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特許7393028眼感染症を予防するための抗生物質溶液および注射方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】眼感染症を予防するための抗生物質溶液および注射方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/22 20060101AFI20231129BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 38/14 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
A61K47/22
A61F9/007 170
A61K9/08
A61K31/4709
A61K31/546
A61K38/14
A61K45/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021532258
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019016144
(87)【国際公開番号】W WO2020036624
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】16/101,828
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521066271
【氏名又は名称】アヒー,ジェイソン
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アヒー,ジェイソン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0214454(US,A1)
【文献】特開2014-177413(JP,A)
【文献】特開2014-177414(JP,A)
【文献】特表2010-528001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/22
A61F 9/007
A61K 9/08
A61K 31/4709
A61K 31/546
A61K 38/14
A61K 45/00
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 31/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術後の眼内炎を予防するために眼の前眼部に投与された量が視覚化される抗生物質溶液であって、
前記抗生物質溶液は眼の前眼部に注射され、前記抗生物質溶液は、眼内の前記溶液の
視覚化をもたらす、眼の房水を対比させるための着色剤を含み、前記着色剤は手術後に眼の中に残前記着色剤がシアノコバラミンからなる、
抗生物質溶液。
【請求項2】
前記抗生物質溶液がモキシフロキサシンを含む、請求項1に記載の抗生物質溶液。
【請求項3】
眼に注射される前記抗生物質溶液が、200から600マイクログラムの範囲のモキシフロキサシンを含む、請求項2に記載の抗生物質溶液。
【請求項4】
前記抗生物質溶液がセフロキシムを含む、請求項1に記載の抗生物質溶液。
【請求項5】
前記抗生物質溶液がバンコマイシンを含む、請求項1に記載の抗生物質溶液。
【請求項6】
前記抗生物質溶液が、モキシフロキサシン、セフロキシム、およびバンコマイシンの組み合わせを含む、請求項1に記載の抗生物質溶液。
【請求項7】
前記抗生物質溶液が抗炎症剤を含む、請求項1に記載の抗生物質溶液。
【請求項8】
手術後の眼内炎を予防するために眼の前眼部に投与された量が視覚化される抗生物質溶液であって、
眼科手術中に前記抗生物質溶液は眼の前眼部に注射され、前記抗生物質溶液が
モキシフロキサシンと
眼の房水を対比させるための着色剤としてのシアノコバラミンとを含み、
前記シアノコバラミンにより、外科医は、
i. 前記抗生物質溶液が眼の中の正しい領域に注射されたこと、および
ii. 前記抗生物質溶液が眼から漏れているかどうか
を確認することができ、
ここで、前記抗生物質溶液と前記着色剤は手術後に眼の中に残る、
抗生物質溶液。
【請求項9】
手術後の眼内炎の予防に使用するための抗生物質溶液であって、
前記予防は、
前記抗生物質溶液を眼の前眼部に注射すること、および、
眼の前眼部に注射された前記抗生物質溶液の量を視覚化すること、
を含み、
ここで、前記抗生物質溶液は、眼内の前記溶液の視覚化をもたらす、眼の房水を対比させるための着色剤を含み、前記着色剤は手術後に眼の中に残
