(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車載処理装置、移動支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20231129BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20231129BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20231129BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20231129BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231129BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20231129BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20231129BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/02
B60W40/105
B60W40/10
G08G1/16 C
G08G1/14 A
B60R99/00 340
(21)【出願番号】P 2019052743
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷島 範安
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 利尚
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027845(JP,A)
【文献】特開2010-066932(JP,A)
【文献】特開2017-081425(JP,A)
【文献】特開2011-126473(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013223417(DE,A1)
【文献】特開2018-124787(JP,A)
【文献】特開2018-169269(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3333049(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/057053(WO,A1)
【文献】特開2018-012451(JP,A)
【文献】特表2013-530867(JP,A)
【文献】特開2016-224593(JP,A)
【文献】特開2010-092279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
B60R 99/00
G05D 1/00 ~ 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の情報を取得するセンサの出力であるセンサ情報を取得するセンサ入力部と、
前記車両の移動に関する情報である車両移動情報を取得する移動情報取得部と、
前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を記憶部に記録するログ記録部と、
前記記憶部に記録された前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて
前記静止物体のみを反映して、前記車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部と、
前記環境地図を用いて前記車両の走行経路を計算する経路算出部とを備え、
前記環境地図には前記車両を駐車させる位置である駐車位置の情報を含み、
前記経路算出部は、前記走行可能領域に対して細線化処理を施して得られたノードとリンクを用いて、前記駐車位置までの最短経路を算出する車載処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記ログ記録部による記録は、前記車両の駐車が完了するまでであり、
前記地図生成部および前記経路算出部は、前記車両の駐車が完了してから動作を開始する車載処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記車両移動情報に基づく情報とは、前記駐車位置を基準とする駐車場座標系における座標を用いた情報である車載処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記車両移動情報に基づく情報とは、前記車両の操舵情報、および前記車両の速度情報を含む前記車両移動情報である車載処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記経路算出部は、前記走行可能領域の幅方向中央を前記走行経路として計算する車載処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記ログ記録部による記録は、前記車両の駐車位置からの発車から始まる車載処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車載処理装置において、
前記環境地図および前記走行経路を前記記憶部に記録する算出結果記録部と、
前記環境地図および前記走行経路を用いて前記車両を制御する自動処理部とをさらに備える車載処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車載処理装置において、
前記自動処理部は、前記環境地図および前記走行経路を用いて、前記車両を前記駐車位置まで移動させる車載処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の車載処理装置において、
前記自動処理部は、前記環境地図および前記走行経路を用いて、前記駐車位置に停車している前記車両を前記走行経路に沿って移動させる車載処理装置。
【請求項10】
車両に搭載される車載処理装置、および前記車両に搭載されないサーバを含む移動支援システムにおいて、
前記車載処理装置は、
前記車両の周囲の情報を取得するセンサの出力であるセンサ情報を取得するセンサ入力部と、
前記車両の移動に関する情報である車両移動情報を取得する移動情報取得部と、
前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を前記サーバに送信する車載通信部とを備え、
前記サーバは、
前記車載処理装置から前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を受信するサーバ通信部と、
前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて
前記静止物体のみを反映して、前記車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部と、
前記環境地図を用いて前記車両の走行経路を計算する経路算出部とを備え、
前記サーバ通信部は、前記環境地図および前記走行経路を前記車載処理装置に送信し、
前記車載処理装置はさらに、
前記環境地図および前記走行経路を用いて前記車両を制御する自動処理部を備え、
前記経路算出部は、前記走行可能領域に対して細線化処理を施して得られたノードとリンクを用いて、前記車両の走行経路を算出する移動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載処理装置、および移動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転実現に向けた活動が盛んとなっている。自動運転とは、車両周囲をカメラや超音波レーダ、レーダなどの外界センサでセンシングし、センシング結果に基づいて判断を行い、ユーザの操作なしで車両が自律的に走行するものである。車両の自動運転を実現するためには、一般に、高精度な地図情報が必要であり、主要な幹線道路は様々な事業者により地図情報が整備されることが期待される。しかし細街路や敷地内の走行路について高精度な地図情報が作成され、適切にメンテナンスされることまでは期待できない。そのため高精度な地図情報の存在を前提としない車両の自動運転用の支援装置が求められている。
【0003】
特許文献1には、自動車の運転者が、駐車スペース、たとえば車庫に入庫するときに、前記自動車の運転者支援装置を使用して、前記運転者を支援する方法であって、前記運転者支援装置の学習モードにおいて、前記運転者の運転により、前記自動車を駐車スペースに駐車する間に、前記運転者支援装置のセンサ装置を使用して、前記駐車スペースの周囲についての基準データを、記録し、かつ記憶し、前記学習モードにおいて、前記運転者支援装置は、前記自動車が到達した基準目標位置を記録し、前記基準目標位置についての情報を有するデータを記憶し、前記学習モードとは異なる続く動作モードにおいて、前記運転者支援装置は、前記センサ装置によるセンサデータを記録し、前記センサデータを前記基準データと比較し、この比較の結果に応じて、前記記録したセンサデータを使用して、前記駐車スペースの前記周囲を識別し、それによって、前記基準目標位置に対する前記自動車の現在位置を決定し、前記基準目標位置に対する前記自動車の現在位置に応じて、前記運転者支援装置は、前記自動車を、その経路に沿って、前記現在位置から、前記駐車スペースに駐車させる駐車経路を決定することを特徴とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている発明では、最適な走行経路を利用できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様による車載処理装置は、車両の周囲の情報を取得するセンサの出力であるセンサ情報を取得するセンサ入力部と、前記車両の移動に関する情報である車両移動情報を取得する移動情報取得部と、前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を記憶部に記録するログ記録部と、前記記憶部に記録された前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて前記車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部と、前記環境地図を用いて前記車両の走行経路を計算する経路算出部とを備え、前記環境地図には前記車両を駐車させる位置である駐車位置の情報を含む。
