(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231129BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L29/78 617S
H01L29/78 616T
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
H01L29/78 618C
(21)【出願番号】P 2022197950
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2021125798の分割
【原出願日】2015-02-03
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2014020620
(32)【優先日】2014-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014043637
(32)【優先日】2014-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】中田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅博
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-214958(JP,A)
【文献】特開2012-151461(JP,A)
【文献】特開2012-109579(JP,A)
【文献】特開2013-247142(JP,A)
【文献】特開2003-203919(JP,A)
【文献】特開2013-242954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜を介して前記酸化物半導体膜と互いに重なる領域を有する第2の導電膜と、
前記第2の導電膜上の第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜上の第3の導電膜と、を有し、
前記第3の導電膜は、前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第1の絶縁膜は、酸化物絶縁膜を有し、
前記第2の絶縁膜の端部が前記第2の導電膜より外側に位置し、
前記第2の絶縁膜の端部の断面形状は、テーパー形状を有し、
前記テーパー形状は、断面視において、前記第2の絶縁膜の側面の接線と、前記酸化物半導体膜の表面とのなす角が変化する領域を有する形状であり、
チャネル長方向において、前記第2の絶縁膜の両端は、前記第1の導電膜の両端より内側に位置し、
前記酸化物半導体膜は、第1の領域と、前記第1の領域に隣接する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域の膜厚は、前記第1の領域の膜厚より小さい領域を有し、
前記第1の領域は、前記第1の導電膜と重なり、
前記第2の領域は、前記第1の導電膜と重なる領域と、前記第1の導電膜と重ならない領域とを有するトランジスタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3の導電膜は、前記第1の導電膜と重なる領域を有するトランジスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1の領域は、前記第2の絶縁膜と重なり、
前記第2の領域は、前記第2の絶縁膜と重ならないトランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第2の領域の膜厚は、前記第1の領域の膜厚より0.1nm以上5nm以下小さい領域を有するトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置、該半導体装置の作製方法、モ
ジュール及び電子機器に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロ
セス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に
関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装
置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジ
スタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路
(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トラ
ンジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコンを代表とする半導体材料が広く知られて
いるが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0005】
例えば、酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用い
てトランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。また、自己整列トランジ
スタを作製する技術が特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-165529号公報
【文献】特開2009-278115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタとしては、例えば、逆スタガ型(ボトムゲート構
造ともいう)またはプレナー型(トップゲート構造ともいう)等が挙げられる。酸化物半
導体膜を用いたトランジスタを表示装置に適用する場合、プレナー型のトランジスタより
も逆スタガ型のトランジスタの方が、作製工程が比較的簡単であり製造コストを抑えられ
るため、利用される場合が多い。しかしながら、表示装置の画面の大型化、または表示装
置の画質の高精細化(例えば、4k×2k(水平方向画素数=3840画素、垂直方向画
素数=2048画素)または8k×4k(水平方向画素数=7680画素、垂直方向画素
数=4320画素)に代表される高精細な表示装置)が進むと、逆スタガ型のトランジス
タでは、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間の寄生容量があるため、該寄生
容量によって信号遅延等が大きくなり、表示装置の画質が劣化するという問題があった。
また、逆スタガ型のトランジスタの場合、プレナー型のトランジスタと比較して、トラン
ジスタの占有面積が大きくなるといった問題がある。そこで、酸化物半導体膜を用いたプ
レナー型のトランジスタについて、安定した半導体特性及び高い信頼性を有する構造で、
且つ簡単な作製工程で形成されるトランジスタの開発が望まれている。
【0008】
また、表示装置の画面の大型化、または表示装置の画質の高精細化が進むと、表示装置
の画素に形成されるトランジスタと、該トランジスタに接続される容量素子の構成が重要
となる。容量素子は、画素に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有す
る。容量素子の構成によっては、画素に書き込まれたデータを保持できず、表示装置の画
質が劣化するという問題があった。
【0009】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた新規な半導体装置を提供す
る。特に、酸化物半導体を用いたプレナー型の半導体装置を提供する、または酸化物半導
体を用いたオン電流が大きい半導体装置を提供する、または酸化物半導体を用いたオフ電
流が小さい半導体装置を提供する、または酸化物半導体を用いた占有面積の小さい半導体
装置を提供する、または酸化物半導体を用いた安定な電気特性をもつ半導体装置を提供す
る、または酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供する、または新規な半導
体装置を提供することを課題の1つとする。
【0010】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細
書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽
出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、トランジスタと、容量素子と、を有し、トランジスタは、第1の導
電膜と、第1の導電膜上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上の第2の絶縁膜と、第2の絶
縁膜上の酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜に接する一対の電極と、酸化物半導体膜上の
ゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して酸化物半導体膜と互いに重なる第2の導電膜と、
を有し、第1の絶縁膜は、水素を含む膜を有し、第2の絶縁膜は、酸化物絶縁膜を有し、
酸化物半導体膜は、第1の導電膜と互いに重なる第1の領域と、第1の領域を挟む一対の
第2の領域と、を有し、第1の領域及び第2の領域は、不純物元素の濃度が異なり、容量
素子は、下部電極と、下部電極上の電極間絶縁膜と、電極間絶縁膜上の上部電極と、を有
し、下部電極は、第1の導電膜が有する材料と同じ材料を含み、電極間絶縁膜は、第1の
絶縁膜が有する材料と同じ材料を含む第3の絶縁膜と、ゲート絶縁膜が有する材料と同じ
材料を含む第4の絶縁膜と、を有し、上部電極は、第2の導電膜が有する材料と同じ材料
を含み、トランジスタ上の第5の絶縁膜を有し、第5の絶縁膜は、水素を含む膜を有する
ことを特徴とする半導体装置である。
【0012】
また、上記構成において、水素を含む膜は、窒化シリコン膜を含むことが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、酸化物絶縁膜は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの
酸素を含む領域を有することが好ましい。
【0014】
また、上記構成において、第1の領域より第2の領域の不純物元素の濃度が高い。
【0015】
また、上記構成において、不純物元素は、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミ
ニウム、シリコン、リンまたは塩素の中から選ばれるいずれか一つを有している。
【0016】
また、上記構成において、第1の領域は、第2の領域の膜厚より大きい領域を有しても
よい。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、第1のゲート電極及び下部電極を同一の導電膜から形成
し、第1のゲート電極及び下部電極上に第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜上に第2の
絶縁膜を形成し、第2の絶縁膜上に脱離抑制膜を形成し、脱離抑制膜を介して第2の絶縁
膜に酸素を添加し、脱離抑制膜を除去し、第2の絶縁膜の下部電極と互いに重なる領域を
加工して第1の絶縁膜を露出させ、第2の絶縁膜上に酸化物半導体膜を形成し、酸化物半
導体膜上、第1の絶縁膜上及び第2の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成し、第3の絶縁膜上
に第1の導電膜を形成し、第1の導電膜を加工して、第2のゲート電極及び上部電極を形
成し、第3の絶縁膜を加工して、ゲート絶縁膜及び第4の絶縁膜を形成し、第2のゲート
電極をマスクにし、酸化物半導体膜に不純物を添加して、第2のゲート電極と重なる第1
の領域と、第1の領域を挟む一対の第2の領域と、を形成し、第2の絶縁膜上、酸化物半
導体膜上、第2のゲート電極上及び上部電極上に第5の絶縁膜を形成し、第5の絶縁膜の
一対の第2の領域と互いに重なる領域を加工して一対の第2の領域を露出させ、第5の絶
縁膜上及び一対の第2の領域の一方の上にソース電極を形成し、及び第5の絶縁膜上及び
一対の第2の領域の他方の上にドレイン電極を形成し、第5の絶縁膜は、水素を含む膜を
有し、第1の絶縁膜及び第4の絶縁膜は、電極間絶縁膜としての機能を有することを特徴
とする半導体装置の作製方法である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、上記の半導体装置と、プリント基板と、を有することを
特徴とするモジュールである。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、上記の半導体装置、または、上記のモジュールと、スピ
ーカー、操作キー、または、バッテリーと、を有することを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様により、酸化物半導体を用いた新規な半導体装置を提供することができ
る。特に、酸化物半導体を用いたプレナー型の半導体装置を提供することができる。また
は、酸化物半導体を用いたオン電流が大きい半導体装置を提供することができる。または
、酸化物半導体を用いたオフ電流が小さい半導体装置を提供することができる。または、
酸化物半導体を用いた占有面積の小さい半導体装置を提供することができる。または、酸
化物半導体を用いた安定な電気特性をもつ半導体装置を提供することができる。または、
酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することができる。または、新規な
半導体装置を提供することができる。
【0021】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
【
図10】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図11】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図12】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図13】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図14】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図15】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図16】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図17】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図18】本発明の一態様に係る半導体装置であるトランジスタの断面図及びバンド構造。
【
図20】CAAC-OSの断面におけるCs補正高分解能TEM像、およびCAAC-OSの断面模式図。
【
図21】CAAC-OSの平面におけるCs補正高分解能TEM像。
【
図22】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図。
【
図23】CAAC-OSの電子回折パターンを示す図。
【
図24】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
【
図25】発光装置の画素部の構成について説明する図。
【
図36】本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の上面図及び回路図。
【
図37】本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の回路図及びタイミングチャート。
【
図38】本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の回路図及びタイミングチャート。
【
図39】本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の回路図及びタイミングチャート。
【
図40】本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の回路図及びタイミングチャート。
【
図42】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
【
図46】CAAC-OSの成膜モデルを説明する模式図、ペレットおよびCAAC-OSの断面図。
【
図47】nc-OSの成膜モデルを説明する模式図、およびペレットを示す図。
【
図49】被形成面においてペレットに加わる力を説明する図。
【
図50】被形成面におけるペレットの動きを説明する図。
【
図52】原子が衝突する前のInGaZnO
4の構造などを説明する図。
【
図53】原子が衝突した後のInGaZnO
4の構造などを説明する図。
【
図54】原子が衝突した後の原子の軌跡を説明する図。
【
図55】CAAC-OSおよびターゲットの断面HAADF-STEM像。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異
なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態
及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されてい
る場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例
を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0025】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0026】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位
置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関
係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明し
た語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0027】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置
されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略
平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態
をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、
二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0028】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0029】
なお、本明細書において、「膜」という表記と、「層」という表記と、を互いに入れ替
えることが可能である。また、「絶縁体」という表記と、「絶縁膜(または絶縁層)」と
いう表記と、を互いに入れ替えることが可能である。また、「導電体」という表記と、「
導電膜(または導電層)」という表記と、を互いに入れ替えることが可能である。また、
「半導体」という表記は、「半導体膜(または半導体層)」という表記と、を互いに入れ
替えることが可能である。
【0030】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すこ
とができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として
流れる領域をいう。
【0031】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインという用語は、入れ替えて用いることができるもの
とする。
【0032】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0033】
なお、本明細書において、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、
半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲー
ト電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソー
ス領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離
をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとると
は限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合があ
る。そのため、本明細書では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いず
れか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0034】
本明細書において、チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態
のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチ
ャネルが形成される領域における、ソースまたはドレインの幅をいう。なお、一つのトラ
ンジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つ
のトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書
では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最
小値または平均値とする。
【0035】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャ
ネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示され
るチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば
、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面
図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくな
る場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の上面
に形成されるチャネル領域の割合に対して、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割
合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅
よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0036】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実
測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見
積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形
状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である
。
【0037】
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが互い
に重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ
上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Chann
el Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載し
た場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または
、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合が
ある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲
い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどに
よって、値を決定することができる。
【0038】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求
める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチ
ャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図面を用いて説
明する。
【0040】
<半導体装置の構成>
図1に、半導体装置に含まれるトランジスタの一例として、トップゲート構造のトラン
ジスタ及び該トランジスタと同一工程で作製することができる容量素子を示す。
【0041】
図1に半導体装置が有するトランジスタ150及び容量素子160の断面図を示す。ま
た、
図2にトランジスタ150の上面図及び断面図を示す。
図2(A)はトランジスタ1
50の上面図であり、
図2(B)は、
図2(A)の一点鎖線A1-A2間の断面図であり
、
図2(C)は、
図2(A)の一点鎖線A3-A4間の断面図である。なお、
図2(A)
では、明瞭化のため、基板100、絶縁膜101、絶縁膜102、ゲート絶縁膜112a
、絶縁膜108、絶縁膜118、絶縁膜128などを省略している。なお、トランジスタ
の上面図においては、以降の図面においてもトランジスタ150と同様に、構成要素の一
部を省略して図示する場合がある。また、一点鎖線A1-A2方向をチャネル長方向、一
点鎖線A3-A4方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0042】
トランジスタ150は、基板100上に形成された絶縁膜101上のゲート電極104
aと、ゲート電極104a上の絶縁膜102と、絶縁膜102上の第1の領域106及び
第1の領域を挟む一対の第2の領域107a、107bを有する酸化物半導体膜126と
、酸化物半導体膜126と接するゲート絶縁膜112aと、ゲート絶縁膜112a上のゲ
ート電極114aと、酸化物半導体膜126及びゲート電極114aを覆う絶縁膜108
及び絶縁膜118と、絶縁膜108及び絶縁膜118に設けられた開口において、第2の
領域107aと接するソース電極116a及び第2の領域107bと接するドレイン電極
116bと、を有する。
【0043】
容量素子160は、基板100上に形成された絶縁膜101上の下部電極104bと、
下部電極104b上の電極間絶縁膜として機能する絶縁膜102a及び絶縁膜112bと
、絶縁膜112b上の上部電極114bと、を有する。
【0044】
酸化物半導体膜126において、ゲート電極114aと互いに重ならない一対の第2の
領域107a、107bには、酸素欠損を形成する元素を有する。以下、酸素欠損を形成
する元素を、不純物元素として説明する。不純物元素の代表例としては、水素、ホウ素、
炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、希ガス元素等がある。希ガ
ス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノンがある
。
【0045】
不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素及び酸素の
結合が切断され、酸素欠損が形成される。または、不純物元素が酸化物半導体膜に添加さ
れると、酸化物半導体膜中の金属元素と結合していた酸素が不純物元素と結合し、金属元
素から酸素が脱離され、酸素欠損が形成される。これらの結果、酸化物半導体膜において
キャリア密度が増加し、導電性が高くなる。
【0046】
不純物元素の添加により酸素欠損が形成された酸化物半導体に水素を添加すると、酸素
欠損サイトに水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体
は、導電性が高くなり、導電体化する。導電体化された酸化物半導体を酸化物導電体とい
うことができる。一般に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に
対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物
半導体である。したがって、該ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸
化物半導体と同程度の透光性を有する。
【0047】
ここで、酸化物導電体で形成される膜(以下、酸化物導電体膜という。)における、抵
抗率の温度依存性について、図面を用いて説明する。
【0048】
ここでは、酸化物導電体膜を有する試料を作製した。酸化物導電体膜としては、酸化物
半導体膜が窒化シリコン膜に接することで形成された酸化物導電体膜(OC_SiNx)
、ドーピング装置において酸化物半導体膜にアルゴンが添加され、且つ窒化シリコン膜と
接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)、またはプ
ラズマ処理装置において酸化物半導体膜がアルゴンプラズマに曝され、且つ窒化シリコン
膜と接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)を
作製した。なお、窒化シリコン膜は、水素を含む。
【0049】
酸化物導電体膜(OC_SiNx)を含む試料の作製方法を以下に示す。ガラス基板上
に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した後、酸素プ
ラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加熱により酸素を放
出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコ
ン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを
用いてスパッタリング法により厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、4
50℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱
処理した。次に、プラズマCVD法で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次
に、350℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。
【0050】
酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)を含む試料の作製方法を以下に示
す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形
成した後、酸素プラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加
熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出す
る酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリ
ングターゲットを用いて、スパッタリング法により厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸
化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混
合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、ドーピング装置を用いて、In-Ga-Zn酸化物
膜に、加速電圧を10kVとし、ドーズ量が5×1014/cm2のアルゴンを添加して
、In-Ga-Zn酸化物膜に酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法で、厚さ1
00nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気
で加熱処理した。
【0051】
酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)を含む試料の作製方法を以下
に示す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法によ
り形成した後、酸素プラズマに曝すことで、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン
膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がI
n:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング
法により厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で
加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、プラ
ズマ処理装置において、アルゴンプラズマを発生させ、加速させたアルゴンイオンをIn
-Ga-Zn酸化物膜に衝突させることで酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法