前記着色剤がシアノコバラミンからなる、
抗生物質溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月13日に出願された米国特許出願第16/101,828号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、眼用の抗生物質に関する。より具体的には、本開示は、手術中に眼に(すなわち、前房内に)注射される抗生物質溶液に関する。
【背景技術】
【0003】
眼科手術は眼科医によって頻繁に行われ、手術前、手術中、および手術後に眼に特別なケアと注意が必要である。すべての眼内手術で起こりうる合併症は眼内炎であり、これは、感染による眼の内膜の炎症である。眼内炎は失明を引き起こす可能性のある深刻な疾病である。眼内炎が起こると、網膜硝子体専門医は通常、バンコマイシンやセフタジジムを含み得る抗生物質を硝子体内に注射する。しかし、眼が感染した期間によって、患者は依然として眼の痛みを経験し、さらなる手術が必要になる場合がある。したがって、眼科医は感染のリスクを減らすためにさまざまな方法を使用しており、合併症の眼内炎を回避することが望ましい。
【0004】
眼内炎を予防するために、現在の標準処置には、手術前後に点眼薬を使用することが含まれる。点眼薬は通常、抗生物質、ステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬の組み合わせである。一般に、点眼薬は1日3から4回、最大1か月間使用される。これには、限定されないが、点眼スケジュールの不遵守の可能性、高齢患者に見られる関節炎やその他の一般的な身体的な病気などによる点眼の困難、処方点眼薬の高額な費用、点眼薬の紛失または置き忘れなどのいくつかの問題が含まれている。
【0005】
点眼薬に問題が伴うので、他の方法が導入されてきた。現在の方法の1つは、手術中に後眼部に配合製剤(例えば、トリアムシノロンアセトニドおよびモキシフロキサシン塩酸塩)を注射することである。しかし、製剤を眼の後眼部に適切に注射することは困難であるだけでなく、とりわけ、小帯断裂、後眼部眼圧、および網膜毒性または剥離などの他の合併症のリスクを高める。これらの理由から、手術後の点眼薬は標準のままである。
【0006】
これらの問題を克服するための努力において、発明者は、以前の親出願では、抗生物質溶液およびその溶液を眼の前眼部に注射する方法を開示した。この方法は効果的であることが証明されているが、他の問題が明らかになった。たとえば、房水と抗生物質溶液は両方も透明な液体である。その結果、抗生物質溶液のどれだけが眼に入ったか、そしてそれが正しい領域に注射されたかどうかを判断するのには困難がある。さらに、抗生物質の液体が眼から漏れているかどうかを判断することは不可能である。上記の問題が原因で、正確な投薬を確実にすることは困難であり、それゆえ、外科医がこの方法を使用する可能性は低い。それに応じて、患者の眼内炎のリスクを低減し、患者に対する過失および患者のコスト負担を排除し、眼の後眼部への注射を不要にし、外科医が:1)抗生物質溶液が正しい領域で眼に浸透すること、および2)抗生物質溶液が眼から漏れていないことを、迅速かつ容易に判断できる、抗生物質溶液および送達方法が以前として必要である。本開示は、これらおよび他の課題を解決しようとする。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、手術中の処置において眼に注射するための抗生物質溶液は、モキシフロキサシンの0.1%(1mg/ml)溶液および100~1000mg/mlのシアノコバラミン(ビタミンB12)を含む。一実施形態では、抗生物質溶液は、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。コバルト分子を有するため、これらのコバラミンははっきりと赤色をしている。その結果、抗生物質溶液は赤色になり、房水に対して簡単に見分けがつくようになる。
【0008】
一実施形態では、手術中の処置において眼に注射するための抗生物質溶液は、セフロキシムの1%(10mg/ml)溶液および100~1000mg/mlのシアノコバラミンを含む。
【0009】
一実施形態では、手術中の処置において眼に注射するための抗生物質溶液は、バンコマイシンの1%(10mg/ml)溶液および100~1000mg/mlのシアノコバラミンを含む。
【0010】
