、ずっと速く、より確実に決まる
(5)サンプルの輸送及び処理におけるリスク及び費用の低下
(6)たとえばヘパリン、NOAC、及び/又はDOACなどのような抗凝血薬による干渉がない
(7)多段階カスケードに頼るアッセイと比較して、(好ましくは)単一の酵素ステップをターゲティング
(8)たとえばi-STAT(登録商標)などのようなデバイスのINR機能だけに注目すると、PT-INR結果は、各患者のフィブリノーゲンレベルを考慮に入れた場合、ずっと信頼できるものになる。
【0033】
一態様では、本発明は、以下のステップを含む、サンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法及びそのような測定に使用される診断キットに関する:
(1)サンプル、たとえば指穿刺によって採取されたヒト若しくは動物の血液、バキュテナーからの静脈血若しくは動脈血、又は血漿などのような、たとえば患者又は検査対象から採取された血液を提供すること;
(2)たとえばセリンエンドペプチダーゼ、検出可能な成分に連結された検出基質、任意選択で阻害剤、物理チャネル、及びデバイス中に見つけられる検出器又は検出器の一部などのような必要な構成要素をすべて含む、それぞれのカートリッジ又は検査ストライプ(検出システム又はデバイスに依存)の中へのサンプルの挿入;
(3)それぞれのデバイスの中へのカートリッジ又は検査ストライプの挿入;並びに
(4)結果、すなわちサンプル中のフィブリノーゲンレベルの報告及び伝達を含むサンプルの分析。
【0034】
本発明による方法及び/又は診断キットは、上記に明記されるものを含むが、これらに限定されない、任意の知られている、検査室をベースとする凝固分析機器などのような、様々な知られている検査デバイスで実行することができる。
【0035】
検査システム/デバイスに依存して、新規な方法及び/又は診断キットは、湿式化学又はドライケミストリーで使用することができる、すなわち、構成要素(基質、酵素、阻害剤、及びその他同種のものを含む)は、たとえばチューブ/カートリッジ中でのように液体形態をしている又は構成要素(基質、酵素、阻害剤、及びその他同種のもの)は、たとえば検査ストリップ上でのように固体形態をしている。測定されるサンプル、たとえば血液又は血漿サンプルは、前記構成要素と接触させられ、それぞれのシグナルが、最適なデバイスによって測定される。検査デバイスは、タブレットコンピュータ又はスマートフォンなどのような遠隔装置に接続されてもよい。
【0036】
一実施形態では、本明細書において定義されるフィブリノーゲンレベルの測定及びそのような測定に使用される診断キットは、処理済みの又は未処理のサンプル、特に血液又は血漿サンプル、好ましくはヒト血液又は血漿サンプルにおいて、Roche DiagnosticsのCoaguChek(登録商標)システムを使用して実行され、基質は、表1に列挙される式(I)~(X)による基質、N末端部に代替の保護基を有する式(I)~(X)の基質、及び/又は保護基と式(I)~(X)において示される第1のN末端アミノ酸との間にさらなるアミノ酸が導入された式(I)~(X)の基質からなる群から選択される基質を含むが、これらに限定されない、ただし、pNAは、CoaguChek(登録商標)システムに適した別の検出可能な成分、たとえばElectrozyme THとして市販で入手可能な、たとえばフェニレンジアミンと置き換えられることを条件とする。前記基質は、好ましくは、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼ、特にバトロキソビンと共にインキュベートされ、CoaguChek(登録商標)デバイスなどのようなデバイスによって測定される/分析される電気化学(又は検出成分に依存して他のシグナル)シグナルをもたらす。シグナル生成について測定された速さは、検査されたサンプル中のフィブリノーゲン濃度に反比例する。
【0037】
さらなる実施形態では、本明細書において定義されるフィブリノーゲンレベルの測定及びそのような測定に使用される診断キットは、処理済みの又は未処理のサンプル、特に血液又は血漿サンプル、好ましくはヒト血液又は血漿サンプルを含むが、これらに限定されないサンプルにおいて、Axonlab/Abbottのi-STAT(登録商標)を使用して実行され、たとえばH-D-フェニルアラニル-ピペコリル-アルギニン-p-アミノ-p-メトキシジフェニルアミン(PPAAM)などのような基質又は表1に列挙される式(I)~(X)による基質、N末端部に代替の保護基を有する式(I)~(X)の基質、及び/若しくは保護基と式(I)~(X)において示される第1のN末端アミノ酸との間にさらなるアミノ酸が導入された式(I)~(X)の基質からなる群から選択される基質を含むが、これらに限定されない基質であり、ただし、pNAは、たとえばp-メトキシジフェニルアミンなどのような、i-STAT(登録商標)デバイスに適した別の検出可能な成分と置き換えられることを条件とする。前記基質は、好ましくは、本明細書において定義されるセリンエンドペプチダーゼ、特にバトロキソビンと共にインキュベートされ、たとえばi-STAT(登録商標)デバイスなどのような適したデバイスによって測定される/分析される電気化学シグナルをもたらす。測定されたシグナルは、検査されたサンプル中のフィブリノーゲン濃度に反比例する。計算の結果は、シグナルとフィブリノーゲン濃度との間で直線的又は非直線的となり得る(
図1を参照されたい)。
【0038】
当分野において知られている他のデバイスで実行するために、本明細書において定義されるフィブリノーゲンレベルの測定に使用される診断キットを含む、本明細書において定義されるフィブリノーゲンレベルの測定は、当業者に知られているそれぞれのデバイスにさらに適合されてもよい。
【0039】
本発明の一態様では、患者又は検査対象のフィブリノーゲンレベルは、緊急事態において測定される、すなわち、結果は、できるだけ速く入手可能になるべきである。デバイス検出システムに依存して、サンプル中のフィブリノーゲンレベルは、約7、5、4、3、又はさらに約2分などのように、約10分未満の範囲内で測定することができる。
【0040】