本発明の第2の態様による移動支援システムは、車両に搭載される車載処理装置、および前記車両に搭載されないサーバを含み、前記車載処理装置は、前記車両の周囲の情報を取得するセンサの出力であるセンサ情報を取得するセンサ入力部と、前記車両の移動に関する情報である車両移動情報を取得する移動情報取得部と、前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を前記サーバに送信する車載通信部とを備え、前記サーバは、前記車載処理装置から前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を受信するサーバ通信部と、前記車両移動情報に基づく情報および前記センサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて前記車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部と、前記環境地図を用いて前記車両の走行経路を計算する経路算出部とを備え、前記サーバ通信部は、前記環境地図および前記走行経路を前記車載処理装置に送信し、前記車載処理装置はさらに、前記環境地図および前記走行経路を用いて前記車両を制御する自動処理部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最適な走行経路の算出を安価な演算装置で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】事後処理フェーズの動作を表すフローチャート
【
図5】自動駐車フェーズの全体動作を表すフローチャート
【
図6】自動駐車フェーズの自己位置推定処理を表すフローチャート
【
図7】自動駐車フェーズのマッチング処理を表すフローチャート
【
図8】自動駐車フェーズの自動駐車処理を表すフローチャート
【
図10】駐車場901のリンクおよびノードを示す図
【
図11】駐車場901における車両1の現在位置を示す図
【
図12】
図12(a)は車両1が
図11に示した位置において撮影した画像から抽出された点群を駐車場座標に変換したデータを示す図、
図12(b)は車両1の駐車場座標系における位置の推定が誤差を含んでいた場合における駐車場点群124Cと
図12(a)に示した局所周辺情報122Bとの対比を示す図
【
図13】
図12(b)に示した局所周辺情報122Bを駐車枠の幅の整数倍移動させた場合の駐車場点群124Cとの関係を示す図
【
図14】変形例1における記録フェーズの処理を示すフローチャート
【
図15】自動出庫フェーズの全体処理を示すフローチャート
【
図17】第3の実施の形態における移動支援システム100Bを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
―第1の実施の形態―
以下、
図1~
図13を参照して、本発明に係る車載処理装置の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態では、詳細な地図情報が作成されておらず、車両を駐車する領域を含む領域を便宜的に「駐車場」と呼ぶ。本発明が適用される場所は、法規が定める「駐車場」に該当しない領域でもよい。また本実施の形態における「駐車場」は、たとえば駐車場の周辺に存在する細街路を含めてもよいし、さらに幹線道路を含めてもよい。
【0010】
図1は、本発明にかかる車載処理装置を含む移動支援システム100の構成図である。移動支援システム100は、車両1に搭載される。移動支援システム100は、車両1の周囲を撮影するカメラ102と、GPS受信機107と、車速センサ108と、舵角センサ109と、入力装置110と、表示装置111と、通信装置114と、車両制御装置130とを備える。車両制御装置130には、操舵装置131、駆動装置132、および制動装置133が接続される。
図1に示すように、各装置間は信号線で接続され、車載処理装置120と各種データを授受する。
【0011】
車載処理装置120は、演算部121と、RAM122と、ROM123と、記憶部124と、インタフェース125とを備える。演算部121はCPUである。RAM122は読み書き込み可能な記憶領域であり、車載処理装置120の主記憶装置として動作する。RAM122には、後述するアウトライアリスト122A、および後述する局所周辺情報122Bが格納される。ROM123は読み取り専用の記憶領域であり、後述するプログラムが格納される。このプログラムはRAM122で展開されて演算部121により実行される。演算部121は、プログラムを読み込んで実行することにより、センサ入力部121A、移動情報取得部121B、ログ記録部121C、地図生成部121D、経路算出部121E、および自動処理部121Fとして動作する。
【0012】
演算部121は、CPU、ROM、およびRAMの組み合わせの代わりに書き換え可能な論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)や特定用途向け集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現されてもよい。また演算部121は、CPU、ROM、およびRAMの組み合わせの代わりに、異なる構成の組み合わせ、たとえばCPU、ROM、RAMとFPGAの組み合わせにより実現されてもよい。
【0013】
記憶部124は不揮発性の記憶装置であり、車載処理装置120の補助記憶装置として動作する。記憶部124には、車両移動情報124A、センサ情報124B、および駐車場点群124Cが格納される。車両移動情報124Aとは、車速センサ108および舵角センサ109が出力する情報を蓄積したものである。センサ情報124Bとは、カメラ102が出力する情報である後述する撮影画像を蓄積したものである。なお車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bは組み合わせて利用されるので、何らかの手段で関連付けて記憶部124に記録される。たとえば車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bのそれぞれに情報を取得した時刻を付してもよいし、処理周期の番号を記録してもよい。
【0014】
駐車場点群124Cとは、1または複数の駐車場データである。駐車場データとは、ある駐車場の位置情報、すなわち緯度・経度、駐車領域を示す座標、およびその駐車場に存在するランドマークを構成する点の座標の集合である。ランドマークについては後述する。後述するように、駐車場点群124Cは車速センサ108および舵角センサ109を用いて作成される。なお以下では、ある駐車場における全てのランドマークの情報を合わせたものを「環境地図」と呼ぶ。
【0015】
インタフェース125は、車載処理装置120と移動支援システム100を構成する他の機器との情報の授受を行う。
【0016】
カメラ102は、撮影して得られた画像(以下、撮影画像)を車載処理装置120に出力する。車載処理装置120は、カメラ102の撮影画像を用いて後述するランドマークの測位を行う。カメラ102の焦点距離や撮像素子サイズなどの内部パラメータ、および車両1へのカメラ102の取り付け位置や取り付け姿勢である外部パラメータは既知であり、ROM123にあらかじめ保存されている。車載処理装置120は、ROM123に格納された内部パラメータおよび外部パラメータを用いて、被写体とカメラ102との位置関係を算出することができる。
【0017】
GPS受信機107は、衛星航法システムを構成する複数の衛星から信号を受信し、受信した信号に基づく演算によりGPS受信機107の位置、すなわち緯度および経度を算出する。なおGPS受信機107により算出される緯度および経度の精度は高精度でなくてもよく、たとえば数m~10m程度の誤差が含まれてもよい。GPS受信機107は、算出した緯度および経度を車載処理装置120に出力する。
【0018】
車速センサ108、および舵角センサ109はそれぞれ、車両1の車速と舵角を測定し車載処理装置120に出力する。車載処理装置120は、車速センサ108および舵角センサ109の出力を用いて公知のデッドレコニング技術によって、車両1の移動量および移動方向を算出する。
【0019】