一実施形態では、抗生物質溶液は、モキシフロキサシン、セフロキシム、バンコマイシン、またはそれらのいくつかの組み合わせ、および着色剤を含む。一実施形態では、着色剤はコバラミンである。一実施形態では、着色剤は生体染色色素であり得る。一実施形態では、着色剤は房水と適合性のある任意の物質であり得る。
【0011】
一実施形態では、手術後の眼内炎を予防する方法は、着色抗生物質溶液を手術中に眼の前眼部に注射する工程であって、その抗生物質溶液が、モキシフロキサシン、セフロキシム、バンコマイシン、またはそれらのいくつかの組み合わせを含む、工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、例示的な実施形態のみを示しており、範囲を限定すると見なされるべきではない。本明細書における「本発明」への言及は、本発明を、本明細書に開示される例示的な実施形態の1つ以上の正確な特徴または工程に制限または限定することを意図するものではない。「一実施形態」、「実施形態」、「さまざまな実施形態」などへの言及は、そのように記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることが示されているが、すべての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、または特性を含むわけではない。さらに、「一実施形態では」または「実施形態では」という句の繰り返しの使用は、それらが可能であっても、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。
【0013】
これに応じて、開示される特定の配置は、例示のみを意図しており、本発明の範囲に関して限定するものではない。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的ではない。本明細書で特に明示的に定義されていない限り、そのような用語は、広範で通常の慣習的な意味を与えられ、関連する産業に適用される意味と矛盾せず、以下に説明する特定の実施形態のいずれに限定されないことを意図している。本明細書で使用される場合、冠詞「a」は、1つ以上の項目を含むことを意図している。本明細書で項目のリストを結合するために使用される場合、「または」という用語は、項目の少なくとも1つを意味するが、リストの複数の項目を除外するものではない。例示的な方法またはプロセスについては、本明細書に記載の工程の順序および/または配置は例示的なものであり、限定的なものではない。
【0014】
そのようなプロセスまたは方法の工程は、特定の順序または配置で実行されることに限定されないことを理解されたい。確かに、開示されたプロセスまたは方法の工程は、一般に、本発明の範囲内にありながら、さまざまな順序および配置で実行することができる。
【0015】
「結合された」という用語は、2つ以上の要素が直接物理的に接触していることを意味する場合がある。しかし、「結合された」とは、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、それでも互いに協力または相互作用していることを意味する場合もある。
【0016】
実施形態に関して使用される「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は同義語であり、一般に「開放的な」用語として意図されている(例えば、「含んでいる(including)」という用語は、「~を含んでいるが、~に限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「~を少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「~を含むが、~に限定されない」などと解釈されるべきである)。
【0017】
背景技術で説明したように、患者の眼内炎のリスクを低減し、患者に対する過失および患者のコスト負担を排除し、眼の後眼部への注射を不要にし、外科医が:1)抗生物質溶液が正しい領域で眼に浸透すること、および2)抗生物質溶液が眼から漏れていないことを、迅速かつ容易に判断できる、抗生物質溶液および送達方法が必要である。以下の説明から理解されるように、本明細書に記載の溶液および方法は、これらの課題および他の課題を解決する。
【0018】
一実施形態では、手術中の処置において眼に注射するための抗生物質溶液は、モキシフロキサシンおよびコバラミンを含む。コバラミンは、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、または任意の組み合わせであり得る。一実施形態では、抗生物質溶液は、モキシフロキサシン(INN-国際一般名)の0.1%(1mg/ml)溶液を含む。モキシフロキサシンは以下の構造を有する:
