(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】組換え細胞外基質タンパク質生産のための動物細胞の培養用培地組成物、及びそれを利用した方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20231129BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231129BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231129BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20231129BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20231129BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20231129BHJP
C07K 1/20 20060101ALI20231129BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20231129BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
C12N1/00 F
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K1/14
C07K1/16
C07K1/18
C07K1/20
C07K14/78
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2022527798
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(86)【国際出願番号】 KR2021020184
(87)【国際公開番号】W WO2022146036
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188062
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519321708
【氏名又は名称】ハプルサイエンス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・キュン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ファン
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1999/061650(WO,A1)
【文献】Biomaterials,2015年06月,Vol.54,pp.126-135
【文献】Biomaterials,2010年02月,Vol.31, No.5,pp.824-831
【文献】J. Biol. Chem.,2018年02月16日,Vol.293, No.7,pp.2452-2465
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
Google/Google Scholar
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20μM超過から100μMの濃度で硫酸銅(CuSO
4
)を含む、組換え細胞外基質タンパク質生産のための、動物細胞の培養用培地組成物
であって、
前記組換え細胞外基質タンパク質は、HAPLN(hyaluronan and proteoglycan link protein)である、動物細胞の培養用培地組成物。
【請求項2】
前記組換え細胞外基質タンパク質は、単量体である、請求項1に記載の培地組成物。
【請求項3】
前記HAPLNタンパク質は、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3及びHAPLN4からなる群のうちから選択されたいずれか1つのタンパク質である、請求項
1に記載の培地組成物。
【請求項4】
前記組換え細胞外基質タンパク質は、人体に由来するタンパク質である、請求項
1に記載の培地組成物。
【請求項5】
前記動物細胞は、CHO細胞またはCHO細胞変異体である、請求項1に記載の培地組成物。
【請求項6】
(1)請求項1ないし
5のうちいずれか1項に記載の培地組成物で、組換え細胞外基質タンパク質を生産する動物細胞を培養し、培養液を得る段階と、
(2)前記培養液から組換え細胞外基質タンパク質を単離、および精製する段階と、を含む、高純度の組換え細胞外基質タンパク質を生産する方法
であって、
前記組換え細胞外基質タンパク質は、HAPLN(hyaluronan and proteoglycan link protein)である、方法。
【請求項7】
前記段階(1)の培養は、流加培養、連続式培養または回分式培養である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記段階(1)において、細胞培養前、培地組成物に銅化合物を添加す
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記組換え細胞外基質タンパク質は、単量体である、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
前記HAPLNタンパク質は、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3及びHAPLN4からなる群のうちから選択されたいずれか1つのタンパク質である、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
前記組換え細胞外基質タンパク質は、人体に由来するタンパク質である、請求項
6に記載の方法。
【請求項12】
前記動物細胞は、CHO細胞またはCHO細胞変異体である、請求項
6に記載の方法。
【請求項13】
前記段階(2)は、クロマトグラフィを遂行する段階を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィは、親和性クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、水酸化リン灰石クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ及び疎水性相互作用クロマトグラフィからなる群のうちから選択されたいずれか1以上である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記クロマトグラフィを遂行する段階は、
陰イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、
陽イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、
混合モードクロマトグラフィを遂行する段階と、および
疎水性相互作用クロマトグラフィを遂行する段階と、を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
陰イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、60ないし200mMのヒスチジン塩酸塩(His-HCl)を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
陽イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、200ないし600mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
混合モードクロマトグラフィの溶出バッファは、200ないし800mMのアルギニンを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
疎水性相互作用クロマトグラフィの溶出バッファは、0.1Mないし1.5M塩化ナトリウム(NaCl)を含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
前記段階(2)で単離及び精製された組換え細胞外基質タンパク質は、純度90%以上である、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え細胞外基質タンパク質生産のための動物細胞の培養用培地組成物、高純度の組換え細胞外基質タンパク質を生産する方法、及び該組換え細胞外基質タンパク質の単量体を検定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外基質(ECM:extracellular matrix)とは、細胞が細胞外に分泌したさまざまな物質が形成する生体内非細胞構成要素であり、生物の全ての組織内と器官内とに存在する。該細胞外基質は、細胞間接着及び物理的支持体の役割だけではなく、細胞の分化及び成長や、細胞間の信号伝逹及び調節のような多様な生物学的機能を遂行し、多細胞生物の各組織及び各器官は、その特性に合うように、独立して進化したために、細胞外基質の構成成分及び機能も、組織と細胞との類型によって多様な様相を示す。
【0003】
基本的には、細胞外基質は、水分、タンパク質及び多糖類からなっており、そのうち、細胞外基質タンパク質は、当該組織の機能に合うように、生体力学的な特性及び組成などが調整され、分子支持体内に自己集合される(self-assembled)が、大多数の細胞外基質タンパク質は、組織内において微量に発現され、モジュール(module)形態に、多重結合をなして機能する。そのような構造的特徴により、該細胞外基質タンパク質の組み換えを介する量産及び機能研究には、多くの技術的課題が随所に散在している。一般的には、動物組織から抽出したタンパク質を利用するが、抽出量が微量である。従って、所望する細胞外基質タンパク質のアミノ酸配列でもって量産するためには、さらに適切であって費用効率的な生産体系を備える必要性が提起されている。
【0004】
なお、細胞外基質タンパク質において、HAPLN(hyaluronan and proteoglycan link protein)タンパク質は、細胞外基質内のヒアルロン酸とプロテオグリカンとの凝集体を安定化させる役割を行い、細胞間接着に関与すると報告されている。生体内には、発現される組織または器官により、総4種のHAPLNタンパク質が存在するが、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4がそれらであり、それぞれの組織内または器官内における機能及び役割は、大同小異であると知られている。
【0005】