したがって、本発明は、本明細書において定義されるサンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法に関し、結果、すなわちサンプル中に存在するフィブリノーゲンのレベルは、本明細書において記載される(検出)基質のタンパク質分解切断の開始から数えて、約7、5、4、3、又はさらに約2分などのように、約10分未満の範囲内で入手可能となる。
【0041】
本発明による直接的なフィブリノーゲン測定は、血液凝固時間、トロンビン活性又は抗トロンビン活性、組織因子アッセイなどを含むが、これらに限定されない他の凝固検査と組み合わせることができる。
【0042】
本明細書において使用されるように、本明細書において記載されるサンプル中のフィブリノーゲンレベルの測定に関する用語「分析」は、デバイス及び(検出)基質に依存する特定のアルゴリズムの実行を含み、基質は、天然の又は人工の基質、特に人工の基質であってもよく、サンプル中のフィブリノーゲン濃度と直接相関するセリンエンドペプチダーゼの反応速度が測定される。用語「基質」及び「検出基質」は、区別なく本明細書において使用される。
【0043】
用語「バトロキソビン・モジェニ(Batroxobin moojeni)」又は「バトロキソビン」又は「レプチラーゼ」又は「デフィブラーゼ」は、本明細書において区別なく使用され、アメリカヘビ属の毒から、特にB.モジェニ(B.moojeni)から単離されたセリンプロテアーゼを定義する。
【0044】
本明細書において使用されるように、用語「ヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ」は、動物から直接単離される酵素だけでなく、バトロキソビン(UniProtKB-P04971)に対して少なくとも55%の同一性を有する組換え酵素をもたらす発酵又は細胞培養によって産生され、本明細書において記載されるようにフィブリノーゲンを切断することができる酵素を含む、天然の酵素の(配列)情報に基づいて人工的に合成される酵素をも意味する。
【0045】
本明細書において使用されるように、本明細書において区別なく使用される用語「患者」及び「検査対象」は、本発明によるフィブリノーゲンレベルが測定される対象(ヒト又は動物)を意味する。したがって、それは、一般的に使用される意味で健康な及び健康でない対象の両方を含む。
【0046】
本明細書において使用されるように、用語「高フィブリノーゲンレベル」は、たとえば(ヒト)血液又は血漿などのような1lサンプル中約少なくとも5gのフィブリノーゲンの濃度を意味する。本明細書において使用される用語「低フィブリノーゲンレベル」は、たとえば(ヒト)血液又は血漿などのような1lサンプル中約0.3~0.6gのフィブリノーゲンの範囲にある濃度を意味する。
【0047】
本明細書において使用される用語「酵素の速度」は、ミカエリス-メンテン式の「v」などのように、単位時間当たりに生成される酵素の(切断)産物又は検出可能な成分の量を意味する。
【0048】
特に、本発明は、以下の実施形態を特徴とする:
(1)ヘビ毒セリンエンドペプチダーゼによる検出基質、好ましくは人工の検出基質の触媒作用による切断を含む、1つ又はそれ以上の酵素ステップを介してサンプル中のフィブリノーゲンレベルを直接測定するための方法。
(2)ヘビ毒セリンエンドペプチダーゼの作用による検出基質の触媒作用による切断のステップを含む、サンプル中のフィブリノーゲンレベルを直接測定するための方法であって、フィブリノーゲンレベルは、前記検出基質の触媒作用による切断から測定されるシグナルに反比例する方法。
(3)フィブリノーゲンレベルの測定は、サンプル、好ましくはヒト又は動物サンプル、より好ましくは血液又は血漿サンプル中に存在する抗凝血薬によって干渉されない、本明細書において定義される上記の方法。
(4)検出基質は、測定の間に切り離された後、(光)電気化学的に、電流発生的に、色素生成的に、及び/又は蛍光発生的に検出することができる検出可能な成分に連結されている、本明細書において定義される上記の方法。
(5)ヘビ毒セリンエンドペプチダーゼは、好ましくはボスロプス・モジェニ(Bothrops moojeni)、カイサカ(Bothrops atrox)、ジャララカ(Bothrops jararaca)、エキス・ピラミダム(Echis pyramidum)、カーペットバイパー(Echis carinatus)、アグキストロドン・ロドストマ(Agkistrodon rhodostoma)、タイワンハブ(Protobothrops mucrosquamatus)、クロタラス・ロドストマ(Crotalus rhodostoma)、及びヒガシダイヤガラガラヘビ(Crotalus adamanteus)からなる群から選択される、アメリカヘビ属、マムシ属、トゲクサリヘビ属、ハブ属、カロセラスマ属、トリメレスルス属、又はガラガラヘビ属のヘビ毒を起源とする、本明細書において定義される上記の方法。
(6)好ましくは上記の又は本明細書において定義される方法を使用することによる、前記エンドペプチダーゼによって触媒的に切断される人工の検出基質と共にヘビ毒セリンエンドペプチダーゼを含む、サンプル中のフィブリノーゲンレベルの測定のための診断アッセイ。
(7)中央血液検査室若しくは中央臨床検査室、緊急治療室、病院外でさえも生じる緊急事態、医療現場、個人の家、小牧場、家畜小屋、又は簡易迅速検査(POCT)環境において使用される、上記の又は本明細書において定義される方法/アッセイ。
(8)サンプル中のフィブリノーゲンレベルの決定におけるヘビ毒セリンエンドペプチダーゼの使用であって、前記サンプル中のフィブリノーゲンのレベルは、人工の基質を触媒する酵素の速度に反比例する使用。
(9)好ましくはヒト又は動物からのサンプル、より好ましくは血液又は血漿中のフィブリノーゲンレベルを測定するために使用されるデバイスであって、ヘビ毒セリンエンドペプチダーゼの作用によって触媒される基質に連結された蛍光発生、色素生成、又は電流発生検出成分の切断は、センサーによって検出することができ、前記検出シグナルは、サンプル中のフィブリノーゲンレベルに反比例するデバイス。
【0049】