で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素及び酸素の混合
ガス雰囲気で加熱処理した。
【0052】
次に、各試料の抵抗率を測定した結果を
図45に示す。ここで、抵抗率の測定は4端子
のvan-der-Pauw法で行った。
図45において、横軸は測定温度を示し、縦軸
は抵抗率を示す。また、酸化物導電体膜(OC_SiN
x)の測定結果を四角印で示し、
酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN
x)の測定結果を丸印で示し、酸化物導
電体膜(OC_Ar plasma+SiN
x)の測定結果を三角印で示す。
【0053】
なお、図示しないが、窒化シリコン膜と接しない酸化物半導体膜は、抵抗率が高く、抵
抗率の測定が困難であった。このため、酸化物導電体膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が
低いことがわかる。
【0054】
図45からわかるように、酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN
x)及び酸
化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiN
x)が、酸素欠損及び水素を含む場合
、抵抗率の変動が小さい。代表的には、80K以上290K以下において、抵抗率の変動
率は、±20%未満である。または、150K以上250K以下において、抵抗率の変動
率は、±10%未満である。即ち、酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェ
ルミ準位とが一致または略一致していると推定される。このため、酸化物導電体膜をトラ
ンジスタのソース領域及びドレイン領域として用いることで、酸化物導電体膜とソース電
極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触がオーミック接触となり、酸化物導電
体膜とソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触抵抗を低減できる。ま
た、酸化物導電体の抵抗率は温度依存性が低いため、酸化物導電体膜とソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜との接触抵抗の変動量が少なく、信頼性の高いトランジ
スタを作製することが可能である。
【0055】
一対の第2の領域107a、107bは、ソース領域及びドレイン領域として機能する
。ソース電極116a及びドレイン電極116bがタングステン、チタン、アルミニウム
、銅、モリブデン、クロム、またはタンタル単体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導
電材料を用いて形成される場合、酸化物半導体膜に含まれる酸素とソース電極116a及
びドレイン電極116bに含まれる導電材料とが結合し、酸化物半導体膜において、酸素
欠損が形成される。また、酸化物半導体膜にソース電極116a及びドレイン電極116
bを形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結果、ソース電
極116a及びドレイン電極116bと接する一対の第2の領域107a、107bは、
導電性が高まり、ソース領域及びドレイン領域として機能する。
【0056】
不純物元素が希ガス元素であって、酸化物半導体膜126がスパッタリング法で形成さ
れる場合、一対の第2の領域107a、107bはそれぞれ希ガス元素を含み、且つ第1
の領域106と比較して、一対の第2の領域107a、107bの方が希ガス元素の濃度
が高い。これは、酸化物半導体膜126がスパッタリング法で形成される場合、スパッタ
リングガスとして希ガス元素を用いるため、酸化物半導体膜126に希ガスが含まれるこ
と、並びに一対の第2の領域107a、107bにおいて、酸素欠損を形成するために、
意図的に希ガス元素が添加されることが原因である。なお、一対の第2の領域107a、
107bにおいて、第1の領域106と異なる希ガス元素が添加されていてもよい。
【0057】
不純物元素が、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、または
、塩素の場合、一対の第2の領域107a、107bにのみ不純物元素を有する。このた
め、第1の領域106と比較して、一対の第2の領域107a、107bの方が不純物元
素の濃度が高い。なお、一対の第2の領域107a、107bにおいて、二次イオン質量
分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry
)により得られる不純物元素の濃度は、5×1018atoms/cm3以上1×102
2atoms/cm3以下、または1×1019atoms/cm3以上1×1021a
toms/cm3以下、または5×1019atoms/cm3以上5×1020ato
ms/cm3以下とすることができる。
【0058】
不純物元素が、水素の場合、第1の領域106と比較して、一対の第2の領域107a
、107bの方が不純物元素の濃度が高い。なお、一対の第2の領域107a、107b
において、二次イオン質量分析法により得られる水素の濃度は、8×1019atoms
/cm3以上、または1×1020atoms/cm3以上、または5×1020ato
ms/cm3以上とすることができる。
【0059】
一対の第2の領域107a、107bは不純物元素を有するため、酸素欠損が増加し、
キャリア密度が増加する。この結果、一対の第2の領域107a、107bは、導電性が
高くなり、低抵抗領域として機能する。
【0060】
なお、不純物元素が、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、
リン、または塩素の一以上と、希ガスの一以上の場合であってもよい。この場合、一対の
第2の領域107a、107bにおいて、希ガス元素により形成された酸素欠損と、且つ
該領域に添加された水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン
、または塩素の一以上との相互作用により、一対の第2の領域107a、107bは、導
電性がさらに高まる場合がある。
【0061】
第1の領域106は、チャネルとして機能する。ここで、酸化物半導体膜126近傍の
拡大図を
図3に示す。ゲート電極114aを形成する際に、酸化物半導体膜126の一対
の第2の領域107a、107bとなる領域がエッチングされるため、
図3に示すように
、第1の領域106は一対の第2の領域107a、107bより膜厚が大きくなる。代表
的には、第1の領域106は、一対の第2の領域107a、107bより厚さが0.1n
m以上5nm以下大きい領域を有する。
【0062】
本実施の形態に示すトランジスタ150は、チャネル形成領域として機能する第1の領
域106と、ソース領域及びドレイン領域として機能する一対の第2の領域107a、1
07bを有する。一対の第2の領域107a、107bは、導電性が高いため、一対の第
2の領域107a、107bとソース電極116a及びドレイン電極116bとの接触抵
抗を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能である
。
【0063】
また、トランジスタ150において、ゲート電極114aをマスクとして、不純物元素
が酸化物半導体膜126に添加される。すなわち、セルフアラインで不純物領域(ソース
領域及びドレイン領域)を形成することができる。
【0064】
また、トランジスタ150の作製工程と同時に容量素子160も作製することができる
。
トランジスタ150のゲート電極104aと、容量素子160の下部電極104bとが同
時に形成される。また、トランジスタ150のゲート絶縁膜112aと、容量素子160
の絶縁膜112bとが同時に形成される。また、トランジスタ150のゲート電極114
aと、容量素子160の上部電極114bとが同時に形成される。
【0065】
【0066】
基板100としては、様々な基板を用いることができ、特定のものに限定されることは
ない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板またはシリコン基板)、SO
I基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板
、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイル
を有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フ
ィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホ
ウケイ酸ガラス、またはソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィル
ム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレン
テレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフ
ォン(PES)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の
合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ
化ビニル、またはポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリ
イミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、または紙類などがある。特に、半導体
基板、単結晶基板、またはSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって
、特性、サイズ、または形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さい
トランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成する
と、回路の低消費電力化、または回路の高集積化を図ることができる。
【0067】
また、基板100として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形
成してもよい。または、基板100とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層
は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板100より分離し、他の
基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可
撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シ
リコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成され
た構成等を用いることができる。
【0068】
トランジスタが転載される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成すること
が可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィ
ルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン
、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、
再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、またはゴム基板などがある。これらの基板
を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの
形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、または薄型化を図ることができる
。
【0069】
絶縁膜101は、下地絶縁膜として機能する。絶縁膜101は、基板100からの不純
物の拡散を防止する役割を有する。絶縁膜101として、酸化アルミニウム、酸化マグネ
シウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イッ
トリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム及び酸化タ
ンタルなどの酸化物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化
酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁膜、またはこれらの混合材料を用いて形成することが
できる。また、上記材料の積層であってもよい。
【0070】
ゲート電極104aは、導電膜104a1及び導電膜104a2の積層である。また、
下部電極104bは、導電膜104b1及び導電膜104b2の積層である。導電膜10
4a1、導電膜104a2、導電膜104b1及び導電膜104b2は、アルミニウム、
クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンか
ら選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を
組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのい
ずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極104a
及び下部電極104bは、単層構造でも、三層以上の積層構造としてもよい。例えば、シ
リコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム
膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒
化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングス
テン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層する
二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタ
ン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さらにその上にマンガ
ンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、
タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一また
は複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0071】
また、ゲート電極104a及び下部電極104bは、インジウム錫酸化物、酸化タング
ステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チ
タンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸
化物、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用する
こともできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とする
こともできる。
【0072】
本実施の形態では、導電膜104a1及び導電膜104b1にチタン膜、導電膜104
a2及び導電膜104b2に銅膜を用いる。導電膜104a2及び導電膜104b2は銅
、アルミニウム等の低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。このような低抵抗な導
電性材料を用いることで、信号遅延を低減することができる。
【0073】
絶縁膜102は、絶縁膜102a及び絶縁膜102bの積層である。
【0074】
絶縁膜102aは、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキン
グ効果を有し、水素を含む膜であることが好ましく、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウ
ム、窒化酸化アルミニウム等を用いることができる。絶縁膜102bは、酸化物半導体膜
126との界面特性を向上させるため、酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。特に加
熱により一部の酸素を放出する酸化物材料を含むことが好ましく、化学量論的組成を満た
す酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を用いることがより好ましい。絶縁膜102bとし
て上記のような加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により
絶縁膜102bに含まれる酸素を、酸化物半導体膜126に移動させることが可能である
。
【0075】
絶縁膜102bの厚さは、50nm以上、または100nm以上3000nm以下、ま
たは200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜102bを厚くするこ
とで、絶縁膜102bの酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜102bと
酸化物半導体膜126との界面における界面準位、並びに酸化物半導体膜126の第1の
領域106に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。
【0076】
絶縁膜102bとして、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、
窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化
物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0077】
酸化物半導体膜126は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-
M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、または
Hf)等の金属酸化物で形成される。なお、酸化物半導体膜126は、透光性を有する。
【0078】
なお、酸化物半導体膜126がIn-M-Zn酸化物の場合、Zn及びOを除いてのI
n及びMの原子数比率は、In及びMの和を100atomic%としたときInが25
atomic%以上、Mが75atomic%未満、またはInが34atomic%以
上、Mが66atomic%未満とする。
【0079】
酸化物半導体膜126は、エネルギーギャップが2eV以上、または2.5eV以上、
または3eV以上である。
【0080】
酸化物半導体膜126の厚さは、3nm以上200nm以下、または3nm以上100
nm以下、または3nm以上50nm以下とすることができる。
【0081】
酸化物半導体膜126がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜す
るために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧M
を満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比と
して、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn
=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、I
n:M:Zn=3:1:2等が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜126の原子
数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子
数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0082】
また、酸化物半導体膜126において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含
まれると、酸化物半導体膜126において、酸素欠損が増加し、n型化してしまう。この
ため、酸化物半導体膜126であって、特に第1の領域106において、シリコンや炭素
の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm
3以下、または2×1017atoms/cm3以下とすることができる。この結果、ト
ランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)
を有する。
【0083】
また、酸化物半導体膜126であって、特に第1の領域106において、二次イオン質
量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018a
toms/cm3以下、または2×1016atoms/cm3以下とすることができる
。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する
場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、第1の領
域106のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。この
結果、トランジスタは、ノーマリーオフ特性を有する。
【0084】
また、酸化物半導体膜126であって、特に第1の領域106に窒素が含まれていると
、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化となる場合がある。この結
果、窒素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性とな
りやすい。従って、当該酸化物半導体膜であって、特に第1の領域106において、窒素
はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、二次イオン質量分析法により得ら
れる窒素濃度を、5×1018atoms/cm3以下にすることができる。
【0085】
酸化物半導体膜126であって、特に第1の領域106において、不純物元素を低減す
ることで、酸化物半導体膜のキャリア密度を低減することができる。このため、酸化物半
導体膜126であって、特に第1の領域106においては、キャリア密度を1×1017
個/cm3以下、または1×1015個/cm3以下、または1×1013個/cm3以
下、または1×1011個/cm3以下とすることができる。
【0086】
酸化物半導体膜126として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜
を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真
性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物
半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合があ
る。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、ノーマリ
ーオフ特性になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導
体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純
度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、ソ
ース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オ
フ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下
という特性を得ることができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成され
るトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合があ
る。
【0087】
また、酸化物半導体膜126は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例え
ば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline
Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質
構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-
OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0088】
なお、酸化物半導体膜126が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の
領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよ
い。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CA
AC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する単層構造の場合
がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の
領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上が積層された構造の
場合がある。
【0089】
なお、酸化物半導体膜126において、一対の第2の領域107a、107bと、第1
の領域106との結晶性が異なる場合がある。これは、一対の第2の領域107a、10
7bに不純物元素が添加された際に、一対の第2の領域107a、107bにダメージが
入ってしまい、結晶性が低下するためである。
【0090】
また、本実施の形態では、酸化物半導体膜126は酸化物半導体膜が多層構造(ここで
は2層構造)であり、下層にチャネル形成領域106a、低抵抗領域107a1及び低抵
抗領域107b1を有し、上層にチャネル形成領域106b、低抵抗領域107a2及び
低抵抗領域107b2を有する。
【0091】
また、2層構造である酸化物半導体膜の下層はチャネル領域が形成され、2層構造であ
る酸化物半導体膜の上層は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-
Mg酸化物、Zn-Mg酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga
、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)であり、且つ下層よりも伝導帯下端のエネ
ルギーが真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体膜(上層)の伝導帯下端のエネルギ
ーと、酸化物半導体膜(下層)の伝導帯下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、
0.07eV以上、0.1eV以上、または0.2eV以上、且つ2eV以下、1eV以
下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。なお、真空準位と伝導帯下端のエネ
ルギー差を電子親和力ともいう。
【0092】
酸化物半導体膜(上層)がIn-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y
、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)の場合、酸化物半導体膜(上層)を成膜するた
めに用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z
1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/
y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/
y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜(上層)としてCAAC-OS膜が形
成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn
=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、I
n:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1
:2等がある。
【0093】
なお、酸化物半導体膜(上層)、酸化物半導体膜(下層)の原子数比はそれぞれ、誤差
として上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0094】
なお、原子数比はこれらに限られず、必要とする半導体特性に応じて適切な原子数比の
ものを用いればよい。
【0095】
ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bは、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層
または積層して形成することができる。なお、酸化物半導体膜126との界面特性を向上
させるため、少なくとも酸化物半導体膜126と接する領域は酸化物絶縁膜を用いて形成
することが好ましい。ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとして、例えば酸化シリ
コン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハ
フニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で
設けることができる。
【0096】
また、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとして、酸素、水素、水等のブロッキ
ング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜126からの酸素の外部への拡
散と、外部から酸化物半導体膜126への水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、
水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化ア
ルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウ
ム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0097】
また、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとして、ハフニウムシリケート(Hf
SixOy)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy)、窒素が添加
されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy)、酸化ハフニウム、酸化イットリウム
などのhigh-k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0098】
また、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとして、加熱により一部の酸素を放出
する酸化物材料を含むことが好ましく、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含む酸化物絶縁膜を用いることがより好ましい。ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112
bとして上記のような加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理
によりゲート絶縁膜112aに含まれる酸素を、酸化物半導体膜126に移動させること
が可能である。
【0099】
また、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとして、欠陥の少ない酸化窒化シリコ
ン膜を用いることができる。欠陥の少ない酸化窒化シリコン膜は、加熱処理後において、
100K以下のESRで測定して得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.
039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、
及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルのスピン密度が観測される。
なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第2のシグナル及び第
3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5mTである。また、
