(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分子量濾過システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20231129BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231129BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20231129BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20231129BHJP
G01N 1/34 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/00 A
C07K1/34
G01N1/40
G01N1/34
(21)【出願番号】P 2020551504
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019060778
(87)【国際公開番号】W WO2020102103
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520361955
【氏名又は名称】インテグレイテッド プロテイン テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレーダー,ジャレド
(72)【発明者】
【氏名】コンプトン,フィリップ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0252516(US,A1)
【文献】特開2011-247874(JP,A)
【文献】特表2018-524571(JP,A)
【文献】特開2009-201421(JP,A)
【文献】特表2016-511687(JP,A)
【文献】特開2005-337795(JP,A)
【文献】特表2011-507348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/12
C12M 1/00
C07K 1/34
G01N 1/40
G01N 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側部分、および
下側部分、
を備える分子濾過装置であって、
前記上側部分は、2つの上部ポートを備え、
前記2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、
前記第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第1の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと注入しないこととを繰り返すように構成され、
前記第2の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備え、
前記下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成され、
前記下部フロー装置は
ポンプに接続されており、前記リザーバ
に溶液を注入することと
前記リザーバから溶液を取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記上側部分は、流路形成リップを備え、
流路形成空胴は、前記上側部分および前記下側部分が互いに連結するときに前記流路形成リップによって形成され、
前記上側部分の下部シーリング面および前記下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し圧縮するように構成され、
前記膜は、前記流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成され、前記流路形成リップの内側縁の中に位置する前記膜の部分は、圧縮されておらず、
流路は、前記流路形成空胴および前記膜によって定義される、
分子濾過装置。
【請求項2】
前記膜は、濾過膜である、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項3】
前記濾過膜は、カットオフ濾過膜である、請求項2記載の分子濾過装置。
【請求項4】
前記下側部分の前記上部シーリング面および前記上側部分の前記下部シーリング面は、互いに前記膜を介して圧力を加えるように構成される、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項5】
前記流路は、
5μL~
50μLの間の容積を有する、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項6】
前記リザーバは、フリット支持リップを備える、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項7】
前記装置は、フリットをさらに備え、且つ
前記フリット支持リップは、前記フリットを収容するように構成される、
請求項6記載の分子濾過装置。
【請求項8】
前記フリットは、多孔性構造を備える、請求項7記載の分子濾過装置。
【請求項9】
前記フリットは剛体である、請求項7記載の分子濾過装置。
【請求項10】
前記膜の上部表面に構造的な支持を提供するために流路形成リップの中に収容されるように構成された上部剛体支持部材をさらに含む、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項11】
前記流路形成空胴は、涙滴状の形状をしている、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項12】
前記流路形成空胴は、卵形の形状をしている、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項13】
前記流路形成空胴は、細長い長方形の形状をしている、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項14】
前記上側部分および前記下側部分は、互いにかみ合うように連結する、請求項1記載の分子濾過装置。
【請求項15】
自動化された分子試料解析のための方法であって、試料を分子精製システムに導入する工程を含み、
前記試料は、単離される分子の少なくとも1つのタイプを含み、
前記分子精製システムは、1つまたは複数の分子濾過装置を備え、
前記1つまたは複数の分子濾過装置は、上側部分および下側部分を備え、
前記上側部分は、2つの上部ポートを備え、
前記2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、
前記第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第1の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと注入しないこととを繰り返すように構成され、