入力装置110には、ユーザによる車載処理装置120への動作指令が入力される。入力装置110は、記録開始ボタン110Aと、記録完了ボタン110Bと、自動駐車ボタン110Cとを含む。表示装置111はたとえば液晶ディスプレイであり、車載処理装置120から出力される情報が表示される。なお、入力装置110と表示装置111とが一体として、たとえばタッチ操作に対応する液晶ディスプレイとして構成されてもよい。この場合は、液晶ディスプレイの所定の領域がタッチされることにより、記録開始ボタン110A、記録完了ボタン110B、または自動駐車ボタン110Cが押されたと判断してもよい。
【0020】
通信装置114は、車両1の外部の機器と車載処理装置120とが無線で情報を授受するために用いられる。たとえば、演算部121が物体認識に用いる機械学習により得られた推論用のパラメータを受信する。
【0021】
車両制御装置130は、車載処理装置120の動作指令に基づき、操舵装置131、駆動装置132、および制動装置133を制御する。操舵装置131は、車両1のステアリングを操作する。駆動装置132は、車両1に駆動力を与える。駆動装置132はたとえば、車両1が備えるエンジンの目標回転数を増加させることにより車両1の駆動力を増加させる。制動装置133は、車両1に制動力を与える。
【0022】
センサ入力部121Aおよび移動情報取得部121Bは、CPUなどだけでなくインタフェース125も利用することで実現される。センサ入力部121Aは、車両1の周囲の情報を取得するセンサ、すなわちカメラ102の出力であるセンサ情報、すなわち撮影画像を取得する。移動情報取得部121Bは、車速センサ108および舵角センサ109から車両1の移動に関する情報である車両移動情報124Aを取得する。
【0023】
ログ記録部121Cは、車両移動情報124Aおよびセンサ情報を記憶部124に記録する。地図生成部121Dは、記憶部124に記録された車両移動情報124Aに基づく情報およびセンサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成し記憶部124に記録する。経路算出部121Eは、環境地図を用いて車両1の走行経路を計算し記憶部124に記録する。自動処理部121Fは、環境地図および走行経路を用いて演算を行い、車両制御装置130に動作指令を出力することで車両1を制御する。
【0024】
(ランドマーク測位)
ランドマークとはセンサにより識別可能な特徴を有する物体であり、たとえば路面ペイントの1種である駐車枠線や、車両の走行の妨げとなる障害物である建物の壁などである。本実施の形態では、移動体である車両や人間はランドマークに含めない。車載処理装置120は、カメラ102から入力される情報に基づき、車両1の周辺に存在するランドマーク、すなわちセンサにより識別可能な特徴を有する点を検出する。以下では、外界センサ、すなわちカメラ102から入力される情報に基づくランドマークの検出を「ランドマーク測位」と呼ぶ。
【0025】
車載処理装置120は、カメラ102の撮影画像を対象に、以下のように画像認識プログラムを動作させることで駐車枠などの路面ペイントなどを検出する。駐車枠の検出は、まず入力画像からソーベルフィルタなどでエッジを抽出する。次に、たとえば白から黒への変化であるエッジの立ち上がりと、黒から白への変化であるエッジの立ち下がりのペアを抽出する。そしてこのペアの間隔が、あらかじめ定めた第1の所定の距離、すなわち駐車枠を構成する白線の太さと略一致すると、このペアを駐車枠の候補とする。同様の処理により駐車枠の候補を複数検出し、駐車枠の候補同士の間隔があらかじめ定めた第2の所定の距離、すなわち駐車枠の白線の間隔と略一致すると、それらを駐車枠として検出する。駐車枠以外の路面ペイントは以下の処理を実行する画像認識プログラムで検出される。まず入力画像からソーベルフィルタなどでエッジを抽出する。エッジ強度があらかじめ定めた一定の値よりも大きく、エッジ同士の間隔が白線の幅に相当するあらかじめ定めた距離である画素を探索することにより検出できる。
【0026】
車載処理装置120はたとえば既知のテンプレートマッチングにより車両や人間を検出し、測定結果から除外する。さらに、以下のようにして検出した移動体を測定結果から除外してもよい。すなわち車載処理装置120は、内部パラメータおよび外部パラメータを用いて撮影画像における被写体とカメラ102との位置関係を算出する。次に車載処理装置120は、カメラ102が連続して取得した撮影画像において被写体を追跡することで車両1と被写体の相対的な速度を算出する。最後に車載処理装置120は、車速センサ108および舵角センサ109の出力を用いて車両1の速度を算出し、被写体との相対的な速度と一致しなければ被写体が移動体であると判断し、この移動体に関する情報を測定結果から除外する。
【0027】
なお本実施の形態は、リアルタイムの処理を行わないので負荷が高い演算も可能である。たとえば毎秒30フレームの撮影を行う場合には、1枚の撮影画像は33ミリ秒以内に処理が完了する必要があり、処理能力が高い高価な演算器を搭載することが難しい車両用アプリケーションでは軽い演算に限定せざるを得ない。しかし本実施の形態ではいわゆるオフライン処理を行うため、複数の処理を繰り返し実行することや、機械学習によって得られた学習モデルを用いた推論により物体を認識することも可能である。この物体の認識はたとえば、自動車、人、自転車、壁、ガードレール、建物などであり、先頭の3つが移動体、すなわち動的物体と判断され、残りが非移動物体、すなわち静止物体と判断される。
【0028】
(駐車場点群124C)
図2は、記憶部124に格納される駐車場点群124Cの一例を示す図である。
図2では、駐車場点群124Cとして2つの駐車場データが格納されている例を示している。1つの駐車場データは、その駐車場の位置、すなわち緯度および経度(以下、緯度経度と呼ぶ)と、駐車領域の座標と、車両1の走行経路と、ランドマークを構成する点の二次元平面上の座標とから構成される。
【0029】
駐車場の位置とは、たとえば駐車場の入り口付近、駐車場の中央付近、または駐車位置の緯度経度である。駐車領域の座標、車両1の走行経路、およびランドマークを構成する点の座標は、その駐車場データに固有の座標系における座標である。以下では駐車場データにおける座標系を「駐車場座標系」や「第1座標系」と呼ぶ。駐車場座標系は、たとえば記録開始時の車両1の座標が原点とされ、記録開始時の車両1の進行方向前方がY軸、記録開始時の車両1の右方向がX軸とされる。駐車領域の座標は、たとえば駐車領域を矩形とした場合にその矩形領域の4つの頂点の座標として記録される。ただし、駐車領域は矩形に限定されず矩形以外の多角形や楕円形状でもよい。ただし駐車場点群124Cに記録する情報は、広がりを持つ領域である駐車領域の代わりに、代表的な点たとえば駐車領域の中心点を示す駐車位置を記録してもよい。
【0030】
記憶部124に格納される車両1の走行経路とは、駐車場の入り口付近から駐車位置までの理想的な経路を示す情報であり、たとえばその経路の一定距離ごとの座標の集合である。一定距離とはたとえば0.1mや0.5mである。ただし座標の代わりに経路を示す数式やパラメータを用いてもよい。この経路は、後述するように演算により求められる。本実施の形態では、走行経路の先頭、すなわち「1」と記載されているレコードに駐車場の入り口に最も近い経路上の座標が格納され、最下段に駐車領域に最も近い経路上の座標が格納される。
【0031】
(局所周辺情報122A)
局所周辺情報122Aには、車載処理装置120が後述する自動駐車フェーズにおいて検出したランドマークを構成する点の座標が格納される。この座標は局所周辺情報122Aの記録を開始した際の車両1の位置および姿勢を基準に、たとえばその位置を原点とし、車両1の進行方向前方をY軸とし、進行方向右をX軸とする座標系である。この座標系を以下では「局所座標系」や「第2座標系」と呼ぶ。
【0032】
(記録フェーズ)
図3は、車載処理装置120の記録フェーズの動作を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は車載処理装置120の演算部121である。演算部121は、以下に説明するステップS502ではセンサ入力部121Aおよび移動情報取得部121Bとして機能し、ステップS503ではログ記録部121Cとして機能する。
【0033】
ステップS501では、演算部121は、記録開始ボタン110Aが押されたか否かを判断する。演算部121は、記録開始ボタン110Aが押されたと判断する場合はステップS501Aに進み、押されていないと判断する場合はステップS501に留まる。ステップS502では、演算部121はカメラ102からセンサ情報を取得し、車速センサ108および舵角センサ109から車両移動情報を取得する。続くステップS503では、演算部121はステップS502で得られたセンサ情報及び車両移動情報を記憶部124に記録する。
【0034】
続くステップS504では、演算部121は記録完了ボタン110Bが押されたか否かを判断する。演算部121は、記録完了ボタン110Bが押されたと判断する場合はステップS505に進み、記録完了ボタン110Bが押されていないと判断する場合はステップS502に戻る。
【0035】
ステップS505では、演算部121はGPS受信機107から車両1の現在の緯度経度を取得して記憶部124に記録し、
図3に示す処理を終了する。なおステップS503において繰り返し記録された情報およびステップS505において記録された情報は、関連付けて記録される。
【0036】
(事後処理フェーズ)
