(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 33/00 20060101AFI20231129BHJP
B61D 17/08 20060101ALI20231129BHJP
B60N 2/015 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B61D33/00 A
B61D17/08
B60N2/015
(21)【出願番号】P 2019215532
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 英謙
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】辻 和樹
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤史
(72)【発明者】
【氏名】森 優智
(72)【発明者】
【氏名】蒔山 敦史
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0398907(KR,Y1)
【文献】韓国登録特許第10-0487580(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B61D 17/08
B60N 2/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に客室を有する鉄道車両であって、側構体の内面に取り付けられることで、前記客室の枕木方向の両側の側壁を構成する側パネルと、前記側壁に沿って設けられた座席と、を備える鉄道車両において、
前記座席は、背もたれ部と、座面部と、からなること、
前記側パネルは、前記客室の枕木方向の内方に向かって膨出する前記背もたれ部を備え、前記側パネルの一部が前記座席を構成していること、
前記側パネルは、前記背もたれ部の前記客室の床側の端部から、前記客室の枕木方向の内方に向かって延伸する前記座面部を備えること、
前記座席は、前記座面部を前記客室の床面側から支持する座受けフレームを備えること、
前記座受けフレームは、ブラケットを介して前記座面部を支持すること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項
1に記載の鉄道車両において、
前記側パネルは、繊維強化プラスチックからなること
、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両において、
前記座席は、乗客1人が座ることができる程度の幅を有し、前記背もたれ部および前記座面部を一体的に覆う表皮材を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に客室を有する鉄道車両であって、側構体の内面に取り付けられることで、客室の枕木方向の両側の側壁を構成する側パネルと、側壁に沿って設けられた座席と、を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通勤車両等の鉄道車両においては、客室の枕木方向の両側の側壁に沿って、座席が設けられている。当該座席としては、例えば、鉄道車両の軌道方向に長手方向を有するロングシートを用いることが一般的であり、ロングシートは、1つにつき、6、7人程度の乗客が座ることができるように構成されている。このようなロングシートは、一般的に、背受け部分と座受け部分とにより略L字状に構成されたフレームを有している。そして、当該フレームを、鉄道車両の車体を構成する側構体の内面に結合し、フレームの背受け部分に背もたれを取り付け、フレームの座受け部分に座面を取り付けることで、ロングシートが構成される。
【0003】
ロングシートの組み立ては、鉄道車両の客室内において、作業者によって行われる。フレームは重量物であるため、運搬や、側構体に結合させる作業が容易ではなく、万が一作業中に落下させた場合には、作業者が負傷するおそれがある。ここで、側構体への取付作業性を向上させるためのロングシートとして、特許文献1に開示される片持ち式腰掛が知られている。
【0004】
特許文献1の片持ち式腰掛について説明すると(本出願では図示をしないが、特許文献1に記載の符号を用いて以下に説明する)、片持ち式腰掛100(上記フレームに該当)は、背受け部分と座受け部分とが屈曲部103により接続された略L字状をなしており、座部被支持部104と、背もたれ被支持部105と、腰掛側係合部106を備えている。このような片持ち式腰掛100(フレーム)を側構体に結合させるには、片持ち式腰掛100(フレーム)を前方に90度傾斜させた状態で、座部被支持部104と背もたれ被支持部105とを、治具300により支持し、側構体の近くまで、片持ち式腰掛100(フレーム)を移動させる。そして、座部被支持部104を支点として、片持ち式腰掛100(フレーム)を後ろ方向に回転させ、腰掛側係合部106を、側構体に設けられた壁側係合部201に係合させることで、片持ち式腰掛100(フレーム)を側構体に結合する。
