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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】アンチセンス抗菌化合物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20231129BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61P31/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018553039
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2016068376
(87)【国際公開番号】W WO2017112888
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】62/387,178
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518223904
【氏名又は名称】オレゴン ステイト ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ゲラー ブルース エル.
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/009094(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/179249(WO,A1)
【文献】特表2003-516151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズすターゲティング配列有し、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている、アンチセンスモルホリノオリゴマーであって、
該ターゲティング配列が配列番号5、14、または16を含む、20個以下のヌクレオチド塩基を有し、ここでチミン塩基(T)が任意でウラシル塩基(U)である、
アンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項2】
式(I):
のアンチセンスモルホリノオリゴマーまたはその薬学的に許容される塩:
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~18の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R4は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR5は電子対およびHより選択され、かつR6は、OH、-N(R7)CH2C(O)NH2、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R7はHおよびC1-C6アルキルより選択され、かつ
R8は、G、-C(O)-R9OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R9は式-(O-アルキル)y-であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC2-C6アルキルより選択され;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、ここで、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;
R2は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH2)6C(O)-および-C(O)(CH2)2S2(CH2)2C(O)-より選択され、かつR12は各々式-(CH2)2OC(O)N(R14)2であり、ここで、R14は各々式-(CH2)6NHC(=NH)NH2であり;かつ
R3は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、該CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によって該リンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、該ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズ、該ターゲティング配列が配列番号5、14、または16を含む、20個以下のヌクレオチド塩基を有し、ここでチミン塩基(T)が任意でウラシル塩基(U)である。
【請求項3】
前記標的配列が、前記細菌mRNAの翻訳開始コドン、および/または該細菌mRNAの翻訳開始コドンの上流もしくは下流の30塩基内の配列を含む、請求項1または2に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項4】
前記ターゲティング配列がrRNA標的配列に特異的にハイブリダイズする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項5】
前記rRNAが16S rRNAおよび23S rRNAより選択される、請求項4に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項6】
前記ターゲティング配列が、配列番号5、14、または16に示されており、ここで、チミン塩基(T)が任意でウラシル塩基(U)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項7】
Tが、
より選択される、請求項2に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項8】
R2が、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、請求項2または7に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項9】
Tが、
より選択され、かつR2がGである、請求項2、7、または8のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項10】
Tが、式:
であり、R6が式:
であり、かつR2がGである、請求項2に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項11】
Tが、式:
であり、かつR2がGである、請求項2または710のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項12】
Tが、式:
である、請求項2に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項13】
R2が、H、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、請求項12に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項14】
R1の少なくとも一つの例が-N(CH3)2である、請求項2または713のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項15】
R1が各々-N(CH3)2である、請求項14に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項16】
前記CPPが、
より選択され、ここで、Raが、H、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項17】
Gが、
より選択され、ここで、Raが、H、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、請求項2または716のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項18】
より選択される式(VII)であるか、または上記のいずれかの薬学的に許容される塩であり、
式中、RaはH、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され、RbはH、アセチル、ベンゾイル、ステアロイル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、かつXおよびNuは請求項1において定義された通りである、請求項1~17のいずれか一項記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項19】
Raがアセチルであり、かつRbがHである、請求項18に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項20】
前記ターゲティング配列が、
a) 配列番号5 (GCA TTT GAC CT);
b) 配列番号14 (AGT GCT CTA CC);または
c) 配列番号16 (CCA TGC AGC AC)
より選択され、Xが9であり、かつチミン塩基(T)がウラシル塩基(U)であってもよい、請求項2~3または719のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
【請求項21】
薬学的に許容される担体と請求項1~20のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマーとを含む薬学的組成物。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載のアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む、細菌における生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質の発現および活性を低下させるための薬学的組成物。
【請求項23】
前記細菌が対象中に存在し、かつ前記アンチセンスオリゴマーが該対象へ投与されるように用いられる、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記オリゴマーが抗菌物質と別々にまたは同時に投与されるように用いられ、任意で、該オリゴマーの投与が、該抗菌物質に対する前記細菌の感受性を増大させる、請求項22または23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
オリゴマーおよび前記抗菌物質の組み合わせが、単独の該オリゴマーおよび/または前記抗菌物質と比べて前記抗生物質に対する前記細菌の感受性を増大させる、請求項24に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる2015年12月23日に出願された米国特許仮出願第62/387,178号に基づく優先権の恩典を主張する。
【0002】
配列表に関する言明
本願に関連した配列表は、ペーパーコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照によって本明細書に組み入れられる。配列表を含有しているテキストファイルの名称は、SATH-008_01WO_SeqList_ST25.txtである。テキストファイルは、約14KBであり、2016年12月19日に作出され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本開示は、生化学的経路および/または細胞過程に関与する細菌mRNAおよびその他の高分子に対してターゲティングされたアンチセンスオリゴマー、ならびに関連する組成物、ならびに感染した哺乳動物対象を処置するために、例えば、主要抗菌剤としてまたは古典的抗菌剤との補助的治療として、オリゴマーおよび組成物を使用する方法を含む。
【背景技術】
【0004】
関連技術分野の説明
現在、細菌性病原体に対して使用されているいくつかの型の抗生物質化合物が存在し、これらの化合物は、多様な抗菌機序を通して作用する。例えば、ペニシリンおよびセファロスポリンのようなβラクタム系抗生物質は、ペプチドグリカン合成における最終工程を阻害するよう作用する。バンコマイシンおよびテイコプラニンを含むグリコペプチド系抗生物質は、ムラミルペンタペプチドの糖転移およびペプチド転移の両方を阻害して、やはりペプチドグリカン合成に干渉する。他の周知の抗生物質には、細菌DNA複製を阻害するキノロン系、リファンピンのような、細菌RNAポリメラーゼの阻害剤、およびスルホンアミド系を含む、テトラヒドロ葉酸の産生経路の酵素の阻害剤が含まれる。
【0005】
抗生物質のいくつかのクラスは、タンパク質合成のレベルで作用する。これらの中で顕著であるのは、カナマイシンおよびゲンタマイシンのようなアミノグリコシド系である。このクラスの化合物は、細菌30Sリボソームサブユニットを標的とし、機能性リボソームを形成するための50Sサブユニットとの会合を防止する。抗生物質の別の重要なクラス、テトラサイクリン系も、30Sリボソームサブユニットを標的とし、対応するmRNAコドンへのアミノアシル化tRNAの整列化を防止することによって作用する。抗生物質の別のクラス、マクロライド系およびリンコサミド系は、50Sリボソームサブユニットに結合し、ペプチド伸長を阻害するかまたはリボソーム転移を防止することによって細菌合成を防止する。
【0006】
抗生物質による細菌感染症の抑制または排除における印象的な成功にも関わらず、ヒト医薬においても、家禽および家畜の生産における飼料補助剤としても、抗生物質が広範囲に使用されたことによって、多くの病原菌において薬剤耐性がもたらされた。抗生物質耐性機序は、多様な形態をとることができる。特に、グラム陰性菌における、βラクタム系に対する耐性の主要な機序のうちの一つは、ラクタム環を切断することによって抗生物質を不活性にする酵素βラクタマーゼである。同様に、アミノグリコシド系に対する耐性は、このケースにおいては、ホスホリル基、アデニル基、またはアセチル基を付加することによって、抗生物質を不活化することができる酵素をしばしば含む。抗生物質の能動排出は、多くの細菌が耐性を発達させる別の方式である。テトラサイクリン系排出のための、tetA遺伝子、tetG遺伝子、tetL遺伝子、およびtetK遺伝子のような、排出タンパク質をコードする遺伝子が同定されている。細菌標的は、薬物の標的を改変することによって耐性を発達させる場合もある。例えば、多くのβラクタム系耐性菌において、いわゆるペニシリン結合タンパク質(PBP)が、抗生物質の標的タンパク質との不可欠の結合を阻害するために改変されている。テトラサイクリン系に対する耐性は、増強された排出に加えて、抗生物質との結合に関してリボソームと競合することができる細胞質タンパク質の出現を含み得る。スルホンアミド系のような、細菌酵素を阻害することによって作用する抗生物質については、標的酵素における点変異が耐性を付与し得る。
【0007】
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は、口、皮膚、および腸の正常細菌叢に見出される。しかしながら、吸引された場合には、重度の肺障害を引き起こす場合があり、院内感染の重大な原因となっている。クレブシエラ属(Klebsiella)は、とりわけ、尿路、下部胆道、および手術創の部位においても感染症を引き起こす場合がある。臨床的疾患の範囲には、肺炎、血栓静脈炎、尿路感染症、胆嚢炎、下痢、上気道感染症、創傷感染症、骨髄炎、髄膜炎、および菌血症、および敗血症が含まれる。クレブシエラ属種は、しばしば、複数の抗生物質に対して耐性である。実際、カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)(肺炎桿菌を含む)の蔓延が、米国を含め、世界的に起こっており、米国内では、カルバペネマーゼ産生CREが、現在、大部分の州において報告されている。
【0008】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、世界中の至る所で、土壌、水、皮膚細菌叢、および大部分の人工環境に見出される一般的なグラム陰性菌である。しかし、それは、ヒトにおいて重篤な疾患を引き起こす場合がある。例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)感染症が、肺、尿路、および腎臓のような不可欠の身体器官で起こった場合、結果は致命的であり得る。それは、嚢胞性繊維症における肺感染症に関連した主要な病原体でもある。CF患者は、典型的には、環境由来の緑膿菌の株に感染し、それらが、その後、CF肺において進化する。CF患者の80パーセントが、成年期までに緑膿菌に感染しており、この病原体による慢性肺感染症が、罹患率および死亡率の主因である。CF患者において、緑膿菌の完全な根絶が達成されることは稀である。緑膿菌は、多くの抗生物質に対して天然に耐性であり、以前は有効であった抗生物質に対しても耐性になってきている。緑膿菌の多種薬剤耐性単離物は、現在、CF患者および非CF患者の両方において一般的であり、治療オプションは事実上残されていない。
【0009】
アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)は、この数年にわたって出現し、院内感染の有意な原因となっている偏在性の生物である。A.バウマンニは、医学界が世界的に直面している最も抗生物質耐性のグラム陰性病原体のうちの一つになっているため、疫学におけるこの変化は特に懸念される。A.バウマンニにおける多種薬剤耐性の急速な増大のため、処置する医師のための治療選択はほとんど残されていない。コリスチンのような薬物が現在頻繁に使用されているが、コリスチン耐性株が出現している。アシネトバクター・バウマンニは、多様な臨床的感染症を引き起こし得るが、肺炎が最も高頻度であるもののうちの一つである。
【0010】
大腸菌(Escherichia coli)は、通常、共生生物としてヒトの大腸に存在する。しかしながら、それも、多様な臨床的感染症を引き起こす場合があり、菌血症の主要な原因である。院内感染および市中感染の菌血症を有する患者から単離された大腸菌の抗生物質耐性株の数の増加は、警戒すべきものである。株が複数の抗生物質に対して耐性であることは珍しくない。
【0011】
多種薬剤耐性(MDR)を含むケースを含めて多くの病原菌における抗生物質耐性の出現は、多くの細菌性病原体が医学的介入によって単純に処置できなかったポスト抗生物質時代の危惧を起こさせる。従って、(i)細菌感染症の抗生物質による処置を現在妨げている主要な型の抗生物質耐性を受けにくく、(ii)迅速に、かつ標的細菌特異性に関する合理的な程度の予測可能性で開発され得、(iii)低用量で有効であり、かつ(iv)副作用をほとんど示さない、抗菌物質が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
概要
本開示の態様は、生化学的経路に、細胞過程に、および/または抗生物質耐性に関連した細菌遺伝子のアンチセンスターゲティングが、他の抗生物質耐性である病原菌の抗生物質感受性を増大させ、ある種の病原菌の成長する能力を低下させることができるという発見に、一部分、関する。例えば、ムレイン生合成、細胞分裂、全般的遺伝子制御機序、脂肪酸生合成、リボソームタンパク質、リボソームRNA(rRNA)、DNA複製、転写、翻訳開始、リポ多糖生合成、核酸生合成、中間代謝、RNA生合成、タンパク質生合成、ペプチドグリカン生合成、細胞エネルギーホメオスタシス、芳香族化合物生合成、および抗生物質耐性に関連した遺伝子のアンチセンスターゲティングは、臨床的に適切な濃度で殺菌性であることが示された。従って、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーは、例えば、抗生物質と組み合わせられて、または独立型の治療として、そのような細菌の処置における有用性を見出し得る。
【0013】
従って、本開示の態様は、本明細書に記載されるように、モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、(a)約10~40個のヌクレオチド塩基と、(b)生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するターゲティング配列とを有する、実質的に非荷電のアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む。いくつかの場合において、オリゴマーは、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている。
【0014】
ある種の態様において、ターゲティング配列は、表1AおよびBより選択される。いくつかの態様において、オリゴマーは、約10~15ヌクレオチド塩基長または約11~12ヌクレオチド塩基長であり、表1AおよびBより選択されるターゲティング配列を有する。
【0015】
ある種の態様において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載されるように、式(I):
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~38の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R4は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR5は電子対およびHより選択され、かつR6は、OH、-N(R7)CH2C(O)NH2、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R7はHおよびC1-C6アルキルより選択され、かつ
R8は、G、-C(O)-R9OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R9は式-(O-アルキル)y-であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC2-C6アルキルより選択され;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、ここで、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;
R2は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH2)6C(O)-および-C(O)(CH2)2S2(CH2)2C(O)-より選択され、かつR12は各々式-(CH2)2OC(O)N(R14)2であり、ここで、R14は各々式-(CH2)6NHC(=NH)NH2であり;かつ
R3は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、CPPはCPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA標的配列または抗生物質耐性に関連したタンパク質に特異的にハイブリダイズする。
【0016】
いくつかの態様において、標的配列は、細菌mRNAの翻訳開始コドン、および/または細菌mRNAの翻訳開始コドンの上流もしくは下流の約30塩基内の配列を含む。
【0017】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、脂肪酸生合成タンパク質である。ある種の態様において、脂肪酸生合成タンパク質は、アシルキャリアータンパク質である。ある種の態様において、アシルキャリアータンパク質は、acpPによってコードされる。いくつかの態様において、脂肪酸生合成タンパク質は、アシルキャリアータンパク質合成酵素である。いくつかの態様において、アシルキャリアータンパク質合成酵素は、fabBによってコードされる。ある種の態様において、ターゲティング配列は、SEQ ID NO:1~3に示されているか、SEQ ID NO:1~3の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むか、またはSEQ ID NO:1~3との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含み、ここで、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)である。
