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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】去痰化合物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/30 20060101AFI20231129BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20231129BHJP
   A61K 31/66 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 11/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C07C323/30 CSP
A61K31/137
A61K31/66
A61P11/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022525210
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2020099664
(87)【国際公開番号】W WO2021082501
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】201911055630.8
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520341681
【氏名又は名称】華創合成制薬股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】2003, Building D, Phase II, Wealth Center, Hi-tech Zone, Xi’an, Shaanxi 710075, China
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】楊成
(72)【発明者】
【氏名】戚蘇民
(72)【発明者】
【氏名】張起愿
(72)【発明者】
【氏名】李東興
(72)【発明者】
【氏名】陳鉄山
(72)【発明者】
【氏名】趙曉丹
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105693764(CN,A)
【文献】特開昭63-198653(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101544572(CN,A)
【文献】特表2005-533013(JP,A)
【文献】Russian Chemical Bulletin,1998年,Vol.47(9),p.1755-1762
【文献】Bulletin de la Societe Chimique de France,1985年,Vol.3,p.463-472
【文献】Organic Chemistry,1982年,Vol.11,p.2777-2781
【文献】RN:1470521-53-9,Darabase Registry [Online],2013年11月10日,Retrieved from STN
【文献】創薬化学,第1版,化学同人,1995年,P.97-99
【文献】Farmaco, Edizione Scientifica,1985年,Vol.40(2),p.108-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物、その薬学的に許容可能な塩又はその互変異性体。
ここで、
は、H、F、Cl、Br又はNHであり、
は、H、F、Cl又はBrであり、
は、H、F、Cl、Br又はNHであり、
は、H、F、Cl又はBrであり、
は、H、F、Cl又はBrであり、
は、H又はCHであり、
は、

又は
であり、R、R、R、R、Rの少なくとも一つはHではない。
【請求項2】
式IIで示される化合物、その薬学的に許容可能な塩又はその互変異性体。
ここで、
Xは
、またはそのアミノ酸塩である。
【請求項3】
以下のものである、請求項1に記載の化合物。
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-3-(2-アミノ-3,5-ジブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
:シス-3-(2-アミノ-3,5-ジブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス-3-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-2-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチルアミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス-3-(4-アミノ-2-クロロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
10:シス-3-(2-アミノ-5-ブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
11:シス-3-(2-アミノ-4-クロロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
12:トランス-4-[(2-アミノ-6-クロロベンジル)-メチルアミノ]-シクロヘキサンチオール
【請求項4】
以下のものである、請求項2に記載の化合物。
13:トランス3-[4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)-シクロヘキシルスルファニル]-プロパン-1-オール
【請求項5】
式I化合物は有機アルカリであり、1又は2モル当量の無機又は有機酸と水溶性塩を形成可能である、請求項1、又は3に記載の化合物。
