(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】認証用撮像装置及び認証システム
(51)【国際特許分類】
G06V 40/19 20220101AFI20231129BHJP
【FI】
G06V40/19
(21)【出願番号】P 2021554438
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2019043277
(87)【国際公開番号】W WO2021090364
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】小勝 俊亘
(72)【発明者】
【氏名】大網 亮磨
(72)【発明者】
【氏名】指原 利之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 孝道
(72)【発明者】
【氏名】赤司 竜一
(72)【発明者】
【氏名】山下部 諒
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 大祐
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-122899(JP,A)
【文献】特開2017-151556(JP,A)
【文献】特開2007-319174(JP,A)
【文献】特開2000-023946(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/16 - 40/19
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、
前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる
前記対象者の虹彩の画像を含む第2画像を取得する第2撮像手段と、
前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、
前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段と
を備え、
前記駆動制御手段は、前記対象者の顔の少なくとも一部の画像を含む前記第1画像から前記対象者の顔の位置を検出し、前記対象者の顔の位置に基づいて前記対象者の虹彩の位置を推定し、前記虹彩の位置が前記第2撮像手段の撮像範囲と重なるように前記駆動手段の駆動量を演算し、前記駆動量に基づいて前記駆動手段を制御し、
前記第1撮像手段は、前記駆動制御手段が前記
駆動量に基づいて前記駆動手段を制御した後に、再度前記第1画像を取得する
ことを特徴とする認証用撮像装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を同軸上で回転させるように駆動することを特徴とする請求項
1に記載の認証用撮像装置。
【請求項3】
前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段は円筒形の筐体内部に配置されており、
前記駆動手段は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を、前記円筒形の中心軸を回転軸として回転させるように駆動する
ことを特徴とする請求項
2に記載の認証用撮像装置。
【請求項4】
前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を少なくとも部分的に覆うカバー部を更に備え、
前記カバー部は、前記対象者側から前記カバー部内側への光の透過率が、前記カバー部内側から前記対象者側への光の透過率よりも高い
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の認証用撮像装置。
【請求項5】
前記対象者に照明となる光を照射する照射手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記第1撮像手段、前記第2撮像手段及び前記照射手段を一体的に駆動する
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の認証用撮像装置。
【請求項6】
前記照射手段は、近赤外光を照射することを特徴とする請求項
5に記載の認証用撮像装置。
【請求項7】
前記照射手段は、可視光の透過率が低い可視光フィルタを有することを特徴とする請求項
6に記載の認証用撮像装置。
【請求項8】
対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、
前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる
前記対象者の虹彩の画像を含む第2画像を取得する第2撮像手段と、
前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、