【0018】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、ペプチドグリカン生合成タンパク質である。ある種の態様において、ペプチドグリカン生合成タンパク質は、UDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼである。具体的な態様において、UDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼは、murAによってコードされる。
【0019】
ある種の態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、リボソームタンパク質である。いくつかの態様において、リボソームタンパク質は、50Sリボソームタンパク質L28である。ある種の態様において、50Sリボソームタンパク質L28は、rpmBによってコードされる。いくつかの態様において、リボソームタンパク質は、30Sリボソームタンパク質である。いくつかの態様において、30Sリボソームタンパク質は、rpsJによってコードされる。
【0020】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、リボソームRNA(rRNA)である。具体的な態様において、rRNAは、16S rRNAおよび23S rRNAより選択される。
【0021】
ある種の態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、細胞分裂タンパク質である。具体的な態様において、細胞分裂タンパク質は、細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質である。いくつかの態様において、細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質は、ftsZによってコードされる。
【0022】
ある種の態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、DNAまたは染色体の複製タンパク質である。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、トポイソメラーゼである。具体的な態様において、トポイソメラーゼは、gyrAによってコードされる。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、ヘリカーゼである。いくつかの態様において、ヘリカーゼは、dnaBによってコードされる。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、DNAポリメラーゼである。いくつかの態様において、DNAポリメラーゼは、polBによってコードされる。
【0023】
具体的な態様において、ターゲティング配列は、SEQ ID NO:4~20に示されているか、SEQ ID NO:4~20の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むか、またはSEQ ID NO:4~20との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含み、ここで、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)である。
【0024】
薬学的に許容される担体と本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーとを含む薬学的組成物も含まれる。いくつかの薬学的組成物は、本明細書に記載される抗菌物質をさらに含む。抗菌物質の例示的な例には、トブラマイシン、メロペネム、およびコリスチン、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0025】
いくつかの態様は、細菌を本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーおよび/または薬学的組成物と接触させる工程を含む、細菌における生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質の発現および活性を低下させる方法を含む。
【0026】
ある種の態様において、細菌は、対象中に存在し、方法は、アンチセンスオリゴマーを対象へ投与する工程を含む。いくつかの態様において、細菌は、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属(Acinetobacter)、およびエシェリキア属(Escherichia)より選択される。具体的な態様において、細菌は、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、またはエシェリキア属の抗生物質耐性株である。いくつかの態様において、細菌は、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、またはエシェリキア属の多種薬剤耐性(MDR)株である。具体的な態様において、細菌は、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、または大腸菌である。
【0027】
いくつかの方法は、オリゴマーを抗菌物質と別々にまたは同時に投与する工程を含み、任意で、オリゴマーの投与は、抗菌物質に対する細菌の感受性を増大させる。
【0028】
ある種の態様において、抗菌物質は、βラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、およびポリミキシン系のうちの1種類または複数種類より選択される。
【0029】
いくつかの態様において、βラクタム系抗生物質は、カルバペネム系、ペニシリン誘導体(ペネム系)、セファロスポリン系(セフェム系)、およびモノバクタム系のうちの少なくとも1種類より選択される。
【0030】
具体的な態様において、カルバペネム系は、メロペネム、イミペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム、ビアペネム、ラズペネム(razupenem)、テビペネム、レナペネム、およびトモペネム(tomopenem)のうちの1種類または複数種類より選択される。具体的な態様において、カルバペネム系は、メロペネムである。
【0031】
ある種の態様において、アミノグリコシド系抗生物質は、トブラマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシンa、アミカシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシンB、ネオマイシンC、ネオマイシンE(パロモマイシン)、およびストレプトマイシンのうちの1種類または複数種類より選択される。具体的な態様において、アミノグリコシド系抗生物質は、トブラマイシンである。
【0032】
ある種の態様において、ポリミキシン系は、コリスチン(ポリミキシンE)、ポリスポリン(polysporin)、ネオスポリン、またはポリミキシンBのうちの1種類または複数種類より選択される。具体的な態様において、ポリミキシン系は、コリスチンである。
【0033】
いくつかの態様において、βラクタム系抗生物質は、メロペネム、イミペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム、ビアペネム、ラズペネム、テビペネム、レナペネム、トモペネム、セファロスポリン系(セフェム系)、ペニシリン、ペニシリン誘導体(ペネム系)、およびアンピシリンのうちの少なくとも1種類より選択される。
【0034】
ある種の態様において、アミノグリコシド系抗生物質は、トブラマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシンa、アミカシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシンB、ネオマイシンC、ネオマイシンE(パロモマイシン)、およびストレプトマイシンのうちの少なくとも1種類より選択される。
【0035】
いくつかの態様において、テトラサイクリン系抗生物質は、テトラサイクリン、クロールテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、およびドキシサイクリンのうちの少なくとも1種類より選択される。
【0036】
具体的な態様において、βラクタム系抗生物質は、カルバペネム系、ペニシリン誘導体(ペネム系)、セファロスポリン系(セフェム系)、およびモノバクタム系のうちの少なくとも1種類より選択される。
【0037】
いくつかの態様において、オリゴマーは、細菌に対する抗菌物質の最小発育阻止濃度(MIC)を、単独の抗菌物質と比べて、少なくとも約10%低下させる。
【0038】
いくつかの態様において、オリゴマーは、抗菌物質に対する細菌の感受性を、単独の微生物剤と比べて、少なくとも約10%増大させる。
【0039】
ある種の態様において、オリゴマーと抗菌物質との組み合わせは、単独のオリゴマーおよび/または微生物物質と比べて抗生物質に対する細菌の感受性を相乗的に増大させる。
【0040】
ある種の態様において、抗菌物質およびアンチセンスオリゴマーは、別々に投与される。様々な態様において、抗菌物質およびアンチセンスオリゴマーは、連続的に投与される。いくつかの態様において、抗菌物質およびアンチセンスオリゴマーは、同時に投与される。
[本発明1001]
モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、(a)約10~40個のヌクレオチド塩基と、(b)生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するターゲティング配列とを有し、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている、アンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1002]
式(I):
のアンチセンスモルホリノオリゴマーまたはその薬学的に許容される塩:
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~38の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R 4 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 5 は電子対およびHより選択され、かつR 6 は、OH、-N(R 7 )CH 2 C(O)NH 2 、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R 7 はHおよびC 1 -C 6 アルキルより選択され、かつ
R 8 は、G、-C(O)-R 9 OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R 9 は式-(O-アルキル) y -であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC 2 -C 6 アルキルより選択され;
R 1 の例は各々-N(R 10 ) 2 R 11 であり、ここで、R 10 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 11 は電子対およびHより選択され;
R 2 は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH 2 ) 6 C(O)-および-C(O)(CH 2 ) 2 S 2 (CH 2 ) 2 C(O)-より選択され、かつR 12 は各々式-(CH 2 ) 2 OC(O)N(R 14 ) 2 であり、ここで、R 14 は各々式-(CH 2 ) 6 NHC(=NH)NH 2 であり;かつ
R 3 は電子対、H、およびC 1 -C 6 アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NHC(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、および-C(O)CH 2 NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、該CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によって該リンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、該ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズする。
[本発明1003]
前記標的配列が、前記細菌mRNAの翻訳開始コドン、および/または該細菌mRNAの翻訳開始コドンの上流もしくは下流の約30塩基内の配列を含む、本発明1001または1002のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1004]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、脂肪酸生合成タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1005]
前記脂肪酸生合成タンパク質が、acpPによってコードされるアシルキャリアータンパク質である、本発明1004のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1006]
前記脂肪酸生合成タンパク質が、fabBによってコードされるアシルキャリアータンパク質合成酵素である、本発明1004のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1007]
前記ターゲティング配列が、SEQ ID NO:1~3に示されているか、SEQ ID NO:1~3の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むか、またはSEQ ID NO:1~3との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含み、ここで、チミン塩基(T)が任意でウラシル塩基(U)である、本発明1001~1006のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1008]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、murAによってコードされるUDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼペプチドグリカン生合成タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1009]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、リボソームタンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1010]
前記リボソームタンパク質が、rpmBによってコードされる50Sリボソームタンパク質L28である、本発明1009のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1011]
前記リボソームタンパク質が、rpsJによってコードされる30Sリボソームタンパク質である、本発明1009のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1012]
前記ターゲティング配列がrRNA標的配列に特異的にハイブリダイズする、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1013]
前記rRNAが16S rRNAおよび23S rRNAより選択される、本発明1012のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1014]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、ftsZによってコードされ細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築する細胞分裂タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1015]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、gyrA、dnaB、もしくはpolBによってコードされるDNAもしくは染色体の複製タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1016]
前記生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質が、lpxCによってコードされるリポ多糖生合成タンパク質である、本発明1001~1003のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1017]
前記ターゲティング配列が、SEQ ID NO:4~20に示されているか、SEQ ID NO:4~20の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むか、またはSEQ ID NO:4~20との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含み、ここで、チミン塩基(T)が任意でウラシル塩基(U)である、本発明1001~1003または1008~1016のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1018]
Tが、
より選択される、本発明1002のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1019]
R 2 が、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、本発明1002または1018のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1020]
Tが、
より選択され、かつR 2 がGである、本発明1002、1018、または1019のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1021]
Tが、式:
であり、R 6 が式:
であり、かつR 2 がGである、本発明1002のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1022]
Tが、式:
であり、かつR 2 がGである、本発明1002または1018~1021のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1023]
Tが、式:
である、本発明1002のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1024]
R 2 が、H、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、本発明1023のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1025]
R 1 の少なくとも一つの例が-N(CH 3 ) 2 である、本発明1002または1018~1024のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1026]
R 1 が各々-N(CH 3 ) 2 である、本発明1025のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1027]
前記CPPが、
より選択され、ここで、R a が、H、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、前記本発明のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1028]
Gが、
より選択され、ここで、R a が、H、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される、本発明1002または1018~1026のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1029]
より選択される式(VII)であるか、または上記のいずれかの薬学的に許容される塩であり、
式中、R a はH、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され、R b はH、アセチル、ベンゾイル、ステアロイル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、かつXおよびNuは本発明1001において定義された通りである、前記本発明のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1030]
R a がアセチルであり、かつR b がHである、本発明1029のアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1031]
前記ターゲティング配列が、
より選択され、Xが9であり、かつチミン塩基(T)がウラシル塩基(U)であってもよい、本発明1002~1003または1018~1030のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1032]
前記ターゲティング配列が、
より選択され、Xが9であり、かつチミン塩基(T)がウラシル塩基(U)であってもよい、本発明1002~1003または1018~1030のいずれかのアンチセンスモルホリノオリゴマー。
[本発明1033]
薬学的に許容される担体とアンチセンスモルホリノオリゴマーとを含む薬学的組成物であって、該アンチセンスモルホリノオリゴマーが、モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、(a)約10~40個のヌクレオチド塩基と、(b)生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するターゲティング配列とを有し、該オリゴマーが、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている、薬学的組成物。
[本発明1034]
前記アンチセンスモルホリノオリゴマーが、式(I)
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~38の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R 4 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 5 は電子対およびHより選択され、かつR 6 は、OH、-N(R 7 )CH 2 C(O)NH 2 、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R 7 はHおよびC 1 -C 6 アルキルより選択され、かつ
R 8 は、G、-C(O)-R 9 OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R 9 は式-(O-アルキル) y -であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC 2 -C 6 アルキルより選択され;