大韓民国登録特許公報第10-1897340号は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む皮膚弾力用またはしわ改善用の薬学組成物を開示しており、大韓民国公開特許公報第10-2019-0024727号及び同第10-2020-0104831号は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む軟骨再生用組成物及び軟骨関連疾患治療用組成物を開示しており、最近の大韓民国登録特許公報第10-2166453号は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む肺疾患治療用組成物を開示するというように、HAPLNタンパク質は、人々に有用な機能を提供することが期待される。従って、組換えHAPLNタンパク質を量産するための培養、単離、精製、単量体検定方法に係わる研究が必要であるが、そのような組換えHAPLNタンパク質を量産する方法については、今のところ研究されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1897340号
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2019-0024727号
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2020-0104831号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-2166453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、組換え細胞外基質タンパク質生産のための動物細胞の培養用培地組成物を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、また、高純度の組換え細胞外基質タンパク質を生産する方法を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、また、組換え細胞外基質タンパク質の単量体を検定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、銅化合物を含む、組換え細胞外基質タンパク質生産のための動物細胞の培養用培地組成物を提供する。
【0011】
用語「細胞外基質(ECM:extracellular matrix)タンパク質」とは、細胞外基質に存在するタンパク質を意味する。ECMタンパク質の例示的な種類は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、テナシン、HAPLN(hyaluronan and proteoglycan link protein)などがあるが、それらに制限されるものではない。
【0012】
用語「HAPLN(hyaluronan and proteoglycan link protein)」とは、ヒアルロン酸とプロテオグリカンとの連結タンパク質とも言う。生体内で主に発現される組織及び器官により、総4種のHAPLNタンパク質が存在し、その種類は、具体的には、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4である。HAPLNタンパク質のアミノ酸配列は、HAPLN1は、例えば、ヒトHAPLN1アクセッション番号NP_001875またはマウスHAPLN1アクセッション番号NP_038528などに記載されているが、それらに制限されるものではない。
【0013】
用語「組換えECMタンパク質(recombinant ECM protein)」とは、遺伝子組換え方法を利用して作ったECMタンパク質をコーディングするDNAを、細胞内で発現させて得られたタンパク質を意味する。前記遺伝子組換えは、該技術分野の一般的な方法によっても行われる。
【0014】
一具体例において、前記組換え細胞外基質タンパク質は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、テナシンまたはHAPLNでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0015】
用語「組換えHAPLNタンパク質(rHAPLN:recombinant HAPLN)」とは、HAPLNタンパク質をコーディングするポリヌクレオチド配列をベクターに挿入し、組換えベクターを作製し、前記組換えベクターを宿主細胞に導入し、細胞内で発現させて得られたタンパク質を意味する。
【0016】
一具体例において、前記組換えHAPLNタンパク質は、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3及びHAPLN4からなる群のうちから選択されたいずれか1つのタンパク質でありうる。
【0017】
用語「組換えヒトHAPLNタンパク質(rhHAPLN:recombinant human HAPLN)」とは、ヒトHAPLNタンパク質をコーディングするポリヌクレオチド配列をベクターに挿入し、組換えベクターを作製し、前記組換えベクターを宿主細胞に導入し、細胞内で発現させて得られたタンパク質を意味する。
【0018】
前記組換え細胞外基質タンパク質は、人体または動物に由来するタンパク質でありうる。一具体例において、前記組換え細胞外基質タンパク質は、人体に由来するタンパク質でありうる。用語「組換えECMタンパク質生産のための動物細胞」、または「組換えECMタンパク質を生産する動物細胞」は、組換えECMタンパク質を生産するように、組換えベクターが導入された動物細胞を意味する。
【0019】
前記動物細胞は、組換えECMタンパク質を生産することができる細胞であるならば、その種類を制限するものではない。前記動物細胞は、CHO(Chinese Hamster Ovary)、VERO、BHK(Baby Hamster Kidney)、HeLa、NiH3T3、MDCK(Madin-Darby Canine Kidney)、WI38、HEK(Human Embryonic Kidney)、ハイブリードマ及びNSOの細胞からなる群のうちから選択されるものでありうる。前記動物細胞は、CHO細胞またはCHO細胞の変異体でありうる。前記CHO細胞は、CHO-K1、CHO-DXB11、CHO-DG44、CHO-SまたはCHO-Pro minusの細胞でありえる。
【0020】
用語「銅化合物(copper compound)」とは、銅化合物を意味し、銅の酸化状態が、+1、+2、+3のものが知られている。
【0021】
前記培地組成物に含まれる銅化合物は、その種類を制限するものではない。前記銅化合物は、銅(I)化合物、銅(II)化合物または銅(III)化合物でありうる。前記銅化合物は、酸化銅(Cu2O)、塩化銅(CuCl2)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、酸化銅II(CuO)、硫化銅(CuS)または硫酸銅(CuSO4)でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0022】
前記培地組成物は、前記銅化合物を、約20μM超過、約30μM以上、約40μM以上、約50μM以上、例えば、約20μM超過ないし約1,000μM、約30μMないし約1,000μM、約40μMないし約1,000μM、約50μMないし約1,000μM、約50μMないし約900μM、約50μMないし約800μM、約50μMないし約700μM、約50μMないし約600μM、約50μMないし約500μM、約50μMないし約400μM、約50μMないし約300μM、約50μMないし約200μM、約50ないし約100μM、約50ないし約90μM、約50ないし約80μM、約50ないし約70μM、約50ないし約60μM、または約50μMの濃度で含んでもよい。前記培地組成物は、約20μM超過、特に、約50μM以上の濃度で銅化合物を含むことにより、モジュール形態に多重結合するECMタンパク質を単量体(monomer)に分離することができる。銅化合物の濃度が約20μM以下である場合、タンパク質多量体(multimer)形成が増大され、それにより、タンパク質生産量が低減されてしまう。従って、前記培地組成物は、約20μM超過、特に、約50μM以上の濃度で銅化合物を含むことにより、組換えECMタンパク質多量体の形成を低減させることができる。結果として、前記培地組成物を使用すれば、ECMタンパク質を単量体に分離することができるので、ECMタンパク質が微量発現した後、モジュール形態で結合する構造的特徴により、量産が困難であるという問題点を解決することができる。
【0023】
前記培地組成物は、動物細胞の培養に使用される一般的な培地成分をさらに含んでもよい。前記一般的な培地成分は、組換えタンパク質を得るための動物細胞の培養のために必要な成分であり、公知されたもの、あるいは市販されるものを使用することができる。
【0024】
前記培地組成物は、さらなる添加剤をさらに含んでもよい。前記培地組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO);グリセロール;ポロキサマー188のようなポロキサマー;EDTA;ポリソルベート80のようなポリソルベート;システイン;グルタチオン(GSH);グルタチオンジスルフィド(GSSG:glutathione disulfide);及び塩化マグネシウム(MgCl2)のうち1種以上の添加剤をさらに含んでもよいが、それらに制限されるものではない。
【0025】
一実施例において、組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産する動物細胞の培養時、培地に硫酸銅を添加すれば、タンパク質多量体形成低減効果にすぐれ、タンパク質生産量が増加することを確認した。従って、銅化合物を含む培地組成物は、動物細胞から、組換えECMタンパク質を大量に得るのに有用に使用されうる。
【0026】
一具体例において、前記培地組成物は、組換えHAPLNタンパク質量産のための動物細胞の培養用培地組成物でもあり、具体的には、組換えヒトHAPLNタンパク質量産のための動物細胞の培養用培地組成物でもあり、さらに具体的には、組換えヒトHAPLN1タンパク質量産のための動物細胞の培養用培地組成物でありうる。
【0027】
前記培地組成物において、前記組換え細胞外基質タンパク質は、単量体でありうる。前記「単量体(monomer)」とは、「単量体タンパク質」と相互交換的に使用され、多重タンパク質複合体を構成するタンパク質のうち一つを称する。2以上のポリペプチドの複合体を「多量体」または「オリゴマー(oligomer)」と言い、2個のポリペプチドの複合体は、二量体(dimer)、3個のポリペプチド複合体は、三量体(trimer)、4個のポリペプチド複合体は、四量体(tetramer)と言う。前記銅化合物を含む培地組成物は、組換えECMタンパク質多量体形成低減効果を有するので、組換えECMタンパク質単量体生産のためにも使用される。すなわち、前記銅化合物を含む培地組成物は、モジュール形態に多重結合するECMタンパク質を単量体に分離することができる。従って、前記培地組成物は、組換えECMタンパク質単量体生産のための動物細胞の培養用培地組成物でありうる。