【0005】
以上のように、座部被支持部104と、背もたれ被支持部105とを支持することで重量物である片持ち式腰掛100(フレーム)の運搬が容易となり、座部被支持部104を支点として、片持ち式腰掛100(フレーム)を後ろ方向に回転させることで、片持ち式腰掛100(フレーム)を側構体に結合することが出来るため、取り付け作業が容易となるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
特許文献1に開示されるロングシートは、フレーム(片持ち式腰掛100)を取り付けた後、座面(例えば、特許文献1に開示される座マット101M)や、背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)を取り付ける必要がある等、ロングシートを構成する部品点数が多く、ロングシートの組み立て作業に時間がかかる他、部品コストがかさんでいた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、座席(例えばロングシート)を構成する部品点数を抑え、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能な座席を備える鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)内部に客室を有する鉄道車両であって、側構体の内面に取り付けられることで、客室の枕木方向の両側の側壁を構成する側パネルと、側壁に沿って設けられた座席と、を備える鉄道車両において、座席は、背もたれ部と、座面部と、からなること、側パネルは、客室の枕木方向の内方に向かって膨出する背もたれ部を備え、側パネルの一部が座席を構成していること、側パネルは、背もたれ部の客室の床側の端部から、客室の枕木方向の内方に向かって延伸する座面部を備えること、座席は、座面部を客室の床面側から支持する座受けフレームを備えること、座受けフレームは、ブラケットを介して座面部を支持すること、を特徴とする。
【0010】
(1)に記載の鉄道車両によれば、側パネルは、客室の枕木方向の内方に向かって膨出する背もたれ部を備えているため、側構体内面に側パネルを取り付けることで、客室の側壁が構成されるとともに、座席の一部である背もたれ部が構成される。側パネルの一部が座席の背もたれ部を構成するため、従来の座席のように別途背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)を取り付ける必要がない。別途背もたれを取り付ける必要がないため、座席を構成する部品点数を抑えることができ、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能となる。
【0012】
また、側パネルは、背もたれ部の客室の床側の端部から、客室の枕木方向の内方に向かって延伸する座面部を備えているため、側構体内面に側パネルを取り付けることで、客室の側壁が構成されるとともに、座席の背もたれ部と座面部が構成される。側パネルの一部が座席の背もたれ部と座面部を構成するため、従来の座席のように別途背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)と座面(例えば、特許文献1に開示される座マット101M)を取り付ける必要がない。別途背もたれと座面を取り付ける必要がないため、座席を構成する部品点数を抑えることができ、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能となる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両において、側パネルは、繊維強化プラスチックからなること、を特徴とする。
【0014】
(3)に記載の鉄道車両によれば、側パネルは、繊維強化プラスチック(FRP)からなるため、座席に座る乗客が背もたれ部に寄り掛かったとしても、背もたれ部に変形や破壊が生じない十分な強度を持たせることが可能である。背もたれ部に十分な強度を持たせることが可能であるため、従来のフレーム(例えば、特許文献1に開示される片持ち式腰掛100)が有していた、背もたれ部を支えるための背受け部分が必要ない。背受け部分が必要ないため、従来のフレームのように、フレームを略L字状にする必要がなく、座席に座る乗客の体重を支えるために、座面部を客室の床面側から支持する座受けフレームがあれば足りる。よって、従来の略L字状のフレームに比べ、座受けフレームの軽量化を図ることができる。座受けフレームの軽量化を図ることができれば、座受けフレームの取り付け作業性を向上できるとともに、万が一作業中に落下させた場合でも作業者が負傷してしまうおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る鉄道車両によれば、座席(例えばロングシート)を構成する部品点数を抑え、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本実施形態に係る鉄道車両の客室内部を表すイメージ図である。
