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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】巻管へのシート状製品の巻取り装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/04 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B65H18/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023133273
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502444652
【氏名又は名称】株式会社アイムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正次
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037472(JP,A)
【文献】特開2000-255846(JP,A)
【文献】特開平08-282881(JP,A)
【文献】特開平10-035958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される中空の巻軸に同心的に固定されて巻軸と一体的に回転するリング状のシリンダユニットと、前記巻軸に同心的にかつ回動可能に装着され外周部の円周回りに複数個配設されたチャック部材によって巻管をその内周面側から着脱自在に一体的に保持するリング状のチャックユニットとを、交互に前記巻軸の軸線方向に沿って複数並列させ、
前記シリンダユニットに、前記巻軸の軸線と平行に配置され前記チャックユニットと対向する環状側面側に開口したシリンダ孔を円周回りに複数個形設し、その各シリンダ孔に、巻軸の中空部ならびに巻軸の管壁およびシリンダユニットに形成された空気経路を通してシリンダ孔に供給される圧縮空気によって先端部が環状側面側開口から進退するピストンをそれぞれ嵌挿してなるエアシリンダを設けるとともに、前記チャックユニットに、前記シリンダユニットの前記ピストンの先端部が直接にもしくは間接的に押接する摩擦リングを、チャックユニットと一体的に回動するように設け、
回転駆動される前記巻軸と一体的に回転する前記シリンダユニットの回転動力を、シリンダユニットの前記ピストンの先端部と前記摩擦リングとの間の摩擦力によって前記チャックユニットに伝達し、チャックユニットに前記チャック部材を介して保持された巻管を回転させて、巻管にシート状製品を巻き取るようにした、巻管へのシート状製品の巻取り装置において、
前記シリンダユニットの環状側面側に、前記複数のエアシリンダのピストンの動きを阻害しない内径寸法を有する調整用リングを、シリンダユニットと同心的にかつシリンダユニットに対して円周方向に摺動自在に装着し、
前記複数のエアシリンダの各ピストンに、そのピストンの先端面からピストンの軸線方向に沿って前記シリンダユニットの外周面に向いた外方側を切り欠いてそれぞれ係合部を形設するとともに、前記調整用リングに、前記複数のエアシリンダの各ピストンにそれぞれ対応する複数の係止部を調整用リングの求心方向に出っ張るように延設し、
前記調整用リングの各係止部が、調整用リングの円周方向における長さ寸法をそれぞれ違え、前記シリンダユニットに対する調整用リングの回転角度位置を複数回変えることにより前記各エアシリンダのピストンの係合部に対して調整用リングの各係止部をそれぞれ順次係合させまたは離脱させるように設定されて、ピストンの作動を選択的に抑止し、前記摩擦リングに先端部が押接するピストンの数を変更して、摩擦リングと複数のピストンとの接触面積を調整可能とし、
前記調整用リングの外周面または前記シリンダユニットの外周面に、シリンダユニットに対する調整用リングの複数の回転角度位置を示す指標を付したことを特徴とする、巻管へのシート状製品の巻取り装置。
【請求項2】
前記シリンダユニットに6個以上のエアシリンダが円周方向に等配して設けられ、前記調整用リングに前記エアシリンダと同数の係止部が設けられた請求項1に記載の、巻管へのシート状製品の巻取り装置。
【請求項3】
前記シリンダユニットに6個のエアシリンダが設けられ、前記調整用リングに6個の係止部が設けられ、調整用リングを、その軸心位置を回転中心としてシリンダユニットに対し一方向へ7.5°ずつ回転させる毎に、ピストンの作動が抑止されるエアシリンダの数が1個ずつ増え、調整用リングを、その軸心位置を回転中心としてシリンダユニットに対し前記一方向とは反対方向へ7.5°ずつ回転させる毎に、ピストンの作動が抑止されるエアシリンダの数が1個ずつ減るように、前記6個の係止部が形成された請求項2に記載の、巻管へのシート状製品の巻取り装置。
【請求項4】
前記シリンダユニットに、前記調整用リングを介在させて調整用リングの回転動作を阻害しないようにかつ軸線方向への調整用リングの微動を許容するように環状プレートが固設され、前記調整用リングの、前記環状プレートと対向する環状側面に案内凸部および摺接突起が形設され、前記環状プレートに、前記シリンダユニットに対する前記調整用リングの回転角度位置の変化に対応して前記案内凸部が順次嵌合する複数個の小孔が円弧状に配列されて形設されるとともに、前記摺接突起が嵌入し前記複数個の小孔への前記案内凸部の嵌合動作に伴って摺接する円弧状の細長孔が形設され、前記調整用リングを前記シリンダユニットから前記環状プレートの方向へ付勢するばねが設けられた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の、巻管へのシート状製品の巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺帯状のプラスチックフィルム、紙、不織布、金属箔などの各種シート状製品(ウェブ)を、巻心となる巻管(コア)に巻き取る作業において使用されるシート状製品の巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺帯状のプラスチックフィルム、紙、不織布、金属箔などを巻管に巻き取るシート状製品の巻取り装置として、回転駆動される中空の巻軸を備え、その巻軸に同心的に固定されて巻軸と一体的に回転するリング状のシリンダユニットと、巻軸に同心的に装着され巻軸に対して回動可能なリング状のチャックユニットとを、交互に巻軸の軸線方向に複数並列させ、チャックユニットには、その外周部の円周回りに複数個のチャック部材を配設して、それら複数のチャック部材によって巻管をその内周面側から着脱自在に一体的に保持することができるようにし、シリンダユニットには、巻軸の軸線と平行に配置されチャックユニットと対向する環状側面側に開口したシリンダ孔を複数個、円周回りに形設し、その各シリンダ孔に、巻軸の中空部ならびに巻軸の管壁およびシリンダユニットに形成された空気経路を通してシリンダ孔に供給される圧縮空気によって先端部が環状側面側開口から進退するピストンをそれぞれ嵌挿してなるエアシリンダを設けるとともに、チャックユニットに、シリンダユニットのピストンの先端部が直接にもしくは間接的に押接する摩擦リングを、チャックユニットと一体的に回動するように設けた構成を有し、回転駆動される巻軸と一体的に回転するシリンダユニットの回転動力を、シリンダユニットのピストンの先端部と摩擦リングとの間の摩擦力によってチャックユニットに伝達し、チャックユニットにチャック部材を介して保持された巻管を回転させて、巻管にシート状製品を巻き取るようにした装置が知られている。
【0003】
上記したような構成を備えた装置を使用して各種のシート状製品を巻管に巻き取る場合、例えば、細断用スリッタにより細幅に切断された長尺帯状のフィルムを、チャックユニットに一体的に保持された巻管に巻き取る場合において、フィルムを均一な張力で巻き取るためには、回転駆動される巻軸と一体的に回転するシリンダユニットの回転動力がシリンダユニットのピストン先端部と摩擦リングとの間の摩擦力によりチャックユニットに伝達されてチャックユニットに発生するトルクが、各チャックユニット間でばらつくことのないようにすることが必要である。この場合、シリンダユニットのピストン先端部と摩擦リングとの摩擦係数(〔ピストン先端部と摩擦リングとの接触面に働く摩擦力〕/〔ピストン先端部と摩擦リングとの接触面に垂直に働く圧力〕)が全て同じであれば、チャックユニットの発生トルクを均一にすることは容易である。しかしながら、摩擦係数は個々にばらつきがあるので、チャックユニットの発生トルクを均一にするためには、ピストンと摩擦リングとの接触面積を調整したり、シリンダユニットのエアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整したりすることが必要となる。
【0004】
例えば、上記した構成を有するシート状製品の巻取り装置において、シリンダユニットの半径方向に、その外周面からエアシリンダのシリンダ孔まで貫通する貫通孔を形設し、エアシリンダのピストンの周面に、ピストンがシリンダ孔に後退した状態における前記貫通孔の形成位置に対応するように係止孔を形設し、その係止孔の奥部側に、永久磁石または強磁性体で形成された吸着部材を固設し、前記貫通孔および前記係止孔に、貫通孔に挿通され先端部が係止孔に嵌入して前記吸着部材と磁力で吸着し合う永久磁石または強磁性体で形成された係止ピンを抜脱可能に挿着した構成の装置が提案されている。このような構成により、前記貫通孔および前記係止孔に前記係止ピンを挿着することで、係止ピンを係止孔に係合させてピストンの動きを止め、一方、永久磁石または強磁性体で形成され先端部が貫通孔に挿入可能な形状を有する治具を使用し、係止ピンを治具の先端部に磁力で接合させて貫通孔および係止孔から抜き出すことで、シリンダ孔からのピストンの進出動作を許容するようにする。そして、複数のエアシリンダについて、シリンダ孔からピストンが進出するのを選択的に抑止することにより、摩擦リングに先端部が押接するピストンの数を変更して、摩擦リングと複数のピストンとの接触面積を調整できるようにする(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6710841号公報(第7-8頁、図6-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構成によると、係止ピンをシリンダユニットの貫通孔およびピストンの係止孔に挿脱する、といった比較的に簡単な操作により、ピストンの先端部と摩擦リングとの間の摩擦力によってシリンダユニットからチャックユニットに伝達される回転動力を調節することが可能になる。しかしながら、このような構成の装置では、係止ピンをシリンダユニットの貫通孔およびピストンの係止孔から抜き出すための専用の治具を用意する必要がある。また、貫通孔および係止孔から抜き出した係止ピンは、紛失しないように保管しておく手間が必要となる。さらに、係止ピンが貫通孔および係止孔に挿着されているかどうかが外見的には分かり辛いため、ピストンと摩擦リングとの接触面積を調整する作業に手間取る、といった問題点がある。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、回転駆動される中空の巻軸に同心的に固定されて巻軸と一体的に回転するシリンダユニットと、巻軸に同心的に装着され巻軸に対して回動可能でチャック部材によって巻管を一体的に保持するチャックユニットとを、交互に巻軸の軸線方向に複数並列させた構成を有するシート状製品の巻取り装置において、複数のチャックユニットにおける巻管へのシート状製品の巻取りトルクを均等化するため、シリンダユニットの複数のエアシリンダのピストンとチャックユニットの摩擦リングとの間の摩擦力の調整作業を容易に行うことができ、その作業のために特別な治具を用意する必要が無く一部部品を保管しておく手間も必要としない装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明では、上記課題を達成する手段として、シリンダユニットに調整用リングを装着し、その調整用リングをシリンダユニットに対して回転操作することにより、複数のエアシリンダのシリンダ孔からピストンが進出するのを選択的に抑止できるようにした。