以下の実施例は、単なる例証であり、決して本発明の範囲を限定するようには意図されない。本出願の全体にわたって引用されるすべての参考文献、特許出願、特許、及び公開特許出願の内容、特に国際公開第2009053834号パンフレット、国際公開第2000050446号パンフレット、又は国際公開第2016049506号パンフレットにおいて開示される基質は、参照によって本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、フィブリノーゲンレベルとそれらのシグナル(ここでは、たとえば、Y軸上に示される405nmでの吸収として)との間の関係を秒時間(X軸)毎に示す図である。実線は、高濃度のフィブリノーゲンを示し、点線は、低濃度のフィブリノーゲンを示し、破線は、サンプル中のフィブリノーゲンが0であることを示す。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図2】
図2は、フィブリノーゲンレベル(X軸上にg/Lで示す)の間の関係は、i-STAT(登録商標)システムを使用した場合にメトキシジフェニルアミンによって生成される電気シグナル(Y軸)に反比例することを示す図である。
【
図3】
図3は、フィブリノーゲンレベル(X軸上にg/Lで示す)の間の関係は、CoaguChek(登録商標)システムを使用した場合にフェニレンジアミンによって生成される電気シグナル(Y軸)に反比例することを示す図である。
【
図4】
図4は、人工の基質としてPefachrom(登録商標)TH及び酵素としてバトロキソビンを用いる、0、20%、又は40%の市販で入手可能なヒト血漿におけるヒト血漿フィブリノーゲンの酵素反応速度のモデリングを示す図である。Pefachrom(登録商標)TH-バトロキソビンのK
mは、同じような速度のV
maxを保持しながら、それぞれ0.67及び1.35g/Lのフィブリノーゲンの存在下において約2倍及び5倍超増加した。基質濃度をX軸上に示し、酵素活性をY軸上に示す。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図5】
図5は、人工の基質としてPefachrom(登録商標)TH及び酵素としてバトロキソビンを用いる0、30%、又は60%の市販で入手可能なヒト血漿におけるヒト血漿フィブリノーゲンの酵素反応速度のモデリングを示す図である。Pefachrom(登録商標)TH-バトロキソビンのK
mは、同じような速度のV
maxを保持しながら、それぞれ0.8及び1.56g/Lのフィブリノーゲンの存在下において約2.5倍及び5倍超増加した。基質濃度をX軸上に示し、酵素活性をY軸上に示す。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図6A】
図6は、規定サンプル中のフィブリノーゲンレベルの決定を示す図である。
図6Aは、様々な血漿Citrol-1(PL)濃度でのpNA放出曲線を示す。PLは、還元し、1.6~150%の示される濃度まで希釈し、理論上のフィブリノーゲン(Fg)濃度を、バトロキソビン、Pefachrom TH、及びPefabloc FGの存在下において室温で実行される反応において0.04~3.75g/Lとした。分毎にプレートリーダー(Clariostar、BMG Labtech)によって記録されたOD405値を初期バックグラウンドOD405値に対して補正した。OD405補正値の平均を、3つのサンプルからの標準偏差のエラーバーと共にY軸にプロットし、X軸は、10分以内の記録時間を示す。様々なフィブリノーゲン濃度を表す各曲線(様々な図形及び影によって表される、詳細については図の凡例を参照されたい)をプロットし、各記録の間を直線でつなげた。
【
図6B】
図6Bは、様々な記録時間のフィブリノーゲン濃度と補正済みOD405との間の関係を示す、典型的な標準曲線を示す。X軸は、反応における計算済みのフィブリノーゲン濃度であり、Y軸は、3回の反復実験からの補正済みOD405である。各曲線は、様々な記録時間、たとえば4、6、7、10、及び15分(凡例)でのフィブリノーゲン濃度-シグナルの関係を表す。様々な記録時間での回帰線(実線)及びそれらの95%信頼区間(実線の間の点線内に含まれる)は、GraphPad Prism 7によって生成した。
【
図6C】
図6Cは、様々な血漿PL濃度並びに他の2つの市販で入手可能なコントロール血漿、Control plasma P及びLow abnormal control assayed plasma(Low PL)でのpNA放出曲線を示す。血漿はすべて、指示に従って100%の血漿まで還元した。PLは、反応において0.08~1.25g/Lのフィブリノーゲン濃度に及ぶ標準曲線を生成するために段階希釈し、明確にするために、3.1%及び50%希釈のみをプロットする。他の2つの血漿、Control plasma P(Siemens)及びLow abnormal control assayed plasma(IL)は、反応をバトロキソビン、Pefachrom TH、及びPefabloc FGの存在下において室温で実行した同じ実験ランに含めた。毎分記録されたOD405値は、初期バックグラウンドOD405値に対して補正した。OD405補正値の平均は、3つのサンプルからの標準偏差のエラーバーと共にY軸にプロットし、X軸は、10分以内の記録時間を示す。様々なフィブリノーゲン濃度を表す各曲線(様々な図形及び影によって表される、詳細については図の凡例を参照されたい)をプロットし、各記録の間を直線でつなげた。
【
図6D】
図6Dは、フィブリノーゲン濃度と10分目の記録時間での補正済みOD405との間の関係を示す標準曲線を示す。X軸は、PLを使用する反応における計算済みのフィブリノーゲン濃度であり、Y軸は、3回の反復実験からの補正したOD405である。実線の回帰線は、GraphPad Prism 7によって生成した。Control plasma P及びLow PLのフィブリノーゲン濃度を推測するために、2つの血漿のOD405補正値を書き入れ(矢印付きの点線)、よって、反応において血漿が50%の濃度であった場合のODシグナルをフィブリノーゲン濃度に変換する。
【
図6E】
図6Eは、様々な時点でのControl plasma P(Siemens)及びLow abnormal control assayed plasma(HemosIL)について推測されるフィブリノーゲン濃度を示す。Y軸は、希釈していない場合のこれらの2つの血漿、Control plasma P(黒丸)及びLow abnormal control assayed plasma(白丸)のフィブリノーゲン濃度を示し、エラーバーは標準偏差を表す。X軸は、
図6c及び6dにおいて説明される10分以内の反応の記録時間である。点線内の斜線部分は、これらの2つの血漿の95%信頼区間を表し、Control plasma Pは点によって陰をつけ、Low abnormal control assayed plasmaは斜線によって陰をつける。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図7A】
図7は、PT及びaPTTにおける抗凝固薬による干渉を検査したことを示す図である。
図7Aは、RocheのcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrome TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。X軸は、増加するPefachrome THの濃度を表し、Y軸は、室温におけるバトロキソビンの酵素活性を表す。曲線は、RocheのcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルの非存在下(コントロール)での及び0.03×~2×の推奨される使用濃度での酵素活性の関係を表す。プロテアーゼ阻害剤カクテルの使用量が増加すると、バトロキソビンの酵素活性は抑制された。この抑制は、阻害のタイプが混合したものであり、Vmaxは低下し、Kmは増加した。
【
図7B】
図7Bは、
図7aにおいて示されるように、RocheのcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrome TH基質のミカエリス-メンテン定数(Km)(
図7B)を示す。パラメーターは、GraphPad Prism 7によって推測した。阻害剤カクテルの濃度がバトロキソビン-Pefachrome TH基質反応において増加した場合、Kmは増加したが、逆のことがVmaxについて当てはまった。エラーバーは、Km又はVmaxの平均値のあたりの95%信頼区間を表し、より高い阻害剤濃度で実行した反応から得られた値のエラーバーは、信頼区間が非常に大きかったため省略した。バトロキソビン-Pefachrome TH基質反応は、一般的なプロテアーゼ阻害剤のカクテルによって影響を受けたが、血液の凝固の典型的な治療用及び非治療用阻害剤によっては影響を受けなかった。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図7C】
図7Cは、
図7aにおいて示されるように、RocheのcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrome TH基質のVmax(
図7C)を示す。パラメーターは、GraphPad Prism 7によって推測した。阻害剤カクテルの濃度がバトロキソビン-Pefachrome TH基質反応において増加した場合、Kmは増加したが、逆のことがVmaxについて当てはまった。エラーバーは、Km又はVmaxの平均値のあたりの95%信頼区間を表し、より高い阻害剤濃度で実行した反応から得られた値のエラーバーは、信頼区間が非常に大きかったため省略した。バトロキソビン-Pefachrome TH基質反応は、一般的なプロテアーゼ阻害剤のカクテルによって影響を受けたが、血液の凝固の典型的な治療用及び非治療用阻害剤によっては影響を受けなかった。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図8A】
図8は、本発明のバトロキソビン-Pefachrome TH酵素反応を使用する様々なDOACによる干渉試験を示す図である。
図8Aは、ダビガトランの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrom TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。X軸は、増加するPefachrome THの濃度を表し、Y軸は、室温におけるバトロキソビンの酵素活性を表す。曲線は、0ng/mL(ネガティブコントロールとして)及び31~500ng/mLのダビガトランの存在下における酵素活性の関係を表す。ダビガトランの使用量を増加させても、バトロキソビンの酵素活性を有意に抑制しなかった。
【
図8B】
図8Bは、0.13~2.0μg/mLアルガトロバンの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrom TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。検査は、
図8Aにおけるように実行した。
【
図8C】
図8Cは、38~600ng/mLリバロキサバンの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrom TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。検査は、
図8Aにおけるように実行した。
図8Cは、ダビガトラン、アルガトロバン、及びリバロキサバンの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrom TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。X軸は、増加するPefachrome THの濃度を表し、Y軸は、室温におけるバトロキソビンの酵素活性を表す。各薬剤治療のより詳細なプロットについては、個々のグラフ(8a:ダビガトラン、8b:アルガトロバン、8c:リバロキサバン)を参照されたい。薬剤の使用量を増加させても、バトロキソビンの酵素活性を有意に抑制しなかった。
【
図8D】
図8Dは、ミカエリス-メンテン定数(Km)を示す。
【
図8E】
図8Eは、