【
図5】鉄道車両のA-A断面図における変形例を示す図である。
【
図6】鉄道車両のB-B断面図における変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。鉄道車両1は、在来線等の通勤車両であり、
図1に示されるように、床面をなす台枠11と、台枠11の軌道方向(
図1中の左右方向)の一方の端部に立設されることで鉄道車両1の先頭部をなす前面妻構体12と、台枠11の他方の端部に立設されることで鉄道車両1の連結部をなす連妻構体15と、台枠11の枕木方向(
図1中の奥行方向)の両端部に立設されることで鉄道車両1の側面をなす側構体13と、前面妻構体12,連妻構体15および側構体13の上端部に配置されることで鉄道車両1の屋根をなす屋根構体14と、により6面体をなすように構成される。そして、鉄道車両1は、枕ばね30を介して車輪17を備えた台車16によって支持されている。側構体13には、運転席に通じる乗務員乗降口19Aや、客室20(
図2参照)に通じる乗客乗降口19Bおよび窓19Cが設けられている。
【0018】
また、台枠11の軌道方向の両端部には、前面妻構体12および連妻構体15よりも鉄道車両1の軌道方向の外方に突出するように連結器18が設けられており、隣接する鉄道車両同士を連結することが可能である。
【0019】
なお、鉄道車両1は、前面妻構体12を有する先頭車両を例としてあげているが、これに限定されるものでなく、中間車両であっても良い。中間車両である場合には、前面妻構体12が用いられず、一対の連妻構体15が、台枠11の軌道方向の両端部に立設されることで鉄道車両が構成される。
【0020】
鉄道車両1は、
図2および
図3に示すように、内部に、乗客を収容する客室20を有する。客室20は、台枠11の内面に取り付けられた床板パネル21と、側構体13の内面に取り付けられた側パネル22と、屋根構体14に取り付けられた天井パネル24と、側パネル22の上端部と天井パネル24の枕木方向両端部とに連結する側天井パネル23と、に囲まれた空間であり、床板パネル21が客室20の床面を構成し、側パネル22が客室20の側壁を構成し、天井パネル24が客室20の天井を構成し、側天井パネル23が客室20の側天井を構成している。
【0021】
床板パネル21と、側天井パネル23と、天井パネル24は、表面に色柄が印刷されたシートを堆積したアルミ製の化粧板であり、当該化粧板を、例えばプレスにより形成したものである。側パネル22の材料や成形方法については後述する。
【0022】
側パネル22は、
図4に示すように、隣り合う乗客乗降口19Bの間に配置されており、軌道方向の両端部には戸袋を構成する扉キセ27が配置されている。また、鉄道車両1は、
図1に示すように、隣り合う乗客乗降口19Bの間に窓19Cを有しているため、側パネル22は、
図3および
図4に示すように、軌道方向の中央部に、窓19Cを形成するための窓開口部22cを備えている。
【0023】
さらに、側パネル22は、窓開口部22cの下部に、客室20の枕木方向の内方に向かって膨出する背もたれ部22aを備えている。さらに、背もたれ部22aの、客室20の床面側の端部からは、客室20の枕木方向の内方に向かって延伸する座面部22bを備えている。背もたれ部22aおよび座面部22bは、側パネル22の軌道方向の一方の端部からもう一方の端部まで、連続して形成されている。
【0024】
側パネル22の一部である背もたれ部22aと、座面部22bとが、客室20の枕木方向両端部の側壁に沿って設けられるロングシート(座席の一例)2を構成しており、乗客は、座面部22bに腰掛けることができ、腰掛けた乗客は、背もたれ部22aに背中をもたれることができる。ロングシート2は、軌道方向の両端部に袖仕切り28を備えており(
図4参照)、着席定員は7人である。ただし、着席定員を6人とすることも可能であり、着席定員を7人に限定するものではない。
【0025】
側構体13の内面に側パネル22を取り付けることで、客室20の側壁が構成されるとともに、側パネル22の一部である背もたれ部22aおよび座面部22bによりロングシート2が構成されるため、従来のロングシートのように別途に背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)と座面(例えば、特許文献1に開示される座マット101M)を取り付ける必要がない。別途に背もたれと座面を取り付ける必要がないため、ロングシート2を構成する部品点数を抑えることができ、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能となる。
【0026】
