(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置、クランプ装置の開き量の測定方法、及び、クランプ装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
H01L21/60 301J
(21)【出願番号】P 2022546815
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2020033585
(87)【国際公開番号】W WO2022049721
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】富山 俊彦
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217385(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/038135(WO,A1)
【文献】特開平07-086327(JP,A)
【文献】特開2011-049498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームを有するクランプ装置と、
前記クランプ装置を水平方向に移動させるステージと、
ロッド部材と、
前記ロッド部材と前記クランプ装置との接触を検出する接触検出部と、
前記一対のアームの開閉、及び、前記ステージの動作を制御すると共に、前記クランプ装置の位置情報を取得する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを閉じた状態で前記一対のアームのうち第1のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第1の制御と、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを開いた状態で前記第1のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第2の制御と、
前記第1の制御及び前記第2の制御において取得された前記クランプ装置の位置情報に基づいて、前記一対のアームの開き量を求める第3の制御と、
を実行する、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを閉じた状態で前記一対のアームのうち第2のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第4の制御と、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを開いた状態で前記第2のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第5の制御と、
を更に実行し、
前記第3の制御では、前記第4の制御及び前記第5の制御において取得された前記クランプ装置の位置情報を更に用いて、前記一対のアームの開き量を求める、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1の制御よりも前に行われる第6の制御であり、前記クランプ装置を移動させることで前記第1のアーム又は前記第2のアームの先端部を前記ロッド部材の先端部に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する、該第6の制御を更に実行する、請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記ロッド部材を上下方向に移動させる昇降機構を更に備える、請求項1~3の何れか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
開閉可能な一対のアームを有するクランプ装置の開き量の測定方法であって、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを閉じた状態で前記一対のアームのうち第1のアームの外側面をロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第1の工程と、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを開いた状態で前記第1のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第2の工程と、
前記第1の工程及び前記第2の工程において取得された前記クランプ装置の位置情報に基づいて、前記一対のアームの開き量を求める第3の工程と、
を含む、測定方法。
【請求項6】
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを閉じた状態で前記一対のアームのうち第2のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第4の工程と、