すなわち、請求項1に係る発明は、回転駆動される中空の巻軸に同心的に固定されて巻軸と一体的に回転するリング状のシリンダユニットと、前記巻軸に同心的にかつ回動可能に装着され外周部の円周回りに複数個配設されたチャック部材によって巻管をその内周面側から着脱自在に一体的に保持するリング状のチャックユニットとを、交互に前記巻軸の軸線方向に沿って複数並列させ、前記シリンダユニットに、前記巻軸の軸線と平行に配置され前記チャックユニットと対向する環状側面側に開口したシリンダ孔を円周回りに複数個形設し、その各シリンダ孔に、巻軸の中空部ならびに巻軸の管壁およびシリンダユニットに形成された空気経路を通してシリンダ孔に供給される圧縮空気によって先端部が環状側面側開口から進退するピストンをそれぞれ嵌挿してなるエアシリンダを設けるとともに、前記チャックユニットに、前記シリンダユニットの前記ピストンの先端部が直接にもしくは間接的に押接する摩擦リングを、チャックユニットと一体的に回動するように設け、回転駆動される前記巻軸と一体的に回転する前記シリンダユニットの回転動力を、シリンダユニットの前記ピストンの先端部と前記摩擦リングとの間の摩擦力によって前記チャックユニットに伝達し、チャックユニットに前記チャック部材を介して保持された巻管を回転させて、巻管にシート状製品を巻き取るようにした、巻管へのシート状製品の巻取り装置において、前記シリンダユニットの環状側面側に、前記複数のエアシリンダのピストンの動きを阻害しない内径寸法を有する調整用リングを、シリンダユニットと同心的にかつシリンダユニットに対して円周方向に摺動自在に装着し、前記複数のエアシリンダの各ピストンに、そのピストンの先端面からピストンの軸線方向に沿って前記シリンダユニットの外周面に向いた外方側を切り欠いてそれぞれ係合部を形設するとともに、前記調整用リングに、前記複数のエアシリンダの各ピストンにそれぞれ対応する複数の係止部を調整用リングの求心方向に出っ張るように延設し、前記調整用リングの各係止部が、調整用リングの円周方向における長さ寸法をそれぞれ違え、前記シリンダユニットに対する調整用リングの回転角度位置を複数回変えることにより前記各エアシリンダのピストンの係合部に対して調整用リングの各係止部をそれぞれ順次係合させまたは離脱させるように設定されて、ピストンの作動を選択的に抑止し、前記摩擦リングに先端部が押接するピストンの数を変更して、摩擦リングと複数のピストンとの接触面積を調整可能とし、前記調整用リングの外周面または前記シリンダユニットの外周面に、シリンダユニットに対する調整用リングの複数の回転角度位置を示す指標を付したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の巻取り装置において、シリンダユニットに6個以上のエアシリンダを円周方向に等配して設け、調整用リングにエアシリンダと同数の係止部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の巻取り装置において、シリンダユニットに6個のエアシリンダを設け、調整用リングに6個の係止部を設け、調整用リングを、その軸心位置を回転中心としてシリンダユニットに対し一方向へ7.5°ずつ回転させる毎に、ピストンの作動が抑止されるエアシリンダの数が1個ずつ増え、調整用リングを、その軸心位置を回転中心としてシリンダユニットに対し前記一方向とは反対方向へ7.5°ずつ回転させる毎に、ピストンの作動が抑止されるエアシリンダの数が1個ずつ減るように、前記6個の係止部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の巻取り装置において、シリンダユニットに、調整用リングを介在させて調整用リングの回転動作を阻害しないようにかつ軸線方向への調整用リングの微動を許容するように環状プレートを固設し、前記調整用リングの、前記環状プレートと対向する環状側面に案内凸部および摺接突起を形設し、前記環状プレートに、前記シリンダユニットに対する前記調整用リングの回転角度位置の変化に対応して前記案内凸部が順次嵌合する複数個の小孔を円弧状に配列して形設するとともに、前記摺接突起が嵌入し前記複数個の小孔への前記案内凸部の嵌合動作に伴って摺接する円弧状の細長孔を形設し、前記調整用リングを前記シリンダユニットから前記環状プレートの方向へ付勢するばねを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のシート状製品の巻取り装置においては、調整用リングをシリンダユニットに対して円周方向に摺動させ、調整用リングの係止部によりシリンダユニットのエアシリンダのシリンダ孔開口を部分的に遮蔽しまたは解放状態とする。シリンダユニットの複数のエアシリンダのうち、調整用リングの係止部によってシリンダ孔開口が部分的に遮蔽されたエアシリンダについては、巻軸の中空部ならびに巻軸の管壁およびシリンダユニットに形成された空気経路を通してシリンダ孔に圧縮空気を供給してピストンを作動させようとしても、ピストンに形設された係合部が調整用リングの係止部に係合してピストンの作動が抑止され、シリンダ孔開口が開放状態とされたエアシリンダについては、シリンダ孔に圧縮空気が供給されることによりピストンが支障なく作動し、チャックユニットに設けられた摩擦リングにピストンの先端部が押接する。この場合において、調整用リングの各係止部は、調整用リングの円周方向における長さ寸法がそれぞれ違っていて、シリンダユニットに対する調整用リングの回転角度位置を複数回変えることにより各エアシリンダのピストンの係合部に対して調整用リングの各係止部がそれぞれ順次係合しまたは離脱するように設定されており、ピストンの作動を選択的に抑止することができる。このため、摩擦リングに先端部が押接するピストンの数を変更して、摩擦リングと複数のピストンとの接触面積を調整することができる。そして、調整用リングの外周面またはシリンダユニットの外周面に、シリンダユニットに対する調整用リングの複数の回転角度位置を示す指標が付されているので、その指標を視認しながら摩擦リングとピストンとの接触面積の調整作業を容易に行うことができる。