図4は、車載処理装置120の事後処理フェーズの動作を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は車載処理装置120の演算部121である。演算部121は、ステップS511~S515の処理を行う場合に地図生成部121Dとして機能し、ステップS516~S518の処理を行う場合に経路算出部121Eとして機能する。本実施の形態では、演算部121は記録フェーズが終了し、かつユーザにより車両1のイグニッションスイッチがオフにされると事後処理フェーズの処理を開始する。
【0037】
ステップS511では、RAM122に新たな記録領域を確保する。この記憶領域には、抽出した点群と車両1の実走行経路が前述の局所座標系の座標で記録される。なお以下のS512~S515のループでは、記憶部124に記録された車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bが、古い情報、すなわち駐車場の入り口に近いほうから順番に読みだされる。
【0038】
ステップS512では演算部121は、記憶部124に記録されているセンサ情報であって未処理のもっとも古いセンサ情報を取得して前述のランドマーク測位、すなわちカメラ102の撮影画像を用いたランドマークを構成する点群の抽出を行う。続くステップS513では、記憶部124に記録されている車両移動情報であって未処理の最も古い車両移動情報を取得して車両1の移動量を推定し、RAM122に記録されている車両1の現在位置を更新する。
【0039】
なお車両1の移動量は車両移動情報を使わずに推定してもよく、たとえば前述のようにカメラ102の撮影画像における路面に存在する被写体の位置の変化から車両1の移動量を推定できる。また、GPS受信機107として誤差が小さい高精度なGPS受信機が搭載されている場合には、その出力を車両移動情報として記録しておき、これを利用してもよい。次にステップS514に進む。
【0040】
ステップS514では演算部121は、ステップS512において抽出した点群を、ステップS513において更新した現在位置に基づき、局所座標系の座標としてRAM122に保存する。続くステップS515では演算部121は、記憶部124に未処理のセンサ情報が存在するか否かを判断する。演算部121は、未処理のセンサ情報があると判断する場合にはステップS512に戻り、未処理のセンサ情報が存在しないと判断する場合にはステップS516に進む。
【0041】
ステップS516では演算部121は、ステップS514において繰り返し記録した点群を用いて処理対象とする駐車場のリンクおよびノードを作成する。リンクおよびノードはたとえば、駐車場における走行可能領域に対して細線化処理を施すことで得ることができる。細線化処理により得られた交点が「ノード」であり、ノード同士を接続する線分が「リンク」である。なお駐車場における走行可能領域とは、車両1の走行経路から測定されたランドマークまでの領域である。ただし測定されたランドマークの背後であっても、車両1が移動して測定を行った場合にはこの限りではない。また、走行可能領域の算出には占有グリッド(Occupancy Grid Map)を利用してもよい。
【0042】
続くステップS517では演算部121は、ステップS516に置いて算出したリンクおよびノードを用いて、記録開始地点から駐車位置までの最短経路を算出する。この経路算出には様々な既知の技術を用いることができる。続くステップS518では演算部121は、ステップS517において算出した経路における道幅の中央の座標を車両の走行経路の座標として算出する。
【0043】
続くステップS519では演算部121は、局所座標系における車両1の駐車領域を算出し、ステップS514においてRAM122に繰り返し記録した点群、およびステップS518において算出した車両1の走行経路の座標とともに駐車場点群124Cとして記憶部124に記録する。なお局所座標系における車両1の駐車領域は、ステップS513において更新した最後の位置が車両1の駐車領域なので、既知である車両1の大きさを用いて算出できる。以上が
図4に示す事後処理フェーズの説明である。
【0044】
なお前述のとおり、駐車場点群124Cの1つの駐車場についての全てのランドマークの情報をあわせて「環境地図」と呼ぶ。この環境地図は、ステップS512のランドマーク測位の結果から得られるものなので、移動しない静止物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて作成されたものである。具体的には、移動可能な動的物体が次のように除外されて移動しない静止物体のみが環境地図に反映される。
【0045】
記録フェーズの実行時に実際に動いていた物体、すなわちカメラ102の被写体は、被写体の速度と車両1の速度が一致しないことから移動体であると判断され、測定結果から除外される。記録フェーズの実行時には静止していたが移動可能な物体は、テンプレートマッチングや学習モデルを用いた推論により移動体と判断され、測定結果から除外される。また環境地図は障害物の座標が列挙されており、この局地座標系の原点は記録開始時の車両1の位置であり走行可能であることが既知なので、環境地図は車両1が走行可能な走行可能領域の情報を含むと言える。したがって、環境地図は「移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて車両1が走行可能な走行可能領域を含む」といえる。
【0046】
(自動駐車フェーズ)
図5は、車載処理装置120の自動駐車フェーズの全体動作を表すフローチャートである。以下に説明する各ステップの実行主体は車載処理装置120の演算部121である。演算部121は、
図5に示す処理を自動処理部121Fとして実行する。
【0047】
車載処理装置120は、まずGPS受信機107を用いて現在の緯度経度を測位し(ステップS601)、その緯度経度が、駐車場点群124Cのいずれかの駐車場データの緯度経度と略一致するか否かを判定する。換言すると車両1の位置から所定の距離以内に存在する駐車場の有無を判断する(ステップS602)。いずれかの駐車場データの緯度経度と車両1の緯度経度が略一致すると判断する場合はステップS603に進み、いずれの駐車場データの緯度経度とも略一致しないと判断する場合はステップS601に戻る。なおステップS601に戻る場合は、ユーザの運転により車両1が移動することによりステップS602において肯定判断される可能性がある。
【0048】
そして車載処理装置120は、駐車場点群124Cに含まれる複数の駐車場データのうち、車両1の現在位置と略一致する緯度経度を有する駐車場データを特定する(ステップS603)。次に車載処理装置120は、初期化処理としてRAM122に格納される局所周辺情報122Bの初期化、およびRAM122に保存される車両1の現在位置の初期化を行う(S603A)。具体的には従前の情報が記録されていたら消去し、新たな座標系を設定する。本実施の形態では、この座標系を局所座標系と呼ぶ。
【0049】
この局所座標系はステップS603Aが実行された際の車両1の位置および姿勢に基づき設定される。たとえばステップS603Aが実行された際の車両1の位置が局所座標系の原点に設定され、ステップS603Aが実行された際の向きによりX軸およびY軸が設定される。また車両1の現在位置の初期化は、車両1の現在位置が原点(0、0)に設定される。
【0050】
次に、
図6に示す手順により自己位置推定、すなわち車両1の駐車場座標系における位置を推定し(ステップS604)、続くステップS605では自己位置が推定できたか否かを判断する。推定できたと判断する場合はステップS606に進み、推定できないと判断する場合はステップS604に戻る。
【0051】
ステップS606では、車載処理装置120は表示装置111に自動駐車が可能な旨を表示し、続くステップS607ではユーザにより自動駐車ボタン110Cが押されたか否かを判断する。自動駐車ボタン110Cが押されたと判断する場合はステップS608に進んで
図8に示す手順により自動駐車処理を実行し、自動駐車ボタン110Cが押されていないと判断する場合はステップS606に戻る。
【0052】
(自己位置推定)
図6を参照して
図5のステップS604において実行される自己位置推定処理の詳細を説明する。ステップS621のランドマーク測位、ステップS622の自車移動量推定、およびステップS623の局所周辺情報122Bの記録はそれぞれ、
図4のステップS512~S514の処理と概ね同じである。相違点はRAM122に記憶されるデータが局所周辺情報122Bとして記録される点である。
【0053】
ステップS623の実行が完了すると、車載処理装置120は
図7に詳細を示すマッチング処理を行う(ステップS624)。このマッチング処理では、駐車場座標系と局所座標系との対応関係、すなわち駐車場座標系と局所座標系との座標変換式が得られる。続くステップS625では車載処理装置120は、ステップS622において更新した局所座標系における車両1の座標と、ステップS625において得られた座標変換式を用いて、駐車場座標系における車両1の座標、すなわち自己位置を算出する。次にステップS626に進む。
【0054】
ステップS626において車載処理装置120は、ステップS625において算出した位置の信頼性を判断する自己診断を実行する。自己診断は、たとえば以下の3つの指標を用いて判断される。
【0055】
第1の指標では、車速センサ108および舵角センサ109の出力を用いて公知のデッドレコニング技術によって推定した車両1の移動量と、自己位置推定によって推定された所定期間における移動量を比較し、あらかじめ定めた閾値よりも差が大きい場合は信頼度が低いと判断する。