図8a~8dにおいて示されるように、ダビガトラン、アルガトロバン、又はリバロキサバンの様々な濃度の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrome TH基質のVmaxを示す。Kmは、すべての阻害剤のすべての濃度によって有意に影響を受けたわけではなかった。バトロキソビン-Pefachrome TH基質反応のKmは、フィブリノーゲンの存在によってさらに影響を及ぼされたので、このフィブリノーゲン検査の原理は、DTI及びDXaIの存在に十分に抵抗性であるはずである。非常に高用量の薬剤の存在は、わずかにVmaxを低下させることがあり得るが、フィブリノーゲンアッセイに対する効果は、ごくわずかであると考えることができる。エラーバーは、Km又はVmaxの平均値のあたりの95%信頼区間を表す。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図9A】
図9は、化学物質による干渉を示す図である。
図9Aは、凝固及びフィブリン溶解の経路を阻害することが知られている化学物質の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrom TH反応のミカエリス-メンテン酵素反応速度のプロットを示す。X軸は、増加するPefachrome THの濃度を表し、Y軸は、室温におけるバトロキソビンの酵素活性を表す。曲線は、6U/mLのフラグミン(Pfizerから入手可能な低分子ヘパリン)並びに10TIU/mLアプロチニン及び0.1M 6-アミノカプロン酸の組み合わせの存在下における酵素活性の関係を表す。未処置の反応(コントロール)と比較して、これらの作用物質は、有意に活性に影響を及ぼさなかった。
【
図9B】
図9Bは、ミカエリス-メンテン定数(Km)を示す。
【
図9C】
図9Cは、凝固及びフィブリン溶解の経路を阻害することが知られている化学物質の存在下におけるバトロキソビン-Pefachrome TH基質のVmaxを示す。Kmは、すべての阻害剤のすべての濃度によって有意に影響を受けたわけではなかった。バトロキソビン-Pefachrome TH基質反応のKmは、フィブリノーゲンの存在によってずっと影響を及ぼされたので、このフィブリノーゲン検査の原理は、これらの阻害剤の存在に十分に抵抗性であるはずである。エラーバーは、Km又はVmaxの平均値のあたりの95%信頼区間を表す。詳しくは、本文を参照されたい。
【
図10】
図10は、バトロキソビン-Pefachrome TH反応の適応性を実証するための2つの異なるPL濃度でのpNA放出曲線を示す図である。PLは、適切な量のバトロキソビン及びPefachrome TH(詳細については凡例を参照されたい)における37℃での反応ランにおいて、それぞれおよそ0.1及び0.7g/Lのフィブリノーゲン濃度を有する反応液を生成するために4%及び24%まで希釈した。毎分(X軸)記録されたOD405値は、初期バックグラウンドOD405値に対して補正した、よってY軸は補正済みのOD405である。OD405補正値の平均は、3つのサンプルからの標準偏差のエラーバーと共にY軸にプロットし、X軸は、10分以内の記録時間を示す。OD405補正値の平均をつなぐ直線によって表される各曲線は、様々な条件(詳細については凡例を参照されたい)での反応速度を示す。
【0051】
[実施例]
[実施例1:PT-INR及びACT機能を備えたPoCデバイスでの全血フィブリノーゲンレベルの測定]
i-STAT(登録商標)簡易迅速システム(Axonlab/Abbott)を使用するサンプル中のフィブリノーゲンレベルの測定を本明細書において記載するが、これにより、デバイスのユーザーが非常に短時間の内に検査対象(患者)のフィブリノーゲンレベルを決定するのを可能にするはずである。
【0052】
この検査は、組織因子によって引き起こされるINR情報が得られる以外は、i-STAT(登録商標)によって提供される既存のプロトロンビン時間(PT)とまさに同様に機能するはずである。新たなフィブリノーゲンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変換するためにヘビ毒タンパク質、バトロキソビンを利用する。トロンビン様セリンプロテアーゼに対するPPAAM又はPefachrome(登録商標)THを含む人工の検出基質及びバトロキソビンの存在下において、前記人工の基質は、フィブリノーゲンと競合する。検査においてバトロキソビン及びPPAAMの量を固定すると、フィブリノーゲン濃度とその量の検出基質PPAAMによって生成される電気化学シグナルとの関係を決定することができる。フィブリノーゲンは、バトロキソビンについてPPAAMと競合し、反比例するフィブリノーゲンレベルと電気化学シグナルとの間の関係をもたらす(
図2)。
【0053】
[実施例2:Roche DiagnosticsのCoaguChek(登録商標)によるフィブリノーゲンアッセイ]
Roche Diagnostics GmbHのCoaguChek(登録商標)XS簡易迅速デバイスを使用する、サンプル中のフィブリノーゲンレベルの測定を本明細書において記載するが、これにより、デバイスのユーザーが非常に短時間の内に検査対象(患者)の全血サンプル中のフィブリノーゲンレベルを決定するのを可能にするはずである。
【0054】
この検査は、CoaguChek(登録商標)XSによって提供される既存のプロトロンビン時間(PT)検査とまさに同様に機能するはずである。新たなフィブリノーゲン検査は、サンプルフィブリノーゲンをフィブリンに変換するためにヘビ毒タンパク質、バトロキソビンを利用する。Electrozyme TH又はPefachrome(登録商標)TH、すなわちトロンビン様セリンプロテアーゼに対する基質を含む人工の検出基質及びバトロキソビンの存在下において、前記人工の基質は、フィブリノーゲンと競合する。検査においてバトロキソビン及び検出基質の量を固定すると、フィブリノーゲン濃度とその量の活性検出基質によって生成される電気化学シグナルとの関係を決定することができる。フィブリノーゲンが、バトロキソビンについて検出基質と競合するので、フィブリノーゲンレベルと電気化学シグナルとの間の関係は互いに反比例する(
図3)。
【0055】
[実施例3:標準的な分光光度計を用いるフィブリノーゲンアッセイ]