前記第2の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備え、
前記下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成され、
前記下部フロー装置は
ポンプに接続されており、前記リザーバ
に溶液を注入することと
前記リザーバから溶液を取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記上側部分は、流路形成リップを備え、
流路形成空胴は、前記上側部分および前記下側部分が互いに連結するときに前記流路形成リップによって形成され、
前記上側部分の下部シーリング面および前記下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し、且つ圧縮するように構成され、
前記膜は、前記流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成され、前記流路形成リップの内側縁の中に位置する前記膜の部分は、圧縮されておらず、
流路は、前記流路形成空胴および前記膜によって定義され、
前記試料は、前記1つまたは複数の分子濾過装置に充填される、
方法。
【請求項16】
前記試料を洗浄し、一方で前記1つまたは複数の分子濾過装置に充填されることによって前記試料を精製する工程をさらに含む、請求項15記載の自動化された分子試料解析のための方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の分子濾過装置から前記試料を溶出する工程をさらに含み、
前記試料は、前記2つの上部ポートの一方を介して前記溶液の流れを妨げ、他方の上部ポートおよび下部ポートを介して溶液の流れの向きを反転することによって溶出される、請求項16記載の自動化された分子試料解析のための方法。
。
【請求項18】
前記溶出される試料は、解析機械に溶出され、且つ、
前記解析機械は、前記1つまたは複数の分子濾過装置と流体連結する、
請求項17記載の自動化された分子試料解析のための方法。
。
【請求項19】
複数の分子濾過装置において、前記試料を充填する
工程と、前記試料を精製
する工程と、前記試料を溶出する工程は、前記
複数の分子濾過装置
で並行して行われる、請求項17記載の自動化された分子試料解析のための方法。
【請求項20】
上側部分、および
下側部分、
を備える分子濾過装置であって、
前記上側部分は、2つの上部ポートを備え、
前記2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、
前記第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成され、
前記第1の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと注入しないこととを繰り返すように構成され、
前記第2の上部フロー装置は
ポンプに接続されており、溶液を注入することと取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備え、
前記下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成され、
前記下部フロー装置は下部フロー装置は
ポンプに接続されており、前記リザーバ
に溶液を注入することと
前記リザーバから溶液を取り除くこととを繰り返すように構成され、
前記上側部分は、流路形成リップを備え、
流路形成空胴は、前記上側部分および前記下側部分が互いにかみ合うように連結するときに前記流路形成リップによって形成され、
前記上側部分の下部シーリング面および前記下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し、かつ圧縮するように構成され、
前記膜は、前記流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成され、前記流路形成リップの内側縁の中に位置する前記膜の部分は、圧縮されておらず、
流路は、前記流路形成空胴および前記膜によって定義され、
前記
膜は、カットオフ濾過膜であり、
前記下側部分の前記上部シーリング面および前記上側部分の前記下部シーリング面は、前記膜を介して互いに圧力を加えるように構成され、
前記流路は、
5μL~
50μLの間の容積を有し、
前記リザーバは、フリット支持リップを備え、
前記装置は、フリットをさらに備え、
前記フリット支持リップは、前記フリットを収容するように構成され、
前記フリットは、多孔性構造を備え、
前記フリットは、剛体である、
分子濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、「分子量濾過システムおよび装置」の表題の2018年11月16日に出願の米国仮出願番号第16/193,539号の利益を主張し、この内容は、これらの全体が記載された見解として参照により本明細書に援用される。
【0002】
使用の分野
この開示は、分子のカットオフに基づいた生体分子の濾過、精製および濃縮のためのシステムおよび装置に関係する。より詳細には、システムおよび装置は、プロテオミクス試料調製のためのシステムを含んでもよく、試料サイズは、ナノグラム範囲であるほどに小さく極めて小さく、およびその後に分子分析技術によって直接処理される。
【背景技術】
【0003】
実験法の目的のためのDNA、RNAおよびタンパク質などの生体分子の十分に純粋な試料を得ることは、困難な課題であり得るが、広く一連の実験を行うために必要とされる工程であることが多い。
【0004】
工程は、一般に、科学者が合成工程を行って所望の分子を生成することから始まる。所望の分子は、DNA、RNA、タンパク質またはその他の大きな分子であり得る。
【0005】
いくつかの態様において、特定のタンパク質を合成するための遺伝暗号を含むプラスミドは、微生物細胞に挿入され得る。また、プラスミドは、特定の抗生物質耐性を含んでもよく、その結果うまくプラスミドを収容しなかった任意の微生物細胞は、抗生物質によって除去され得る。次いで、微生物細胞の単一のコロニーを選択して、増殖培地へ移してもよく、および所望の細胞密度が得られるまで増殖させてもよい。次に、活性化因子分子を増殖培地に添加して微生物細胞に所望のタンパク質を産生させてもよい。微生物細胞は、その段階にて、細胞の全てのその他の成分に加えて特定のタンパク質をそれらの中に含むだろう。その段階にて、種々の濾過および精製技術が特定のタンパク質を単離するために使用され得る。あるいは、試料は、ヒト組織ホモジネートまたはヒト血液細胞可溶化液などの内在性物質から調製され得る。
【0006】
一つの濾過および濃縮技術、デッドエンド濾過は、特定のタンパク質を含む溶液がデッドエンド濾過装置の最後にて膜の分子量カットオフ(「MWCO」)より小さい溶液のその他の成分を除去するとのと同時に濃縮することを可能にする。これは、濃縮およびより小さな混入物を取り除くための有効な技術であり得るが、この技術は、しばしば膜に詰まりおよび減速を生じさせ得る。また、デッドエンド濾過は、一度に少量の溶液のみを受け入れることが多いので、科学者は、特定のタンパク質を含む溶液を繰り返しデッドエンド濾過装置に補充する必要があるであろう。