【0056】
第2の指標では、マッチング時に計算される対応点の誤差量で判断する。誤差量があらかじめ定めた閾値よりも大きい場合は信頼度が低いと判断する。
【0057】
第3の指標では、類似解があるか否かの判定を実施する。得られた解から駐車枠の幅分並進するなど、類似解を探索した場合に、対応点誤差が一定以内の点が同じくらいの数あった場合は、信頼度が低いと判断する。これら3つの指標のすべてで信頼度が低いと判断されなかった場合に自己位置が推定できたと判断する。
【0058】
(マッチング)
図7を参照して
図6のステップS624において実行されるマッチング処理の詳細を説明する。
【0059】
ステップS641では演算部121は、RAM122に格納されたアウトライアリスト122Aを局所周辺情報122Bに対して適用し、局所周辺情報122Bに含まれる点群のうちアウトライアリスト122Aに記載された点を一時的に処理対象外とする。この適用範囲はステップS642~S653であり、ステップS654では従前にアウトライアリスト122Aに含まれていた点も対象となる。ただし
図7に示すフローチャートの初回実行時にはステップS641~S643が実行できないため、ステップS650から実行を開始する。次にステップS641Aに進む。
【0060】
ステップS641Aでは、最新の撮影画像から検出した点群、すなわち
図6のステップS621において検出したランドマークを構成する点群の座標を、駐車場座標系の座標に変換する。この変換は、ステップS622において更新された車両1の局所座標系における位置、および前回算出した局所座標系から駐車場座標系への座標変換式を用いることにより実現される。
【0061】
続くステップS642では瞬間一致度ICが算出される。瞬間一致度ICは、以下の式1により算出される。
IC= DIin/DIall ・・・式1
ただし式1において「DIin」は、ステップS641Aにおいて駐車場座標系に変換された最新の撮影画像から検出された点群のうち、最も近い駐車場点群124Cを構成する点までの距離があらかじめ定めた閾値以下の点の数である。また式1において「DIall」は、ステップS621において検出された点群の数である。次にステップS643に進む。
【0062】
ステップS643では、ステップS642において算出した瞬間一致度ICが閾値よりも大きいか否かを判断する。瞬間一致度ICが閾値よりも大きいと判断する場合はステップS650に進み、瞬間一致度ICが閾値以下であると判断する場合はステップS644に進む。
【0063】
ステップS644では、駐車場点群124Cの対象となる駐車場データ、すなわち点群データから周期的な特徴、たとえば複数並んだ駐車枠を検出する。前述のように、駐車場点群に含まれる点群は画像のエッジなどを抽出して得られるので、白線の太さに相当する間隔で並ぶ点から駐車枠線を検出できる。続くステップS645では、ステップS644において周期的特徴を検出したか否かを判断し、検出したと判断する場合はステップS646に進み、検出できなかったと判断する場合はステップS650に進む。ステップS646では周期的な特徴の周期、たとえば駐車枠の幅を算出する。ここでいう駐車枠の幅とは、駐車枠を構成する白線同士の間隔である。次にステップS647に進む。
【0064】
ステップS647では、前回のステップS653において算出された座標変換式を基準として、この座標変換式を複数とおりに変化させて全体一致度IWをそれぞれ算出する。座標変換式は、駐車場点群が検出した周期的特徴の整数倍ずれるように複数とおりに変化させる。全体一致度IWは、以下の式2により算出される。
IW= DWin/DWall ・・・式2
【0065】
ただし式2において「DWin」は、前述の座標変換式を用いて局所周辺情報122Bを構成する点を駐車場座標系に変換した点のうち、最も近い駐車場点群124Cを構成する点までの距離があらかじめ定めた閾値以下の点の数である。また式2において「DWall」は、ステップS621において検出された点の数である。次にステップS648に進む。ステップS648では、ステップS647において算出した複数の全体一致度IWのうち、最大の全体一致度IWを与える座標変換式をRAM122に記憶してステップS650に進む。
【0066】
ステップS650における対応付け処理、ステップS651における誤差最小化処理、およびステップS625における収束判定処理は既知の点群マッチング技術であるICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムを利用することができる。ただしステップS650における初期値の設定は本実施の形態に特有なので詳しく説明し、他は概略のみ説明する。
【0067】
ステップS643において肯定判定された場合、ステップS645において否定判定された場合、ステップS648の実行が終わった場合、またはステップS652において否定判定された場合に実行されるステップS650では、駐車場点群124Cの駐車場データに含まれる点群と局所周辺情報122Bに含まれる点群との対応付けが算出される。ステップS643またはステップS648の次に実行される場合は、局所周辺情報122Bの点群データはRAM122に記録された座標変換式を用いて座標変換された値を用いる。すなわち、ステップS643において肯定判定されてステップS650が実行される場合には、前回実行されたステップS653において算出された座標変換式が使用される。一方、ステップS648の次にステップS650が実行される場合は、ステップS648において記憶された座標変換式が使用される。次にステップS651に進む。
【0068】
ステップS651では、対応点の誤差が最小となるように座標変換式が変更される。たとえば、ステップS650において対応付けられた点同士の距離の指標の和が最小となるように座標変換式が変更される。対応付けられた点同士の距離の指標の和として距離の絶対値の和を採用することができる。続くステップS652では、誤差が収束したか否かを判断し、収束したと判断する場合はステップS653に進み、収束していないと判断する場合はステップS650に戻る。続くステップS653では、最後にステップS651において変更された座標変換式をRAM122に保存してステップS654に進む。
【0069】
ステップS654では、次のようにアウトライアリスト122Aを更新する。まずRAM122に格納されている既存のアウトライアリスト122Aをクリア、すなわち消去する。次に局所周辺情報122Bの点群をステップ653において記録した座標変換式を用いて駐車場座標系に変換し、局所周辺情報122Bを構成するそれぞれの点とその点が対応する駐車場点群124Cを構成する点までの距離、すなわちユークリッド距離を算出する。そして、算出された距離があらかじめ定められた距離よりも長い場合は、その局所周辺情報122Bの点をアウトライアリスト122Aに加える。ただしこのときに、空間的に端部に位置することをアウトライアリスト122Aに加えるさらなる条件としてもよい。空間的な端部とは、記録を開始した際に取得された点など、他の点までの距離が遠い点である。以上の処理によりアウトライアリスト122Aが更新される。以上で
図7のフローチャートを終了する。
【0070】
(自動駐車)
図8を参照して
図5のステップS608において実行される自動駐車処理の詳細を説明する。以下に説明する各ステップの実行主体は車載処理装置120である。ステップS661では、駐車場座標系における車両1の位置を推定する。本ステップにおける処理は
図5のステップS604と同様なので説明を省略する。続くステップS662では、駐車場点群124Cに格納されている走行経路を読み込んで、ステップS663に進む。
【0071】
ステップS663では、車両制御装置130を介して操舵装置131、駆動装置132、および制動装置133を制御し、ステップS662において読み込んだ走行経路に沿って車両1を駐車位置まで移動させる。ただし自動駐車ボタン110Cがユーザにより押され続けている場合だけ駆動装置132に動作指令を出力してもよい。また、カメラ102の撮影画像から人物や移動車両などが抽出されたら制動装置133を動作させて車両1を停止させる。続くステップS664ではステップS661と同様に車両1の位置を推定する。続くステップS665では駐車が完了したか否か、すなわち車両1が駐車位置に到達したか否かを判断し、駐車が完了していないと判断する場合はステップS663に戻り、駐車が完了したと判断する場合は
図8のフローチャートを終了する。
【0072】
(記録フェーズと事後処理フェーズの動作例)
図9および
図10を参照して記録フェーズおよび事後処理フェーズの動作例を説明する。
図9および
図10は、記録フェーズおよび事後処理フェーズの動作例を説明する図である。
図9は、駐車場901の模式図であり、建物911~914と、多数の駐車枠が存在する。車両1は図示左下から駐車場901に侵入し、駐車位置903に駐車する。車両1が
図9に示す位置にいる際にユーザが記録開始ボタン110Aを押し、記録フェーズが開始される。このとき、駐車場901には歩行者904と、はみ出し車両905とが存在する。歩行者904は駐車場901の図示する位置を歩行中である。はみ出し車両905は、駐車枠から大きく外れて駐車されている車両であり、停止している。
【0073】