R 1 の例は各々-N(R 10 ) 2 R 11 であり、ここで、R 10 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 11 は電子対およびHより選択され;
R 2 は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH 2 ) 6 C(O)-および-C(O)(CH 2 ) 2 S 2 (CH 2 ) 2 C(O)-より選択され、かつR 12 は各々式-(CH 2 ) 2 OC(O)N(R 14 ) 2 であり、ここで、R 14 は各々式-(CH 2 ) 6 NHC(=NH)NH 2 であり;かつ
R 3 は電子対、H、およびC 1 -C 6 アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NHC(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、および-C(O)CH 2 NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、該CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によって該リンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、該ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズする、本発明1033の薬学的組成物。
[本発明1035]
細菌をアンチセンスモルホリノオリゴマーと接触させる工程を含む、該細菌における生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質の発現および活性を低下させる方法であって、該アンチセンスモルホリノオリゴマーが、モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、(a)約10~40個のヌクレオチド塩基と、(b)生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するターゲティング配列とを有し、該オリゴマーが、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている、方法。
[本発明1036]
前記アンチセンスモルホリノオリゴマーが、式(I):
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~38の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R 4 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 5 は電子対およびHより選択され、かつR 6 は、OH、-N(R 7 )CH 2 C(O)NH 2 、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R 7 はHおよびC 1 -C 6 アルキルより選択され、かつ
R 8 は、G、-C(O)-R 9 OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R 9 は式-(O-アルキル) y -であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC 2 -C 6 アルキルより選択され;
R 1 の例は各々-N(R 10 ) 2 R 11 であり、ここで、R 10 は各々独立してC 1 -C 6 アルキルであり、かつR 11 は電子対およびHより選択され;
R 2 は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH 2 ) 6 C(O)-および-C(O)(CH 2 ) 2 S 2 (CH 2 ) 2 C(O)-より選択され、かつR 12 は各々式-(CH 2 ) 2 OC(O)N(R 14 ) 2 であり、ここで、R 14 は各々式-(CH 2 ) 6 NHC(=NH)NH 2 であり;かつ
R 3 は電子対、H、およびC 1 -C 6 アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NH-CPP、-C(O)(CH 2 ) 2 NHC(O)(CH 2 ) 5 NH-CPP、および-C(O)CH 2 NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、該CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によって該リンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、該ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA(rRNA)標的配列に特異的にハイブリダイズする、本発明1035の方法。
[本発明1037]
前記細菌が対象中に存在し、かつ前記方法が、前記アンチセンスオリゴマーを該対象へ投与する工程を含む、本発明1035または1036の方法。
[本発明1038]
前記細菌が、クレブシエラ属(Klebsiella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、およびエシェリキア属(Escherichia)より選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記細菌が、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、またはエシェリキア属の抗生物質耐性株、およびクレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、またはエシェリキア属の多種薬剤耐性(MDR)株より選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記細菌が、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、および大腸菌(Escherichia coli)より選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1041]
前記オリゴマーを抗菌物質と別々にまたは同時に投与する工程を含み、任意で、該オリゴマーの投与が、該抗菌物質に対する前記細菌の感受性を増大させる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1042]
前記抗菌物質が、βラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、およびポリミキシン系のうちの1種類または複数種類より選択される、本発明1041の方法。
[本発明1043]
オリゴマーおよび前記抗菌物質の組み合わせが、単独の該オリゴマーおよび/または微生物物質と比べて前記抗生物質に対する前記細菌の感受性を増大させる、本発明1041または1042の方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1-1】図1Aは、ホスホロジアミデート結合を含む例示的なモルホリノオリゴマー構造を示す。図1B~Eは、B~Eと示された、例示的なモルホリノオリゴマーの反復サブユニットセグメントを示す。
図1-2】図1F~Hは、例示的なPPMOにおいて使用された例示的なペプチドPMOコンジュゲート構造を示す。
図2】肺炎桿菌由来の必須遺伝子に対してターゲティングされたPPMOの最小発育阻止濃度(MIC)ヒートマップを示す。
図3】肺炎桿菌、緑膿菌、およびアシネトバクター・バウマンニに由来するリボソームRNAに対してターゲティングされたPPMOのMICヒートマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
I.定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等しい任意の方法および材料が、本開示の実施または試行において使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。本開示のため、以下の用語が、以下に定義される。
【0043】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の文法上の目的語の一つまたは複数(即ち、少なくとも一つ)をさすために本明細書において使用される。例えば、「要素(an element)」とは、一つの要素または複数の要素を意味する。
【0044】
「約」とは、参照の量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%だけ変動する量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0045】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する核酸配列を意味する。対照的に、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに直接寄与しない核酸配列をさす。
【0046】
本明細書全体を通して、前後関係がそうでないことを必要としない限り、「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」、および「を含む(comprising)」という単語は、明示された工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の包含を意味し、他の工程もしくは要素または工程もしくは要素の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
【0047】
「からなる」とは、「からなる」という語句に後続するものを含み、それらに限定されることを意味する。従って、「からなる」という語句は、リストされた要素が、必要とされるかまたは義務的であり、他の要素は、存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、その語句の後にリストされた要素を含み、リストされた要素について本開示において明示された活性または作用に干渉せず寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、「から本質的になる」という語句は、リストされた要素は、必要とされるかまたは義務的であるが、他の要素は、任意であり、リストされた要素の活性または作用に物質的に影響を与えるか否かに依って、存在し得るかまたは存在し得ないことを示す。
【0048】
本明細書において使用されるように、「細胞を接触させる」、「導入する」、または「送達する」という用語には、当技術分野においてルーチンの方法、例えば、トランスフェクション(例えば、リポソーム、リン酸カルシウム、ポリエチレンイミン)、電気穿孔(例えば、ヌクレオフェクション)、微量注入、形質転換、および投与による、本明細書に記載されたオリゴマーの細胞への送達が含まれる。
【0049】
「細胞透過性ペプチド」(CPP)または「細胞取り込みを増強するペプチド部分」という用語は、交換可能に使用され、「輸送ペプチド」、「担体ペプチド」、または「ペプチド形質導入ドメイン」とも呼ばれる、陽イオン性の細胞透過性ペプチドをさす。いくつかの局面において、ペプチドは、所定の集団の細胞の約または少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%において細胞透過を誘導する能力を有し、かつ/または全身投与時にインビボの複数の組織へのもしくは組織内での高分子の移行を可能にする。CPPの具体例には、「アルギニンリッチペプチド」が含まれる。CPPは、当技術分野において周知であり、例えば、全て、参照によってその全体が組み入れられる、米国特許出願第2010/0016215号、ならびに国際特許出願公報WO 2004/097017、同WO 2009/005793、および同WO 2012/150960に開示されている。
【0050】
「電子対」とは、他の原子と結合していないかまたは共有されていない原子価電子対をさす。
【0051】
「相同性」とは、同一であるかまたは保存的置換を構成するアミノ酸の数の百分率をさす。相同性は、GAP(Deveraux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12,387-395)またはBLASTのような配列比較プログラムを使用して決定され得る。このように、アライメントへのギャップの挿入によって、本明細書に引用されたものと類似しているかまたは実質的に異なる長さの配列を比較することができ、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0052】
「単離された」とは、ネイティブ状態において通常それに付随している成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたオリゴマー」とは、本明細書において使用されるように、天然に存在する状態においてそれに隣接している配列から精製されているかまたは除去されているポリヌクレオチド、例えば、ゲノムにおいてその断片に隣接している配列から除去されているDNA断片をさすことができる。「単離」という用語は、細胞に関するように、起源対象(例えば、ポリヌクレオチドリピート病を有する対象)からの細胞(例えば、繊維芽細胞、リンパ芽球)の精製をさす。mRNAまたはタンパク質に関して、「単離」とは、起源、例えば、細胞からのmRNAまたはタンパク質の回収をさす。
【0053】
「モジュレートする」という用語には、任意で、明確なかつ/または統計的に有意な量だけ、一つまたは複数の定量可能なパラメータを「増加/増大させる」または「減少させる」ことが含まれる。「増加/増大させる」もしくは「増加/増大」、「増強する」もしくは「増強」、または「刺激する」もしくは「刺激」とは、一般に、アンチセンス化合物なしまたは対照化合物によって引き起こされる応答と比べて、より大きい生理学的応答(即ち、下流効果)を、細胞または対象において生じるかまたは引き起こす1種類または複数種類のアンチセンス化合物または組成物の能力をさす。関連する生理学的応答または細胞応答(インビボまたはインビトロ)は、当業者に明白であろう。「増加/増大した」または「増強された」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、アンチセンス化合物なし(作用物質が存在しない場合)または対照化合物によって産生される量の1.1倍、1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、またはそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(1を超える全ての中間の整数および範囲、例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍を含む)である増加/増大を含み得る。「低下させる」または「阻害する」という用語は、一般に、診断技術分野のルーチンの技術に従って測定されるような、本明細書に記載された疾患または状態の症状のような関連する生理学的応答または細胞応答を「減少させる」1種類または複数種類のアンチセンス化合物または組成物の能力に関し得る。関連する生理学的応答または細胞応答(インビボまたはインビトロ)は、当業者に明白であり、細菌細胞成長の低下、抗菌物質の最小発育阻止濃度(MIC)の低下等を含み得る。応答の「減少」は、アンチセンス化合物なしまたは対照組成物によって産生される応答と比較して、「統計的に有意」であり得、全ての中間の整数および範囲を含む1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含み得る。
【0054】
本明細書において使用されるように、「アンチセンスオリゴマー」、「オリゴマー」、または「オリゴマー」とは、標的配列内でオリゴマー:RNAヘテロ二重鎖が形成されるよう、核酸塩基が、ワトソンクリック型塩基対合によって、RNA内の標的配列にハイブリダイズすることを可能にする、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の直鎖配列をさす。「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴマー」、「オリゴマー」、および「化合物」という用語は、オリゴマーをさすために交換可能に使用され得る。環状サブユニットは、リボースもしくは別の五炭糖に基づいていてもよいか、または、ある種の態様において、モルホリノ基に基づいていてもよい(下記のモルホリノオリゴマーの説明を参照すること)。
【0055】
「オリゴマー」、「オリゴマー」、または「アンチセンスオリゴマー」という用語には、可溶性の増強において有用であり得るポリエチレングリコール部分もしくはその他の親水性ポリマー、例えば、10~100個の単量体サブユニットを有するもの、または化合物の標的細菌細胞への取り込みを増強し、かつ/もしくは細胞における化合物の活性を増強するため、例えば、標的ポリヌクレオチドへの結合を増強するために有効な脂質部分もしくはペプチド部分のような部分のような1種類または複数種類の付加的な部分が、例えば、3'末端または5'末端でオリゴマーにコンジュゲートされているオリゴマーも包含される。
【0056】
「ヌクレアーゼ耐性」オリゴマーとは、体内または細菌細胞の一般的な細胞外ヌクレアーゼおよび細胞内ヌクレアーゼによって(例えば、3'エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼHのようなエキソヌクレアーゼによって)、ハイブリダイズしていない形態またはハイブリダイズした形態で、ヌクレアーゼ切断に対して実質的に耐性である骨格を有するものをさし;即ち、そのオリゴマーは、オリゴマーが曝される通常のヌクレアーゼ条件の下でヌクレアーゼ切断をほとんどまたは全く示さない。「ヌクレアーゼ耐性ヘテロ二重鎖」とは、二本鎖のRNA/RNA複合体またはRNA/DNA複合体を切断することができる細胞内ヌクレアーゼおよび細胞外ヌクレアーゼによるインビボの分解に対して実質的に耐性であるような、アンチセンスオリゴマーの相補的標的との結合によって形成されたヘテロ二重鎖をさす。「ヘテロ二重鎖」とは、アンチセンスオリゴマーと標的RNAの相補的部分との間の二重鎖をさす。
【0057】
本明細書において使用されるように、「核酸塩基」(Nu)、「塩基対合部分」、または「塩基」とは、ネイティブのDNAまたはRNAに見出されるプリン塩基またはピリミジン塩基(ウラシル、チミン、アデニン、シトシン、およびグアニン)、ならびにオリゴマーとの結合親和性のような特性の改善を付与する天然に存在するプリンおよびピリミジンの類似体をさすために交換可能に使用される。例示的な類似体には、ヒポキサンチン(ヌクレオシドイノシンの塩基成分);2,6-ジアミノプリン;5-メチルシトシン;C5-プロピニル修飾型ピリミジン;9-(アミノエトキシル)フェノキサジン(Gクランプ)等が含まれる。
【0058】
リボース、糖類似体、またはモルホリノに共有結合で連結される核酸塩基には、ヌクレオシドが含まれる。「ヌクレオチド」は、1個のリン酸基と共にヌクレオシドから構成される。オリゴマーが形成されるよう、リン酸基が隣接ヌクレオチドを相互に共有結合で連結する。
【0059】
オリゴマーは、生理学的条件下で、40℃または45℃より実質的に高い、好ましくは、少なくとも50℃、典型的には、60℃~80℃またはそれ以上のTmで、標的にハイブリダイズする場合、その標的配列に「特異的にハイブリダイズする」。そのようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に相当する。Tmとは、所定のイオン強度およびpHで、標的配列の50%が、相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。そのようなハイブリダイゼーションは、アンチセンスオリゴマーの標的配列との「近い」または「実質的な」相補性でも起こり得るし、正確な相補性でも起こり得る。
【0060】
本明細書において使用されるように、「十分な長さ」には、細菌mRNA標的配列または細菌rRNA標的配列のある領域の少なくとも約8個、より典型的には、約8~10個、8~11個、8~12個、8~13個、8~14個、8~15個、8~16個、8~17個、8~18個、8~19個、8~20個、8~30個、8~40個、または10~11個、10~12個、10~13個、10~14個、10~15個、10~16個、10~17個、10~18個、10~19個、10~20個、10~30個、10~40個(全ての中間の整数および範囲を含む)の連続したまたは非連続的な核酸塩基に相補的であるアンチセンスオリゴマーが含まれる。十分な長さのアンチセンスオリゴマーは、細菌のmRNA標的またはrRNA標的のある領域に特異的にハイブリダイズすることができるための最小の数のヌクレオチドを少なくとも有する。好ましくは、十分な長さのオリゴマーは、8~30ヌクレオチド長、例えば、約10~20ヌクレオチド長である。
【0061】
「配列同一性」または、例えば、「と50%同一の配列」を含むという用語は、本明細書において使用されるように、比較のウィンドウにおいてヌクレオチドベースまたはアミノ酸ベースで配列が同一である程度をさす。従って、「配列同一性の百分率」は、比較のウィンドウにおいて最適に整列化された二つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(即ち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を得ることによって計算され得る。比較ウィンドウを整列化するための配列の最適のアライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,Wis.,USA)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューター化された実装によって、または視察によって実施され得、選択された様々な方法のいずれかによって、最良の(即ち、比較ウィンドウにおける最も高い相同性の百分率をもたらす)アライメントが生成される。例えば、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389,1997によって開示されたようなBLASTプログラムファミリーが参照されてもよい。
【0062】
「対象」または「それを必要とする対象」には、ヒト対象のような哺乳動物対象が含まれる。
【0063】
「TEG」、「EG3」、または「トリエチレングリコールテール」という用語は、例えば、3'末端または5'末端でオリゴマーにコンジュゲートされたトリエチレングリコール部分をさす。例えば、いくつかの態様において、「TEG」には、例えば、式(I)、(II)、または(III)の化合物のTが式:
である場合が含まれる。
【0064】
「pip-PDA」という用語は、さらに後述される細胞透過性ペプチド(CPP)およびリンカー部分を含むG基を、G基リンカーとピペラジニル窒素との間のアミド結合によって、オリゴマーの5'末端に接続する、5'末端ピペラジン-ホスホロジアミデート部分をさす。例えば、いくつかの態様において、「pip-PDA」には、式(I)または(II)の化合物のTが式:
である場合が含まれる。
【0065】
「標的配列」という用語は、アンチセンスオリゴマーが差し向けられる標的RNA、例えば、細菌のmRNAまたはrRNAの一部分、即ち、相補的配列のワトソンクリック型塩基対合によってオリゴマーがハイブリダイズするであろう配列をさす。ある種の態様において、標的配列は、細菌のmRNAまたはリボソームRNAの翻訳開始領域の連続した領域であり得る。
【0066】