【0007】
もう一つの濾過および濃度技術、クロスフロー濾過は、溶液および混入物が膜を通過し、一方で溶液および大きな分子が膜を通過しないように、絶え間なく膜を越えて溶液を流れさせることによって周期的に止まり、および補充することを必要とすることなく科学者が大量の溶液を供給することができる。溶液が膜を通過した後、これは、さらなる精製のために再利用してもよい。時間とともに、溶液および混入物が膜を通過するにつれて、しかし特定のタンパク質は通過せず、特定のタンパク質の濃度が上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
分子の精製のための大多数の既存の技術は、相対的に大きな試料サイズの方向を目指す。科学者は、ナノグラムスケールでなどの相対的に小さい試料サイズで分子を効率的に単離し、および精製する際に困難に直面することが多い。科学者は、多くの理由のためにこれらの極めて小さな試料サイズで操作する必要があり得る。いくつかの理由は、試料が放射性同位元素を利用する、試料がそれ自体と相互作用し得る、または試料が少しでも生成することが困難であることであろう。
【0009】
したがって、必要とされることは、特に低濃度にて、所望の生体分子をより効率的に濾過、精製および濃縮し得るシステムおよび装置である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
一つの態様は、上側部分、および下側部分、を備える分子濾過装置でもよく、上側部分は、2つの上部ポートを備えてもよく、2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第1の上部フロー装置は、溶液を注入することと注入しないことを繰り返すように構成されてもよく、第2の上部フロー装置は、溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備えてもよく、下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成されてもよく、下部フロー装置は、リザーバから溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、上側部分は、流路形成リップ(channel forming lip)を備えてもよく、流路形成空胴(channel forming cavity)は、上側部分および下側部分が互いに連結するときに流路形成リップによって形成されてもよく、上側部分の下部シーリング面および下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し、かつ圧縮するように構成されてもよく、膜は、流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成されてもよく、流路形成リップの内側縁の中に位置し得る膜の部分は、圧縮されなくてもよく、流路は、流路形成空胴および膜によって定義されてもよい。膜は、濾過膜でも、またはカットオフ濾過膜でもよい。下側部分の上部シーリング面および上側部分の下部シーリング面は、膜を介して互いに圧力を加えられるように構成されてもよい。流路は、約5μL~約50μLの間の容積を有してもよい。リザーバは、フリット支持リップ(frit supporting lip)を備えてもよい。分子濾過装置は、フリットをさらに備えてもよく、およびフリット支持リップは、フリット(frit)を収容するように構成されてもよい。フリットは、多孔性構造を備えてもよい。フリットは、剛体(rigid、強固)であってもよい。分子濾過装置は、膜の上部表面に構造的な支持を提供するために流路形成リップの中に収容されるように構成された上部剛体支持部材をさらに備えてもよい。一つの態様において、流路形成空胴は、涙滴状の形状をしていてもよい。あるいは、流路形成空胴は、卵形の形状をしていてもよい。あるいは、流路形成空胴は、細長い長方形の形状をしていてもよい。請求項1の分子濾過装置であって、上側部分および下側部分は、互いにかみ合うように連結してもよい。
【0011】
もう一つの態様は、試料を分子精製システムに導入する工程を含む自動化された分子試料解析のための方法でもよく、試料は、単離される分子の少なくとも1つのタイプを含んでもよく、分子精製システムは、分子濾過装置を備えてもよく、分子濾過装置は、上側部分および下側部分を備えてもよく、上側部分は、2つの上部ポートを備えてもよく、2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第1の上部フロー装置は、溶液を注入することと注入しないことを繰り返すように構成されてもよく、第2の上部フロー装置は、溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備えてもよく、下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成されてもよく、下部フロー装置は、リザーバから溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、上側部分は、流路形成リップを備えてもよく、流路形成空胴は、上側部分および下側部分が互いに連結するときに流路形成リップによって形成されてもよく、上側部分の下部シーリング面および下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し、かつ圧縮するように構成されてもよく、膜は、流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成されてもよく、流路形成リップの内側縁の中に位置し得る膜の部分は、圧縮されなくてもよく、流路は、流路形成空胴および膜によって定義されてもよく、試料は、分子濾過装置に充填されてもよい。自動化された分子試料解析のための方法は、分子濾過装置に充填すると同時に試料を洗浄することによって試料を精製する工程をさらに含んでもよい。自動化された分子試料解析のための方法は、分子濾過装置から試料を溶出する工程をさらに含んでもよく、試料は、2つの上部ポートの1つを介して溶液の流れを妨げることおよびその他の上部ポートおよび下部ポートを介して溶液の流れの向きを反転させることによって溶出されてもよい。自動化された分子試料解析のための方法は、溶出した試料を解析機械へ移動する工程をさらに含んでもよく、解析機械は、分子濾過装置と流体連結してもよい。
【0012】