ユーザは、記録開始ボタン110Aを押してから車両1を駐車領域903まで運転する。ユーザは、駐車場901に入ってすぐに、右側に歩いている歩行者904に気づいたので右折せずに直進した。そして図示上部、建物914の付近で右方向に180度回転し、建物913を通り過ぎたところで左折をした。このときユーザははみ出し車両905に気づいたので、はみ出し車両905に接触しないように図示上部に寄って走行し、駐車位置903に到達した。そしてユーザは記録完了ボタン110Bを押し、イグニッションスイッチをオフにして車両1の駐車を完了させた。
【0074】
前述のとおり、記録フェーズではセンサ情報124Bおよび車両移動情報124Aが記録される。センサ情報124Bはたとえばカメラ102が撮影して得られた撮影画像である。車両移動情報124Aはたとえば、車両1の速度および操舵角度である。たとえば、センサ情報124Bおよび車両移動情報124Aは所定の処理周期ごとに記録される場合には時間情報は記録する必要はないが、センサ情報124Bおよび車両移動情報124Aの記録が一定周期ではない場合には、時刻情報も併せて記録する。なお時刻情報とは、たとえば記録開始ボタン110Aが押されたタイミングを起点、すなわちゼロ秒とする経過時間でもよいし、日本標準時刻や世界標準時刻でもよい。
【0075】
図4に処理フローを示した事後処理フェーズでは、まず初期化処理(S511)が行われ、記録されたセンサ情報および車両移動情報の数だけS512~S514が繰り返される。ただしランドマーク測位(S512)では、テンプレートマッチングにより車両や人間を測定結果から除外し、移動している移動体を測定結果から除外する。そのため、はみ出し車両905は静止しているがテンプレートマッチングにより「車両」と判断されるので除外され、歩行者904は移動体かつ人間なので両方の理由により除外される。すなわちランドマーク測位では、歩行者904およびはみ出し車両905は存在しないものとして扱われる。
【0076】
そして
図10に太線および白丸で示すようにリンクおよびノードが作成され(S516)、最短経路となるリンクおよびノードが一点鎖線で示すように算出される(S517)。なお
図10では、最短経路となるリンクおよびノードの横に一点鎖線を記載している。そして、最短経路となるリンクの道幅の中央の座標を走行経路として算出し(S518)、ランドマークの座標、走行経路、および駐車領域を新たな駐車場点群124Cとして記録する(S519)。
【0077】
(動作例|実行フェーズ)
図11~
図13を参照して、実行フェーズにおけるマッチング処理の動作例を説明する。この動作例では、あらかじめ駐車場点群124Cには
図9に示した駐車場901の全体に相当する点群データが格納されている。
【0078】
図11は、駐車場901における車両1の現在位置を示す図である。車両1は図示上方を向いている。
図12(a)と
図12(b)では、車両1の前方領域である
図11において破線の丸で囲む部分の駐車枠線を示す。
【0079】
図12(a)は、車両1が
図11に示した位置において撮影した画像から抽出された点群を、駐車場座標に変換したデータを示す図である。すなわち、
図12(a)に示す点群は局所周辺情報122Bのうち、最新の撮影画像から検出された点群であり
図7のステップS641Aにおいて処理されたデータである。ただし
図12(a)では点ではなく破線として表している。また
図12(a)では
図11との対比のために車両1もあわせて表示している。
図12(a)に示すように、車両1の左側には駐車枠線の点群データが切れ目なく存在しており、車両1の右側では駐車枠線の点群データが手前側にのみ存在する。
【0080】
図12(b)は、車両1の駐車場座標系における位置の推定が誤差を含んでいた場合における、駐車場点群124Cと
図12(a)に示した局所周辺情報122Bとの対比を示す図である。
図12(b)では、従前の位置推定がおおよそ駐車枠の幅の1つ分ずれていたため、車両1の右側に存在する局所周辺情報122Bは、駐車場点群124Cとずれが生じている。このような状態で瞬間一致度ICが算出されると(
図7のステップS642)、車両1の右側の前述のずれにより瞬間一致度ICは低い値となる。この値が閾値よりも低いと判断されると(ステップS643:NO)、駐車枠を周期的な特徴として検出し(ステップS644、S645:YES)、駐車場点群124Cから駐車枠の幅が算出され(ステップS646)、駐車枠の幅の整数倍移動させて全体一致度IWが算出される(ステップS647)。
【0081】
図13(a)~(c)は、
図12(b)に示した局所周辺情報122Bを駐車枠の幅の整数倍移動させた場合の駐車場点群124Cとの関係を示す図である。
図13(a)~(c)ではそれぞれ、
図12(b)に示した局所周辺情報122Bは駐車枠の幅の、+1倍、0倍、―1倍だけ図示上方に移動している。
図13(a)では局所周辺情報122Bが図示上側に駐車枠の幅の1つ分移動しており、局所周辺情報122Bと駐車場点群124Cとのずれが拡大している。そのため
図13(a)における全体一致度IWは、移動させない場合よりも小さくなる。
図13(b)では局所周辺情報122Bは移動しておらず、
図12(b)でみたように局所周辺情報122Bと駐車場点群124Cは駐車枠の幅の1つ分ずれている。
図13(c)では局所周辺情報122Bが図示下側に駐車枠の幅の1つ分移動しており、局所周辺情報122Bは駐車場点群124Cと略一致している。そのため
図13(c)における全体一致度IWは、移動させない場合よりも大きくなる。
【0082】
局所周辺情報122Bの移動量と全体一致度IWの増減は上述する関係にあるので、
図13に示す例では
図13(c)に対応する全体一致度IWが最大と判断され、この移動に対応する座標変換式がRAM122に記憶される(ステップS648)。このようにして車載処理装置120は推定する位置精度を向上させる。
【0083】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)車載処理装置120は、車両1の周囲の情報を取得するセンサ、すなわちカメラ102の出力であるセンサ情報124Bを取得するセンサ入力部として動作するインタフェース125と、車両1の移動に関する情報である車両移動情報124A、すなわち車速センサ108および舵角センサ109が出力を取得する移動情報取得部として動作するインタフェース125と、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを記憶部124に記録するログ記録部121Cと、記憶部124に記録された車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて車両1が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部121Dと、環境地図を用いて車両1の走行経路を計算する経路算出部121Eとを備え、環境地図には車両1を駐車させる位置である駐車領域903の情報を含む。車載処理装置120は、記録済みの車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを用いて演算を行うので、リアルタイムに処理を完了させる必要がなく、最適な走行経路の算出を安価な演算装置で実現できる。
【0084】
なお、記録フェーズにおいて車両1が走行した経路を駐車場点群124Cに走行経路として記録することも可能であり、その方が本実施の形態よりも計算量は削減できる。ただしその場合には、記録フェーズにおける動的物体の影響やユーザの技量の問題をそのまま含んだ経路になってしまう。具体的には、記録フェーズの実行時に一時的に存在する動的物体を避けるために変更した経路や、ユーザの技量が未熟なために多数の切り返しを要した経路が自動駐車フェーズでもそのまま再現されてしまう問題がある。しかし本実施の形態によればオフライン処理で改めて走行経路を算出するので、このような問題がない。
【0085】
(2)ログ記録部121Cによる記録は、車両1の駐車が完了するまでである。地図生成部121Dおよび経路算出部121Eは、車両1の駐車が完了してから動作を開始する。駐車の完了から次回の出発までは相応の時間にわたって他の処理を行う必要がないため、環境地図や走行経路の算出に多大なリソースを利用することができる。
【0086】
(3)本実施の形態では車両1の操舵情報、および車両1の速度情報を含む車両移動情報をそのまま記録する。そのため記録フェーズにおける処理負荷が軽く、安価な装置により処理が実現できる。
【0087】
(4)経路算出部121Eは、走行可能領域の幅方向中央を走行経路として計算する。そのため
図9のはみ出し車両905のように、記録フェーズで記録された動的物体を無視して最適な走行経路を算出できる。
【0088】
(5)車載処理装置120は、環境地図および走行経路を記憶部に記録する算出結果記録部、すなわち地図生成部121Dおよび経路算出部121Eと、環境地図および走行経路を用いて車両1を制御する制御部、すなわち自動処理部121Fとを備える。そのため車載処理装置120は、算出した最適な走行経路に沿って車両1を移動させることができる。
【0089】
(6)自動処理部121Fは、環境地図および走行経路を用いて、車両1を駐車位置まで移動させる。そのため、高精度な地図情報が第三者により作成されていない環境でも、ユーザが一度手動で駐車をすることで、以後は自動駐車が実現できる。
【0090】
(変形例1)
上述した第1の実施の形態では、記録フェーズにおいて車両移動情報124Aをそのまま記録した。しかし車両移動情報124Aをそのまま記録する代わりに、車両移動情報に基づく情報、すなわち局所座標系における車両1の位置および向きを記録してもよい。
【0091】