「ターゲティング配列」または「アンチセンスターゲティング配列」という用語は、RNA、例えば、細菌mRNA、細菌rRNAの中の標的配列に相補的であるかまたは実質的に相補的であるオリゴマー内の配列をさす。アンチセンス化合物の配列全体が、標的配列に相補的であってもよいか、または一部分のみが相補的であってもよい。例えば、約10~30塩基のオリゴマーにおいて、約6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、または29塩基が、標的部位に相補的なターゲティング配列であってよい。典型的には、ターゲティング配列は、連続した塩基から形成されるが、あるいは、例えば、オリゴマーの反対の末端から、共に置かれた時に、標的配列にかかる配列を構成する非連続した配列から形成されていてもよい。
【0067】
「ターゲティング配列」は、標的配列との「近い」または「実質的な」相補性を有していても、本開示の目的のために機能することができ、即ち、「相補的」であり得る。好ましくは、本発明の開示において用いられるオリゴマー類似体化合物は、高々、ヌクレオチド10個のうち1個の標的配列とのミスマッチ、好ましくは、高々、20個のうち1個のミスマッチを有する。あるいは、用いられるアンチセンスオリゴマーは、本明細書中に示される例示的なターゲティング配列との少なくとも90%の配列相同性、好ましくは、少なくとも95%の配列相同性を有する。
【0068】
本明細書において使用されるように、「定量化する」、「定量化」という用語またはその他の関連する単語は、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴマー、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の単位体積中の量、質量、または濃度の決定をさす。
【0069】
本明細書において使用されるように、対象(例えば、ヒトのような哺乳動物)または細胞の「処置」とは、個体または細胞の自然経過を改変する試みにおいて使用される任意の型の介入である。処置には、薬学的組成物の投与が含まれるが、これに限定されるわけではなく、予防的に実施されてもよいか、または病理学的イベントの開始もしくは病因因子との接触の後に実施されてもよい。処置されている疾患もしくは状態の進行の速度を低下させるか、疾患もしくは状態の発症を遅延させるか、またはその発症の重症度を低下させるために行われ得る「予防的」処置も含まれる。「処置」または「予防」とは、疾患もしくは状態またはそれらの関連症状の完全な根絶、治癒、または防止を必ずしも示さない。
【0070】
II.細菌ターゲティング配列
ある種の態様は、生化学的経路および/もしくは細胞過程の遺伝子をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するアンチセンスオリゴマー、ならびに関連する組成物および方法に関する。一般的な例には、ムレイン生合成、細胞分裂、全般的遺伝子制御機序、脂肪酸生合成、リボソームタンパク質、リボソームRNA(rRNA)、DNA/染色体の複製、転写、翻訳開始、リポ多糖生合成、核酸生合成、中間代謝、RNA生合成、タンパク質生合成、ペプチドグリカン生合成、細胞エネルギーホメオスタシス、芳香族化合物生合成、および抗生物質耐性が含まれる。生化学的経路および細胞過程の遺伝子の具体例には、rpsJおよびrpmB(リボソームタンパク質);lpxC、waaC、waaG、waaA、waaF、lpxA、およびlpxB(リポ多糖生合成);murA(以前はmurZとして公知であった)、mraY、murC、murB、murE、murF、およびmurG(ペプチドグリカン生合成);fabG、acpP、accA、fabB、accB、およびfabZ(脂肪酸生合成);adk(細胞エネルギーホメオスタシス);infA(抗転写終結および/またはタンパク質合成);ftsZ(細胞分裂);rpoD(RNA合成);aroC(芳香族化合物生合成);gyrA、dnaB、pol B(染色体およびDNAの複製)が含まれる。抗生物質耐性遺伝子の例には、blaT、cml、およびadeAが含まれる。いくつかの態様において、遺伝子をコードするrRNA標的配列またはmRNA標的配列は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、遺伝子をコードするrRNA標的配列またはmRNA標的配列は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、遺伝子をコードするrRNA標的配列またはmRNA標的配列は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、遺伝子をコードするrRNA標的配列またはmRNA標的配列は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0071】
いくつかの態様において、細菌標的は、脂肪酸の生合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。脂肪酸生合成に関連したタンパク質の一般的な例には、中間脂肪酸鎖の安定化および脂肪酸合成酵素複合体内の酵素の各々への運搬において必須の役割を果たすAcpPのようなアシルキャリアータンパク質(ACP);機能性のホロACPが形成されるよう4'-ホスホパンテテイン補欠分子族をアポACPへ転移させる酵素であるアシルキャリアータンパク質合成酵素(AcpS);脂肪酸生合成の最初の重要な段階におけるアセチルCoAのマロニルCoAへの変換を触媒する4種のタンパク質:AccA(マロニルCoAが形成されるようビオチンからアセチルCoAへのカルボキシル基の転移を触媒するカルボキシルトランスフェラーゼαサブユニット)、AccB(カルボキシル末端の近位のリジン残基に共有結合により結合したビオチン補欠分子族を保持するビオチンカルボキシルキャリアータンパク質であるBCCP)、AccC(炭酸水素によるタンパク質結合型ビオチンのカルボキシル化を触媒するビオチンカルボキシラーゼ)、AccD(マロニルCoAが形成されるようビオチンからアセチルCoAへのカルボキシル基の転移を触媒するカルボキシルトランスフェラーゼβサブユニット)から構成される酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ;成長中の脂肪酸鎖における伸長工程またはテーラリング(tailoring)工程のいずれかを各々触媒するFabA、FabB、FabI、FabF、FabD、FabH、FabG、およびFabZのような脂肪酸生合成(Fab)酵素が含まれる。脂肪酸生合成に関連した遺伝子の具体例には、acpP、カルボキシルトランスフェラーゼαサブユニットaccA、およびアシルキャリアータンパク質合成酵素fabBが含まれる。
【0072】
従って、具体的な態様は、アシルキャリアータンパク質(ACP)をコードする細菌acpP遺伝子のmRNA標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するアンチセンスオリゴマー、ならびに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、acpP遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、acpP遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、acpP遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、acpP遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0073】
ある種の態様は、細菌fabB遺伝子のmRNA標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するアンチセンスオリゴマー、ならびに関連する組成物および方法に関する。いくつかの態様において、fabB遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、fabB遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、fabB遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、fabB遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0074】
細菌細胞壁ペプチドグリカンは、形状の維持および浸透圧ショックによる溶解からの保護に関与する必須細胞成分である。典型的には、ペプチドグリカンは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と、ペンタペプチドが結合しているN-アセチルムラミン酸とから構成される基本ビルディングブロックから組み立てられている。いくつかの態様において、細菌標的は、ペプチドグリカン生合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。ペプチドグリカン生合成に関連した遺伝子の具体例には、ペプチドグリカン生合成の最初の重要な段階を触媒するUDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼをコードする(以前はmurZとして公知であった)murAが含まれる。この酵素は、ホスホエノールピルビル酸からUDP-N-アセチルグルコサミンの3-OHへのエノールピルビン酸の転移を触媒する。いくつかの態様において、murA遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、murA遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、murA遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、murA遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0075】
リボソームは、mRNA分子のタンパク質への翻訳のために不可欠である。いくつかの態様において、細菌標的は、リボソームタンパク質に関連した遺伝子またはタンパク質である。リボソームタンパク質に関連した遺伝子の具体例は、rpmB、リボソームの組み立ておよび翻訳のために必須の50Sリボソームタンパク質L28である。リボソームタンパク質に関連した遺伝子の別の例は、rpsJ、30Sリボソームタンパク質である。いくつかの態様において、rpmB遺伝子またはrpsJ遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、rpmB遺伝子またはrpsJ遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、rpmB遺伝子またはrpsJ遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、rpmB遺伝子またはrpsJ遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0076】
いくつかの態様において、細菌標的は、リボソームRNA(rRNA)である。rRNAの例には、5S rRNA、16S rRNA、および23S rRNAが含まれる。いくつかの態様において、rRNA(例えば、5S、16S、23S)は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、rRNA(例えば、5S、16S、23S)は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、rRNA(例えば、5S、16S、23S)は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、rRNA(例えば、5S、16S、23S)は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0077】
いくつかの態様において、細菌標的は、細胞エネルギーホメオスタシスに関連した遺伝子またはタンパク質である。細胞エネルギーホメオスタシスに関連した遺伝子の具体例には、アデニンヌクレオチドの相互変換を触媒するホスホトランスフェラーゼ酵素をコードするアデニル酸キナーゼ(adk)遺伝子が含まれる。
【0078】
いくつかの態様において、細菌標的は、抗転写終結および/またはタンパク質生合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。抗転写終結および/またはタンパク質生合成に関連した遺伝子の具体例には、翻訳開始因子IF1が含まれる。infAによってコードされるIF1は、核酸二次構造との結合およびその融解、ならびに抗転写終結において役割を果たすことができるS1様ドメインを含有しているタンパク質である。他の機能には、IF2およびIF3のような他の翻訳開始因子活性の刺激を通した、70Sリボソームの解離およびサブユニット会合の速度の増加ならびに翻訳開始のフィデリティへの関与も含まれ得る。
【0079】
いくつかの態様において、細菌標的は、細胞分裂に関連した遺伝子またはタンパク質である。細胞分裂に関連した遺伝子の具体例には、細菌の細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質をコードするftsZ遺伝子が含まれる。これは、真核生物タンパク質チューブリンの原核生物相同体である。いくつかの態様において、ftsZ遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、ftsZ遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、ftsZ遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、ftsZ遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0080】
いくつかの態様において、細菌標的は、DNAまたは染色体の複製に関連した遺伝子またはタンパク質である。DNAまたは染色体の複製に関連した遺伝子の一例は、トポイソメラーゼをコードするgyrAである。DNAまたは染色体の複製に関連した遺伝子の別の例は、ヘリカーゼをコードするdnaBである。DNAまたは染色体の複製に関連した遺伝子の別の例は、DNAポリメラーゼをコードするpolBである。いくつかの態様において、gyrA遺伝子またはdnaB遺伝子またはpolB遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、gyrA遺伝子またはdnaB遺伝子またはpolB遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、gyrA遺伝子またはdnaB遺伝子またはpolB遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、gyrA遺伝子またはdnaB遺伝子またはpolB遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0081】
いくつかの態様において、細菌標的は、リポ多糖生合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。リポ多糖生合成に関連した遺伝子の一例は、N-アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素をコードするlpxCである。いくつかの態様において、lpxC遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、lpxC遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、lpxC遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、lpxC遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0082】
いくつかの態様において、細菌標的は、RNA合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。RNA合成に関連した遺伝子の具体例には、ポリメラーゼが遺伝子プロモーターに結合することを可能にし、成長中の細胞における大部分の遺伝子の転写のために重要であるRNAポリメラーゼのσD(σ70)因子をコードするrpoD遺伝子が含まれる。このσ因子によって認識される遺伝子は、転写開始の10ヌクレオチド前および35ヌクレオチド前に中心が置かれたプロモーターコンセンサス配列を有する。いくつかの態様において、rpoD遺伝子は、クレブシエラ属、例えば、肺炎桿菌に由来する。いくつかの態様において、rpoD遺伝子は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。いくつかの態様において、rpoD遺伝子は、アシネトバクター属、例えば、アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの態様において、rpoD遺伝子は、エシェリキア属、例えば、大腸菌に由来する。
【0083】
芳香族化合物の生合成は、細菌細胞の成長および生存のために重要である。シキミ酸経路は、他の芳香族化合物の中心的な前駆物質、コリスミ酸の合成をもたらす微生物における生合成経路である。いくつかの態様において、細菌標的は、芳香族化合物生合成に関連した遺伝子またはタンパク質である。芳香族化合物生合成に関連した遺伝子の具体例には、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸のコリスミ酸への変換を触媒するシキミ酸経路の最終酵素、コリスミ酸合成酵素(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸ホスホリアーゼ)をコードするaroC遺伝子が含まれる。
【0084】
いくつかの態様において、遺伝子またはタンパク質は、少なくとも1種類の抗菌物質に対する細菌の耐性、即ち、抗生物質耐性遺伝子に関連している。抗生物質耐性遺伝子の一般的な例には、ある種の抗菌物質を酵素的に非活性化することができるβラクタマーゼ、および抗菌物質の透過性または能動排出(汲み出し)を増大させるタンパク質が含まれる。抗生物質耐性遺伝子の具体例には、TEMβラクタマーゼ(blaT)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cml)、およ耐性-小結節形成-細胞分裂(resistance-nodulation-cell division)(RND)型多種薬剤排出ポンプサブユニットAdeA(adeA)が含まれる。
【0085】
ある種の態様において、標的配列は、細菌mRNAの翻訳開始コドンの全部または一部(例えば、1個もしくは2個のヌクレオチド)を含有している。いくつかの態様において、標的配列は、一般的な開始コドンおよび代替的な開始コドン(例えば、AUG、GUG、UUG、AUU、CUG)を含む、細菌mRNA標的配列の翻訳開始コドンの約1塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基、6塩基、7塩基、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、15塩基、16塩基、17塩基、18塩基、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基上流もしくは下流またはそれ以内にある配列を含有している。例えば、具体的な態様において、標的配列の5'末端は、細菌mRNAのAUG開始コドンにおいて(それぞれ)アデニンヌクレオチド、ウラシルヌクレオチド、またはグアニンヌクレオチドである。いくつかの態様において、標的配列の5'末端は、細菌mRNAのGUG開始コドンにおいて(それぞれ)グアニンヌクレオチド、ウラシルヌクレオチド、またはグアニンヌクレオチドである。いくつかの態様において、標的配列の5'末端は、細菌mRNAのUUG開始コドンにおいて(それぞれ)ウラシルヌクレオチド、ウラシルヌクレオチド、またはグアニンヌクレオチドである。いくつかの態様において、標的配列の5'末端または3末端は、細菌mRNAの翻訳開始コドンの最後(3番目)のヌクレオチドの下流の1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、22番目、23番目、24番目、25番目、26番目、27番目、28番目、29番目、または30番目の残基において開始する。いくつかの態様において、標的配列の5'末端または3末端は、細菌mRNAの翻訳開始コドンの最初のヌクレオチドの上流の1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、22番目、23番目、24番目、25番目、26番目、27番目、28番目、29番目、または30番目の残基において開始する。
【0086】
従って、ある種の態様において、アンチセンスターゲティング配列は、本明細書に記載された標的遺伝子のうちの1種類または複数種類の領域にハイブリダイズするよう設計される。選択されるアンチセンスターゲティング配列は、その配列が標的配列とのハイブリダイゼーション時に転写または翻訳を低下させるために十分に相補的であり、任意で、45℃または45℃超のTmを有するヘテロ二重鎖をRNAと共に形成する限り、より短く、例えば、約8塩基、9塩基、10塩基、11塩基、12塩基、13塩基、14塩基、もしくは15塩基にされてもよく、またはより長く、例えば、約20塩基、30塩基、もしくは40塩基にされてもよく、少数のミスマッチを含んでいてもよい。
【0087】
ある種の態様において、標的配列とアンチセンスターゲティング配列との間の相補性の程度は、安定的な二重鎖を形成するために十分なものである。アンチセンスオリゴマーの標的RNA配列と相補的な領域は、以下の範囲内の全ての整数を含む、8~9塩基、8~10塩基、8~11塩基、8~12塩基、10~11塩基、10~12塩基と短くてもよいが、12~15塩基、またはそれ以上、例えば、10~40塩基、12~30塩基、12~25塩基、15~25塩基、12~20塩基、もしくは15~20塩基であってもよい。約10~15塩基のアンチセンスオリゴマーは、一般に、特有の相補的配列を有するために十分に長い。ある種の態様において、相補的塩基の最小の長さは、本明細書に記述されるような、必要な結合Tmを達成するために必要とされるものであり得る。
【0088】
ある種の態様において、最小塩基数、例えば、10~12塩基が少なくとも標的配列に相補的である、40塩基もの長さのオリゴマーが、適切であり得る。しかしながら、一般に、細胞の促進取り込みまたは能動取り込みは、約30塩基未満または約20塩基未満のオリゴマー長で最適化される。少なくとも約6個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個の連続したまたは非連続的な塩基が、本明細書に記載された標的遺伝子に相補的である、約8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個の塩基からなるアンチセンスオリゴマーが含まれる。
【0089】
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、標的配列に100%相補的であってもよいか、またはオリゴマーと標的配列との間で形成されたヘテロ二重鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用およびインビボで起こり得る他のモードの分解に耐えるために十分に安定しており、標的とされたmRNAの発現を低下させる限り、例えば、バリアントに適合するよう、ミスマッチを含んでいてもよい。従って、ある種のオリゴマーは、オリゴマーと標的配列との間に、約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列相補性を有していてよい。ヌクレアーゼによる切断を受けにくいオリゴマー骨格が、本明細書に記述される。ミスマッチは、存在する場合、典型的には、中央よりハイブリッド二重鎖の末端領域に向けて、不安定化しないものである。可能とされるミスマッチの数は、二重鎖安定性の十分に理解されている原理に従い、オリゴマーの長さ、二重鎖内のG:C塩基対の百分率、および二重鎖内ミスマッチの位置に依るであろう。そのようなアンチセンスオリゴマーは、必ずしも標的配列に100%相補的ではないが、例えば、標的RNAの翻訳が低下するよう、標的配列に安定的に特異的に結合するために有効である。