前記クランプ装置を移動させることで前記一対のアームを開いた状態で前記第2のアームの外側面を前記ロッド部材に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する第5の工程と、
を更に含み、
前記第3の工程では、前記第4の工程及び前記第5の工程において取得された前記クランプ装置の位置情報を更に用いて、前記一対のアームの開き量を求める、請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
前記第1の工程よりも前に行われる第6の工程であり、前記クランプ装置を移動させることで前記第1のアーム又は前記第2のアームの先端部を前記ロッド部材の先端部に接触させ、前記ロッド部材に接触したときの前記クランプ装置の位置情報を取得する、該第6の工程を更に含む、請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
請求項5~7の何れか一項に記載の測定方法によって前記クランプ装置の開き量を求める工程と、
前記クランプ装置の開き量に基づいて前記クランプ装置を校正する工程と、
を含む、クランプ装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤボンディング装置、クランプ装置の開き量の測定方法、及び、クランプ装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のワイヤによって半導体チップ上に形成された電極と回路基板上に形成された電極とを電気的に接続するワイヤボンディング装置が知られている。例えば、下記特許文献1に記載のワイヤボンディング装置は、ボンディングワイヤが挿通されたキャピラリと、当該キャピラリと連動して移動する第1のクランパと、第1のクランパの上方でワイヤを把持する第2のクランパと、第1のクランパ及び第2のクランパの開閉を制御する制御部とを備えている。
【0003】
この装置は、第1のクランパを閉じた状態で且つ第2のクランパを開いた状態でワイヤをボンディングし、その後キャピラリ及び第1のクランパを上昇させてワイヤを切断する。そして、第1のクランパを開いた状態で且つ第2のクランパを閉じた状態でキャピラリ及び第1のクランパを上昇させることでキャピラリからワイヤを延出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなワイヤボンディング装置では、所望のワイヤボンディングを行うために、ワイヤを把持するクランプ装置の開き量を高精度に制御することが望まれる。しかしながら、クランプ装置の開き量はワイヤボンディング装置の使用環境の影響を受けるので、使用環境が異なる複数のワイヤボンディング装置に搭載されたクランプ装置の開き量には機差が生じることがある。クランプ装置の開き量に機差が存在すると、ワイヤのループ形状又はテール長さにバラツキが生じ、ワイヤボンディング装置の信頼性が低下する原因となる。したがって、クランプ装置の開き量を高精度で測定することが望まれる。
【0006】
なお、ボンディング装置からクランプ装置を取り外した状態であれば、レーザ変位計等を用いてクランプ装置の開き量を測定することが可能である。しかしながら、クランプ装置の開き量は、ワイヤボンディング装置の使用時の温度条件にも影響を受けるので、ボンディング装置に組み付けられた状態でクランプ装置の開き量を測定することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様のワイヤボンディング装置は、一対のアームを有するクランプ装置と、クランプ装置を水平方向に移動させるステージと、ロッド部材と、ロッド部材とクランプ装置との接触を検出する接触検出部と、一対のアームの開閉、及び、ステージの動作を制御すると共に、クランプ装置の位置情報を取得する制御装置と、を備え、制御装置は、クランプ装置を移動させることで一対のアームを閉じた状態で一対のアームのうち第1のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第1の制御と、クランプ装置を移動させることで一対のアームを開いた状態で第1のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第2の制御と、第1の制御及び第2の制御において取得されたクランプ装置の位置情報に基づいて、一対のアームの開き量を求める第3の制御と、を実行する。
【0008】
上記態様のワイヤボンディング装置では、一対のアームを閉じた状態で第1のアームの外側面とロッド部材とが接触したときの位置情報と、一対のアームを開いた状態で第1のアームの外側面とロッド部材とが接触したときの位置情報とに基づいて、クランプ装置の開き量を求めている。したがって、ワイヤボンディング装置に組み付けられた状態でクランプ装置の開き量を測定することができる。
【0009】