【請求項6】
式II化合物は有機アルカリであり、1又は2モル当量の無機又は有機酸と水溶性塩を形成可能である、請求項2、又は4に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1、3、5のいずれか一項に記載の式I構造を有する化合物、又はその薬学的に許容可能な塩酸塩、又は臭化水素酸塩、又は硫酸塩。
【請求項8】
請求項2、4、6のいずれか一項に記載の式II構造を有する化合物、又はその薬学的に許容可能な塩酸塩、又は臭化水素酸塩、又は硫酸塩。
【請求項9】
少なくとも請求項1、3、5、7のいずれか一項に記載の式I構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも請求項2、4、6、8のいずれか一項に記載の式II構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
去痰薬の製造に用いられる、ことを特徴とする請求項1、3、5、7のいずれか1項に記載の式I構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
去痰薬の製造に用いられる、ことを特徴とする請求項2、4、6、8のいずれか1項に記載の式II構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、去痰薬物、その製造方法、即ち、式I及びIIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び医薬組成物の、去痰への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
咳痰は呼吸器疾患のよく見られる症状であり、痰液の増加は呼吸器粘膜を刺激して咳を引き起こし得る。細い気管支を閉塞すると、軽度の場合、息切れを引き起こし、また二次感染を引き起こし、更に呼吸道を損傷し、咳、咳痰や息切れを悪化する。重度の場合、呼吸を抑制したり窒息死を引き起こしたりするに至ることがある。粘液の過剰分泌は粘液繊毛除去機能の障害や局所の防御機能の障害を引き起こし、結果として、感染の制御が困難になり、気道閉塞が劣化し、病状の進展や患者の主観的感覚に直接影響を与える。したがって、去痰薬物を使用して気道内分泌物の早期排出を促進することは気道炎症を治療する重要な補助手段である。
【0003】
去痰薬は痰液を薄くし、粘稠度を低下させ、咳出しやすくしたり、気道粘膜繊毛の運動を加速し、痰液の輸送機能を改善する薬物である。去痰薬は気道管腔内に溜まった痰の排出を促進し、気道粘膜への刺激を減らし、間接的に鎮咳及び喘息抑制の作用を発揮し、二次感染の抑制にも有利である。去痰薬物は以下の点から痰排出促進の作用を発揮する。(1)痰液の物理的及び化学的特性を改善し、粘度を低下させる。(2)気道上皮粘液層の正常な構造と繊毛除去機能を回復する。(3)ムチンの産生と分泌を抑え、高粘度の粘液の生成を減らす。(4)膿痰中のDNAの解重合を促す。(5)抗炎症を行い、DNAの産生を減らす。去痰薬物は、その主な作用によって粘液分泌促進薬(吐き気性去痰薬と刺激性去痰薬)、粘液溶解薬に分類される。現在、臨床の代表的な化学去痰薬物は塩化アンモニウム、アセチルシステイン、アンブロキソール、エルドスタムなどがある。しかし、これらの常用薬には特定の副作用があるため、全く新しい安全で有効な去痰薬の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、構造式I及びIIで示される化合物、その薬学的に許容可能な非毒性塩、これらの化合物を活性成分として含有する医薬組成物、及び前記化合物及び医薬組成物の去痰薬への使用に関する。本発明者らは、アセチルシステイン中のスルフヒドリル基をアンブロキソールと類似した構造に導入した本発明の化合物では、去痰効果が従来の去痰薬物よりもはるかに優れることを見出し、本発明の化合物は、安全性がより高く、効果がより高い。
【0005】
したがって、本発明の第1態様は、式I及びIIで示される化合物、及びその薬用塩を提供する。
(ここで、式Iで示される化合物において、
は、H、F、Cl、Br又はNHを表し、
は、H、F、Cl又はBrを表し、
は、H、F、Cl、Br又はNHを表し、
は、H、F、Cl又はBrを表し、
は、H、F、Cl又はBrを表し、
は、H又はCHを表し、
は、

又は
を表す。
ここで、式IIで示される化合物において、
Xは
及びそのアルカリ金属塩、アミノ酸(例えばL-アラニン、L-バリンなど)を表す。)
【0006】
好ましくは、本発明にかかる式I及びIIで示される化合物、又はその薬用塩は、以下の構造式で示される化合物から選択される。
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-3-(2-アミノ-3,5-ジブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
:シス-3-(2-アミノ-3,5-ジブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス-3-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:トランス-2-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチルアミノ]-シクロヘキサンチオール
:シス-3-(4-アミノ-2-クロロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
10:シス-3-(2-アミノ-5-ブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
11:シス-3-(2-アミノ-4-クロロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール
12:トランス-4-[(2-アミノ-6-クロロベンジル)-メチルアミノ]-シクロヘキサンチオール
13:トランス3-[4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)-シクロヘキシルスルファニル]-プロパン-1-オール
【0007】
別の態様では、本発明は、以下のステップで製造される、上記式I、IIで示される化合物の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の第2態様は、少なくとも1種の式I及びIIで示される化合物又はその薬用塩と、1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0009】
本発明の第3態様は、式I及びIIで示される化合物、その薬学的に許容可能な非毒性塩、並びに、式I及びIIで示される化合物及びその薬学的に許容可能な非毒性塩を活性成分とした医薬組成物の去痰用途に関する。
【0010】
式I及びIIで示される化合物は、無機酸と薬用塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等を形成可能である。適切な塩の選択及び製造は当業者に公知の技術である。
【0011】
本発明の化合物又はその薬用塩は、単独して、又は医薬組成物の形態として投与してもよい。本発明の医薬組成物は、投与経路に応じてさまざまな適切な剤形に調製してもよい。賦形剤や助剤を含め、生理学的に許容可能な1種又は複数種の担体を使用しており、これらは、活性化合物を薬学的に使用可能な製剤として加工することに有利である。適切な製剤は、選択される投与経路によるものであり、本分野で公知の常識に従って製造されてもよい。
【0012】
投与経路は、経口、非経口や局所投与としてもよいが、好ましくは、経口、エアロゾル吸入及び注射投与形態である。経口投与可能な医薬製剤は、経口液、顆粒剤や錠剤などを含む。当業者が理解できるように、より好適な効果を得るために、本発明の化合物は、適切な薬物送達システム(DDS)を用いてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施例は、当業者が本発明を包括的に理解できるようにするものであ
るが、本発明を何ら制限するものではない。
【0014】
実施例1 トランス-4-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩の製造
トランス-4-アセチルアミノシクロヘキサンチオール40g、水酸化カリウム40g、及び水350mlを500ml反応フラスコに加え、油浴鍋に入れて、10時間加熱還流し、反応終了後、室温に降温し、ジクロロメタン(100ml×3回)を加えて抽出し、有機相を併せて、無水炭酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液に塩化水素を導入し、固体が生成されない場合、0℃に降温して撹拌しながら10時間結晶化させ、ろ過して、トランス-4-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩38gを得た。
【0015】
実施例2 トランス-4-[(2-アミノ-3、5-ジブロモベンジリデン)アミノ]シクロヘキサンチオールの製造
トランス-4-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩50g、水酸化ナトリウム13g、炭酸カリウム18g、エチレングリコールモノメチルエーテル400mlを1000ml三つ口フラスコに加え、油浴鍋に入れて、120℃に加熱したときに、N-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンゾイル)-N-メタンスルホニルヒドラジド78gを4回に分けて添加し、添加終了後、2h還流反応し、室温に降温して水400mlを加え、撹拌しながら結晶化させ、ろ過して、トランス-4-[(2-アミノ-3、5-ジブロモベンジリデン)アミノ]シクロヘキサンチオール132gを得た。
【0016】
実施例3 トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)アミノ]-シクロヘキサンチオール塩酸塩(I)の製造
トランス-4-[(2-アミノ-3、5-ジブロモベンジリデン)アミノ]シクロヘキサンチオール100g、氷酢酸300ml、5%pd/C 1.0gを水素化反応釜に加え、0.2MPa、60℃で8h水素化し、反応終了後、乾固まで減圧蒸発し、残留物を400mlアセトンに溶解し、塩酸10mlを滴下して、0℃に降温して4h結晶化させ、ろ過し、乾燥させて、トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)アミノ]-シクロヘキサンチオール塩酸塩(I)を得た。
【0017】
実施例4~5
トランス-4-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩を3-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩に変更して反応を行った以外、実施例1、2、3の操作を参照して、下記の式Iの化合物を得た。
【0018】
実施例6 トランス-4-[(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジル)-メチル-アミノ]-シクロヘキサンチオール塩酸塩(I)の製造
トランス-4-アミノシクロヘキサンチオール塩酸塩を4-(メチルアミノ)シクロヘキサンチオール塩酸塩に変更して反応を行った以外、実施例1、2、3の操作を参照して、化合物Iを得た。
【0019】
実施例7~10
4-(メチルアミノ)シクロヘキサンチオール塩酸塩を、SH位置及び異性化の異なるメチルアミノシクロヘキサンチオールに変更した以外、実施例6の操作を参照して、下記の式Iの化合物を得た。
【0020】