【0028】
他の態様は、(1)一態様による培地組成物において、組換えECMタンパク質を生産する動物細胞を培養し、培養液を得る段階と、
(2)前記培養液から、組換えECMタンパク質を分離して精製する段階と、を含む、高純度の組換え細胞外基質タンパク質を生産する方法を提供する。
【0029】
前述の培地組成物、組換えECMタンパク質及び動物細胞に係わる説明は、前述の通りである。
【0030】
前記組換えECMタンパク質を生産する方法によれば、高純度の組換えECMタンパク質を量産することができる。従って、前記方法は、組換えECMタンパク質を量産する方法でもあり、望ましくは、組換えHAPLNタンパク質を量産する方法でもあり、さらに望ましくは、組換えHAPLN1タンパク質を量産する方法でもあり、もっとも望ましくは、組換えヒトHAPLN1タンパク質を量産する方法でありうる。
【0031】
前記段階(1)の培養は、当業界に周知されている方法を利用して行うことができる。例えば、前記培養は、流加培養(fed-batch culture)、連続式培養(continuous culture)または回分式培養(batch culture)などによっても行われる。一具体例において、前記段階(1)の培養は、流加培養でありうる。
【0032】
用語「流加培養(fed-batch culture)」とは、培地を間欠的に供給する培養法であり、培養液中の基質が適切な速度で添加され、流出がないために、供給される基質の量を自由に制御することができる培養方法を意味する。
【0033】
用語「連続式培養(continuous culture)」とは、新たな栄養培地が続けて供給され、同時に、細胞及び生産物を含む培養液が続けて除去される培養方法を意味する。
【0034】
用語「回分式培養(batch culture)」とは、初めに供給された原料基質がいずれも消費されるまで培養を続けつ方法であり、基質の濃度、代謝生産物の濃度、細胞の濃度などが、経時的に続けて変化する培養方法を意味する。
【0035】
前記段階(1)の培養は、約5日間ないし約15日間、約5日間ないし約13日間、約8日間ないし約15日間、約8日間ないし約13日間、約10日間ないし約15日間、約10日間ないし約13日間、約11日間ないし約15日間、または約11日間ないし約13日間行うものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0036】
前記段階(1)において、細胞培養中、培地組成物に、銅化合物を1回または2回以上添加することができる。
【0037】
前記段階(1)において、細胞培養前、培地組成物に銅化合物を添加することにより、培養を行うことができる。例えば、細胞培養0日目、培地組成物に、銅化合物を添加することができる。
【0038】
前記組換えECMタンパク質を生産する方法において、前記組換えECMタンパク質は、単量体でありうる。従って、前記方法は、組換えECMタンパク質の単量体を生産する方法でもあり、望ましくは、組換えHAPLNタンパク質の単量体を生産する方法でもあり、さらに望ましくは、組換えHAPLN1タンパク質の単量体を生産する方法でもあり、最も望ましくは、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単量体を生産する方法でありうる。
【0039】
前記段階(2)は、クロマトグラフィを遂行する段階を含んでもよい。前記クロマトグラフィは、親和性クロマトグラフィ(affinity chromatography)、陰イオン交換クロマトグラフィ(anion exchange chromatography)、陽イオン交換クロマトグラフィ(cation exchange chromatography)、水酸化リン灰石クロマトグラフィ(hydroxyapatite chromatography)、逆相クロマトグラフィ(reversed-phase chromatography)、サイズ排除クロマトグラフィ(size exclusion chromatography)、混合モードクロマトグラフィ(mixed mode chromatography)及び疎水性相互作用クロマトグラフィ(hydrophobic interaction chromatography)からなる群のうちから選択されたいずれか1以上でありうる。
【0040】
前記段階(2)は、陰イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階を含んでもよい。
用語「イオン交換クロマトグラフィ(IEC:ion exchange chromatography)」とは、固定相にイオン交換体を使用し、固定相と移動相との間で可逆的なイオン交換を行い、試料イオンの固定相に対する親和性差を利用し、分離させて分析する方法を言う。
【0041】
用語「陰イオン交換クロマトグラフィ(AEX:anion exchange chromatography)」とは、イオン交換クロマトグラフィの一種であり、アミノ基のような陽イオン性官能基を有する陰イオン交換体を使用する。
【0042】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、前平衡化段階、平衡化段階、サンプルローディング(sample loading)段階、洗浄段階及び溶出段階を含んでもよい。
【0043】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、一般的な陰イオン交換樹脂を使用して遂行されうる。前記陰イオン交換樹脂の例は、Fractogel(登録商標) EMD TMAE(M)、Fractogel(登録商標) EMD TMAE Medcap(M)、Fractogel(登録商標) EMD TMAE Hicap(M)、Eshmuno(登録商標) QEshmuno(登録商標) QPX、Eshmuno(登録商標) QPX Hicap、Capto Q、Capto Q ImpRes、Q Sepharose(登録商標) FF、Q Sepharose(登録商標) HP、Q Sepharose(登録商標) XL、Source(登録商標) 30Q、Capto(登録商標) Adhere、Capto(登録商標) Adhere ImpRes、Poros(登録商標) 50 HQ、Poros(登録商標) 50 XQ、Poros(登録商標) 50 PI、Q HyperCel、Toyopearl(登録商標) GigaCap Q 650-M、Toyopearl(登録商標) GigaCap Q 650-S、Toyopearl(登録商標) Super Q、YMC(登録商標) BioPro Q、Macro-Prep(登録商標) High Q、Nuvia(登録商標) QまたはUNOsphere(登録商標) Qなどがあるが、それらに制限されるものではない。代案として、作動条件、及びタンパク質のpIにより、またジメチルアミノエチル(DMAE)作用基のジエチルアミノエチル(DEAE)を有している弱い陰イオン交換樹脂が使用されうる。その例は、Fractogel(登録商標) EMD DEAE、Fractogel(登録商標) EMD DMAE、Capto(登録商標) DEAEまたはDEAE Ceramic HyperD(登録商標) Fである。
【0044】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、結合及び溶出(bind-and-elute)モードで遂行されうるが、それに制限されるものではない。
【0045】
前記陰イオン交換クロマトグラフィのローディング量は、10ないし50g/L樹脂でもあるが、それに制限されるものではない。
【0046】
前記陰イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、ヒスチジン塩酸塩(His-HCl)を含むものでありうる。
【0047】
前記陰イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、約1mMないし約1,000mM、約10mMないし約800mM、約20mMないし約600mM、約40mMないし約400mM、約60mMないし約200mM、例えば、約100mMのヒスチジン塩酸塩(His-HCl)を含むものでありうる。前記濃度範囲のヒスチジン塩酸塩を使用すれば、優秀な純度及び収率でもって、組換えECMタンパク質を分離することができる。
【0048】
前記陰イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、EDTAをさらに含んでもよい。前記EDTAの濃度は、当業者が適切に選択することができる。
【0049】
前記陰イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、pH4.0ないし6.0、pH4.5ないし5.5、例えば、pH5.0であるものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0050】
前記陰イオン交換クロマトグラフィを行うことにより、組換えECMタンパク質を捕獲することができる。従って、前記陰イオン交換クロマトグラフィを行うことにより、特定組換えECMタンパク質を特異的に単離することができる。
【0051】
前記段階(2)は、陰イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階後、陽イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階をさらに含んでもよい。
【0052】
用語「陽イオン交換クロマトグラフィ(CEX:cation exchange chromatography)」とは、イオン交換クロマトグラフィの一種であり、スルホン基、カルボキシル基のような陰イオン性官能基を有する陽イオン交換体を使用する。
【0053】
前記陽イオン交換クロマトグラフィは、平衡化段階、サンプルローディング段階、洗浄I段階、洗浄II段階、洗浄III段階及び溶出段階を含んでもよい。
【0054】