前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記第1画像を取得して前記第1認証処理を実行する第1処理手段と、
前記第2画像を取得して前記第2認証処理を実行する第2処理手段と、
前記第1処理手段及び前記第2処理手段の処理結果に基づいて、前記対象者の認証結果を出力する出力手段と
を備え、
前記駆動制御手段は、前記対象者の顔の少なくとも一部の画像を含む前記第1画像から前記対象者の顔の位置を検出し、前記対象者の顔の位置に基づいて前記対象者の虹彩の位置を推定し、前記虹彩の位置が前記第2撮像手段の撮像範囲と重なるように前記駆動手段の駆動量を演算し、前記駆動量に基づいて前記駆動手段を制御し、
前記第1撮像手段は、前記駆動制御手段が前記
駆動量に基づいて前記駆動手段を制御した後に、再度前記第1画像を取得し、
前記第1処理手段は、前記第1撮像手段が再度取得した前記第1画像に基づき前記第1認証処理を実行する
ことを特徴とする認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証処理を実行するために対象者を撮像する認証用撮像装置、及び撮像された画像を用いて認証処理を実行する認証システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人物等の対象者を認証可能な認証装置の一例として、複数の生体情報を用いた認証処理(即ち、複合型の生体認証、或いはマルチモーダル生体認証)を行う認証装置が知られている。例えば特許文献1では、複数の生体認証器からの出力を融合して認証処理を行う技術が開示されている。特許文献2では、2つの認証方法の認証度を重み付け加算し、その結果として得られた認証度に基づいて本人確認を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-10625号公報
【文献】特開2009-237643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合型の生体認証では、複数の生体情報を個別に取得することが求められる。このため、例えば認証に要する時間が長くなったり、認証するための端末(具体的には、認証処理に用いる画像を撮像する端末)が大型化したりするという技術的問題点が生ずる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、複数の生体情報を用いた複合型の生体認証を適切に実行することを可能とする認証用撮像装置及び認証システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の認証用撮像装置の一の態様は、対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる第2画像を取得する第2撮像手段と、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備える。
【0007】
本発明の認証システムの一の態様は、対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる第2画像を取得する第2撮像手段と、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記第1画像を取得して前記第1認証処理を実行する第1処理手段と、前記第2画像を取得して前記第2認証処理を実行する第2処理手段と、前記第1処理手段及び前記第2処理手段の処理結果に基づいて、前記対象者の認証結果を出力する出力手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
上述した認証用撮像装置及び認証システムのそれぞれの一態様によれば、複数の生体情報を用いた複合型の生体認証を適切に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る認証用撮像装置の構成を示す概略図(その1)である。
【
図2】実施形態に係る認証用撮像装置の構成を示す概略図(その2)である。
【
図3】顔カメラの撮像範囲と虹彩カメラの撮像範囲との関係を示す平面図である。
【
図4】照明部に設けられる可視光フィルタの一例を示す概略図である。
【
図5】モータが装置外部の固定部に固定される構成を示す概略図である。
【
図6】実施形態に係る認証用撮像装置の駆動方向を示す概念図である。
【
図7】実施形態に係る認証用撮像装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図8】顔位置に基づく撮像範囲の調整方法の一例を示す概念図である。
【
図9】実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態に係る認証システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、認証用撮像装置及び認証システムの実施形態について説明する。
【0011】
<認証用撮像装置>
まず、実施形態に係る認証用撮像装置について、
図1から