図14は、変形例1における記録フェーズの処理を示すフローチャートである。
図14は、第1の実施の形態における
図3におけるステップS502の次に、車載処理装置120はステップS622A、すなわち
図6のステップS622に相当する処理を行う。具体的には車載処理装置120は、ステップS502において取得した車両移動情報を用いて、車両1の局所座標系における位置および向きを更新する。続くステップS503Aでは車載処理装置120は、ステップS502において取得したセンサ情報、およびステップS622Aにおいて算出した車両1の位置および向きを記録する。
【0092】
この変形例1によれば、次の作用効果が得られる。
(7)車両移動情報に基づく情報とは、車両の駐車位置を基準とする駐車場座標系における座標を用いた情報である。そのため事後処理フェーズにおける処理を軽減することができる。
【0093】
(変形例2)
上述した第1の実施の形態では、記録フェーズおよび自動運転フェーズのいずれも車両1を駐車領域まで移動させる駐車の場面であった。しかし車載処理装置120は、自動運転フェーズを出庫の場面に適用する自動出庫フェーズをさらに備えてもよい。またこの場合は車載処理装置120は、自動駐車フェーズを備えなくてもよい。
【0094】
図15および
図16は、車載処理装置120の自動出庫フェーズにおける処理を説明する図である。
図15は、自動出庫フェーズの全体処理を示すフローチャートである。ただし
図15は、
図5に示した自動駐車フェーズと同一の処理には同一のステップ番号を付し、類似する処理には類似するステップ番号を付している。
【0095】
自動出庫フェーズは、イグニッションスイッチがオンにされると常に、またはイグニッションスイッチがオンにされてかつユーザが所定のスイッチを押した際に実行される。自動出庫フェーズではまず、自動駐車フェーズと同様にステップS601~ステップS603Aが実行され、その後にステップS606Aに進む。なお、第1の実施の形態において説明した自動駐車フェーズでは、自動駐車フェーズが開始された際の車両1の位置が必ずしも一定ではないのでステップS604における自己位置推定が必要であった。しかし自動出庫フェーズでは、車両1は駐車領域に停車しているので自己位置推定は不要である。
【0096】
ステップS606Aでは車載処理装置120は表示装置111に自動出庫が可能な旨を表示し、続くステップS607Aではユーザにより自動出庫ボタンが押されたか否かを判断する。自動出庫ボタンが押されたと判断する場合はステップS608Aに進んで
図16に示す手順により自動出庫処理を実行し、自動出庫ボタンが押されていないと判断する場合はステップS606Aに戻る。以上が
図15の説明である。
【0097】
図16は、自動出庫処理を説明するフローチャートである。ただし
図16は、
図8に示した自動駐車処理と同一の処理には同一のステップ番号を付し、類似する処理には類似するステップ番号を付している。
図8と
図16との違いは、ステップS662をステップS622Aに変更し、ステップS665をステップS665Aに変更し、最後にステップS666を追加している点である。以下ではこの変更点のみを説明する。
【0098】
ステップS662Aでは車載処理装置120は、駐車場点群124Cに格納されている走行経路を下から順番に読み取り、ステップS663に進む。ステップS665Aでは車載処理装置120は、記録開始位置に到達したか否か、すなわち走行経路の先頭に記載されている座標に到達したか否かを判断する。車載処理装置120は、先頭の座標に到達したと判断する場合はステップS666に進み、先頭の座標に到達していないと判断する場合はステップS663に戻る。ステップS666では車載処理装置120は、表示装置111に出庫が完了した旨を表示して
図16に示す処理を終了する。
【0099】
この変形例2によれば、次の作用効果が得られる。
(8)自動処理部121Fは、環境地図および走行経路を用いて、駐車位置に停車している車両1を走行経路に沿って移動させる。そのため、高精度な地図情報が第三者により作成されていない環境でも、ユーザが一度手動で駐車をすることで、以後は自動出庫が実現できる。
【0100】
(変形例3)
駐車場点群124Cがユーザにより編集可能であってもよい。駐車場点群124Cに含まれる駐車領域、走行経路、およびランドマークのいずれがユーザにより編集であってもよい。駐車場点群124Cの編集は、表示装置111に表示される情報をユーザが見ながら入力装置110を利用して編集してもよい。また車載処理装置120が汎用的な記憶装置のリーダ・ライタを備え、たとえばUSBメモリを介して記憶部124に格納された駐車場点群124Cのエクスポートおよびインポートが可能であってもよい。
【0101】
駐車場点群124Cのエクスポートおよびインポートが可能な場合は、ユーザはたとえばパーソナルコンピュータを用いて駐車場点群124Cを編集する。駐車場点群124Cの編集は、専用のインタフェースを備える専用ソフトウエアにより実行可能であってもよいし、駐車場点群124Cがテキスト情報のみで構成される場合には汎用的なテキストエディタにより編集可能であってもよい。専用ソフトウエアは、たとえば走行経路をグラフィカルに表示し、たとえばマウスのドラッグアンドドロップ操作により簡易に走行経路を編集可能にしてもよい。この場合に、ランドマークも併せて表示することで障害物と走行経路の間隔を視覚的に確認可能にしてもよい。
【0102】
(変形例4)
駐車場点群124Cに含まれるそれぞれのランドマークには、信頼度の情報を含ませてもよい。信頼度は、たとえば車両1に搭載される不図示のナビゲーション装置に格納されている建物の情報を用いて算出できる。
【0103】
車載処理装置120は、事後処理フェーズにおいて、駐車場の緯度経度の付近に存在する建物の情報を不図示のナビゲーション装置から読み出す。そして車載処理装置120は、得られた複数のランドマーク、すなわち点群の形状と建物の位置や形状との対応を特定し、いずれかの点群が建物であると判断できた場合には、その点群の信頼度を高く設定する。建物であれば位置や形状が変化する頻度が非常に低いと考えられるためである。
【0104】
車載処理装置120は、自己位置推定処理においてランドマークに設定された信頼度を利用する。具体的には車載処理装置120は、駐車場点群と局所周辺情報のマッチングにおいて、駐車場点群を構成するそれぞれのランドマークについて信頼度に基づく重みづけを行う。詳述すると車載処理装置120は、信頼度が高いほど重みを大きく設定する。この変形例2によれば、ナビゲーション装置に格納されている建物の情報を用いて、自己位置推定のマッチングの精度を向上することができる。
【0105】
(変形例5)
カメラ102の代わりにレーザスキャナやLiDaR(Light Detection and Ranging)を用いてもよいし、複数のセンサを組み合わせて使用してもよい。
【0106】
(変形例6)
車載処理装置120は、記録フェーズにおいて記録完了ボタン110Bが押されることなくイグニッションスイッチがオフにされた場合には、そのイグニッションスイッチのオフ操作に記録完了ボタン110Bの押下が含まれると判断してもよい。
【0107】
(変形例7)
車載処理装置120は、アウトライアリストを用いた除外を行わなくてもよいし、周期的な特徴を利用したマッチングの改善を試行しなくてもよい。この場合には
図7に示す処理はステップS650~S653だけとなる。
【0108】
(変形例8)
通信装置114および車両制御装置130の少なくとも一方は、車載処理装置120に含まれてもよい。
【0109】
―第2の実施の形態―
本発明に係る車載処理装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、記録フェーズが出庫時に実行される点で、第1の実施の形態と異なる。なお、自動運転フェーズが入庫時に実行される点は第1の実施の形態と同様である。
【0110】
(ユーザの動作)
本実施の形態に特有のユーザの動作は次のとおりである。本実施の形態では、ユーザは駐車領域に駐車されている車両1に乗り込み、車両1を始動させる前に記録開始ボタン110Aを押す。これにより車載処理装置120は記録フェーズの処理を開始する。その後ユーザは自ら車両1を運転して駐車場から出庫し、記録完了ボタン110Bを押す。
【0111】
(構成)
本実施の形態における車載処理装置120の構成は、以下に説明する点を除いて第1の実施の形態と同様である。車載処理装置120は、停車中にユーザが記録開始ボタン110Aを押すと記録フェーズの処理を開始し、その後ユーザが記録完了ボタン110Bを押すと記録フェーズの処理を終了する。車載処理装置120は、記録フェーズが終了するとすぐに、または記録フェーズが終了した後であって車載処理装置120を構成するCPUの負荷が所定の閾値以下になると、事後処理フェーズの処理を開始する。ただし車載処理装置120は、事後処理フェーズの処理中に車載処理装置120を構成するCPUの負荷があらかじめ定めた閾値を超えた場合には事後処理フェーズを一時的に中断してもよい。
【0112】
なお本実施の形態では、車両移動情報124Aの駐車領域には、記録フェーズが開始された際の車両1の位置が記録される。
【0113】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(9)ログ記録部121Cによる記録は、車両1の駐車位置からの発車から始まる。そのため、出庫の機会を利用して駐車領域周辺の環境地図および走行経路を作成できる。
【0114】