分子濾過装置のもう一つの態様は、上側部分、および下側部分、を備えてもよく、上側部分は、2つの上部ポートを備えてもよく、2つの上部ポートは、第1の上部ポートおよび第2の上部ポートを備え、第1の上部ポートは、第1の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第2の上部ポートは、第2の上部フロー装置を収容するように構成されてもよく、第1の上部フロー装置は、溶液を注入することと注入しないことを繰り返すように構成されてもよく、第2の上部フロー装置は、溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、下側部分は、下部ポートおよびリザーバを備えてもよく、下部ポートは、下部フロー装置を収容するように構成されてもよく、下部フロー装置は、リザーバから溶液を注入することと取り除くことを繰り返すように構成されてもよく、上側部分は、流路形成リップを備えてもよく、流路形成空胴は、上側部分および下側部分が互いにかみ合うように連結するときに流路形成リップによって形成されてもよく、上側部分の下部シーリング面および下側部分の上部シーリング面は、膜を収容し、かつ圧縮するように構成されてもよく、膜は、流路形成リップの外縁を越えて拡張するように構成されてもよく、流路形成リップの内側縁の中に位置し得る膜の部分は、圧縮されなくてもよく、流路は、流路形成空胴および膜によって定義されてもよく、濾過膜は、カットオフ濾過膜でもよく、下側部分の上部シーリング面および上側部分の下部シーリング面は、膜を介して互いに圧力を加えるように構成されてもよく、流路は、約5μL~約50μLの間の容積を有してもよく、リザーバは、フリット支持リップを備えてもよく、装置は、フリットをさらに備えてもよく、フリット支持リップは、フリットを収容するように構成されてもよく、フリットは、多孔性構造を備えてもよく、かつフリットは、剛体であってもよい。
【0013】
本開示の装置は、所望のMWCOより大きいサイズを有する分子を濾過し、および精製するように構成された構成要素の構築物(assembly)でもよい。
【0014】
本開示の装置は、MWCO膜が構造的に頑丈であり続ける限り分解されても、再構築されても、および再利用されてもよい。MWCO膜が損なわれてしまう場合、それは交換されてもよい。
【0015】
本開示の装置は、一定のサイズの分子を精製するために使用してもよく、および同時に緩衝液を交換することができるであろう。さらにまた、緩衝液交換は、特定のタンパク質分子を選択的にアンフォールド(unfold)する、またはあるいは特定のタンパク質分子をフォールド(fold)するために使用され得る。天然の緩衝液が使用されるとき、実験はまた、反応物を試料に導入すること、および非共有結合性分子-分子間相互作用を観察することなどによって装置内で行われ得る。これは、装置それ自体における試料の低容積のために有益であり、実験を相対的に少ない量の試料で行うことが可能になり得る。
【0016】
本開示の装置は、分子を精製するために使用してもよい。精製された分子は、さらなる濃縮または工程を必要とせずにさらなる精製のために十分に高い濃度において溶出され得る。
【0017】
この概要の節の内容は、本開示に対する単純化された導入としてのみ提供され、および特許請求の範囲の範囲を限定するために使用されることは意図されない。これら、並びにその他の構成要素、工程、特徴、目的、利益および利点は、例示的態様の以下の詳細な説明の、および特許請求の範囲の再考により明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、図解の態様を示すが、全ての態様を示すというわけではない。その他の態様は、図解の態様に加えて、またはその代わりに使用され得る。明らか、または不必要であり得る詳細は、省スペースの目的で、またはより有効な図解のために省略され得る。いくつかの態様は、図解において提供されるさらなる構成要素または工程と共に、および/またはいくつかまたは全ての構成要素または工程を伴わずに実践してもよい。異なる図面が同じ数字を含むとき、その数字は、同じまたは類似の構成要素または工程を指す。
【0019】
【
図1】分子濾過装置の一つの態様の透視図の図解である。
【
図2】分子濾過装置の上側部分の一つの態様の断面図の図解である。
【
図3】分子濾過装置の下側部分の一つの態様の断面図の図解である。
【
図4】構築された配置における分子濾過装置の上側部分および下側部分の一つの態様の断面図の図解である。
【
図5】フリットを備える分子濾過装置の一つの態様の断面図の図解である。
【
図6】使用のために調製された分子濾過装置を示す線図である。
【
図7】溶出および解析のために使用される分子濾過装置を示す線図である。
【
図8A】分子濾過装置の異なる流路形状の図解である。
【
図8B】分子濾過装置の異なる流路形状の図解である。
【
図8C】分子濾過装置の異なる流路形状の図解である。
【
図10】分子濾過装置における圧縮された膜についての流速対圧力を示すグラフである。
【
図11】分子濾過装置における圧縮されていない膜についての流速対圧力を示すグラフである。
【
図12】分子濾過装置における異なる流れの向きについての流速対圧力を示すグラフである。
【
図13】分子濾過装置における圧縮されていない1kDa膜についての流速対圧力を示すグラフである。
【
図14】1kDa膜を持つ分子濾過装置における異なる流れの向きについての流速対圧力を示すグラフである。
【
図15】膜安定性における流路の形状の効果を示すグラフである。
【
図16】従来の濾過方法と比較した分子濾過装置の有効性を示すグラフのセットである。
【
図17】分子濾過装置によって処理され、および直接質量分析計へ移動した試料に関連したデータを示すグラフであり、試料は、500ngである。
【
図18】分子濾過装置によって処理され、および直接質量分析計へ移動した試料に関連したデータを示すグラフであり、試料は、250ngである。
【
図19】クロスフロー溶出と比較した逆流溶出の増加した有効性を示すグラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的態様の詳細な説明
本装置、方法およびシステムを開示し、および記述する前に、本方法およびシステムは、特定の装置および方法、特定の構成要素に、または特定の実施態様に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特定の態様のみを記述する目的のためであり、および限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0021】
明細書および添付の特許請求の範囲に使用される、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」および「該(the)」は、文脈が別途明確に示さない限り複数の参照対象を含む。範囲は、「約」一方の特定の値から、および/または「約」他方の特定の値までとして本明細書において表され得る。このような範囲が表されるとき、もう一つの態様は、1つの特定の値から、および/またはその他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用により、値が近似値として表されるとき、特定の値がもう一つの態様を形成することが理解されよう。範囲のそれぞれの終点は、その他の終点に関して、およびその他の終点とは独立しての両方の意味を表すことがさらに理解されるだろう。
