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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20231129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231129BHJP
   B01D 53/32 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F01N3/08 C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/32
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020033789
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134775
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113011
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】植西 徹
(72)【発明者】
【氏名】関根 泰
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-164927(JP,A)
【文献】特開2004-204739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/94
B01D 53/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に設けられた浄化用触媒と、
前記浄化用触媒に設けられた第1および第2電極と、
前記浄化用触媒に流入する排気温度を取得する取得装置と、
前記第1および第2電極の間に浄化用電位差を生じさせて前記浄化用触媒の表面付近に電界が付与されるように前記第1または第2電極に対して電圧を印加する電圧制御を行う電源装置と、
を備え、
前記電源装置は、前記電圧制御において、
前記排気温度が、前記浄化用触媒による排気成分の浄化率の下限値または上限値に基づいて設定された温度下限値と温度上限値の間にない場合、前記第1または第2電極に印加する電圧の指令値をゼロに設定し、
前記排気温度が前記温度下限値と前記温度上限値の間にある場合、前記排気温度が高くなるほど前記浄化用電位差が小さくなるように前記第1または第2電極に印加する電圧の指令値を設定する
ことを特徴とする排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気を浄化するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001-295634号公報は、内燃機関からの排気を浄化するシステムを開示する。この従来のシステムは、三元触媒と、電源装置と、を備えている。電源装置は、三元触媒に装着された電極間に電圧を印加して放電限界電界を発生させる。放電限界電界は、排気に含まれるガス分子の大半が解離を始める電界の強度である。
【0003】
三元触媒の雰囲気温度が適正な温度域よりも低い場合、ガス分子のポテンシャルエネルギは低く、三元触媒によるガス分子の浄化反応が進行し難い。この点、従来のシステムによれば、放電限界電界によるポテンシャルエネルギの増加が期待される。従って、雰囲気温度が適正な温度域よりも低い場合でも、雰囲気温度が適正な温度域にある場合と同様に、浄化反応を進行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-295634号公報
【文献】特開2013-209921号公報
【文献】特開2001-159309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放電限界電界としては数百kV/cmの強度が想定されており、放電限界電界を常に発生させることは電力の無駄遣いに繋がる。また、雰囲気温度が適正な温度域にある場合に放電限界電界を発生させることも、電力の無駄遣いに繋がる。そのため、三元触媒の雰囲気を考慮した改良が望まれる。
【0006】
本発明の1つの目的は、内燃機関からの排気の浄化を触媒への電界印加により行うシステムにおいて、電界の発生に伴う電力の消費量を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する排気浄化システムであり、次の特徴を有する。
前記排気浄化システムは、浄化用触媒と、第1および第2電極と、取得装置と、電源装置と、を備える。
前記浄化用触媒は、内燃機関の排気管に設けられる。
前記第1および第2電極は、前記浄化用触媒に設けられる。
前記取得装置は、前記浄化用触媒に流入する排気温度を取得する。
前記電源装置は、電圧制御を行う。前記電圧制御では、前記第1および第2電極の間に浄化用電位差を生じさせて前記浄化用触媒の表面付近に電界が付与されるように前記第1または第2電極に対して電圧が印加される。
前記電源装置は、前記電圧制御において、
前記排気温度が、前記浄化用触媒による排気成分の浄化率の下限値または上限値に基づいて設定された温度下限値と温度上限値の間にない場合、前記第1または第2電極に印加する電圧の指令値をゼロに設定し、
前記排気温度が前記温度下限値と前記温度上限値の間にある場合、前記排気温度が高くなるほど前記浄化用電位差が小さくなるように前記第1または第2電極に印加する電圧の指令値を設定する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1および第2電極の間に浄化用電位差を生じさせて浄化用触媒の表面付近に電界が付与されるようにこれらの電極の一方に対して電圧が印加される電圧制御が行われる。但し、電圧制御では、排気温度が温度下限値と温度上限値の間にない場合、印加電圧の指令値がゼロに設定される。従って、電圧の印加を常に行う場合に比べて電力の消費量を減らすことが可能になる。
【0009】
一方、電圧制御では、排気温度が温度下限値と温度上限値の間にある場合、排気温度が高くなるほど浄化用電位差が小さくなるように印加電圧の指令値が設定される。浄化用電位差が小さくなるように印加電圧の指令値が設定されるということは、浄化用電位差を一定に保つように同指令値が設定される場合に比べて電力の消費量が少なくなる。従って、電圧の印加に伴う電力の消費量を減らすことが可能になる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る排気浄化システムの構成例を説明する図である。
図2】第1の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。
図3】第2の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。
図4】第3の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。
図5】第1の電位差の第1の設定例を説明する図である。
図6】第1の電位差の第2の設定例を説明する図である。
図7】第1の電位差の第3の設定例を説明する図である。
図8】第2の電位差の第1の設定例を説明する図である。
図9】第2の電位差の第2の設定例を説明する図である。
図10】第2の電位差の第3の設定例を説明する図である。
図11】第3の電位差の第1の設定例を説明する図である。
図12】第3の電位差の第2の設定例を説明する図である。
図13】第3の電位差の第3の設定例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0012】
1.システムの構成
図1は、本発明の実施の形態に係る排気浄化システムの構成例を説明する図である。図1に示す排気浄化システム1は、車両に搭載される。排気浄化システム1は、車両の動力源としての内燃機関10を備えている。内燃機関10としては、ディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンが例示される。
【0013】
内燃機関10は、排気管20を備えている。排気管20には、内燃機関10からの排気ガスが流れる。排気管20の途中には、触媒装置30が設けられている。触媒装置30は、排気に含まれる有害成分(例えば、炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物。以下、「排気成分」と称す。)を浄化する装置である。触媒装置30は、触媒32と、第1電極34と、第2電極36と、を備えている。
【0014】
触媒32としては、酸化触媒、還元触媒および三元触媒が例示される。酸化触媒は、排気成分の酸化反応を促進する。還元触媒は、排気成分の還元反応を促進する。三元触媒は、酸化反応および還元反応を同時に促進する。第1電極34および第2電極36は、触媒32に取り付けられる。第1電極34および第2電極36の間に電位差が生じると、触媒32の表面付近に電界が付与される。電位差は、第1電極34または第2電極36に対して電圧が印加されることにより生じる。
【0015】
排気浄化システム1は、更に、電源装置40と、取得装置50と、を備えている。電源装置40は、直流電源42と、制御回路44と、コントローラ46と、を備えている。直流電源42は、100V程度の低圧直流電源である。制御回路44は、第1電極34または第2電極36に対して電圧を印加する。コントローラ46は、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサと、を有するマイクロコンピュータである。コントローラ46は、取得装置50からの信号に基づいて、第1電極34または第2電極36に印加する電圧の指令値(以下、「印加電圧の指令値」と称す。)を制御回路44に出力する。
【0016】
取得装置50は、コントローラ46の入力側に接続されている。取得装置50は、触媒32による排気成分の浄化率と相関を有する物理量(以下、「相関物理量」とも称す。)を取得する。相関物理量としては、排気温度T、排気流量Fおよび排気空燃比λが例示される。排気温度Tは、触媒32に流入する排気の温度である。排気流量Fは、触媒32に流入する排気の流量である。排気空燃比λは、触媒32に流入する排気の空燃比である。取得装置50は、直接的または間接的に相関物理量を取得する。
【0017】
2.電圧制御の例
本実施の形態において、コントローラ46は、第1、第2または第3の電圧制御を行う。第1の電圧制御は、排気温度Tに基づいて行われる。第2の電圧制御は、排気流量Fに基づいて行われる。第3の電圧制御は、排気空燃比λに基づいて行われる。第1、第2または第3の電圧制御は、コントローラ46のプロセッサがメモリから所定のプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0018】
2.1 第1の電圧制御
図2は、第1の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。図2に示すルーチンは、内燃機関10の稼働中、所定の制御間隔で実行される。