一実施形態では、制御装置は、クランプ装置を移動させることで一対のアームを閉じた状態で一対のアームのうち第2のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第4の制御と、クランプ装置を移動させることで一対のアームを開いた状態で第2のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第5の制御と、を更に実行し、第3の制御では、第4の制御及び第5の制御において取得されたクランプ装置の位置情報を更に用いて、一対のアームの開き量を求めてもよい。
【0010】
上記実施形態では、一対のアームを閉じた状態で第2のアームの外側面とロッド部材とが接触したときの位置情報と、一対のアームを開いた状態で第2のアームの外側面とロッド部材とが接触したときの位置情報を更に用いてクランプ装置の開き量を求めることにより、クランプ装置の開き量をより高い精度で測定することができる。
【0011】
一実施形態では、制御装置は、第1の制御よりも前に行われる第6の制御であり、クランプ装置を移動させることで第1のアーム又は第2のアームの先端部をロッド部材の先端部に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する、該第6の制御を更に実行してもよい。
【0012】
上記実施形態では、第1のアーム又は第2のアームの先端部をロッド部材の先端部に接触させたときのクランプ装置の位置情報を取得しているので、ロッド部材の先端部の位置情報を取得することができる。
【0013】
一実施形態では、ロッド部材を上下方向に移動させる昇降機構を更に備えていてもよい。
【0014】
上記実施形態では、ロッドを上下方向に移動させることで、ワイヤボンディング時にクランプ装置とロッド部材とが接触又は干渉することを防止することができる。
【0015】
一態様では、開閉可能な一対のアームを有するクランプ装置の開き量の測定方法が提供される。この測定方法は、クランプ装置を移動させることで一対のアームを閉じた状態で一対のアームのうち第1のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第1の工程と、クランプ装置を移動させることで一対のアームを開いた状態で第1のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第2の工程と、第1の工程及び第2の工程において取得されたクランプ装置の位置情報に基づいて、一対のアームの開き量を求める第3の工程と、を含む。
【0016】
上述のように、上記態様のクランプ装置の開き量の測定方法では、ワイヤボンディング装置に組み付けられた状態でクランプ装置の開き量を測定することができる。
【0017】
一実施形態の測定方法は、クランプ装置を移動させることで一対のアームを閉じた状態で一対のアームのうち第2のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第4の工程と、クランプ装置を移動させることで一対のアームを開いた状態で第2のアームの外側面をロッド部材に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する第5の工程と、を更に含み、第3の工程では、第4の工程及び第5の工程において取得されたクランプ装置の位置情報を更に用いて、一対のアームの開き量を求めてもよい。
【0018】
上記実施形態の測定方法では、クランプ装置の開き量をより高い精度で測定することができる。
【0019】
一実施形態の測定方法は、第1の工程よりも前に行われる第6の工程であり、クランプ装置を移動させることで第1のアーム又は第2のアームの先端部をロッド部材の先端部に接触させ、ロッド部材に接触したときのクランプ装置の位置情報を取得する、該第6の工程を更に含んでもよい。
【0020】
上記実施形態の測定方法では、ロッド部材の先端部の位置情報を取得することができる。
【0021】
一態様のクランプ装置の校正方法は、上記測定方法によってクランプ装置の開き量を求める工程と、クランプ装置の開き量に基づいてクランプ装置を校正する工程と、を含む。
【0022】
上記校正方法では、クランプ装置を校正することで制御信号によって指定されたクランプ装置の開き量と実際のクランプ装置の開き量との誤差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、ボンディング装置に組み付けられた状態でクランプ装置の開き量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態のワイヤボンディング装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態のワイヤボンディング装置を示す側面図である。
【
図4】一実施形態のクランプ装置の校正方法を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態のクランプ装置の開き量の測定方法を示すフローチャートである。
【
図6】クランプ装置の動きを模式的に示す平面図である。
【
図7】クランプ装置の動きを模式的に示す平面図である。
【
図8】クランプ装置の動きを模式的に示す平面図である。
【