前記陽イオン交換クロマトグラフィは、一般的な陽イオン交換樹脂を使用して遂行されうる。前記陽イオン交換樹脂の例は、Eshmuno(登録商標) CPS、Eshmuno(登録商標) CPXまたはSP Fast Flow Sepharose(登録商標)、Eshmuno(登録商標) S Resin、Fractogel(登録商標) SO3(M)、Fractogel SE Hicap(M)、SP Cellthru BigBead Plus(登録商標)、Streamline(登録商標) SP、Streamline(登録商標) SP XL、SP Sepharose(登録商標) Big Beads、Toyopearl(登録商標) M-Cap II SP-550EC、SP Sephadex(登録商標) A-25、Express-Ion(登録商標) S、Toyopearl(登録商標) SP-550C、Toyopearl(登録商標) SP-650C、Source(登録商標) 30S、Poros(登録商標) 50 HS、Poros(登録商標) 50 XS、SP Sepharose(登録商標) Fast Flow、SP Sepharose(登録商標) XL、Capto(登録商標) S、Capto(登録商標) SP ImRes、Capto(登録商標) S ImpAct、Nuvia(登録商標) HR-S ,Cellufine(登録商標) MAX S-r、Cellufine(登録商標) MAX S-h、Nuvia(登録商標) S、UNOsphere(登録商標) S、UNOsphere(登録商標) Rapid S、Toyopearl(登録商標) Giga-Cap S-650(M)、S HyperCel Sorbent(登録商標)、Toyopearl(登録商標) SP-650M、Macro-Prep(登録商標) High S、Macro-Prep(登録商標) CM、S Ceramic HyperD(登録商標) F、MacroCap(登録商標) SP、Capto(登録商標) SP ImpRes、Toyopearl(登録商標) SP-650S、SP Sepharose(登録商標) High Perform、Capto(登録商標) MMC、Capto(登録商標) MMC Imp Res、Eshmuno(登録商標) HCX、Nuvia(登録商標) High c-Primeなどがあるが、それらに制限されるものではない。代案として、作動条件、及びタンパク質のpIにより、また弱い陽イオン交換樹脂、例えば、Fractogel(登録商標) EMD COO(M)、CM Sepharose(登録商標) HP、CM Sepharose(登録商標) FF、Toyopearl(登録商標) AF Carboxy 650-M、Macro-Prep(登録商標) CM、Toyopearl(登録商標) GigaCap CM、CM Ceramic Hyper(登録商標) DまたはBio-Rex(登録商標) 70が使用されうる。
【0055】
前記陽イオン交換クロマトグラフィは、結合及び溶出モードで遂行されうるが、それに制限されるものではない。
【0056】
前記陽イオン交換クロマトグラフィのローディング量は、10ないし15g/L樹脂でもあるが、それに制限されるものではない。
【0057】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの洗浄II段階において、洗浄バッファIIは、約1mMないし約1,000mM、約5mMないし約800mM、約10mMないし約400mM、約25mMないし約200mM、または約50mMないし約150mM、例えば、約100mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含んでもよい。
【0058】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの洗浄III段階において、洗浄バッファIIIは、約150mMないし約500mM、約150mMないし約400mM、約200mMないし約500mM、約200mMないし約400mM、約300mMないし約500mM、または約300mMないし約400mM、例えば、約350mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含んでもよい。
【0059】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの洗浄バッファIIまたは洗浄バッファIIIは、Tris-HCl、NaAc、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0060】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの洗浄バッファIIまたは洗浄バッファIIIは、pH5.0ないし8.5、例えば、pH8.0またはpH5.5であるものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0061】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、約50mMないし約1,000mM、約100mMないし約800mM、約200mMないし約600mM、約300mMないし約500mM、例えば、約370mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含んでもよい。塩化ナトリウムの濃度は、前記範囲内において、生産物の純度及び収率の均衡を考慮し、適切に選択することができる。
【0062】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、Tris-HCl、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0063】
前記陽イオン交換クロマトグラフィの溶出バッファは、pH7.5ないし8.5、例えば、pH8.0であるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0064】
前記陽イオン交換クロマトグラフィを遂行することにより、タンパク質凝集体(aggregate)、HCP(host cell protein)及びその他不純物を除去することができる。
【0065】
用語「凝集体(aggregate)」とは、さまざまな物質が一つで集められた形態を意味する。「タンパク質凝集体」とは、タンパク質が蓄積または集合された形態を意味し、正常なタンパク質の凝集体だけではなく、非正常的なタンパク質の凝集体も含む。該タンパク質凝集体は、目的タンパク質と共に、その他タンパク質も結合された状態を含むが、多量体タンパク質は、目的タンパク質同士結合されたものを意味する点において、差がある。
【0066】
用語「HCP(host cell protein)」は、生物治療剤の製造過程及び生産過程において、宿主有機体によって生成される工程関連タンパク質不純物を意味する。
【0067】
前記段階(2)は、陽イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階後、混合モードクロマトグラフィ(MMC:mixed-mode chromatography)を遂行する段階をさらに含んでもよい。
【0068】
用語「混合モードクロマトグラフィ(MMC:mixed-mode chromatography)」とは、固定相と分析物との間に、1以上の形態の相互作用を利用するクロマトグラフィ方法を意味する。
【0069】
前記混合モードクロマトグラフィは、前平衡化段階、平衡化段階、サンプルローディング段階、洗浄I段階、洗浄II段階及び溶出段階を含んでもよい。
【0070】
前記混合モードクロマトグラフィは、一般的な混合モード樹脂を使用して遂行されうる。前記混合モード樹脂の例は、Capto (登録商標) adhereなどがあるが、それに制限されるものではない。
【0071】
前記混合モードクロマトグラフィは、結合及び溶出モードで遂行されうるが、それに制限されるものではない。
【0072】
前記混合モードクロマトグラフィのローディング量は、10ないし15g/L樹脂でもあるが、それに制限されるものではない。
【0073】
前記混合モードクロマトグラフィの洗浄II段階において、洗浄バッファIIは、約200mMないし約400mM、約200mMないし約350mM、または約250mMないし約350mM、例えば、約200mMまたは約300mMのアルギニンを含んでもよい。
【0074】
前記混合モードクロマトグラフィの洗浄バッファIIは、Tris-HCl、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0075】
前記混合モードクロマトグラフィの洗浄バッファIIは、pH8.5ないし9.5、例えば、pH9.0であるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0076】
前記混合モードクロマトグラフィの溶出バッファは、約100mMないし約1,000mM、約200mMないし約800mM、約300mMないし約700mM、約400mMないし約600mM、例えば、約500mMのアルギニンを含んでもよい。該アルギニンの濃度は、前記範囲内において、生産物の純度及び収率の均衡を考慮し、適切に選択することができる。
【0077】
前記混合モードクロマトグラフィの溶出バッファは、Tris-HCl、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0078】
前記混合モードクロマトグラフィの溶出バッファは、pH7.5ないし8.5、例えば、pH8.0であるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0079】
前記混合モードクロマトグラフィを遂行することにより、タンパク質凝集体及びHCPを除去することができる。
【0080】
前記段階(2)は、混合モードクロマトグラフィを遂行する段階後、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC:hydrophobic interaction chromatography)を遂行する段階をさらに含んでもよい。
【0081】
用語「疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC:hydrophobic interaction chromatography)」は、固定相の作用基と分析物との疎水性相互作用を利用するクロマトグラフィ方法を意味する。
【0082】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィは、平衡化段階、サンプルローディング段階、洗浄I段階、洗浄II段階、洗浄III段階及び溶出段階を含んでもよい。
【0083】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィは、一般的な疎水性相互作用樹脂を使用して遂行されうる。前記疎水性相互作用樹脂の例は、Butyl-S Sepharose 6 Fast Flow、Capto Octyl、Octyl Sepharose 4 Fast Flow、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(low sub)、Capto Butyl、Butyl Sepharose 4 Fast Flow、Phenyl Sepharose High Performance、Capto Phenyl ImpRes、Butyl Sepharose High Performance、Capto Butyl ImpRes、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(high sub)、Capto Phenyl(high sub)などがあるが、それらに制限されるものではない。