したがって、この発明に係る巻取り装置を使用すると、複数のチャックユニットにおける巻管へのシート状製品の巻取りトルクを均等化するための作業が容易になり、その作業のために特別な治具を用意する必要が無く一部部品を保管しておく手間も不要となる。
【0013】
請求項2に係る発明の巻取り装置では、6個以上のエアシリンダについてピストンを作動および抑止させることにより、摩擦リングとピストンとの接触面積を適切に調整することが可能になり、複数のチャックユニットにおける巻管へのシート状製品の巻取りトルクの均等化を良好に行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明の巻取り装置では、シリンダユニットに対して調整用リングを一方向へまたはそれとは反対方向へ7.5°ずつ回転させる毎に、ピストンの作動が抑止されるエアシリンダの数が1個ずつ増えまたは1個ずつ減って、摩擦リングとピストンとの接触面積を7段階で調整することができる。
【0015】
請求項4に係る発明の巻取り装置において、シリンダユニットに対する調整用リングの回転角度位置を変えるときは、調整用リングをばねの弾発力に抗して微動させ、シリンダユニットに固定された環状プレートから調整用リングを一旦離間させて、調整用リングの案内凸部を環状プレートの小孔から抜脱する。この状態で、環状プレートの細長孔に調整用リングの摺接突起を摺接させながらシリンダユニットに対して調整用リングを僅かに回転させる。そして、環状プレートの前記小孔と隣り合う小孔に調整用リングの案内凸部が位置したときに、調整用リングをばねの弾発力によって環状プレートに押接させ、環状プレートの小孔に調整用リングの案内凸部を嵌合させる。これらの操作により、調整用リングの回転角度位置を1段階、簡単に変化させることができ、摩擦リングとピストンとの接触面積の調整作業がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る巻管へのシート状製品の巻取り装置の構成の1例を示す部分外観正面図である。
図2】この発明の実施形態の1例を示し、図1に示した巻取り装置の要部を一部縦断面で表した部分拡大正面図である。
図3図2に示した巻取り装置の構成要素である1個のシリンダユニットに調整用リングおよび環状プレートを組み付けたシリンダブロックを、環状プレート側から見た左側面図である。
図4図3に示したシリンダブロックの正面図である。
図5図3に示したシリンダブロックを各構成要素に分離した状態を示し、一部を縦断面で表した正面図である。
図6図3に示したシリンダブロックの構成要素であるシリンダユニットの左側面図である。
図7図6に示したシリンダユニットの構成要素であるエアシリンダのピストンを示す斜視図である。
図8図3に示したシリンダブロックの構成要素である調整用リングの左側面図である。
図9図3に示したシリンダブロックの構成要素である環状プレートの左側面図である。
図10図7に示したピストンと図8に示した調整用リングとの係合関係を説明するための一部拡大正面断面図である。
図11図4に示したシリンダブロックにおいて指標の表示位置を違えた正面図である。
図12-1】図3に示したシリンダブロックから環状プレートを取り外して調整用リング側から見た左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合する1態様を示す図である。
図12-2】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合する別の態様を示す図である。
図12-3】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合するさらに別の態様を示す図である。
図12-4】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合するさらに別の態様を示す図である。
図12-5】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合するさらに別の態様を示す図である。
図12-6】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合するさらに別の態様を示す図である。
図12-7】同じく左側面図であって、シリンダユニットのエアシリンダのピストンと調整用リングの係止部とが係合するさらに別の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
この発明に係る巻管へのシート状製品の巻取り装置は、図1に構成の1例を示すように、図示しない支持・駆動機構により水平姿勢に支持されて回転駆動される巻軸12に、それぞれリング状をなすシリンダユニット16、調整用リング18および環状プレート20からなるシリンダブロック14と、同じくリング状でシリンダユニット16等と同径のチャックユニット22とを、巻軸12の軸線方向に沿って交互に複数並列させた巻取軸部10を備えている。
【0018】
巻軸12は中空に形成され、その中空部が空気路24となって図示しない圧縮空気源に流路接続されている。シリンダユニット16は、巻軸12の外周面にそれと同心的に固定され、調整用リング18は、シリンダユニット16にそれと同心的にかつシリンダユニット16に対して円周方向に摺動自在に装着され、環状プレート20は、調整用リング18を介在させてかつ調整用リング18の回転動作を阻害しないようにシリンダユニット16に固設されている。また、調整用リング18は、後述するように軸線方向に微動可能にシリンダユニット16に保持されている。そして、シリンダユニット16、調整用リング18および環状プレート20からなるシリンダブロック14は、巻軸12と一体的に回転するようになっている。また、チャックユニット22は、巻軸12の外周面にそれと同心的に装着され、後述するように巻軸12に軸受を介して回動可能に保持されている。
【0019】