g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.00
3以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルの
スピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満であり、代表的には1×10
17spins/cm3以上1×1018spins/cm3未満である。
【0100】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下
の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1
.964以上1.966以下の第3のシグナルは、窒素酸化物(NOx、xは0以上2以
下、または1以上2以下)起因のシグナルに相当する。即ち、g値が2.037以上2.
039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、
及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルのスピンの密度の合計が少な
いほど、酸化窒化シリコン膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
【0101】
また、欠陥の少ない酸化窒化シリコン膜は、二次イオン質量分析法で測定される窒素濃
度が、6×1020atoms/cm3以下である。ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜1
12bとして欠陥の少ない酸化窒化シリコン膜を用いることで、窒素酸化物が生成されに
くくなり、酸化物半導体膜126及び絶縁膜の界面におけるキャリアのトラップを低減す
ることが可能である。また、半導体装置に含まれるトランジスタのしきい値電圧のシフト
を低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0102】
ゲート電極114aは、導電膜114a1及び導電膜114a2の積層である。また、
上部電極114bは、導電膜114b1及び導電膜114b2の積層である。導電膜11
4a1、導電膜114a2、導電膜114b1及び導電膜114b2の材料等は、導電膜
104a1、導電膜104a2、導電膜104b1及び導電膜104b2を援用すること
ができる。
【0103】
本実施の形態では、導電膜114a1及び導電膜114b1に窒化タンタル膜、導電膜
114a2及び導電膜114b2にタングステン膜を用いる。
【0104】
また、
図1に示すように、チャネル長方向の断面形状において、導電膜114a1の端
部は、導電膜114a2の端部より外側に位置し、且つ導電膜114a1がテーパー形状
であってもよい。即ち、ゲート絶縁膜112a及び導電膜114a1が接する面と、導電
膜114a1の側面のなす角度が90°未満、または5°以上45°以下、また5°以上
30°以下であってもよい。また、導電膜114b1の端部は、導電膜114b2の端部
より外側に位置し、且つ導電膜114b1がテーパー形状であってもよい。即ち、絶縁膜
112b及び導電膜114b1が接する面と、導電膜114b1の側面のなす角度が90
°未満、または5°以上45°以下、また5°以上30°以下であってもよい。
【0105】
さらには、ゲート絶縁膜112aの端部が、導電膜114a1の端部より外側に位置し
てもよい。また、絶縁膜112bの端部が、導電膜114b1の端部より外側に位置して
もよい。
【0106】
さらには、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bの側面は湾曲してもよい。
【0107】
さらには、ゲート絶縁膜112aがテーパー形状であってもよい。即ち、酸化物半導体
膜126及びゲート絶縁膜112aが接する面と、ゲート絶縁膜112aの側面のなす角
度が90°未満、好ましくは30°以上90°未満であってもよい。
【0108】
絶縁膜108の材料等は、絶縁膜102aを援用することができる。
【0109】
絶縁膜118は、絶縁膜102bの材料を援用することができる。
【0110】
ソース電極116aは、導電膜116a1及び導電膜116a2の積層である。また、
ドレイン電極116bは、導電膜116b1及び導電膜116b2の積層である。導電膜
116a1、導電膜116a2、導電膜116b1及び導電膜116b2の材料等は、導
電膜104a1、導電膜104a2、導電膜104b1及び導電膜104b2を援用する
ことができる。
【0111】
本実施の形態では、導電膜116a1及び導電膜116b1にタングステン膜、導電膜
116a2及び導電膜116b2に銅膜を用いる。導電膜116a2及び導電膜116b
2は銅、アルミニウム等の低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。このような低抵
抗な導電性材料を用いることで、信号遅延を低減することができる。
【0112】
絶縁膜128は、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜であることが好ま
しい。絶縁膜128として、例えば窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム
などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0113】
ここでは、トランジスタの変形例について、
図4乃至
図7、
図29を用いて説明する。
図4に示すトランジスタは、基板400上の絶縁膜453上に形成された酸化物半導体膜
455と、酸化物半導体膜455に接する絶縁膜457と、絶縁膜457と接し、且つ酸
化物半導体膜455と互いに重なる導電膜459と、を有する。なお、絶縁膜457は、
ゲート絶縁膜としての機能を有する。また、導電膜459は、ゲート電極としての機能を
有する。なお、基板400は、基板100を援用できる。また、絶縁膜453は、絶縁膜
101を援用できる。また、酸化物半導体膜455は、酸化物半導体膜126を援用でき
る。また、絶縁膜457は、ゲート絶縁膜112aを援用できる。また、導電膜459は
、ゲート電極114aを援用できる。
【0114】
また、酸化物半導体膜455に接する窒化物絶縁膜465、及び窒化物絶縁膜465に
接する絶縁膜467が、トランジスタに設けられている。また、窒化物絶縁膜465及び
絶縁膜467の開口部において、酸化物半導体膜455と接する導電膜468、469が
、トランジスタに設けられている。なお、導電膜468、469は、ソース電極及びドレ
イン電極としての機能を有する。なお、窒化物絶縁膜465は、絶縁膜108を援用でき
る。また、絶縁膜467は、絶縁膜118を援用できる。また、導電膜468、469は
、ソース電極116a、ドレイン電極116bを援用できる。
【0115】
図4(A)に示すトランジスタにおいて、酸化物半導体膜455は、導電膜459と重
なる領域に形成されるチャネル領域455aと、チャネル領域455aを挟み、且つ不純
物元素を含む領域、即ち、低抵抗領域455b、455cとを有する。また、導電膜46
8、469は、低抵抗領域455b、455cと接する。なお、導電膜468、469は
、配線としての機能をする。
【0116】
または、
図4(B)に示すトランジスタのように、酸化物半導体膜455において、導
電膜468、469と接する領域455d、455eに、不純物元素が添加されていなく
ともよい。この場合、導電膜468、469と接する領域455d、455eとチャネル
領域455aとの間に、不純物元素を有する領域、即ち、低抵抗領域455b、455c
を有する。なお、領域455d、455eは、導電膜468、469に電圧が印加される
と導電性を有するため、ソース領域及びドレイン領域としての機能を有する。
【0117】
なお、
図4(B)に示すトランジスタは、導電膜468、469を形成した後、導電膜
459及び導電膜468、469をマスクとして、不純物元素を酸化物半導体膜に添加す
ることで形成できる。
【0118】
導電膜459において、導電膜459の端部がテーパー形状であってもよい。即ち、絶
縁膜457及び導電膜459が接する面と、導電膜459の側面となす角度θ1が、90
°未満、10°以上85°以下、または15°以上85°以下、または30°以上85°
以下、または45°以上85°以下、または60°以上85°以下であってもよい。角度
θ1を、90°未満、10°以上85°以下、または15°以上85°以下、または30
°以上85°以下、または45°以上85°以下、または60°以上85°以下とするこ
とで、絶縁膜457及び導電膜459の側面における窒化物絶縁膜465の被覆性を高め
ることが可能である。
【0119】
次に、低抵抗領域455b、455cの変形例について説明する。なお、
図4(C)乃
至
図4(F)は、
図4(A)に示す酸化物半導体膜455の近傍の拡大図である。ここで
は、チャネル長Lは、一対の低抵抗領域の間隔である。
【0120】
図4(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域455a
及び低抵抗領域455b、455cの境界が、絶縁膜457を介して、導電膜459の端
部と、一致または略一致している。即ち、上面形状において、チャネル領域455a及び
低抵抗領域455b、455cの境界が、導電膜459の端部と、一致または概略一致し
ている。
【0121】
または、
図4(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aが、導電膜459と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域として機
能する。チャネル長方向におけるオフセット領域の長さをL
offと示す。なお、オフセ
ット領域が複数ある場合は、一つのオフセット領域の長さをL
offという。L
offは
、チャネル長Lに含まれる。また、L
offは、チャネル長Lの20%未満、または10
%未満、または5%未満、または2%未満である。
【0122】
または、
図4(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域4
55b、455cが、絶縁膜457を介して、導電膜459と重なる領域を有する。該領
域はオーバーラップ領域として機能する。チャネル長方向におけるオーバーラップ領域の
長さをL
ovと示す。L
ovは、チャネル長Lの20%未満、または10%未満、または
5%未満、または2%未満である。
【0123】
または、
図4(F)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aと低抵抗領域455bの間に低抵抗領域455fを有し、チャネル領域455a
と低抵抗領域455cの間に低抵抗領域455gを有する。低抵抗領域455f、455
gは、低抵抗領域455b、455cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。ここ
では、低抵抗領域455f、455gは、絶縁膜457と重なるが、絶縁膜457及び導
電膜459と重なってもよい。
【0124】
なお、
図4(C)乃至
図4(F)においては、
図4(A)に示すトランジスタの説明を
したが、
図4(B)に示すトランジスタにおいても、
図4(C)乃至
図4(F)の構造を
適宜適用することができる。
【0125】
図5(A)に示すトランジスタは、絶縁膜457の端部が、導電膜459の端部より外
側に位置する。即ち、絶縁膜457が、導電膜459から迫り出した形状を有する。チャ
ネル領域455aから窒化物絶縁膜465を遠ざけることが可能であるため、窒化物絶縁
膜465に含まれる窒素、水素等が、チャネル領域455aに入り込むのを抑制すること
ができる。
【0126】
図5(B)に示すトランジスタは、絶縁膜457及び導電膜459がテーパー形状であ
り、且つそれぞれのテーパー部の角度が異なる。即ち、絶縁膜457及び導電膜459が
接する面と、導電膜459の側面のなす角度θ1と、酸化物半導体膜455及び絶縁膜4
57が接する面と、絶縁膜457の側面のなす角度θ2との角度が異なる。角度θ2は、
90°未満、または30°以上85°以下、または45°以上70°以下であってもよい
。例えば、角度θ2が角度θ1より大きいと、トランジスタの微細化が可能である。
【0127】
次に、低抵抗領域455b、455cの変形例について、
図5(C)乃至
図5(F)を
用いて説明する。なお、
図5(C)乃至
図5(F)は、
図5(A)に示す酸化物半導体膜
455の近傍の拡大図である。
【0128】
図5(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域455a
及び低抵抗領域455b、455cの境界が、導電膜459の端部と、絶縁膜457を介
して、一致または概略一致している。即ち、上面形状において、チャネル領域455a及
び低抵抗領域455b、455cの境界が、導電膜459の端部と、一致若しくは略一致
している。
【0129】
または、
図5(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aが、導電膜459と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域として機
能する。即ち、上面形状において、低抵抗領域455b、455cの端部が、絶縁膜45
7の端部と、一致または略一致しており、導電膜459の端部と重ならない。
【0130】
または、
図5(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域4
55b、455cが、絶縁膜457を介して、導電膜459と重なる領域を有する。該領
域をオーバーラップ領域という。即ち、上面形状において、低抵抗領域455b、455
cの端部が、導電膜459と重なる。
【0131】
または、
図5(F)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aと低抵抗領域455bの間に低抵抗領域455fを有し、チャネル領域455a
と低抵抗領域455cの間に低抵抗領域455gを有する。低抵抗領域455f、455
gは、低抵抗領域455b、455cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。ここ
では、低抵抗領域455f、455gは、絶縁膜457と重なるが、絶縁膜457及び導
電膜459と重なってもよい。
【0132】
なお、
図5(C)乃至
図5(F)においては、
図5(A)に示すトランジスタの説明を
したが、
図5(B)に示すトランジスタにおいても、
図5(C)乃至
図5(F)の構造を
適宜適用することが可能である。
【0133】
図6(A)に示すトランジスタは、導電膜459が積層構造であり、絶縁膜457と接
する導電膜459a、及び導電膜459aに接する導電膜459bとを有する。また、導
電膜459aの端部は、導電膜459bの端部より外側に位置する。即ち、導電膜459
aが、導電膜459bから迫り出した形状を有する。
【0134】
次に、低抵抗領域455b、455cの変形例について説明する。なお、
図6(B)乃
至
図6(E)、
図7(A)、及び
図7(B)は、
図6(A)に示す酸化物半導体膜455
の近傍の拡大図である。
【0135】
図6(B)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域455a
及び低抵抗領域455b、455cの境界が、導電膜459に含まれる導電膜459aの
端部と、絶縁膜457を介して、一致または略一致している。即ち、上面形状において、
チャネル領域455a及び低抵抗領域455b、455cの境界が、導電膜459の端部
と、一致または略一致している。
【0136】
または、
図6(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aが、導電膜459と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域として機
能する。即ち、上面形状において、低抵抗領域455b、455cの端部が、導電膜45
9の端部と重ならない。
【0137】
または、
図6(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域4
55b、455cが、導電膜459、ここでは導電膜459aと重なる領域を有する。該
領域をオーバーラップ領域という。即ち、上面形状において、低抵抗領域455b、45
5cの端部が、導電膜459aと重なる。
【0138】
または、
図6(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域
455aと低抵抗領域455bの間に低抵抗領域455fを有し、チャネル領域455a
と低抵抗領域455cの間に低抵抗領域455gを有する。不純物元素は、導電膜459
aを通過して低抵抗領域455f、455gに添加されるため、低抵抗領域455f、4
55gは、低抵抗領域455b、455cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。
なお、ここでは、低抵抗領域455f、455gは、導電膜459aと重なるが、導電膜
459a及び導電膜459bと重なってもよい。
【0139】
または、
図7(A)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、導電膜459
aの端部は、導電膜459bの端部より外側に位置し、且つ導電膜459aがテーパー形
状であってもよい。即ち、絶縁膜457及び導電膜459aが接する面と、導電膜459
aの側面のなす角度が90°未満、または5°以上45°以下、また5°以上30°以下
であってもよい。
【0140】
さらには、絶縁膜457の端部が、導電膜459aの端部より外側に位置してもよい。
【0141】
さらには、絶縁膜457の側面は湾曲してしてもよい。
【0142】
さらには、絶縁膜457がテーパー形状であってもよい。即ち、酸化物半導体膜455
及び絶縁膜457が接する面と、絶縁膜457の側面のなす角度が90°未満、好ましく
は30°以上90°未満であってもよい。
【0143】
図7(A)に示す酸化物半導体膜455は、チャネル領域455aと、チャネル領域4
55aを挟む低抵抗領域455f、455gと、チャネル領域455aと低抵抗領域45
5f、455gを挟む低抵抗領域455h、455iと、チャネル領域455aと、低抵
抗領域455f、455gと、低抵抗領域455h、455iを挟む低抵抗領域455b
、455cとを有する。不純物元素は、絶縁膜457及び導電膜459aを通過して低抵
抗領域455f、455g、455h、455iに添加されるため、低抵抗領域455f
、455g、455h、455iは、低抵抗領域455b、455cより不純物元素の濃
度が低く、抵抗率が高い。
【0144】
図7(B)に示す酸化物半導体膜455は、チャネル領域455aと、チャネル領域4
55aを挟む低抵抗領域455h、455iと、チャネル領域455aと低抵抗領域45
5h、455iを挟む低抵抗領域455b、455cとを有する。不純物元素は、絶縁膜
457を通過して低抵抗領域455h、455iに添加されるため、低抵抗領域455h
、455iは、低抵抗領域455b、455cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高
い。
【0145】
なお、
図7(A)のチャネル長方向において、チャネル領域455aは導電膜459b
と重なり、低抵抗領域455f、455gは、導電膜459bの外側に突出している導電
膜459aと重なり、低抵抗領域455h、455iは、導電膜459aの外側に突出し
ている絶縁膜457と重なり、低抵抗領域455b、455cは絶縁膜457の外側に突
出している。
【0146】
図7(A)に示すように、酸化物半導体膜455が低抵抗領域455b、455cより
、不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い低抵抗領域455f、455g、455h、4
55iを有することで、ドレイン領域の電界緩和が可能である。そのため、ドレイン領域
の電界に起因したトランジスタのしきい値電圧の変動などの劣化を低減することが可能で
ある。
【0147】
図29(A)に示すトランジスタは、チャネル領域455a及び低抵抗領域455b、
455cを含む酸化物半導体膜455を有し、低抵抗領域455b、455cは、チャネ
ル領域455aより膜厚の小さい領域を有する。代表的には、低抵抗領域455b、45
5cは、チャネル領域455aより厚さが0.1nm以上5nm以下小さい領域を有する
。
【0148】
図29(B)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜455に接する絶縁膜453、4
57の少なくとも一方が多層構造である。例えば、絶縁膜453は、絶縁膜453a、及
び絶縁膜453a及び酸化物半導体膜455に接する絶縁膜453bを有する。また、絶
縁膜457は、酸化物半導体膜455に接する絶縁膜457a、及び絶縁膜457aに接
する絶縁膜457bを有する。
【0149】
絶縁膜453b、457aは、酸化物半導体膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_
os)と伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に窒素酸化物の準位密度が低い酸
化物絶縁膜を用いて形成することができる。Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の
準位密度が低い酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜、
または窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。な
お、絶縁膜453b、457aは、平均膜厚が、0.1nm以上50nm以下、または0
.5nm以上10nm以下である。
【0150】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TD
S(Thermal Desorption Spectroscopy))において、
窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放
出量が1×1018個/cm3以上5×1019個/cm3以下である。なお、アンモニ
アの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃
以下の加熱処理による放出量とする。
【0151】
絶縁膜453a、457bは、加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いて形成す
ることができる。なお、絶縁膜453a、457bは、平均膜厚が5nm以上1000n
m以下、または10nm以上500nm以下である。
【0152】
加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜の代表例としては、酸化窒化シリコン膜、酸化
窒化アルミニウム膜等がある。
【0153】
窒素酸化物(NOx、xは0以上2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO
2またはNOは、絶縁膜453及び絶縁膜457などに準位を形成する。当該準位は、酸
化物半導体膜455のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁
膜453、457及び酸化物半導体膜455の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜45
3、457側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が
、絶縁膜453、457及び酸化物半導体膜455界面近傍に留まるため、トランジスタ
のしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0154】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜453
a、457bに含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜453b、457aに
含まれるアンモニアと反応するため、絶縁膜453a、457bに含まれる窒素酸化物が
低減される。このため、絶縁膜453、457及び酸化物半導体膜455の界面において
、電子がトラップされにくい。
【0155】
絶縁膜453b、457aとして、Ev_osとEc_osの間に窒素酸化物の準位密
度が低い酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減する
ことが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0156】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の
加熱処理により、絶縁膜453、457は、100K以下のESRで測定して得られたス
ペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.0
01以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の
第3のシグナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅
、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定に
おいて約5mTである。また、g値が2.037以上2.039の第1のシグナル、g値
が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.96
6以下の第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満で
あり、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3
未満である。
【0157】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下
の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1
.964以上1.966以下の第3のシグナルは、二酸化窒素起因のシグナルに相当する
。即ち、g値が2.037以上2.039の第1のシグナル、g値が2.001以上2.
003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナ
ルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる二酸化窒素の含有量が少
ないといえる。
【0158】
また、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の
加熱処理における、窒素を含み、且つ欠陥量の少ない酸化物絶縁膜は、SIMS(Sec
ondary Ion Mass Spectrometry)で測定される窒素濃度が
6×1020atoms/cm3以下である。
【0159】
基板温度が220℃以上、または280℃以上、または350℃以上であり、シラン及
び一酸化二窒素を用いたプラズマCVD法を用いて、窒素を含み、且つ欠陥量の少ない酸
化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成することができる。
【0160】
図29(C)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜455、絶縁膜457、及び導電
膜459と、窒化物絶縁膜465との間に、絶縁膜475を有する。絶縁膜475は、図
29(B)の絶縁膜453b、457aに示す、窒素を含み、且つ欠陥量の少ない酸化物
絶縁膜を用いて形成することができる。
【0161】
また、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域455a及び低抵抗領域45
5bの間に低抵抗領域455fを有し、チャネル領域455a及び低抵抗領域455cの
間に低抵抗領域455gを有する。低抵抗領域455f、455gは、低抵抗領域455
b、455cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。なお、ここでは、低抵抗領域
455f、455gは、絶縁膜457及び導電膜459の側面に接する絶縁膜475と重
なる領域である。なお、低抵抗領域455f、455gは、絶縁膜457及び導電膜45
9と重なってもよい。
【0162】
図29(D)に示すトランジスタは、絶縁膜457が、酸化物半導体膜455のチャネ
ル領域455aに接するとともに、低抵抗領域455b、455cに接する。また、絶縁
膜457は、チャネル領域455aと接する領域と比較して、低抵抗領域455b、45
5cと接する領域の膜厚が薄く、代表的には、平均膜厚が、0.1nm以上50nm以下
、または0.5nm以上10nm以下である。この結果、絶縁膜457を介して、酸化物
半導体膜455に不純物元素を添加することが可能であると共に、窒化物絶縁膜465に
含まれる水素を、絶縁膜457を介して酸化物半導体膜455へ移動させることができる
。この結果、低抵抗領域455b、455cを形成することができる。
【0163】
さらに、絶縁膜453を絶縁膜453a、453bの多層構造とし、加熱により酸素を
放出する酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜453aを形成し、窒素を含み、且つ欠陥量の少な
い酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜453bを形成する。さらに、窒素を含み、且つ欠陥量の
少ない酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜457を形成する。即ち、窒素を含み、且つ欠陥量の
少ない酸化物絶縁膜で、酸化物半導体膜455を覆うことができる。この結果、絶縁膜4
53aに含まれる酸素を、加熱処理により酸化物半導体膜455に移動させ、酸化物半導
体膜455のチャネル領域455aに含まれる酸素欠損を低減しつつ、絶縁膜453b、
457aと、酸化物半導体膜455との界面におけるキャリアのトラップを低減すること
が可能である。この結果、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能で
あり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0164】
<(1). VoHの形成しやすさ及び安定性>
酸化物半導体膜(以下、IGZOと示す。)が完全な結晶の場合、室温では、Hは、優
先的にab面に沿って拡散する。また、450℃の加熱処理の際には、Hは、ab面及び
c軸方向それぞれに拡散する。そこで、ここでは、IGZOに酸素欠損Voが存在する場
合、Hは酸素欠損Vo中に入りやすいか否かについて説明する。ここで、酸素欠損Vo中
にHがある状態をVoHと表記する。
【0165】
計算には、
図30に示すInGaZnO
4結晶モデルを用いた。ここで、V
oH中のH
がV
oから出ていき、酸素と結合する反応経路の活性化障壁(E
a)を、NEB(Nud
ged Elastic Band)法を用いて計算した。計算条件を表1に示す。
【0166】
【0167】
また、InGaZnO
4結晶モデルにおいて、酸素が結合する金属元素及びその数の違
いから、
図30に示すように酸素サイト1乃至酸素サイト4がある。ここでは、酸素欠損
V
oを形成しやすい酸素サイト1及び酸素サイト2について計算を行った。
【0168】
はじめに、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト1として、3個のInと1個のZn
と結合した酸素サイトについて計算を行った。
【0169】
初期状態のモデルを
図31(A)に示し、最終状態のモデルを
図31(B)に示す。ま
た、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(E
a)を
図32に示す。なお
、ここでの初期状態とは、酸素欠損V
o中にHがある状態(V
oH)であり、最終状態と
は、酸素欠損V
oと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(
H-O)を有する構造である。
【0170】
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.52eVのエネルギー
が必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.46eVの
エネルギーが必要であった。
【0171】
ここで、計算により得られた活性化障壁(Ea)と数式1より、反応頻度(Γ)を算出
した。なお、数式1において、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0172】
【0173】
頻度因子ν=10
13[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した
。
図31(A)に示すモデルから
図31(B)に示すモデルへHが移動する頻度は5.5
2×10
0[1/sec]であった。また、
図31(B)に示すモデルから
図31(A)
に示すモデルへHが移動する頻度は1.82×10
9[1/sec]であった。このこと
から、IGZO中を拡散するHは、近くに酸素欠損V
oがあるとV
oHを形成しやすく、
一旦V
oHを形成すると酸素欠損V
oから放出されにくいと考えられる。