図9】クランプ装置の動きを模式的に示す平面図である。
【
図10】クランプ装置の動きを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0026】
図1は、一実施形態のワイヤボンディング装置の斜視図である。
図2は、ワイヤボンディング装置の側面図である。
図1及び
図2に示すワイヤボンディング装置1は、回路基板上に配置された半導体チップDに対してワイヤWを接合する。
図1及び
図2では、互いに直交する3方向をX方向(第1の方向)、Y方向(第2の方向)及びZ方向(第3の方向)として図示している。X方向はボンディング対象である半導体チップDの搬送方向を示し、Y方向はX方向に垂直な水平方向を示し、Z方向はワイヤボンディング装置1の高さ方向を示している。
図1では、説明の便宜上、後述するロッド部材20を省略して図示している。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ワイヤボンディング装置1は、XYステージ2、ボンディングユニット10、ロッド部材20及び制御装置30を備えている。XYステージ2は、その上にボンディングユニット10を支持している。XYステージ2は、例えばステッピングモータによって、X方向及びY方向を含む二次元平面であるXY平面内において、その上に支持されたボンディングユニット10を水平方向に移動させる。このXYステージ2は、当該XYステージ2のXY平面内の座標位置を示す情報をエンコーダ出力して出力する。
【0028】
ボンディングユニット10は、ボンディングヘッド3、Z方向駆動機構4、超音波ホーン5、クランプ装置6、キャピラリ7、スプール8及びカメラ9を有している。ボンディングヘッド3は、XYステージ2上に支持されている。Z方向駆動機構4は、ボンディングヘッド3に取り付けられている。Z方向駆動機構4は、例えばモータの駆動力によってX方向に延在する回転軸周りに回転することで、クランプ装置6及びキャピラリ7をZ方向に移動させる。
【0029】
Z方向駆動機構4には、超音波ホーン5が取り付けられている。したがって、超音波ホーン5は、XYステージ2の駆動によってX方向及びY方向に移動する。超音波ホーン5は、Z方向駆動機構4からY方向に延在しており、その先端部にはキャピラリ7が取り付けられている。キャピラリ7には、スプール8から供給されるワイヤWが挿通されている。キャピラリ7は、ワイヤWを半導体チップDに接合する。
【0030】
クランプ装置6は、キャピラリ7の上方でZ方向駆動機構4に取り付けられている。したがって、クランプ装置6は、XYステージ2の駆動によって超音波ホーン5と共にX方向及びY方向に移動する。
【0031】
図3(a)は、例示的なクランプ装置6を模式的に示す平面図である。
図3(a)に示すように、クランプ装置6は、一対のアーム12、変形部13及び駆動部14を有している。一対のアーム12は、X方向において互いに近接又は離間することで開閉する。クランプ装置6は、一対のアーム12を開閉することでキャピラリ7の上方でワイヤWを把持する。
【0032】
一対のアーム12は、第1のアーム15及び第2のアーム16を含んでいる。第1のアーム15は、基端部15aと先端部15bとの間でY方向に延在している。第1のアーム15は、一対のアーム12の開閉方向(X方向)の内側に位置する内側面15cと、一対のアーム12の開閉方向の外側に位置する外側面15dを含んでいる。同様に、第2のアーム16は、基端部16aと先端部16bとの間でY方向に延在している。第2のアーム16は、一対のアーム12の開閉方向(X方向)の内側に面する内側面16c、及び、一対のアーム12の開閉方向の外側に面する外側面16dを含んでいる。
【0033】
第1のアーム15の内側面15c及び第2のアーム16の内側面16cには、ワイヤWを挟持する一対のクランプ片17が設けられている。一対のクランプ片17は、先端部15b及び先端部16bに近接する位置において第1のアーム15の内側面15c及び第2のアーム16の内側面16cに固定されている。
【0034】
一対のアーム12の基端部15a,16aは、変形部13に接続されている。変形部13は、一対のアーム12と駆動部14との間に設けられている。変形部13は、例えばコの字状の平面形状を有しており、駆動部14の伸縮に伴って変形する。
【0035】
駆動部14は、例えば電気エネルギーを運動エネルギーに変換する圧電素子であり、印加された電圧に応じて変形する。駆動部14に所定の電圧が印加されると、駆動部14はY方向に伸びて変形部13を押圧する。駆動部14によって押圧された変形部13は、
図3(b)に示すように、一対のアーム12がX方向に開くように弾性変形する。反対に、駆動部14への電圧の印加が停止されると、駆動部14がY方向に縮み、変形部13は一対のアーム12が閉じるように弾性変形する。駆動部14に印加される電圧は、制御装置30から送出される制御信号によって制御される。すなわち、クランプ装置6は、当該制御装置30によって指定された開き量になるように一対のアーム12を開閉する。
【0036】