このような側パネル22は、FRP製であり、成形型に強化基材を賦形させ、当該強化基材に、ハケ等を用いて樹脂を含侵させるハンドレイアップ法により成形されたものである。なお、側パネル22を成形する方法は、ハンドレイアップ法に限定されるものでなく、FRPによる材料を、プレス加工によって成形することとしてもよい。
【0027】
座面部22bの、客室20の床面側には、側構体13にボルトにより結合され、客室20の枕木方向の内方に向かって突出する座受けフレーム25が設けられている。
【0028】
座受けフレーム25の、
図2中の上面には、断面U字状のブラケット29がボルトにより結合されており、ブラケット29は、フランジ部29aと座面部22bとの接触部を覆うように樹脂を塗布することで、座面部22bと結合されている(樹脂オーバーレイによる結合)。このように、座受けフレーム25は、ブラケット29を介して座面部22bと結合することで、座面部22bを客室20の床面側から支持しており、ロングシート2に着席する乗客の体重を支えることができる。
【0029】
側パネル22は、FRPの成形品であるため、ロングシート2に座る乗客が背もたれ部22aに寄り掛かったとしても、背もたれ部22aに変形や破壊が生じない十分な強度を持っている。そのため、背もたれ部22aを客室20の外方側から支えるためのフレームが必要ない。背もたれ部22aを支えるフレームが必要ないため、従来のフレーム(例えば、特許文献1に開示される片持ち式腰掛100)のように、フレームを略L字状にする必要がなく、座席に座る乗客の体重を支えるためには、座面部を客室20の床面側から支持する座受けフレーム25があれば足りる。よって、従来の略L字状のフレームに比べ、座受けフレーム25の軽量化を図ることができる。座受けフレーム25の軽量化を図ることができれば、座受けフレーム25の取り付け作業性を向上できるとともに、万が一作業中に落下させた場合でも作業者が負傷してしまうおそれを低減することができる。
【0030】
また、ロングシート2の背もたれ部22aおよび座面部22bの表面は、表皮材26により、一体的に覆われている。表皮材26はモケット等の布地からなっており、表皮材26で背もたれ部22aおよび座面部22bの表面を覆うことで、ロングシート2に着席する乗客に、直接背もたれ部22aおよび座面部22bが触れないようにしている。側パネル22は、FRPにより成形されていることから非常に硬く、背もたれ部22aおよび座面部22bに直接着席するのは乗客に不快感を与えるおそれがあるためである。
【0031】
表皮材26は、面ファスナにより、背もたれ部22aおよび座面部22bに固定されている。なお、表皮材26の固定に面ファスナを用いることに限定するものでなく、接着剤により固定することも考えられる。ただし、経年劣化した表皮材26の交換等、メンテナンスを行うことを考慮すると、面ファスナのように取り外しが容易な固定手段を用いることが望ましい。
【0032】
また、表皮材26は、乗客1人が座ることができる程度の幅(約460mm)を有しており、
図4に示すように、7枚の表皮材26A~26Gが等間隔に配置されることで、ロングシート2に、着席定員である7人分の着席区画が形成されている(26A~26Gは全て同一の表皮材である)。7人分の着席区画が形成されることで、着席定員分の乗客が座ることができるよう促すことが可能である。
【0033】
ロングシート2に着席区画が無いと、2人分の着席幅を1人の乗客が占有してしまうおそれがあり、ロングシート2に、着席定員よりも少ない人数しか着席できないおそれがある。鉄道車両1は通勤電車であり、通勤ラッシュ時や帰宅ラッシュ時には乗車率が100%を超える場合があるため、ロングシート2には可能な限り着席定員分の乗客が座ることができるようにすることが望ましい。そこで、上記のように着席区画を設けている。
【0034】
なお、上記の表皮材26の460mmという幅は、JIS E 7104の附属書Aに、1席当たりの有効幅が460mmと記載されていることに準ずるものであるが、これに限定されるものでない。
【0035】
上記実施例においては、側パネル22に構成される背もたれ部22aと座面部22bとにより、ロングシート2が構成されているが、変形例として、
図5および
図6に示すように、側パネル32には、背もたれ部32aのみが構成されるものとし、座面部37を別体とすることも可能である。
座面部37は、ウレタン等で構成されるクッション材をモケットなどの布地で覆った構造を有するものであり、座受けフレーム25に固定されている。
表皮材36は、背もたれ部32aのみを覆うように貼り付けられている。そして、乗客1人が座ることができる程度の幅(約460mm)を有しており、ロングシート3の長手方向に沿って、等間隔に配置されることで、ロングシート3に、着席定員分の着席区画が形成される。
また、側パネル32が、軌道方向の中央部に、窓19Cを形成するための窓開口部32cを備えている点は、側パネル22と同様である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両1によれば、