図2に巻取軸部10の一部を拡大して示すように、リング状のシリンダユニット16には、チャックユニット22と対向する一方の環状側面側およびもう一方の環状側面側にシリンダ孔28a、28bが開口したエアシリンダ26a、26bがそれぞれ円周周りに複数個設けられている。なお、図2においては、巻軸12の図示を省略し、巻取軸部10の上半分を縦断面図で示し、下半分を部分縦断面図で示している。図3にシリンダブロック14の左側面図を示すように、エアシリンダ26a、26bは、シリンダユニット16にその一方の環状側面側に図示例では12個(2個×6)設けられ、もう一方の環状側面側に図示例では6個設けられていて、各エアシリンダ26bが、隣り合う一対ずつのエアシリンダ26a、26aの中間位置にそれぞれ配置されている。エアシリンダ26a、26bのシリンダ孔28a、28bには、ピストン30a、30bが嵌挿されており、シリンダ孔28a、28bの開口からピストン30a、30bが進退するように構成されている。これらのエアシリンダ26a、26bは、巻軸12の軸線と平行にそれぞれ配設されている。なお、図2では説明の便宜上、シリンダユニット16およびチャックユニット22の異なる動作状態を1つの図面の中に併せて表している。
【0020】
図示していないが、巻軸12には、空気路24に連通する通気路が半径方向に貫通するように穿設されており、その通気路に連通する通気長溝が巻軸12の外周部に軸線方向に延びるように形設されている。また、シリンダユニット16には、その内周面に円周方向の通気環状溝32、34が形設され、その通気環状溝32、34に連通する通気孔36、38がエアシリンダ26a、26bごとにそれぞれ穿設されている。そして、圧縮空気源から巻軸12の空気路24、通気路および通気長溝ならびにシリンダユニット16の通気環状溝32、34および通気孔36、38を通ってエアシリンダ26a、26bに圧縮空気を供給することにより、エアシリンダ26a、26bを作動させてシリンダ孔28a、28bからピストン30a、30bを左右両側のチャックユニット22、22の方向へ進出させるように構成されている。
【0021】
チャックユニット22は、巻軸12の外周面に軸受40を介して回動可能に保持されている。チャックユニット22には、シリンダユニット16の、エアシリンダ26aが設けられた側の一方の環状側面に対向するように摩擦リング42が配設されている。この摩擦リング42は、巻軸12の軸線方向と平行な方向に摺動自在に保持されている。また、チャックユニット22にはコイルばね44が設けられており、このコイルばね44の弾発力により、摩擦リング42はシリンダユニット16のエアシリンダ26aの方向へ付勢されている。図中の符号46は、コイルばね44の弾発力により摩擦リング42がエアシリンダ26aの方向へ所定距離以上移動するのを規制するためのリング状ストッパである。また、チャックユニット22には、シリンダユニット16の、エアシリンダ26bが設けられた側の他方の環状側面に対向するように別の摩擦リング48が配設されている。
【0022】
チャックユニット22の外周部には、その円周回りに複数個、例えば6個の円形孔50が穿設されており、その各円形孔50にチャック部材52がそれぞれ嵌挿されている。チャック部材52の底面はテーパ状に形成されており、摩擦リング42の外周部には、孔底面がチャック部材52のテーパ状底面に対応するテーパ状に形成された収容孔54が円周回りに6個形設されている。そして、摩擦リング42の各収容孔54にチャック部材52がそれぞれ収容されており、摩擦リング42の摺動動作に伴ってチャック部材52が半径方向へ移動しチャックユニット22外周部の円形孔50から出没するように構成されている。チャック部材52には細溝56が形設されているとともに、チャックユニット22の外周面中央部に、細溝56と一直線状をなすように円周方向の外周溝58(図1参照)が形設されている。これらの細溝56および外周溝58に、チャックユニット22の回転時における遠心力によってチャック部材52が円形孔50から抜け出るのを防止するための止めリング60が嵌着されている。また、摩擦リング42の収容孔54のテーパ状底面には、そのテーパ状底面上にその底面に対して摺接可能にチャック部材52を保持するための永久磁石片62が埋設されている。
【0023】
チャックユニット22の外周部への巻管の着脱動作は、次のようにして行われる。
圧縮空気源から巻軸12の空気路24、通気路および通気長溝ならびにシリンダユニット16の通気環状溝32および通気孔36を通ってエアシリンダ26aに高圧の圧縮空気を供給すると、図2の上半部左側に示すように、エアシリンダ26aのピストン30aが摩擦リング42の方へ進出し、コイルばね44の弾発力に抗して摩擦リング42をチャックユニット22の奥(図面上で右奥)まで押し込む。この摩擦リング42の摺動動作に伴い、チャック部材52は、摩擦リング42の収容孔54のテーパ状底面に摺接しながら、収容孔54のテーパ状底面上の保持位置が上方から下方へと変わるとともに半径方向(求心方向)へ移動する。これにより、チャック部材52は、チャックユニット22外周部の円形孔50内へ引っ込んだ状態となる。この状態で、チャックユニット22の外周側に巻管(図示せず)を挿入して配置した後、エアシリンダ26aへの圧縮空気の供給を停止すると、図2の上半部右側に示すように、コイルばね44の弾発力(復元力)により摩擦リング42がエアシリンダ26aの方へ移動するとともにピストン30aが後退する。エアシリンダ26a方向への摩擦リング42の移動に従って、チャック部材52は、摩擦リング42の収容孔54のテーパ状底面に摺接しながら、収容孔54のテーパ状底面上の保持位置が下方から上方へと変わるとともに半径方向(遠心方向)へ移動する。この動作により、チャック部材52は、チャックユニット22外周部の円形孔50内からその上部(頂部)が突き出た状態となり、巻管の内周面にチャック部材52の上部が押接して、6個のチャック部材52を介して巻管がチャックユニット22に一体的に保持される。チャック部材52の上部が巻管の内周面に押接すると、摩擦リング42は、エアシリンダ26a方向への移動を停止する。巻管にシート状製品を巻き取った後に巻管をチャックユニット22から離脱させるときは、圧縮空気源からエアシリンダ26aに高圧の圧縮空気を供給し、上記したような動作により、チャック部材52をチャックユニット22外周部の円形孔50内へ引き入れた状態にする。
【0024】