図1を再び参照する。カメラ9は、X方向においてクランプ装置6に対してずれた位置に配置されている。カメラ9は、例えばボンディングヘッド3に取り付けられ、XYステージ2の駆動によってクランプ装置6及びキャピラリ7と共にX方向及びY方向に移動する。カメラ9は、例えば、半導体チップD及びキャピラリ7を含む領域を撮影し、撮影によって得られた画像データを制御装置30に出力する。
【0037】
また、ボンディングヘッド3のY方向前方には、ボンディング対象である半導体チップDを支持するボンディングステージ11が設けられている。ボンディングステージ11上には、搬送装置11aが設けられている。搬送装置11aは、回路基板上に載置された半導体チップDをX方向に搬送する。
【0038】
図2に示すように、ロッド部材20は、ボンディングユニット10のY方向前方に設けられている。ロッド部材20は、金属等の導電性材料によって構成された長尺部材である。ロッド部材20は、基端部20a及び先端部20bを有しており、当該基端部20aと先端部20bとの間でY方向に延在している。
【0039】
ロッド部材20には、接触検出部26が接続されている。接触検出部26は、クランプ装置6とロッド部材20との接触状態を検出する。例えば、接触検出部26は、ロッド部材20に電圧が印加すると共に、ロッド部材20に流れる電流を検出する。接触検出部26は、例えばクランプ装置6とロッド部材20とが接触することでロッド部材20に電流が流れたことを検出するとクランプ装置6とロッド部材20とが接触したことを示す接触情報を制御装置30に出力する。
【0040】
また、ワイヤボンディング装置1は、昇降機構22を更に備えている。昇降機構22は、ロッド部材20を上下方向(Z方向)に移動させる。
図2に示す実施形態では、昇降機構22は、フレーム23及び駆動装置24を備えている。フレーム23は、Z方向に延在している。駆動装置24には、ロッド部材20の基端部20aが接続されている。駆動装置24は、例えばロータリーソレノイドを含み、ロッド部材20をフレーム23に沿ってZ方向に移動させる。なお、昇降機構22は、
図2に示す構成に限定されず、ロッド部材20をZ方向に移動できる限り、任意の構成を採用することができる。
【0041】
制御装置30は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、ワイヤボンディング装置1全体の動作を制御する。この制御装置30では、入力装置を用いてオペレータがワイヤボンディング装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、ワイヤボンディング装置1の動作状況を可視化して表示すことができる。さらに、制御装置30の記憶部には、ワイヤボンディング装置1で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムが格納されている。制御装置30は、この制御プログラムをプロセッサで実行することにより後述する各種機能を実現する。
【0042】
制御装置30は、XYステージ2、Z方向駆動機構4、クランプ装置6、カメラ9、昇降機構22及び接触検出部26と通信可能に接続されている。制御装置30は、XYステージ2、Z方向駆動機構4、クランプ装置6、カメラ9及び昇降機構22に制御信号を送出し、XYステージ2の動作、Z方向駆動機構4の動作、クランプ装置6の開閉動作、カメラ9の動作、昇降機構22の動作等を制御する。また、制御装置30は、クランプ装置6とロッド部材20とが接触したときのクランプ装置6の位置情報に基づいて、クランプ装置6の開き量dを測定し(
図3(b)参照)、測定された開き量dに基づいてクランプ装置6を校正する機能を有する。
【0043】
図1に示すように、制御装置30は、機能的構成として、画像取得部31、駆動制御部32、接触情報取得部33、位置情報取得部34、開き量測定部35及び校正部36を備えている。画像取得部31は、カメラ9によって撮像された画像を取得する。駆動制御部32は、XYステージ2及びZ方向駆動機構4、昇降機構22に制御信号を送出し、クランプ装置6及びキャピラリ7をX方向、Y方向及びZ方向に移動させる共に、ロッド部材20をZ方向に移動させる。
【0044】
接触情報取得部33は、クランプ装置6とロッド部材20とが接触したことを示す接触情報を接触検出部26から取得する。位置情報取得部34は、例えばXYステージ2及びZ方向駆動機構4のエンコーダ出力に基づいて、クランプ装置6のX方向、Y方向及びZ方向における位置情報を取得する。開き量測定部35は、クランプ装置6の位置情報に基づいてクランプ装置6の一対のアーム12の開き量を測定する。校正部36は、開き量測定部35によって測定された一対のアーム12の開き量に基づいて、クランプ装置6を校正する。
【0045】
次に、
図4を参照して、制御装置30の機能について詳細に説明すると共に、一実施形態のワイヤボンディング装置1を用いたクランプ装置6の校正方法について説明する。
【0046】
図4は、一実施形態のクランプ装置6の校正方法を示すフローチャートである。