【0019】
【化1】
【0020】
モキシフロキサシンの構造、調製、および物理的特性に関する、さらなる詳細は、米国特許第4,990,517号および第5,607,942号、ならびにドイツ出願第DE19937116号で確認することができ、これらの内容全体を参照として本明細書に組み込む。一実施形態では、抗生物質溶液は、シアノコバラミンを100~1000mg/ml、または得られた抗生物質溶液を着色または染色するのに十分な量で含み得る。抗生物質溶液は、得られる溶液が眼の房水および眼組織と適合性のある浸透圧値を有する限り、任意の適切な担体流体(例えば、水、エチルアルコール、またはプロピレングリコールなどの液体希釈剤)をさらに含み得る。一実施形態では、抗生物質溶液は、防腐剤を必要とせずに、単回投与バイアルの中に調製および保存される。これにより、外科医は無菌環境で正確な濃度を提供できる。さらに、抗生物質溶液がシアノコバラミンを含むので、得られる抗生物質溶液は赤色である。これにより、眼に注射するときに外科医への視覚的な効果が向上する。例えば、外科医は、白内障手術中の処置の間に、約0.3ミリリットルの抗生物質溶液(例えば、モキシフロキサシンおよびシアノコバラミンを含む溶液)を眼の前眼部に注射する。抗生物質溶液が赤色であるため、外科医は注射が適所に行われること、および抗生物質溶液のいずれかが眼から漏れているかどうかを簡単に判断することができる。眼組織を染色し、洗い流す必要がある生体染色色素とは異なり、赤色(シアノコバラミン)の抗生物質溶液は組織を染色せずに、眼に残る(すなわち、洗い流されない)。その結果、患者自身が抗生物質の点眼薬を投与することなく、炎症と眼内炎のリスクが低下または排除される。患者に対する過失をなくすことで、眼内炎を引き起こす可能性が大幅に減少する。さらに、注射は眼の前眼部に行われるため、この処置は外科医が行うのに非常に簡単なものであり、眼の後眼部に注射するときに発生する可能性のある合併症のリスクを減らす。このように、本方法には、先行技術に比べて顕著な改善が認められる。モキシフロキサシンは、経口投与、静脈内投与、および眼の局所への投与に使用されている。しかし、モキシフロキサシンは、眼の前眼部への注射に使用も適合もされておらず、当技術分野において、眼だけに対する局所用剤(例えば、点眼薬)として販売されている。それにもかかわらず、モキシフロキサシンを前眼部に注射すると、有益な、さらには驚くべき結果が得られ、眼内炎のリスクが大幅に低減されるかまたは完全に排除される。さらに、眼内炎を治療するためのモキシフロキサシンなどの抗生物質の他の投与経路は効果がないことが証明された。これは、十分な量の抗生物質が眼に浸透するのを妨げる血液眼関門が原因である。したがって、本明細書に開示される眼の前眼部への直接注射の方法により、この問題を解決する。
【0021】
前述のように、外科医は、眼を洗い流す、またはその他の方法によって房水から赤色の抗生物質溶液を除去しない。代わりに、シアノコバラミンは房水と同様に血流に吸収される。着色剤を眼に残すことは、当技術分野におけるあらゆる教えとは正反対である。言い換えれば、外科医はこれまで、外科手術の処置を容易にするために、眼の前嚢を染色するインドシアニングリーン、フルオレセイン、およびトリパンブルーなどの色素を使用していた。例えば、白内障手術のために眼を切開した後、房水による生体染色色素の希釈を最小限に抑えるために、眼の前房に気泡を注射することが推奨されている。次に、先が鈍いカニューレを使用して、トリパンブルーは水晶体前嚢に適用される。そして、前房を平衡塩類溶液で洗浄して過剰な色素を除去し、その後、嚢切開を行う。生体染色色素は組織を染色するためのものであり、過剰な色素はすぐに洗い流す必要がある。対照的に、抗生物質溶液は組織を染色することを目的しておらず、眼から洗い流されない。むしろ、着色抗生物質溶液は眼の房水に注射され、眼の中に残り、血流によって吸収される。眼の前眼部の房水に注射されるともに、手術後も眼に残るタイプの着色溶液または色素を教示または示唆するものは当技術分野に存在しない。さらに、着色抗生物質溶液を手術後に眼に残すことも、洗い流しが必要な色素を使用する標準的な慣行に反する。
【0022】