【0090】
オリゴマーと標的配列との間で形成された二重鎖の安定性は、二重鎖の結合Tmおよび細胞酵素による切断に対する感受性の関数である。相補的配列RNAに対するオリゴマーのTmは、Hames et al.,Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,1985,pp.107-108によって記載されたもののような、またはMiyada C.G.and Wallace R.B.,1987,Oligomer Hybridization Techniques,Methods Enzymol.Vol.154 pp.94-107に記載されたような従来の方法によって測定され得る。ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、体温より高く、好ましくは、約45℃または50℃より高い、相補的配列RNAに対する結合Tmを有していてよい。60~80℃の範囲内またはそれ以上のTmも含まれる。周知の原理によると、相補性に基づくRNAハイブリッドに関して、オリゴマーのTmは、二重鎖内のC:G対合塩基の比の増加、および/またはヘテロ二重鎖の長さ(塩基対)の増加によって増加し得る。同時に、細胞取り込みを最適化する目的のため、オリゴマーのサイズを限定することが有利であり得る。
【0091】
下記表1AおよびBは、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーの例示的なターゲティング配列(5'-3'方向)を示す。
【0092】
(表1A)例示的な脂肪酸生合成関連のターゲティング配列
【0093】
(表1B)その他の生化学的経路および/または細胞過程に関連した例示的なターゲティング配列
【0094】
従って、ある種のアンチセンスオリゴマーは、表1AおよびBのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~20)またはそれらのバリアントもしくは連続したもしくは非連続的な一部分を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。例えば、ある種のアンチセンスオリゴマーは、表1AおよびBのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~20)のいずれかの約または少なくとも約6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、または27個の連続したまたは非連続的なヌクレオチドを含む。非連続的な一部分については、介在するヌクレオチドが、欠失しているかまたは異なるヌクレオチドに置換されていてもよいか、または介在するヌクレオチドが、付加されていてもよい。バリアントの付加的な例には、表1AおよびBのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~20)のいずれかの全長において、約または少なくとも約70%の配列同一性または相同性、例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性または相同性を有するオリゴマーが含まれる。
【0095】
アンチセンスオリゴマーおよびそれらのバリアントの活性は、当技術分野におけるルーチンの技術に従ってアッセイされ得る(例えば、実施例を参照すること)。
【0096】
III.アンチセンスオリゴマー化合物
アンチセンスオリゴマーは、典型的には、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に特異的にハイブリダイズし、それによって、タンパク質の発現(例えば、翻訳)を低下させるか、またはリボソームRNA標的配列に特異的にハイブリダイズし、それによって、他の高分子との相互作用を阻害するために十分な長さおよび相補性を有する塩基配列を含む。この要件は、任意で、オリゴマー化合物が細菌細胞によって能動的に取り込まれ、取り込まれた後、任意で、約40℃または45℃より高いTmで、標的mRNAまたは標的rRNAとの安定的な二重鎖(またはヘテロ二重鎖)を形成する能力を有する時に満たされる。
【0097】
A.アンチセンスオリゴマーの化学的特色
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーの骨格は、実質的に非荷電であり、任意で、細胞壁および/または細胞膜を介した能動輸送または促進輸送のための基質として認識される。標的RNAとの安定的な二重鎖を形成するオリゴマーの能力は、アンチセンスオリゴマーの長さおよび標的に対する相補性の程度、G:C対A:T塩基マッチの比、ならびにミスマッチ塩基の位置を含む、骨格のその他の特色にも関係し得る。細胞ヌクレアーゼに抵抗するアンチセンスオリゴマーの能力は、作用物質の生存および最終的な細胞への送達を増進し得る。例示的なアンチセンスオリゴマーのターゲティング配列は、表1AおよびB(前記)にリストされる。
【0098】
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、モルホリノベースのオリゴマー、例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)である。モルホリノベースのオリゴマーとは、核酸塩基を支持するモルホリノサブユニットを含み、リボースの代わりに、モルホリン環を含有しているオリゴマーをさす。例示的なヌクレオシド間結合には、例えば、あるモルホリノサブユニットのモルホリン環窒素を隣接モルホリノサブユニットの4'環外炭素へ接合するホスホロアミデートまたはホスホロジアミデートのヌクレオシド間結合が含まれる。各モルホリノサブユニットは、塩基特異的な水素結合によってオリゴマー内の塩基に結合するのに有効なプリンまたはピリミジンの核酸塩基を含む。
【0099】
(アンチセンスオリゴマーを含む)モルホリノベースのオリゴマーは、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,698,685号;同第5,217,866号;同第5,142,047号;同第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,521,063号;同第5,506,337号、および係属中の米国特許出願第12/271,036号;同第12/271,040号;ならびにPCT公報番号WO/2009/064471および同WO/2012/043730、ならびにSummerton et al.1997,Antisense and Nucleic Acid Drug Development,7,187-195に詳述されている。
【0100】
オリゴマー構造において、リン酸基は、一般的に、オリゴマーの「ヌクレオシド間結合」を形成していると呼ばれる。RNAおよびDNAの天然に存在するヌクレオシド間結合は、3'-5'ホスホジエステル結合である。「ホスホロアミデート」基は、3個の結合した酸素原子および1個の結合した窒素原子を有するリンを含み、「ホスホロジアミデート」基は、2個の結合した酸素原子および2個の結合した窒素原子を有するリンを含む。本明細書に記載されたモルホリノベースのオリゴマーの非荷電または陽イオン性のヌクレオシド間結合において、1個の窒素は常に結合鎖に付属している。ホスホロジアミデート結合における第2の窒素は、典型的には、モルホリン環構造の環窒素である。
【0101】
具体的な態様において、モルホリノサブユニットは、構造:
によるリン含有サブユニット間結合によって接合され、
ここで、Y1=酸素(O)または硫黄、窒素、または炭素;Z=酸素または硫黄、好ましくは、酸素;Pjは、塩基特異的な水素結合によって、ポリヌクレオチド内の塩基に結合するために有効なプリンまたはピリミジンの塩基対合部分であり、かつXは、-NRR'であり、RおよびR'は、同一であるかまたは異なり、Hまたはアルキルのいずれかである。具体的な態様において、Xは、-NRR'であり、RおよびR'は、同一であるかまたは異なりかつHまたはメチルのいずれかである。
【0102】
図1A~1Eの式のヌクレオチドの配列を含むアンチセンスオリゴマーも含まれる。図1Aにおいて、Bは、塩基特異的な水素結合によって、ポリヌクレオチド内の塩基に結合するために有効なプリンまたはピリミジンの塩基対合部分である。Y1またはY2は、酸素、硫黄、窒素、または炭素、好ましくは、酸素であり得る。リンに付属しているX部分は、フッ素、アルキルもしくは置換アルキル、アルコキシもしくは置換アルコキシ、チオアルコキシもしくは置換チオアルコキシ、または非置換型、一置換型、もしくは二置換型の窒素、例えば、モルホリンまたはピペリジンのような環式構造であり得る。アルキル、アルコキシ、およびチオアルコキシは、1~6個の炭素原子を含む。Z部分は、硫黄または酸素であり得、好ましくは、酸素である。
【0103】
従って、本開示の様々な態様は、本明細書に記載されるような、モルホリノサブユニットと、あるサブユニットのモルホリノ窒素を隣接サブユニットの5'環外炭素に接合するリン含有サブユニット間結合とから構成され、かつ、(a)約10~40個のヌクレオチド塩基と、(b)生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはリボソームRNA標的配列に特異的にハイブリダイズするために十分な長さおよび相補性を有するターゲティング配列とを有する、実質的に非荷電のアンチセンスモルホリノオリゴマーを含む。いくつかの場合において、オリゴマーは、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされている。
【0104】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(I):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~38の整数であり;
Tは、OH、および式:
の部分より選択され、
ここで、R4は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR5は電子対およびHより選択され、かつR6は、OH、-N(R7)CH2C(O)NH2、および式:
の部分より選択され、
ここで、
R7はHおよびC1-C6アルキルより選択され、かつ
R8は、G、-C(O)-R9OH、アシル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、ここで、
R9は式-(O-アルキル)y-であり、ここで、yは3~10の整数でありかつy個のアルキル基は各々独立してC2-C6アルキルより選択され;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、ここで、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;
R2は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、ステアロイル、および式:
の部分より選択され、
ここで、Lは、-C(O)(CH2)6C(O)-および-C(O)(CH2)2S2(CH2)2C(O)-より選択され、かつR12は各々式-(CH2)2OC(O)N(R14)2であり、ここで、R14は各々式-(CH2)6NHC(=NH)NH2であり;かつ
R3は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在し、
ここで、ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはrRNA標的配列に特異的にハイブリダイズする。
【0105】
いくつかの態様において、Xは、9~18である。ある種の態様において、Xは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30である。
【0106】
ある種の態様において、Tは、
より選択される。
【0107】
いくつかの態様において、R2は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される。
【0108】
様々な態様において、Tは、
より選択され、かつR2はGである。
【0109】
いくつかの態様において、Tは、式:
であり、R6は、式:
であり、かつR2はGである。
【0110】
ある種の態様において、Tは、式:
であり、かつR2はGである。
【0111】
ある種の態様において、Tは、式:
である。
【0112】
いくつかの態様において、R2はGであるか、またはTは式:
である。
【0113】
いくつかの態様において、R2は、H、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される。
【0114】
様々な態様において、R2は、HまたはGより選択され、R3は、電子対またはHより選択される。具体的な態様において、R2は、Gである。いくつかの態様において、R2は、Hまたはアシルである。いくつかの態様において、R1は、各々、-N(CH3)2である。いくつかの態様において、R1の少なくとも一つの例は、-N(CH3)2である。ある種の態様において、R1の例は各々-N(CH3)2である。
【0115】
本開示の様々な態様において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(II):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~28の整数であり;
Tは、
より選択され;
R2は、H、G、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され;かつ
R3は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは式:
であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合しており、但し、Gの一つの例のみが存在する。いくつかの態様において、Tは、前記定義のようなTEGであり、R2は、Gであり、かつR3は、電子対またはHである。ある種の態様において、R2は、H、アシル、トリチル、4-メトキシトリチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され、かつTは、式:
である。
【0116】
いくつかの態様において、R2が、Gであるか、またはTが、式:
である。
【0117】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(III):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
Xは9~28の整数であり;
Tは、
より選択され;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;
R2は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され;かつ
Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは、式:
であり、ここでCPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合している。いくつかの態様において、R1の少なくとも一つの例は、-N(CH3)2である。ある種の態様において、R1の例は各々-N(CH3)2である。
【0118】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(IV):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Xは9~28の整数であり;
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;かつ
Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは、式:
であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合している。いくつかの態様において、R1の少なくとも一つの例は、-N(CH3)2である。ある種の態様において、R1の例は各々-N(CH3)2である。
【0119】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(V):
の化合物であり得、
式中、
Xは9~18の整数であり;
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
R1の例は各々-N(R10)2R11であり、R10は各々独立してC1-C6アルキルであり、かつR11は電子対およびHより選択され;
R2は、H、トリチル、4-メトキシトリチル、アシル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され;かつ
R3は電子対、H、およびC1-C6アルキルより選択され、
ここで、Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは、式:
であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合している。いくつかの態様において、R1の少なくとも一つの例は、-N(CH3)2である。ある種の態様において、R1の例は各々-N(CH3)2である。
【0120】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーは、式(VI):
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Xは9~28の整数であり;
Nuは各々、一緒になってターゲティング配列を形成する核酸塩基であり;
R2はHまたはアシルより選択され;かつ
Gは、-C(O)(CH2)5NH-CPP、-C(O)(CH2)2NH-CPP、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP、および-C(O)CH2NH-CPPより選択される細胞透過性ペプチド(「CPP」)およびリンカー部分であるか、またはGは、式:
であり、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合している。
【0121】
アンチセンスオリゴマーは、当技術分野において公知の、本明細書に引用された参照に記載された方法を用いて、段階的固相合成によって調製され得る。
【0122】
B.細胞透過性ペプチド
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、細胞透過性ペプチド(CPP)にコンジュゲートされる。いくつかの態様において、CPPは、アルギニンリッチペプチドである。「アルギニンリッチ担体ペプチド」とは、CPPが、任意で、1個または複数個の非荷電疎水性残基によって各々分離されている、少なくとも2個、好ましくは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個のアルギニン残基を有し、任意で、約6~14個のアミノ酸残基を含有していることを意味する。図1F~1Hは、5'および3'のPMOコンジュゲートを含む、実施例において使用されたCPP-PMOコンジュゲートの例示的な化学構造を示す。
【0123】
例示的なCPPは、表C1に提供される(SEQ ID NO:21~35)。
【0124】
(表C1)例示的な細胞透過性ペプチド
Xは6-アミノヘキサン酸であり;Bはβアラニンであり;Fはフェニルアラニンであり;Yはチロシンであり;Gはグリシンであり;Rはアルギニンである。
【0125】
いくつかの態様において、CPPは、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、または5アミノ酸のリンカーを介して、そのC末端で、オリゴマーの3'末端または5'末端に連結される。
【0126】
CPP、その合成、およびCPPをオリゴマーにコンジュゲートする方法は、例えば、全て、参照によってその全体が組み入れられる国際特許出願公報番号WO 2004/097017、同WO 2009/005793、および同WO 2012/150960に詳述されている。
【0127】
いくつかの態様において、CPPは、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、または5アミノ酸のリンカーを介して、そのC末端で、オリゴマーの3'末端または5'末端に連結される。式(I)~(VI)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、具体的な態様において、リンカーは、-C(O)(CH2)5NH-CPP(Xリンカー)、-C(O)(CH2)2NH-CPP(Bリンカー)、-C(O)(CH2)2NHC(O)(CH2)5NH-CPP(XBペプチドリンカー)、および-C(O)CH2NH-CPP(Gリンカー)、または式:
を含み得、ここで、CPPは、CPPカルボキシ末端でアミド結合によってリンカー部分に結合している。式(I)~(VI)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、本開示のいくつかの態様において、Gは、SEQ ID NO:23~24および28~34より選択される。式(I)~(VI)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、様々な態様において、CPPは、SEQ ID NO:21、22、25~27、および35より選択される。
【0128】
式(I)~(VI)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、いくつかの態様において、CPPは、
より選択され、ここで、RaはH、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される。
【0129】
式(I)~(VI)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、いくつかの態様において、Gは、
より選択され、ここで、RaはH、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択される。
【0130】
様々な局面において、本開示のアンチセンスオリゴマーまたはその薬学的に許容される塩は、
より選択される式(VII)のアンチセンスオリゴマーを含み、ここで、Xは9~38の整数であり、RaはH、アセチル、ベンゾイル、およびステアロイルより選択され、かつRbはH、アセチル、ベンゾイル、ステアロイル、トリチル、および4-メトキシトリチルより選択され、かつNuは各々、一緒になって前記のターゲティング配列を形成するプリンまたはピリミジンの塩基対合部分である。
【0131】
C.アンチセンスオリゴマーのターゲティング配列
式(I)~(VII)のアンチセンスオリゴマー化合物を含む、本開示のアンチセンスオリゴマーの様々な態様において、ターゲティング配列は、生化学的経路および/もしくは細胞過程に関連したタンパク質をコードする細菌mRNA標的配列に、またはrRNA標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる。いくつかの態様において、標的配列は、細菌mRNAの翻訳開始コドン、および/または細菌mRNAの翻訳開始コドンの上流もしくは下流の約30塩基内の配列を含む。
【0132】