実施例11 シス-3-(4-アミノ-2-クロロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール(I)の製造
シス-3-(2-クロロ-4-ニトロ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール塩酸塩10gをエタノール150ml及び水20mlに溶解し、この溶液をパラジウム炭素0.2gと混合し、室温でこの混合物を水素化還元し、水素吸収終了後、パラジウム炭素をろ過により除去し、ろ液に少量のエチルエーテルを加え、固体を析出させ、エタノールで再結晶させ、化合物(I)を得た。
【0021】
実施例12 シス-3-(2-アミノ-5-ブロモ-ベンジルアミノ)-シクロヘキサンチオール(I10)の製造
水素化アルミニウムリチウム30gを無水テトラヒドロフラン3Lに加え、この混合物を、シス-2-アミノ-4-クロロ-N-(3-メルカプト-シクロヘキシル)-ベンゾイルアミンと無水テトラヒドロフランの溶液100gに室温で滴下し、滴下終了後、24時間撹拌還流した。酢酸エチル及び5N水酸化ナトリウムを加えて、未反応の水素化アルミニウムリチウムをクエンチングし、ろ過し、乾固までろ液を真空濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(I10)を得た。
【0022】
実施例13~14
異なるベンゾイルアミン系化合物を還元した以外、実施例12の操作を参照して、下記の式Iの化合物を得た。
【0023】
実施例15 トランス3-[4-(2-アミノ-3,5-ジブロモベンジルアミノ)-シクロヘキシルスルファニル]-プロパン-1-オール(I13)の製造
化合物I 24.55g(0.057mol)を水100mlに投入し、撹拌して溶解させ、撹拌下、アリルアルコール12.40g(0.172mol)、K 1g(0.0037mol)、NaHSO 0.38g(0.0037mol)を順次加え、50℃に加熱して、8時間撹拌し、反応終了後、水及び過量のアリルアルコールを蒸発除去し、無水エタノール200mlを加えて、撹拌して固体を析出させ、精製して、化合物I13を得た。
【0024】
実施例16 インビボ有効性試験-フェノールレッドを用いたマウスの去痰試験
本実施例では、本発明の化合物I、I、I13及び既知の化合物のインビボ有効性を検出した。
表2のように、健康なマウス90匹を9群にランダムに分け、陽性対照薬は塩化アンモニウム及びアンブロキソール塩酸塩経口溶液を投与し、正常対照群は等量の生理食塩水を投与し、他の各群は対応する薬物を胃内投与した。実験の2日前の午前、午後に1回ずつ胃内投与し(塩化アンモニウムを除く)、実験当日の午前に1時間胃内投与後、マウスにフェノールレッドを0.5ml/匹腹腔注射し、0.5時間後、マウスを殺して、臓器周囲の組織を剥離し、甲状軟骨の下から気管枝までの気管を切り取り、生理食塩水2mlを容れた試験管に入れ、30分間振とうし、気管を捨てて、試料液ごとに1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液0.2mlを加え、紫外可視分光光度計を用いて、波長546nmでOD値を測定し、フェノールレッド標準曲線から、吸光度値をフェノールレッド含有量に換算した。
注:正常群と比較すると、△△P<0.01;アンブロキソール経口溶液群と比較すると、*P<0.05;**P<0.01;塩化アンモニウム群と比較すると※P<0.05 ※※P<0.05。
データ処理にPEMS医療統計ソフトウェアが使用され、その結果、各用量群は、全て、マウスの気管のフェノールレッド分泌を明らかに促進し、アンブロキソール群、及び化合物IとI13の高用量は、作用が最も高く、その中でも、化合物I13の作用は最も強く、各用量の作用は、塩化アンモニウム及びアンブロキソールよりもはるかに過ぎれており、このうち、化合物I13の去痰作用は最も顕著であった。このことから、化合物I13の去痰作用は用量の増加に伴い向上し、明らかな用量効果関係があることを示し、しかも、化合物I13の作用は化合物Iよりも優れていた。
【0025】
実施例17 マウスへの本発明の化合物の静脈投与による急性毒性テスト
本発明の化合物及び対照化合物の急性毒性をテストするために、下記の実験を行った。
本発明の化合物を水に溶解したものを、ICRマウス5匹に投与した(5週齢、雄、体重20g±2gのマウス)。静脈投与して半数致死量(LD50、mg/kg)を決定した。アンブロキソール塩酸塩を対照とした。結果を以下の表に示す。
試験の結果から明らかなように、化合物I、I及びI13のLD50値はアンブロキソール塩酸塩のこの値よりもはるかに高く、このことから、本発明の化合物の安全性はアンブロキソール塩酸塩よりも優れたことを示す。
【0026】
実施例の処方:医薬組成物の製造
l、粉剤の製造
実施例3の化合物 2g
乳糖 1g
上記材料を混合した後、混合物を密封包装に詰めて、粉剤を製造した。
2、錠剤の製造
実施例4の化合物 500g
コーンスターチ 100g
乳糖 100g
ステアリン酸マグネシウム 2g
記材料を混合した後、混合物を既知の方法でプレスして錠剤とした。
3、カプセルの製造
実施例11の化合物 500g
コーンスターチ 100g
乳糖 100g
ステアリン酸マグネシウム 2g
上記材料を混合し、既知の方法で混合物をゼラチンカプセルに充填し、カプセルを得た。
4、注射剤の製造
実施例13化合物 20g
pH調整剤 pHを4.0~9.0に保持
グルコース 賦形剤
水 溶媒
実施例13の化合物、葡萄糖を水に加えて溶解し、pH調整剤でpHを4.0~9.0に調整し、凍結乾燥オーブンに入れて凍結乾燥させ、乾燥終了後、栓をつけてキャッピングした。
5、吸入剤の製造
実施例13の化合物 15g
pH調整剤 pHを4.0~9.0に保持
塩化ナトリウム 等張調整剤15g
水 2000ml
実施例13の化合物、塩化ナトリウムを水に加えて溶解し、pH調整剤(塩酸又は水酸化ナトリウム)でpHを4.0~9.0に調整し、缶詰めてキャッピングし、オートクレーブに入れて121℃で12分間殺菌すると完成した。