【0084】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィは、結合及び溶出モードで遂行されうるが、それに制限されるものではない。
【0085】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィのローディング量は、3ないし6g/L樹脂でありうる。
【0086】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄II段階において、洗浄バッファIIは、約0.1Mないし約1.0M、約0.1Mないし約0.8M、約0.1Mないし約0.6M、約0.1Mないし約0.5M、約0.2Mないし約1.0M、約0.2Mないし約0.8M、約0.2Mないし約0.6M、約0.2Mないし約0.4M、約0.3Mないし約1.0M、約0.3Mないし約0.8M、約0.3Mないし約0.6M、または約0.3Mないし約0.5M、例えば、約0.4Mの硫酸アンモニウムを含んでもよい。
【0087】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄バッファIIは、Tris-HCl、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0088】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄バッファIIは、pH7.5ないし8.5、例えば、pH8.0でもあるが、それに制限されるものではない。
【0089】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄III段階において、洗浄バッファIIIは、約0.5Mないし約2.0M、約0.5Mないし約1.8M、約1.0Mないし約2.0M、約1.0Mないし約1.8M、約1.2Mないし約2.0M、または約1.2Mないし約1.8M、例えば、約1.5Mの塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0090】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄バッファIIIは、Tris-HCl、EDTA、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0091】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの洗浄バッファIIIは、pH7.5ないし8.5、例えば、pH8.0でもあるが、それに制限されるものではない。
【0092】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの溶出バッファは、約0.1Mないし約1.5M、約0.1Mないし約1.2M、約0.1Mないし約1.0M、約0.1Mないし約0.8M、約0.3Mないし約1.5M、約0.3Mないし約1.2M、約0.3Mないし約1.0M、または約0.3Mないし約0.8M、例えば、約0.5Mの塩化ナトリウム(NaCl)を含んでもよい。前記塩化ナトリウム濃度が1.5Mを超える場合、組換えECMタンパク質が溶出されないことがある。
【0093】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの溶出バッファは、Tris-HClをさらに含んでもよい。
【0094】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィの溶出バッファは、pH7.5ないし8.5、例えば、pH8.0であるものでもあるが、それに制限されるものではない。
【0095】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィを遂行することにより、タンパク質多量体及びHCPを除去することができる。
【0096】
前記段階(2)は、陰イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、陽イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、混合モードクロマトグラフィを遂行する段階と、疎水性相互作用クロマトグラフィを遂行する段階と、を順次に含んでもよい。前記段階(2)は、組換えタンパク質を分離及び精製することができる公知された方法を追加してさらに含んでもよい。例えば、回収及び清澄化(harvest and clarification)、限外濾過(ultrafiltration)、透析濾過(diafiltration)、S/D(solvent/detergent)ウイルス不活性化、中間深層濾過(intermediate depth filter)、またはそれらの2以上の組み合わせを追加してさらに遂行することができる。前述の回収及び清澄化、限外濾過、透析濾過、S/Dウイルス不活性化及び中間深層濾過は、一般的な方法によっても遂行される。
【0097】
前記段階(2)は、段階(1)で得られた培養液の回収及び清澄化段階と、限外濾過及び透析濾過段階と、陰イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、S/Dウイルス不活性化段階と、陽イオン交換クロマトグラフィを遂行する段階と、混合モードクロマトグラフィを遂行する段階と、疎水性相互作用クロマトグラフィを遂行する段階と、限外濾過及び透析濾過段階と、中間深層濾過段階と、を順次に含んでもよい。
【0098】
他の態様は、組換えECMタンパク質を含む試料に対し、塩酸塩を含む移動相を使用し、サイズ排除クロマトグラフィを遂行する段階と、
前記サイズ排除クロマトグラフィ結果を基に、試料中の組換えECMタンパク質の単量体を分析する段階と、を含む、組換えECMタンパク質の単量体を検定する方法を提供する。
【0099】
前記組換えECMタンパク質の単量体を検定する方法は、組換えHAPLNタンパク質単量体を検定する方法でもあり、さらに望ましくは、組換えHAPLN1タンパク質単量体を検定する方法でもあり、最も望ましくは、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単量体を検定する方法でありうる。
【0100】
前記移動相に塩酸塩を含むことにより、組換えECMタンパク質の分離量が増加し、クロマトグラムの不正確なピークが顕著に低減されうる。
【0101】
前記移動相に含まれる塩酸塩は、その種類を制限するものではない。前記塩酸塩は、アルギニン塩酸塩(Arg-HCl)、アニリン塩酸塩、アデニン塩酸塩、グアニン塩酸塩、グアニジン塩酸塩(Gdn-HCl)、ヒスチジン塩酸塩(His-HCl)またはリシン塩酸塩(Lys-HCl)でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0102】
前記移動相は、塩酸塩を、約0.5M超過、約0.8M以上、約1.0M以上、約0.5M超過ないし約10.0M、約0.5M超過ないし約8.0M、約0.5M超過ないし約4.0M、約0.8Mないし約4.0M、約0.8Mないし約3.0M、約0.8Mないし約2.0M、約0.8Mないし約1.5M、約0.8Mないし約1.2M、約1.0M以上ないし約10.0M、約1.0M以上ないし約8.0M、約1.0M以上ないし約4.0M、約1.0M以上ないし約3.0M、または約1.0Mないし約2.0Mの濃度で含んでもよい。前記塩酸塩の濃度が0.5M以下である場合、組換えECMタンパク質の分離量が減少しうる。前記塩酸塩の濃度が0.5M以下である場合、組換えECMタンパク質の単量体を検定する能力が低下しうる。一実施例において、該移動相の添加剤として塩酸塩を使用すれば、約1.0Mの低い濃度においても、組換えECMタンパク質単量体を正確に分析することができることを確認した。
【0103】
用語「サイズ排除クロマトグラフィ(SEC:size exclusion chromatography)」とは、「ゲル濾過クロマトグラフィ(gel filtration chromatography)」とも言い、大きさにより、タンパク質を分離する方法である。他の形態のクロマトグラフィと異なり、固定相と溶質との間に引力が存在せず、単に移動相が多孔性の固定相を通過することになる。
【0104】
前記サイズ排除クロマトグラフィは、一般的な方法によって遂行されうる。前記サイズ排除クロマトグラフィは、分析用サイズ排除クロマトグラフィでありうる。
【0105】
前記方法は、組換えECMタンパク質の単量体を検定することにより、組換えECMタンパク質を生産する過程において、それぞれの分離及び/または精製段階を遂行した後の結果物において、組換えECMタンパク質の単量体と、その他不純物(例:多量体など)との比率を正確に分析することができ、それにより、組換えECMタンパク質の単量体比率を分析することができる。従って、前記分析する段階において、組換えECMタンパク質の単量体と、その他不純物との比率を分析することができる。
【0106】
前記組換えECMタンパク質単量体検定方法は、組換えHAPLNタンパク質の単量体の比率を分析することができ、さらに望ましくは、組換えHAPLN1タンパク質の単量体の比率を分析することができ、最も望ましくは、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単量体の比率を分析することができる。
【発明の効果】
【0107】
一態様による培地組成物によれば、組換えECMタンパク質を生産する動物細胞を大量に培養することができる。
【0108】
他の態様による組換えECMタンパク質を生産する方法によれば、組換えECMタンパク質を高純度に分離するだけではなく、特定組換えECMタンパク質の単量体を特異的に分離することができる。
【0109】
他の態様による組換えECMタンパク質の単量体を検定する方法によれば、組換えECMタンパク質の単量体を高い正確度で分析することができ、それにより、組換えECMタンパク質の単量体と、その他不純物との比率を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】AEX線形グラディエント(linear gradient)溶出のクロマトグラムである。
【
図2】CEX段階的(step-wise)溶出のクロマトグラムである。
【
図3】CEX段階的(step-wise)溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【
図4】MMC段階的(step-wise)溶出のクロマトグラムである。
【
図5】MMC段階的(step-wise)溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【
図7】HIC比較溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【