図8を参照して説明する。
【0012】
(装置構成)
実施形態に係る認証用撮像装置の構成について、
図1から
図6を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る認証用撮像装置の構成を示す概略図(その1)である。
図2は、実施形態に係る認証用撮像装置の構成を示す概略図(その2)である。
図3は、カメラの撮像範囲と虹彩カメラの撮像範囲との関係を示す平面図である。
図4は、照明部に設けられる可視光フィルタの一例を示す概略図である。
図5は、モータが装置外部の固定部に固定される構成を示す概略図である。
図6は、実施形態に係る認証用撮像装置の駆動方向を示す概念図である。なお、
図1から
図6では、説明の便宜上、主な構成要素のみを図示し、本実施形態に関連の薄い構成要素についての図示を省略している。
図1は、認証用撮像装置を前面側(言い換えれば、撮像対象者側)から見た図であり、
図2は、認証用撮像装置を後面側(即ち、
図1とは反対側)から見た図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る認証用撮像装置1は、顔カメラ10と、虹彩カメラ20と、照明部30と、保持部50と、空冷ファン60と、モータ70とを備えている。
【0014】
顔カメラ10は、顔認証に用いる顔画像を撮像するための可視光カメラとして構成されている。虹彩カメラ20は、虹彩認証に用いる虹彩画像を撮像するための近赤外カメラとして構成されており、顔カメラ10と比較すると撮像範囲(視野とも呼ぶ)が狭い。顔カメラ10と虹彩カメラ20とは、撮像範囲が重なるように配置されており、例えば、顔カメラ10の撮像範囲の中心付近に虹彩カメラの撮像範囲が位置するように調整されている(
図3参照)。顔カメラ10及び虹彩カメラ20は、カメラユニット25として一体的に構成されている。顔カメラ10及び虹彩カメラ20は、保持部50に固定されており、後述するモータ70によって一体的に駆動可能とされている。
【0015】
照明部30は、虹彩カメラ20の撮像を補助する照明光(即ち、近赤外光)を照射可能に構成されている。なお、照明部30には、照明光(即ち、近赤外光)を透過する一方で、可視光の透過率が低い可視光フィルタが設けられていてもよい。可視光フィルタは、照明部30の光源の少なくとも一部(望ましくは全体)を覆うように設けられる(
図4参照)。この場合、照明部30側から、認証用撮像装置1の外部(言い換えれば、撮像対象者側)に抜けていく可視光を少なくすることができる。この結果、認証用撮像装置1の外部から、照明部30の存在を認識し難くすることができる。照明部30は、顔カメラ10及び虹彩カメラ20と共に保持部50に固定されており、後述するモータ70によって、顔カメラ10及び虹彩カメラ20と一体的に駆動可能とされている。
【0016】
空冷ファン60は、認証用撮像装置1を冷却するために送風を行うファンである。空冷ファン60は、保持部50に固定されていてもよいし、固定されていなくともよい。言い換えれば、空冷ファン60は、顔カメラ10、虹彩カメラ20、及び照明部30と一体的に駆動可能とされてもよいし、一体的に駆動されないように構成されてもよい(この場合、空冷ファン60は、保持部50以外の固定部材(例えば、装置外部の部材)に固定されていればよい)。
【0017】
モータ70は、カメラユニット25(言い換えれば、顔カメラ10及び虹彩カメラ20)に連結されており、顔カメラ10、虹彩カメラ20、及び照明部30の各々の向きを上下方向(図中の矢印参照)に一体的に駆動することが可能である。具体的には、モータ70が駆動すると、顔カメラ10及び虹彩カメラ20が同軸上で回転するように駆動され、顔カメラ10及び虹彩カメラ20の撮像範囲が上下方向に同じ角度だけ変更される。なお、ここでのモータの駆動方向はあくまで一例であり、顔カメラ10、虹彩カメラ20、及び照明部30は、上下方向以外の方向に駆動されてもよい。また、モータ70が複数の駆動軸を有することで、より複雑な動きが実現されてもよい。
【0018】
モータ70は、保持部50に固定されていてもよいし、固定されていなくともよい。モータ70が保持部50に固定されていない場合、モータ70が駆動してもモータ70自身は動かず、保持部50に固定された、顔カメラ10、虹彩カメラ20、及び照明部30が動く。この場合、モータ70は、例えば筐体80等に固定されていればよい。一方で、モータ70が保持部50に固定されている場合、保持部50に固定された、顔カメラ10、虹彩カメラ20、及び照明部30と一緒にモータ70自身も動く(この場合、モータの駆動軸は装置外部と連結されていればよい)。この場合、モータ70の駆動軸は、例えば装置外部の固定部75に固定されていればよい(
図5参照)。
【0019】
図2に示すように、顔カメラ10、虹彩カメラ20、照明部30、保持部50、空冷ファン60、及びモータ70は、円筒形の筐体80の内部に配置される。そして特に、