【0022】
「随意の」または「随意に」は、その後に記述された事象または状況が生じても、または生じなくてもよく、および記述が前記事象または状況が生じる例およびそれがない例を含むことを意味する。
【0023】
この明細書の記述および特許請求の範囲の全体にわたって、単語「含む」および「含むこと」および「含む(comprises)」などの単語のバリエーションは、「含むが限定されないこと」を意味し、およびたとえば、その他の構成要素、整数または工程を除外することを意図しない。「例示的な」は、「の例」を意味し、および好ましい、または理想的な態様の表示を伝えることを意図しない。「などの」は、限定的意味において使用されないが、説明的目的のために使用される。
【0024】
開示された方法およびシステムを実行するために使用してもよい構成要素を開示してある。これらの、およびその他の構成要素を本明細書において開示してあり、およびこれらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるときに、それぞれの種々の個々の、および総体的な組み合わせ、並びにこれらの順列の具体的言及が明確に開示されなくてもよく、一方でそれぞれが全ての方法およびシステムについて具体的に想定され、および本明細書に記述されるものと理解される。これは、開示された方法における工程を含むが、限定されない本出願の全ての態様に適用する。したがって、実施され得る種々のさらなる工程がある場合、これらのさらなる工程のそれぞれが開示された方法の任意の特定の態様または態様の組み合わせと共に実施されてもよいことが理解される。
【0025】
本方法およびシステムは、好ましい態様の以下の詳細な説明およびその中に含まれる実施例を、並びに図およびこれらの以前の、および以下の記述を参照することによってより容易に理解され得る。
【0026】
以下の記述において、一定の用語は、1つまたは複数の態様の一定の特徴を記述するために使用される。明細書の目的ために、別途特定されない限り、用語「実質的に」は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目または結果の完全な、またはほとんど完全な程度または度合いをいう。たとえば、一つの態様において、筐体内に「実質的に」位置される物体は、物体が完全に筐体内に、またはほとんど完全に筐体内にあることのどちらも意味するだろう。絶対完全性からのずれの正確な許容可能な程度は、いくつかの場合において具体的文脈に依存し得る。しかし、一般的に言って、完全な状態の近さは、あたかも絶対的および全体の完全な状態が得られたのと同じ全体的な結果を有するためだろう。また、「実質的に」の使用は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目または結果の完全な、または完全に近い不足をいうためにネガティブな暗示的意味において使用されるときにも同等に適用できる。
【0027】
本明細書に使用される、用語「およそ」および「約」は、一般に示した数または数の範囲の5%以内の逸脱をいう。一つの態様において、用語「およそ」および「約」は、示した数または数の範囲から0.001~10%の間の逸脱をいい得る。
【0028】
本明細書に使用される、「μl」は、マイクロリットルをいい、「ml」は、ミリリットルをいい、および「ng」は、ナノグラムをいう。
【0029】
種々の態様を、ここで図面を参照して記述してある。以下の記述において、説明のために、多数の具体的詳細を、1つまたは複数の態様の完全な理解を提供するために記載してある。しかし、種々の態様がこれらの具体的詳細を伴わずに実施されてもよいことは明らかであり得る。その他の例において、周知の構造および装置は、これらの態様を記述するのを容易にするためにブロック図形式において示してある。
【0030】
システムに関して示した種々の態様は、多数の構成要素、モジュールなどを備えてもよい。種々のシステムがさらなる構成要素、モジュールなどを備えてもよく、および/または図に関連して考察した構成要素、モジュールなどの全てを備えていなくてもよいことが理解され、および認識されるべきである。また、これらのアプローチの組み合わせを使用してもよい。
【0031】
図1は、分子濾過装置の一つの態様の図解である。
図1に示したように、分子濾過装置100は、上側部分105および下側部分150を備えてもよい。上側部分105は、第1の上部ポート125、第2の上部ポート130、流路形成リップ110および上部固定構造185、190を備えてもよい。下側部分150は、上部シーリング面157、下部ポート165および下部固定構造175、180を備えてもよい。
図3~5に示したように、本明細書において以下により完全に詳述してあるが、下側部分150は、また、フリット部分159、フリット支持リップ155およびリザーバ160を備えてもよい。
【0032】
第1の上部ポート125および第2の上部ポート130は、溶液フロー装置を収容するように構成されてもよく、溶液フロー装置は、フロー装置のそれぞれが溶液の流れの向きを反転させることを含む、上部ポート125、130を介して独立して流速を調整することができ得るように溶液移動構造を介してポンプに接続してもよい。たとえば、溶液の流れは、溶液が第1の上部ポート125から排出され、および第2の上部ポート130によって取り込まれるようであってもよい。あるいは、溶液は、第1および第2の上部ポート125、130両方から排出されてもよい。
【0033】
第1および第2の上部ポート125、130と同様に、下部ポート165は、リザーバ160から溶液を注入する、または引き抜くように構成された下部フロー装置を収容するように構成されてもよい。本明細書に使用される、用語注入する、および引き抜くは、必ずしも溶液の流れを生じさせるための機構を意味するのではなく、むしろ溶液の流れの方向を意味するために使用される。
【0034】
流路形成リップ110は、下部シーリング面115を備える上側部分105の突起であってもよい。流路形成リップ110は、流路形成空胴120を備えてもよく、上側部分105の下部シーリング面115および下側部分150の上部シーリング面157がこれらの間において膜と連結されるときに、その結果流路形成空胴120は、流路を形成する。
【0035】
第1および第2の上部ポート125、130は、第1および第2の上部ポート125、130を介して溶液の流れの方向に応じて流路形成空胴120によって形成された流路への、および/またはそれを介した溶液の流れを可能にする。
【0036】