【0174】
次に、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト2として、1個のGaと2個のZnと結
合した酸素サイトについて計算を行った。
【0175】
初期状態のモデルを
図33(A)に示し、最終状態のモデルを
図33(B)に示す。ま
た、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(E
a)を
図34に示す。なお
、ここでの初期状態とは、酸素欠損V
o中にHがある状態(V
oH)であり、最終状態と
は、酸素欠損V
oと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(
H-O)を有する構造である。
【0176】
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.75eVのエネルギー
が必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.35eVの
エネルギーが必要であった。
【0177】
また、計算により得られた活性化障壁(Ea)と上記の数式1より、反応頻度(Γ)を
算出した。
【0178】
頻度因子ν=10
13[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した
。
図33(A)に示すモデルから
図33(B)に示すモデルへHが移動する頻度は7.5
3×10
-2[1/sec]であった。また、
図33(B)に示すモデルから
図33(A
)に示すモデルへHが移動する頻度は1.44×10
10[1/sec]であった。この
ことから、一旦V
oHを形成すると酸素欠損V
oからHは放出されにくいと考えられる。
【0179】
以上のことから、アニール時にIGZO中のHは拡散し易く、酸素欠損Voがある場合
は酸素欠損Voの中に入ってVoHとなりやすいことが分かった。
【0180】
<(2). VoHの遷移レベル>
IGZO中において酸素欠損VoとHが存在する場合、<(1). VoHの形成しや
すさ及び安定性>で示した、NEB法を用いた計算より、酸素欠損VoとHはVoHを形
成しやすく、さらにVoHは安定であると考えられる。そこで、VoHがキャリアトラッ
プに関与するかを調べるため、VoHの遷移レベルの算出を行った。
【0181】
計算にはInGaZnO
4結晶モデル(112原子)を用いた。
図30に示す酸素サイ
ト1及び酸素サイト2に対してV
oHモデルを作成し、遷移レベルの算出を行った。計算
条件を表2に示す。
【0182】
【0183】
実験値に近いバンドギャップが出るよう、交換項の混合比を調整したことで、欠陥のな
いInGaZnO4結晶モデルのバンドギャップは3.08eVとなり、実験値の3.1
5eVと近い結果となった。
【0184】
欠陥Dをもつモデルの遷移レベル(ε(q/q’))は、以下の数式2により算出され
る。なお、ΔE(Dq)は欠陥Dの電荷qにおける形成エネルギーであり、数式3より算
出される。
【0185】
【0186】
【0187】
数式2及び数式3において、Etot(Dq)は欠陥Dを含むモデルの電荷qにおける
全エネルギー、Etot(bulk)は欠陥のないモデル(完全結晶)の全エネルギー、
Δniは欠陥に関する原子iの増減数、μiは原子iの化学ポテンシャル、εVBMは欠
陥のないモデルにおける価電子帯上端のエネルギー、ΔVqは静電ポテンシャルに関する
補正項、EFはフェルミエネルギーである。
【0188】
算出したV
oHの遷移レベルを
図35に示す。
図35中の数値は伝導帯下端からの深さ
である。
図35より、酸素サイト1に対するV
oHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.0
5eVに存在し、酸素サイト2に対するV
oHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.11e
Vに存在するため、それぞれのV
oHは電子トラップに関与すると考えられる。すなわち
、V
oHはドナーとして振る舞うことが明らかになった。また、V
oHを有するIGZO
は導電性を有することが明らかになった。
【0189】
<バンド構造>
以下では、上述したトランジスタの任意断面におけるバンド構造について説明する。
【0190】
図18(A)は、本発明の一態様に係る半導体装置であるトランジスタの断面図である
。
【0191】
図18(A)に示すトランジスタは、
図1に示すトランジスタ150と同様のものであ
る。
【0192】
図18(B)に、
図18(A)に示すトランジスタのチャネル形成領域を含むA-A’
断面におけるバンド構造を示す。なお、チャネル形成領域106aを含む酸化物半導体は
チャネル形成領域106bを含む酸化物半導体よりもエネルギーギャップが少し大きいと
する。また、絶縁膜102a、絶縁膜102b及びゲート絶縁膜112aは、チャネル形
成領域106aを含む酸化物半導体及びチャネル形成領域106bを含む酸化物半導体よ
りも十分にエネルギーギャップが大きいとする。また、チャネル形成領域106aを含む
酸化物半導体、チャネル形成領域106bを含む酸化物半導体、絶縁膜102a、絶縁膜
102b及びゲート絶縁膜112aのフェルミ準位(Efと表記する。)は、それぞれの
真性フェルミ準位(Eiと表記する。)の位置とする。また、ゲート電極104a及びゲ
ート電極114aの仕事関数は、該フェルミ準位と同じ位置とする。
【0193】
ゲート電圧をトランジスタのしきい値電圧以上としたとき、チャネル形成領域106a
を含む酸化物半導体とチャネル形成領域106bを含む酸化物半導体との間の伝導帯下端
のエネルギーの差により、電子はチャネル形成領域106aを含む酸化物半導体を優先的
に流れる。即ち、チャネル形成領域106aを含む酸化物半導体に電子が埋め込まれると
推定することができる。なお、伝導帯下端のエネルギーをEcと表記し、価電子帯上端の
エネルギーをEvと表記する。
【0194】
したがって、本発明の一態様に係る半導体装置であるトランジスタは、電子の埋め込み
によって界面散乱の影響が低減されている。そのため、本発明の一態様に係る半導体装置
であるトランジスタは、チャネル抵抗が小さい。
【0195】
次に、
図18(C)に、トランジスタのソース領域またはドレイン領域を含むB-B’
断面におけるバンド構造を示す。なお、低抵抗領域107a1、低抵抗領域107b1、
低抵抗領域107a2及び低抵抗領域107b2は、縮退状態とする。また、低抵抗領域
107b1において、チャネル形成領域106aを含む酸化物半導体のフェルミ準位は伝
導帯下端のエネルギーと同程度とする。また、低抵抗領域107b2において、チャネル
形成領域106bを含む酸化物半導体のフェルミ準位は伝導帯下端のエネルギーと同程度
とする。低抵抗領域107a1及び低抵抗領域107a2も同様である。
【0196】
このとき、ドレイン電極116bと、低抵抗領域107b2と、はエネルギー障壁が十
分小さいため、オーミック接触となる。また、低抵抗領域107b2と、低抵抗領域10
7b1と、はオーミック接触となる。同様に、ソース電極116aと、低抵抗領域107
a2と、はエネルギー障壁が十分小さいため、オーミック接触となる。また、低抵抗領域
107a2と、低抵抗領域107a1と、はオーミック接触となる。したがって、ソース
電極116a及びドレイン電極116bと、チャネル形成領域106aを含む酸化物半導
体及びチャネル形成領域106bを含む酸化物半導体と、の間で電子の授受がスムーズに
行われることがわかる。
【0197】
以上に示したように、本発明の一態様に係る半導体装置であるトランジスタは、ソース
電極及びドレイン電極と、チャネル形成領域と、の間の電子の授受がスムーズに行われ、
かつチャネル抵抗の小さいトランジスタである。即ち、優れたスイッチング特性を有する
トランジスタであることがわかる。
【0198】
また、
図42に示すトランジスタのように酸化物半導体膜が3層であるトランジスタ構
成のバンド構造、
図1に示すトランジスタのように酸化物半導体膜が2層である構成のバ
ンド構造について説明する。なお、
図43(A)は、
図42に示すトランジスタのバンド
構造であり、
図43(B)は、
図1に示すトランジスタ150のバンド構造であり、それ
ぞれ理解を容易にするため、絶縁膜102、第1の領域106及びゲート絶縁膜112a
の伝導帯下端のエネルギー(Ec)を示す。
【0199】
図43(A)に示すように、チャネル形成領域106a、チャネル形成領域106b、
及びチャネル形成領域106cにおいて、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。
これは、チャネル形成領域106a、チャネル形成領域106b、及びチャネル形成領域
106cを構成する元素が共通することにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解
される。したがって、チャネル形成領域106a、チャネル形成領域106b、及びチャ
ネル形成領域106cは組成が異なる膜の積層体ではあるが、物性的に連続であるという
こともできる。
【0200】
主成分を共通として積層された酸化物半導体膜は、各層を単に積層するのではなく連続
接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸
(U Shape Well)構造)が形成されるように作製する。すなわち、各層の界
面に酸化物半導体にとってトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位、あるいはキャリ
アの流れを阻害する不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、積層された酸
化物半導体膜の層間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界
面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう。
【0201】
なお、
図43(A)では、チャネル形成領域106bとチャネル形成領域106cのE
cが同様である場合について示したが、それぞれが異なっていてもよい。
【0202】
図43(A)より、チャネル形成領域106aがウェル(井戸)となり、トランジスタ
において、チャネルがチャネル形成領域106aに形成されることがわかる。なお、チャ
ネル形成領域106a、チャネル形成領域106b、及びチャネル形成領域106cは伝
導帯下端のエネルギーが連続的に変化するため、U字型の井戸構造のチャネルを埋め込み
チャネルということもできる。
【0203】
また、
図43(B)に示すように、チャネル形成領域106a、チャネル形成領域10
6bにおいて、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化してもよい。
【0204】
図43(B)より、チャネル形成領域106aがウェル(井戸)となり、トランジスタ
において、チャネルがチャネル形成領域106aに形成されることがわかる。
【0205】
図42に示すトランジスタは、チャネル形成領域106aを構成する金属元素を一種以
上含んでいるチャネル形成領域106b及びチャネル形成領域106cを有しているため
、チャネル形成領域106aとチャネル形成領域106cとの界面、及びチャネル形成領
域106aとチャネル形成領域106bとの界面に界面準位を形成しにくくなる。よって
、チャネル形成領域106b及びチャネル形成領域106cを設けることにより、トラン
ジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
【0206】
図1に示すトランジスタは、チャネル形成領域106aを構成する金属元素を一種以上
含んでいるチャネル形成領域106bを有しているため、チャネル形成領域106aとチ
ャネル形成領域106bとの界面に界面準位を形成しにくくなる。よって、チャネル形成
領域106bを設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつ
きや変動を低減することができる。
【0207】
<半導体装置の作製方法>
次に、
図1に示すトランジスタ150及び容量素子160の作製方法について、
図8乃
至
図17を用いて説明する。
【0208】
トランジスタ150及び容量素子160を構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、導電
膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー
堆積(PLD)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成する
ことができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECV
D)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD(有
機金属化学堆積)法やALD(原子層成膜)法を使ってもよい。
【0209】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチ
ャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズ
マダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0210】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば
、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ。)を切り替えて2種類以上の原
料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガ
スと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の
原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリ
アガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。
また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第
2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層
を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子
層上に積層されて薄膜が形成される。
【0211】
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆
性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数に
よって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを
作製する場合に適している。
【0212】
まず、基板100上に絶縁膜101を形成し、絶縁膜101上にゲート電極104a及
び下部電極104bを形成する(
図8参照)。
【0213】
ゲート電極104a及び下部電極104bは、スパッタリング法、真空蒸着法、パルス
レーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等を用いて形成することができる。また、上記形
成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジェット法等でゲート電極104a及
び下部電極104bを形成してもよい。
【0214】
次に、絶縁膜101、ゲート電極104a及び下部電極104b上に絶縁膜102a及
び絶縁膜132の積層を形成する(
図9参照)。
【0215】
絶縁膜102a及び絶縁膜132は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレ
ーザー堆積(PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、
絶縁膜132の材料等は、絶縁膜102bを援用することができる。
【0216】
次に、絶縁膜132上に酸素の脱離を抑制する脱離抑制膜113を形成する。次に、脱
離抑制膜113を介して絶縁膜132に酸素140を添加する(
図10参照)。
【0217】
脱離抑制膜113は、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケ
ル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする
合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素を有する金属窒化物、上
述した金属元素を有する金属酸化物、上述した金属元素を有する金属窒化酸化物等の導電
性を有する材料を用いて形成する。
【0218】
脱離抑制膜113の厚さは、0.1nm以上10nm以下とすることができる。
【0219】
脱離抑制膜113を介して絶縁膜132に酸素140を添加する方法としては、イオン
ドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。絶縁膜132上に脱離抑制膜1
13を設けて酸素を添加することで、脱離抑制膜113が絶縁膜132から酸素が脱離す
ることを抑制する保護膜として機能する。このため、絶縁膜132により多くの酸素を添
加することができる。
【0220】
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸
素プラズマを発生させることで、絶縁膜132への酸素導入量を増加させることができる
。
【0221】
次に、脱離抑制膜113を除去することで、酸素が添加された絶縁膜132を形成する
ことができる(
図11参照)。
【0222】
また、絶縁膜132は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(
PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜132
を形成した後、該絶縁膜に酸素を添加してもよい。絶縁膜に添加する酸素としては、酸素
ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等がある。また、添加方法として
は、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。
【0223】
また、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上
280℃以下、または200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して
処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、または100Pa以上200P
a以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下
、または0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件に
より、加熱処理により酸素を放出することが可能な酸化シリコン膜または酸化窒化シリコ
ン膜を絶縁膜132として形成することができる。
【0224】
次に、絶縁膜132上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用い
て下部電極104bと互いに重なる絶縁膜132の一部をエッチングすることで、絶縁膜
102bを形成する。
【0225】
次に、絶縁膜102b上に酸化物半導体膜126a及び酸化物半導体膜126bの積層
を含む酸化物半導体膜126を形成する(
図12参照)。
【0226】
酸化物半導体膜126の形成方法について以下に説明する。絶縁膜102b上にスパッ
タリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法、熱CVD法等
により酸化物半導体膜126a及び酸化物半導体膜126bとなる酸化物半導体膜を形成
する。次に、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスク
を用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで、
図12に示すように、酸化物半
導体膜126を形成することができる。この後、マスクを除去する。なお、酸化物半導体
膜の一部をエッチングして酸化物半導体膜126を形成した後、加熱処理を行ってもよい
。
【0227】
また、酸化物半導体膜126として印刷法を用いることで、素子分離された酸化物半導
体膜126を直接形成することができる。
【0228】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。なお
、AC電源装置またはDC電源装置を用いることで、CAAC-OS膜を形成することが
可能である。また、RF電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する
よりも、AC電源装置またはDC電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を
形成した方が、膜厚の分布、膜組成の分布、または結晶性の分布が均一となるため好まし
い。
【0229】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合
ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス
比を高めることが好ましい。
【0230】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい
。
【0231】
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板
温度を150℃以上750℃以下、または150℃以上450℃以下、または200℃以
上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC-OS膜を形成する
ことができる。また、基板温度を25℃以上150℃未満とすることで、微結晶酸化物半
導体膜を形成することができる。
【0232】
また、後述するCAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ま
しい。
【0233】
成膜時の不純物混入を抑制することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、または-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0234】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、または100体積
%とする。
【0235】
また、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜の脱水素化また
は脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、
または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下とする。
【0236】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または
窒素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲
気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれな
いことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とする。
【0237】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0238】
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜することで、さらには酸化物半導体膜を形成した後
、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法により得られ
る水素濃度を5×1019atoms/cm3以下、または1×1019atoms/c
m3以下、5×1018atoms/cm3以下、または1×1018atoms/cm
3以下、または5×1017atoms/cm3以下、または1×1016atoms/
cm3以下とすることができる。
【0239】
ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(X>0)
膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO
2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形
成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。な
お、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO2層
やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形
成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングしたH2Oガス
を用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)
3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガス
にかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Zn(CH3)2ガスを用い
てもよい。
【0240】
ここでは、スパッタリング法により、厚さ35nmの酸化物半導体膜を形成した後、加
熱処理を行い、絶縁膜102bに含まれる酸素を酸化物半導体膜に移動させる。次に、当
該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチングする
ことで、酸化物半導体膜126を形成する。
【0241】
なお、加熱処理は、350℃より高く650℃以下、または450℃以上600℃以下
で行うことで、水素、水等の含有量が低減された酸化物半導体膜を得ることが可能である
。すなわち、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を形成することがで
きる。
【0242】
次に、酸化物半導体膜126及び絶縁膜102a上に絶縁膜及び2層の導電膜を形成し
、該2層の導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて2
層の導電膜及び絶縁膜の一部をエッチングすることで、ゲート電極114a、上部電極1
14b、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bを形成する(
図13参照)。
【0243】
ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとなる絶縁膜は、スパッタリング法、CVD
法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等で形成する。ゲート電
極114a及び上部電極114bとなる2層の導電膜は、スパッタリング法、真空蒸着法
、パルスレーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等で形成する。該2層の導電膜は、上記
形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジェット法等で形成してもよい。
【0244】
また、ALDを利用する成膜装置により2層の導電膜としてタングステン膜を成膜する
ことができる。この場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タ
ングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜
を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
【0245】
なお、図示しないが、ゲート絶縁膜112a及び絶縁膜112bとなる絶縁膜を成膜後
、該絶縁膜及び絶縁膜102に開口を設け、該開口を介してゲート電極114a及び上部
電極114bとなる2層の導電膜を成膜・エッチングしてゲート電極104a及びゲート
電極114aを電気的に接続してもよい。
【0246】
次に、
図13に示すように、ゲート電極114aをマスクとして、酸化物半導体膜12
6に不純物元素142を添加する。この結果、酸化物半導体膜においてゲート電極114
aに覆われていない領域に不純物元素が添加される。なお、不純物元素142の添加によ
るダメージを受けた酸化物半導体膜には、欠陥、代表的には酸素欠損が形成され、酸素欠
損が形成された酸化物半導体に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が入り伝導帯近
傍にドナー準位が形成され、第1の領域106、第1の領域106を挟む一対の第2の領
域107a、107bが形成される(
図14参照)。なお、第1の領域106は、不純物
元素が添加されない領域であり、高純度真性にすることができる。
【0247】
不純物元素142の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ
処理法等がある。
【0248】
不純物元素142の添加は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件等を適宜設定して制御
すればよい。例えば、イオン注入法でアルゴンの添加を行う場合、加速電圧10kV、ド
ーズ量は1×1013ions/cm2以上1×1016ions/cm2以下とすれば
よく、例えば、1×1014ions/cm2とすればよい。また、イオン注入法でリン
イオンの添加を行う場合、加速電圧30kV、ドーズ量は1×1013ions/cm2
以上5×1016ions/cm2以下とすればよく、例えば、1×1015ions/
cm2とすればよい。
【0249】
なお、不純物元素142の代わりに、酸化物半導体膜126に紫外線等を照射して、酸
化物半導体膜126に酸素欠損を形成してもよい。または、酸化物半導体膜126にレー
ザ光を照射して、酸化物半導体膜126に酸素欠損を形成してもよい。
【0250】
次に、絶縁膜138及び絶縁膜148を形成する(
図15参照)。絶縁膜138及び絶
縁膜148の作製方法等は、絶縁膜102a、絶縁膜132等の作製方法等を援用するこ
とができる。
【0251】
次に、絶縁膜148上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、絶縁膜138及
び絶縁膜148の一部をエッチングして、一対の第2の領域107a、107bの一部を
露出する2つの開口を形成する。また、絶縁膜108及び絶縁膜118が同時に形成され
る(
図16参照)。
【0252】
次に、絶縁膜118、一対の第2の領域107a、107b上に2層の導電膜を形成し
、該2層の導電膜の上側の導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該2
層の導電膜の一部をエッチングしてソース電極116a及びドレイン電極116bを形成
する(
図17参照)。
【0253】
次に、絶縁膜118、ソース電極116a及びドレイン電極116b上に絶縁膜128
を形成する。
【0254】
以上の工程により、トランジスタ150及び容量素子160を同時に形成することがで
きる。
【0255】
また、以下では、本発明の一態様に係る半導体装置の、各配線の接続などについて説明
する。
【0256】
図19(A)に示すように、トランジスタ150のバックゲート電極として機能するゲ
ート電極104aと同一工程で形成される配線204(導電膜204a及び導電膜204
bの積層)上に形成された絶縁膜102及びゲート絶縁膜112aとなる絶縁膜の積層上
にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて該絶縁層の積層の一部
をエッチングして配線204に達する開口を設ける。該開口を介してトランジスタ150
のゲート電極114aとなる導電膜を成膜し、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマス
クを形成した後、該マスクを用いて該導電膜及びゲート絶縁膜112aとなる絶縁膜の一
部をエッチングして配線214(導電膜214a及び導電膜214bの積層)及び絶縁膜
212を形成する。さらに配線214上に絶縁膜108及び絶縁膜118を成膜し、絶縁
膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて絶縁膜10
8及び絶縁膜118の一部をエッチングして配線214に達する開口を設ける。該開口を
介してトランジスタ150のソース電極またはドレイン電極となる導電膜を成膜し、該導
電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて該導電膜の一部
をエッチングして配線216(導電膜216a及び導電膜216bの積層)を形成する。
以上の工程を経ることで
図19(A)に示すような配線204が配線214を介して配線
216と電気的に接続する部分を有していてもよい。なお、該絶縁層の積層上にリソグラ
フィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて絶縁膜102b及びゲート絶縁膜