図4に示す校正方法は、ワイヤボンディング装置1の制御装置30によって実行される。
図4に示すように、この校正方法では、まず制御装置30によってクランプ装置6の開き量が測定される(ステップST1)。
【0047】
図5を参照して、クランプ装置6の開き量の測定方法について説明する。
図5は、クランプ装置6の開き量の測定方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、この測定方法では、まず駆動制御部32は、昇降機構22を制御して、Z方向においてロッド部材20及びクランプ装置6の高さ位置が同じになるように、ロッド部材20を上昇させる(ステップST11)。
【0048】
次に、駆動制御部32は、
図6(a)に示すように、XYステージ2を制御して、クランプ装置6をロッド部材20のY方向後方に配置し、その後クランプ装置6をY方向に沿ってロッド部材20側に移動させる。そして、駆動制御部32は、
図6(b)に示すように、第1のアーム15の先端部15bをロッド部材20の先端部20bに接触させる(ステップST12)。なお、ステップST12では、第2のアーム16の先端部16bをロッド部材20の先端部20bに接触させてもよい。ここで、ステップST11及びステップST12では、オペレータが制御装置30の入力装置を手動で操作することによって、第1のアーム15の先端部15b又は第2のアーム16の先端部16bをロッド部材20の先端部20bに接触させてもよい。
【0049】
第1のアーム15又は第2のアーム16とロッド部材20との接触が接触検出部26によって検出されると、接触検出部26から制御装置30に接触情報が送出される。接触情報取得部33によって接触情報が取得されると、位置情報取得部34は、XYステージ2のエンコーダ出力に基づいて、クランプ装置6のXY平面上の位置情報を取得する(ステップST13)(第6の制御、第6の工程)。この位置情報によって、ロッド部材20の先端部20bのXY平面上の位置が把握される。取得されたクランプ装置6の位置情報は、例えば制御装置30の記憶部に格納される。
【0050】
次に、駆動制御部32は、XYステージ2を制御して、クランプ装置6を第1の待機位置に移動させる(ステップST14)。
図7(a)に示すように、第1の待機位置は、X方向において、第1のアーム15が第2のアーム16よりもロッド部材20に近接して配置される位置である。例えば、第1の待機位置は、X方向において第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが距離Gxだけ離間し、Y方向において第1のアーム15とロッド部材20とが距離Gyだけ重なって配置される位置である。限定されるものではないが、距離Gxは例えば500μmであり、距離Gyは例えば300μmである。
【0051】
次に、駆動制御部32は、
図7(b)に示すように、XYステージ2を制御して、一対のアーム12が閉じた状態でクランプ装置6をX方向に沿ってロッド部材20側に移動させる。そして、
図7(c)に示すように、第1のアーム15の外側面15dをロッド部材20に接触させる(ステップST15)。このとき、第1のアーム15の先端部15bの付近で外側面15dはロッド部材20に対して接触する。
【0052】
第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20との接触が接触検出部26によって検出されると、接触検出部26から制御装置に接触情報が送出される。接触情報取得部33によって接触情報が取得されると、位置情報取得部34は、XYステージ2のエンコーダ出力に基づいて、少なくともクランプ装置6のX方向における位置情報を取得する(ステップST16)(第1の制御、第1の工程)。取得されたクランプ装置6の位置情報は、例えば制御装置30の記憶部に格納される。
【0053】
次に、駆動制御部32は、
図8(a)に示すように、XYステージ2を制御して、ロッド部材20から遠ざかる方向にクランプ装置6をX方向に沿って移動させて、当該クランプ装置6を第1の待機位置に配置する(ステップST17)。すなわち、駆動制御部32は、クランプ装置6をロッド部材20から離間させる。
【0054】
次に、駆動制御部32は、クランプ装置6の開き量を指定された開き量にする制御信号をクランプ装置6に送出することで、一対のアーム12を開く(ステップST18)。例えば、駆動制御部32は、指定された開き量に対応する電圧をクランプ装置6の駆動部14に印加する。次に、駆動制御部32は、
図8(b)に示すように、一対のアーム12が開いた状態でクランプ装置6をX方向に沿ってロッド部材20側に移動させる。そして、
図8(c)に示すように、第1のアーム15の外側面15dをロッド部材20に接触させる(ステップST19)。このとき、第1のアーム15の先端部15bの付近で外側面15dはロッド部材20に対して接触する。
【0055】