上記で0.3ミリリットルの溶液を使用する例を示したが、注射される量は、溶液中のモキシフロキサシンの濃度に応じて変動させてもよいことを理解されたい。好ましくは、抗生物質溶液は、200~600マイクログラムの範囲のモキシフロキサシンを含む。上記の例では、0.3ミリリットルの0.1%(1mg/ml)モキシフロキサシン溶液が注射された場合、眼に注射されるモキシフロキサシンの総濃度は300マイクログラムである。それにもかかわらず、200マイクログラムから600マイクログラムまでの他のモキシフロキサシン濃度は予備結果に効果的であることが示されている。それに応じて、上記の例では、注射される量は、モキシフロキサシンの濃度および所望の投与量に応じて変動させてもよい。さらに、シアノコバラミンをいくつの例で使用したが、他のコバラミンを使用してもよい。例えば、抗生物質溶液は、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。さらに、コバラミンが好ましい着色剤であり、一方、房水に適合するとともに、眼組織を染色しない限りは、他の着色剤を使用することもできる。一実施形態では、眼に点入された生体染色色素の量が組織を染色しない限り、生体染色色素を着色剤として使用することができる。さらに、「着色」という用語は、得られる抗生物質溶液が不透明である必要があることを意味するものではない。対照的に、得られる抗生物質溶液は、眼の透明な房水と対比させるのに十分な着色しか必要としない。
【0023】
上記の抗生物質溶液はモキシフロキサシンの使用を想定しているが、他の抗生物質を個別にまたは組み合わせて使用できることを理解されたい。一実施形態では、手術中の処置において眼の前眼部に注射するための抗生物質溶液は、セフロキシムの1%(10mg/ml)溶液を含む。セフロキシムは以下の構造を有する:
【0024】
【化2】
【0025】
一実施形態では、手術中の処置において眼の前眼部に注射するための抗生物質溶液は、バンコマイシンの1%(10mg/ml)溶液を含む。バンコマイシンは以下の構造を有する:
【0026】
【化3】
【0027】
上記の溶液は、活性抗生物質または化合物と1つまたは複数の賦形剤(例えば、水、エチルアルコール、またはプロピレングリコールなどの液体希釈剤)とを着色剤とともに混合することなどの既知の方法によって、通常の仕方で調製される。次に、最終溶液を密封し、当技術分野で知られている使い捨てバイアルに保存することができ、そのバイアルは、着色ガラスであることが好ましいが、他の適切な方法および保存バイアルでもよい。眼への注射に適した他の抗生物質溶液は、「Pharmaceutical ophthalmic compositions and methods for fabricating thereof」と題された米国特許出願第15/148,574号(公開第US20160243031A1号)に開示されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0028】
一実施形態では、手術後の眼内炎を予防する方法は、手術中に眼の前眼部に着色抗生物質溶液を注射する工程であって、その抗生物質が、モキシフロキサシン、セフロキシム、バンコマイシン、またはそれらのいくつかの組み合わせ、および着色剤を含む、工程を含む。一実施形態では、着色剤はコバラミンを含む。本明細書に記載の抗生物質溶液は、ヒトおよび動物の両方に使用できることを理解されたい。
【0029】
本発明の抗生物質溶液はまた、1つ以上の抗炎症剤を含んでもよく、この抗炎症剤はステロイド性または非ステロイド性であり得る。本明細書で使用するためのステロイド性抗炎症剤の例は、グルココルチコイドである。
【0030】
上記の開示から明らかなように、抗生物質溶液およびその送達方法は、当技術分野における課題を解決する、例えば、外科医による投与を容易にし(色の対比による適切な投薬の信頼性の向上を含む)、手術合併症のリスクを低減し、眼内炎のリスクを低減し、および患者とその保険会社へのコストと負担を低減する。着色剤がないと、手術ごとに正確で一貫した投与を確実にすることは、不可能ではないにしても困難である。したがって、シアノコバラミンなどの着色剤を加えると、抗生物質溶液と房水との色対比が得られ、外科医は自信を持って投与の場所と投与量を把握するだけでなく、漏れを判断することができる。
【0031】
例示的な実施形態は上述されている。この説明で使用されている要素、行為、または指示は、明確に説明されていない限り、重要、必要、緊要、または不可欠であると解釈されるべきではない。わずかな例示的な実施形態のみが本明細書で詳細に説明されているが、当業者は、本明細書中の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に対して多くの修正が可能であることを容易に理解する。したがって、そのような修正はすべて、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。