図6に示すように、モータ70による駆動は、筐体80の中心軸(即ち、円筒形の中心軸)を回転軸とする回転動作である。このようにすれば、顔カメラ10及び虹彩カメラ20を筐体80内部でスムーズに駆動することができる。なお、モータ70が駆動されても、筐体80の内部の顔カメラ10や虹彩カメラ20が動くのみで、筐体80自身は動かない。この構成は、例えば、チルト機構によって実現される。このようにすれば、撮像対象者に筐体80の内部での動きを認識し難くすることができる。
【0020】
筐体80の少なくとも一部(具体的には、顔カメラ10及び虹彩カメラ20を覆う部分)は、外部からの光に対する透過率が高く、内部からの光に対する透過率が低い材料で形成されていてもよい。具体的には、筐体80は、例えばハーフミラーやスモークミラーとして構成されていてもよい。このように、筐体80の少なくとも一部が透過率を調整するカバー部として機能することで、撮像画像の画質を悪化させることなく、顔カメラ10や虹彩カメラ20の動きを外部から認識し難くすることができる。
【0021】
モータ70の駆動は、駆動制御部90によって制御されている。駆動制御部90は、モータ70の駆動量(言い換えれば、顔カメラ10及び虹彩カメラ20の撮像範囲の移動量)を演算して、モータ70の駆動を制御する。駆動制御部90によるモータ70の具体的な制御方法については、後に詳述する。駆動制御部90は、筐体80の外部に設けられていてもよいし、筐体80の内部に設けられていてもよい。
【0022】
(撮像時の動作)
次に、実施形態に係る認証用撮像装置1の動作の流れについて、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、実施形態に係る認証用撮像装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図8は、顔位置に基づく撮像範囲の調整方法の一例を示す概念図である。
【0023】
図7に示すように、本実施形態に係る認証用撮像装置1の動作時には、まず撮像対象者となるユーザが存在しているか否かを顔カメラ10が検出する(ステップS101)。ユーザの存在は、例えば図示せぬセンサ等で検出されてもよいし、顔カメラ10自体で検出されてもよい。或いは、ユーザによる装置の操作があった場合に、ユーザの存在が検出されるようにしてもよい。なお、ユーザが検出されない場合(ステップS101:NO)、以降の処理は省略され、一連の動作は終了することになる。この場合、所定期間経過後に、再びステップS101の処理が実行されるようにしてもよい。
【0024】
ユーザが検出された場合(ステップS101:YES)、顔カメラ10がユーザの顔画像を撮像する(ステップS102)。なお、ユーザの身長や立ち位置等によってユーザの顔の位置は変化するが、顔カメラ10の撮像範囲は比較的広く設定されているため、特に撮像範囲を調整せずともユーザの顔画像を撮像することができる。ただし、ユーザが検出されているにもかかわらず、その顔画像を正常に撮像できない場合、図示せぬ表示部等を用いて、ユーザを撮像範囲に誘導するようにしてもよい。或いは、顔全体が撮像されていなくとも、部分的に撮像されている場合であれば(即ち、顔画像から顔位置が検出できるのであれば)、後述するように、駆動制御部90が虹彩カメラ20の撮像範囲を変更した後で、顔カメラ10は再び顔画像を撮像するようにしてもよい。
【0025】
顔カメラ10により顔画像が撮像されると、駆動制御部90は、顔カメラ10から、顔画像を取得し、顔画像からユーザの顔位置(顔領域とも呼ぶ)を検出する(ステップS103)。即ち、ユーザの顔が、顔カメラ10の撮像範囲のどの位置に存在しているかを検出する。なお、顔位置の具体的な検出方法については、既存の手法を適宜採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0026】
続いて、駆動制御部90は、検出したユーザの顔位置に基づいて、ユーザの虹彩位置(目領域とも呼ぶ)を推定する(ステップS104)。ここでの推定は、例えばユーザの顔位置と虹彩位置との関係を予め記憶しておくことで実現できる。例えば、駆動制御部90は、検出された顔領域の中心付近に目領域が存在すると推定する(
図8a参照)。ユーザの虹彩位置が推定されると、駆動制御部90は、ユーザの虹彩が虹彩カメラ20の撮像範囲内に収まるようにするため、モータ70の駆動量を演算する(ステップS105)。言い換えれば、どれだけ虹彩カメラ20の撮像範囲を移動させれば、ユーザの虹彩が虹彩カメラ20の撮像範囲内に収まるかを演算する。
【0027】
続いて、駆動制御部90は、演算したモータ70の駆動量に基づいて、モータ70の駆動を制御する(ステップS106)。これにより、虹彩カメラ20の撮像範囲が変更され、虹彩カメラ20で確実にユーザの虹彩画像を撮像できる状態となる。より具体的には、虹彩カメラ20の撮像範囲内に推定された目領域が収まる状態となる(
図8b参照)。そして、その状態で、虹彩カメラ20がユーザの虹彩画像を撮像する(ステップS107)。なお、虹彩カメラ20と共に照明部30も駆動されている(即ち、虹彩カメラ20の撮像範囲に合わせて照明が照射される位置も移動する)ため、より画質のよい虹彩画像を撮像することができる。