なお、チャックユニット22に装着された巻管にシート状製品を巻き取る際には、チャック部材52によって巻管がチャックユニット22に一体的に保持された状態(図2の上半部右側に示した状態)が保たれるように、圧縮空気源から巻軸12の空気路24、通気路および通気長溝ならびにシリンダユニット16の通気環状溝32、34および通気孔36、38を通ってエアシリンダ26a、26bに、比較的に低圧の圧縮空気を供給するようにする。そして、エアシリンダ26a、26bを作動させ、ピストン30aをチャックユニット22の摩擦リング42に押接させるとともに、ピストン30bを摩擦リング48に押接させる。この状態で、巻軸12と一体的に回転するシリンダユニット16の回転動力を、シリンダユニット16のピストン30aの先端部とチャックユニット22の摩擦リング42との間の摩擦力ならびにピストン30bの先端部と摩擦リング48との間の摩擦力によって左右両側のチャックユニット22、22に伝達し、チャックユニット22に保持された巻管に巻取りトルクを発生させる。
【0025】
次に、チャックユニット22に発生するトルクを均一にするために複数のエアシリンダ26a、26bのピストン30a、30bと摩擦リング42、48との接触面積を調整するための構成について説明する。この実施形態では、摩擦リング42にピストン30aの先端部が押接する12個のエアシリンダ26aについては調整操作を行わずに、もう一方の6個のエアシリンダ26bについて、シリンダ孔28bからピストン30bが進出するのを抑止できるようにして、摩擦リング48との接触面積を調整するようにしている。この構成および作用について、図3ないし図12-7を参照しながら以下に説明する。
【0026】
図3図4および図5に、シリンダブロック14の左側面図、正面図および分離状態の正面図を示すように、シリンダユニット16に調整用リング18および環状プレート20を組み付けるとともに、図7に示すように、シリンダユニット16に設けられた複数のエアシリンダ26bのピストン30bの先端側を加工形成することにより、シリンダ孔28bからピストン30bが進出するのを抑止できる構成としている。
【0027】
図5および図6に示すように、シリンダユニット16は、6個のエアシリンダ26bのシリンダ孔28bが開口した側面側の外周部が3段の段付き面に加工形成されている。また、シリンダユニット16の側面には、6個のねじ孔64が円周方向に等配して穿設されている。図7に示すように、エアシリンダ26bのピストン30bには、その先端面から軸線方向に沿ってシリンダユニット16の外周面に向いた外方側を切り欠いて係合部66が形設されている。この係合部66は、切欠き面68がシリンダユニット16の2段目の外周面16bとほぼ同一面をなすように形成されている。また、ピストン30bの、シリンダユニット16の内周面に向いた内方側にも切欠き部70が形成されており、鍔付きカラー71の鍔部71a(図2参照)に切欠き部70が係合することにより、ピストン30bの自転が抑止されるようになっている。
【0028】
調整用リング18は、その内周面18aがシリンダユニット16の1段目の外周面16aに摺動自在に嵌合する内径寸法に形成されている。また、図8に示すように、調整用リング18には、一方の側面側(図5において左側面側)に6個の円弧状の係止部72a~72fが求心方向に出っ張るように一体に延設されている。6個の係止部72a~72fは、それぞれの円弧状先端部が1つの円周上に位置するように設けられており、その円弧状先端部がシリンダユニット16の2段目の外周面16bに対応する寸法に形成されている。円弧状の係止部72a~72fは、調整用リング18の円周方向に等配され、かつ、後述するように円周方向における長さ寸法をそれぞれ違えて形成されている。この調整用リング18は、係止部72a~72fの円弧状先端部がシリンダユニット16の2段目の外周面16bに摺接してシリンダユニット16に対し回動自在に装着される。そして、エアシリンダ26bのピストン30bの切欠き面68が、シリンダユニット16の2段目の外周面16bとほぼ同一面をなすように形成されているので、調整用リング18の回動時に、係止部72a~72fの円弧状先端部がピストン30bの切欠き面68に接触することはない。調整用リング18の環状側面には、極く小さい案内凸部74が形設され、案内凸部74に対し180°の角度をなす位置に摺接突起76が形設されている。また、調整用リング18の、シリンダユニット16と対向する側面に、コイルばね80が嵌挿される複数個の保持孔78が形設されている。
【0029】
環状プレート20は、その内周部20aがシリンダユニット16の3段目の外周面16cに嵌合する内径寸法に形成されている。図9に示すように、この環状プレート20の内周部20aには、シリンダユニット16のエアシリンダ26bのシリンダ孔28bに対応する個所を半円状に切除して、エアシリンダ26bのピストン30bの進出動作を阻害しないように6個の湾状部82が形成されており、隣り合う湾状部82、82の中間の、シリンダユニット16のねじ孔64に対応する位置に6個の貫通小孔84が穿設されている。さらに、環状プレート20には、シリンダユニット16に対する調整用リング18の回転角度位置の変化に対応して案内凸部74が順次嵌合する7個の小孔86が円弧状に配列されて形設され、7個の小孔86に対し180°の角度をなす位置に、摺接突起76が嵌入して摺接する円弧状の細長孔88が形設されている。
【0030】
シリンダブロック14を組み上げるときは、図5に示すように、まず、環状プレート20を調整用リング18に、環状プレート20の7個の小孔86のいずれか1つに調整用リング18の案内凸部74を嵌合させるとともに細長孔88に摺接突起76を嵌入させて押し当て、調整用リング18の保持孔78にコイルばね80を嵌挿する。続いて、環状プレート20が接合された調整用リング18をシリンダユニット16に、環状プレート20の6個の湾状部82とシリンダユニット16の6個のエアシリンダ26bのシリンダ孔28b、および、環状プレート20の6個の貫通小孔84とシリンダユニット16の6個のねじ孔64とをそれぞれ位置合せして組み付け、ネジ90を環状プレート20の貫通小孔84に挿通させシリンダユニット16のねじ孔64に螺入させることにより、調整用リング18および環状プレート20とシリンダユニット16とを一体化させる。