112aとなる絶縁膜の一部をエッチングした後、絶縁膜102a、絶縁膜102b及び
ゲート絶縁膜112aとなる絶縁膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該
マスクを用いて絶縁膜102aの一部をエッチングして配線204に達する開口を設けて
もよい。
【0257】
なお、配線204の上層(導電膜204b)及び配線216の上層(導電膜216b)
は、銅、アルミニウム等の低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。このような低抵
抗な導電性材料を用いることで、信号遅延を低減することができる。
【0258】
また、
図19(B)に示すように配線214が前述した工程によって絶縁膜108及び
絶縁膜118に設けられた開口を介して配線216と電気的に接続する部分や
図19(C
)に示すように配線204が前述した工程によって該絶縁層の積層に設けられた開口を介
して配線214と電気的に接続する部分を有していてもよい。なお、
図12と
図13の間
で説明したゲート電極104a及びゲート電極114aを電気的に接続する方法は、
図1
9(C)の接続方法を援用することができる。
【0259】
また、本実施の形態では、配線214を該絶縁層の積層に設けられた開口を介して配線
204と電気的に接続させ、配線204と配線216が交差するように構成されているた
め、
図19(D)に示すように配線204及び配線216の間には絶縁膜102、絶縁膜
108及び絶縁膜118を有していることにより、配線が交差する部分における寄生容量
を低減することができる。この結果、該寄生容量による信号遅延を低減することができる
。
【0260】
なお、本実施の形態において、チャネルなどにおいて、酸化物半導体膜を用いた場合の
例を示したが、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。例えば、チャネルや
その近傍、ソース領域、ドレイン領域などにおいて、場合によっては、または、状況に応
じて、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、
GaAs(ガリウムヒ素)、などを有する材料で形成してもよい。
【0261】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0262】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体の構造につい
て説明する。
【0263】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けら
れる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物
半導体、nc-OS(nanocrystalline Oxide Semicond
uctor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous l
ike Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
【0264】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-
OS、多結晶酸化物半導体、nc-OSなどがある。
【0265】
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であ
って不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距
離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
【0266】
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(comple
tely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でな
い(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化
物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a-like OSは、微小な領域において周
期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため
、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
【0267】
<CAAC-OS>
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0268】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一つである。
【0269】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micr
oscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高
分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一
方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーと
もいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC-OSは、結晶粒界に
起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0270】
以下では、TEMによって観察したCAAC-OSについて説明する。
図20(A)に
、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能TEM像を示す。
高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberratio
n Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を
、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、
日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどによって行う
ことができる。
【0271】
図20(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を
図20(B)に示す
。
図20(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認でき
る。金属原子の各層の配列は、CAAC-OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)
または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または上面と平行となる。
【0272】
図20(B)に示すように、CAAC-OSは特徴的な原子配列を有する。
図20(C
)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。
図20(B)および
図20(C
)より、ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレッ
トとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。
したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともでき
る。また、CAAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned nanocr
ystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0273】
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板6120上のCAAC-OSのペレ
ット6100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造
となる(
図20(D)参照。)。
図20(C)で観察されたペレットとペレットとの間で
傾きが生じている箇所は、
図20(D)に示す領域6161に相当する。
【0274】
また、
図21(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC-OSの平面のC
s補正高分解能TEM像を示す。
図21(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3
)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ
図21(B)、
図21(C)および
図21(D)に示す。
図21(B)、
図21(C)および
図21(D)より、ペレットは
、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しか
しながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0275】
次に、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって解析したC
AAC-OSについて説明する。例えば、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC-O
Sに対し、out-of-plane法による構造解析を行うと、
図22(A)に示すよ
うに回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGa
ZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OSの結晶がc軸配向
性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0276】
なお、CAAC-OSのout-of-plane法による構造解析では、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、CAAC-OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれること
を示している。より好ましいCAAC-OSは、out-of-plane法による構造
解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
【0277】
一方、CAAC-OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin-pla
ne法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、I
nGaZnO
4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC-OSの場合は、2θを5
6°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析
(φスキャン)を行っても、
図22(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに
対し、InGaZnO
4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφ
スキャンした場合、
図22(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属される
ピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは
、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
【0278】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnO
4の結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nm
の電子線を入射させると、
図23(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回
折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO
4
の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプロー
ブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを
図23(B)に示す。
図2
3(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる
。なお、
図23(B)における第1リングは、InGaZnO
4の結晶の(010)面お
よび(100)面などに起因すると考えられる。また、
図23(B)における第2リング
は(110)面などに起因すると考えられる。
【0279】
上述したように、CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の
結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をす
るとCAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0280】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0281】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合が
ある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャ
リア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップと
なる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0282】
不純物および酸素欠損の少ないCAAC-OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体で
ある。具体的には、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、
さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上のキャリ
ア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性また
は実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC-OSは、不純物濃度が低く、欠
陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0283】
<nc-OS>
次に、nc-OSについて説明する。
【0284】
nc-OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明
確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は
、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。な
お、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸
化物半導体と呼ぶことがある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界
を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレット
と起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと
呼ぶ場合がある。
【0285】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるペ
レット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導
体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OSに対し、ペレットよりも大きい径の
X線を用いた場合、out-of-plane法による解析では、結晶面を示すピークは
検出されない。また、nc-OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50
nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが
観測される。一方、nc-OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプ
ローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、
nc-OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高
い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測され
る場合がある。
【0286】
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc
-OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystal
s)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0287】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0288】
<a-like OS>
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0289】
a-like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、
高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認
することのできない領域と、を有する。
【0290】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すた
め、電子照射による構造の変化を示す。
【0291】
電子照射を行う試料として、a-like OS(試料Aと表記する。)、nc-OS
(試料Bと表記する。)およびCAAC-OS(試料Cと表記する。)を準備する。いず
れの試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0292】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
【0293】
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば
、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層
を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。こ
れらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度
であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞
の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と
見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa-b面に対応する。
【0294】
図24は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。
図24より、a-li
ke OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体
的には、
図24中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程
度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×10
8e
-/n
m
2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc-O
SおよびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
8e
-
/nm
2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、
図24中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc-OSお
よびCAAC-OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度
であることがわかる。
【0295】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとん
ど見られないことがわかる。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-
OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
【0296】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比
べて密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結
晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc-OSの密度およびCAA
C-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結
晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0297】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm
3未満となる。
【0298】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異な
る単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積も
ることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わ
せる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少な
い種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
【0299】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0300】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0301】
(実施の形態3)
本実施の形態では、CAAC-OS及びnc-OSの成膜モデルについて説明する。
【0302】
図46(A)は、スパッタリング法によりCAAC-OSが成膜される様子を示した成
膜室内の模式図である。
【0303】
ターゲット630は、バッキングプレート上に接着されている。ターゲット630およ
びバッキングプレート下には、複数のマグネットが配置される。該複数のマグネットによ
って、ターゲット630上には磁場が生じている。マグネットの磁場を利用して成膜速度
を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
【0304】
ターゲット630は、多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる。な
お、劈開面の詳細については後述する。
【0305】
基板620は、ターゲット630と向かい合うように配置しており、その距離d(ター
ゲット-基板間距離(T-S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましく
は0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素
、アルゴン、または酸素を50体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01
Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで
、ターゲット630に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマが確認
される。なお、ターゲット630上の磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。
高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン601が生じる。イオ
ン601は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などであ
る。
【0306】
イオン601は、電界によってターゲット630側に加速され、やがてターゲット63
0と衝突する。このとき、劈開面から平板状又はペレット状のスパッタ粒子であるペレッ
ト600aおよびペレット600bが剥離し、叩き出される。なお、ペレット600aお
よびペレット600bは、イオン601の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合
がある。
【0307】
ペレット600aは、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状又はペレット状の
スパッタ粒子である。また、ペレット600bは、六角形、例えば正六角形の平面を有す
る平板状又はペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット600aおよびペレット
600bなどの平板状又はペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット600と呼ぶ。
ペレット600の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が2個
以上6個以下合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(正三角形)が2個合わ
さった四角形(ひし形)となる場合もある。
【0308】
ペレット600は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、
ペレット600の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのない
ペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。
【0309】
ペレット600は、プラズマを通過する際に電荷を受け取ることで、側面が負または正
に帯電する場合がある。ペレット600は、側面に酸素原子を有し、当該酸素原子が負に
帯電する可能性がある。例えば、ペレット600aが、側面に負に帯電した酸素原子を有
する例を
図48に示す。このように、側面が同じ極性の電荷を帯びることにより、電荷同
士の反発が起こり、平板状の形状を維持することが可能となる。なお、CAAC-OSが
、In-Ga-Zn酸化物である場合、インジウム原子と結合した酸素原子が負に帯電す
る可能性がある。または、インジウム原子、ガリウム原子または亜鉛原子と結合した酸素
原子が負に帯電する可能性がある。
【0310】
図46(A)に示すように、例えば、ペレット600は、プラズマ中を凧のように飛翔
し、ひらひらと基板620上まで舞い上がっていく。ペレット600は電荷を帯びている
ため、ほかのペレット600が既に堆積している領域が近づくと、斥力が生じる。ここで
、基板620の上面では、基板620の上面に平行な向きの磁場が生じている。また、基
板620およびターゲット630間には、電位差が与えられているため、基板620から
ターゲット630に向けて電流が流れている。したがって、ペレット600は、基板62
0の上面において、磁場および電流の作用によって、力(ローレンツ力)を受ける(
図4
9参照。)。このことは、フレミングの左手の法則によって理解できる。なお、ペレット
600に与える力を大きくするためには、基板620の上面において、基板620の上面
に平行な向きの磁場が10G以上、好ましくは20G以上、さらに好ましくは30G以上
、より好ましくは50G以上となる領域を設けるとよい。または、基板620の上面にお
いて、基板620の上面に平行な向きの磁場が、基板620の上面に垂直な向きの磁場の
1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以
上となる領域を設けるとよい。
【0311】
また、基板620は加熱されており、ペレット600と基板620との間で摩擦などの
抵抗が小さい状態となっている。その結果、
図50(A)に示すように、ペレット600
は、基板620の上面を滑空するように移動する。ペレット600の移動は、平板面を基
板620に向けた状態で起こる。その後、
図50(B)に示すように、既に堆積している
ほかのペレット600の側面まで到達すると、側面同士が結合する。このとき、ペレット
600の側面にある酸素原子が脱離する。脱離した酸素原子によって、CAAC-OS中
の酸素欠損が埋まる場合があるため、欠陥準位密度の低いCAAC-OSとなる。
【0312】
また、ペレット600が基板620上で加熱されることにより、原子が再配列し、イオ
ン601の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット600は、
ほぼ単結晶となる。ペレット600がほぼ単結晶となることにより、ペレット600同士
が結合した後に加熱されたとしても、ペレット600自体の伸縮はほとんど起こり得ない
。したがって、ペレット600間の隙間が広がることで結晶粒界などの欠陥を形成し、ク
レバス化することがない。また、隙間には、伸縮性のある金属原子などが敷き詰められ、
向きのずれたペレット600同士の側面を高速道路のように繋いでいると考えられる。
【0313】
以上のようなモデルにより、ペレット600が基板620上に堆積していくと考えられ
る。したがって、エピタキシャル成長とは異なり、被形成面が結晶構造を有さない場合に
おいても、CAAC-OSの成膜が可能であることがわかる。例えば、基板620の上面
(被形成面)の構造が非晶質構造であっても、CAAC-OSを成膜することは可能であ
る。
【0314】
また、CAAC-OSは、平坦面に対してだけでなく、被形成面である基板620の上
面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレット600が配列することがわかる。例
えば、基板620の上面が原子レベルで平坦な場合、ペレット600はab面と平行な平
面である平板面を下に向けて並置するため、厚さが均一で平坦、かつ高い結晶性を有する
層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なることで、CAAC-
OSを得ることができる(
図46(B)参照。)。
【0315】
一方、基板620の上面が凹凸を有する場合でも、CAAC-OSは、ペレット600
が凸面に沿って並置した層がn段(nは自然数。)積み重なった構造となる。基板620
が凹凸を有するため、CAAC-OSは、ペレット600間に隙間が生じやすい場合があ
る。ただし、ペレット600間で分子間力が働き、凹凸があってもペレット間の隙間はな
るべく小さくなるように配列する。したがって、凹凸があっても高い結晶性を有するCA
AC-OSとすることができる(
図46(C)参照。)。
【0316】
したがって、CAAC-OSは、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板など
であっても均一な成膜が可能である。
【0317】
このようなモデルによってCAAC-OSが成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのな
いペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場
合、基板620上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合が
ある。
【0318】
以上に示した成膜モデルにより、非晶質構造を有する被形成面上であっても、高い結晶
性を有するCAAC-OSを得ることができる。
【0319】
また、CAAC-OSは、ペレット600のほかに酸化亜鉛粒子を有する成膜モデルに
よっても説明することができる。
【0320】
酸化亜鉛粒子は、ペレット600よりも質量が小さいため、先に基板620に到達する
。基板620の上面において、酸化亜鉛粒子は、水平方向に優先的に結晶成長することで
薄い酸化亜鉛層を形成する。該酸化亜鉛層は、c軸配向性を有する。なお、該酸化亜鉛層
の結晶のc軸は、基板620の法線ベクトルに平行な方向を向く。該酸化亜鉛層は、CA
AC-OSを成長させるためのシード層の役割を果たすため、CAAC-OSの結晶性を
高める機能を有する。なお、該酸化亜鉛層は、厚さが0.1nm以上5nm以下、ほとん