【0019】
図2に示すルーチンでは、まず、排気温度Tが取得される(ステップS10)。続いて、排気温度Tが下限値Tellと上限値Telhの間にあるか否かが判定される(ステップS12)。下限値Tellおよび上限値Telhは、触媒32による排気成分の浄化率に基づいた実験等に基づいて設定された温度である。下限値Tellおよび上限値Telhは、浄化率の下限値Rlまたは上限値Rhに基づいて設定される。下限値Rlおよび上限値Rhは何れも一定値である。
【0020】
ステップS12の判定結果が否定的な場合、図2に示すルーチンが終了する。つまり、ステップS12の判定結果が否定的な場合、第1の電圧制御が行われない。一方、ステップS12の判定結果が肯定的な場合、印加電圧の指令値V1が出力される(ステップS14)。指令値V1は、第1電極34および第2電極36の間に浄化用の第1の電位差PD(Potential Difference)1を生じさせる電位である。
【0021】
2.2 第2の電圧制御
図3は、第2の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。図3に示すルーチンは、内燃機関10の稼働中、所定の制御間隔で実行される。
【0022】
図3に示すルーチンでは、まず、排気流量Fが取得される(ステップS20)。続いて、排気流量Fが下限値Fellと上限値Felhの間にあるか否かが判定される(ステップS22)。下限値Fellおよび上限値Felhは、触媒32による排気成分の浄化率に基づいた実験等に基づいて設定された温度である。下限値Fellおよび上限値Felhは、下限値Rlまたは上限値Rhに基づいて設定される。
【0023】
ステップS22の判定結果が否定的な場合、図3に示すルーチンが終了する。つまり、ステップS22の判定結果が否定的な場合、第2の電圧制御が行われない。一方、ステップS22の判定結果が肯定的な場合、印加電圧の指令値V2が出力される(ステップS24)。指令値V2は、第1電極34および第2電極36の間に浄化用の第2の電位差PD2を生じさせる電位である。
【0024】
2.3 第3の電圧制御
図4は、第3の電圧制御の処理例を説明するフローチャートである。図4に示すルーチンは、内燃機関10の稼働中、所定の制御間隔で実行される。
【0025】
図4に示すルーチンでは、まず、排気空燃比λが取得される(ステップS30)。続いて、排気空燃比λが下限値λellと上限値λelhの間にあるか否かが判定される(ステップS32)。下限値λellおよび上限値λelhは、触媒32による排気成分の浄化率に基づいた実験等に基づいて設定された温度である。下限値λellおよび上限値λelhは、下限値Rlまたは上限値Rhに基づいて設定される。
【0026】
ステップS32の判定結果が否定的な場合、図4に示すルーチンが終了する。つまり、ステップS32の判定結果が否定的な場合、第3の電圧制御が行われない。一方、ステップS32の判定結果が肯定的な場合、印加電圧の指令値V3が出力される(ステップS34)。指令値V3は、第1電極34および第2電極36の間に浄化用の第3の電位差PD3を生じさせる電位である。
【0027】
2.4 第1~第3の電圧制御による効果
第1の電圧制御が行われると、第1電極34および第2電極36の間に第1の電位差PD1が生じる。第1の電位差PD1が生じると、第1電極34および第2電極36の間に電界が生じ、排気成分のポテンシャルエネルギが増加する。従って、触媒32による排気成分の浄化反応が促進される。この促進効果は、第2の電位差PD2が生じる第2の電圧制御が行われた場合も期待され、第3の電位差PD3が生じる第3の電圧制御が行われた場合にも期待される。
【0028】
また、第1、第2または第3の電圧制御は、相関物理量がそれぞれの範囲外にある場合行われない。従って、上記促進効果が見込まれないようなときの電圧制御の実行をキャンセルして、電力の無駄遣いを減らすことが可能となる。
【0029】
3.電圧制御の別の例
本実施の形態において、コントローラ46は、第4、第5または第6の電圧制御を行う。第4、第5および第6の電圧制御は、着目する相関物理量において、第1、第2および第3の電圧制御と共通する。すなわち、第4の電圧制御は、第1の電圧制御と共通する排気温度Tに着目して行われる。第5の電圧制御は、第2の電圧制御と共通する排気流量Fに着目して行われる。第6の電圧制御は、第3の電圧制御と共通する排気空燃比λに着目して行われる。第4、第5または第6の電圧制御は、コントローラ46のプロセッサがメモリから所定のプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0030】
3.1 第4の電圧制御
第4の電圧制御では、排気温度Tに応じて第1の電位差PD1が設定される。図5は、第1の電位差PD1の第1の設定例を説明する図である。この第1の例では、排気温度Tが上限値Telhのときには第1の電位差PD1がPD11に設定され、下限値Tellのときには第1の電位差PD1がPD12(<PD11)に設定される。また、排気温度Tが上限値Telhと下限値Tellの間のときには、排気温度Tが高くなるほど第1の電位差PD1が小さな値に設定される。
【0031】
相関物理量の定義の際に述べたように、排気温度Tは触媒32による排気成分の浄化率と相関を有する。この理由は、排気成分のポテンシャルエネルギと、排気温度Tの間に相関があるためである。具体的に、排気温度Tが高くなるほど、排気成分のポテンシャルエネルギが増加する。このことから、排気成分の浄化反応の進行に必要な活性化エネルギは、排気温度Tが高くなるほど少ないエネルギで済むことが分かる。第4の電圧制御は、このような関係性に着目したものである。なお、制御回路44に出力される指令値V1は、設定後の第1の電位差PD1に応じて適宜変更される。