様々な態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、脂肪酸生合成タンパク質である。いくつかの態様において、脂肪酸生合成タンパク質は、アシルキャリアータンパク質である。ある種の態様において、アシルキャリアータンパク質は、AcpPであり得る。いくつかの態様において、脂肪酸生合成タンパク質は、アシルキャリアータンパク質合成酵素である。ある種の態様において、アシルキャリアータンパク質合成酵素は、FabBであり得る。いくつかの態様において、脂肪酸生合成タンパク質は、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼのカルボキシルトランスフェラーゼαサブユニットであり得る。ある種の態様において、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼのカルボキシルトランスフェラーゼαサブユニットは、AccAであり得る。いくつかの態様において、標的配列は、SEQ ID NO:1~3であり得、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)である。ある種の態様において、ターゲティング配列は、表1Aのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~3)のうちの少なくとも1種類を含むかもしくはそれからなるか、表1Aのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~3)の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むかもしくはそれからなるか、または表1Aのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:1~3)との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むかもしくはそれからなり、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)である。
【0133】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、ペプチドグリカン生合成タンパク質であり得る。ある種の態様において、ペプチドグリカン生合成タンパク質は、UDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼであり得る。具体的な態様において、UDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼは、MurAであり得る。
【0134】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、リボソームタンパク質である。いくつかの態様において、リボソームタンパク質は、50Sリボソームタンパク質L28である。いくつかの態様において、50Sリボソームタンパク質L28は、RpmBである。ある種の態様において、リボソームタンパク質は、30Sリボソームタンパク質である。いくつかの態様において、30Sリボソームタンパク質は、RpsJである。
【0135】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、リボソームRNA(rRNA)である。rRNAの例には、5S rRNA、16S rRNA、および23S rRNAが含まれる。いくつかの態様において、rRNAは、16S rRNAである。ある種の態様において、rRNAは、23S rRNAである。
【0136】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、DNAまたは染色体の複製タンパク質である。ある種の態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、トポイソメラーゼである。いくつかの態様において、トポイソメラーゼは、GyrAである。ある種の態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、ヘリカーゼである。いくつかの態様において、ヘリカーゼは、DnaBである。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製タンパク質は、DNAポリメラーゼである。いくつかの態様において、DNAポリメラーゼは、PolBである。
【0137】
ある種の態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、リポ多糖生合成タンパク質である。いくつかの態様において、リポ多糖生合成タンパク質は、N-アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素である。いくつかの態様において、N-アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素は、LpxCである。
【0138】
様々な態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、細胞エネルギーホメオスタシスタンパク質である。いくつかの態様において、細胞エネルギーホメオスタシスタンパク質は、アデニル酸キナーゼである。ある種の態様において、アデニル酸キナーゼは、Adkである。
【0139】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、タンパク質生合成タンパク質である。ある種の態様において、タンパク質生合成タンパク質は、翻訳開始因子である。様々な態様において、翻訳開始因子は、InfAである。
【0140】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、細胞分裂タンパク質である。ある種の態様において、細胞分裂タンパク質は、細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質である。例えば、いくつかの態様において、細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質は、FtsZである。
【0141】
ある種の態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、RNA合成タンパク質である。いくつかの態様において、RNA合成タンパク質は、RNAポリメラーゼのσD因子である。例えば、ある種の態様において、RNAポリメラーゼのσD因子は、RpoDである。
【0142】
いくつかの態様において、生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質は、芳香族化合物生合成タンパク質である。ある種の態様において、芳香族化合物生合成タンパク質は、コリスミ酸合成酵素(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸ホスホリアーゼ)である。例えば、いくつかの態様において、コリスミ酸合成酵素(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸ホスホリアーゼ)は、AroCである。
【0143】
いくつかの態様において、抗生物質耐性に関連したタンパク質は、BlaT、Cml、およびAdeAのうちの1種類または複数種類より選択される。
【0144】
生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質がムレイン生合成タンパク質、細胞分裂タンパク質、全般的遺伝子制御タンパク質、脂肪酸生合成タンパク質、リボソームタンパク質、リボソームRNA(rRNA)、DNA/染色体複製タンパク質、転写タンパク質、翻訳開始タンパク質、リポ多糖生合成タンパク質、核酸生合成タンパク質、中間代謝タンパク質、RNA生合成タンパク質、タンパク質生合成タンパク質、ペプチドグリカン生合成タンパク質、細胞エネルギーホメオスタシスタンパク質、芳香族化合物生合成タンパク質、ならびに抗生物質耐性タンパク質、または本明細書に記載されたその他のタンパク質であり得る、いくつかの態様において、ターゲティング配列は、表1Bに示されたターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:4~20)のうちの少なくとも1種類を含むかもしくはそれからなるか、表1Bのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:4~20)の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片を含むかもしくはそれからなるか、または表1Bのターゲティング配列(例えば、SEQ ID NO:4~20)との少なくとも80%の配列同一性を有するバリアントを含むかもしくはそれからなり、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)である。
【0145】
式(I)~(VII)のアンチセンスオリゴマー化合物を含むある種の態様において、ターゲティング配列は、
より選択され、ここで、Xは9であり、チミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)であり得る。
【0146】
式(I)~(VII)のアンチセンスオリゴマー化合物を含むある種の態様において、ターゲティング配列は、
より選択され、ここで、Xは9であり、かつチミン塩基(T)は任意でウラシル塩基(U)であり得る。
【0147】
D.例示的なアンチセンスオリゴマー
本開示の例示的なアンチセンスオリゴマー(AON)には、下記表2AおよびBに記載されるものが含まれる。
【0148】
(表2A)例示的な脂肪酸生合成関連のターゲティング配列AON
【0149】
(表2B)その他の生化学的経路、細胞過程、および/または抗生物質耐性を標的とする例示的なAON
【0150】
IV.使用の方法および製剤
本開示の態様は、生化学的経路、細胞過程、および/または抗生物質耐性に関連した1種類または複数種類の細菌タンパク質の発現および活性を低下させるため、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーを使用する方法を含む。ある種の態様は、細菌の複製、増殖、または成長を低下させるため、例えば、対象における細菌感染症を処置するために、単独でまたは1種類もしくは複数種類の付加的な抗菌物質と組み合わせて、アンチセンスオリゴマーを使用する方法を含む。いくつかの場合において、アンチセンスオリゴマーは、1種類または複数種類の抗菌物質に対する細菌の感受性を増大させる。
【0151】
典型的には、薬学的に許容される担体と組み合わせて、アンチセンスオリゴマーを含む薬学的組成物も含まれる。ある種の薬学的組成物は、1種類または複数種類の抗菌物質をさらに含んでいてよい。本明細書に提供される方法は、インビトロまたはインビボで実施され得る。
【0152】
例えば、ある種の態様は、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーまたは薬学的組成物を、それを必要とする対象(例えば、細菌感染症を有するかまたはそのリスクを有する対象)へ投与する工程を含む、対象における細菌感染症を処置する方法を含む。細菌を本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーと接触させる工程を含む、細菌の複製を低下させる方法も含まれる。
【0153】
いくつかの態様において、細菌は、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、およびエシェリキア属より選択される。
【0154】
クレブシエラ属は、クレブシエラ属関連病原の大部分の原因となる種、肺炎桿菌を含む、グラム陰性、非運動性、被包性、ラクトース発酵性、通性嫌気性、桿状の細菌の属である。
【0155】
シュードモナス属は、皮膚、土壌、および水に一般的に見出されるグラム陰性、好気性、桿状の細菌の属である。この属には、シュードモナス属関連感染症の大部分の原因となる日和見病原体である種、緑膿菌が含まれる。それは、特に、重度の熱傷を有する患者、ならびに免疫が抑制されている癌患者およびエイズ患者において、尿路感染症、呼吸器感染症、皮膚炎、軟部組織感染症、菌血症、骨および関節の感染症、胃腸感染症、ならびに多様な全身感染症を引き起こす。緑膿菌感染症は、癌、嚢胞性繊維症、および熱傷を有する入院患者における深刻な問題である。
【0156】
アシネトバクター属は、ガンマプロテオバクテリアの綱に属するグラム陰性菌の属である。臨床的に関連するアシネトバクター属コンプレックスの例には、アシネトバクター・カルコアセティカス(calcoaceticus)-バウマンニコンプレックス(グルコース酸化性、非溶血性)、アシネトバクター・ルオフィ(lwoffii)(グルコース陰性、非溶血性)、およびアシネトバクター・ヘモリチカス(haemolyticus)(溶血性)が含まれる。具体例には、アシネトバクター・バウマンニが含まれる。
【0157】
エシェリキア属は、腸内細菌科のグラム陰性、非胞子形成性、通性嫌気性、桿状の細菌の属であり、エシェリキア属関連病原の大部分の原因となる種、大腸菌を含む。
【0158】
従って、いくつかの態様において、細菌は、クレブシエラ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、またはエシェリキア属の上記メンバーのいずれかである。具体的な態様において、細菌は、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、または大腸菌である。いくつかの態様において、細菌は、表E1の株のうちの1種類または複数種類より選択される。
【0159】
ある種の態様において、細菌は、細菌の多種薬剤耐性(MDR)株である。多剤耐性(MDR)、多種薬剤耐性、または多耐性とは、疾患を引き起こす微生物(細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫)が、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬物療法、抗寄生虫薬等のような別個の抗菌剤に抵抗することを可能にする状態である。具体的な態様において、細菌は、広範囲薬剤耐性(XDR)または汎薬剤耐性(PDR)である。いくつかの態様において、細菌は、広域スペクトルβラクタマーゼ(ESBL)産生グラム陰性菌、または多種薬剤耐性グラム陰性桿(MDR GNR)MDRGN菌である。具体的な態様において、細菌は、MDRクレブシエラ属、例えば、MDR肺炎桿菌、またはMDRシュードモナス属、例えば、MDR緑膿菌である。いくつかの態様において、細菌は、MDRエシェリキア属、例えば、MDR大腸菌、またはMDRアシネトバクター属、例えば、MDRアシネトバクター・バウマンニである。
【0160】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、acpP遺伝子、accA遺伝子、acpS遺伝子、および/またはfab遺伝子、例えば、fabBのような脂肪酸生合成遺伝子(ならびに関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、アシルキャリアータンパク質をコードするacpP遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、細菌は、アセチル補酵素AカルボキシラーゼのカルボキシルトランスフェラーゼαサブユニットをコードするaccA遺伝子を含むかまたは発現する。いくつかの態様において、細菌は、キャリアータンパク質合成酵素をコードするfabB遺伝子を含むかまたは発現する。
【0161】
いくつかの態様において、脂肪酸生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、acpP、fabB)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、脂肪酸生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、acpP、fabB)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、脂肪酸生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、acpP、fabB)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、脂肪酸生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、acpP、fabB)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、それを必要とする対象は、免疫低下状態にある。ある種の態様において、それを必要とする対象は、免疫低下状態にあり、肺炎、嚢胞性繊維症(CF)、または慢性肉芽腫症(CGD)のような基礎肺疾患を有する。
【0162】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、ペプチドグリカン生合成遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、UDP-N-アセチルグルコサミン1-カルボキシビニルトランスフェラーゼをコードするmurA遺伝子を含むかまたは発現する。いくつかの態様において、1種類または複数種類のペプチドグリカン生合成遺伝子(例えば、murA)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のペプチドグリカン生合成遺伝子(例えば、murA)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のペプチドグリカン生合成遺伝子(例えば、murA)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、1種類または複数種類のペプチドグリカン生合成遺伝子(例えば、murA)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0163】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、リボソームタンパク質遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、50Sリボソームタンパク質L28をコードするrpmB遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、細菌は、30Sリボソームタンパク質をコードするrpsJ遺伝子を含むかまたは発現する。いくつかの態様において、1種類または複数種類のリボソームタンパク質遺伝子(例えば、rpmB、rpsJ)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のリボソームタンパク質遺伝子(例えば、rpmB、rpsJ)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のリボソームタンパク質遺伝子(例えば、rpmB、rpsJ)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、1種類または複数種類のリボソームタンパク質遺伝子(例えば、rpmB、rpsJ)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0164】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、細胞ホメオスタシス遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、アデニル酸キナーゼをコードするadk遺伝子を含むかまたは発現する。生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、タンパク質生合成遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、翻訳開始因子をコードするinfA遺伝子を含むかまたは発現する。
【0165】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、細胞分裂遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、細菌細胞分裂の隔壁に将来なる部位において集合して環を構築するタンパク質をコードするftsZ遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、細胞分裂に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、ftsZ)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、細胞分裂に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、ftsZ)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、細胞分裂に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、ftsZ)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、細胞分裂に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、ftsZ)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0166】
DNAまたは染色体の複製に関連した遺伝子の例には、トポイソメラーゼおよびヘリカーゼ(ならびに関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、トポイソメラーゼをコードするgyrA遺伝子を含むかまたは発現する。いくつかの態様において、細菌は、ヘリカーゼをコードするdnaB遺伝子を含むかまたは発現する。いくつかの態様において、細菌は、DNAポリメラーゼをコードするpolB遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、DNAまたは染色体の複製に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、gyrA、dnaB、polB)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、gyrA、dnaB、polB)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、DNAまたは染色体の複製に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、gyrA、dnaB、polB)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、DNAまたは染色体の複製に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、gyrA、dnaB、polB)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0167】