どが1nm以上3nm以下となる。該酸化亜鉛層は十分薄いため、結晶粒界をほとんど確
認することができない。
【0321】
したがって、結晶性の高いCAAC-OSを成膜するためには、化学量論的組成よりも
高い割合で亜鉛を含むターゲットを用いることが好ましい。
【0322】
同様に、nc-OSは、
図47に示す成膜モデルによって理解することができる。なお
、
図47と
図46(A)との違いは、基板620の加熱の有無のみである。
【0323】
したがって、基板620は加熱されておらず、ペレット600と基板620との間で摩
擦などの抵抗が大きい状態となっている。その結果、ペレット600は、基板620の上
面を滑空するように移動することができないため、不規則に降り積もっていくことでnc
-OSを得ることができる。
【0324】
<劈開面>
以下では、CAAC-OSの成膜モデルにおいて記載のターゲットの劈開面について説
明する。
【0325】
まずは、ターゲットの劈開面について
図51を用いて説明する。
図51に、InGaZ
nO
4の結晶の構造を示す。なお、
図51(A)は、c軸を上向きとし、b軸に平行な方
向からInGaZnO
4の結晶を観察した場合の構造を示す。また、
図51(B)は、c
軸に平行な方向からInGaZnO
4の結晶を観察した場合の構造を示す。
【0326】
InGaZnO4の結晶の各結晶面における劈開に必要なエネルギーを、第一原理計算
により算出する。なお、計算には、擬ポテンシャルと、平面波基底を用いた密度汎関数プ
ログラム(CASTEP)を用いる。なお、擬ポテンシャルには、ウルトラソフト型の擬
ポテンシャルを用いる。また、汎関数には、GGA PBEを用いる。また、カットオフ
エネルギーは400eVとする。
【0327】
初期状態における構造のエネルギーは、セルサイズを含めた構造最適化を行った後に導
出する。また、各面で劈開後の構造のエネルギーは、セルサイズを固定した状態で、原子
配置の構造最適化を行った後に導出する。
【0328】
図51に示したInGaZnO
4の結晶の構造をもとに、第1の面、第2の面、第3の
面、第4の面のいずれかで劈開した構造を作製し、セルサイズを固定した構造最適化計算
を行う。ここで、第1の面は、Ga-Zn-O層とIn-O層との間の結晶面であり、(
001)面(またはab面)に平行な結晶面である(
図51(A)参照。)。第2の面は
、Ga-Zn-O層とGa-Zn-O層との間の結晶面であり、(001)面(またはa
b面)に平行な結晶面である(
図51(A)参照。)。第3の面は、(110)面に平行
な結晶面である(
図51(B)参照。)。第4の面は、(100)面(またはbc面)に
平行な結晶面である(
図51(B)参照。)。
【0329】
以上のような条件で、各面で劈開後の構造のエネルギーを算出する。次に、劈開後の構
造のエネルギーと初期状態における構造のエネルギーとの差を、劈開面の面積で除すこと
で、各面における劈開しやすさの尺度である劈開エネルギーを算出する。なお、構造のエ
ネルギーは、構造に含まれる原子と電子に対して、電子の運動エネルギーと、原子間、原
子-電子間、および電子間の相互作用と、を考慮したエネルギーである。
【0330】
計算の結果、第1の面の劈開エネルギーは2.60J/m2、第2の面の劈開エネルギ
ーは0.68J/m2、第3の面の劈開エネルギーは2.18J/m2、第4の面の劈開
エネルギーは2.12J/m2であることがわかった(下表参照。)。
【0331】
【0332】
この計算により、
図51に示したInGaZnO
4の結晶の構造において、第2の面に
おける劈開エネルギーが最も低くなる。即ち、Ga-Zn-O層とGa-Zn-O層との
間が最も劈開しやすい面(劈開面)であることがわかる。したがって、本明細書において
、劈開面と記載する場合、最も劈開しやすい面である第2の面のことを示す。
【0333】
Ga-Zn-O層とGa-Zn-O層との間である第2の面に劈開面を有するため、図
51(A)に示すInGaZnO4の結晶は、二つの第2の面と等価な面で分離すること
ができる。したがって、ターゲットにイオンなどを衝突させる場合、もっとも劈開エネル
ギーの低い面で劈開したウェハース状のユニット(我々はこれをペレットと呼ぶ。)が最
小単位となって飛び出してくると考えられる。その場合、InGaZnO4のペレットは
、Ga-Zn-O層、In-O層およびGa-Zn-O層の3層となる。
【0334】
また、第1の面(Ga-Zn-O層とIn-O層との間の結晶面であり、(001)面
(またはab面)に平行な結晶面)よりも、第3の面((110)面に平行な結晶面)、
第4の面((100)面(またはbc面)に平行な結晶面)の劈開エネルギーが低いこと
から、ペレットの平面形状は三角形状または六角形状が多いことが示唆される。
【0335】
次に、古典分子動力学計算により、ターゲットとしてホモロガス構造を有するInGa
ZnO
4の結晶を仮定し、当該ターゲットをアルゴン(Ar)または酸素(O)によりス
パッタした場合の劈開面について評価する。計算に用いたInGaZnO
4の結晶(26
88原子)の断面構造を
図52(A)に、上面構造を
図52(B)に示す。なお、
図52
(A)に示す固定層は、位置が変動しないよう原子の配置を固定した層である。また、図
52(A)に示す温度制御層は、常に一定の温度(300K)とした層である。
【0336】
古典分子動力学計算には、富士通株式会社製Materials Explorer5
.0を用いる。なお、初期温度を300K、セルサイズを一定、時間刻み幅を0.01フ
ェムト秒、ステップ数を1000万回とする。計算では、当該条件のもと、原子に300
eVのエネルギーを与え、InGaZnO4の結晶のab面に垂直な方向からセルに原子
を入射させる。
【0337】
図53(A)は、
図52に示したInGaZnO
4の結晶を有するセルにアルゴンが入
射してから99.9ピコ秒(psec)後の原子配列を示す。また、
図53(B)は、セ
ルに酸素が入射してから99.9ピコ秒後の原子配列を示す。なお、
図53では、
図52
(A)に示した固定層の一部を省略して示す。
【0338】
図53(A)より、アルゴンがセルに入射してから99.9ピコ秒までに、
図51(A
)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じる。したがって、InGaZnO
4
の結晶に、アルゴンが衝突した場合、最上面を第2の面(0番目)とすると、第2の面(
2番目)に大きな亀裂が生じることがわかる。
【0339】
一方、
図53(B)より、酸素がセルに入射してから99.9ピコ秒までに、
図51(
A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じることがわかる。ただし、酸素が
衝突した場合は、InGaZnO
4の結晶の第2の面(1番目)において大きな亀裂が生
じることがわかる。
【0340】
したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットの上面
から原子(イオン)が衝突すると、InGaZnO4の結晶は第2の面に沿って劈開し、
平板状の粒子(ペレット)が剥離することがわかる。また、このとき、ペレットの大きさ
は、アルゴンを衝突させた場合よりも、酸素を衝突させた場合の方が小さくなることがわ
かる。
【0341】
なお、上述の計算から、剥離したペレットは損傷領域を含むことが示唆される。ペレッ
トに含まれる損傷領域は、損傷によって生じた欠陥に酸素を反応させることで修復できる
場合がある。
【0342】
そこで、衝突させる原子の違いによって、ペレットの大きさが異なることについて調査
する。
【0343】
図54(A)に、
図52に示したInGaZnO
4の結晶を有するセルにアルゴンが入
射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図
54(A)は、
図52から
図53(A)の間の期間に対応する。
【0344】
図54(A)より、アルゴンが第1層(Ga-Zn-O層)のガリウム(Ga)と衝突
すると、当該ガリウムが第3層(Ga-Zn-O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該
亜鉛が第6層(Ga-Zn-O層)の近傍まで到達することがわかる。なお、ガリウムと
衝突したアルゴンは、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO
4の結晶を含む
ターゲットにアルゴンを衝突させた場合、
図52(A)における第2の面(2番目)に亀
裂が入ると考えられる。
【0345】
また、
図54(B)に、
図52に示したInGaZnO
4の結晶を有するセルに酸素が
入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、
図54(B)は、
図52から
図53(A)の間の期間に対応する。
【0346】
一方、
図54(B)より、酸素が第1層(Ga-Zn-O層)のガリウム(Ga)と衝
突すると、当該ガリウムが第3層(Ga-Zn-O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当
該亜鉛が第5層(In-O層)まで到達しないことがわかる。なお、ガリウムと衝突した
酸素は、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO
4の結晶を含むターゲットに
酸素を衝突させた場合、
図52(A)における第2の面(1番目)に亀裂が入ると考えら
れる。
【0347】
本計算からも、InGaZnO4の結晶は、原子(イオン)が衝突した場合、劈開面か
ら剥離することが示唆される。
【0348】
また、亀裂の深さの違いを保存則の観点から検討する。エネルギー保存則および運動量
保存則は、数式4および数式5のように示すことができる。ここで、Eは衝突前のアルゴ
ンまたは酸素の持つエネルギー(300eV)、mAはアルゴンまたは酸素の質量、vA
は衝突前のアルゴンまたは酸素の速度、v’Aは衝突後のアルゴンまたは酸素の速度、m
Gaはガリウムの質量、vGaは衝突前のガリウムの速度、v’Gaは衝突後のガリウム
の速度である。
【0349】
【0350】
【0351】
アルゴンまたは酸素の衝突が弾性衝突であると仮定すると、vA、v’A、vGaおよ
びv’Gaの関係は数式6のように表すことができる。
【0352】
【0353】
数式4、数式5および数式6より、vGaを0とすると、アルゴンまたは酸素が衝突し
た後のガリウムの速度v’Gaは、数式7のように表すことができる。
【0354】
【0355】
数式7において、mAにアルゴンの質量または酸素の質量を代入し、それぞれの原子が
衝突した後のガリウムの速度を比較する。アルゴンおよび酸素の衝突前に持つエネルギー
が同じである場合、アルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも1.24
倍ガリウムの速度が高いことがわかる。したがって、ガリウムの持つエネルギーもアルゴ
ンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも速度の二乗分だけ高くなる。
【0356】
アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも、衝突後のガリウムの
速度(エネルギー)が高くなることがわかる。したがって、アルゴンを衝突させた場合の
方が、酸素を衝突させた場合よりも深い位置に亀裂が生じたと考えられる。
【0357】
以上の計算により、ホモロガス構造を有するInGaZnO
4の結晶を含むターゲット
をスパッタすると、劈開面から剥離し、ペレットが形成されることがわかる。一方、劈開
面を有さないターゲットの他の構造の領域をスパッタしてもペレットは形成されず、ペレ
ットよりも微細な原子レベルの大きさのスパッタ粒子が形成される。該スパッタ粒子は、
ペレットと比べて小さいため、スパッタリング装置に接続されている真空ポンプを介して
排気されると考えられる。したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO
4の結晶
を含むターゲットをスパッタした場合、様々な大きさ、形状の粒子が基板まで飛翔し、堆
積することで成膜されるモデルは考えにくい。スパッタされたペレットが堆積してCAA
C-OSを成膜する
図46(A)などに記載のモデルが道理に適っている。
【0358】
このようにして成膜されたCAAC-OSの密度は、単結晶OSと同程度の密度を有す
る。例えば、InGaZnO4のホモロガス構造を有する単結晶OSの密度は6.36g
/cm3であるのに対し、同程度の原子数比であるCAAC-OSの密度は6.3g/c
m3程度となる。
【0359】
図55に、スパッタリング法で成膜したCAAC-OSであるIn-Ga-Zn酸化物
(
図55(A)参照。)、およびそのターゲット(
図55(B)参照。)の断面における
原子配列を示す。原子配列の観察には、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HA
ADF-STEM:High-Angle Annular Dark Field S
canning Transmission Electron Microscopy
)を用いる。なお、HAADF-STEMでは、各原子の像強度は原子番号の二乗に比例
する。したがって、原子番号の近いZn(原子番号30)とGa(原子番号31)とは、
ほとんど区別できない。HAADF-STEMには、日立走査透過電子顕微鏡HD-27
00を用いる。
【0360】
図55(A)および
図55(B)を比較すると、CAAC-OSと、ターゲットは、と
もにホモロガス構造を有しており、それぞれの原子の配置が対応していることがわかる。
したがって、
図46(A)などの成膜モデルに示したように、ターゲットの結晶構造が転
写されることでCAAC-OSが成膜されることがわかる。
【0361】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いる発光装置の一態様について説
明する。なお、本実施の形態では、発光装置の画素部の構成について、
図25(A)、(
B)を用いて説明する。
【0362】
図25(A)では、第1の基板502上に複数のFET500が形成されており、各F
ET500は、各発光素子(504R、504G、504B、504W)と電気的に接続
されている。具体的には、各FET500と発光素子が有する第1の導電膜506と電気
的に接続されている。なお、各発光素子(504R、504G、504B、504W)は
、第1の導電膜506、第2の導電膜507、EL層510、及び第3の導電膜512に
よって構成される。
【0363】
また、各発光素子(504R、504G、504B、504W)に対向する位置に、着
色層(514R、514G、514B、514W)がそれぞれ設けられている。なお、着
色層(514R、514G、514B、514W)としては、第2の基板516に接して
設けられている。また、第1の基板502と第2の基板516との間には封止膜518が
設けられている。封止膜518としては、例えば、ガラスフリットなどのガラス材料や、
二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂など
の樹脂材料を用いることができる。
【0364】
また、隣り合う第1の導電膜506及び第2の導電膜507の端部を覆うように隔壁5
08が設けられている。また、隔壁508上には、構造体509が設けられている。なお
、第1の導電膜506は、反射電極としての機能と、発光素子の陽極としての機能を有す
る。また、第2の導電膜507は、各発光素子の光路長を調整する機能を有する。また、
第2の導電膜507上には、EL層510が形成されており、EL層510上には、第3
の導電膜512が形成されている。また、第3の導電膜512は、半透過・半反射電極と
して機能と、発光素子の陰極としての機能を有する。また、構造体509は、発光素子と
着色層の間に設けられ、スペーサとしての機能を有する。
【0365】
また、EL層510については、各発光素子(504R、504G、504B、504
W)で共通して用いることができる。なお、各発光素子(504R、504G、504B
、504W)は、第1の導電膜506と第3の導電膜512によってEL層510からの
発光を共振させる微小光共振器(マイクロキャビティともいう)構造を有しており、同じ
EL層510を有していても異なる波長の光のスペクトルを狭線化して取り出すことがで
きる。具体的には、各発光素子(504R、504G、504B、504W)は、EL層
510の下方に設けられる第2の導電膜507の膜厚をそれぞれ調整することによって、
EL層510から得られるスペクトルを所望の発光スペクトルとし、色純度の良い発光を
得ることができる。したがって、
図25(A)に示す構成とすることにより、EL層の塗
り分けの工程が不要となり、高精細化を実現することが容易となる。
【0366】
また、
図25(A)に示す発光装置は、着色層(カラーフィルター)を有する。したが
って、マイクロキャビティ構造とカラーフィルターとを組み合わせることで、さらに色純
度の良い発光を得ることができる。具体的には、発光素子504Rは、赤色発光が得られ
るように発光素子の光路長が調整されており、着色層514Rを通って矢印の方向に赤色
の光が射出される。また、発光素子504Gは、緑色発光が得られるように発光素子の光
路長が調整されており、着色層514Gを通って矢印の方向に緑色の光が射出される。ま
た、発光素子504Bは、青色発光が得られるように発光素子の光路長が調整されており
、着色層514Bを通って矢印の方向に青色の光が射出される。また、発光素子504W
は、白色発光が得られるように発光素子の光路長が調整されており、着色層514Wを通
って矢印の方向に白色の光が射出される。
【0367】
なお、各発光素子の光路長の調整方法については、これに限定されない。例えば、各発
光素子において、EL層510の膜厚を調整して光路長を調整してもよい。
【0368】
また、着色層(514R、514G、514B)としては、特定の波長帯域の光を透過
する機能を有していればよく、例えば、赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラ
ーフィルター、緑色の波長帯域の光を透過する緑色(G)のカラーフィルター、青色の波
長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフィルターなどを用いることができる。また、
着色層514Wとしては、例えば、顔料等を含まないアクリル系の樹脂材料等を用いれば
よい。着色層(514R、514G、514B、514W)としては、様々な材料を用い
て、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などで
形成することができる。
【0369】
第1の導電膜506としては、例えば、反射率が高い(可視光の反射率が40%以上1
00%以下、好ましくは70%以上100%以下)金属膜を用いることができる。第1の
導電膜506としては、アルミニウム、銀、または、これらの金属材料を含む合金(例え
ば、銀とパラジウムと銅の合金)を、単層または積層して形成することができる。
【0370】
また、第2の導電膜507としては、例えば、導電性の金属酸化物を用いて形成するこ
とができる。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジ
ウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITOともいう)、インジウム亜
鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)、またはこれらの金属酸化物材料に酸
化シリコン、酸化タングステンを含ませたものを用いることができる。第2の導電膜50
7を設けることによって、後に形成されるEL層510と第1の導電膜506との間に形
成される絶縁膜の生成を抑制することができるので好適である。また、第1の導電膜50
6の下層に、第2の導電膜507として用いる導電性の金属酸化物を形成してもよい。
【0371】
また、第3の導電膜512としては、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電
性材料とにより形成され、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以
上70%以下であると好ましい。第3の導電膜512としては、例えば、銀、マグネシウ
ム、またはこれらの金属材料を含む合金等を薄く(例えば、10nm以下)形成し、その
後、第2の導電膜507に用いることのできる導電性の金属酸化物を形成すればよい。
【0372】
以上に説明した構成においては、第2の基板516側に発光を取り出す構造(トップエ
ミッション構造)の発光装置となるが、FET500が形成されている第1の基板501
側に光を取り出す構造(ボトムエミッション構造)、または第1の基板501側及び第2
の基板516側の双方に光を取り出す構造(デュアルエミッション構造)の発光装置とし
ても良い。ボトムエミッション構造の場合、例えば、着色層(514R、514G、51
4B、514W)を第1の導電膜506の下方に形成する構成とすればよい。なお、光を
射出する側の基板には、透光性の基板を用いればよく、光を射出しない側の基板には、透
光性の基板及び遮光性の基板を用いることができる。
【0373】
また、
図25(A)においては、発光素子が4色(赤(R)、緑(G)、青(B)、白
(W))の構成について例示したが、これに限定されない。例えば、発光素子が3色(赤
(R)、緑(G)、青(B))の構成としてもよい。
【0374】
ここで、各発光素子と各FETの接続関係について、
図25(B)を用いて詳細に説明
する。なお、
図25(B)は、
図25(A)に示す破線で囲まれた領域520の構成の一
例である。
【0375】
図25(B)では、FET500上に平坦化膜として機能する絶縁膜522が形成され
ている。また、絶縁膜522には、FET500のソース電極またはドレイン電極として
機能する導電膜に達する開口部524が形成されている。また、絶縁膜522上には、F
ET500のソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜に接続される第1の導
電膜506が形成されている。また、第1の導電膜506上には、第2の導電膜507が
形成されている。
【0376】
また、FET500としては、先の実施の形態に示すトランジスタ150と同様の構成
のため、ここでの説明は省略する。
【0377】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用
いることができる。
【0378】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタ及び容量素子を用い
た表示装置の一例について、
図26乃至
図28を用いて以下説明を行う。
【0379】
図26は、表示装置の一例を示す上面図である。
図26に示す表示装置700は、第1
の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドラ
イバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と
、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、
第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すな
わち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は
、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお
、
図26には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設
けられる。
【0380】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライ
バ回路部706と電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexible
printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708には、FP
C716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704
、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソ
ースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には
、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信
号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路
部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0381】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に実装す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法など
を用いることができる。
【0382】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。また、画素部702においては、本発明
の一態様の半導体装置であるトランジスタ及び容量素子を適用することができる。
【0383】
また、表示装置700は、様々な素子を有することができる。該素子は、例えば、液晶
素子、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機
EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LED
など)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、電子イン
ク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(P
DP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、
デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター
)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション
)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクト
ロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表
示素子などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、電気的または磁気的作用に
より、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していても良い
。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素
子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)ま
たはSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction
Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表
示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディ
スプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ
)などがある。電子インクまたは電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペ
ーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現す
る場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにす
ればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有する
ようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設け
ることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0384】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色
を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上
追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい
。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表
示の表示装置に適用することもできる。
【0385】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
、
図27及び
図28を用いて説明する。なお、
図27は、
図26に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図28は、図
26に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0386】
まず、
図27及び
図28に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0387】
<表示装置の共通部分に関する説明>
図27及び
図28に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と
、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配
線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び
容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を
有する。
【0388】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ150と同様の
構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先の
実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0389】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くす
ることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源
オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なく
することができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0390】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0391】
容量素子790は、先に示す容量素子160と同様の構成である。
【0392】
また、
図27及び
図28において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に、絶縁膜766及び平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0393】
絶縁膜766としては、先の実施の形態に示す絶縁膜128と、同様の材料及び作製方
法により形成することができる。また、平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、
アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポ
キシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。なお、これらの材料で形成
される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平
坦化絶縁膜770を設けない構成としてもよい。
【0394】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程で形成される。なお、信号線710は、トランジスタ75
0、752のソース電極及びドレイン電極と異なる工程で形成された導電膜、例えば第1
のゲート電極として機能する導電膜、または第2のゲート電極として機能する導電膜を用
いてもよい。信号線710として、例えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に
起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となる。
【0395】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。また、接続電極760は、F
PC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0396】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0397】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0398】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルターとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接す