【0031】
このように構成されたシリンダブロック14において、調整用リング18は、コイルばね80の弾発力によってシリンダユニット16から環状プレート20の方向へ付勢されており、図4に示すように、その状態でシリンダユニット16と調整用リング18との対向側面同士間に隙間92が形成されるようになっている。隙間92の大きさは、調整用リング18の案内凸部74の高さ寸法より大きく摺接突起76の高さ寸法より小さい程度であり、したがって、調整用リング18は、コイルばね80の弾発力に抗して隙間92を無くす方向へ微動させることにより、環状プレート20から離間させて小孔86から案内凸部74を一旦抜脱し、細長孔88に摺接突起76を摺接させながらシリンダユニット16および環状プレート20に対して回動させることができる。そして、調整用リング18の案内凸部74が環状プレート20の別の小孔86に位置したときに、調整用リング18に加えていた力を解除することにより、コイルばね80の弾発力で調整用リング18が環状プレート20に押接し、環状プレート20の別の小孔86に調整用リング18の案内凸部74が嵌合する。このような一連の操作により、シリンダユニット16および環状プレート20に対する調整用リング18の回転角度位置を変更することができる。なお、調整用リング18を回動させるときは、エアシリンダ26bのピストン30bをシリンダ孔28b内へ後退させ、この状態にしてシリンダユニット16に対する調整用リング18の回転角度位置を変更する操作が行われる。
【0032】
上記した操作により、シリンダユニット16および環状プレート20に対する調整用リング18の回転角度位置を変更することができるが、図8に示したように、調整用リング18の6個の係止部72a~72fは、円周方向における長さ寸法をそれぞれ違えて形成されている。このため、シリンダユニット16に対する調整用リング18の回転角度位置を変更することにより、シリンダユニット16の6個のエアシリンダ26bについて、図10の(a)に示すように、ピストン30bの係合部66に対して調整用リング18の係止部64を係合させたり、図10の(b)に示すように、ピストン30bの係合部66に対して調整用リング18の係止部64を離脱させたりして、ピストン30bの作動を選択的に抑止しまた許容することができる。そして、6個のエアシリンダ26bに比較的に低圧の圧縮空気を供給したときに、6個のピストン30bについてその作動が選択的に抑止されまたは許容されることにより、チャックユニット22の摩擦リング48に先端部が押接するピストン30bの数が変更される。これにより、摩擦リング48と複数のピストン30bの先端部との接触面積を調整することが可能となり、その両者間の摩擦力によってシリンダユニット16からチャックユニット22に伝達される回転動力を調節し、各チャックユニット22ごとに巻管へのシート状製品の巻取りトルクを調節して、巻軸12に並設された複数のチャックユニット22における巻取りトルクを均等化することができる。
【0033】
この実施形態では、作動するピストン30bの数を6個から0個まで変更することができるようにし、図4に示したように、調整用リング18の外周面に、シリンダユニット16に対する調整用リング18の複数の回転角度位置を示す指標94を付し、環状プレート20の外周面に標線96を刻設している。指標96において、「0」の目盛りは、作動するピストン30bの数が3個で、作動を抑止されているピストン30bの数が3個である場合を示し、「+1」、「+2」、「+3」は、作動するピストン30bの数がそれぞれ4個、5個、6個である場合を示し、「-1」、「-2」、「-3」は、作動するピストン30bの数がそれぞれ2個、1個、0個である場合を示す。指標94における目盛りの角度的な間隔は、環状プレート20の7個の小孔86の角度的な間隔に対応している。なお、図11に示すように、シリンダユニット16の外周面に、シリンダユニット16に対する調整用リング18の7つの回転角度位置を示す指標98を付し、調整用リング18の外周面に標線100を刻設するようにしてもよい。
【0034】
調整用リング18における係止部72a~72fの、円周方向における長さ寸法の違い、および、環状プレート20における小孔86の角度的な間隔(指標94における目盛りの角度的な間隔)について、図8および図9により具体的数値を例示して説明する。この場合において、調整用リング18の係止部72a~72fの円弧状先端部でつくる仮想円の半径をrとし、調整用リング18の中心(回転中心)に対する係止部72a~72fの円弧のなす角度をθ°とすると、係止部72a~72fの円弧長=r×(πθ/180)となる。係止部72a~72fの、円周方向における長さ寸法は、仮想円の半径rの大きさ、したがって調整用リング18の大きさによって変わってくる。そこで、係止部72a~72fの長さ寸法の違いを、調整用リング18の中心に対する円弧のなす角度θの違いに置き換えて説明すると、係止部72a~72fの円弧のなす角度が、a=5°、b=7.5°、c=15°、d=22.5°、e=30°、f=37.5°となるように設定した。また、隣り合う係止部72a~72f間の円弧のなす角度は、A=60°、B=52.5°、C=40°、D=37.5°、E=30°、F=22.5°に設定した。環状プレート20における小孔86の角度的な間隔は、p=7.5°に設定し、調整用リング18を7.5°ずつ回転させることにより、作動するピストン30bの数を1個ずつ変更できるようにした。なお、調整用リング18における係止部72a~72fの円弧のなす角度や環状プレート20における小孔86の角度的な間隔は、試行錯誤しながら決定されたものであり、シリンダユニット16におけるエアシリンダ26bの数が変われば、また試行錯誤しながら適正値を見付け出す作業が必要になる。
【0035】
図12-1ないし図12-7に、シリンダユニット16のエアシリンダ26bのピストン30bと調整用リング18の係止部72a~72fとが係合する各態様を示している。これらの図においては、シリンダブロック14から環状プレート20を取り外して調整用リング18側から見た状態を示しており、また、参考のために環状プレート20の7個の小孔86および細長孔88を想像線(二点鎖線)で示している。