【0028】
なお、駆動制御部90が虹彩カメラ20の撮像範囲を変更した後に、顔カメラ10は顔画像を再度撮像するようにしてもよい。虹彩カメラ20は顔カメラ10と一体的に駆動されるため、虹彩カメラ20の撮像範囲を変更した状態であれば、顔カメラ10の撮像範囲もより適切な位置へと変更されている。よって、このタイミングで再び顔画像を撮像すれことで、より適切にユーザの顔画像を撮像できる。このようにすれば、例えばステップS102で撮像した顔画像が顔認証に利用できない画像(例えば、顔の一部しか撮像されていない画像等)であったとしても、認証処理部200の顔認証部210(
図9参照)は、調整後に顔カメラ10が撮像した顔画像を用いて顔認証を実行することができる。
【0029】
<認証システム>
次に、上述した認証用撮像装置1を備える認証システムについて、
図9から
図11を参照して説明する。
【0030】
(システム構成)
実施形態に係る認証システムの全体構成について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、実施形態に係る認証システムの全体構成を示すブロック図である。
【0031】
図9に示すように、本実施形態に係る認証システム100は、顔認証と虹彩認証との2つの認証処理を実行可能な複合型の認証システムとして構成されている。認証システム100は、上述した認証用撮像装置1と、認証処理部200とを備えて構成されている。
【0032】
認証処理部200は、例えばサーバやクラウド等として構成されている。認証処理部200は、その機能を実現するための機能ブロックとして、顔認証部210、虹彩認証部220、及び認証結果出力部230を備えている。
【0033】
顔認証部210は、認証用撮像装置1における顔カメラ10で撮像された顔画像(或いは、顔画像から抽出された特徴量)を用いて、顔認証を実行可能に構成されている。なお、顔認証については、既存の手法を適宜採用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。顔認証部210の処理結果は、認証結果出力部230に出力される構成となっている。
【0034】
虹彩認証部220は、認証用撮像装置1における虹彩カメラ20で撮像された虹彩画像(或いは、虹彩画像から抽出された特徴量)を用いて、虹彩認証を実行可能に構成されている。なお、虹彩認証についても、既存の手法を適宜採用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。虹彩認証部220の処理結果は、認証結果出力部230に出力される構成となっている。
【0035】
認証結果出力部230は、顔認証部210による顔認証の結果、及び虹彩認証部220による虹彩認証の結果を統合して、2つの認証処理を考慮した総合的な認証結果を出力する。認証結果出力部230は、例えば図示せぬ表示装置等に認証結果(例えば、「OK」又は「NG」)を出力する。より具体的には、認証結果出力部230は、例えば顔認証及び虹彩認証の認証結果がいずれも「OK」である場合には、総合的な認証結果として「OK」を出力する一方で、顔認証及び虹彩認証の認証結果の少なくとも一方が「NG」である場合には、総合的な認証結果として「NG」を出力してもよい。或いは、認証結果出力部230は、顔認証及び虹彩認証の各々の認証度(例えば、認証結果を数値化したもの)に基づいて、総合的な認証結果を演算し出力してもよい。
【0036】
(ハードウェア構成)
次に、本実施形態に係る認証システム100(特に、認証処理部200)のハードウェア構成について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、実施形態に係る認証システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0037】
図10に示すように、本実施形態に係る認証システム100が備える認証処理部200は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とを備えている。CPU11と、RAM12と、ROM13と、記憶装置14と、入力装置15と、出力装置16とは、データバス17を介して接続されている。
【0038】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、RAM12、ROM13及び記憶装置14のうちの少なくとも一つが記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、ネットワークインタフェースを介して、認証処理部200の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行することで、RAM12、記憶装置14、入力装置15及び出力装置16を制御する。本実施形態では特に、CPU11が読み込んだコンピュータプログラムを実行すると、CPU11内には、認証処理を行うための機能ブロックが実現される。つまり、CPU11は、認証処理を実行するためのコントローラとして機能可能である。