図8】移動相に、リン酸バッファ(PB:phosphate buffer)+NaCl、5mM EDTA、または5mM EDTA+4M Gdn-HClを使用し、rhHAPLN1を含むサンプルに対してSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【
図9】移動相に、50mM PB+150mM NaCl+1M Arg-HCl pH6.3を使用し、rhHAPLN1を含むサンプルに対してSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【
図10】移動相に、50mM PB+300mM NaCl、0.1M Arg-HCl、0.5M Arg-HCl、1.0M Arg-HClまたは1.0M Gdn-HClを使用し、サンプル3に対してSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【
図11】移動相に、50mM PB+300mM NaCl、0.1M尿素(urea)、0.5M尿素、1.0M尿素、2.0M尿素、4.0M尿素または6.0M尿素を使用し、サンプル3に対してSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【
図12】移動相に、1.0M Gdn-HCl、4.0M尿素または1.0M Arg-HClを使用し、サンプル3に対してSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0111】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0112】
実施例1:組換えECMタンパク質を生産する細胞の培養
ECMタンパク質において、ヒトHAPLN1タンパク質をコーディングするポリヌクレオチドを含むベクターをCHO-K1細胞に挿入し、組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産するCHO-K1細胞株を作製した。タンパク質生産量及び品質にすぐれる細胞株を、MCB(master cell bank)として選定した。
【0113】
前記MCBを継代培養し、0.40±0.05×106cells/mLの濃度で、Thermo社のHyperforma SUB 250 Lバイオリアクタに接種し、流加培養した。
【0114】
基本培地としては、22.36g ActiPro(商標)培地+0.5846gグルタミン+10.00g HT Supplement(Thermo Fisher Scientific社)+4.29g 10N NaOH+1.80g NaHCO3を使用した。培養温度は、36.5℃に、溶存酸素量(DO:dissolved oxygen)は、40.0%に、pHは、7.00±0.20に設定した。pH調節溶液として、1M炭酸ナトリウム一水和物(sodium carbonate monohydrate)を使用した。
【0115】
供給培地(FM:feeding medium)としては、181.04g HyClone(商標) Cell Boost 7a+12.28g 10N NaOHのFM020a、及び94.60g HyClone(商標) Cell Boost 7b+105.93g 10N NaOHのFM020bを使用した。供給戦略は、下記表1に示されている通りである。
【0116】
【0117】
供給添加剤としては、50μM CuSO4を使用し、それを、流加培養0日目にバイオリアクタに添加した。
【0118】
ブドウ糖供給ストック(stock)は、400gブドウ糖/kgで準備した。流加培養3日目ないし13日目まで、ブドウ糖濃度が5.0g/L未満に低下すれば、6.0g/Lまで上げる方式でブドウ糖を供給した。
【0119】
VCD(viable cell density)が20.00×106cells/mLに逹すれば、温度を31.0℃に変更した。流加培養12日目になるか、あるいは生存率が60%未満に低下するとき、細胞を収穫した。
【0120】
実験例1:添加剤種類による組換えECMタンパク質多量体形成低減効果
組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産する細胞を培養するとき、添加剤の種類によるタンパク質多量体形成低減効果を確認するための実験を行った。
【0121】
具体的には、供給添加剤の種類、濃度及びその供給戦略をそれぞれ異ならせることを除いては、実施例1と同一方法によって細胞を培養した。各実験群の供給添加剤種類、濃度、その供給戦略、並びにそれによる細胞培養及びタンパク質生産結果を下記表2に示した。
【0122】
【0123】
表2に示されているように、CuSO4添加剤を使用したとき、組換えヒトHAPLN1タンパク質生産titerが3.87g/Lと最も高く、細胞当たり組換えヒトHAPLN1タンパク質生産量も、28.77pg/cell/dayと最も多かった。
【0124】
従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産する細胞を培養するとき、添加剤として、CuSO4のような銅化合物を使用すれば、タンパク質多量体形成低減効果にすぐれ、タンパク質生産量が増加するということを確認することができた。具体的には、50μM濃度のCuSO4を、細胞流加培養0日目に供給する場合、タンパク質多量体形成低減効果とタンパク質生産量とに最もすぐれるということが分かった。従って、それを組換えヒトHAPLN1タンパク質の量産に利用することができるということが分かった。
【0125】
実験例2:銅化合物濃度による組換えECMタンパク質多量体形成の低減効果
組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産する細胞を培養するとき、銅化合物濃度によるタンパク質多量体形成低減効果を確認するための実験を行った。
【0126】
具体的には、銅化合物の濃度をそれぞれ異ならせることを除いては、実施例1と同一方法によって細胞を培養した。各実験群の銅化合物の濃度と、それによるタンパク質生産結果とを下記表3に示した。
【0127】
【0128】
表3に示されているように、CuSO4を20μM超過の濃度で使用したとき、ヒトHAPLN1タンパク質生産titerが高くなった。特に、CuSO4を50μM以上の濃度で使用した実施例1は、すぐれたヒトHAPLN1タンパク質生産titerを示した。従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質を生産する細胞を培養するとき、CuSO4のような銅化合物を20μM超過、特に、50μM以上の濃度で使用すれば、タンパク質多量体形成低減効果にすぐれ、タンパク質生産量が増加することを確認することができた。
【0129】
実施例2:組換えECMタンパク質の単離及び精製
前記実施例1によって培養された細胞から、組換えヒトHAPLN1タンパク質を単離して精製した。具体的には、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離及び精製は、下記順序によって遂行した。
【0130】
(1)回収及び清澄化(harvest and clarification)
回収及び清澄化のために、Millipore社のDOHC及びA1HC深層フィルタを使用した。DOHC及びA1HC深層フィルタの推奨ローディング(loading)量は、それぞれ45L/m2及び90L/m2である。
【0131】
(2)限外濾過/透析濾過1(UF/DF1:ultrafiltration/diafiltration 1)
Millipore社のPellicon 3(Ultracel、Type C Screen、30kDa)を、UF/DF1膜(membrane)として選択した。ローディングサンプル濃度は、UF段階において5g/L以下であり、その後、6倍体積以上の50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH9.0バッファで透析濾過した。供給流速は、300LMH以下であり、膜通過圧力(TMP:transmembrane pressure)は、10~20psiである。推奨ローディング量は、70L/m2以下である。
【0132】
(3)陰イオン交換クロマトグラフィ(AEX:anion exchange chromatography)
LifeTech社のPoros 50HQ樹脂を捕獲樹脂(capture resin)として使用した。本段階は、結合及び溶出モードで遂行した。推奨タンパク質ローディング量は、10~50g/L樹脂である。選択された溶出バッファは、100mM His-HCl、5mM EDTA、pH5.0である。推奨UVピーク収集範囲は、25~75mAU/mmである。
【0133】
(4)S/D(solvent/detergent)ウイルス不活性化
一般的な方法により、S/Dウイルス不活性化を行った。
【0134】
(5)陽イオン交換クロマトグラフィ(CEX:cation exchange chromatography)
本段階は、結合及び溶出モードで遂行した。Cytiva社(旧GE Healthcare社)のCapto S ImpAct樹脂を、CEX樹脂として使用した。推奨CEXローディング量は、10~15g/L樹脂である。CEXを遂行することにより、タンパク質凝集体、HCP(host cell protein)、及びその他不純物を除去した。50mM Tris-HCl、100mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0が洗浄バッファIIとして推奨され、50mM NaAc、350mM NaCl、5mM EDTA、pH5.5が洗浄バッファIIIとして推奨される。推奨溶出バッファは、50mM Tris-HCl、370mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0である。推奨UVピーク収集範囲は、25~50mAU/mmである。
【0135】
(6)混合モードクロマトグラフィ(MMC:mixed-mode chromatography)
本段階は、結合及び溶出モードで遂行した。Cytiva社(旧GE Healthcare社)のCapto adhere樹脂を、MMC樹脂として使用した。推奨ローディング量は、10~15g/L樹脂である。タンパク質凝集体及びHCPをさらに除去するために、溶出バッファは、50mM Tris-HCl、0.5Mアルギニン(Arg)、5mM EDTA、pH8.0を使用した。
【0136】
(7)疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC:hydrophobici nteraction chromatography)
本段階は、結合及び溶出モードで遂行した。Cytiva(旧GE Healthcare)社のButyl Sepharose 4 Fast Flow樹脂を、HIC樹脂として使用した。推奨ローディング量は、3
~6g/L樹脂である。50mM Tris-HCl、1.5M NaCl、pH8.0が洗浄バッファIIIとして推奨される。50mM Tris-HCl、0.5M NaCl、pH8.0を使用し、高純度に目的タンパク質を溶出した。