様々なヒト血漿濃縮物と共に検出可能な成分パラ-ニトロアニリン(pNA)を含有するPefachrom(登録商標)TH及びバトロキソビンを使用するフィブリノーゲンレベルの測定を、CL-ARIOstar(登録商標)(BMG Labtech)で使用した。さらに、酵素バトロキソビン(E)による切断についての、天然の基質としてのフィブリノーゲンと人工の基質Pefachrome(登録商標)THとの間の競合を測定した。
【0056】
異なる希釈30%及び60%の市販で入手可能なヒト血漿を、フィブリノーゲンの供給源として使用した。異なるフィブリノーゲンレベル、それぞれ0.8及び1.56g/Lのサンプルを調製した。酵素活性は、毎分放出されるpNAの量に基づいて計算した。pNAの量は、405nmでの吸収に正比例する。様々な濃度のPefachrom(登録商標)TH及びフィブリノーゲンを、pNA放出の速度に関して、(E)の存在下において検査し、結果及び分析を
図4及び表2に要約する。
【0057】
ミカエリス-メンテン酵素反応速度モデリングに基づくと、フィブリノーゲンの存在は、酵素-基質反応のミカエリス-メンテン定数(Km)を変化させていたが、反応の最大酵素反応速度(Vmax)は有意には変化しなかった。Kmの増加及び同じようなVmaxは、フィブリノーゲンとPefachrom(登録商標)THの間の非阻害性の競合を一貫して実証した。
【0058】
この場合ほぼ一定であるKcatは、1秒当たり1活性部位当たりの基質分子の最大数を示し、(S)及び(E)の両方の濃度も反応において同じであるミカエリス-メンテン式に基づくと、Kmの増加は、酵素反応速度(v)に有意に影響を与える。フィブリノーゲンの存在による酵素反応速度の変化は、容易に測定することができ、フィブリノーゲン濃度の推測をもたらす。人工の基質(S)としてPefachrom(登録商標)THを使用して、発明者らは、表2に示すように、様々なレベルのヒト血漿由来のフィブリノーゲンの存在下において、酵素(E)としてのバトロキソビンによるpNA生成のvをモニターした。vの変化は、フィブリノーゲンの存在によるものであり、vの減少は、フィブリノーゲン濃度の増加に正比例し、これは、ミカエリス-メンテン酵素反応速度に基づくとKmの増加によるものであった。
【0059】
【0060】
ここでは人工の基質(S)としてPefachrom(登録商標)THを続けて使用し、発明者らは、様々なレベルのヒト血漿由来のフィブリノーゲンの存在下においてバトロキソビンによるpNA生成のvをモニターした(表2)。vの変化は、フィブリノーゲンの存在によるものであり、vの減少は、フィブリノーゲン濃度の増加に反比例し、これは、ミカエリス-メンテン酵素反応速度に基づくとKmの増加によるものであった。
【0061】
[実施例4:標準的な分光光度計を用いるフィブリノーゲンアッセイ]
様々なヒト血漿濃縮物と共に検出可能な成分p-ニトロアニリン(pNA)を含有するPefachrom(登録商標)TH及びバトロキソビンを使用するフィブリノーゲンレベルの測定を、CLARIOstar(登録商標)(BMG Labtech)で使用した。さらに、酵素バトロキソビン(E)による切断についての、天然の基質としてのフィブリノーゲンと人工の基質Pefachrome(登録商標)THとの間の競合を測定した。
【0062】
異なる希釈30%及び60%の市販で入手可能なヒト血漿を、フィブリノーゲンの供給源として使用した。異なるフィブリノーゲンレベル、それぞれ0.8及び1.56g/Lのサンプルを調製した。酵素活性は、毎分放出されるpNAの量に基づいて計算した。pNAの量は、405nmでの吸収に正比例する。様々な濃度のPefachrom(登録商標)TH及びフィブリノーゲンを、pNA放出の速度に関して、(E)の存在下において検査し、結果及び分析を
図5及び表3に要約する。
【0063】
ミカエリス-メンテン酵素反応速度モデリングに基づくと、フィブリノーゲンの存在は、酵素-基質反応のミカエリス-メンテン定数(Km)を変化させていたが、反応の最大酵素反応速度(Vmax)は有意には変化しなかった。Kmの増加及び同じようなVmaxは、フィブリノーゲンとPefachrom(登録商標)THの間の非阻害性の競合を一貫して実証した。
【0064】
この場合ほぼ一定であるK
catは、1秒当たり1活性部位当たりの基質分子の最大数を示し、(S)及び(E)の両方の濃度も反応において同じであるミカエリス-メンテン式に基づくと、K
mの増加は、酵素反応速度(v)に有意に影響を与える:
【数1】
フィブリノーゲンの存在による酵素反応速度の変化は、容易に測定することができ、フィブリノーゲン濃度の推測をもたらす。人工の基質(S)としてPefachrom(登録商標)THを使用して、発明者らは、表3に示すように、様々なレベルのヒト血漿由来のフィブリノーゲンの存在下において、酵素(E)としてのバトロキソビンによるpNA生成のvをモニターした。vの変化は、フィブリノーゲンの存在によるものであり、vの減少は、フィブリノーゲン濃度の増加に反比例し、これは、ミカエリス-メンテン酵素反応速度に基づくとK
mの増加によるものであった。
【0065】
【0066】
ここでは人工の基質(S)としてPefachrom(登録商標)THを続けて使用し、発明者らは、様々なレベルのヒト血漿由来のフィブリノーゲンの存在下においてバトロキソビンによるpNA生成のvをモニターした(表3)。vの変化は、フィブリノーゲンの存在によるものであり、vの減少は、フィブリノーゲン濃度の増加に正比例し、これは、ミカエリス-メンテン酵素反応速度に基づくとKmの増加によるものであった。
【0067】
[実施例5:バトロキソビン酵素反応速度によって決定される血漿フィブリノーゲン濃度]
フィブリノーゲンレベルの測定を、市販で入手可能であった、十分に特徴付けられた血漿を使用して実行し、血液サンプル中のフィブリノーゲン測定のこの革新的な原理の実現可能性について吟味した。
【0068】
十分に受け入れられている現在のフィブリノーゲンアッセイは、クロットベースのClauss検査である。Siemens及びInstrumentation Laboratory(IL)から入手可能なコントロール血漿をフィブリノーゲン測定においてコントロールとして標準的なClauss検査において使用し、フィブリノーゲン濃度を十分に特徴付けた(表4)。血漿フィブリノーゲン決定におけるこの色素生成フィブリノーゲンアッセイの実現可能性について簡単に検査するために、検量線を、段階希釈Citrol-1、Siemensのコントロール血漿から得た(