(第2の実施の形態の変形例1)
事後処理フェーズは、第1の実施の形態と同様に車両1のイグニッションスイッチがオフにされてから開始してもよい。
【0115】
(第2の実施の形態の変形例2)
車載処理装置120は、記録フェーズにおいて、一定時間が経過したことや、記録した情報が所定のデータ量に達したことを記録完了ボタン110Bが押下されたことと等価に扱ってもよい。この変形例によれば、ユーザが記録完了ボタン110Bを押し忘れた場合でも、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bが肥大化することを防止できる。
【0116】
(第2の実施の形態の変形例3)
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態の変形例2と同様に、車載処理装置120は自動出庫フェーズをさらに備えてもよい。この場合は車載処理装置120は、自動駐車フェーズを備えなくてもよい。
【0117】
―第3の実施の形態―
図17~
図18を参照して、本発明に係る車載処理装置の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、事後処理フェーズが車両の外部で実行される点で、第1の実施の形態と異なる。
【0118】
(構成)
図17は、第3の実施の形態における移動支援システム100Bを示す図である。ただし作図の都合によりサーバ2の構成は
図18に別途示している。移動支援システム100Bは、車載処理装置120Bおよびサーバ2を含む。車両1に搭載されるハードウエア構成は、第1の実施の形態と同様である。ただし車載処理装置120Bは、第1の実施の形態に比べて、地図生成部121Dおよび経路算出部121Eを備えない。
【0119】
図18は、サーバ2の構成を示す図である。サーバ2は、演算部221と、RAM222と、ROM223と、記憶部224と、サーバ通信装置214とを備える。演算部221はCPUである。RAM222は読み書き込み可能な記憶領域であり、サーバ2の主記憶装置として動作する。ROM223は読み取り専用の記憶領域であり、後述するプログラムが格納される。このプログラムはRAM222で展開されて演算部221により実行される。演算部221は、プログラムを読み込んで実行することにより、地図生成部121Dおよび経路算出部121Eとして動作する。
【0120】
記憶部224は不揮発性の記憶領域であり、車両移動情報124A、センサ情報124Bおよび駐車場点群124Cが格納される。車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bは、車載処理装置120Bから受信する。駐車場点群124Cは、地図生成部121Dおよび経路算出部121Eにより生成される。地図生成部121Dおよび経路算出部121Eの動作は第1の実施の形態と同様なので説明を省略する。
【0121】
(動作)
車載処理装置120Bは、記録フェーズの最後に、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bをサーバ2に送信する。詳述すると、
図3に示した処理の最後であるステップS505の次に、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを通信装置114を用いてサーバ2に送信する。車載処理装置120Bから通信装置114への車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bの送信はインタフェース125を介して行われるので、本実施の形態ではインタフェース125は、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bをサーバ2に送信する「車載通信部」として機能するとも言える。
【0122】
車載処理装置120Bは、通信装置114を用いてたとえば次のようにサーバ2から駐車場点群124Cの情報を受信する。車載処理装置120Bは、イグニッションスイッチがオンにされるとサーバ2に問い合わせを行い、未受信の駐車場点群124Cを受信する。また車載処理装置120Bは、イグニッションスイッチがオフにされている期間であってもサーバ2から駐車場点群124Cを受信可能に構成してもよい。
【0123】
本実施の形態では、車載処理装置120Bの通信装置114は、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bをサーバ2に送信し、サーバ2から駐車場点群124Cを受信する「車載通信部」として機能するとも言える。
【0124】
サーバ2は、車載処理装置120Bから車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを受信すると、
図4に示した事後処理フェーズの処理を行い、記録した駐車場点群124Cをサーバ通信装置214を用いて車載処理装置120Bに送信する。すなわちサーバ通信装置214は、駐車場点群124Cを送信する「サーバ通信部」として機能するとも言える。サーバ2は、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを受信すると直ちに事後処理フェーズの処理を開始してもよいし、サーバ2の処理負荷が所定の閾値以下になった際に処理を開始してもよいし、所定の時間ごとにバッチ処理を行ってもよい。
【0125】
上述した第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態における作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(10)移動支援システム100Bは、車両1に搭載される車載処理装置、および車両に搭載されないサーバ2を含む。車載処理装置120Bは、車両1の周囲の情報を取得するセンサの出力であるセンサ情報を取得するセンサ入力部であるインタフェース125と、車両1の移動に関する情報である車両移動情報124Aを取得する移動情報取得部であるインタフェース125と、車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bをサーバ2に送信する車載通信部として機能するインタフェース125を備える。サーバ2は、車載処理装置120Bから車両移動情報に基づく情報およびセンサ情報を受信するサーバ通信装置214と、車両移動情報に基づく情報およびセンサ情報を用いて、移動しない静的物体と移動可能な動的物体との判定に基づいて車両が走行可能な走行可能領域を含む環境地図を作成する地図生成部121Dと、環境地図を用いて車両の走行経路を計算する経路算出部121Eとを備える。サーバ通信装置214は、環境地図および走行経路を車載処理装置120Bに送信する。車載処理装置120Bは、環境地図および走行経路を用いて車両1を制御する自動処理部121Fを備える。そのため、本実施の形態では処理負荷が高い事後処理フェーズをサーバ2で行うので、車載処理装置120Bは演算処理能力が低い安価な装置を用いて実現できる。
【0126】
(第3の実施の形態の変形例1)
サーバ2は、複数の車載処理装置120Bから車両移動情報124Aおよびセンサ情報124Bを受信し、駐車場点群124Cを作成してもよい。この場合に、異なる車載処理装置120Bに関する演算は独立して実行してもよいし、一方の演算結果を他方に流用してもよい。たとえば車載処理装置120Bから送信される緯度経度が略同一の場合には、相互の環境地図に重複する領域が含まれる可能性がある。その場合にはサーバ2は、環境地図同士のマッチングを行い、マッチングがとれた場合には環境地図を統合したうえで経路を算出する。
【0127】
上述した各実施の形態および変形例において、機能ブロックの構成は一例に過ぎない。別々の機能ブロックとして示したいくつかの機能構成を一体に構成してもよいし、1つの機能ブロック図で表した構成を2以上の機能に分割してもよい。また各機能ブロックが有する機能の一部を他の機能ブロックが備える構成としてもよい。
【0128】
上述した各実施の形態および変形例において、プログラムはROM123に格納されるとしたが、プログラムは記憶部124に格納されていてもよい。また、必要なときにインタフェース125と車載処理装置120が利用可能な媒体を介して、他の装置からプログラムが読み込まれてもよい。ここで媒体とは、たとえば入出力インタフェースに着脱可能な記憶媒体、または通信媒体、すなわち有線、無線、光などのネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号を指す。また、プログラムにより実現される機能の一部または全部がハードウエア回路やFPGAにより実現されてもよい。
【0129】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1…車両
2…サーバ
100、100B…移動支援システム
102…カメラ
108…車速センサ
109…舵角センサ
110…入力装置
111…表示装置
114…通信装置
120、120A、120B…車載処理装置
121…演算部
121A…センサ入力部
121B…移動情報取得部
121C…ログ記録部
121D…地図生成部
121E…経路算出部
121F…自動処理部
122B…局所周辺情報
124…記憶部
124A…車両移動情報
124B…センサ情報
124C…駐車場点群
125…インタフェース
131…操舵装置
132…駆動装置
133…制動装置
214…サーバ通信部
214…サーバ通信装置
221…演算部
224…記憶部