【0137】
(8)限外濾過/透析濾過2(UF/DF2:ultrafiltration/diafiltration 2)
Millipore社のPellicon 3(Ultracel、Type C Screen、10kDa)を、UF/DF2段階のために選択した。ロードサンプルは、UF段階において、1~3g/Lに濃縮された後、6倍体積以上の20mM NaAc、pH5.0バッファで透析濾過した。UF/DF2プール(pool)濃度は、4.5~5.5mg/mLである。供給流速は、300LMH以下であり、膜通過圧力(TMP)は、10~20psiである。ロード容量は、70g/m2以下である。
【0138】
(9)中間深層濾過(Int.DF:intermediate depth filtration)
中間深層濾過のために、Millipore社のX0SP深層フィルタを選択し、HCPを除去した。X0SPフィルタの推奨ローディング量は、400~800g/m2である。
【0139】
(10)剤形化及びBulk Fill
DS(drug substance)の濃度は、2.0±0.2g/Lである。剤形バッファ組成は、DPD(drug product development)によって決定され、DSPD(downstream process development)に移転された。PS80及びスクロースは、VFプール試料に、それぞれ最終濃度0.04%(w/v)及び8%(w/v)で添加された。最終0.2μm濾過後、DSを得た。
【0140】
実験例3:特定組換えECMタンパク質を特異的に単離するためのAEX条件
ECMタンパク質のうちHAPLN1タンパク質は、40~50kDaの分子量を有する。
【0141】
前記実施例2-(3)の陰イオン交換クロマトグラフィ(AEX)段階において、組換えヒトHAPLN1タンパク質を特異的に単離することができるAEX条件を最適化させるための実験を行った。
【0142】
(1)溶出条件
(1.1)AEX線形グラディエント比較溶出
材料:
-カラム:Poros 50HQ、3.024mL(0.5cm×15.4cm)
-ローディング物質:濃度2.64g/L、pH9.06、伝導度1.44mS/cm
-ローディング量:30g/L樹脂
-カラム洗浄(sanitization)溶液:1.0M NaOH
-前平衡化バッファ:50mM Tris-HCl、1M (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-平衡化/洗浄バッファI:50mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM EDTA、pH9.0
-洗浄バッファII:50mM Tris-HCl、10mM NaCl、5mM EDTA、pH9.0
溶出バッファ:対照群:50mM Tris-HCl、80mM (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.5;条件1-A:20mM His-HCl、pH7.5、B:50mM His-HCl、30mM NaCl、5mM EDTA、pH5.8;条件2-A:100mM His-HCl、pH7.0、B:100mM His-HCl、5mM EDTA、pH5.5;条件3-A:100mM His-HCl、pH7.0、B:100mM His-HCl、5mM EDTA、pH5.0;20CV(column volume)の間、AからBに線形グラディエント溶出
-ストリップバッファ:50mM Tris-HCl、1M (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-カラム保存溶液:20%エタノール
【0143】
実験のプロセス:
溶出物は、25mAU/mmないし25mAU/mmで収集した。クロマトグラムを使用し、溶出条件を検証した。
【0144】
結果:
下記表4に、各溶出条件による組換えヒトHAPLN1タンパク質収率、SEC分析結果及びHCP濃度を示した。表4に示されているように、溶出バッファに塩を添加するより、塩を添加せず、100mM His-HClを添加したとき、組換えヒトHAPLN1タンパク質捕獲効果にさらにすぐれていた。また、100mM His-HClを添加した場合、対照群に比べ、HCPが50%低減した。
【0145】
【0146】
(1.2)AEX線形グラディエント溶出
材料:
-カラム:Poros 50HQ、3.024mL(0.5cm×15.4cm)
-ローディング物質:濃度2.64mg/mL、pH9.06、伝導度1.44mS/cm
-ローディング量:30g/L樹脂
-衛生化(sanitization)溶液:1.0M NaOH
-前平衡化バッファ:50mM Tris-HCl、1M (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-平衡化/洗浄バッファI:50mM Tris-HCl、50mM NaCl、5mM EDTA、pH9.0
-洗浄バッファII:50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH9.0
溶出バッファ:A:100mM His-HCl、pH7.0、B:100mM His-HCl、5mM EDTA、pH5.0;20CV(column volume)の間、AからBに線形グラディエント溶出。
-ストリップバッファ:50mM Tris-HCl、450mM (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-保存溶液:20%エタノール
【0147】
実験のプロセス:
線形グラディエント比較溶出結果を基に、UF/DF1後、物質をPoros 50HQカラムにローディングし、段階的溶出方法を使用し、最適の溶出バッファを決定した。SEC純度分析を使用し、最適の溶出条件を確認した。
【0148】
結果:
図1は、AEX線形グラディエント溶出のクロマトグラムである。
表4及び
図1に示されているように、100mM His-HClは、付加的な塩添加なしにも、組換えヒトHAPLN1タンパク質を効率的に捕獲した。純度と収率との均衡を合わせるために、pH5.0を、溶出のためのpHとして選択した。
【0149】
従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質を特異的に単離するために、AEX溶出バッファとして、100mM前後のHis-HClを選択することができるということが分かった。特に、100mM His-HClを使用すれば、すぐれた純度及び収率でもって、組換えヒトHAPLN1タンパク質を単離することができる。例えば、AEX溶出バッファとして、100mM His-HCl、5mM EDTA、pH5.0を使用することができる。
【0150】
実験例4:組換えECMタンパク質凝集体、HCP及びその他不純物を除去するためのCEX条件
前記実施例2-(5)の結合及び溶出モードCEXは、組換えヒトHAPLN1タンパク質凝集体、HCP及びその他不純物を除去するために導入した。従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質凝集体、HCP及びその他不純物を除去するためのCEX条件を最適化させるための実験を行った。
【0151】
(1)溶出条件
材料:
-カラム:Capto S ImpAct、2.631mL(0.5cm×13.4cm)
-ロード物質:AEX溶出物、濃度11.844mg/mL、pH5.52、伝導度11.70mS/cm
-ローディング量:10mg/mL樹脂
-平衡化/線状Iバッファ:50mM NaAc-HAc、5mM EDTA、pH5.5
-洗浄IIバッファ:50mM Tris-HCl、100mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0
-洗浄IIIバッファ:50mM NaAC、350mM NaCl、5mM EDTA、pH5.5
溶出バッファ:(A)50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0;(B)50mM Tris-HCl、500mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0;段階的溶出:20% B(100mM NaCl)、5CV;40% B(200mM NaCl)、5CV;60% B(300mM NaCl)、5CV;75% B(375mM NaCl)、5CV;85% B(425mM NaCl)
-ストリップバッファ:50mM Tris-HCl、500mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0
【0152】
実験のプロセス:
段階的溶出方法を遂行し、最適溶出条件を確認した。ローディング量は、10g/L樹脂であり、溶出物は、25mAU/mmないし25mAU/mmで収集した。各分画のタンパク質濃度を測定し、段階的回復量を計算した。また、サンプル純度は、SDS_PAGE_NRによって分析した。
【0153】
結果:
溶出条件は、生産物の品質に重要である。最適条件の基準は、不純物除去を基とする。
【0154】
【0155】
図3は、CEX段階的溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【0156】
CEX段階的溶出において、HCP試験結果は、下記表5に示した。
【0157】
【0158】
図3及び表5に示されているように、100mM NaCl(E01)を使用したとき、HCP除去が最も多くなり、目的タンパク質の損失が0.7%に過ぎなかった。分画E02~E04及び分画E05の収率は、それぞれ61.8%及び1.6%であった。NaClが増加するにつれて、HMW含量が増加した。生産物の純度及び収率の均衡のために、溶出バッファとして、50mM Tris-HCl、370mM NaCl、5mM EDTA、pH8.0が推奨された。
【0159】
実験例5:組換えECMタンパク質凝集体及びHCPを除去するためのMMC条件
前記実施例2-(6)の結合及び溶出モードMMCは、組換えヒトHAPLN1タンパク質凝集体及びHCPをさらに除去するために使用された。従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質凝集体及びHCPを除去するためのMMC条件を最適化させるための実験を行った。
【0160】
(1)溶出条件
Capto adhereを使用し、組換えヒトHAPLN1タンパク質凝集体及びHCPを除去した。CEX溶出物を、Capto adhereカラムにローディングした。50L物質生産の線形勾配溶出結果に基づき、最適溶出条件を段階的溶出方法によって確認した。
【0161】
材料:
-カラム:Capto adhere、2.985mL(0.5cm×15.2cm)
-ロード物質:CEX溶出物、濃度3.105mg/mL、HCP 155217ng/mg、SEC純度52.9%
-ローディング量:7.5g/L樹脂