好ましい配置において、膜は、上部シーリング面157および下部シーリング面115が共に勘合され、および連結されるとき、下側部分150の上部シーリング面157と上側部分105の下部シーリング面115との間に置かれても、および固定されてもよい。膜は、一定のサイズまたは特徴の分子が通過することを可能にし、一方でその他の、しばしばより大きな分子が膜を通過することを妨げる。膜は、流路に液体を注入する上部ポート125、130のために相対的に高い圧力に供されて、圧力が1,500ゲージpsiの高さまで、または0ゲージpsiの低さまで達し得る。一般に、膜がより高い圧力によって構造的に損なわれないことを条件として、膜に加えられる圧力がより高いほど、溶液はより迅速に膜を通過し得る。膜に対する最大の実用可能な圧力を増加する1つの方法は、フリットなどのさらなる強固な支持構造と共に膜を提供することである。
【0037】
一つの態様において、第1および第2の上部ポート125、130は、膜および流路形成空胴120によって形成される流路内に、その他の、望ましくない分子と共に、単離および精製のための所望の分子を含む溶液を注入するように構成されてもよい。溶液が膜および流路形成空胴120によって形成される流路に注入されるにつれて、圧力は上昇し、および溶液は、膜を通過することができる分子と共に、膜を通過してもよく、それによって、リザーバ160へ通過し(
図3に示した)、および次いで下部ポート165を介して出て行く。溶液の所望量が膜を通過した後で、所望の分子は、膜および流路形成空胴120によって形成される流路において、および膜上で濃縮され得る。所望の分子を溶出させるために、第2の上部ポート130および下部ポート165の流れの向きは、反転してもよく、その結果溶液は、それぞれリザーバ160および下部ポート165および第1の上部ポート125を介して膜および流路形成空胴120によって形成される流路に注入されてもよく、および溶液は、第2の上部ポート130から溶出させられてもよい。あるいは、第1の上部ポート125は、流れることができなくてもよく、その結果、流れは、単に下部ポート165から第2の上部ポート130までのみである。この工程によって、所望の分子を有する溶液は、溶液または緩衝液の相対的に小さな容積で第2の上部ポート130を介して溶出され得る。
【0038】
好ましい態様において、相対的に大きな容積における分子の非常に希釈した量を、所望の分子の実質的に全てが膜および流路形成空胴120によって形成される流路にあるまで、第1および第2の上部ポート125、130を介して押してもよい。次いで、所望の分子を洗浄し、および膜を通過することができる望ましくない分子の全てが廃棄物容器などへと確実に膜を通過させるために、所望の特徴を有する緩衝溶液を、第1および第2の上部ポート125、130を通して流してもよい。その時点で、ここで濃縮され、および精製された所望の分子を、第2の上部ポート130を介して回収してもよい。次いで、緩衝液容器を下部ポート165に接続してリザーバ160に緩衝液を注入してもよく、その結果緩衝溶液における所望の分子は、収集およびさらなる使用のために第2の上部ポート130に溶出される。
【0039】
上側部分105および下側部分150は、ステンレス鋼または適切な強度および一般的な非反応性のその他の材料で作製してもよい。膜は、定義されたサイズおよび分布の孔径を生じ得る再生セルロース、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロースまたはその他の材料で作製してもよい。
【0040】
図2は、分子濾過装置の上側部分の一つの態様の断面図の図解である。
図2に示したように、第1の上部フロー装置107および第2の上部フロー装置109は、それぞれ第1の上部ポート125および第2の上部ポート130を連結するように構成されてもよい。流路形成空胴120は、上部105に対して容積において極めて小さくてもよい。流路形成空胴120は、約5μL~約50μLであってもよい。一つの態様において、流路形成空胴120は、約14.6μLであってもよい。
【0041】
図3は、分子濾過装置の下側部分の一つの態様の断面図の図解である。
図3に示したように、下側部分150は、上部シーリング面157、下部ポート135の上端、フリット収容部分159、フリット支持リップ155およびリザーバ160を備えてもよい。下部ポート165の下部末端は、下部フロー装置を収容するように構成されてもよい。
【0042】
図4は、構築された配置における分子濾過装置の上側部分および下側部分の一つの態様の断面図の図解である。
図4に示したように、第1の上部フロー装置107および第2の上部フロー装置109は、流路形成空胴120に対して角度を付けていてもよい。一つの態様において、上部フロー装置107、109は、上側部分105の底表面に対して15~165度の間であってもよい。
【0043】
また、分子濾過装置100は、加圧メカニズム197を備えてもよく、それは上側部分105および下側部分150が互いに向かって加圧するように力を加えるように構成されてもよい。この加圧メカニズム197は、上側部分105と下側部分150との間に置かれた膜に特定の圧力を加えるために使用され得る。圧力は、止めねじ196を回すことによって調整され得る。
【0044】
図5は、フリットを備える分子濾過装置の一つの態様の断面図の図解である。
図5に示したように、上側部分105および下側部分150が共に勘合され、および連結されるとき、膜198およびフリット199は、上側部分105と下側部分150との間で圧縮され得る。一つの態様において、分子濾過装置100は、下側部分150のフリット支持リップ159上にフリット199を置くことによって構築されてもよい。フリット199の上部の上に、所望の透過性の膜198が置かれてもよい。次いで、膜198の上部の上に、流路形成リップ110、111が膜198を連結するように、上側部分105を置いてもよい。フリット199は、膜198のものより高い透過性を好ましくは有してもよい。
図5に示したように、流路120は、上側部分105、流路形成リップ110、111および膜198によって封入された空胴でもよく、膜198は、フリット199によって構造的に支持されてもよい。
【0045】
図6は、使用のために調製される分子濾過装置を示す線図である。
図6に示したように、分子濾過システム600の一つの態様は、注入機構605、注入バルブ610、分子濾過装置615、第1のポンプ630、第2のポンプ625、第3のポンプ620、溶媒容器640、廃棄物容器645および解析機械650を備えてもよい。
【0046】
一つの態様において、注入機構605は、注射器でもよく、および洗浄プロトコルの間、注入バルブ610を介してきれいな緩衝溶液を流すために使用してもよい。ポンプ620、625、630は、フローライン、分子濾過装置615を通って、および廃棄物容器645内にきれいな緩衝溶液を流すことによって全システムをきれいにするように構成されてもよい。きれいな緩衝液がフローラインを通って流された後、試料がシステムに導入されてもよい。具体的には、濾過および精製のための分子を含む試料を注入機構605に充填しても、および注入バルブ610に注入してもよい。次いで、第1のポンプ630は、第1の上部ポートを経て分子濾過装置615に試料をポンプで送り込んでもよい。およそ同時に、第2のポンプ625は、第2の上部ポートを経て分子濾過装置615に溶媒容器640から緩衝溶液をポンプで送り込んでもよく、および生じる廃棄物溶液は、解析機械650にポンプで送り込んでもよい。一旦試料が完全に充填され、および洗浄されると、その結果分子濾過装置615の膜を通過することができる不純物が実質的に、または完全に除去され、次いで分子濾過装置615において、具体的には流路において残ってもよいものは、十分に純粋な試料であり得る。