る絶縁膜734が設けられる。
【0399】
<表示素子として液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図27に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜
772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705
側に設けられ、対向電極としての機能を有する。
図27に示す表示装置700は、導電膜
772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わること
によって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0400】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極
としての機能を有する。
図27に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜772で光
を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置である。
【0401】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0402】
また、
図27に示す表示装置700においては、画素部702の平坦化絶縁膜770の
一部に凹凸が設けられている。該凹凸は、例えば、平坦化絶縁膜770を有機樹脂膜等で
形成し、該有機樹脂膜の表面に凹凸を設けることで形成することができる。また、反射電
極として機能する導電膜772は、上記凹凸に沿って形成される。したがって、外光が導
電膜772に入射した場合において、導電膜772の表面で光を乱反射することが可能と
なり、視認性を向上させることができる。
【0403】
なお、
図27に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示した
が、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜
を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。透過型のカラー液晶表示装置
の場合、平坦化絶縁膜770に設けられる凹凸については、設けない構成としてもよい。
【0404】
なお、
図27において図示しないが、導電膜772、774の液晶層776と接する側
に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、
図27において図示しないが、偏
光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい
。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバッ
クライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0405】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0406】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、
応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい
。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によ
って引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や
破損を軽減することができる。
【0407】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
。
【0408】
また、ノーマリブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASVモードなどを用いることができる。
【0409】
<表示素子として発光素子を用いる表示装置>
図28に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜
784、EL層786、及び導電膜788を有する。
図28に示す表示装置700は、発
光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができ
る。
【0410】
また、導電膜784は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜784は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。導電膜784としては、可視光に
おいて透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることがで
きる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛
(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において
反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよ
い。
【0411】
また、
図28に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜784上に絶
縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜784の一部を覆う。なお、発光素子
782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、E
L層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション
構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜784側に光を射出す
るボトムエミッション構造や、導電膜784及び導電膜788の双方に光を射出するデュ
アルエミッション構造にも適用することができる。
【0412】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図28
に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これ
に限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色
膜736を設けない構成としてもよい。
【0413】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0414】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る表示装置の構成例について説明する。
【0415】
[構成例]
図36(A)には、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の上面図を示す
。また、
図36(B)には、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置の画素に
液晶素子を用いた場合における画素回路を示す。また、
図36(C)には、本発明の一態
様に係る半導体装置を用いた表示装置の画素に有機EL素子を用いた場合における画素回
路を示す。
【0416】
画素に用いるトランジスタは、上述したトランジスタを用いることができる。ここでは
、nチャネル型のトランジスタを用いる例を示す。なお、画素に用いたトランジスタと、
同一工程を経て作製したトランジスタを駆動回路として用いても構わない。また、画素に
用いるトランジスタと駆動回路として用いるトランジスタを作り分けてもよい。例えば、
駆動回路として用いるトランジスタを上述したトランジスタ、画素に用いるトランジスタ
を上述したトランジスタのゲート電極104aを設けないシングルゲートのトランジスタ
としてもよい。また、画素に用いる容量素子は、上述した容量素子を用いることができる
。このように、画素や駆動回路に上述したトランジスタ及び容量素子を用いることにより
、表示品位が高い、または/及び信頼性の高い表示装置となる。
【0417】
アクティブマトリクス型表示装置の上面図の一例を
図36(A)に示す。表示装置の基
板5000上には、画素部5001、第1の走査線駆動回路5002、第2の走査線駆動
回路5003、信号線駆動回路5004が配置される。画素部5001は、複数の信号線
によって信号線駆動回路5004と電気的に接続され、複数の走査線によって第1の走査
線駆動回路5002、及び第2の走査線駆動回路5003と電気的に接続される。なお、
走査線と信号線とによって区切られる領域には、それぞれ表示素子を有する画素が配置さ
れている。また、表示装置の基板5000は、FPC(Flexible Printe
d Circuit)等の接続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御I
Cともいう)に電気的に接続されている。
【0418】
第1の走査線駆動回路5002、第2の走査線駆動回路5003及び信号線駆動回路5
004は、画素部5001と同じ基板5000上に形成される。そのため、駆動回路を別
途作製する場合と比べて、表示装置を作製するコストを低減することができる。また、駆
動回路を別途作製した場合、配線間の接続数が増える。したがって、同じ基板5000上
に駆動回路を設けることで、配線間の接続数を減らすことができ、信頼性の向上、または
/及び歩留まりの向上を図ることができる。
【0419】
〔液晶表示装置〕
また、画素の回路構成の一例を
図36(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示装置の
画素などに適用することができる画素回路を示す。
【0420】
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極を有する構成に適用できる。それぞれの
画素電極は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆動で
きるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画素電
極に印加する信号を、独立して制御できる。
【0421】
トランジスタ5016のゲート配線5012と、トランジスタ5017のゲート配線5
013には、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、デー
タ線として機能するソース電極またはドレイン電極5014は、トランジスタ5016と
トランジスタ5017で共通に用いられている。トランジスタ5016とトランジスタ5
017は上述したトランジスタを適宜用いることができる。また、容量素子5023及び
容量素子5029は、上述した容量素子を適宜用いることができる。これにより、表示品
位が高い、または/及び信頼性の高い液晶表示装置を提供することができる。
【0422】
トランジスタ5016と電気的に接続する第1の画素電極と、トランジスタ5017と
電気的に接続する第2の画素電極の形状について説明する。第1の画素電極と第2の画素
電極の形状は、スリットによって分離されている。第1の画素電極はV字型に広がる形状
を有し、第2の画素電極は第1の画素電極の外側を囲むように形成される。
【0423】
トランジスタ5016のゲート電極はゲート配線5012と電気的に接続され、トラン
ジスタ5017のゲート電極はゲート配線5013と電気的に接続されている。ゲート配
線5012とゲート配線5013に異なるゲート信号を与えてトランジスタ5016とト
ランジスタ5017の動作タイミングを異ならせ、液晶の配向を制御することができる。
【0424】
また、容量配線5010と、誘電体として機能するゲート絶縁体と、第1の画素電極ま
たは第2の画素電極と電気的に接続する容量電極とで容量素子を形成してもよい。
【0425】
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子5018と第2の液晶素子5019を
備える。第1の液晶素子5018は第1の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成
され、第2の液晶素子5019は第2の画素電極と対向電極とその間の液晶層とで構成さ
れる。
【0426】
なお、本発明の一態様に係る表示装置は、
図36(B)に示す画素回路に限定されない
。例えば、
図36(B)に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジス
タ、センサー、または論理回路などを追加してもよい。
【0427】
〔発光装置〕
画素の回路構成の他の一例を
図36(C)に示す。ここでは、有機EL素子に代表され
る発光素子を用いた表示装置(発光装置ともいう。)の画素構造を示す。
【0428】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、有機EL素子が有する一対の
電極の一方から電子が、他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され
、電流が流れる。そして、電子及び正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が
励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズム
から、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0429】
図36(C)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素にnチャネル型
のトランジスタを2つ用い、容量素子を1つ用いる例を示す。なお、nチャネル型のトラ
ンジスタには、上述したトランジスタを用いることができる。また、容量素子には、上述
した容量素子を用いることができる。また、当該画素回路は、デジタル時間階調駆動を適
用することができる。
【0430】
適用可能な画素回路の構成及びデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作につ
いて説明する。
【0431】
画素5020は、スイッチング用トランジスタ5021、駆動用トランジスタ5022
、発光素子5024及び容量素子5023を有する。スイッチング用トランジスタ502
1は、ゲート電極が走査線5026に接続され、第1電極(ソース電極、ドレイン電極の
一方)が信号線5025に接続され、第2電極(ソース電極、ドレイン電極の他方)が駆
動用トランジスタ5022のゲート電極に接続されている。駆動用トランジスタ5022
は、ゲート電極が容量素子5023を介して電源線5027に接続され、第1電極が電源
線5027に接続され、第2電極が発光素子5024の第1電極(画素電極)に接続され
ている。発光素子5024の第2電極は共通電極5028に相当する。共通電極5028
は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0432】
スイッチング用トランジスタ5021及び駆動用トランジスタ5022は上述したトラ
ンジスタを用いることができる。また、容量素子5023は上述した容量素子を用いるこ
とができる。これにより、表示品位の高い、または/及び信頼性の高い有機EL表示装置
となる。
【0433】
発光素子5024の第2電極(共通電極5028)の電位は低電源電位に設定する。な
お、低電源電位とは、電源線5027に供給される高電源電位より低い電位であり、例え
ばGND、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子5024の順方
向のしきい値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光
素子5024に印加することにより、発光素子5024に電流を流して発光させる。なお
、発光素子5024の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少な
くとも順方向しきい値電圧を含む。
【0434】
なお、容量素子5023は駆動用トランジスタ5022のゲート容量を代用することに
より省略できる場合がある。駆動用トランジスタ5022のゲート容量については、チャ
ネル形成領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。
【0435】
次に、駆動用トランジスタ5022に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆
動方式の場合、駆動用トランジスタ5022がオンまたはオフの二つの状態となるような
ビデオ信号を、駆動用トランジスタ5022に入力する。なお、駆動用トランジスタ50
22を線形領域で動作させるために、電源線5027の電圧よりも高い電圧を駆動用トラ
ンジスタ5022のゲート電極に与える。また、信号線5025には、電源線電圧に駆動
用トランジスタ5022のしきい値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
【0436】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ5022のゲート電極に発光素子5
024の順方向電圧に駆動用トランジスタ5022のしきい値電圧Vthを加えた値以上
の電圧をかける。なお、駆動用トランジスタ5022が飽和領域で動作するようにビデオ
信号を入力し、発光素子5024に電流を流す。また、駆動用トランジスタ5022を飽
和領域で動作させるために、電源線5027の電位を、駆動用トランジスタ5022のゲ
ート電位より高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子5024にビデオ
信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0437】
なお、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた表示装置は、
図36(C)に示す画素
構成に限定されない。例えば、
図36(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量
素子、センサー、トランジスタまたは論理回路などを追加してもよい。
【0438】
例えば、
図37(A)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素にnチ
ャネル型のトランジスタを3つ用い、容量素子を1つ用いる例を示す。
【0439】
図37(A)に、画素5111の回路図の一例を示す。画素5111は、トランジスタ
5155と、トランジスタ5156と、トランジスタ5157と、容量素子5158と、
発光素子5154と、を有する。
【0440】
発光素子5154の画素電極は、画素5111に入力される画像信号Sigにしたがっ
て電位が制御される。また、発光素子5154の輝度は、画素電極と共通電極の間の電位
差によって定まる。
【0441】
トランジスタ5156は、配線SLと、トランジスタ5155のゲートとの間の導通状
態を制御する機能を有する。トランジスタ5155は、ソース及びドレインの一方が、発
光素子5154の陽極に電気的に接続され、ソース及びドレインの他方が配線VLに電気
的に接続されている。トランジスタ5157は、配線MLと、トランジスタ5155のソ
ース及びドレインの一方の間の導通状態を制御する機能を有する。容量素子5158の一
対の電極のうち、一方はトランジスタ5155のゲートに電気的に接続され、他方は発光
素子5154の陽極に電気的に接続されている。
【0442】
また、トランジスタ5156のスイッチングは、トランジスタ5156のゲートに電気
的に接続された配線GLの電位にしたがって行われる。トランジスタ5157のスイッチ
ングは、トランジスタ5157のゲートに電気的に接続された配線GLの電位にしたがっ
て行われる。
【0443】
なお、トランジスタ5155、トランジスタ5156及びトランジスタ5157の少な
くともいずれかに、上述したトランジスタを用いることができる。また、容量素子515
8は、上述した容量素子を用いることができる。
【0444】
次に、
図37(A)に示す画素5111の動作例について説明する。
【0445】
図37(B)に、
図37(A)に示す画素5111に電気的に接続される配線GLの電
位と、配線SLに供給される画像信号Sigの電位のタイミングチャートを例示する。な
お、
図37(B)に示すタイミングチャートは、
図37(A)に示す画素5111に含ま
れるトランジスタが全てnチャネル型である場合を例示するものである。
【0446】
まず、期間t1では、配線GLにハイレベルの電位が与えられる。よって、トランジス
タ5156及びトランジスタ5157がオンとなる。そして、配線SLには、画像信号S
igの電位Vdataが与えられており、電位Vdataは、トランジスタ5156を介
してトランジスタ5155のゲートに与えられる。
【0447】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。電位Vanoは、電位Vcatに発光素子5154のしきい値電圧Vtheとトランジ
スタ5155のしきい値電圧Vthを加算した電位よりも高くすることが好ましい。配線
VLと配線CLとの間に上記電位差が設けられることにより、電位Vdataにしたがっ
て、トランジスタ5155のドレイン電流の値が定められる。そして、当該ドレイン電流
が発光素子5154に供給されることで、発光素子5154の輝度が定められる。
【0448】
また、トランジスタ5155がnチャネル型である場合、期間t1では、配線MLの電
位が、配線CLの電位に発光素子5154のしきい値電圧Vtheを加算した電位よりも
低く、配線VLの電位が、配線MLの電位にトランジスタ5155のしきい値電圧Vth
を加算した電位よりも高いことが好ましい。上記構成により、トランジスタ5157がオ
ンであっても、トランジスタ5155のドレイン電流を、発光素子5154ではなく配線
MLの方に優先的に流すことができる。
【0449】
次に、期間t2では、配線GLにローレベルの電位が与えられる。よって、トランジス
タ5156及びトランジスタ5157がオフとなる。トランジスタ5156がオフになる
ことで、トランジスタ5155のゲートにおいて、電位Vdataが保持される。また、
配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる。よって
、発光素子5154では、期間t1において定められた輝度にしたがって発光する。
【0450】
次に、期間t3では、配線GLにハイレベルの電位が与えられる。よって、トランジス
タ5156及びトランジスタ5157がオンとなる。また、配線SLには、トランジスタ
5155のゲート電圧がしきい値電圧Vthよりも大きくなるような電位が与えられる。
また、配線CLには電位Vcatが与えられる。そして、配線MLの電位は、配線CLの
電位に発光素子5154のしきい値電圧Vtheを加算した電位よりも低くなり、配線V
Lの電位は、配線MLの電位にトランジスタ5155のしきい値電圧Vthを加算した電
位よりも高くなる。上記構成により、トランジスタ5155のドレイン電流を、発光素子
5154ではなく配線MLの方に優先的に流すことができる。
【0451】
そして、トランジスタ5155のドレイン電流は、配線MLを介してモニター回路に供
給される。モニター回路は、配線MLに流れたドレイン電流を用いて、当該ドレイン電流
の値を情報として含む信号を生成する。そして、本発明の一態様に係る半導体装置を用い
た発光装置では、上記信号を用いて、画素5111に供給される画像信号Sigの電位V
dataの値を、補正することができる。
【0452】
なお、
図37(A)に示す画素5111を有する発光装置では、期間t2の動作の後に
期間t3の動作を行わなくてもよい。例えば、画素5111において、期間t1から期間
t2の動作を複数回繰り返した後に、期間t3の動作を行うようにしてもよい。また、1
行の画素5111において期間t3の動作を行った後、最小の階調値0に対応する画像信
号を、当該動作を行った1行の画素5111に書き込むことで、発光素子5154を非発
光の状態にした後、次の行の画素5111において、期間t3の動作を行うようにしても
よい。
【0453】
また、例えば、
図38(A)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素
にnチャネル型のトランジスタを4つ用い、容量素子を1つ用いる例を示す。
【0454】
図38(A)に、画素5211の回路図の一例を示す。画素5211は、トランジスタ
5215と、トランジスタ5216と、トランジスタ5217と、容量素子5218と、
発光素子5214と、トランジスタ5219と、を有する。
【0455】
発光素子5214の画素電極は、画素5211に入力される画像信号Sigにしたがっ
て電位が制御される。また、発光素子5214の輝度は、画素電極と共通電極の間の電位
差によって定まる。
【0456】
トランジスタ5219は、配線SLと、トランジスタ5215のゲートとの間の導通状
態を制御する機能を有する。トランジスタ5215は、ソース及びドレインの一方が、発
光素子5214の陽極に電気的に接続されている。トランジスタ5216は、配線VLと
、トランジスタ5215のソース及びドレインの他方との間の導通状態を制御する機能を
有する。トランジスタ5217は、配線MLと、トランジスタ5215のソース及びドレ
インの他方との間の導通状態を制御する機能を有する。容量素子5218の一対の電極の
うち、一方はトランジスタ5215のゲートに電気的に接続され、他方は発光素子521
4の陽極に電気的に接続されている。
【0457】
また、トランジスタ5219のスイッチングは、トランジスタ5219のゲートに電気
的に接続された配線GLaの電位にしたがって行われる。トランジスタ5216のスイッ
チングは、トランジスタ5216のゲートに電気的に接続された配線GLbの電位にした
がって行われる。トランジスタ5217のスイッチングは、トランジスタ5217のゲー
トに電気的に接続された配線GLcの電位にしたがって行われる。
【0458】
なお、トランジスタ5215、トランジスタ5216、トランジスタ5217及びトラ
ンジスタ5219の少なくともいずれかに、上述したトランジスタを用いることができる
。また、容量素子5218は、上述した容量素子を用いることができる。
【0459】
次に、
図38(A)に示す画素5211の、外部補正の動作例について説明する。
【0460】
図38(B)に、
図38(A)に示す画素5211に電気的に接続される配線GLa、
配線GLb、配線GLcの電位と、配線SLに供給される画像信号Sigの電位のタイミ
ングチャートを例示する。なお、
図38(B)に示すタイミングチャートは、
図38(A
)に示す画素5211に含まれるトランジスタが全てnチャネル型である場合を例示する
ものである。
【0461】
まず、期間t1では、配線GLaにハイレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5219及びトランジスタ5216がオンとなり、トランジスタ5217はオフとな
る。そして、配線SLには、画像信号Sigの電位Vdataが与えられており、電位V
dataは、トランジスタ5219を介してトランジスタ5215のゲートに与えられる
。
【0462】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。電位Vanoは、電位Vcatに発光素子5214のしきい値電圧Vtheを加算した
電位よりも高くすることが好ましい。配線VLの電位Vanoは、トランジスタ5216
を介して、トランジスタ5215のソース及びドレインの他方に与えられる。よって、電
位Vdataにしたがって、トランジスタ5215のドレイン電流の値が定められる。そ
して、当該ドレイン電流が発光素子5214に供給されることで、発光素子5214の輝
度が定められる。
【0463】
次に、期間t2では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5216がオンとなり、トランジスタ5219、及びトランジスタ5217がオフと
なる。トランジスタ5219がオフになることで、トランジスタ5215のゲートにおい
て、電位Vdataが保持される。また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線C
Lには電位Vcatが与えられる。よって、発光素子5214では、期間t1において定
められた輝度が保持される。
【0464】
次に、期間t3では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにローレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにハイレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5217がオンとなり、トランジスタ5219及びトランジスタ5216がオフとな
る。また、配線CLには電位Vcatが与えられる。そして、配線MLには電位Vano
が与えられ、なおかつモニター回路に接続される。
【0465】
上記動作により、トランジスタ5217を介して、トランジスタ5215のドレイン電
流は、発光素子5214に供給される。なおかつ、当該ドレイン電流は、配線MLを介し
てモニター回路にも供給される。モニター回路は、配線MLに流れたドレイン電流を用い
て、当該ドレイン電流の値を情報として含む信号を生成する。そして、本発明の一態様に
係る半導体装置を用いた発光装置では、上記信号を用いて、画素5211に供給される画
像信号Sigの電位Vdataの値を、補正することができる。
【0466】
なお、
図38(A)に示す画素5211を有する発光装置では、期間t2の動作の後に
期間t3の動作を行わなくてもよい。例えば、発光装置において、期間t1から期間t2
の動作を複数回繰り返した後に、期間t3の動作を行うようにしてもよい。また、1行の
画素5211において期間t3の動作を行った後、最小の階調値0に対応する画像信号を
、当該動作を行った1行の画素5211に書き込むことで、発光素子5214を非発光の
状態にした後、次の行の画素5211において、期間t3の動作を行うようにしてもよい
。
【0467】
また、例えば、
図39(A)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素
にnチャネル型のトランジスタを5つ用い、容量素子を1つ用いる例を示す。
【0468】
図39(A)に、画素5311の回路図の一例を示す。
図39(A)に示す画素531
1は、トランジスタ5315と、トランジスタ5316と、トランジスタ5317と、容
量素子5318と、発光素子5314と、トランジスタ5319と、トランジスタ532
0と、を有する。
【0469】
トランジスタ5320は、配線RLと、発光素子5314の陽極との間の導通状態を制
御する機能を有する。トランジスタ5319は、配線SLと、トランジスタ5315のゲ
ートとの間の導通状態を制御する機能を有する。トランジスタ5315は、ソース及びド
レインの一方が、発光素子5314の陽極に電気的に接続されている。トランジスタ53
16は、配線VLと、トランジスタ5315のソース及びドレインの他方との間の導通状
態を制御する機能を有する。トランジスタ5317は、配線MLと、トランジスタ531
5のソース及びドレインの他方との間の導通状態を制御する機能を有する。容量素子53
18の一対の電極のうち、一方はトランジスタ5315のゲートに電気的に接続され、他
方は発光素子5314の陽極に電気的に接続されている。
【0470】
また、トランジスタ5319のスイッチングは、トランジスタ5319のゲートに電気
的に接続された配線GLaの電位にしたがって行われる。トランジスタ5316のスイッ
チングは、トランジスタ5316のゲートに電気的に接続された配線GLbの電位にした
がって行われる。トランジスタ5317のスイッチングは、トランジスタ5317のゲー
トに電気的に接続された配線GLcの電位にしたがって行われる。トランジスタ5320
のスイッチングは、トランジスタ5320のゲートに電気的に接続された配線GLdの電
位にしたがって行われる。
【0471】
なお、トランジスタ5315、トランジスタ5316、トランジスタ5317、トラン
ジスタ5319及びトランジスタ5320の少なくともいずれかに、上述したトランジス
タを用いることができる。また、容量素子5318は、上述した容量素子を用いることが
できる。
【0472】
次に、
図39(A)に示す画素5311の、外部補正の動作例について説明する。
【0473】
図39(B)に、
図39(A)に示す画素5311に電気的に接続される配線GLa、
配線GLb、配線GLc、配線GLdの電位と、配線SLに供給される画像信号Sigの
電位のタイミングチャートを例示する。なお、
図39(B)に示すタイミングチャートは
、
図39(A)に示す画素5311に含まれるトランジスタが全てnチャネル型である場
合を例示するものである。
【0474】
まず、期間t1では、配線GLaにハイレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられ、配線GLdにハイレ
ベルの電位が与えられる。よって、トランジスタ5319、トランジスタ5316、及び
トランジスタ5320がオンとなり、トランジスタ5317はオフとなる。また、配線S
Lには、画像信号Sigの電位Vdataが与えられており、電位Vdataは、トラン