【0032】
図6および7は、第1の電位差PD1の第2および第3の設定例を説明する図である。図5で説明した第1の設定例では、排気温度Tを変数とする1次関数により第1の電位差PD1が表現された。図6に示す第2の設定例では、下に凸の関数により第1の電位差PD1が表現される。図7に示す第3の設定例では、上に凸の関数により第1の電位差PD1が表現される。
【0033】
3.2 第5の電圧制御
第5の電圧制御では、排気流量Fに応じて第2の電位差PD2が設定される。図8は、第2の電位差PD2の第1の設定例を説明する図である。この第1の例では、排気流量Fが下限値Fellのときには第2の電位差PD2がPD21に設定され、上限値Felhのときには第2の電位差PD2がPD22(>PD21)に設定される。また、排気流量Fが上限値Felhと下限値Fellの間のときには、排気流量Fが少なくなるほど第2の電位差PD2が小さな値に設定される。
【0034】
相関物理量の定義の際に述べたように、排気流量Fは触媒32による排気成分の浄化率と相関を有する。この理由は、触媒32の構造体の内部に拡散する排気成分の量と、排気流量Fとの間に相関があるためである。具体的に、排気流量Fが少なくなるほど、触媒32中に拡散する排気成分の量が増加する。この拡散量が増加するということは、触媒32による排気成分の浄化の機会が増えることを意味する。このことから、排気流量Fが少なくなるほど排気成分の浄化反応が進行し易くなることが分かる。第5の電圧制御は、このような関係性に着目したものである。なお、制御回路44に出力される指令値V2は、設定後の第2の電位差PD2に応じて適宜変更される。
【0035】
図9および10は、第2の電位差PD2の第2および第3の設定例を説明する図である。図8で説明した第1の設定例では、排気流量Fを変数とする1次関数により第2の電位差PD2が表現された。図9に示す第2の設定例では、下に凸の関数により第2の電位差PD2が表現される。図10に示す第3の設定例では、上に凸の関数により第2の電位差PD2が表現される。
【0036】
3.3 第6の電圧制御
第6の電圧制御では、排気空燃比λに応じて第3の電位差PD3が設定される。図11は、第3の電位差PD3の第1の設定例を説明する図である。この第1の例では、排気空燃比λが所定空燃比λrのときには第3の電位差PD3がPD31に設定される。また、排気空燃比λが上限値λelhおよび下限値λellのときには、何れも、第3の電位差PD3がPD32(>PD31)に設定される。なお、上限値λelhにおける第3の電位差PD3と、下限値λellにおけるそれとが異なる値に設定されてもよい。
【0037】
また、排気空燃比λが所定空燃比λrと上限値λelhの間のときには、排気空燃比λが小さくなるほど第3の電位差PD3が小さな値に設定される。排気空燃比λが所定空燃比λrと下限値λellの間のときには、排気空燃比λが大きくなるほど第3の電位差PD3が小さな値に設定される。なお、所定空燃比λrは一定値が設定されてもよいし、着目する排気成分に応じた値が個別に設定されてもよい。
【0038】
相関物理量の定義の際に述べたように、排気空燃比λは触媒32による排気成分の浄化率と相関を有する。この理由は、排気空燃比λが所定空燃比λrに近づくほど、排気成分の浄化反応が進行し易くなる反応条件が整うためである。このことから、排気空燃比λと所定空燃比λrの差が小さくなるほど、排気成分の浄化反応が進行し易くなることが分かる。第6の電圧制御は、このような関係性に着目したものである。なお、制御回路44に出力される指令値V3は、設定後の第3の電位差PD3に応じて適宜変更される。
【0039】
図12および13は、第3の電位差PD3の第2および第3の設定例を説明する図である。図11で説明した第1の設定例では、排気空燃比λを変数とする1次関数により第3の電位差PD3が表現された。図12に示す第2の設定例では、所定空燃比λrを境とする下に凸の2種類の関数により第3の電位差PD3が表現される。図13に示す第3の設定例では、所定空燃比λrを境とする上に凸の関数により第3の電位差PD3が表現される。
【0040】
3.4 第4~第6の電圧制御による効果
第4の電圧制御が行われると、排気温度Tが高くなるほど第1の電位差PD1が小さな値に設定される。第5の電圧制御が行われると、排気流量Fが少なくなるほど第2の電位差PD2が小さな値に設定される。第6の電圧制御が行われると、排気空燃比λが所定空燃比λrに近づくほど、第3の電位差PD3が小さな値に設定される。つまり、何れの電圧制御が行われる場合であっても、排気成分の浄化反応が進行し易くなる状況下で、浄化用の電位差が小さな値に設定される。浄化用の電位差が小さな値に設定されるということは、同電位差が一定値に設定される場合に比べて電力の消費量が少なくなる。従って、電圧制御の実行に伴う電力の消費量を減らすことが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
1 排気浄化システム
10 内燃機関
20 排気管
30 触媒装置
32 触媒
34 第1電極
36 第2電極
40 電源装置
42 直流電源
44 制御回路
46 コントローラ
50 取得装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13