(1)内部に客室20を有する鉄道車両1であって、側構体13の内面に取り付けられることで、客室20の枕木方向の両側の側壁を構成する側パネル22(32)と、側壁に沿って設けられた座席(ロングシート2(3))と、を備える鉄道車両1において、座席(ロングシート2(3))は、背もたれ部22a(32a)と、座面部22b(37)と、からなること、側パネル22(32)は、客室20の枕木方向の内方に向かって膨出する背もたれ部22a(32a)を備え、側パネル22(32)の一部が座席(ロングシート2(3))を構成していること、を特徴とする。
【0037】
(1)に記載の鉄道車両1によれば、側パネル22(32)は、客室20の枕木方向の内方に向かって膨出する背もたれ部22a(32a)を備えているため、側構体13内面に側パネル22(32)を取り付けることで、客室20の側壁が構成されるとともに、座席(ロングシート2(3))の一部である背もたれ部22a(32a)が構成される。側パネル22(32)の一部が座席(ロングシート2(3))の背もたれ部22a(32a)を構成するため、従来の座席のように別途背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)を取り付ける必要がない。別途背もたれを取り付ける必要がないため、座席(ロングシート2(3))を構成する部品点数を抑えることができ、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能となる。
【0038】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、側パネル22は、背もたれ部22aの客室20の床側の端部から、客室20の枕木方向の内方に向かって延伸する座面部22bを備えること、を特徴とする。
【0039】
(2)に記載の鉄道車両1によれば、側パネル22は、背もたれ部22aの客室20の床側の端部から、客室20の枕木方向の内方に向かって延伸する座面部22bを備えているため、側構体13内面に側パネル22を取り付けることで、客室20の側壁が構成されるとともに、座席(ロングシート2)の背もたれ部22aと座面部22bが構成される。側パネル22の一部が座席(ロングシート2)の背もたれ部22aと座面部22bを構成するため、従来の座席のように別途背もたれ(例えば、特許文献1に開示される背マット102M)と座面(例えば、特許文献1に開示される座マット101M)を取り付ける必要がない。別途背もたれと座面を取り付ける必要がないため、座席(ロングシート2)を構成する部品点数を抑えることができ、組み立て作業の時間の短縮および部品コストを抑えることが可能となる。
【0040】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両1において、側パネル22(32)は、繊維強化プラスチックからなること、座席(ロングシート2(3))は、座面部22b(37)を客室20の床面側から支持する座受けフレーム25を備えること、を特徴とする。
【0041】
(3)に記載の鉄道車両1によれば、側パネル22(32)は、繊維強化プラスチック(FRP)からなるため、座席(ロングシート2(3))に座る乗客が背もたれ部22a(32a)に寄り掛かったとしても、背もたれ部22a(32a)に変形や破壊が生じない十分な強度を持たせることが可能である。背もたれ部22a(32a)に十分な強度を持たせることが可能であるため、従来のフレーム(例えば、特許文献1に開示される片持ち式腰掛100)が有していた、背もたれ部を支えるための背受け部分が必要ない。背受け部分が必要ないため、従来のフレームのように、フレームを略L字状にする必要がなく、座席に座る乗客の体重を支えるために、座面部22b(37)を客室20の床面側から支持する座受けフレーム25があれば足りる。よって、従来の略L字状のフレームに比べ、座受けフレーム25の軽量化を図ることができる。座受けフレーム25の軽量化を図ることができれば、座受けフレーム25の取り付け作業性を向上できるとともに、万が一作業中に落下させた場合でも作業者が負傷してしまうおそれを低減することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施例においては、座席の一例として、乗客乗降口19Bと乗客乗降口19Bとの間に設けられた7人掛けのロングシート2(3)を挙げているが、乗客乗降口19Bと連妻構体15との間に設けられる3人掛けのロングシートとしてもよい。
また、ロングシート2(3)と客室20の床面との間の空間には、暖房用のヒータを設置することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 鉄道車両
2 ロングシート(座席の一例)
13 側構体
20 客室
22 側パネル
22a 背もたれ部
22b 座面部