ジスタ5319を介してトランジスタ5315のゲートに与えられる。よって、電位Vd
ataにしたがって、トランジスタ5315のドレイン電流の値が定められる。そして、
配線VLには電位Vanoが与えられ、配線RLには電位V1が与えられるため、当該ド
レイン電流は、トランジスタ5316及びトランジスタ5320を介して、配線VLと配
線RLの間に流れる。
【0475】
電位Vanoは、電位Vcatに発光素子5314のしきい値電圧Vtheを加算した
電位よりも高くすることが好ましい。配線VLの電位Vanoは、トランジスタ5316
を介して、トランジスタ5315のソース及びドレインの他方に与えられる。また、配線
RLに与えられた電位V1は、トランジスタ5320を介してトランジスタ5315のソ
ース及びドレインの一方に与えられる。配線CLには電位Vcatが与えられる。
【0476】
なお、電位V1は、電位V0からトランジスタ5315のしきい値電圧Vthを差し引
いた電位よりも、十分低いことが好ましい。期間t1では、電位V1を、電位Vcatか
ら発光素子5314のしきい値電圧Vtheを差し引いた電位よりも十分低くすることが
できるので、発光素子5314は発光しない。
【0477】
次に、期間t2では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられ、配線GLdにローレ
ベルの電位が与えられる。よって、トランジスタ5316がオンとなり、トランジスタ5
319、トランジスタ5317及びトランジスタ5320がオフとなる。トランジスタ5
319がオフになることで、トランジスタ5315のゲートにおいて、電位Vdataが
保持される。
【0478】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。よって、期間t1において値が定められたトランジスタ5315のドレイン電流は、ト
ランジスタ5320がオフになることで、発光素子5314に供給される。そして、発光
素子5314に当該ドレイン電流が供給されることで、発光素子5314の輝度が定めら
れ、当該輝度は期間t2において保持される。
【0479】
次に、期間t3では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにローレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにハイレベルの電位が与えられ、配線GLdにローレ
ベルの電位が与えられる。よって、トランジスタ5317がオンとなり、トランジスタ5
319、トランジスタ5316及びトランジスタ5320がオフとなる。また、配線CL
には電位Vcatが与えられる。そして、配線MLには電位Vanoが与えられ、なおか
つモニター回路に接続される。
【0480】
上記動作により、トランジスタ5317を介して、トランジスタ5315のドレイン電
流は、発光素子5314に供給される。なおかつ、当該ドレイン電流は、配線MLを介し
てモニター回路にも供給される。モニター回路は、配線MLに流れたドレイン電流を用い
て、当該ドレイン電流の値を情報として含む信号を生成する。そして、本発明の一態様に
係る半導体装置を用いた発光装置では、上記信号を用いて、画素5311に供給される画
像信号Sigの電位Vdataの値を、補正することができる。
【0481】
なお、
図39(A)に示す画素5311を有する発光装置では、期間t2の動作の後に
期間t3の動作を行わなくてもよい。例えば、発光装置において、期間t1から期間t2
の動作を複数回繰り返した後に、期間t3の動作を行うようにしてもよい。また、1行の
画素5311において期間t3の動作を行った後、最小の階調値0に対応する画像信号を
、当該動作を行った1行の画素5311に書き込むことで、発光素子5314を非発光の
状態にした後、次の行の画素5311において、期間t3の動作を行うようにしてもよい
。
【0482】
また、
図39(A)に示す画素5311では、発光素子5314の劣化などにより、発
光素子5314の陽極と陰極間の抵抗値が画素間でばらついても、電位Vdataをトラ
ンジスタ5315のゲートに与える際に、トランジスタ5315のソースの電位を所定の
電位V1に設定することができる。よって、画素間において発光素子5314の輝度にば
らつきが生じるのを、防ぐことができる。
【0483】
また、例えば、
図40(A)は、画素回路の一例を示す図である。ここでは1つの画素
にnチャネル型のトランジスタを6つ用い、容量素子を1つ用いる例を示す。
【0484】
図40(A)に、画素5411の回路図の一例を示す。画素5411は、トランジスタ
5415と、トランジスタ5416と、トランジスタ5417と、容量素子5418と、
発光素子5414と、トランジスタ5440と、トランジスタ5441と、トランジスタ
5442と、を有する。
【0485】
発光素子5414の画素電極は、画素5411に入力される画像信号Sigにしたがっ
て電位が制御される。また、発光素子5414の輝度は、画素電極と共通電極の間の電位
差によって定まる。
【0486】
トランジスタ5440は、配線SLと、容量素子5418の一対の電極のうちの一方と
の間の導通状態を制御する機能を有する。容量素子5418の一対の電極のうちの他方は
、トランジスタ5415のソース及びドレインの一方に電気的に接続される。トランジス
タ5416は、配線VL1と、トランジスタ5415のゲートとの間の導通状態を制御す
る機能を有する。トランジスタ5441は、容量素子5418の一対の電極のうちの一方
と、トランジスタ5415のゲートとの間の導通状態を制御する機能を有する。トランジ
スタ5442は、トランジスタ5415のソース及びドレインの一方と、発光素子541
4の陽極との間の導通状態を制御する機能を有する。トランジスタ5417は、トランジ
スタ5415のソース及びドレインの一方と、配線MLとの間の導通状態を制御する機能
を有する。
【0487】
さらに、
図40(A)では、トランジスタ5415のソース及びドレインの他方は配線
VLに電気的に接続されている。
【0488】
また、トランジスタ5440におけるオンまたはオフの選択は、トランジスタ5440
のゲートに電気的に接続された配線GLaの電位にしたがって行われる。トランジスタ5
416におけるオンまたはオフの選択は、トランジスタ5416のゲートに電気的に接続
された配線GLaの電位にしたがって行われる。トランジスタ5441におけるオンまた
はオフの選択は、トランジスタ5441のゲートに電気的に接続された配線GLbの電位
にしたがって行われる。トランジスタ5442におけるオンまたはオフの選択は、トラン
ジスタ5442のゲートに電気的に接続された配線GLbの電位にしたがって行われる。
トランジスタ5417におけるオンまたはオフの選択は、トランジスタ5417のゲート
に電気的に接続された配線GLcの電位にしたがって行われる。
【0489】
図40(B)に、
図40(A)に示す画素5411に電気的に接続される配線GLa、
配線GLb、配線GLcの電位と、配線SLに供給される画像信号Sigの電位のタイミ
ングチャートを例示する。なお、
図40(B)に示すタイミングチャートは、
図40(A
)に示す画素5411に含まれるトランジスタが全てnチャネル型である場合を例示する
ものである。
【0490】
まず、期間t1では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにハイレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5441、トランジスタ5442及びトランジスタ5417がオンとなり、トランジ
スタ5440及びトランジスタ5416はオフとなる。トランジスタ5442及びトラン
ジスタ5417がオンになることで、トランジスタ5415のソース及びドレインの一方
及び容量素子5418の一対の電極のうちの他方(ノードAとして図示する。)に、配線
MLの電位V0が与えられる。
【0491】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。電位Vanoは、電位V0に発光素子5414のしきい値電圧Vtheを加算した電位
よりも高くすることが好ましい。また、電位V0は、電位Vcatに発光素子5414の
しきい値電圧Vtheを加算した電位よりも低いことが好ましい。電位V0を上記値に設
定することで、期間t1において発光素子5414に電流が流れるのを防ぐことができる
。
【0492】
次に、配線GLbにローレベルの電位が与えられることで、トランジスタ5441及び
トランジスタ5442がオフになり、ノードAは電位V0に保持される。
【0493】
次に、期間t2では、配線GLaにハイレベルの電位が与えられ、配線GLbにローレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5440及びトランジスタ5416がオンとなり、トランジスタ5441、トランジ
スタ5442及びトランジスタ5417がオフとなる。
【0494】
なお、期間t1から期間t2に移行する際、配線GLaに与える電位をローレベルから
ハイレベルに切り替えた後に、配線GLcに与える電位をハイレベルからローレベルに切
り替えることが好ましい。このような動作を行うことによって、配線GLaに与えられる
電位の切り替えによる、ノードAの電位の変動を防ぐことができる。
【0495】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。そして、配線SLには画像信号Sigの電位Vdataが与えられ、配線VL1には電
位V1が与えられる。電位V1は、電位Vcatにトランジスタ5415のしきい値電圧
Vthを加算した電位よりも高く、電位Vanoにトランジスタ5415のしきい値電圧
Vthを加算した電位より低いことが好ましい。
【0496】
なお、
図40(A)に示す画素構成では、電位V1を、発光素子5414のしきい値電
圧Vtheを電位Vcatに加算した値より高くしても、トランジスタ5442がオフで
ある限り、発光素子5414は発光しない。そのため、電位V0として設定できる値の幅
を広げることが可能となり、V1-V0として取りうる値の幅も広げることが可能となる
。したがって、V1-V0の値の設定の自由度が上がるため、トランジスタ5415のし
きい値電圧Vthの取得に要する時間を短縮した場合、またはしきい値電圧Vthの取得
期間に制限がある場合においても、正確にトランジスタ5415のしきい値電圧Vthの
取得を行うことができる。
【0497】
上記動作により、トランジスタ5415のゲート(ノードBとして図示する。)に、ノ
ードAの電位にしきい値電圧Vthを加算した電位よりも、高い電位V1が入力され、ト
ランジスタ5415がオンとなる。よって、トランジスタ5415を介して容量素子54
18の電荷が放出され、電位V0だったノードAの電位が上昇を始める。そして、最終的
にはノードAの電位がV1-Vthに収束し、トランジスタ5415のゲート電圧がしき
い値電圧Vthに収束すると、トランジスタ5415がオフになる。
【0498】
また、容量素子5418の一対の電極のうちの一方(ノードCとして図示する。)には
、配線SLに与えられた画像信号Sigの電位Vdataが、トランジスタ5440を介
して与えられる。
【0499】
次に、期間t3では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにハイレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにローレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5441及びトランジスタ5442がオンとなり、トランジスタ5440、トランジ
スタ5416及びトランジスタ5417がオフとなる。
【0500】
なお、期間t2から期間t3に移行する際、配線GLaに与える電位がハイレベルから
ローレベルに切り替えられてから、配線GLbに与える電位をローレベルからハイレベル
に切り替えることが好ましい。上記構成により、配線GLaに与える電位の切り替えによ
るノードAにおける電位の変動を防ぐことができる。
【0501】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線CLには電位Vcatが与えられる
。
【0502】
上記動作により、ノードBに電位Vdataが与えられるため、トランジスタ5415
のゲート電圧がVdata-V1+Vthとなる。よって、トランジスタ5415のゲー
ト電圧を、しきい値電圧Vthが加味された値に設定することができる。上記構成により
、トランジスタ5415のしきい値電圧Vthのばらつきを抑制することができる。よっ
て、発光素子5414に供給する電流値のばらつきを抑えることができ、発光装置の輝度
ムラを低減することができる。
【0503】
なお、配線GLbに与える電位の変動を大きくしておくことで、トランジスタ5442
のしきい値電圧のばらつきが発光素子5414に供給する電流値に影響を及ぼすことを防
ぐことができる。つまり、配線GLbに与えるハイレベルの電位をトランジスタ5442
のしきい値電圧よりも十分大きく、また、配線GLbに与えるローレベルの電位をトラン
ジスタ5442のしきい値電圧よりも十分小さくしてやることで、トランジスタ5442
のオンとオフの切り替えを確実に行い、トランジスタ5442のしきい値電圧のばらつき
が発光素子5414の電流値に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0504】
次に、期間t4では、配線GLaにローレベルの電位が与えられ、配線GLbにローレ
ベルの電位が与えられ、配線GLcにハイレベルの電位が与えられる。よって、トランジ
スタ5417がオンとなり、トランジスタ5416、トランジスタ5440、トランジス
タ5441及びトランジスタ5442がオフとなる。
【0505】
また、配線VLには電位Vanoが与えられ、配線MLは、モニター回路に接続される
。
【0506】
上記動作により、トランジスタ5415のドレイン電流Idが、発光素子5414では
なく、トランジスタ5417を介して配線MLに流れる。モニター回路は、配線MLに流
れたドレイン電流Idを用いて、当該ドレイン電流Idの値を情報として含む信号を生成
する。このドレイン電流Idは、トランジスタ5415の移動度やトランジスタ5415
のサイズ(チャネル長、チャネル幅)などに依存した大きさとなっている。そして、本発
明の一態様に係る半導体装置を用いた発光装置では、上記信号を用いて、画素5411に
供給される画像信号Sigの電位Vdataの値を、補正することができる。つまり、ト
ランジスタ5415の移動度のばらつきの影響を低減することができる。
【0507】
なお、
図40(A)に示す画素5411を有する発光装置では、期間t3の動作の後に
期間t4の動作を行わなくてもよい。例えば、発光装置において、期間t1から期間t3
の動作を複数回繰り返した後に、期間t4の動作を行うようにしてもよい。また、一行の
画素5411において期間t4の動作を行った後、最小の階調値0に対応する画像信号を
、当該動作を行った一行の画素5411に書き込むことで、発光素子5414を非発光の
状態にした後、次の行の画素5411において、期間t4の動作を行うようにしてもよい
。
【0508】
図40(A)に示した画素5411を有する発光装置では、トランジスタ5415のソ
ース及びドレインの他方と、トランジスタ5415のゲートとが電気的に分離しているの
で、それぞれの電位を個別に制御することができる。よって、期間t2において、トラン
ジスタ5415のソース及びドレインの他方の電位を、トランジスタ5415のゲートの
電位に、しきい値電圧Vthを加算した電位よりも高い値に設定することができる。その
ため、トランジスタ5415がノーマリーオンである場合に、すなわちしきい値電圧Vt
hがマイナスの値を有している場合に、トランジスタ5415において、ソースの電位が
ゲートの電位V1よりも高くなるまで、容量素子5418に電荷を蓄積することができる
。よって、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた発光装置では、トランジスタ541
5がノーマリーオンであっても、期間t2においてしきい値電圧Vthを取得することが
でき、期間t3において、しきい値電圧Vthを加味した値になるよう、トランジスタ5
415のゲート電圧を設定することができる。
【0509】
したがって、本発明の一態様に係る半導体装置を用いた発光装置では、トランジスタ5
415がノーマリーオンとなっても、表示ムラを低減でき、高い画質の表示を行うことが
できる。
【0510】
なお、トランジスタ5415の特性だけでなく、発光素子5414の特性もモニターし
てもよい。このとき、画像信号Sigの電位Vdataを制御することなどにより、トラ
ンジスタ5415には、電流が流れないようにしておくことが好ましい。これにより、発
光素子5414の電流を取り出すことができる。その結果、発光素子5414の電流特性
の劣化やばらつきの状態を取得することができる。
【0511】
例えば、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光
素子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、または様
々な素子を有することができる。表示素子、表示装置、発光素子または発光装置は、例え
ば、EL素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LE
D(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応
じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グ
レーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マ
イクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラ
ーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、IMOD(インタ
ーフェアレンス・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉
方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ
、カーボンナノチューブを用いた表示素子などの少なくとも一つを有している。これらの
他にも、電気的又は磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化
する表示媒体を有していても良い。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディ
スプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッ
ションディスプレイ(FED)またはSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surf
ace-conduction Electron-emitter Display)
などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶
ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディス
プレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、
または電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。なお、
半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一
部または全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の
一部または全部が、アルミニウム、銀などを有するようにすればよい。さらに、その場合
、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、消
費電力をさらに低減することができる。
【0512】
なお、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色光(
W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルターともい
う。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B
)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで
、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層
を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない
領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配
置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2
割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発
光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有
する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よ
りも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0513】
<モジュール>
以下では、本発明の一態様に係る半導体装置を適用した表示モジュールについて、
図4
1を用いて説明を行う。
【0514】
図41に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続され
たセル8006、バックライトユニット8007、フレーム8009、プリント基板80
10、バッテリー8011を有する。なお、バックライトユニット8007、バッテリー
8011、タッチパネル8004などを有さない場合もある。
【0515】
本発明の一態様に係る半導体装置は、例えば、セル8006に用いることができる。
【0516】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及びセル800
6のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0517】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルをセル800
6に重なって用いることができる。また、セル8006の対向基板(封止基板)に、タッ
チパネル機能を持たせるようにすることも可能である。または、セル8006の各画素内
に光センサーを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。または、セル80
06の各画素内にタッチセンサー用電極を設け、静電容量方式のタッチパネルとすること
も可能である。
【0518】
バックライトユニット8007は、光源8008を有する。光源8008をバックライ
トユニット8007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。
【0519】
フレーム8009は、セル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作によ
り発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有してもよい。またフレ
ーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0520】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
もよいし、別途設けたバッテリー8011による電源であってもよい。商用電源を用いる
場合には、バッテリー8011を有さなくてもよい。
【0521】
また、表示モジュール8000には、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を
追加して設けてもよい。
【0522】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いることができる電子機器につい
て、
図44を用いて説明を行う。
【0523】
図44(A)乃至
図44(H)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体6000、表示部6001、スピーカー6003、LEDランプ6004、操作キー6
005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子6006、センサー60
07(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化
学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動
、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン6008、等を有す
ることができる。
【0524】
図44(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ6009
、赤外線ポート6010、等を有することができる。
図44(B)は記録媒体を備えた携
帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、表示部
6002、記録媒体読込部6011、等を有することができる。
図44(C)はゴーグル
型ディスプレイであり、上述したものの他に、表示部6002、支持部6012、イヤホ
ン6013、等を有することができる。
図44(D)は携帯型遊技機であり、上述したも
のの他に、記録媒体読込部6011、等を有することができる。
図44(E)はテレビ受
像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ6014、シャッター
ボタン6015、受像部6016、等を有することができる。
図44(F)は携帯型遊技
機であり、上述したものの他に、表示部6002、記録媒体読込部6011、等を有する
ことができる。
図44(G)はテレビ受像器であり、上述したものの他に、チューナ、画
像処理部、等を有することができる。
図44(H)は持ち運び型テレビ受像器であり、上
述したものの他に、信号の送受信が可能な充電器6017、等を有することができる。
【0525】
図44(A)乃至
図44(H)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(
プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々な
コンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信ま
たは受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表
示部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器
においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文
字情報を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立
体的な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器
においては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手
動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能
、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図44(A)
乃至
図44(H)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々
な機能を有することができる。
【0526】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。なお、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器
にも適用することができる。
【0527】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【符号の説明】
【0528】
100 基板
101 絶縁膜
102 絶縁膜
102a 絶縁膜
102b 絶縁膜
104a ゲート電極
104a1 導電膜
104a2 導電膜
104b 下部電極
104b1 導電膜
104b2 導電膜
106 第1の領域
106a チャネル形成領域
106b チャネル形成領域
106c チャネル形成領域
107a 第2の領域
107a1 低抵抗領域
107a2 低抵抗領域
107b 第2の領域
107b1 低抵抗領域
107b2 低抵抗領域
108 絶縁膜
112a ゲート絶縁膜
112b 絶縁膜
113 脱離抑制膜
114a ゲート電極
114a1 導電膜
114a2 導電膜
114b 上部電極
114b1 導電膜
114b2 導電膜
116a ソース電極
116a1 導電膜
116a2 導電膜
116b ドレイン電極
116b1 導電膜
116b2 導電膜
118 絶縁膜
126 酸化物半導体膜
126a 酸化物半導体膜
126b 酸化物半導体膜
128 絶縁膜
132 絶縁膜
138 絶縁膜
140 酸素
142 不純物元素
148 絶縁膜
150 トランジスタ
160 容量素子
204 配線
204a 導電膜
204b 導電膜
212 絶縁膜
214 配線
214a 導電膜
214b 導電膜
216 配線
216a 導電膜
216b 導電膜
400 基板
453 絶縁膜
453a 絶縁膜
453b 絶縁膜
455 酸化物半導体膜
455a チャネル領域
455b 低抵抗領域
455c 低抵抗領域
455d 領域
455e 領域
455f 低抵抗領域
455g 低抵抗領域
455h 低抵抗領域
455i 低抵抗領域
457 絶縁膜
457a 絶縁膜
457b 絶縁膜
459 導電膜
459a 導電膜
459b 導電膜
465 窒化物絶縁膜
467 絶縁膜
468 導電膜
469 導電膜
475 絶縁膜
500 FET
501 基板
502 基板
504R 発光素子
504G 発光素子
504B 発光素子
504W 発光素子
506 導電膜
507 導電膜
508 隔壁
509 構造体
510 EL層
512 導電膜
514R 着色層
514G 着色層
514B 着色層
514W 着色層
516 基板
518 封止膜
520 領域
522 絶縁膜
524 開口部
600 ペレット
600a ペレット
600b ペレット
601 イオン
620 基板
630 ターゲット
700 表示装置
701 基板
702 画素部
704 ソースドライバ回路部
705 基板
706 ゲートドライバ回路部
708 FPC端子部
710 信号線
711 配線部
712 シール材
716 FPC
730 絶縁膜
732 封止膜
734 絶縁膜
736 着色膜
738 遮光膜
750 トランジスタ
752 トランジスタ
760 接続電極
766 絶縁膜
770 平坦化絶縁膜
772 導電膜
774 導電膜
775 液晶素子
776 液晶層
778 構造体
780 異方性導電膜
782 発光素子
784 導電膜
786 EL層
788 導電膜
790 容量素子
5000 基板
5001 画素部
5002 走査線駆動回路
5003 走査線駆動回路
5004 信号線駆動回路
5010 容量配線
5012 ゲート配線
5013 ゲート配線
5014 ドレイン電極
5016 トランジスタ
5017 トランジスタ
5018 液晶素子
5019 液晶素子
5020 画素
5021 スイッチング用トランジスタ
5022 駆動用トランジスタ
5023 容量素子
5024 発光素子
5025 信号線
5026 走査線
5027 電源線
5028 共通電極
5029 容量素子
5111 画素
5154 発光素子
5155 トランジスタ
5156 トランジスタ
5157 トランジスタ
5158 容量素子
5211 画素
5214 発光素子
5215 トランジスタ
5216 トランジスタ
5217 トランジスタ
5218 容量素子
5219 トランジスタ
5311 画素
5314 発光素子
5315 トランジスタ
5316 トランジスタ
5317 トランジスタ
5318 容量素子
5319 トランジスタ
5320 トランジスタ
5411 画素
5414 発光素子
5415 トランジスタ
5416 トランジスタ
5417 トランジスタ
5418 容量素子
5440 トランジスタ
5441 トランジスタ
5442 トランジスタ
6000 筐体
6001 表示部
6002 表示部
6003 スピーカー
6004 LEDランプ
6005 操作キー
6006 接続端子
6007 センサー
6008 マイクロフォン
6009 スイッチ
6010 赤外線ポート
6011 記録媒体読込部
6012 支持部
6013 イヤホン
6014 アンテナ
6015 シャッターボタン
6016 受像部
6017 充電器
6100 ペレット
6120 基板
6161 領域
8000 表示モジュール
8001 上部カバー
8002 下部カバー
8003 FPC
8004 タッチパネル
8005 FPC
8006 セル
8007 バックライトユニット
8008 光源
8009 フレーム
8010 プリント基板
8011 バッテリー