リポ多糖生合成に関連した遺伝子の例には、N-アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素のような脱アセチル化酵素が含まれる。具体的な態様において、細菌は、N-アセチルグルコサミン脱アセチル化酵素をコードするlpxC遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、リポ多糖生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、lpxC)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、リポ多糖生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、lpxC)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、リポ多糖生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、lpxC)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、リポ多糖生合成に関連した1種類または複数種類の遺伝子(例えば、lpxC)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0168】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、RNA合成遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、RNAポリメラーゼのσD因子をコードするrpoD遺伝子を含むかまたは発現する。具体的な態様において、1種類または複数種類のRNA合成遺伝子(例えば、rpoD)を含むかまたは発現する細菌は、クレブシエラ属種、例えば、肺炎桿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のRNA合成遺伝子(例えば、rpoD)を含むかまたは発現する細菌は、シュードモナス属種、例えば、緑膿菌である。いくつかの態様において、1種類または複数種類のRNA合成遺伝子(例えば、rpoD)を含むかまたは発現する細菌は、アシネトバクター属種、例えば、アシネトバクター・バウマンニである。具体的な態様において、1種類または複数種類のRNA合成遺伝子(例えば、rpoD)を含むかまたは発現する細菌は、エシェリキア属種、例えば、大腸菌である。
【0169】
生化学的経路および/または細胞過程に関連した遺伝子の例には、芳香族化合物生合成遺伝子(および関連タンパク質)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、コリスミ酸合成酵素(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸ホスホリアーゼ)をコードするaroC遺伝子を含むかまたは発現する。
【0170】
いくつかの態様において、細菌は、1種類または複数種類の抗生物質耐性遺伝子を含む(例えば、コードする)。抗生物質耐性遺伝子(および関連タンパク質)の一般的な例には、ある種の抗菌物質を酵素的に非活性化することができるβラクタマーゼおよび抗菌物質の透過性または能動排出(汲み出し)を増大させる遺伝子/タンパク質が含まれる。抗生物質耐性遺伝子の具体例には、TEMβラクタマーゼ(blaT)、クロラムフェニコール耐性遺伝子cml、および耐性-小結節形成-細胞分裂(RND)型多種薬剤排出ポンプサブユニットAdeA(adeA)が含まれる。具体的な態様において、細菌は、blaT、cml、およびadeAより選択される少なくとも1種類の抗生物質耐性遺伝子を含むかまたは発現する肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター属種、または大腸菌である。
【0171】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、細菌における生化学的経路、細胞過程、および/または抗生物質耐性に関連した遺伝子の発現を低下させる。例えば、いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、対照(例えば、アンチセンスオリゴマーの欠如、スクランブルオリゴマー、オリゴマーとの接触前)と比べて、約もしくは少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)、または対照と比べて、約もしくは少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1000倍もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)発現を低下させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、AcpP、FabB、AccA、MurA、RpmB、RpsJ、Adk、InfA、16S rRNA、30S rRNA、GyrA、DnaB、PolB、FtsZ、LpxC、RpoD、AroC、BlaT、Cml、および/またはAdeAのうちの1種類または複数種類の発現を低下させ、細菌は、AcpP、FabB、AccA、MurA、RpmB、RpsJ、Adk、InfA、16S rRNA、30S rRNA、GyrA、DnaB、PolB、FtsZ、LpxC、RpoD、AroC、BlaT、Cml、および/またはAdeAのうちの1種類または複数種類を含むかまたは発現するクレブシエラ属種、シュードモナス属種、アシネトバクター属種、またはエシェリキア属種である。遺伝子またはタンパク質の発現は、インビトロ(例えば、実施例を参照すること)またはインビボで測定され得る。
【0172】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、細菌の成長を低下させるかまたは阻害する。例えば、いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、細菌の成長を、対照(例えば、アンチセンスオリゴマーの欠如、スクランブルオリゴマー、オリゴマーとの接触前)と比べて、約もしくは少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)、または対照と比べて、約もしくは少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1000倍もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)低下させる。細菌の成長は、インビトロ(例えば、実施例を参照すること)またはインビボで測定され得る。具体的な態様において、細菌の成長を低下させるアンチセンスオリゴマーは、AcpP、FabB、AccA、MurA、RpmB、RpsJ、Adk、InfA、16S rRNA、30S rRNA、GyrA、DnaB、PolB、FtsZ、LpxC、RpoD、AroC、BlaT、Cml、および/またはAdeAのうちの1種類または複数種類より選択される生化学的経路および/または細胞過程に関連したタンパク質の発現に対してターゲティングされ、細菌は、AcpP、FabB、AccA、MurA、RpmB、RpsJ、Adk、InfA、16S rRNA、30S rRNA、GyrA、DnaB、PolB、FtsZ、LpxC、RpoD、AroC、BlaT、Cml、および/またはAdeAのうちの1種類または複数種類を含むかまたは発現するクレブシエラ属種、シュードモナス属種、アシネトバクター属種、またはエシェリキア属種である。いくつかの態様において、本明細書に記載されるように、アンチセンスオリゴマーは、例えば、細菌の成長を低下させるため(例えば、相乗的に低下させるため)、1種類または複数種類の抗菌物質と組み合わせて用いられる。
【0173】
いくつかの態様において、方法は、インビボで実施され、それを必要とする対象、例えば、本明細書に記載された細菌のうちの1種類または複数種類に感染しているかまたは感染するリスクを有する、それを必要とする対象へ、アンチセンスオリゴマーを投与する工程を含む。従って、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載された細菌のいずれかによる感染症を(予防的にまたは治療的に)処置するために、対象へ投与され得る。そのような処置と共に、薬理ゲノミクス(例えば、個体の遺伝子型/表現型と、外来の化合物または薬物に対する個体の応答との間の関係の研究)を考慮することができる。治療薬の代謝の違いは、薬理学的活性を有する薬物の用量と血中濃度との間の関係を改変することによって、重度の毒性または治療の失敗をもたらす場合がある。
【0174】
従って、医師または臨床医は、治療剤を投与すべきか否かの決定においても、治療剤による処置の投薬量および/または治療計画のテーラリングにおいても、関連する薬理ゲノミクス研究において入手された知識の適用を考慮することができる。
【0175】
アンチセンスオリゴマーの標的核酸への効果的な送達は、処置の一つの局面である。アンチセンスオリゴマー送達の経路には、経口および非経口の経路を含む様々な全身性の経路、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、および筋肉内が含まれ、吸入、経皮、および局所送達も含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な経路は、処置を受ける対象の状態にとって適切であるよう、当業者によって決定され得る。血管循環または血管外循環、血液またはリンパ系、および脳脊髄液は、アンチセンスオリゴマーが導入され得るいくつかの非限定的な部位である。直接CNS送達が用いられてもよく、例えば、脳内、脳室内、またはくも膜下腔内への投与が、投与の経路として使用され得る。
【0176】
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、経皮的な方法によって(例えば、任意で、そのようなアンチセンスオリゴマーがリポソームへパッケージングされる、アンチセンスオリゴマーの、例えば、乳濁液への組み入れを介して)送達され得る。そのような経皮的な送達方法および乳濁液/リポソームによって媒介される送達方法は、当技術分野において、例えば、その内容が全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,965,025号に、アンチセンスオリゴマーの送達のため、記載されている。
【0177】
本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーは、植込み型装置を介して送達されてもよい。そのような装置の設計は、当技術分野において認識されている過程であり、例えば、合成インプラント設計は、例えば、その内容が参照によって組み入れられる米国特許第6,969,400号に記載されている。
【0178】
アンチセンスオリゴマーは、当技術分野において認識されている技術(例えば、トランスフェクション、電気穿孔、融合、リポソーム、コロイド性ポリマー粒子、ならびにウイルスベクターおよび非ウイルスベクター、ならびに当技術分野において公知のその他の手段)を使用して、細胞へ導入され得る。選択される送達の方法は、少なくとも、オリゴマーの化学、処置される細胞、および細胞の位置に依り、当業者には明白であろう。例えば、局在化は、リポソームを差し向けるための特異的マーカーを表面上に有するリポソーム、標的細胞を含有している組織への直接注射、特異的な受容体によって媒介される取り込み等によって達成され得る。
【0179】
当技術分野において公知であるように、アンチセンスオリゴマーは、例えば、リポソームによって媒介される取り込み、脂質コンジュゲート、ポリリシンによって媒介される取り込み、ナノ粒子によって媒介される取り込み、および受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを使用して送達され得、微量注入、透過処理(例えば、ストレプトリジンOによる透過処理、陰イオン性ペプチドによる透過処理)、電気穿孔、および当技術分野において公知の様々な非侵襲的な非エンドサイトーシス送達方法のような付加的な非エンドサイトーシス送達モードを使用しても送達され得る(例えば、参照によってその全体が組み入れられるDokka and Rojanasakul,Advanced Drug Delivery Reviews 44:35-49を参照すること)。
【0180】
アンチセンスオリゴマーは、生理学的にかつ/または薬学的に許容される任意の便利な媒体または担体で投与され得る。そのような組成物は、当業者によって用いられる多様な標準的な薬学的に許容される担体のいずれかを含んでいてよい。例には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水、水性エタノール、油/水乳濁液またはトリグリセリド乳濁液のような乳濁液、錠剤、およびカプセルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な生理学的に許容される担体の選択は、選択された投与のモードに依って変動するであろう。「薬学的に許容される担体」とは、薬学的な投与と適合性の全ての溶媒、分散媒、コーティング、殺菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含むものとする。薬学的活性を有する物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野において周知である。従来の媒体または剤が、活性化合物と非適合性でない限り、組成物中に使用されることが企図される。補足的な活性化合物を組成物へ組み入れることもできる。
【0181】
本明細書に記載された化合物(例えば、アンチセンスオリゴマー、抗菌物質)は、一般に、遊離酸または遊離塩基として用いられ得る。あるいは、本明細書に記載された化合物は、酸付加塩または塩基付加塩の形態で使用されてもよい。本明細書に記載された遊離アミノ化合物の酸付加塩は、当技術分野において周知の方法によって調製され得、有機酸および無機酸から形成され得る。適切な有機酸には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸、およびベンゼンスルホン酸が含まれる。
【0182】
適切な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸が含まれる。塩基付加塩には、カルボキシレート陰イオンによって形成された塩が含まれ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、およびカルシウム)より選択されるもののような有機および無機の陽イオン、ならびにアンモニウムイオンおよびその置換誘導体(例えば、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム等)によって形成された塩が含まれる。従って、「薬学的に許容される塩」という用語は、全ての許容される塩型を包含するものとする。
【0183】
さらに、プロドラッグも、本開示の情況において含まれる。プロドラッグとは、そのようなプロドラッグが患者へ投与された時にインビボで化合物を放出する共有結合で結合した担体である。プロドラッグは、一般に、ルーチンの操作によってまたはインビボで修飾が切断され、親化合物を与えるよう、官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、例えば、患者へ投与された時にヒドロキシ基、アミン基、またはスルフヒドリル基が形成されるよう切断される、任意の基に、ヒドロキシ基、アミン基、またはスルフヒドリル基が結合している本開示の化合物が含まれる。従って、プロドラッグの代表例には、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーのアルコール官能基およびアミン官能基の酢酸誘導体、ギ酸誘導体、および安息香酸誘導体が含まれる(が、これらに限定されるわけではない)。さらに、カルボン酸(-COOH)のケースにおいては、メチルエステル、エチルエステル等のようなエステルが用いられてもよい。
【0184】
いくつかの場合において、アンチセンスオリゴマーの細胞への取り込みを促進するため、リポソームが用いられてもよい(例えば、Williams,S.A.,Leukemia 10(12):1980-1989,1996;Lappalainen et al.,Antiviral Res.23:119,1994;Uhlmann et al.,antisense oligomers:a new therapeutic principle,Chemical Reviews,Volume 90,No.4,25 pages 544-584,1990;Gregoriadis,G .,Chapter 14,Liposomes,Drug Carriers in Biology and Medicine,pp.287-341,Academic Press,1979を参照すること)。例えば、WO 93/01286に記載されるように、ヒドロゲルもアンチセンスオリゴマー投与のための媒体として使用され得る。あるいは、オリゴマーは、マイクロスフェアまたは微粒子で投与されてもよい(例えば、Wu,G.Y.and Wu,C.H.,J.Biol.Chem.262:4429-4432,30 1987を参照すること)。あるいは、米国特許第6,245,747号に記載されるように、アンチセンスオリゴマーと複合体化されたガス充填マイクロバブルの使用は、標的組織への送達を増強することができる。徐放組成物も使用され得る。これらには、フィルムまたはマイクロカプセルのような成形された物体の形態の半透性ポリマーマトリックスが含まれ得る。
【0185】
ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、適切な薬学的担体で、細菌感染症(例えば、抗生物質耐性またはMDR細菌感染症)の症状を示す哺乳動物対象、例えば、ヒトまたは家畜へ投与される。いくつかの局面において、対象は、ヒト対象、例えば、細菌感染症を有すると診断された患者である。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、薬学的に許容される担体に含有され、経口送達される。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、薬学的に許容される担体に含有され、静脈内(i.v.)送達される。
【0186】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも200~400nMアンチセンスオリゴマーのピーク血中濃度をもたらすために有効な量および様式で投与される。典型的には、アンチセンスオリゴマーは、単回投与されるか、または、約1~2週間、一般に、一定の間隔で、複数回投与される。経口投与のある種の用量は、70kg当たり約1~1000mgオリゴマーである。いくつかのケースにおいて、1000mgオリゴマー/患者を越える用量が必要であり得る。i.v.投与のため、いくつかの用量は、70kg当たり約0.5mg~1000mgオリゴマーである。アンチセンスオリゴマーは、短期間、例えば、2週間またはそれ未満の間、一定の間隔で、毎日投与されてもよい。しかしながら、いくつかのケースにおいて、アンチセンスオリゴマーは、より長い期間にわたり断続的に投与される。投与は、本明細書に記載される抗菌剤(例えば、抗生物質)の投与またはその他の治療的処置の前になされてもよいか、または同時になされてもよい。処置計画は、イムノアッセイ、その他の生化学的試験、および処置を受けている対象の生理学的調査の結果に基づき示されるように調整され得る(用量、頻度、経路等)。
【0187】
本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーを使用する有効なインビボ処置計画は、継続時間、用量、頻度、および投与経路、ならびに処置を受けている対象の状態(即ち、予防的な投与であるか、局所感染または全身感染に応じた投与であるか)に依って変動し得る。従って、そのようなインビボの治療は、しばしば、最適の治療成績を達成するため、処置を受けている障害または細菌感染症の具体的な型にとって適切な試験によるモニタリング、および用量または処置計画の対応する調整を含むであろう。
【0188】
処置は、例えば、当技術分野において公知の疾患の一般的な指標によってモニタリングされ得る。インビボ投与された本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーの有効性は、アンチセンスオリゴマーの投与の前、途中、および後に対象から採取された生物学的試料(組織、血液、尿等)から決定され得る。そのような試料のアッセイには、(1)当業者に公知の手法、例えば、電気泳動ゲル移動度アッセイを使用した、標的配列および非標的配列とのヘテロ二重鎖形成の存在または欠如のモニタリング;(2)RT-PCR、ノーザンブロッティング、ELISA、またはウエスタンブロッティングのような標準的な技術によって決定される、参照の正常なmRNAまたはタンパク質と比べた変異体mRNAの量のモニタリングが含まれる。
【0189】
V.組み合わせ治療
ある種の態様は、組み合わせ治療、例えば、抗生物質のような抗菌物質と組み合わせたアンチセンスオリゴマーの投与を含む。組み合わせ治療は、例えば、1種類または複数種類の抗菌物質に対する所定の細菌の感度または感受性を増大させ、それによって、治療成績(例えば、感染症の消散)を改善するため、用いられ得る。同様に、ある種の組み合わせ治療は、例えば、1種類または複数種類の抗菌物質に対する所定の細菌の耐性を低下させるかまたは逆転させるために用いられ得る。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、所定の細菌に対する抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)を低下させる。ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーおよび抗菌物質は、細菌成長の低下および/または細菌細胞死滅の増大において相乗作用を示す。アンチセンスオリゴマーと抗生物質のような抗菌物質とを含む本明細書に記載される薬学的組成物も含まれる。
【0190】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーおよび抗菌物質は、別々に投与される。ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーおよび抗菌物質は、連続的に投与される。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーおよび抗菌物質は、同時に、例えば、同一のまたは異なる薬学的組成物の一部として投与される。
【0191】