【0047】
図7は、溶出および解析のための使用における分子濾過装置を示す線図である。分子濾過装置615が十分に純粋な試料を含んだ後、ポンプ620、625、630の流れの方向を、さらなる解析を可能にするために高濃度で試料を効率的に溶出させるために修正してもよい。具体的には、第2のポンプ625は、ポンプで送り込むことを止めてもよく、これにより分子濾過装置615の第2のポートを効率的に封鎖する。次いで、溶液を分子濾過装置615の下部ポートに、および次いで第1の上部ポートの外に、および注入バルブ610内にポンプで送り込んでもよい。次いで、注入バルブ610は、さらなる解析のために解析機械650にここで精製した試料を直接ポンプで送り込むように構成されてもよい。
図6および7に示した全ての工程は、使いやすさおよび整合性のために自動化してもよい。解析機械650は、質量分析計などの十分に純粋な試料が解析され得る任意の機械でもよい。
【0048】
一つの態様において、一つ以上の分子濾過装置615を並行して使用してもよい。一つ以上の分子濾過装置615が使用されるとき、試料は、およそ21秒で充填されても、およそ38秒で集中させられても/洗浄されても、およびおよそ33秒で溶出されてもよい。加えて、試料は、第1の分子濾過装置に充填されても/集中させられてもよく、一方で第2の分子濾過装置において試料が溶出される。別の態様において、分子濾過装置は、分子濾過装置における試料の処理量を増加させるために、試料が溶出される間に充填することを薦めてもよい。そのうえさらに他の態様において、さらなる分子濾過装置615を、ハードウェアが前記さらなる分子濾過装置615を支持するために適切であることを条件として使用してもよい。
【0049】
図8A~Cは、分子濾過装置の異なる流路形状の図解である。
【0050】
図8Aに示したように、上側部分805は、実質的に丸い形状である流路形成空胴812を備えてもよい。この態様において、上側部分805は、単一の上部ポート810を有してもよい。流路形成空胴812の形状は、流路形成リップ820およびその下部シーリング面815によって実質的に定義されてもよい。また、上側部分805は、固定構造825、830を備えてもよい。
【0051】
図8Bに示したように、上側部分835は、実質的に細長い涙滴状形状である流路形成空胴845を備えてもよい。この態様において、上側部分835は、2つの上部ポート840、842を有してもよい。流路形成空胴845の形状は、流路形成リップ855およびその下部シーリング面850によって実質的に定義されてもよい。また、上側部分835は、固定構造860、862を備えてもよい。
【0052】
図8Cに示したように、上側部分865は、実質的に細長い卵形の形状であり得る流路形成空胴875を備えてもよい。この態様において、上側部分865は、2つの上部ポート(port)870、872を有してもよい。流路形成空胴875の形状は、流路形成リップ885およびその下部シーリング面880によって実質的に定義されてもよい。また、上側部分865は、固定構造890、892を備えてもよい。
【0053】
図9は、分子濾過装置の流路を示す図解である。
図9に示したように、流路920は、第1の上部ポート925および第2の上部ポート930を経てその中にポンプで送り込まれる溶液を有してもよく、これは分子に第1の上部ポート925および第2の上部ポート930によって生じる流れの実質的な中間点の近くでバンド921を作り出させ得る。次いで、溶液の流れは、溶媒を含む、特定のサイズより小さな分子に膜998およびフリット999を越え、およびリザーバ960または流出機構内に通過し得る。バンド921の生成により、膜998を相対的に詰まりが除かれたままにすることができ、およびバンド921において捕えられた分子の選りすぐれた濾過、洗浄および濃縮が可能になる。
【0054】
実験1:圧縮された膜における圧力試験
本開示の装置によって圧縮された膜における圧力の効果を試験した。10kDa膜を分子濾過装置に取り付け、および流速を、溶液の流れによる膜に対する圧力が100バールに達するまで増加した。この実験の結果を
図10に示す。重要なことに、本開示の分子濾過装置によって圧縮された膜は、流速を増加させることによって観察したときに圧力測定を増加することができるためには、100バールまで加圧されなければならないことが発見された。これに対する1つの可能性のある説明は、膜がはめられたスパンサポートは、粉砕されて背圧の増加をまねいたであろうことである。
【0055】
実験2:非加圧膜の挙動
圧縮されていない膜における圧力の効果を試験した。10kDa膜を分子濾過装置に取り付け、および流速を増加した。この実験の結果を
図11に示す。重要なことに、圧縮されていない膜によって受ける圧力は、上文の実験1の圧縮膜と比較して、膜が圧縮された時より有意に小さいということが発見された。加えて、膜が圧縮されなかったときに、実験の温度は、流速と圧力との間の関係に対して有意に小さな効果を有した。データは、有用な順方向流速が約500μL/分であり得ることを示す。
【0056】
実験3:膜を介した逆方向の流れ
異なる流速にて溶液の流れを反転させる効果を測定した。10kDa膜を分子濾過装置に取り付け、および流れは、順方向、逆方向にし、および次いで、流速を増加して再度順方向にした。この実験の結果を
図12に示す。200~300μL/分の間の逆流速であったときに破壊を受けた膜を適用した。したがって、有用な逆流速は100~200μL/分の間であり、これは、現在の2.1mmのカラムクロマトグラフィー法にある程度匹敵し得る。
【0057】
実験4:圧縮されていない1kDa膜を介した順方向の流れ
圧縮されていない膜における圧力の効果を試験した。1kDa膜を分子濾過装置に取り付け、および流速を増加した。この実験の結果を
図13に示す。1kDa膜は、同様の流速にて10kDa膜によって受けたおよそ10倍の圧力を受けた。1kDa膜および10kDa膜での実験は、10kDa膜の流速が1kDa膜のものの10倍だったときに同様の圧力を受けた。
【0058】
実験5:1kDa膜を介した逆方向の流れ
異なる流速にて溶液の流れを反転させる効果を測定した。1kDa膜を分子濾過装置に取り付け、および流れを順方向、逆方向にし、および次いで、流速を増加して再度順方向にした。この実験の結果を
図14に示す。20~30μL/分の間の逆流速であったときに破壊を受けた膜を適用した。したがって、有用な流速は、順方向および逆方向に、10~20μL/分の間であった。実験3と同様に、データは、膜が10バール前後で破裂されることを示す。
【0059】
実験6:様々な流路形状の逆流分析
流路形状の効果および異なる流速における膜安定性に対するその効果を測定した。この実験の結果を
図15に示す。