【0039】
RAM12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶する。RAM12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶する。RAM12は、例えば、D-RAM(Dynamic RAM)であってもよい。
【0040】
ROM13は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを記憶する。ROM13は、その他に固定的なデータを記憶していてもよい。ROM13は、例えば、P-ROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0041】
記憶装置14は、認証処理部200が長期的に保存するデータを記憶する。記憶装置14は、CPU11の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置14は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0042】
入力装置15は、認証処理部200のユーザからの入力指示を受け取る装置である。入力装置15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、スマートフォン、タブレットのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0043】
出力装置16は、認証処理部200に関する情報を外部に対して出力する装置である。例えば、出力装置16は、認証処理部200に関する情報を表示可能な表示装置(例えば、ディスプレイ)であってもよい。
【0044】
(認証時の動作)
次に、本実施形態に係る認証システム100の動作の流れについて、
図11を参照しながら説明する。
図11は、実施形態に係る認証システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0045】
図11に示すように、本実施形態に係る認証システム100の動作時には、まず顔認証部210が、顔カメラ10からユーザの顔画像を取得し(ステップS201)、顔認証処理を実行する(ステップS202)。続いて、虹彩認証部220が、虹彩カメラ20からユーザの虹彩画像を取得し(ステップS203)、虹彩認証処理を実行する(ステップS204)。なお、ここで取得される虹彩画像は、既に説明したように、虹彩カメラ20の撮像範囲が調整された後に(即ち、モータ70が駆動された後に)撮像されたものである。このため、ユーザの虹彩が適切な状態で撮像されており、確実に且つ高い精度で虹彩認証処理を実行することができる。
【0046】
その後、認証結果出力部230は、顔認証部210及び虹彩認証部220の処理結果を統合し(ステップS205)、総合的な認証結果を出力する(ステップS206)。以上のように、本実施形態に係る認証システム100によれば、顔認証と虹彩認証の両方を用いた複合的な認証処理を実行できる。
【0047】
(技術的効果)
最後に、本実施形態に係る認証用撮像装置1及び認証システム100によって得られる技術的効果について説明する。
【0048】
図1から
図8で説明したように、本実施形態に係る認証用撮像装置1では、顔カメラ10及び虹彩カメラ20が一体的に駆動されることで、それらの撮像範囲をまとめて調整することが可能である。よって、顔カメラ10と虹彩カメラ20とで別々に駆動する場合と比較すると、装置構成を簡単にすることができ、装置を小型化することが可能である。また、虹彩認証は顔認証と比較して高精細な画像が要求されるため、虹彩カメラ20の撮像範囲を広げることで対応することが難しい。しかるに本実施形態では、顔画像から検出された顔位置に基づいて虹彩カメラ20の撮像範囲が調整されるため、比較的安価なカメラ(例えば、画素数の低いカメラ)であっても、精度よく虹彩認証が行える。
【0049】
また、
図9から
図11で説明したように、本実施形態に係る認証システム100にでは、2種類の生体認証を用いた複合型の認証処理を実行できるため、個人差のある身体的特徴を利用する場合でも、より高い精度で認証が行える。また、一体的に駆動される顔カメラ10及び虹彩カメラ20から各画像を取得できるため短時間での認証が可能である。本実施形態に係る認証システム100は、例えば店舗レジでの決済やATMでの現金取引時の個人認証、マンション、個人住宅、ホテルの客室に入室する際の開錠時の個人認証、社有車、トラック、バス等における運転手の個人認証、自動車の顔キーエントリー等に適用することが可能である。
【0050】
なお、上述した実施形態では、顔認証と虹彩認証とを複合的に利用する例を挙げたが、本実施形態に係る認証システム100は、それ以外の複合型の認証処理に適用することもできる。具体的には、互いの位置関係が事前に分かるような複数の生体部位を用いた認証処理であれば、本実施形態に係る認証システム100を適用することができる。例えば、顔認証と耳認証とを複合的に利用する認証処理にも適用できる。