【0036】
図12-1は、3個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72b、72d、72eに係合し、3個のピストン30bが作動し3個のピストン30bが作動を抑止されている状態を示している。このとき、指標96の目盛りは「0」を示す。図12-1に示した状態からシリンダユニット16に対して調整用リング18を7.5°だけ反時計回りに回転させると、図12-2に示すように、2個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72e、72fに係合し、4個のピストン30bが作動し2個のピストン30bが作動を抑止されている状態となる。このとき、指標96の目盛りは「+1」を示す。図12-2に示した状態から調整用リング18を7.5°だけ反時計回りに回転させると、図12-3に示すように、1個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72fに係合し、5個のピストン30bが作動し1個のピストン30bが作動を抑止されている状態となる。このとき、指標96の目盛りは「+2」を示す。さらに、図12-3に示した状態から調整用リング18を7.5°だけ反時計回りに回転させると、図12-4に示すように、調整用リング18の係止部72a~72fに係合部66が係合するピストン30bは無くなり、6個のピストン30b全てが作動する状態となる。このとき、指標96の目盛りは「+3」を示す。また、図12-1に示した状態からシリンダユニット16に対して調整用リング18を7.5°だけ時計回りに回転させると、図12-5に示すように、4個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72c、72d、72e、72fに係合し、2個のピストン30bが作動し4個のピストン30bが作動を抑止されている状態となる。このとき、指標96の目盛りは「-1」を示す。図12-5に示した状態から調整用リング18を7.5°だけ時計回りに回転させると、図12-6に示すように、5個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72b、72c、72d、72e、72fに係合し、1個のピストン30bが作動し5個のピストン30bが作動を抑止されている状態となる。このとき、指標96の目盛りは「-2」を示す。さらに、図12-6に示した状態から調整用リング18を7.5°だけ時計回りに回転させると、図12-7に示すように、6個のピストン30bの係合部66が調整用リング18の係止部72a、72b、72c、72d、72e、72fに係合し、1個のピストン30bも作動せず6個のピストン30b全てが作動を抑止されている状態となる。このとき、指標96の目盛りは「-3」を示す。
【0037】
上記した実施形態においては、6個のエアシリンダ26bの全てについてそのピストン30bの作動を抑止・許容するような構成としたが、6個のエアシリンダ26bの一部についてだけそのピストン30bの作動を抑止することができるような構成としてもよい。また、上記実施形態では、シリンダユニット16の一方の環状側面側にシリンダ孔28bが開口したエアシリンダ26bについて説明したが、シリンダユニット16のもう一方の環状側面側にシリンダ孔28aが開口したエアシリンダ26aの全部または一部についても同様の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明に係る巻管へのシート状製品の巻取り装置は、長尺帯状のフィルム等のシート状製品を細幅に切断する細断用スリッタに併設するなどして使用され、包装フィルム、ラップフィルム、剥離フィルム等のフィルム類、粘着テープ等のテープ類、包装紙等の紙類など、各種のシート状製品を取り扱う多くの事業所において利用されるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 巻取軸部
12 巻軸
14 シリンダブロック
16 シリンダユニット
18 調整用リング
20 環状プレート
22 チャックユニット
24 巻軸の中空部
26a、26b エアシリンダ
28a、28b エアシリンダのシリンダ孔
30a、30b エアシリンダのピストン
32、34 シリンダユニットの通気環状溝
36、38 シリンダユニットの通気孔
40 軸受
42、48 摩擦リング
44 コイルばね
52 チャック部材
64 ねじ孔
66 ピストンの係合部
72a~72f 調整用リングの係止部
74 調整用リングの案内凸部
76 調整用リングの摺接突起
80 コイルばね
82 環状プレートの湾状部
86 環状プレートの小孔
88 環状プレートの細長孔
92 シリンダユニットと調整用リングとの間の隙間
94、98 指標
96、100 標線
【要約】
【課題】巻軸と一体的に回転するシリンダユニットと、巻軸に回動可能に装着され外周側に巻管を保持するチャックユニットとを、交互に巻軸の軸線方向に複数並列させた装置において、シリンダユニットの複数のエアシリンダのピストンとチャックユニットの摩擦リングとの間の摩擦力の調整作業を容易に行うことができる装置を提供する。
【解決手段】シリンダユニット16に調整用リング18を円周方向に摺動自在に装着し、複数のエアシリンダのピストン30bに係合部を形設し、調整用リングに複数の係止部72a~72fを延設し、シリンダユニットに対する調整用リングの回転角度位置を複数回変えることによりピストンの係合部に対して調整用リングの係止部を係合させまたは離脱させるように設定する。ピストンの作動を選択的に抑止し、チャックユニットの摩擦リングに押接するピストンの数を変更して、摩擦リングと複数のピストンとの接触面積を調整可能とした。
【選択図】図12-1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図12-5】
図12-6】
図12-7】