図15に示したように、流路の形状は、流れが構造的な破壊を受ける前に反転したときに膜が許容することができ得る圧力の量に対して著しい効果を有する。特に、細長い形の流路は、最も弾力的であり、その一方で丸い円錐状形状の流路は、試験した3つの流路形状で最も弾力的でない。涙滴状形状の流路の弾性は、細長い形状のものと丸い円錐形形状流路との間である。細長い流路は、0.03mm最大全長および150μm流路の高さを有する。涙滴状流路は、0.125mm最大全長および250μm流路の高さを有する。丸い流路は、0.343mm最大全長および250μm~450μmの円錐状の高さまたは平らな150μm流路の高さを有する。
【0060】
一般に、全長の増加は、膜より上にフリットまたは支持構造が無いことにより生じる膜リフトのために、下部逆方向膜流速を生じる。
【0061】
実験7:分子濾過装置および標準的クロマトグラフィーの比較
分子濾過装置および標準的クロマトグラフィーの比較を行った。分子濾過装置およびクロマトグラフィーの両方をThermo Scientific(登録商標)によって製造されたQ Exactive(登録商標)Plus質量分析計によって解析した。
【0062】
クロマトグラフィーは以下を含む。:2.1mm i.d.アジレントPLRP-Sカラム、65℃にて、100ngの試料1605を有する5μLの試料注入容積、100μL/分の流速、A:0.1%FA B:ACN+0.1%FA、および勾配:0分20%b;2分20%;4.75分65%;5分80%b;5.5分15%;5.75 85%;6分15%;6.25 85%;6.5分15%。
【0063】
分子濾過装置は、100μL/分の流速を有し、100μL試料注入容積は、100ngの試料1600を有する。
【0064】
図16に示したように、クロマトグラフィー法が非常により小さな試料注入容積を含んだという事実にもかかわらず、分子濾過容積は、クロマトグラフィーのものに類似のバンド内に所望の試料を溶出した。さらに、分子濾過装置は、クロマトグラフィー法より非常に迅速に試料を溶出させることができた。したがって、分子濾過装置は、液体クロマトグラフィーを含む伝統的方法よりも有意に多くの希薄試料を解析する際に効率が高い。
【0065】
実験8:分子濾過装置から質量分析計まで
賦形剤におけるハーセプチンの試料を分子濾過装置上に充填し、およびQ Exactive(登録商標)Plus質量分析計によって解析した。250ngまたは500ngの試料を含む5μLの容積を分子濾過装置上に充填し、300μLで30秒間洗浄し、および100μL/分の割合にて55μLで溶出した。試料を30a.u.シース;10a.u. aux;300のC HESIプローブ;275のCイオントランスファーチューブ;100 V SID;10 V HCD;圧力調節器設定:4;5uscans;およびm/z 200にて17,500の分解能で質量分析計上へ直接溶出した。500ngを充填の結果を
図17に示し、および250ngを充填の結果を
図18に示す。
【0066】
充填したピークの比率は、0.508であり、これは定量的反応を示し、および解析の伝統的方法に対して優れたデータを提供した。さらに、分子濾過装置における試料の充填および洗浄の性質は、異なる溶媒を指定することによって実行毎に使用者が変性および天然の形態の間で変化することができるようになり、五つ(5)までの異なる溶媒を、任意の所与の時間にてシステムに接続し得る。
【0067】
実験9:逆流溶出対クロスフロー溶出
分子濾過装置を利用する間の逆流溶出およびクロスフロー溶出によって完了した溶出の間で比較を行った。この溶出比較の結果を
図19に示す。
図19に示したように、逆流溶出は、単一の鋭いピーク1900を作り出し、およびクロスフロー溶出は、鋭いピークに続く尾部末端1905を作り出す。両方の方法は、同じ試料、溶液、圧力およびその他の条件を使用して行い、および唯一の相違は、溶出法であった。具体的には、逆流溶出は、分子濾過装置の第1の上部ポートを介した流れを妨げること、および分子濾過装置の下部ポートを介した溶液の流れを反転させることによって行われ、その結果試料が第2の上部ポートを経て流路から溶出される。クロスフロー溶出では、流れが分子濾過装置の下部ポートを通過することを妨げ、その結果試料が第2の上部ポートを介して溶出される。
【0068】
好ましい態様の前述の記述は、図解および記述の目的のために示した。複数の態様が開示されるが、さらに他の態様は、上記の詳細な説明から当業者にとって明らかになるだろう。これらの態様は、すべて保護の精神と範囲から逸脱することなく、種々の明らかな側面において修正することができる。したがって、詳細な説明は、本質的に説明的として、および限定的でないと考えられるべきである。また、明確に詳述されないが、1つまたは複数の態様は、互いに組み合わせて、または併用して実施してもよい。さらにまた、特定の態様に対する言及または非言及は、保護の範囲を限定すると解釈されるべきでない。保護の範囲がこの詳細な説明によってでなく、本願明細書に追加される特許請求の範囲および特許請求の範囲に対する均等物によって限定されることが意図される。
【0069】
直前に上で述べた場合を除いて、何も明示されていない、または図示されていないものは、それが特許請求の範囲に詳述される、または詳述されないかどうかにかかわらず、公共に対し、任意の構成要素、工程、特徴、目的、利益、利点または均等物の献呈・を生じさせることが意図され、または解釈されるべきではない。
【0070】
開示された態様の以前の記述は、任意の当業者が本開示を行い、または使用することができるように提供される。これらの態様に対する種々の修正は、容易に当業者にとって明らかだろうし、および本明細書において定義される一般的な原則は、開示の精神または範囲を逸脱しない範囲でその他の態様に適用されてもよい。したがって、本開示は、本明細書において示される態様に限定されるように意図されていないが、本明細書において開示される原則および新規の特徴に合わせた最も広い範囲を与えられるべきである。
【0071】
別途明白に明示されていない限り、本明細書に記載される任意の方法が、その工程が特定の順番で行われることを必要とするものとして解釈されることは少しも意図されていない。したがって、方法請求項は、その工程によって行われる順番を実際に詳述しない、または工程が特定の順番に限定されるべきであることは、特許請求の範囲または記述において別途特に明示されず、任意の点において、順番が推定されることは少しも意図されない。解釈のための考えられるあらゆる非明確な基礎のためのこの保持は:工程または動作フローの配置に関する論理の問題;文法の組織または句読点から由来する明白な意味;明細書に記述される番号または態様のタイプを含む。
【0072】
種々の修正およびバリエーションが範囲または精神を逸脱しない範囲でなされてもよいことは当業者にとって明らかだろう。その他の態様は、本明細書において開示される明細書および慣習の考慮から当業者にとって明らかだろう。真の範囲および精神が以下の特許請求の範囲によって示されるように、明細書および実施例が例示的としてのみ考慮されることが意図される。