図6a、6b)。異なるフィブリノーゲンレベルを有する2つの他の血漿(表4)、Control plasma P(Siemens)及びLow abnormal control assayed plasma(IL)は、アッセイし、Citrol-1を使用して生成した検量線から内挿することによってそれらのフィブリノーゲン濃度を推測した(詳細については
図6c、6d、及び6eを参照されたい)。
【0069】
【0070】
図6において記載される現条件に基づいて、アッセイは、0.05及び0.3g/Lのフィブリノーゲンレベルの間で良好に区別又は分離することができた(
図6a及び6b)。フィブリノーゲン濃度と405nmのODとして測定可能なシグナルとの間の反比例する関係は、この臨床的に特徴付けられたコントロール血漿において明確に実証された(
図6a及び6b)。検量線を生成し、2つの血漿のフィブリノーゲン濃度を推測した(
図6c及び6d)。これらの2つの血漿の推測値は、血漿のサプライヤーによって示される値と非常によく一致していた(
図6e/表4)。よって、フィブリノーゲンレベルが異常に低い臨床的に重要な血漿サンプルは、バトロキソビン酵素反応速度に基づいて、本発明の方法を使用して正確に推測された。
【0071】
[実施例6:バトロキソビン酵素反応速度に基づくフィブリノーゲン測定における直接トロンビン阻害剤(DTI)及び直接FXa阻害剤(DXaI)の干渉試験]
本実施例では、本発明の方法の有利な特性を、直接トロンビン阻害剤又は直接FXa阻害剤からの干渉について検査した。
【0072】
患者がフィブリノーゲンレベルの推測を必要とした緊急事態では、フィブリノーゲン検査は、多くの干渉因子からできるだけ自由でなければならない。DTI及びDXaIを含む直接経口抗凝血薬(DOAC)の使用は、多くの疾患において血栓症を予防するのに、より一般的なものになってきている。本実施例では、発明者らは、発明者らのフィブリノーゲン測定方法におけるこの種のこれらの代表的な薬剤の干渉を判断するために、発明者らの新たな方法において3つのプロテアーゼ阻害剤、ダビガトラン(DTI)、アルガトロバン(DTI)、及びリバロキサバン(aDXaI)を検査した。これらの医薬品の阻害効果を評価するために、発明者らは、バトロキソビンとその基質Pefachrome THとの間の酵素反応速度におけるこれらの作用物質の効果を調査した。バトロキソビン-Pefachrome TH酵素反応を、Rocheから購入したプロテアーゼ阻害剤のカクテル、cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテルの存在下において検査した(
図7aを参照されたい)。Vmax及びKmのような酵素反応速度パラメーターをミカエリス-メンテン酵素反応速度モデルに基づいて推測すると、酵素反応に対するカクテルの阻害効果が明確に見え(
図7a)、ミカエリス-メンテンパラメーター、Vmax及びKmは、阻害が混合していることを示す(
図7b及び7c)。
【0073】
酵素反応速度試験の確立と共に、DTI及びDXaIの干渉を、2つの一般的な血液の凝固検査、すなわちプロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)におけるこれらの薬剤の効力を検査することによってスタートさせた。これらのDTI及びDXaIの存在下において、これらの2つの検査は、血液凝固時間の遅延を表すであろう。この原理に基づき、発明者らは、PT及びaPTTにおいて報告されたピーク及びトラフ血漿濃度を適用することによって、これらの薬剤の効力を判断した。結果を表5に示す:それぞれDTI及びDXaIとして示される直接トロンビン阻害剤及び直接FXa阻害剤は、プロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に基づき、血液凝固の時間を遅延させることができた。ダビガトランについて報告された最大及びトラフ濃度は、447~10ng/mLの間であり、リバロキサバンは535~6ng/mLであった。コントロール血漿は、異なる量及び種類の阻害剤を個々に加え、PT及びaPTTの血液凝固時間をBCS-XP(Siemens)によって記録した。
【0074】
【0075】
作用機序及び濃度に基づく強~弱の効力の範囲を検出すると、結果は文献と一致した。
【0076】
トロンビン及びFXaの阻害における薬剤の効力を実証したので、ダビガトラン、アルガトロバン、及びリバロキサバンの干渉効果について、バトロキソビン-Pefachrome TH酵素反応において試験した。酵素反応速度試験では、発明者らは、バトロキソビン-Pefachrome TH反応の中に0~500ng/mLのダビガトランを含めた(
図8aを参照されたい)。同じような試験を、0~2μg/mLの範囲の間の薬剤アルガトロバンについて実行した(
図8bを参照されたい)。加えて、0~600ng/mLのリバロキサバンをこの酵素反応速度試験に適用した(
図8cを参照されたい)。本試験では、発明者らは、Rocheのプロテアーゼ阻害剤のカクテルでのようなDTI及びDXaIによる強力な阻害効果を観察しなかった(
図8a~8cを比較)。各薬剤の最高用量でVmaxに非常にわずかな低下があったかもしれないが、Kmは、様々な薬剤及び濃度の全体にわたってまさに一定であり続けた(
図8e及び8f)。Kmは、フィブリノーゲンの存在によってシフトする主なパラメーターであるので、すなわち、フィブリノーゲン濃度が高いほど、Kmは大きくなり増加するので(詳細については実施例3及び4を参照されたい)、アッセイは、典型的なDTI及びDXaI又は一般的なDOACによって干渉されるのを無視することができると言っても過言ではない。
【0077】
[実施例7:クロットベースのアッセイに影響を与えることが知られている化学物質の干渉試験]
本実施例では、本発明の方法の有利な特性を、クロットベースのアッセイに影響を与えることが知られている化学物質の干渉について検査した。
【0078】