第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20との接触が接触検出部26によって検出されると、接触検出部26から制御装置に接触情報が送出される。接触情報取得部33によって接触情報が取得されると、位置情報取得部34は、XYステージ2のエンコーダ出力に基づいて、少なくともクランプ装置6のX方向における位置情報を取得する(ステップST20)(第2の制御、第2の工程)。取得されたクランプ装置6の位置情報は、例えば制御装置30の記憶部に格納される。
【0056】
次に、駆動制御部32は、クランプ装置6をロッド部材20から離間させてから、クランプ装置6を制御して、一対のアーム12を閉じる(ステップST21)。次に、駆動制御部32は、XYステージ2を制御して、クランプ装置6を第2の待機位置に移動させる(ステップST22)。
図9(a)に示すように、第2の待機位置は、X方向においてロッド部材20を介して第1の待機位置から隔てられた位置であり、X方向において第2のアーム16が第1のアーム15よりもロッド部材20に近接して配置される位置である。例えば、第2の待機位置は、X方向において第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20とが距離Gxだけ離間し、Y方向において第2のアーム16の先端部16bとロッド部材20の先端部20bとが距離Gyだけ重なる位置である。限定されるものではないが、距離Gxは例えば500μmであり、距離Gyは例えば300μmである。
【0057】
次に、駆動制御部32は、
図9(b)に示すように、第2の待機位置からロッド部材20に向けてクランプ装置6をX方向に沿って移動させる。そして、
図9(c)に示すように、第2のアーム16の外側面16dをロッド部材20に接触させる(ステップST23)。
【0058】
第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20との接触が接触検出部26によって検出されると、接触検出部26から制御装置に接触情報が送出される。接触情報取得部33によって接触情報が取得されると、位置情報取得部34は、XYステージ2のエンコーダ出力に基づいて、少なくともクランプ装置6のX方向における位置情報を取得する(ステップST24)(第4の制御、第4の工程)。取得されたクランプ装置6の位置情報は、例えば制御装置30の記憶部に格納される。
【0059】
次に、駆動制御部32は、
図10(a)に示すように、XYステージ2を制御して、ロッド部材20から遠ざかる方向にクランプ装置6をX方向に沿って移動させて、当該クランプ装置6を第2の待機位置に配置する(ステップST25)。すなわち、駆動制御部32は、クランプ装置6をロッド部材20から離間させる。
【0060】
次に、駆動制御部32は、クランプ装置6の開き量を指定された開き量にする制御信号をクランプ装置6に送出することで、一対のアーム12を開く(ステップST26)。次に、駆動制御部32は、
図10(b)に示すように、一対のアーム12が開いた状態でクランプ装置6をX方向に沿ってロッド部材20側に移動させる。そして、
図10(c)に示すように、第2のアーム16の外側面16dをロッド部材20に接触させる(ステップST27)。このとき、第2のアーム16の外側面16dは先端部16bの付近でロッド部材20に対して接触する。
【0061】
第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20との接触が接触検出部26によって検出されると、接触検出部26から制御装置に接触情報が送出される。接触情報取得部33によって接触情報が取得されると、位置情報取得部34は、XYステージ2のエンコーダ出力に基づいて、少なくともクランプ装置6のX方向における位置情報を取得する(ステップST28)(第5の制御、第5の工程)。取得されたクランプ装置6の位置情報は、例えば制御装置30の記憶部に格納される。
【0062】
次に、開き量測定部35は、ステップST16、ステップST20、ステップST24及びステップST28でそれぞれ取得された位置情報に基づいて、クランプ装置6の開き量を測定する(ステップST29)(第3の制御、第3の工程)。例えば、ステップST20で取得されたクランプ装置6のX方向における位置情報とステップST16で取得されたクランプ装置6のX方向における位置情報との差分値は、クランプ装置6を閉状態から開状態にしたときのX方向における第1のアーム15の移動量を表している。また、ステップST28で取得されたクランプ装置6のX方向における位置情報とステップST24で取得されたクランプ装置6のX方向における位置情報との差分値は、クランプ装置6を閉状態から開状態にしたときのX方向における第2のアーム16の移動量を表している。
【0063】
例えば、ステップST16、ステップST20、ステップST24及びステップST28で取得されたクランプ装置6のX方向における位置情報をそれぞれx1、x2、x3及びx4とした場合には、開き量測定部35、下記式(1)に従ってクランプ装置6の開き量dを求めることが可能である。
【0064】
d=|x2-x1|+|x4-x3| ・・・(1)
【0065】