アンチセンスオリゴマーと組み合わせて投与され得る抗菌物質(例えば、抗生物質)の例には、カルバペネム系、ペニシリンおよびペニシリン誘導体(またはペネム系)、アンピシリン、クロラムフェニコール、セファロスポリン系(例えば、セファセトリル(Cefacetrile)(セファセトリル(cephacetrile))、セファドロキシル(Cefadroxil)(セファドロキシル(cefadroxyl);Duricef)、セファレキシン(Cephalexin)(セファレキシン(cefalexin);Keflex)、セファログリシン(Cefaloglycin)(セファログリシン(cephaloglycin))、セファロニウム(Cefalonium)(セファロニウム(cephalonium))、セファロリジン(セファロラジン(cephaloradine))、セファロチン(Cefalotin)(セファロチン(cephalothin);Keflin)、セファピリン(Cefapirin)(セファピリン(cephapirin);Cefadryl)、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン(Cefazolin)(セファゾリン(cephazolin);Ancef、Kefzol)、セフラジン(Cefradine)(セフラジン(cephradine);Velosef)、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル(Ceclor、Distaclor、Keflor、Raniclor)、セフォニシド(Monocid)、セフプロジル(Cefprozil)(セフプロキシル(cefproxil);Cefzil)、セフロキシム(Zefu、Zinnat、Zinacef、Ceftin、Biofuroksym、Xorimax)、セフゾナム、セフメタゾール、セフォテタン、セフォキシチン、ロラカルベフ(Lorabid);セファマイシン系:セフブペラゾン、セフメタゾール(Zefazone)、セフミノクス、セフォテタン(Cefotan)、セフォキシチン(Mefoxin)、セフォチアム(Pansporin)、セフカペン、セフダロキシム(Cefdaloxime)、セフジニル(Sefdin、Zinir、Omnicef、Kefnir)、セフジトレン、セフェタメト、セフィキシム(Fixx、Zifi、Suprax)、セフメノキシム、セフォジジム、セフォタキシム(Claforan)、セフォベシン(Cefovecin)(Convenia)、セフピミゾール、セフポドキシム(Vantin、PECEF)、セフテラム、セフチブテン(Cedax)、セフチオフル、セフチオレン(Ceftiolene)、セフチゾキシム(Cefizox)、セフトリアキソン(Rocephin)、セフォペラゾン(Cefobid)、セフタジジム(Meezat、Fortum、Fortaz)、ラタモキセフ(モキサラクタム)、セフクリジン(Cefclidine)、セフェピム(Maxipime)、セフルプレナム、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム(Cefrom)、セフキノム(Cefquinome)、フロモキセフ、セフトビプロール、セフタロリン、セファロラム(Cefaloram)、セファパロール(Cefaparole)、セフカネル(Cefcanel)、セフェドロロール(Cefedrolor)、セフェムピドン(Cefempidone)、セフェトリゾール(Cefetrizole)、セフィビトリル(Cefivitril)、セフマチレン、セフメピジウム(Cefmepidium)、セフォキサゾール(Cefoxazole)、セフロチル(Cefrotil)、セフスミド(Cefsumide)、セフチオキシド(Ceftioxide)、セフラセチム(Cefuracetime))、およびモノバクタム系(例えば、アズトレオナム、チゲモナム(tigemonam)、ノカルジン(nocardin)A、タブトキシン(tabtoxin))のようなβラクタム系抗生物質;トブラマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシンa、アミカシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシンB、ネオマイシンC、ネオマイシンE(パロモマイシン)、およびストレプトマイシンのようなアミノグリコシド系;テトラサイクリン、クロールテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、およびドキシサイクリンのようなテトラサイクリン系;スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファフラゾール、スルフイソミジン、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファモキソール、スルファダイメトキシン、スルファメトキシピリダジン、スルファメトキシジアジン、スルファドキシン、およびスルファメトピラジンのようなスルホンアミド系;シノキサシン、ナリジキシン酸、オキソリン酸(Uroxin)、ピロミド酸(Panacid)、ピペミド酸(Dolcol)、ロソクサシン(Eradacil)、シプロフロキサシン(Alcipro、Ciprobay、Cipro、Ciproxin、ultracipro)、エノキサシン(Enroxil、Penetrex)、フレロキサシン(Megalone、Roquinol)、ロメフロキサシン(Maxaquin)、ナジフロキサシン(Acuatim、Nadoxin、Nadixa)、ノルフロキサシン(Lexinor、Noroxin、Quinabic、Janacin)、オフロキサシン(Floxin、Oxaldin、Tarivid)、ペフロキサシン(Peflacine)、ルフロキサシン(Uroflox)、バロフロキサシン(balofloxacin)(Baloxin)、グレパフロキサシン(Raxar)、レボフロキサシン(Cravit、Levaquin、Tavanic)、パズフロキサシン(Pasil、Pazucross)、スパルフロキサシン(Zagam)、テマフロキサシン(Omniflox)、トスフロキサシン(Ozex、Tosacin)、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン(Zigat、Tequin)(Zymar-opth.)、ゲミフロキサシン(Factive)、モキシフロキサシン(Acflox Woodward、Avelox、Vigamox)、シタフロキサシン(Gracevit)、トロバフロキサシン(Trovan)、プルリフロキサシン(Quisnon)のようなキノロン系;エペレゾリド(eperezolid)、リネゾリド、ポシゾリド(posizolid)、ラデゾリド(radezolid)、ランベゾリド(ranbezolid)、ステゾリド(sutezolid)、およびテジゾリドのようなオキサゾリジノン系;ポリスポリン、ネオスポリン、ポリミキシンB、ポリミキシンE(コリスチン)のようなポリミキシン系;リファンピシンまたはリファンピン、リファブチン、リファペンチン、およびリファキシミンのようなリファマイシン系;フィダキソマイシンのようなリピアルマイシン系(lipiarmycins);アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン/酢酸ミデカマイシン、オレアンドマイシン、ソリスロマイシン(solithromycin)、スピラマイシン、およびトロレアンドマイシンのようなマクロライド系;リンコマイシン、クリンダマイシン、およびピルリマイシンのようなリンコサミド系;ダプトマイシンのような環式リポペプチド系;バンコマイシンおよびテイコプラニンのようなグリコペプチド系;チゲサイクリンのようなグリシルサイクリン系が含まれる。従って、上記の抗生物質のうちの1種類または複数種類を、本明細書に記載された細菌のいずれかの処置のため、本明細書に記載されたアンチセンスオリゴマーのいずれかと組み合わせることができる。
【0192】
いくつかの態様において、抗菌物質は、本明細書に記載されるアミノグリコシド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、およびβラクタム系抗生物質のうちの1種類または複数種類より選択される。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、acpPおよびfabBのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、脂肪酸生合成遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、murAのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、ペプチドグリカン生合成遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、rpmBおよびrpsJのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、リボソームタンパク質遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、ftsZのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、細胞分裂遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、gyrA、dnaB、およびpolBのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、DNAまたは染色体の複製遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、lpxCのうちの1種類または複数種類より選択される遺伝子を含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、リポ多糖生合成遺伝子の発現に対してターゲティングされる。これらおよび関連する態様のいくつかにおいて、細菌は、5S rRNA、16S rRNA、および23s rRNAのうちの1種類または複数種類より選択されるリボソームRNAを含むかまたは発現し、アンチセンスオリゴマーは、rRNAに対してターゲティングされる。具体的な態様において、細菌は、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター属種、または大腸菌であり、それらのMDR株を含む。
【0193】
いくつかの態様において、抗菌物質は、本明細書に記載されるβラクタム系抗生物質である。具体的な態様において、抗菌物質は、カルバペネム系である。カルバペネム系の例には、メロペネム、イミペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム、ビアペネム、ラズペネム、テビペネム、レナペネム、トモペネム、およびアンピシリンが含まれる。具体的な態様において、抗菌物質は、メロペネムである。具体的な態様において、抗菌物質は、セファロスポリン(セフェム系)、ペニシリンまたはペニシリン誘導体(ペネム系)である。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、メロペネムのようなカルバペネム系の、細菌、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、または大腸菌の株またはMDR株に対するMICを低下させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーとメロペネムのようなカルバペネム系との組み合わせは、細菌細胞成長を低下させる(例えば、相乗的に低下させる)か、または、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、もしくは大腸菌の株もしくはMDR株の細菌細胞死滅を増大させる(例えば、相乗的に増大させる)。
【0194】
いくつかの態様において、抗菌物質は、本明細書に記載されるアミノグリコシド系である。アミノグリコシド系の例には、トブラマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシンa、アミカシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシンB、ネオマイシンC、ネオマイシンE(パロモマイシン)、およびストレプトマイシンが含まれる。具体的な態様において、抗菌物質は、トブラマイシンである。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、トブラマイシンのようなアミノグリコシド系の、細菌、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、または大腸菌の株またはMDR株に対するMICを低下させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーとトブラマイシンのようなアミノグリコシド系との組み合わせは、細菌細胞成長を低下させる(例えば、相乗的に低下させる)か、または、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、もしくは大腸菌の株もしくはMDR株の細菌細胞死滅を増大させる(例えば、相乗的に増大させる)。
【0195】
ある種の態様において、抗菌物質は、コリスチン(ポリミキシンE)、ポリスポリン、ネオスポリン、またはポリミキシンBのようなポリミキシン系である。具体的な態様において、抗菌物質は、コリスチンである。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、コリスチンのようなポリミキシン系の、細菌、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、または大腸菌の株またはMDR株に対するMICを低下させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーとコリスチンのようなポリミキシン系との組み合わせは、細菌細胞成長を低下させる(例えば、相乗的に低下させる)か、または、例えば、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、もしくは大腸菌の株もしくはMDR株の細菌細胞死滅を増大させる(例えば、相乗的に増大させる)。
【0196】
ある種の態様において、抗菌物質は、セフタジジム、ドキシサイクリン、ピペラシリン、メロペネム、クロラムフェニコール、および/またはコトリモキサゾール(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)のうちの1種類または複数種類を含む。
【0197】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、抗菌物質に対する所定の細菌の感受性または感度を、単独の抗菌物質と比べて、増大させる。例えば、ある種の態様において、アンチセンスオリゴマーは、標的とされている細菌に対する抗菌物質の殺菌(細胞死滅)活性および/または静菌(成長遅延)活性を増大させることによって、抗菌物質に対する細菌の感受性または感度を、単独の抗菌物質と比べて、増大させる。具体的な態様において、アンチセンスオリゴマーは、感受性または感度を、単独の抗菌物質と比べて、約もしくは少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)、または単独の抗菌物質と比べて、約もしくは少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1000倍もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)増大させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、抗菌物質に対する所定の細菌の感受性または感度を、単独の抗菌物質と比べて、増大させる。いくつかの態様において、細菌は、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、もしくは大腸菌、またはそれらのMDR株である。
【0198】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、標的とされている細菌に対する抗菌物質の最小発育阻止濃度(MIC)を、単独の抗菌物質と比べて、低下させる。「最小発育阻止濃度」または「MIC」とは、一晩の(インビトロ)インキュベーション後の微生物の可視の成長を阻害する抗菌物質の最低濃度をさす。最小発育阻止濃度は、抗菌物質に対する微生物の耐性を確認するために診断実験室において重要であり、新しい抗菌物質の活性をモニタリングするためにも重要である。MICは、一般に、細菌生物に対する抗菌物質の活性の最も基本的な実験測定値と見なされる。従って、ある種の態様において、オリゴマーは、細菌に対する抗菌物質の最小発育阻止濃度(MIC)を、単独の抗菌物質と比べて、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、もしくは1000%もしくはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)低下させる。ある種の態様において、オリゴマーは、細菌に対する抗菌物質の最小発育阻止濃度(MIC)を、単独の抗菌物質と比べて、約または少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1000倍またはそれ以上(全ての中間の整数および範囲を含む)低下させる。いくつかの態様において、アンチセンスオリゴマーは、標的とされている細菌に対する抗菌物質のMICを、単独の抗菌物質と比べて、相乗的に低下させる。いくつかの態様において、細菌は、肺炎桿菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマンニ、もしくは大腸菌、またはそれらのMDR株である。
【0199】
VI.処置モニタリング方法
本明細書に記載された方法を含む所定の治療計画の有効性は、例えば、全血球計算(CBC)、核酸検出法、免疫診断試験、または細菌培養のような細菌感染症の一般的な指標によってモニタリングされ得る。
【0200】
いくつかの局面において、細菌感染症の同定およびモニタリングは、(1)核酸検出法、(2)血清学的検出法、即ち、従来のイムノアッセイ、(3)培養法、および(4)生化学的方法のうちの1種類または複数種類を含む。そのような方法は、定性的または定量的であり得る。
【0201】
核酸プローブを、公に入手可能な細菌核酸配列に基づき設計し、具体的な細菌型、例えば、具体的な種もしくは株に特異的であってもよいか、または細菌(即ち、グラム陽性菌もしくはグラム陰性菌)の複数の種もしくは型に共通であってもよい、細菌感染症を示す標的遺伝子または代謝物質(即ち、毒素)を検出するために使用することができる。核酸増幅試験(例えば、PCR)をそのような検出法において使用することもできる。
【0202】
血清学的同定は、生物学的標本、例えば、便、尿、脳脊髄液、血液等から単離された細菌試料または培養物を使用して達成され得る。細菌の検出のためのイムノアッセイは、一般に、当業者によってルーチンに用いられる方法、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットによって実施される。さらに、具体的な細菌の株または種に特異的なモノクローナル抗体がしばしば市販されている。
【0203】
培養法は、好気対嫌気(aerobic versus anaerobic)培養、様々な培養条件下での成長および形態学を含むが、これらに限定されるわけではない技術を用いることによって、具体的な細菌の型を単離し同定するために使用され得る。例示的な生化学的試験には、グラム染色(Gram,1884;グラム陽性菌は紫色に染色され、グラム陰性は赤色に染色される)、酵素分析、およびファージ型決定が含まれる。
【0204】
そのような診断的試験および定量的試験の正確な性質、ならびに細菌感染症を示す他の生理学的因子は、細菌標的、処置されている状態、処置が予防的であるか治療的であるかに依って変動することが理解されるであろう。
【0205】
対象が具体的な型の細菌感染症を有すると診断されたケースにおいては、処置を受けている具体的な型の細菌感染症をモニタリングするため、当業者によって典型的に使用される診断技術を使用して、細菌感染症の状態もモニタリングされる。
【0206】
PMOまたはPPMOによる処置計画は、イムノアッセイ、その他の生化学的試験、および処置を受けている対象の生理学的調査の結果に基づき示されたように調整され得る(用量、頻度、経路等)。
【0207】
以上より、本開示の様々な目的および特色が如何にして満たされるかが認識されるであろう。方法は、増強された細胞取り込みおよび抗菌作用を達成するため、様々なPPMOを使用して、細菌感染症、例えば、多種薬剤耐性(MDR)菌に対する治療の改善を提供する。結果として、薬物治療は、コストに関しても、必要とされる化合物の量に関しても、より効果的でより安価となる。
【0208】
一つの例示的な局面は、事実上任意の病原菌に対して有効な化合物が、容易に設計され、例えば、新しい薬剤耐性株に対する迅速な応答について試験され得ることである。
【0209】
以下の実施例は、本開示を例示するためのものであり、限定するためのものではない。本明細書中に言及された特許および非特許の参照は、各々、参照によってその全体が組み入れられる。
【実施例
【0210】
材料および方法
ペプチドとコンジュゲートされたホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー。PPMOは、以前に記載されたようにして(Tilley et al.,Antimicrob Agents Chemother 50:2789-2796,2006)、Sarepta Therapeutics Inc.(Cambridge,MA,USA)で合成され精製された。凍結乾燥PPMOを、超純水に溶解させ、無菌ろ過した。PPMOペプチドを、示されるように、オリゴマー配列の5'末端または3'末端のいずれかに結合させた。
【0211】
細菌。細菌株は、そうでないことが特記されない限り、clinical microbiology lab at UT Southwesternを通して入手された。
【0212】
最小発育阻止濃度アッセイ。最小発育阻止濃度(MIC)アッセイは、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)によって記載されたような微量希釈法を使用して、ミューラーヒントンII培地において実施された。培養物の光学濃度(OD)を、595~600nmでマイクロプレート分光光度計において読み取った。37℃における18~20時間の好気的成長(200~250rpm)の後、<0.06のODを有する100μl培養物を無成長として判定した。
【0213】
図表のソフトウェア。標準偏差および図式分析は、GraphPad Prism(登録商標)6ソフトウェア(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA,USA)で実施された。
【0214】
実施例1
肺炎桿菌の必須遺伝子の発現に対してターゲティングされたPPMOの活性
肺炎桿菌における多様な生化学的経路および細胞過程を代表する必須遺伝子の発現に対して、PPMOを設計し、合成し、試験した。これらには、ムレイン生合成、細胞分裂、全般的遺伝子制御機序、脂肪酸生合成、リボソームタンパク質、DNAの複製、転写、翻訳開始、リポ多糖生合成、核酸生合成、および中間代謝が含まれた。
【0215】
前記の方法(CLSI微量希釈アッセイ)に従って最小発育阻止濃度(MIC)を測定することによって、各PPMOを試験した。KPCカルバペネマーゼを発現する8種、NDM-1カルバペネマーゼを発現する5種、OXA-48カルバペネマーゼを発現する2種、および多種薬剤耐性(MDR)であるその他を含む、下記表E1に示される肺炎桿菌の38株のパネルを使用して、各PPMOのMICを試験した。
【0216】
(表E1)肺炎桿菌の株
【0217】
結果は図2に示される。少なくとも4種のPPMOが、8μMまたはそれ未満の濃度で株パネルの少なくとも75%の成長を阻害した(IC75)。
【0218】
これらのデータは、とりわけ、MDR株および抗生物質耐性遺伝子を発現するものを含む肺炎桿菌の多数の株の生化学的経路および細胞過程に対してターゲティングされたPPMOが、臨床的に適切な濃度で殺菌性であることを示す(例えば、8μMまたはそれ未満のIC75)。
【0219】
実施例2
リボソームRNAに対してターゲティングされたPPMOの活性
5S rRNA、16S rRNA、および23S rRNAの高度に保存された領域に位置付けることによって、リボソームRNA(rRNA)に対してターゲティングされたPPMOを設計した。次いで、各配列をヒトにおける等価なrRNAと整列化し、比較し、10塩基またはそれ以上の相補的マッチを有するPPMO配列を排除した。
【0220】
次いで、前記の方法(CLSI微量希釈アッセイ)に従って最小発育阻止濃度(MIC)を測定することによって、各PPMOを試験した。
【0221】
図3に示されるように、MIC試験の結果は、少なくとも3種のPPMO(それぞれ、23S-858、16S-1101、および16S-1101へターゲティングされたPPMO#15、PPMO#17、およびPPMO#18)が、標的とされた3種の病原体のうちの少なくとも2種の成長を阻害したことを示す。試験された株の75%の阻害濃度(IC75)は、肺炎桿菌および緑膿菌におけるPPMO#15について、緑膿菌およびアシネトバクター・バウマンニにおけるPPMO#18について、8μMまたはそれ未満であった。
【0222】
これらのデータは、とりわけ、肺炎桿菌、緑膿菌、およびA.バウマンニの多様な株の細菌rRNAに対してターゲティングされたPPMOが、臨床的に適切な濃度で殺菌性であることを示す(例えば、8μMまたはそれ未満のIC75)。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
【配列表】
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