前の実施例において実行した検査と同じように、バトロキソビンとその基質Pefachrome THとの間の酵素反応速度を評価した。クロットベースのアッセイにおいて干渉することが実証されている、可能性として考えられる干渉物質は、ヘパリン(分画されていないヘパリン及び低分子ヘパリン、UFH及びLMWHを含む)、ヒルジン、EDTA、並びにフィブリノーゲン分解産物(FDP)である。ヘパリン及びヒルジンは、血栓症の治療における治療物質である。血漿におけるFDPの存在の増加は、フィブリン溶解及びフィブリノーゲン溶解を増加させる条件による。正常FDPレベルは、約5~8μg/mLである。より高いFDP濃度は、クロット形成を阻害することが知られている。アプロチニン及び6-アミノカプロン酸のような出血の治療においてフィブリン溶解を阻害するための医薬品もまた、本試験に含めた。加えて、血漿増補液において使用されるコロイドヒドロキシエチルデンプン(HES)を干渉活性試験にかけた。
【0079】
最初に、超高濃度の低分子ヘパリン(フラグミン)、アプロチニン及び6-アミノカプロン酸をバトロキソビン-Pefachrome TH酵素反応におけるそれらの干渉について検査した(
図9aを参照されたい)。予測Vmax及びKmは、未処置コントロールと有意には異なっていなかった(
図9b及び9c)。よって、フィブリノーゲン測定のための本発明の方法がこれらの物質によって干渉されないと結論づけても差し支えない。
【0080】
発明者らはさらに、同じ手法を使用して、分画されていないヘパリン(Liquemin:4U/mLまで)、カルシウムキレート剤EDTA(8mMまで)、ヒルジン(4U/mLまで)、HES(5mg/mLまで)、FDP(57μg/mLまで)の干渉を判断した。発明者らは、有意な干渉がこれらのすべての物質から生じるのを観察せず、これらの物質に対する本発明の方法の非依存性又は非干渉をさらに示した(データ示さず)。
【0081】
[実施例8:適応可能な酵素的条件]
典型的なPoCデバイス、すなわちiSTAT及びCoaguCheckは、検査の間に体温までそれらの血液サンプルを温めるので、発明者らは、体温で操作された場合のこの原理について試験した。発明者らは、発明者らがシグナル出力を増加させ、低フィブリノーゲン濃度で良好な区別を可能にするために、いくつかのパラメーターを調整した。
【0082】
体温に対する、バトロキソビン酵素反応速度に基づく本発明のフィブリノーゲン検出方法の適合は、実行に成功した。酵素及び基質の濃度のようなパラメーターは、血漿中の低フィブリノーゲン濃度で望ましい性能をもたらすように調整した(
図10を参照されたい)。
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
サンプル中のフィブリノーゲンレベルを測定するための方法であって、血液の凝固カスケードは、阻害される、好ましくは内因的及び外因的経路の両方の阻害である方法。
[実施形態2]
酵素的切断反応を含み、フィブリノーゲンの酵素的切断は、前記サンプル中に存在する検出基質の酵素的切断と競合する、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
実施形態1若しくは2に記載の又はフィブリノーゲンの酵素的切断のためのセリンエンドペプチダーゼの使用を含む方法。
[実施形態4]
酵素的切断の速度は、前記サンプル中のフィブリノーゲンレベルに依存する、実施形態2又は3に記載の方法。
[実施形態5]
前記サンプル中の前記フィブリノーゲンレベルに反比例するセリンエンドペプチダーゼのタンパク分解活性を測定することを含む、実施形態2~4のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態6]
CaCl2の非存在下において及び/又はトロンビン活性の非存在下において実行される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態7]
プロテアーゼ阻害剤、好ましくはフィブリン重合の阻害剤、より好ましくはトロンビン阻害剤の存在を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態8]
検量線の生成及び/又はフィブリノーゲン標準物質の生成/存在を含まない、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態9]
前記サンプルは、血液又は血漿から選択される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態10]
中央血液検査室若しくは中央臨床検査室、緊急治療室、病院外でさえも生じる緊急事態、医療現場、個人の家、小牧場、家畜小屋、又は簡易迅速検査(POCT)環境において使用される、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
[実施形態11]
実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法の実行に使用される診断キット。
[実施形態12]
実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法又は実施形態11の診断キットにおいて使用されるセリンエンドペプチダーゼ[EC 3.4.21]、好ましくはヘビ毒セリンエンドペプチダーゼ、より好ましくはベノンビンA[EC 3.4.21.74]。
[実施形態13]
特に、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法又は実施形態11の診断キットにおいて使用される、実施形態12に記載のセリンエンドペプチダーゼと組み合わせた、検出基質、好ましくは人工の検出基質。
[実施形態14]
実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法又は実施形態11に記載の診断キットにおいて使用される、好ましくは、実施形態12に記載のセリンエンドペプチダーゼと組み合わせた検出可能な成分及び/又は実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法若しくは実施形態11の診断キットにおいて使用される、実施形態13に記載の検出基質と組み合わせた、検出可能な成分。