【0051】
<付記>
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
【0052】
(付記1)
付記1に記載の認証用撮像装置は、対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる第2画像を取得する第2撮像手段と、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段とを備えることを特徴とする認証用撮像装置である。
【0053】
(付記2)
付記2に記載の認証用撮像装置は、前記制御手段は、前記第1画像から前記対象者の生体における第1部分の位置を検出し、前記第1部分の位置に基づいて、前記第1部分に含まれる第2部分が前記第2撮像手段の撮像範囲に収まるように前記駆動手段を制御することを特徴とする付記1に記載の認証用撮像装置である。
【0054】
(付記3)
付記3に記載の認証用撮像装置は、前記第1部分は、前記対象者の顔であり、前記第2部分は、前記対象者の虹彩であることを特徴とする付記2に記載の認証用撮像装置である。
【0055】
(付記4)
付記4に記載の認証用撮像装置は、前記駆動手段は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を同軸上で回転させるように駆動することを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の認証用撮像装置である。
【0056】
(付記5)
付記5に記載の認証用撮像装置は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段は円筒形の筐体内部に配置されており、前記駆動手段は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を、前記円筒形の中心軸を回転軸として回転させるように駆動することを特徴とする付記4に記載の認証用撮像装置である。
【0057】
(付記6)
付記6に記載の認証用撮像装置は、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を少なくとも部分的に覆うカバー部を更に備え、前記カバー部は、前記対象者側から前記カバー部内側への光の透過率が、前記カバー部内側から前記対象者側への光の透過率よりも高いことを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の認証用撮像装置である。
【0058】
(付記7)
付記7に記載の認証用撮像装置は、前記対象者に照明となる光を照射する照射手段を更に備え、前記駆動手段は、前記第1撮像手段、前記第2撮像手段及び前記照射手段を一体的に駆動することを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の認証用撮像装置である。
【0059】
(付記8)
付記8に記載の認証用撮像装置は、前記照射手段は、近赤外光を照射することを特徴とする付記7に記載の認証用撮像装置である。
【0060】
(付記9)
付記9に記載の認証用撮像装置は、前記照射手段は、可視光の透過率が低い可視光フィルタを有することを特徴とする付記8に記載の認証用撮像装置である。
【0061】
(付記10)
付記10に記載の認証システムは、対象者を撮像することで第1認証処理に用いる第1画像を取得する第1撮像手段と、前記第1撮像手段より狭い撮像範囲で前記対象者を撮像することで第2認証処理に用いる第2画像を取得する第2撮像手段と、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段を一体的に駆動する駆動手段と、前記第1画像に基づいて前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記第1画像を取得して前記第1認証処理を実行する第1処理手段と、前記第2画像を取得して前記第2認証処理を実行する第2処理手段と、前記第1処理手段及び前記第2処理手段の処理結果に基づいて、前記対象者の認証結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする認証システムである。
【0062】
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う認証用撮像装置及び認証システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 認証用撮像装置
10 顔カメラ
20 虹彩カメラ
25 カメラユニット
30 照明部
35 可視光フィルタ
50 保持部
60 空冷ファン
70 モータ
75 固定部
80 筐体
100 認証システム
200 認証処理部
210 顔認証部
220 虹彩認証部
230 認証結果出力部