-前平衡化バッファ:50mM NaAc-HAc、1M NaCl、5mM EDTA、pH5.5
-平衡化/洗浄バッファI:50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0
溶出バッファ:(A)50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0;(B)50mM Tris-HCl、1M Arg、5mM EDTA、pH8.0;段階的溶出:20% B(200mM Arg)、5CV;40% B(400mM Arg)、10CV;50% B(500mM Arg)、10CV;60% B(600mM Arg)、10CV;70% B(700mM Arg)、10CV
-ストリップバッファ:50mMHAc
【0162】
実験のプロセス:
段階的溶出を使用し、最適の溶出条件を決定した。CEX溶出物を、Capto adhereカラムに7.5g/L樹脂にローディングし、溶出物を25mAU/mmないし25mAU/mmで収集した。各分画のタンパク質濃度を測定し、段階的回復量を計算した。HCP及びSDS_PAGE_NR純度もテストした。
【0163】
結果:
図4は、MMC段階的溶出のクロマトグラムである。
【0164】
図5は、MMC段階的溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【0165】
MMC段階的溶出におけるHCP試験結果は、下記表6に示した。
【0166】
【0167】
図5及び表6に示されているように、200mMアルギニン(ピーク1)を使用したとき、HCP除去が最も多くなり、目的タンパク質の損失が0.2%に過ぎなかった。ピーク2及びピーク3の収率は、それぞれ39.5%及び28.1%であった。アルギニン濃度が高いとき、HMWが最も多く溶出された。生産物の純度及び収率の均衡のために、溶出バッファとして、50mM Tris-HCl、500mMアルギニン、5mM EDTA、pH8.0が推奨された。200mMアルギニンは、洗浄段階で使用されうる。
【0168】
実験例6:組換えECMタンパク質の純度を進めるためのHIC条件
前記実施例2-(7)のHICは、組換えヒトHAPLN1タンパク質多量体及びHCPを除去するために使用された。従って、組換えヒトHAPLN1タンパク質多量体及びHCPを除去するためのHIC条件を最適化させるための実験を行った。
【0169】
(1)溶出条件
材料:
-カラム:Butyl Sepharose 4 Fast Flow、2.631mL(0.5cm×13.4cm)
-ロード物質:1)MMC溶出物、濃度0.590mg/mL、pH8.09、146.35mS/cm、SEC純度68.9%;2)MMC溶出物、濃度0.543mg/mL、pH8.10、145.82mS/cm、SEC純度68.9%
-ローディング量:5g/L樹脂
-平衡化/洗浄バッファI:50mM Tris-HCl、1M (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-洗浄バッファII:50mM Tris-HCl、0.4M (NH4)2SO4、5mM EDTA、pH8.0
-洗浄バッファIII:1)50mM Tris-HCl、2M NaCl、5mM EDTA、pH8.0;2)50mM Tris-HCl、1.5M NaCl、5mM EDTA、pH8.0
溶出バッファ:
1)(A)50mM Tris-HCl、2M NaCl、5mM EDTA、pH8.0;(B)50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0;段階的溶出:25% B(1.5M NaCl)、10CV;50% B(1M NaCl)、10CV;75% B(0.5M NaCl)、10CV;90% B(0.2M NaCl)、10CV;100% B(0M NaCl)、10CV;
2)50mM Tris-HCl、0.5M NaCl、pH8.0
-ストリップバッファ:50mM Tris-HCl、5mM EDTA、pH8.0
【0170】
実験のプロセス:
段階的溶出方法を遂行し、洗浄III及び溶出条件を決定した。MMC溶出物を、HICカラムにローディングする前、~1M (NH4)2SO4で調整した。ローディング量は、5g/L樹脂であり、溶出物は、25mAU/mmないし25mAU/mmで収集した。各分画のタンパク質濃度を測定し、段階的回復量を計算した。SDS_PAGE_NRを使用し、純度をテストした。
【0171】
結果:
図6は、HIC比較溶出のクロマトグラムである。
【0172】
図7は、HIC比較溶出のSDS_PAGE_NR結果である。
【0173】
HIC段階的溶出の結果は、下記表7に示した。
【0174】
【0175】
図7及び表7に示されているように、洗浄バッファIIにより、HMWが最も多く除去され、目的タンパク質は、pH8.0において、1.5M超過のNaCl下において溶出されなかった。従って、Run2において、洗浄IIIに、50mM Tris-HCl、1.5M NaCl、5mM EDTA、pH8.0が使用され、溶出に、50mM Tris-HCl、0.5M NaCl、5mM EDTA、pH8.0が使用された。最終的に、2番目実験の収率は、34.8%であった。従って、洗浄バッファIIIとして、50mM Tris-HCl、1.5M NaCl、5mM EDTA、pH8.0が使用され、溶出バッファとして、50mM Tris-HCl、0.5M NaCl、pH8.0が使用された。
【0176】
実施例3:組換えECMタンパク質の検定方法
塩酸塩を含む移動相を使用し、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を遂行することにより、試料中の組換えECMタンパク質の単量体及びその他不純物を分析した。サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の具体的な条件は、次の通りである:
-カラム:TSKgel G3000SWXL、7.8x300mm、5μm Steel(東ソー製)
-移動相:50mMリン酸バッファ(PB:phosphate buffer)、300mM NaCl、1M Gdn-HClまたはArg-HCl pH7.5(±0.5)
-検出波長:280nm
-流速:1.0mL/min
-カラム温度:25±3℃
-サンプル温度:5±3℃
-試料注入量:100μg
【0177】
実験例7:組換えECMタンパク質の正確な分析のための添加剤のスクリーニング
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用し、組換えECMタンパク質の単量体及びその他不純物を分析する場合、不正確なピーク発生を低減させ、正確度を向上させることができる移動相の添加剤をスクリーニングするための実験を行った。具体的には、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用し、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単量体及びその他不純物を分析するために、移動相として使用する添加剤の種類及び濃度によるSEC分析正確度を確認した。試料としては、実施例2による組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離及び精製過程中の中間生成物を使用した。
【0178】
図8は、移動相(MP)として、リン酸バッファ(PB)+NaCl、5mM EDTA、または5mM EDTA+4M Gdn-HClを使用し、組換えヒトHAPLN1タンパク質を含むサンプルについてSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【0179】
図9は、移動相として、50mM PB+150mM NaCl+1M Arg-HCl pH6.3を使用し、組換えヒトHAPLN1タンパク質を含むサンプルについてSEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。
【0180】
図8及び
図9に示されているように、塩酸塩を移動相に添加したとき、単量体ピークが最も明確に示された。
【0181】
図10は、移動相として、50mM PB+300mM NaCl、0.1M Arg-HCl、0.5M Arg-HCl、1.0M Arg-HCl、または1.0M Gdn-HClを使用し、SEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。その分析結果は、下記表8に示した。
【0182】
【0183】
図10及び表8に示されているように、Arg-HClの濃度が上昇するにつれ、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離が良好になされた。特に、Arg-HClとGdn-HClとを1.0M濃度に使用したとき、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離量にすぐれていた。
【0184】
図11は、単量体検定添加剤として知られた尿素を、移動相として、50mM PB+300mM NaCl、0.1M尿素、0.5M尿素、1.0M尿素、2.0M尿素、4.0M尿素、または6.0M尿素を使用し、SEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。その分析結果は、下記表9に示した。
【0185】
【0186】
図11及び表9に示されているように、尿素の濃度が上昇するにつれ、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離が良好になされた。しかしながら、塩酸塩と異なり、尿素は、4.0M以上の高い濃度で使用したとき、組換えヒトHAPLN1タンパク質単離が可能であった。
【0187】
図12は、移動相として、1.0M Gdn-HCl、4.0M尿素または1.0M Arg-HClを使用し、SEC分析を行った結果を示したクロマトグラムである。その分析結果は、下記表10に示した。
【0188】
【0189】
図12及び表10に示されているように、Gdn-HCl、Arg-HClのような塩酸塩を使用すれば、1.0Mの低濃度においても、4.0Mの高濃度の尿素を使用するところと同等以上の組換えヒトHAPLN1タンパク質単離量が示されるということを確認した。
【0190】
従って、移動相の添加剤として、1.0Mの塩酸塩を使用し、SEC分析を行えば、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単離量にすぐれ、クロマトグラムの不正確なピークが顕著に低減し、組換えヒトHAPLN1タンパク質の単量体を正確に分析することができることが分かった。
【0191】
総合すれば、塩酸塩を含む移動相を使用し、サイズ排除クロマトグラフィを遂行することにより、試料中の組換えECMタンパク質単量体の比率を分析することができることを確認した。