クランプ装置6の開き量の測定後、駆動制御部32は、昇降機構22を制御して、クランプ装置6を下降させる(ステップST30)。クランプ装置6を下降させることによって、クランプ装置がロッド部材20に接触又は干渉することを防止することが可能となる。
【0066】
図4を再び参照する。
図4に示すように、クランプ装置6の開き量の測定後、校正部36は、測定されたクランプ装置6の開き量に基づいて、クランプ装置6を校正する(ステップST2)。この校正は、ステップST18及びステップST26において、制御装置30によって指定された開き量と、ステップST29において測定された開き量とが一致するように、クランプ装置6の駆動部14に印加される電圧を補正することによって行う。
【0067】
上述のワイヤボンディング装置1では、一対のアーム12を閉じた状態で第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが接触したときの位置情報と、一対のアーム12を開いた状態で第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが接触したときの位置情報と、一対のアームを閉じた状態で第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20とが接触したときの位置情報と、一対のアーム12を開いた状態で第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20とが接触したときの位置情報とに基づいて、一対のアーム12の開き量を求めている。したがって、ワイヤボンディング装置1に組み付けられた状態でクランプ装置6の開き量を測定することができる。
【0068】
さらに、上述のワイヤボンディング装置1では、測定されたクランプ装置6の開き量に基づいてクランプ装置6を校正しているので、制御装置30によって指定されたクランプ装置の開き量と実際のクランプ装置の開き量との誤差が小さくすることができる。
【0069】
また、上記ワイヤボンディング装置1では、ロッド部材20をZ方向に移動させることができるので、半導体チップDをボンディングする際にロッド部材20をZ方向に退避させることができる。その結果、ロッド部材20がクランプ装置6に対して接触又は干渉することを防止することができる。
【0070】
以上、種々の実施形態に係るワイヤボンディング装置1、当該ワイヤボンディング装置1を用いたクランプ装置6の開き量の測定方法、クランプ装置6の校正方法について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0071】
例えば、
図2に示すワイヤボンディング装置1は、ロッド部材20をフレーム23に沿ってZ方向に移動させる昇降機構22を備えているが、ロッド部材20をZ方向に移動できれば任意の構成を備えることができる。また、接触検出部26は、ロッド部材20に流れる電流に基づいてクランプ装置6とロッド部材20との接触を検出しているが、異なる手法を用いてクランプ装置6とロッド部材20との接触を検出してもよい。
【0072】
上記実施形態では、第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが接触したときの位置情報と、第2のアーム16の外側面16dとロッド部材20とが接触したときの位置情報とに基づいて一対のアーム12の開き量を求めているが、一実施形態では、一対のアーム12のうち一方のアームとロッド部材20とが接触したときの位置情報のみに基づいて一対のアーム12の開き量を求めてもよい。
【0073】
例えば、制御装置30は、一対のアーム12を閉じた状態で第1のアーム15の外側面15dをロッド部材20に接触させ、ロッド部材20に接触したときのクランプ装置6の位置情報を取得すると共に、一対のアーム12を開いた状態で第1のアーム15の外側面15dをロッド部材20に接触させ、ロッド部材20に接触したときのクランプ装置6の位置情報を取得し、取得されたクランプ装置6の2つの位置情報に基づいて、一対のアームの開き量を求めることが可能である。例えば、一対のアーム12を閉じた状態で第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが接触したときのX方向における位置情報をx1とし、一対のアーム12を開いた状態で第1のアーム15の外側面15dとロッド部材20とが接触したときの位置情報をx2とした場合には、X方向における第1のアーム15の移動量は、|x2-x1|と表される。制御装置30は、例えば第1のアーム15の移動量を2倍して一対のアーム12の開き量を求めてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…ワイヤボンディング装置、2…XYステージ、6…クランプ装置、12…一対のアーム、15…第1のアーム、15b…第1のアームの先端部、15d…第1のアームの外側面、16…第2のアーム、16b…第2のアームの先端部、16d…第2のアームの外側面、20…ロッド部材、20b…ロッド部材の先端部、22…昇降機構、30…制御装置。